共有持分の占有者に明け渡し請求はできる?認められるケースや解決策を解説

自分以外の共有者が共有名義不動産を占有している場合に、当該共有者に対して退去を求めても、その明け渡し請求は当然に認められるものではありません。
民法では、各共有者が自分の共有持分に応じて不動産全体を使用できると定められています。つまり、退去を求めたい共有者にも不動産を使う権利があるため、一方的に強制的に退去を命じることはできません。
一方で、使い方や使用を始めた経緯によっては明け渡しを求められる余地があります。
例えば、使用方法の取り決めを守らずに使い続けている場合や、他の共有者を実力で追い出して占有を奪った場合などが下記のようなケース挙げられます。
ただし、上記の表のケースに該当する場合であっても、共有者への明け渡し請求が必ず認められるとは限らないので注意しましょう。明け渡し請求ができるかどうかの判断の際には、これまでの使用状況や共有者間の取り決めに加え、賃貸借・使用貸借・配偶者居住権など、相手が使用を続けられる権利の有無も確認する必要があるからです。
仮に明け渡し請求が難しい場合でも、家賃相当額を請求して使用の対価を受け取る方法や、共有物分割によって共有関係を解消する方法など、別の解決策を検討できることがあります。どの方法が自分の状況に合うか判断に迷う場合や、相手との交渉を任せたい場合は、弁護士に相談してください。
本記事では、共有名義不動産の明け渡しが認められるケースと判断のポイント、手続きの流れや費用、明け渡しが難しい場合の対処法を解説します。
請求を検討する際の確認事項をまとめたチェックリストも掲載していますので、ご自身の状況を整理する際に参考にしてください。
共有持分を持つ占有者への明け渡し請求は単独使用だけでは認められない
共有持分を所有している人が共有名義不動産を占有していたとしても、それだけで占有者に対する明け渡し請求が当然に認められるとは限りません。なぜなら、共有者は共有持分に応じて共有物全体を使用できる権利を持つと、民法第249条に定められているからです。
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
引用元: 民法|e-Gov 法令検索
最高裁昭和41年5月19日判決でも、持分の価格の過半数を有する共有者が、単独で占有する他の共有者に当然に明け渡しを請求できるわけではなく、明け渡しを求める理由を主張・立証する必要があるとされています。
共有名義不動産における占有とは、所有権の有無にかかわらず、自分のために不動産を所持し、事実上支配している状態です。
「実家を相続した兄が1人で住んでいる」という状態は、共有者による占有の典型例として挙げられます。「共有者4人のうち、特定の2人が建物を使っている」など、複数の共有者が占有しているケースもあります。
また、共有者自身が居住していなくても、建物に家財・商品などを保管して鍵を管理し、出入りしている場合や、土地を駐車場・資材置き場として継続的に使用している場合などは、占有に当たることがあります。
さらに、共有者が貸主となって第三者に不動産を貸している場合にも注意が必要です。実際に使用する賃借人の「直接占有」に加え、貸主である共有者にも賃借人を通じた「間接占有」が認められます。
仮にAとBが共有持分を2分の1ずつ持つ家にAだけが住んでいても、Bが「自分も半分持っているのにAだけが使うのはおかしい」のように主張するだけでは、Aへの明け渡し請求が認められるわけではないのです。
さらに、占有者の使用を認める合意や契約が現在も有効に続いている場合は、その内容も明け渡しの可否に影響します。契約書の有無だけで判断せず、使用を始めた経緯や当事者のやり取りを確認し、次のような合意や取り決めがないかを整理しましょう。
◻︎共有名義不動産の使用に関する合意や取り決めの例
- 居住する共有者の使用を認める契約や、口頭での取り決め
- 使用の経緯や当事者の言動などから、明示されていなくても成立していたと判断される合意(黙示の合意)
- 被相続人(亡くなった人)の承諾を得て生前から同居していた相続人について、遺産分割が終わるまで無償での使用を認める合意
弊社の実務経験においても、共有持分に基づく使用権や、使用を認める合意・契約の内容を弁護士と確認し、明け渡しを求めることは難しいと判断したケースも少なくありませんでした。ただし、退去を求める法的な根拠がある場合には、共有者に対する明け渡し請求が認められることもあります。
また、明け渡しが認められない場合でも、共有名義不動産の使用料を請求したり、自分の持分を売却して共有関係から抜けたりすることで、問題を解決できた相談者様も数多くおられます。
共有者による占有だから問題解決が難しいと諦めず、相手が使用を始めた経緯や共有者間の取り決めを把握し、弁護士に相談しながら明け渡しの可否や対応方法を検討しましょう。
株式会社クランピーリアルエステート
大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
共有名義不動産の明け渡しが認められる可能性があるケース
共有名義不動産を使用している共有者に対しても、共有者間で有効に決めた使用方法や、占有を継続する方法・理由などによっては、明け渡し請求が認められる可能性があります。
主なケースは、次の通りです。
- 持分価格の過半数で決めた使用者・使用範囲に反している場合
- 実力行使で他の共有者を排除し占有を奪った場合
- 他の共有者の権利を一切認めず不動産を不当に独占している場合
ただし、上記のいずれかに該当したとしても、必ずしも退去が認められるわけではありません。使用を認めた経緯、契約上の権利、占有状況などを基に、総合的に判断されます。
持分価格の過半数で決めた使用者・使用範囲に反している場合
共有名義不動産では、原則として共有者の持分価格の過半数の賛成で「誰が、どの範囲を使うか」というルールを決められます。使用する人や使用範囲のルールに反して不動産を使い続ける共有者には、決められた人がその場所を使えるよう、明け渡しを求められる可能性があります。
上記の管理ルールの取り決めの根拠となるのが、民法第252条第1項です。
2023年4月1日に施行された改正民法では、すでに不動産を使用している共有者がいる場合も、後から使い方のルールを決められることが明確化されました。一定数の同意で決めたルールには、以前から不動産を使っている共有者も、原則として従う必要があります。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
e-Gov法令検索 民法第252条
例えば、「共有者Aが1階、Bが2階を使用する」と決めたにもかかわらず、Bが1階も占有し、Aが使えなくなっている場合などが挙げられます。この場合、Aが1階を使えるようにするため、Bに1階部分の明け渡しを求められる可能性があります。
ここで注意したいのは、明け渡し請求の根拠となるのは、「誰が、どの場所を使うか」というルールに反して不動産を使い続けていることだという点です。単に管理ルールを破ったことへの罰として、退去を求められるわけではありません。
あくまで、「ルールに反した使用によって、決められた人がその場所を使えなくなっている場合に、その人が使えるようにするための明け渡し請求」となります。
共有名義不動産の管理ルールを設けるために必要なのが、「共有者の持分価格の過半数の同意」です。ここでいう過半数とは、共有者の人数ではなく、賛成する共有者の持分割合の合計が2分の1(50%)を超えることを意味します。
例えば、A・B・Cがそれぞれ3分の1の持分を持つ家に、使用者の取り決めがないままBだけが住んでいたとしましょう。ここでは、Bに家を貸す契約は結ばれていないものとします。
AとCが賛成し、持分の過半数に当たる合計3分の2で「今後はAが家全体を単独で使用する」と決定したとします。Bがこの決定に従わず住み続ける場合、Aは自分が家を使えるよう、その決定を根拠に家全体の明け渡しを請求できる可能性があります。
一方で、AとCの持分が4分の1ずつ、Bの持分が2分の1だった場合は、AとCが賛成しても合計が2分の1ちょうどで過半数に届きません。この場合、AとCの賛成だけでは「Aが単独で使用する」と決定できず、二人が賛成したことを根拠に明け渡しを求めることはできません。
明け渡しを求める前に、賛成した共有者の持分割合の合計と、決められた使用者・使用範囲に対して、実際に誰がどの場所を使っているかを確認しましょう。以前からあるルールを変更して使用者・使用範囲を定めた場合は、後述する「特別の影響」により、もともと不動産を使用していた共有者本人の承諾も必要になることがあります。
また、相手が家賃を払って借りる「賃貸借」や、無償で借りる「使用貸借」などの契約によって不動産を使っている場合もあります。その場合は、契約の内容や、契約が終了しているかなども確認しなければなりません。
書面が見当たらないときでも、口頭のやり取りや従来の使用状況などから、使用を認める合意が成立している場合があります。合意書やメール、LINEのやり取り、これまでの使い方などを確認し、「誰の使用を、どのような条件で認めていたのか」「現在は誰が、どこを使っているのか」を整理することが大切です。
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代表取締役
宅地建物取引士
特別の影響について
すでにある使い方のルールを持分価格の過半数の賛成で変更すると、そのルールに従って不動産を使ってきた共有者に不利益が生じることがあります。
例えば、共有者間の取り決めに基づいて住んでいる共有者が、転居先を確保しにくい状況にある場合です。新たに使用したい共有者は他の建物も利用できるなど、変更の必要性に比べて現在の居住者の不利益が大きい場合には、民法第252条第3項の「特別の影響」に当たる可能性があります。
特別の影響が及ぶ場合は、影響を受ける共有者本人の承諾がなければ管理ルールの変更はできません。仮に持分価格の過半数が賛成していても、本人の承諾なしにルールを変えることは認められません。
実力行使で他の共有者を排除し占有を奪った場合
従来使用していた共有者を実力で排除し、不動産の占有を奪った場合には、明け渡し請求が認められる可能性があります。共有持分を持っていたとしても、他の共有者から著しく不当な方法で占有を奪うことまで許されるわけではないということです。
実力行使によって占有を奪う行為としては、例えば次のようなものが考えられます。
- 住んでいた共有者の家財や衣類を無断で外へ運び出し、生活できない状態にする
- 鍵を勝手に交換し、従来使用していた共有者が中に入れないようにする
- 暴力などで住んでいた共有者を追い出し、建物を自分だけで使用する
ただし、鍵の交換や家財の搬出があったからといって、「不当に追い出されたので、相手に明け渡しを求められる」と自分だけの判断で決めつけるのは避けましょう。従来の使用状況や当事者間の合意、使用できなくなった経緯なども確認したうえで、客観的な判断を仰ぐ必要があります。
「誰が、いつ、何をした結果、どのように使用できなくなったか」を整理し、写真、メール・LINE、鍵交換の記録などの資料を持って弁護士へ相談してみてください。
他の共有者の権利を一切認めず不動産を不当に独占している場合
他の共有者が持つ共有持分に関する権利を無視して、あたかも自分だけの所有物であるかのように不動産を独占している共有者がいる場合には、その共有者への明け渡し請求が認められる可能性があります。
前述した通り、民法第249条第1項では、共有者はそれぞれの持分に応じて不動産全体を使えると定めています。逆に言えば、他の共有者の権利を無視して、「自分だけで使うので他の共有者には一切使わせない」と不動産を独り占めすることは原則として認められません。
ある共有者が、不動産を独り占めして他の共有者に一切使わせないなど他の共有者の権利を侵害している場合には、妨害をやめるよう求める「妨害排除請求」による明け渡しが認められることがあります。
この事案では、裁判所は、こうした占有者を不法占有者と同様に扱いました。
ただし、同条が明け渡しを認める条件を直接定めているわけではありません。どのような場合に明け渡しまで求められるかは、具体的な事情を踏まえて判断されます。
相手に対して「不当に不動産を独り占めしている」と伝えるだけでは、どのような問題が起きているのかを十分に示せない場合があります。自分も使いたいと申し出た際に断られたメールなど、相手の対応やこれまでのやり取りがわかる記録を示しながら、具体的に説明することが大切です。
以下では、他の共有者の権利を無視した独占が疑われる場面と、その状況を確認するための記録・資料の例を紹介します。
実際に不当な独占を根拠に明け渡し請求が認められるかどうかは、これまでの取り決め、実際の不動産の使い方、独占に至るまでの話し合いの経緯なども考慮されて決まります。
不当な独占が疑われるケースであっても、弁護士などの専門家とも確認を取りながら、本当に明け渡し請求ができる根拠となり得るのかを慎重に検討する必要があるでしょう。 退去についての合意がある場合も、その内容を確認する ここまでの3ケースとは別に、共有者との間で退去の時期や条件を取り決めている場合には、その合意に基づく請求を検討できることがあります。 実際に、離婚調停で定めた退去条項に基づき、共有者である元妻への退去請求が認められた東京地裁令和2年11月19日判決の裁判例もあります。 ただし、使用期間を定めたことと、退去・明け渡しまで約束したことは、合意の内容を確認して区別しましょう。その後の期限延長や使用継続の合意がないかも確認してください。
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大江 剛
代表取締役
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共有名義不動産の明け渡しを求める前に確認したいケース別の注意点
共有名義不動産の明け渡しが認められる可能性があるケースで解説した通り、状況次第では共有者に対する明け渡し請求が認められることがあります。
ただし、実際に明け渡しを求める際は、相手の持分や契約に基づく使用権限、使用を始めた経緯などを確認する必要があります。これらの事情によって、明け渡しを求められるかどうかが変わるためです。
また、無断工事が問題となっている場合には、工事の差止めや原状回復などを求める対応も考えられます。
以下では、無断で工事が行われる場合、相続した実家に一部の相続人が住み続けている場合、第三者が不動産を使用している場合の3つのケースについて、明け渡しの判断で注意する点をまとめました。
共有者が無断で建築やリフォームを行う場合
「他の共有者に無断でアパートを建てようとしている」「大規模なリフォームを勝手に進められた」など、共有者が建築やリフォームを独断で進めるトラブルに悩まされた結果、弊社へ共有持分の買取相談が寄せられることがあります。
前提として、他の共有者が必要な同意を得るなどの手続きをせずに勝手に工事をした場合でも、その共有者への明け渡し請求が当然に認められるわけではありません。
なぜなら、無断で工事をしたからといって、民法第249条第1項で認められている「共有者として不動産を使う権利」が、すぐに失われるわけではないためです。
工事の中止を求められる根拠がある場合でも、退去まで求められる法律上の理由があるかは、それぞれ別に確認する必要があります。
一方で、建築やリフォームに必要な同意・決定がない場合は、工事の内容や進行状況に応じて、差止めや原状回復、損害賠償を求められる可能性があります。
例えば、工事が進められている場合に検討できるのが、共有持分権に基づく差止めです。すでに工事によって不動産の状態が変わっている場合には、工事前の状態に戻すよう、原状回復を求められることもあります。
また、工事を行った共有者が、故意または過失によって他の共有者の権利を侵害し、損害を与えた場合には、民法第709条に基づく損害賠償請求も選択肢の1つです。
工事や利用の変更が進むほど、元の状態に戻すことや関係者との調整が難しくなるかもしれません。工事計画、現場の写真、共有者間の合意書や連絡記録などを確認したうえで、早めに専門家へ相談しましょう。
相続した実家に一部の相続人が住み続けている場合
相続で実家などの不動産を取得しても、そこに自分以外の相続人が住み続けていることがあります。
相続した不動産の明け渡しを検討する際には、共有持分に基づく使用権に加えて、使用貸借に基づく権利や配偶者居住権など、居住を認める別の根拠がないかも確認しましょう。
使用貸借とは、無償で不動産や動産を貸し借りし、契約終了後に返してもらう契約です。貸主の死亡だけでは原則として終了せず、貸主としての契約上の地位が相続人に引き継がれます。
また、契約書がなくても、被相続人の承諾を得て生前から同居していた相続人については、特段の事情がない限り、遺産分割でその建物を誰が取得するか決まるまで、無償での使用を認める合意があったと判断される場合があります。
さらに、相続した共有名義不動産に亡くなった人の配偶者が暮らしている場合は、配偶者居住権や配偶者短期居住権に基づいて居住している可能性があります。
- 配偶者居住権:相続開始時に被相続人の所有建物に住んでいた配偶者が、遺産分割や遺贈などによって取得する権利で、終身または一定期間は無償で住み続けられる
- 配偶者短期居住権:相続開始時に被相続人の所有建物に無償で住んでいたことなど、一定の要件を満たす配偶者が取得できる権利で、一定期間その建物を無償で使用できる
なお、配偶者居住権は、被相続人が相続開始時にその建物を配偶者以外の人と共有していた場合には成立しません。配偶者短期居住権とは成立の要件が異なるため、それぞれ確認しましょう。
相続した家から退去してもらいたいときは、「いつから住んでいるのか」「亡くなった人がどのような約束で住むことを認めていたのか」「相続の話し合いで、その家を誰が引き継ぐことになったのか」を確かめましょう。
話し合いが終わっていても、住んでいる人が家の所有者の一人だったり、契約などによって住み続ける権利を持っていたりする場合があります。
第三者が共有名義不動産を使用している場合
共有持分を持たない第三者が共有名義不動産を使用している場合、その第三者に使用権限がなければ不法占拠として明け渡し請求が認められる可能性があります。
ただし、第三者であっても、共有者の承諾や契約によって使用が認められている場合があります。誰から使用を認められたのか、契約などに基づく使用権限があるのかを確認しましょう。
第三者の使用状況ごとの確認事項は、次の通りです。
第三者に対する明け渡し請求を検討する際は、契約書や使用を承認した経緯が分かる記録を集め、誰にどのような根拠で請求するのかを確認しましょう。
共有名義不動産の明け渡し請求について検討する際のチェックリスト
共有名義不動産の明け渡しを検討する際は、明け渡しを求める根拠があるかに加え、相手が使用を続けられる契約や権利がないかを確認することが重要です。
以下では、ここまで解説した内容を基に、確認事項と判断の目安をまとめました。自分の状況に当てはめ、明け渡し請求を検討できるのか、追加の確認が必要なのかを整理してみてください。
このチェックリストは、該当する項目の数で明け渡しの可否を判定するものではありません。
確認結果に応じて、次の対応を検討しましょう。
明け渡し請求以外の方法での解決を目指す場合は、後述する「共有名義不動産で明け渡し請求が認められない場合の対処法」をご覧ください。
共有名義不動産の明け渡しを求める手続きの流れ
共有名義不動産の明け渡しは、請求の根拠をしっかり確認したうえで占有者と交渉を進め、解決しなければ裁判手続きを検討します。
明け渡しを求める手続きの大まかな流れは、次の通りです。
- 権利関係と使用状況が分かる資料を整理する
- 明け渡しの条件について占有者と協議する
- 話し合いで解決しなければ調停や訴訟を検討する
- 判決や調停・和解の内容が守られない場合は強制執行を検討する
明け渡しを認める判決を得て強制執行まで進む場合、一般的な建物明け渡しの実務上の目安を合算すると、訴訟に約3~12か月、強制執行に約1~3か月、合計で約4か月~1年以上かかる計算です。
このほか、提訴前の交渉や執行申立ての準備にも時間が必要です。共有者間の合意や使用権限をめぐって争いがある場合や、控訴された場合などは、さらに長期化することがあります。
権利関係と使用状況が分かる資料を整理する
明け渡し請求の根拠を確認するため、共有者や持分割合、実際に使用している人と使用状況を整理しましょう。登記事項証明書だけでは入居時の約束まで分からないため、契約書や連絡記録も確認します。
資料がすべてそろっていなくても弁護士への相談は可能です。分かることと不明な点を分けて整理しておきましょう。
明け渡しの条件について占有者と協議する
明け渡しを求める理由や希望する退去時期を相手に伝え、次の条件を話し合います。転居先を確保するために必要な期間なども確認し、実行できる内容に調整しましょう。
- どの不動産・範囲を、誰に明け渡すか
- いつまでに退去するか
- 室内の荷物をいつ、誰が搬出するか
- 立退料などを支払う場合、その金額・時期・条件
- 未払いの家賃相当額や立替費用をどのように精算するか
退去への同意だけで終わらせず、期限や荷物の搬出、金銭の精算まで具体的に定め、合意内容を書面に残しておいてください。
なお、賃貸借や使用貸借の終了を根拠に明け渡しを求める場合は、協議とあわせて、契約終了の要件や必要な通知も確認しておきましょう。
通知内容や配達の事実を客観的に記録する方法として、配達証明付きの内容証明郵便を利用できます。
本人が交渉することもできますが、退去義務や条件をめぐって対立している場合は、弁護士への相談を検討してください。代理交渉のほか、合意書の内容の確認も依頼できます。
話し合いで解決しなければ調停や訴訟を検討する
交渉がまとまらない場合は、調停委員などを交えて合意を目指す調停や、裁判所に判断を求める訴訟を検討します。一般的な建物明け渡し請求では、民事調停を経ずに訴訟を提起することも可能です。
訴訟まで進んだ場合は、明け渡しを求める相手・物件・範囲と請求の理由を訴状にまとめ、証拠資料とともに管轄の裁判所へ提出します。提出先は、不動産所在地などの地方裁判所や簡易裁判所です。
相手方に訴状が送られた後は、双方の主張や証拠を踏まえて審理が進みます。また、双方が合意すれば、判決を待たずに裁判上の和解で解決することも可能です。
明け渡し義務とその範囲・期限などを定めた調停調書や裁判上の和解調書は、強制執行の根拠となります。
なお、相手が第三者に占有を移すと、取得した判決に基づく明け渡しの強制執行が難しくなることがあります。相手が不動産を第三者に貸すなどのおそれがある場合は、こうした事態に備える「占有移転禁止の仮処分」が必要かどうか、訴訟を起こす前の段階から検討しましょう。
判決や調停・和解の内容が守られない場合は強制執行を検討する
判決や調停・和解で明け渡し義務が定まっても相手が退去しない場合は、執行官による強制執行を検討します。
強制執行の根拠となる確定判決や調停調書、裁判上の和解調書などが「債務名義」です。判決に「仮執行宣言」が付いている場合は、確定前でも強制執行に進めることがあります。
債務名義の種類に応じた準備を整え、不動産所在地を管轄する地方裁判所に所属する執行官へ申し立てます。必要な書類や手続きは、申立先の執行官室で確認しましょう。
申立て後は、執行官が現地で明け渡しを催告し、任意の退去を促します。それでも退去しなければ、予定日に荷物の搬出などを行い、占有者を強制的に退去させて不動産を引き渡す「断行」に進みます。
判決や退去の約束があっても、自分の判断で鍵を交換したり、相手の荷物を処分したりせず、法的な手続きを踏みましょう。
共有名義不動産の明け渡しを求める際にかかる費用
共有名義不動産の明け渡しを求める際にかかる費用は、交渉で解決するか、裁判や強制執行まで進むかによって変わります。
弁護士に依頼して強制執行まで進む場合は、弁護士費用に加えて裁判所への予納金や荷物の搬出・保管費用などがかかり、総額が100万円を超えることもあります。
主な費用の内訳と、見積もりの際に確認したいことは次の通りです。
※上記は法律相談や一般的な建物明渡しの参考額です。共有者間の争いの内容、依頼する業務の範囲、物件の状況などによって増減します。
裁判所に納める手数料は、裁判所の手数料の案内や申立先で確認できます。弁護士や業者への依頼時には、税込・税別の表示、見積もりに含まれる費用、追加料金の条件も確認してください。
また、交渉で立退料や引っ越し費用を支払うことに合意した場合は、その金額も別途必要です。
民事執行法第42条では、強制執行に必要な執行費用は相手方の負担とされています。しかし、申立人が立て替えた費用を実際に回収できるとは限らず、弁護士費用などの支出全額を当然に相手へ負担させられるわけでもありません。
退去後に実現したい目的と費用負担を比較し、相手から回収できない場合も含めて予算を検討しましょう。
共有名義不動産の占有トラブルを放置するリスク
共有名義不動産の占有トラブルを放置するほど、使用や費用負担を巡るトラブルが複雑化して解決が難しくなる可能性があります。
さらには、未払いの金額が増えるだけでなく、当時の取り決めを示す資料が失われたり、長年の占有を根拠に権利を主張されたりするおそれもあります。
ここからは、弊社に寄せられた占有に関する相談事例の中で、とくに注意しておきたい以下のリスクをみていきましょう。
- 家賃相当額の未払いが積み重なり回収が難しくなる
- 管理費用や税金の負担が偏り、必要な修繕も進まなくなる
- 取り決めや占有の経緯を示す証拠が失われる
- 長期間の占有を根拠に取得時効を主張される
家賃相当額の未払いが積み重なり回収が難しくなる
家賃相当額を請求できるにもかかわらず、支払いの請求を放置している状態が続くと、未払いの金額が積み重なります。後からまとめて請求すればよいと長期間放置してしまうと、積み重なった金額を支払うだけの十分な収入や財産が相手になければ、全額を回収できないかもしれません。
例えば、支払うべき家賃相当額が月5万円であれば、未払いが3年間続くと合計180万円です。金額が大きくなるほど一括での支払いが難しくなり、分割払いの交渉に時間がかかることもあります。
さらに注意しておきたいのが、請求する権利の消滅時効です。過去の家賃相当額を請求する権利は、時効期間が過ぎ、相手から時効を援用されると、支払いを求めても認められなくなるおそれがあります。時効の援用とは、相手が「時効によって支払義務がなくなった」と主張することです。
適用される時効期間や起算点は、請求の法的な根拠や債権が発生した時期などによって異なります。そのため、退去に関する話し合いとは別に、家賃相当額の請求についても時効の期限を確認しておきましょう。
民法第166条が適用される場合、債権の消滅時効は、原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い時点で完成します。
また、確定判決で認められた債権であっても、永久に請求できるわけではありません。判決確定時にすでに支払期限が到来している債権は、もとの時効期間が10年より短くても、民法第169条に基づき原則として確定時から10年となります。
相手が支払義務を認めるなどして、時効の期間が新たに進み始める場合もあるため、具体的な期限は個別に確認してください。
管理費用や税金の負担が偏り必要な修繕も進まなくなる
占有をめぐる対立が続くと、その分だけ管理費用や税金の分担についても話し合いが進まなくなる可能性があります。一部の共有者が立て替えを続ける一方、他の共有者から精算を受けられず、負担が偏るおそれがあります。
共有者間の費用負担は、別の取り決めがなければ共有持分割合に応じるのが原則です。しかし、「自分は使えていないから払いたくない」「住んでいる人がすべて払うべきだ」といった対立を解消できなければ、立替額だけが増えていく可能性があります。
また、修繕費用を確保できなかったり、居住者との調整が進まなかったりすると、必要な点検・修繕が先送りされることもあります。
固定資産税については、共有者間の分担とは別に、自治体に対して共有者全員が税額全体について連帯して納付する義務を負います。他の共有者が負担分を支払わないからといって自治体への納付も放置すると、延滞金や財産の差押えにつながってしまうでしょう。
なお、誰かが税額の全額を納付していれば、他の共有者との精算が済んでいないだけで自治体に対する滞納になるわけではありません。納税の状況と、共有者間で未精算になっている金額を分けて確認することが大切です。
管理費用の分担方法や、立て替えた費用を支払わない共有者への対処法は、以下の記事をご覧ください。
取り決めや占有の経緯を示す証拠が失われる
占有トラブルを長期間放置すると、共有者間の取り決めや入居の経緯、費用負担などを裏付ける資料・記録が失われたり、関係者の記憶が曖昧になったりするおそれがあります。具体的には、次のようなケースです。
- 合意書や契約書を紛失・処分し、使用期間や費用負担、退去条件を確認できなくなる
- 機種変更やアカウントの削除により、メール・LINEに残っていた約束や協議の記録を確認できなくなる
- 写真や動画のデータを紛失し、以前の使用範囲や、鍵交換・荷物の搬出が行われた状況を示せなくなる
- 領収書や振込記録を紛失・処分し、家賃相当額の支払いや費用の立て替えを裏付けにくくなる
- 取り決めに関わった人が亡くなったり記憶が曖昧になったりして、口頭の約束や入居時の経緯を確認できなくなる
客観的な記録が残っていなければ、どのような約束があったかを確認する段階から争いになり、解決までに時間がかかるおそれがあります。
さらに、訴訟で明け渡しや家賃相当額を請求する場合も、資料が不足すると、自分の主張を裏付けることが難しくなります。
そのため、今残っている記録は、占有が長期間続く場合でも紛失しないように、日付や相手、前後のやり取りが分かる形で保存しましょう。口頭の取り決めについても、関係者に確認できるうちに内容を整理し、合意できた事項を書面に残しておくことが大切です。
長期間の占有を根拠に取得時効を主張される
占有状態が長期間続くと、占有者から「長年、自分の所有物として使ってきたため、他の共有者の持分も時効取得した」と主張される可能性があります。
取得時効とは、他人の所有物であっても、一定の条件を満たして長期間占有し続けることで、その所有権を取得できる民法第162条に基づく制度です。共有名義不動産でも、一定の条件を満たせば、他の共有者の持分を時効によって取得することがあります。
ただし、長年住み続けたというだけで、他の共有者の持分を時効取得できるわけではありません。取得時効が成立するには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 所有の意思を持って、平穏かつ公然に20年間占有し続けること
- 所有の意思を持って、平穏かつ公然に10年間占有し続け、占有開始時に善意・無過失であること
共有者の1人として使用していたり、他の共有者から借りて住んでいたりするだけでは、その持分まで自分のものとして占有しているとは認められません。所有の意思があるかどうかは、本人の思い込みではなく、使い始めた経緯やその後の行動などから客観的に判断されます。
「平穏かつ公然」とは、暴力や脅迫を使わずに、その不動産を使用する事実を隠さずに占有していることです。
最後に時効取得に関する「善意」とは、占有を始めた時点で、その不動産が自分の所有物であると信じていることです。「無過失」とは、そう信じたことについて、確認不足などの不注意がないことを意味します。
もし時効取得の期間が経過し、その後占有者が時効取得について主張した場合、使用方法や費用負担に加え、持分が誰に帰属するかまで争点になるおそれがあります。過去の相続や占有の経緯を調べ直す必要が生じれば、解決に向けた交渉や訴訟の負担も大きくなるでしょう。
期間が経過しただけで他の共有者の持分を時効取得できるわけではありませんが、こうした争いに備え、入居時の取り決めや、その後の使用状況が分かる記録を残しておきましょう。
共有持分の時効取得については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有名義不動産で明け渡し請求が認められない場合の対処法
共有名義不動産の明け渡し請求が認められない場合でも、使用方法の見直しや家賃相当額の請求、共有持分の売却などによって、問題解決を図れることがあります。
自分も不動産を使いたい」「使用できない分の対価を受け取りたい」「共有関係から抜けたい」など、自分が実現したいことに合わせて対処法を選びましょう。
明け渡し請求以外の主な対処法は、次の5つです。
- 共有物の使用方法についてあらためて協議を行う
- 占有者に対して家賃相当額を請求する
- 共有物分割請求によって共有状態を解消する
- 自分の共有持分を占有者や他の共有者に売却する
- 不動産会社を通じて自分の共有持分を売却する
共有物の使用方法についてあらためて協議を行う
占有している共有者への明け渡し請求が認められない場合や、請求する前の段階では、共有者間で使用方法についてあらためて話し合ってみましょう。使用する場所や期間などを調整できれば、不動産全体の明け渡しを求めなくても、それぞれの希望に沿った利用方法を見つけられる場合があります。
話し合う際は、現在の使用方法や従来の取り決めを確認し、次のような点を整理してみてください。
- 相手が共有名義不動産を占有している理由や抱えている不満は何か
- 誰が、どの範囲を、いつまで使用するか
- 出入りや鍵の管理をどのように行うか
- 特定の共有者が単独で使用する場合、家賃相当額を支払うか
- 修繕費や維持管理費などをどのように負担するか
- 使用方法や範囲、負担割合などについて、各共有者がどこまで譲り合えるか
合意できた内容は書面に残し、使用範囲や費用負担を明確にしましょう。退去について合意する場合も、退去期限や条件まで具体的に定めておくことが大切です。
使用方法などの管理に関するルールを定める場合は、前述した通り、持分の価格の過半数による決定や、特別の影響がある場合の承諾など、必要な要件を満たしたうえで設定・変更を進めましょう。
たとえ話し合いがまとまらなくても、相手の意向や合意が難しい点が明らかになれば、家賃相当額の請求や共有物分割請求、持分売却など、その後の対策を検討しやすくなります。
占有者に対して家賃相当額を請求する
共有名義不動産を共有者が持分を超えて使用している場合は、自分の持分に応じた家賃相当額を請求できる可能性があります。
民法第249条第2項では別段の合意がある場合を除き、共有物を使用する共有者は、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に支払う義務があると定められています。賃貸借契約を結んでいなくても、持分を超えて使用している共有者に対し、使用料として家賃相当額を請求できる場合があるのです。
計算の基準となる賃料は、周辺の類似物件の賃料や、不動産会社による賃料査定などを参考に確認してください。
なお、無償で使用する合意や使用貸借などに基づく権利が存続している場合は、使用分の家賃相当額を請求できないことがあります。
一方、共有者が自分で住むのではなく、第三者に貸して家賃を受け取っている場合は、その家賃収入の分配が問題になります。特定の共有者が家賃収入を独占し、本来自分に分配されるべき金額を正当な理由なく受け取れていない場合は、民法第703条に基づく「不当利得返還請求」ができる可能性があります。
共有持分に関する家賃請求については、以下の記事で詳細を解説しています。
共有物分割請求によって共有状態を解消する
占有者との共有関係を解消したい場合は、民法第256条に基づく共有物分割請求という方法があります。
共有物分割請求とは、共有者が他の共有者に対し、共有物の分割によって共有関係を解消するよう求めることです。共有物を分割しない旨の有効な契約がある場合などを除き、各共有者はいつでも請求できます。
ただし、共有物の分割を求めても相手が協議に応じなかったり、提案した分割方法に反対したりして、合意に至らないことがあります。分割について協議がまとまらない場合や、協議できない場合には、民法第258条に基づく「共有物分割請求訴訟」の提起を検討しましょう。
訴訟では、裁判所が当事者の主張や提出された証拠、不動産の状況などを踏まえて分割方法を判断します。裁判による主な分割方法は、次の通りです。
ただし、希望する分割方法が選ばれるとは限りません。
例えば、土地を分けて自分も一部を使い続けたいと考えていても、裁判所が価格賠償による分割を命じる場合があります。自分の持分を占有者に取得させる判決が出た場合は、その対価として金銭を受け取る一方、土地の持分を手放すことになります。
また、裁判所は、共有物の分割に伴って当事者に不動産の引き渡しを命じることも可能です。しかし、引き渡しを命じる判決が出ても、相手が応じなければ強制執行の手続きが必要になるかもしれません。
共有物分割請求訴訟などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
株式会社クランピーリアルエステート
大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
専門家のコメント
なお、相続人間で遺産分割が済んでいない不動産については、原則として遺産分割の手続きで解決を図ります。
自分の共有持分を占有者や他の共有者に売却する
今後、自分で不動産を使用する予定がない場合は、自分の共有持分を占有者や他の共有者に売却して、共有関係から抜ける方法もあります。
とくに、占有者はすでに不動産を使用している立場にあるため、単独所有にしたいというニーズを持っている可能性があり、条件が合えばスムーズに取引が成立するかもしれません。
例えば、兄弟2人で実家を共有して兄だけが住んでいる場合、弟の持分を兄が買い取れば、実家は兄の単独所有になります。兄はそのまま住み続けられ、弟は持分の売却代金を受け取って共有関係から抜けられます。
占有者や他の共有者への持分売却を進めるには、買主となる相手との合意が必要です。相手が購入資金を用意できるか、売買価格や支払時期について折り合えるかを確認しましょう。また、家賃相当額や立て替えた費用の未払いがある場合は、それらを売買代金とは別に精算するのかも明確にしておく必要があります。
共有持分の売却については、以下の記事で詳しく解説しています。
不動産会社を通じて自分の共有持分を売却する
占有者や他の共有者との売買がまとまらない場合は、不動産会社に相談し、自分の共有持分を売却する方法も検討してみてください。
「共有者でもない第三者に売れるのか」と疑問に思われるかもしれませんが、自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意がなくても買主と合意すれば売却できます。
不動産会社を利用する方法には、買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。それぞれメリット・デメリットが異なるため、売却価格だけでなく、費用や売却までの期間、契約条件を比較して選んでください。
仲介と買取の主な違いは、次の通りです。
なお、共有持分だけを購入しても不動産全体を自由に使えるわけではないため、仲介の場合も買主候補は投資家や不動産会社などが中心になります。また、共有持分の評価や取り扱いには専門知識が求められるため、不動産会社を選ぶ際には、共有持分の取扱実績や実際の査定結果などを比較検討することが大切です。
仲介と買取の違いや選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有名義不動産の明け渡しに関するよくある質問
共有名義不動産の明け渡し請求は弁護士に依頼しないとできませんか?
弁護士への依頼は必須ではなく、自分で交渉や訴訟の手続きを進めることも可能です。
ただし、共有者への明け渡し請求では、使用方法の取り決めや占有の経緯などを踏まえ、請求できる根拠があるかを判断する必要があります。訴訟になれば、自分の主張を裏付ける証拠を集め、裁判所に提出する書類も準備しなければなりません。
自分で進められるか判断が難しい場合は、まず弁護士に相談し、請求の見通しや必要な手続きを確認しましょう。そのうえで、依頼する業務の範囲と費用を確認し、交渉や訴訟を任せるか検討してください。
他の共有者や持分を買った業者から明け渡しを求められたら退去しなければなりませんか?
自分にも共有持分がある場合、他の共有者や持分を買った業者から要求されたという理由だけで、直ちに退去しなければならないわけではありません。持分を買った業者も共有者の1人であり、業者であることや持分割合が多いことだけで、当然に明け渡しが認められるものではありません。
まずは、相手が取得した持分と、明け渡しを求める具体的な理由を確認しましょう。そのうえで、使用方法に関する決定や退去の約束、自分の居住を認める合意・契約の内容を照らし合わせます。
請求に納得できない場合は、その場で退去を約束したり合意書に署名したりせず、通知書や契約書などを持って弁護士へ相談しましょう。裁判所から訴状などが届いた場合は、放置せず、記載された期限や期日を確認して対応する必要があります。
まとめ
共有名義不動産では、各共有者に持分に応じて不動産全体を使用する権利があります。そのため、特定の共有者が単独で使用していることや、自分の持分が相手より多いことだけを理由に、当然に明け渡し請求が認められるわけではありません。
一方、使用方法に関する有効な決定や退去の合意に反している場合、他の共有者を実力で追い出して占有を奪った場合などには、明け渡し請求が認められる可能性があります。請求の可否は、取り決めの内容や占有の経緯、相手の使用権限などを踏まえて判断します。
明け渡し請求が認められない場合でも、使用方法の協議や家賃相当額の請求、共有物分割請求、共有持分の売却などを検討できます。不動産を使い続けたいのか、使用の対価を受け取りたいのか、共有関係から抜けたいのかに応じて、解決方法を選びましょう。
共有名義不動産のトラブルを放置すると、未払いの費用が増えたり、取り決めを示す資料が失われたりして、解決が難しくなるおそれがあります。現在の使用状況や契約・合意の内容を早めに整理し、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談しましょう。

共有名義不動産の明け渡し請求は1人でもできる?
明け渡し請求は、必ずしも共有者全員で行う必要はありません。請求に法的根拠がある場合、共有者は自分の権利に基づき、原則として他の共有者の同意を得ずに1人で行えます。