共有名義不動産は建て替えや取り壊しできる?注意点や流れ、費用負担を解説

共有名義不動産は建て替えや取り壊しできる?注意点や流れ、費用負担を解説

建物の老朽化に伴うものや、再利用目的などさまざまな理由で不動産を取り壊し・建て替えする場合がありますが、共有名義不動産の場合は単独所有と異なり注意するべきポイントがあります。

共有名義不動産では、取り壊しや建て替えをする際は基本的に共有者全員の同意が必要です。共有者から同意を得られないからといって独断で取り壊しを行うと、最悪の場合損害賠償を請求される恐れがあるため注意しましょう。ただし、建物が倒壊する危険性がある場合はその限りではありません。また、共有者の同意があっても住宅ローン返済中の場合は、金融機関の許可が必要です。

共有不動産の取り壊しと建て替えは、共有者から同意を得るための協議が長引く可能性や、固定資産税決定タイミング、登記の期限などを考慮する必要があります。

また、取り壊しや建て替えにかかる費用の負担は、一般的には共有持分割合に応じて決まります。取り壊し及び建て替えには、以下の費用が必要なため費用を準備しておきましょう。

  • 住宅の取り壊し費用相場:120~320万円程度
  • 住宅の建て替え費用相場:3,500万円程度

共有者全員から同意を得られない場合は、共有状態の解消を検討しましょう。持分を買い取って自身の単独所有にするのが理想的ですが、協議がスムーズに進まない可能性もあります。共有物分割請求訴訟を申し立てるのも1つの方法ですが、共有状態を解消する方法として自分の持分を売却するのもおすすめです。持分の売却は、持分専門の買取業者へ相談しましょう。

本記事では共有名義不動産の取り壊しや建て替えの流れなども解説するため、取り壊し・建て替えを考えている人はぜひ本記事を参考にしてください。

目次

共有名義不動産の建て替えや取り壊しが可能な条件

共有名義の不動産でも、以下に挙げる一定の条件を満たせば建て替えや取り壊しは可能です。

  • 共有者全員の同意がある
  • 住宅ローンが完済しているか、建て替え・取り壊しの許可を金融機関から得ている
  • 建物が倒壊する危険性がある

それぞれの条件について詳しく解説します。

共有者全員の同意がある

共有名義不動産については持分所有者が単独でできることと、共有者全員の同意を得ないとできないことなどが民法で定められています。

同意の有無 行為 内容
共有者全員の同意が必要 変更行為 ・増改築を伴う大規模なリフォーム
・建物の解体
・建物全体の売却 など
共有者の過半数の同意が必要 管理行為 ・短期間の賃貸利用
・資産価値を高めるためのリフォーム など
同意が不要 保存・使用行為 ・現状維持目的の修繕やリフォーム
・共有不動産の使用
・共有持分のみの売却 など

共有不動産の建て替え及び取り壊しは、上記の内の「変更行為」にあたります。そのため、民法上は共有者全員の同意があれば可能です

(共有物の変更)
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
(引用元:e-Gov法令検索「民法 第二百五十一条」)

たとえば、不動産を3人で共有していて、その内1人が建て替えや取り壊しを検討している場合は残りの2人の同意を得なければなりません。

住宅ローンが完済しているか、建て替え・取り壊しの許可を金融機関から得ている

共有者全員の同意があっても、住宅ローン返済中の場合は注意が必要です。住宅ローンを利用する際は、金融機関が建物に対して抵当権などの担保権を設定するのが一般的です。担保となっている建物を取り壊すと、担保としての価値が損なわれることになり、金融機関から住宅ローン契約違反とみなされる恐れがあります。そのため、共有不動産の建て替えや取り壊しは基本的にはローンを完済してから行いましょう。

住宅ローン返済中に建物の取り壊しや建て替えを行いたい場合は、金融機関から事前に承諾を得ないといけません。承諾なしに取り壊しや建て替えを実行すると、契約違反として「期限の利益(一定の期日が来るまでの間、返済をしなくても良い利益)」を損失し、ローンの一括返済を求められる場合があるため注意しましょう。もしローンの一括返済を求められると、まとまった金額が必要になります。資金力に不安がある場合は住宅ローンの借り換えの検討も視野にいれておく必要があります。

建物が倒壊する危険性がある

老朽化し倒壊する恐れがある建物を解体する場合は不動産の「保存行為」と判断されるため、共有者の同意がなくても取り壊しが可能です。建物が倒壊して隣人などに損害を与えると、損害賠償請求される恐れがあるため早急に解体しなくてはいけません。損害賠償責任は倒壊した不動産の所有者が負い、場合によっては億を超える賠償金額になることもあります。

なお、「単に家が古くなって資産価値がなくなった」「もう仕様することはない」といった理由では、同意なく取り壊す理由には不十分です。

倒壊の危険がある場合、いくら単独での解体が可能とはいえ、共有者に無断で取り壊してしまうとトラブルになる恐れがあります。老朽化した建物を取り壊したい場合は、事前に共有者へ解体する旨を伝えておく方が良いでしょう。

共有不動産の建て替えや取り壊しをする際の注意点

共有不動産の建て替えや取り壊しには、いくつかの注意点があります。知らずに実行してしまうとさまざまなトラブルに発展する恐れがあるため注意しましょう。具体的には、以下の点に注意する必要があります。

  • 建て替えや取り壊しの協議は長引く可能性がある
  • 共有者の同意を得ず建て替えや取り壊しをすると損害賠償請求や罪に問われかねない
  • 共有不動産が未登記でも同意なく取り壊しはできない
  • 固定資産税額が決定するタイミングを把握して建物を取り壊さないと減税措置が適用されない
  • 取り壊したら1ヶ月以内に建物滅失登記を法務局へ申請する必要がある

それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。

建て替えや取り壊しの協議は長引く可能性がある

前述した通り、建て替えや取り壊しには共有者の同意が必要ですが、共有者が複数いる場合には意見が割れて話し合いが長期化する可能性があります。「いつまでに解体を済ませたい」など期日がある場合は、余裕あるスケジュールで協議を始めましょう。

また、解体や建て替えにかかる費用の概算があると話し合いがスムーズに進む場合があります。事前に解体工事業者に見積を作成してもらっておくのがおすすめです。

共有者の同意を得ず建て替えや取り壊しをすると損害賠償請求や罪に問われかねない

他の共有者の同意が得られないからといって、建て替えや取り壊しを強硬すると罪に問われる可能性があります。たとえば他の共有者に対する損害賠償を請求されたり、場合によっては「刑法第二百六十条」に則って建造物損壊罪に該当することもあります。

(建造物等損壊及び同致死傷)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(引用元:e-Gov法令検索「刑法 二百六十条」)

必ず、共有者全員の同意を得てから建て替えや取り壊しを行いましょう。

共有不動産が未登記でも同意なく取り壊しはできない

不動産を取得したら1ヶ月以内に登記しないといけませんが、まれに登記がされておらず所有者が誰かわからない状態の「未登記建物」が存在します。共有している土地にこの未登記建物が建っている場合、「誰のものでもないから」と判断して取り壊してはいけません。建物が建っているということは、未登記であっても必ず誰かに所有権があります。もし誰のものでもなければ、最終的には国の所有物となります。

未登記の建物がある場合は、まずは所有者を調べてから適切な方法で解体を進める必要があります。未登記物件にも固定資産税は課せられているため、固定資産税納税通知書を確認するか、自治体の資産税課などで名寄帳を取って所有者を確認しましょう。また、後述するように通常は取り壊し後「建物滅失登記」をする必要がありますが、未登記建物の場合は自治体へ「家屋の滅失届」を提出します。

固定資産税額が決定するタイミングを把握して建物を取り壊さないと減税措置が適用されない

固定資産税額や都市計画税額が決定する1月1日時点で、所有する土地に人が住むための建物が建っている場合は、「住宅用地の特例」という減税措置が適用されます。言い換えると、1月1日に建物が建っていない場合は特例が受けられないことになります。そのため、もし12月31日に取り壊す予定になっている場合は、1日延ばして1月1日にすると税額の決定タイミングに建物が建っている状態となり減税措置の対象となります。老朽化の伴うものなど、急いで取り壊さないといけない事情がなければ1月1日には建物が建っている状態にしておきましょう。

また、住宅用地の特例には「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2種類があり、それぞれ固定資産税と都市計画税の減額率が異なります。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地
(200㎡以下の部分)
評価額の1/6に減税 評価額の1/3に減税
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
評価額の1/3に減税 評価額の2/3に減税

たとえば敷地面積が300㎡の戸建住宅の場合、そのうち200㎡が「小規模住宅用地」、残りの100㎡が「一般住宅用地」として特例が適用されます。つまり、土地に住宅が建っているだけで減税効果があるのです。特例の減額率は大きいため取り壊しや建て替えを検討する場合は、固定資産税額の決定タイミングを考えてスケジュールを組みましょう。
固定資産税を下げたい!軽減措置を活用した節税方法を解説|イエコン

取り壊したら1ヶ月以内に建物滅失登記を法務局へ申請する必要がある

建物を取り壊したら、1カ月以内に「建物滅失登記」を法務局へ申請しましょう。申請を怠ると、10万円以下の過料が課せられます。様式と記載例は法務局のHPからダウンロード可能です。
不動産登記の申請書様式について|法務局

登記の内、所有権移転登記などは関係者全員が共同して行わなければなりませんが、建物滅失登記は共有者の内1人が単独で申請できます。

共有名義不動産の建て替え・取り壊しの流れ

共有不動産の建て替えや取り壊しは、具体的にはどのような流れで行うのが良いのでしょうか。

  1. 共有名義人全員から建て替え・取り壊しの同意を得る
  2. 共有名義不動産を取り壊して更地にする
  3. 更地に新しい共有名義不動産を建て替える
  4. 完成後1ヶ月以内に登記手続きを行う

取り壊し及び建て替えは、上記のような流れで行うことになります。ただし、同意を得るにも共有者が亡くなっている場合や音信不通など、さまざまなケースがあるため注意が必要です。

共有名義人全員から建て替え・取り壊しの同意を得る

共有名義不動産の建て替えや取り壊しが可能な条件」で説明した通り、共有不動産の建て替えや取り壊しには共有者全員の同意が必要です。ただし、事情があって共有者と連絡が取れないケースも存在します。

  • 共有者が亡くなっている場合は相続人から同意を得る
  • 共有者が行方不明で音信不通の場合は不在者財産管理人から同意を得る
  • 共有者が認知症の場合は成年後見制度を利用する

上記のケースでは、名義人全員からすぐに同意を得ることが難しいと考えられます。では、どのように対応すればいいのかをそれぞれのケース別に解説します。

共有者が亡くなっている場合は相続人から同意を得る

共有者が亡くなっている場合、持分は相続人に引き継がれています。そのため、亡くなった共有者の相続人(=新たな共有者)から同意を得なくてはなりません。共有持分が誰に相続されているかを調べるには、不動産の「全部事項証明書」で確認しましょう。全部事項証明書は法務局、またはオンラインで取得できます。

共有者が行方不明で音信不通の場合は不在者財産管理人から同意を得る

共有者が行方不明で連絡が取れない場合は、「不在者財産管理人」を選任する必要があります。不在者財産管理人は、不在者に代わって財産の管理や保存、また財産分割や不動産の売却などを行う人です。共有不動産の建て替えや取り壊しに関して行方不明の共有者から同意を得たい場合、この不在者財産管理人から同意を得ることになります。

不在者財産管理人の選任は、家庭裁判所が行います。ただし、不在者財産管理人選任の申し立てには、不在者の戸籍謄本や不在の事実を証明する資料など多くの書類が必要です。準備に時間がかかるだけでなく、申し立てから選任までも2~3ヶ月かかるのが一般的なので、共有者が行方不明とわかったらなるべく早く行動しましょう。

共有者が認知症の場合は成年後見制度を利用する

共有者が認知症になり、意思決定能力を失うと、建て替えや取り壊しに関する同意を得られなくなります。その場合は、共有者の成年後見人から代わりに同意を得ます。成年後見人とは、認知症や精神障害などの理由によって判断能力が低下した人に代わって、財産の管理や法律行為を行う人です。成年後見人には「法定後見」と「任意後見」があります。

  • 法定後見:すでに判断能力が低下している人に対し、家庭裁判所が選任する
  • 任意後見:判断能力が残っている内に、本人の意思によって後見人を決めておく

任意後見によって後見人が決まっている人は、その後見人と連絡を取り同意を得ましょう。法定後見を利用する際は家庭裁判所へ申し立てを行いますが、手間と時間がかかるため、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。

また、共有者に高齢者がいる場合、親族間売買などによって認知症になる前に共有持分の所有権を移動させておくのも対策として有効です。
成年後見人による不動産の売却方法を解説!居住用・非居住用のケース別で紹介|イエコン

共有名義不動産を取り壊して更地にする

共有者全員の同意を得られたら、次に不動産を取り壊して更地にします。不動産の取り壊しは、解体業の免許を持つ業者に依頼しなければなりません。ただし、悪質な解体業者に依頼するとトラブルに巻き込まれる恐れがあるため、業者選びは慎重に行いましょう。具体的なトラブルとして、不当な追加工事で予算を大幅に超える、無許可での解体、近隣への配慮の欠如、保険の未加入、廃棄物の不法投棄などがあります。これらのトラブルを回避するためには、適切な解体業者選びが重要です。

また、解体を進める前には前述した「住宅ローンの残債がないか」「固定資産税の決定タイミング」を確認しておきましょう。解体には当然費用がかかります。取り壊しにかかる費用の詳細は後述します。

更地に新しい共有名義不動産を建て替える

建て替えの際は、更地にした土地に新たに新しい建物を建てます。建て替えは建設業の許可を持つ建設業者へ依頼しましょう。建物を建て替える場合は、一般的に以下のようなスケジュールで進めていきます。業者選びから竣工(新築工事完了)までは早くても8ヶ月ほどかかるため、各工程にかかる期間と流れを把握しておくとスムーズです。

  1. 予算やプランを業者と話し合い比較・検討する(着工の約6ヶ月前)
  2. 建て替え業者を決める(着工の約5ヶ月前)
  3. 建て替え業者を契約する(着工の約4ヶ月前)
  4. プラン決定、見積もりの提出(着工の約2ヶ月前)
  5. 各種申請・仮住まいへ引っ越し(着工の約1ヶ月前)
  6. 既存の共有物件の取り壊し(着工)
  7. 基礎工事~棟上げ(着工から約1ヶ月後)
  8. 竣工(着工から約2~5ヶ月後)

建て替えにかかる費用相場も、解体費用と共に後述します。

完成後1ヶ月以内に登記手続きを行う

建物を新築した際は「表題登記」を申請しますが、完成後1ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。申請を怠ると10万円以下の過料が課せられるため注意しましょう。

(建物の表題登記の申請)
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
(引用元:e-Gov法令検索「不動産登記法 第四十七条」)

(過料)
第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
(引用元:e-Gov法令検索「不動産登記法 第百六十四条」)

表題登記とは、建物の物理的な状況を記録するものです。建物の所在地や構造、所有者の住所・氏名などが記録されます。表題登記はまず土地家屋調査士が法務局閲覧調査・建物現地調査・事前仮測量・登記申請書類・図面作成を行い、それらの資料をもって司法書士が申請を行います。土地家屋調査士や司法書士への依頼は建築業者が行うこともあるので、業者へ確認しましょう。

なお、共有物件の建て替えの際、登記される共有持分割合は新築した建物の費用負担割合に応じて登記されます。その際に、建て替え費用の負担割合と登記された持分割合が異なると、差額分に「贈与税」が発生する可能性があるので注意しましょう。

たとえば、親子で所有する共有不動産の建て替え費用3,500万円を父親が全額負担した場合、本来なら新しく建った建物は100%父親の所有となります。しかし登記の際に、父と子の持分を50%ずつにすると父から子へ50%分を贈与したとみなされるのです。

建築費用の負担額 3,500万円 0円
登記された共有持分 50% 50%
費用の負担額と共有持分の差額 -1,750万円 +1,750万円

上記のケースでは、子が費用負担していない1,750万円を父から子へ贈与したとみなされ、1,750万円に対して贈与税が課せられます。贈与税は受取人(この場合は子)に課せられます。たとえ夫婦や親子といった家族間の贈与であっても、納税の義務がある点に注意が必要です

建物の建て替えや取り壊し費用の相場

共有不動産の建て替えや取り壊しには、当然費用がかかります。一般的な費用相場は以下の通りです。

  • 住宅の取り壊し費用:120~320万円程度
  • 住宅の取り壊し費用:120~320万円程度

それぞれ建物の構造や面積によって価格は変動しますが、決して安くはない金額が必要です。相場をしっかりと把握し、費用を準備しておきましょう。

平均的な住宅の取り壊しにかかる費用は120〜320万円程度

取り壊しにかかる費用は、建物の構造によって価格が変動します。たとえば木造よりも軽量鉄骨造の方が、軽量鉄骨造よりも鉄筋コンクリート造の方が解体費用は高くなります。一般的な30~40坪の住宅の解体にかかる費用の、構造別相場は以下の通りです。

構造 解体費用(坪単価) 解体費用(30坪) 解体費用(40坪)
木造 4~5万円 120~150万円 160~200万円
軽量鉄骨造 6~7万円 180~210万円 240~280万円
鉄筋コンクリート造 7~8万円 210~240万円 280~320万円

つまり、住宅の解体にかかる費用相場は120~320万円程度です。ちなみに、自治体によっては空き家の解体費用や建て替え費用の補助制度がある場合があります。共有不動産を取り壊す前に、一度建物のある自治体へ相談してみるのがおすすめです。

平均的な住宅の建て替えにかかる費用は3,500万円程度

建物の建築費は、延床面積によって金額が変わります。国土交通省が調査した首都圏の建築費用データを見てみましょう。

調査年(年度) 2018 2019 2020 2021 2022
建築費(万円) 3,558 3,301 3,510 4,077 5,050
延床面積(㎡) 116.9 117.2 113.1 125.0 143.4
建築費単価(万円) 30.4 28.2 31.0 32.6 35.2

上記のデータから、2018~2022年の5年間における新築注文住宅の延床面積の平均は123.12㎡、約37.2坪です。また建築費平均は3,899万円、坪単価は104.78万円となります。つまり、平均的な35坪の注文住宅を立てる場合、仮に坪単価を100万円とすると建築費用は3,500万円程度必要だとわかります。もちろん使用する建材や設備、仕様によっても金額は変動しますが、平均的な住宅を建築する場合は一般的に3,500万円程度の費用が必要です。

建て替えや取り壊し費用の負担は共有持分割合に応じて決まる

法的には共有不動産の取り壊しや建て替えにかかる費用負担の取り決めがないため、1人が全額負担するのも共有者全員で分けて負担するのも自由です。ただし、民法上では共有物の管理にかかる費用は、持分割合に応じて費用を負担するべきと定められています。

(共有物に関する負担)
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
(引用元:e-Gov法令検索「民法 第二百五十三条」)

共有不動産の取り壊し・建て替えは共有物の管理行為にあたるため、民法に照らし合わせると共有者がそれぞれの持分割合に応じて費用を負担するのが一般的です。

また、登記簿謄本に記録される持分割合は、建物を取得するのにかかった費用の内「どのくらいの割合を負担したか」によって決まります。
・共有持分の割合=不動産取得費の総額 ÷ 不動産取得時に負担した金額(借入金も含む)

なお、不動産の取得費には下記が含まれます。

  • 建物の購入代金(建築費用)
  • 税金(不動産取得税、登録免許税、印紙税など)
  • 測量費
  • 整地費や建物の解体費用
  • 設備費
  • 地盤改良費
  • 借入金利子

共有者全員から同意が得られない場合に共有名義不動産を単独所有にする方法

共有者全員から同意が得られず不動産の建て替えや取り壊しができない場合には、共有名義の不動産を単独名義にすることも検討しましょう。単独名義なら個人の判断で自由に取り壊し・建て替えができます。共有不動産を単独所有にするには、以下の2つの方法があります。

  • 他の共有者から持分を買い取る
  • 共有物分割請求を行う

それぞれのケースについて詳しく解説します。

他の共有者から持分を買い取る

他の共有者からそれぞれの持分を全て買い取ると、単独所有にできます。この方法を「全面的価格賠償」といいます。持分を全て買い取るのである程度まとまった資金が必要ですが、建物全体を1人で所有できるようになるため自由に取り壊しや建て替えが可能です。

ただし、この方法は他の共有者が買取に応じてくれるのが前提条件です。買取に関しての話し合いが長引く可能性もあるため、必ずしもスムーズに話が進むとは限りません。金銭面や今後の管理が楽になるなど、持分を売却するメリットを伝えて交渉しましょう。

共有物分割請求を行う

共有状態を解消するには、「共有物分割請求」を行うのも1つの方法です。共有物分割請求を行えば、以下の3つの内いずれかの方法で共有状態を解消することになります。

  • 現物分割:共有名義の不動産を物理的に分割する
  • 代償分割:共有者間で持分を売買する
  • 換価分割:共有名義不動産を売却し、売却益を共有者で持分割合に応じて分割する

前述した「全面的価格賠償」は「代償分割」にあたります。建物がある不動産の場合、現物分割は物理的にできないケースがほとんどです。また、換価分割を行うと不動産そのものを手放すことになります。そのため共有名義不動産を取り壊し、建て替えたい場合は代償分割(全面的価格賠償)を求めましょう。

共有物分割請求は、他の共有者が提案に同意してくれるかどうかで以下の段階に分けられます。

  1. 共有物分割協議:共有者のみで話し合いをする
  2. 共有物分割調停:調停委員を交えて話し合いをする
  3. 共有物分割請求訴訟:裁判によって共有物の分割方法を決定してもらう

共有者同士の協議で話がまとまればそれに越したことはありませんが、どうしても提案に応じてくれない場合は訴訟へ発展する可能性もあります。裁判では必ずしも自身の望む分割方法になるわけではないため、なるべくなら話し合いで解決するのがおすすめです。

もし単独所有を諦め、共有状態の解消を目的とするのなら以下の方法があります。

  • 不動産全体を売却する
  • 自分の持分を放棄する
  • 自分の持分を売却する

ただし、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。また、一般的な不動産会社は持分のみの買い取りに応じてくれないことがほとんどです。共有持分を売却する際は、専門の買取業者へ依頼しましょう。

他の共有者に建て替えや取り壊しの同意が得られない場合は弁護士に相談しよう

共有者から取り壊しや建て替えの同意が得られない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。共有物分割請求では、それぞれの利害や感情がぶつかるため話し合いが長期化することがあります。話がまとまらず、裁判に発展することも珍しくないでしょう。不動産トラブルに強い弁護士なら、法的知識や経験、過去の判例などから依頼主の望みに沿った方法へ解決を導いてくれるかも知れません。他の共有者との交渉を代行してくれるため、ストレスを軽減できるのも弁護士に相談するメリットです。また、裁判になった際も「全面的価格賠償」を勝ち取ってくれる可能性が高まるでしょう。

まとめ

共有不動産の取り壊しや建て替えは、基本的に他の共有者全員の同意がないと行えません。同意を得ずに取り壊しや建て替えを強行すると、罪に問われる可能性があるため注意しましょう。また、取り壊しの際は減税措置が受けられるタイミングで実行するのも重要です。

共有者全員から同意が得られない場合は、他の共有者の持分を買い取るか、共有物分割請求を行うことになります。しかし、持分の買取や分割請求が必ずしもスムーズに進むとは限りません。最終的に訴訟に発展することもあるため、話し合いで同意が得られなければ不動産トラブルに強い弁護士へ相談するのがおすすめです。しかしそれでも自身の望む結果にならないかもしれません。その場合は、共有状態を解消するため、自身の持分を共有持分専門の買取業者へ売却することも検討しましょう。

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