私道持分とは?想定されるトラブルやその対処法を解説

私道持分とは?想定されるトラブルやその対処法を解説

私道は、原則として、所有者もしくは所有者から許可を受けた者しか通行できません。そのため、私道に接している土地を所有している場合、私道持分について確認しておくことが大切です。

私道持分には、私道部分を複数の所有者で共有する「共同所有型」と私道部分を分筆し、それぞれ所有する部分が明確に分かれている「相互持合型」があります。

私道持分を保有することで、道路を使用する権利が持てる一方で、私道部分の維持管理や固定資産税等の費用の負担が生じる点はデメリットです。

反対に、私道部分を保有していない場合、私道所有者から通行や掘削の承諾が得られない、もしくは通行料の支払いを求められる可能性があります。その結果、不動産としての資産価値が下がり、売却しにくくなることが考えられます。

そのため、私道部分がない不動産を売却する場合、あらかじめ通行や掘削の承諾を得る、あるいは、私道持分を取得することが重要です。

ただし、当事者間の交渉で通行や掘削の承諾を得ることが難しい場合もあります。不動産取引や私道に絡む紛争に強い弁護士に相談することも考えましょう。

また、通常の土地と比べて私道持ち分がない不動産の売却は難しくなります。共有不動産などを数多く扱い、訳あり物件を専門に取り扱う買取業者へ相談してもよいでしょう。

この記事では、私道持分を有する不動産あるいは私道部分がない不動産の売買に関して、注意すべき点を含めて解説します。

私道持分とは?

私道持分とは、1つの私道に複数の土地が接道している場合に、それぞれの土地所有者がその私道を利用するために有する土地の権利です。

私道持分は、その私道の所有形態によって「共同所有型」と「相互持合型」があります。

  • 共同所有型
  • 相互持合型

共同所有型

共同所有型は、その私道に接する土地の所有者全員が、同じ持ち分で共有する形態です。

例えば、1つの私道に5つの土地が接道している場合、その私道持分はそれぞれ1/5ずつとなり、維持管理を全員で行います。登記上は、該当する地番の私道をそれぞれ1/5ずつなどで所有する共有名義となります。

なお、令和5年4月の民法改正によって、共有持分を有する人が、共有物に変更を加える場合の要件が拡大されました。

前提として、各共有者は、共有物を変更する行為をする場合、他の共有者全員の同意が必要です。

第二百五十一条

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用:e-Gov法令検索

改正民法では、共有物に変更を加える行為でも、形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の過半数で決定することが可能になりました。

第二百五十二条

共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

引用:e-Gov法令検索

つまり、共有する私道に対して、危険樹木の伐採・撤去の他、アスファルト舗装なども「軽微な変更行為」とし、これまで共有者全員の同意が必要だった行為が民法252条1項の管理行為となり、共有者持分の過半数の同意によって行うことが可能になりました。

相互持合型

相互持合い型は、1つの私道を接する土地の所有者の数で分筆し、土地所有者は分筆されたそれぞれの土地を所有する形態です。

共同所有型のように1筆の土地を共有するのではなく、分筆した私道の所有権をそれぞれの土地所有者が有します。

それぞれの土地所有者が所有する私道部分は明確ですが、所有する道路部分の修繕を行う場合は、私道持分を有する全員の同意が必要です。

相互持合い型の場合、公道に接する私道部分を所有しない土地所有者は、公道に出るまでに他人の私道を通らなければなりません。

そのため、他人の私道を使用する権利を明確にするために、通行地役権(民法280条)を設定します。通行地役権とは、自分の土地(要役地という)の利便性を高めるために、他人の土地(承役地という)を通行する権利です。

第二百八十条

地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

引用:e-Gov法令検索

地役権は民法における物権で登記することが可能です。通行地役権について、具体的な土地の利用方法や使用できる範囲を契約で取り決め、その内容を登記することで第三者にも主張できます。

物権とは、物を直接支配する権利をいい、特定の人に特定の行為を請求できる「債権」と異なり、すべての人に対して権利を主張できます。

つまり、通行に使用している私道の所有者が売買等で変わった場合でも、通行地役権を登記していれば新しい所有者にも道路の使用を主張できるということです。

なお、共同所有型の場合、道路の使用や修繕で共有者間のトラブルが発生することは少ないですが、相互持合型の場合、それぞれの私道持分が明確である分、トラブルに発展する可能性が高い形態といえます。

そのため、例えば、分譲地を開発する業者などは、宅地と私道を売却する際、敷地と離れた場所の私道部分をセットで販売したり、公道に近い土地所有者には公道から離れた私道部分をセットで販売したりなど、それぞれの土地所有者間でトラブルになりにくい販売方法をとっている場合があります。

私道と公道の違い

道路には私道と公道があります。主な違いをまとめると以下のようになります。

公道と私道の違い
公道 私道
管理者 自治体 個人
道路法の適用 適用あり 公道と接続している私道は適用(それ以外は適用なし)
維持管理・費用負担 自治体 所有者個人

公道には、道路法に規定される国道や都道府県道、市町村道、高速自動車国道のほか、農道や林道なども含まれます。

公道の維持管理は設置者である自治体が行うため、例えば、道路に穴があいた、地震によって亀裂が生じたなどの場合、自治体の土木担当者が修繕してくれます。

また、公道はすべての人が利用することが前提で整備されているため、利用者の制限もなく誰でも利用可能です。

一方の私道は、個人や法人が私的に所有・利用するための道路で、主に土地の所有者が設置・維持管理します。私道に面している土地を所有する場合、ほとんどの場合私道の持ち分を有します。

私道は私道所有者または私道の所有者が通行を認めた人のみが利用できる道路なので、許可がなければ通行はできません。

私道が設置される代表的なケースに、大規模な造成地を分譲して土地、建物を販売するケースがあります。

建物を建てる敷地は、建築基準法が定める道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法43条1項1号)。

そのため宅地の分譲業者は、土地とあわせて道路を整備する必要があります。前面道路は必ずしも公道である必要はないため、私道を整備して土地とあわせて販売します。

なお、建築基準法上、敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していることが必要です。そのため、前面道路が4m未満の場合、接道義務を果たすために敷地を後退させなければならない場合があります(セットバックという)。

このように私有地である敷地を一部後退させて道路として提供する部分を私道負担といいます。土地以外に私道部分を別途所有あるいは共有する場合も同様です。

私道持分を保有するメリット

私道持分を保有するメリットは、道路を使用する権利があることです。道路を所有し使用する権利があれば、土地上の建物を建て替えやすいなどのメリットもあります。

また、私道持分がない場合と比べて資産価値が高いため、金融機関の担保評価も高くなります。そのため、売却するときの価格が高く、買主を見つけやすい点はメリットといえるでしょう。

私道持分を保有するデメリット

一方、私道持分を保有することにはデメリットもあります。

  • 私道の整備費を負担する必要がある
  • 固定資産税を負担する必要がある

私道の整備費を負担する必要がある

私道持分を保有することで、所有者は道路の維持管理の負担を負わなければなりません。道路に亀裂や陥没が生じた場合、所有者が共同で費用を負担し、修繕しなければなりません。また、維持管理の負担をめぐって他の共有者とトラブルになる可能性がある点はデメリットといえます。

固定資産税を負担する必要がある

私道は固定資産です。そのため、私道持分を保有することで、固定資産税・都市計画税(以下固定資産税)を負担しなければなりません。

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産等の所有者に対して課される税金で、4~6月頃に各市町村から納税通知書が送られてきます。

私道を共有している場合は、代表者に納税通知書が送られ、代表者が他の共有者からそれぞれの負担分を回収し、納付しなければなりません。

この場合、地方税法によって共有者全員が連帯して全額を納税する義務を負います。そのため、支払いを拒否する共有者がいた場合、他の共有者で立て替えなければならない点に注意が必要です。

ただし、私道持分があっても固定資産税が非課税になる場合があります。地方税法348条における「公共の用に供する道路には固定資産税を課することができない」という規定にあてはまる私道です。

その要件は以下のとおりです。

  • 専ら通行のために使用されている
  • 所有者による使用制限がない
  • 不特定多数の人が利用できる
  • 宅地を分離されている

ただし、非課税になるかは、各自治体で判断基準が異なりますので、気になる場合は所在地管轄の資産税課に確認してみましょう。

私道持分を保有していない場合に想定されるトラブル

私道持分を所有することはデメリットもあるため保有しなくてもよいと考えるかもしれません。ただ、私道持分を保有していない土地を所有する場合、トラブルやデメリットが生じる可能性もあります。

  • 通行承諾が得られない可能性がある
  • 通行料の支払いを求められる可能性がある
  • 私道を掘削する承諾が得られないため水道やガスの配管が通せない
  • 不動産としての価値が下がり住宅ローンが通らない可能性がある

通行承諾が得られない可能性がある

私道持分を有していないと、私道部分の通行承諾が得られない可能性があります。道路とはいえ私道は個人が所有する私有地ですので、通行するには所有者の承諾が必要です。

私道所有者は固定資産税などの負担も含め維持管理しなければならず、私道に面していながら維持管理の負担なく道路を使用することは認められにくくなります。

また、仮に土地を取得した時は承諾を得ていても、後に私道の所有者が変わり、通行の承諾が得られなくなる可能性もゼロではありません。

通行料の支払いを求められる可能性がある

私道は共有する所有者が費用の負担を含めて維持管理する代わりに、私道部分の使用権が認められるものです。そのため、私道に面していながら維持管理費を負担していないことから、通行料の支払いを求められることもあります。

通行料について法律上の定めはなく、通常、近隣で設定されている通行料や駐車場使用料などを参考に決められます。

私道を掘削する承諾が得られないため水道やガスの配管が通せない

道路から引き込まれる水道やガスの配管が、私道部分を通っている場合、私道を掘削する承諾得られず、通せない可能性があります。

例えば、長く住んでいる間には、水道管の老朽化による漏水が生じることもありますし、また、建物を増改築する際に、水道管を引き直したいという場合もあります。

私道持分がなければ私道所有者から承諾を得て、掘削工事を行うことが必要です。このとき、承諾が得られず工事ができないといったトラブルに発展する可能性があります。さらには、土地を購入したものの水道やガスなどのライフラインを引くことができず、家を建てられない可能性もあります。

改正民法(ライフラインの設置・利用に関する権利の明確化)

なお、こういった隣地関係を解消するために、2023年4月施行の改正民法では、次の規定が設けられました。

民法232条の2

 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

つまり、他人の土地に設備を設置しなければ電気やガス。水道などのライフラインが利用できない場合、あるいは、他人の所有する設備を使用しなければライフラインを利用できない場合に、設備を設置する権利、他人の設備を使用する権利が明確にされました。

この権利を行使するうえで、あらかじめその目的や場所、方法を土地所有者に通知したうえで、土地所有者の損害が最も少ない方法を選ばなければなりません。さらに、他の土地等に設備を設置するあるいは接続する場合は、償金、費用を支払う必要があります。

掘削工事の承諾を得られない場合の対応

掘削工事の承諾が得られない場合、まずは承諾を拒否している私道所有者と話し合うことが必要です。

当事者同士の協議で承諾が得られない場合、簡易裁判所へ民事調停を申し立てることもできます。当事者だけでなく、調停委員を入れて解決に向けた協議を行います。このとき、承諾料を支払うことで掘削工事の承諾を得られることもあります。

また、民事調停で合意に至らない場合、地方裁判所へ私道掘削に関する承諾請求の訴えを提起することも可能です。

裁判所の審判で請求が認められ掘削工事ができることはありますが、時間や費用がかかるうえ、近隣に住む私道の所有者との関係性は悪くなる可能性がある点には注意が必要です。

不動産としての価値が下がり住宅ローンが通らない可能性がある

私道持分を有しない土地は、不動産としての価値が下がり住宅ローンが通らない可能性があります。

住宅ローンを利用するとき、契約者の支払い能力だけではなく、物件の担保価値も審査対象です。この点、私道持分を有しない土地の場合、私道の通行や掘削許可が得られない可能性があるため物件の評価が下がり、住宅ローンの借入が難しい、もしくは借入金額が少なくなる可能性があります。

そのため、土地もしくは土地と建物を売却する場合にも、購入者が住宅ローンが利用できず、売却しにくくなることが考えられます。

ただし、私道持分を有していない場合でも、他の私道持分の所有者から通行承諾書や掘削承諾書を取得していれば、住宅ローンが利用できる場合もあります。金融機関によって審査基準は異なりますので評価は変わるでしょう。

私道の通行承諾が得られない場合の対処法

私道を通行するには、原則として所有者の許可が必要です。では私道の通行承諾が得られない場合、どのような対処法が考えられるのでしょうか。

  • 所有者と話し合う
  • 弁護士に相談する
  • 管轄の自治体に相談する

所有者と話し合う

まずは、私道所有者と交渉し、私道の通行を認めてもらうことです。私道所有者は近隣住民であることも多いため、のちのちの生活を考えても関係性が悪くなることはできるだけ避けなければなりません。

ただし、交渉がまとまらない場合もあります。そのときは、一定の承諾料の支払いを提示することが必要かもしれません。

私道を通行する必要性をしっかりと伝えたうえで当事者間の話し合いで解決しない場合、調停や訴訟に発展する可能性がある旨を伝えて交渉するとよいでしょう。

なお、当事者間でトラブルとなった場合でも、警察は民事不介入のため間に入ってもらうことはできません。当事者間で解決することが必要です。

弁護士に相談する

当事者間での話し合いが進まないあるいは関係性が悪化した場合、第三者である弁護士に依頼し交渉してもらう方法もあります。このとき依頼する弁護士は不動産関連の取扱いが多く、相隣関係に強い弁護士に依頼するようにしましょう。

弁護士が交渉しても解決が見えない場合、民事調停や訴訟での手続きで解決が考えられます。費用はかかりますが。弁護士に依頼すれば、訴訟準備まで全面的にサポートしてもらえるうえ、時間や手続きの負担を大きく軽減できるでしょう。

特に、共有に関する規定は、ここ数年で多くの改正がされており、新しい法律を適用することでこれまで解決が難しかった事例でも解決できる場合があるかもしれません。

管轄の自治体に相談する

私道が建築基準法に定めるみなし道路(同法42条2項)や位置指定道路(同法42条1項5号)である場合、通行を拒否されたとき自治体に相談し解決できることがあります。

これは、建築基準法の指定がある道路については、私道所有者の意思に関係なく、日常生活に必要な通行を妨害できないと判断されるケースがあるためです。過去の最高裁判例でも、位置指定道路の通行について、妨害排除請求が認められた事案があります。

そのため、管轄の自治体に相談すると、私道所有者に対して指導してもらえる可能性があります。相談先となる部署は自治体によって異なるため、確認したうえで相談しましょう。

私道持分がなくても、建物の再建築はできる

私道持分がない土地でも建物の再建築ができないわけではありません。

建築基準法43条では、建築物の敷地は道路に2m以上接していなければならないと定めています。ただし、道路について建築基準法上の道路であることは必要ですが、道路の所有権について定めているわけではありません。

そのため、道路の所有権を必ずしも持っている必要はなく、私道持分がない場合でも再建築は可能です。

ただし、私道持分がない土地を購入して建物を新築する場合、資金計画上住宅ローンを利用することも少なくありません。私道持分のない土地の評価は金融機関によって異なり、借入の可否や借入可能額も異なります。資金計画上問題ないかの確認は必要です。

私道持分の有無は公図や登記簿で調べられる

私道持分の有無が分からない場合、公図や登記簿で調べることができます。

まず、法務局で公図を取得し私道の地番を調べ、その後、その地番の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すれば、その私道(土地)の所有者や共有持分が分かります。

公図は簡単にいうと、土地の位置や形状を確定するための地図で法務局に備え付けられているものです。公図の分類には「地図(法第14条1項)」と「地図に準ずる図面」があります。

国が地籍調査を実施し、立ち合い、測量を行って作成された地図が「地図(法第14条1項)」であり高精度な図面です。不動産登記法14条に定める地図であることから14条地図といいます。一方、14条地図ができるまで備え付けられた地図が「地図に準ずる図面」です。

いずれかの図面で私道部分の地番を確認し、登記簿で所有者を確認するわけです。

登記簿謄本は、不動産の取引の安全のために所有者の情報やその不動産に設定されている権利が記載された書類です。法務局に備え付けられ、所有者でなくても誰でも閲覧できます。

なお、公図および登記簿謄本のいずれも法務局で取得できるほかインターネットで取得することも可能です。

私道持分がない不動産を売却する方法

ここでは私道持分がない土地を売却する方法について解説します。

  • 掘削や通行の許可を得てから売却する
  • 私道持分を取得して売却する
  • 訳あり不動産専門の買取業者に売却する

掘削や通行の許可を得てから売却する

私道持分がない土地でも、売却前に掘削や通行の承諾を私道所有者から承諾を得ておくことでスムーズに売却しやすくなります。

反対に、私道持分がなく、通行や掘削の承諾書がない不動産は、現実的には売却は困難です。承諾は口頭ではなく、書面で取得することが大切です。承諾書には、私道所有者が第三者へ私道部分を売却した場合でも、承諾書の効力が継続するなどの文言を入れておくことで、購入者は安心して購入することができます。

また、相互持合型で登記された通行地役権が設定されている場合、その土地を売買、相続した場合でも、通行地役権の負担が付いた土地として承継されます。私道の所有者が変わっても通行する権利を主張することが可能です。

通行承諾書や掘削承諾書の取得が難航する場合は、私道持分に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。なお、承諾書があっても私道持分がない不動産は融資対象とならない金融機関もありますので、買主の資金計画に影響する可能性がある点にも注意が必要です。

私道持分を売買する際のポイントは「通行承諾書」と「掘削承諾書」の有無

私道持分を売買する場合、私道に接する土地もあわせて売却することが一般的ですが、このときポイントとなるのは「通行承諾書」と「掘削承諾書ん」の有無です。

通行承諾書は、売買対象の土地の前面道路が私道となっている場合、私道持分の所有者に通行を認める旨を明記して署名・押印した書類です。

また、掘削承諾書は、ガスや水道などの工事のために私道の掘削を私道持分権者が認める旨を明記して署名押印した書類
です。

購入を検討する土地が私道に面している場合、売買契約時に「通行承諾書」と「掘削承諾書」があるかを確認しましょう。

また、私道持分を持つ土地を売却する場合、「通行承諾書」と「掘削承諾書」の有無によって、土地の価値は大きく変わり、売買の難易度に影響します。

これらの承諾書は、共同所有型の場合、私道を共有するすべての所有者から取得することが必要です。共有者の数が多いほど承諾書取得の手間は大きくなります。一方、共有者の持ち分ごとに分筆されている相互持合型の場合、通行や掘削が必要な箇所の所有者から取得する必要があります。

測量会社に依頼すれば代わりに承諾書を取得してもらうこともできますが、費用などの負担には注意が必要です。

なお、「通行承諾書」や「掘削承諾書」がない場合、一般の不動産会社に買取を依頼しても難しいケースが多いですが、私道持分を専門で取り扱っている買取業者であれば売却が可能です。

私道持分を取得して売却する

私道部分の共有者として権利を取得したうえで売却する方法です。共有者同士であれば、通行や掘削の承諾はお互いに得られやすく、売却しやすくなります。

また、私道部分を取得することで資産価値が上がるとともに、購入者の住宅ローン選びにもプラスに働きますので、買手が見つかりやすくなるでしょう。

私道持分の取得方法

私道持分を取得する方法は、「共同所有型」と「相互持合型」で異なります。

私道全体が共有名義となっている「共同所有型」では、持分一部移転登記によって私道持分の一部を譲渡してもらう方法になります。持分一部移転登記は、共有者が所有する持分の一部だけを売買あるいは贈与する場合にとる手続きです。

一方、私道を分筆して持ち合う「相互持合型」では、単独所有している土地をさらに分筆して譲渡してもらいます。分筆して譲渡するには、土地家屋調査士に依頼し、私道を分筆してくれる売主と、対象部分の私道に隣接する所有者に立ち会ってもらい境界確定測量が必要です。

訳あり不動産専門の買取業者に売却する

私道の承諾書を取得したり、私道持分を取得する手間や時間をかけずに売却したい場合、訳あり不動産専門の買取業者に売却することも考えられます。

訳あり不動産専門の買取業者であれば、私道持分のない不動産でも相場に近い価格で買取してもらえる場合もあります。また、仲介と異なり業者が直接買取をおこなうため、現金化までのスピードが早いことが特徴です。

まとめ

私道に接している不動産を所有している場合、私道持分の権利関係をしっかりと把握しておくことが大切です。私道持分の有無は、法務局に備え付けられている公図で地番を調べ、登記事項証明書を取得することで確認できます。

私道持分がある場合、売買の際にポイントとなるのは通行承諾書と掘削承諾書です。承諾書の有無によって、売却金額や売買の難易度が大きく変わる点を踏まえておくことが必要です。

また、私道持分がない場合でも、再建築は可能ですが売却は難しくなります。そのため、通行承諾書と掘削承諾書を取得するほか、私道持分を取得することがポイントになります。

ただし、あくまでも交渉となりますので、必ず取得できるわけではありません。話し合いでの解決が難しい場合は私道持分に詳しい弁護士に相談、依頼することも検討しましょう。

また、どうしても売却が難しい場合は、私道持分専門の買取業者を活用する方法があります。是非参考にしてください。

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