私道に接する土地は売れない?理由や対処法、売却時のトラブルを解説

私道に接する土地の売却を検討している方のなかには、「売れないのではないか」「相場より大きく安くなるのではないか」と不安に感じている方もいるでしょう。

実際には、私道に接する土地が必ず売れないわけではありません。私道の所有形態や持分の有無、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの有無、再建築の可否などによって、売却の難易度が変わるというのが実務上の見方です。

一般的に、私道に接する土地が売れにくいと言われる理由は次のとおりです。

  • 前面道路の扱いによっては再建築できないことがある
  • 私道の通行に関する権利関係や費用負担が問題になることがある
  • 買主が住宅ローンを組めない可能性がある
  • 掘削工事にあたって所有者との調整が必要になることがある
  • 共有者との調整や維持管理が負担になることがある
  • 境界や登記内容が不明確なことがある

ただし、これらの理由がすべての土地に当てはまるわけではなく、私道の権利関係や利用条件が整理されていれば売却できる可能性はあります。

たとえば、私道を単独所有している場合や、私道持分があり、通行・掘削に関する承諾書、取り決め、管理ルールが整理されている場合は、買主の不安を抑えやすくなります。

一方で、私道の所有権や持分がない、通行・掘削に関する承諾書や取り決めが確認できない、境界や登記内容に不明点があるといったケースでは、買主が慎重になりやすく、売却が長期化することもあります。

実務上は「私道だから売れない」のではなく、「買主が不安に感じる条件をどこまで整理できているか」が重要です。接道条件や私道持分、通行・掘削に関する承諾書や取り決め、境界や登記内容などを確認し、必要に応じて条件を整えたり、価格や売却方法を見直したりすることで、売却しやすくなります。

この記事では、私道に接する土地が売れにくい理由や、売却しやすい・売却しにくいケース、売却するための対処法、注意したいトラブルについて、権利関係が複雑な不動産を査定してきた弊社の実務情報もまじえながら解説します。

目次

私道に接する土地は条件次第で売却の難易度が変わる

道路には、公道と私道があります。公道とは、道路法上の道路など、行政が管理する道路を指すのが一般的です。多くの場合は国や自治体が所有・管理しており、通常は一般の人が通行できます。

一方、私道は個人や法人などが所有する道路です。ただし、私道であっても建築基準法上の道路として扱われるものがあり、通行や工事の可否、再建築の可否は、所有者だけでなく道路種別や権利関係によって判断されます。

そのため、私道の所有権や持分がない土地は、通行や掘削に関する利用根拠を確認できるかが重要になります。筆者の感覚としては、特に通行権限や掘削に関する取り決めも確認できない土地については、買主から敬遠されやすい印象があります。

私道に接する土地が売れるか、売れないかは、主に次の要素によって変わります。

  • 私道の所有形態
  • 私道の利用条件や状態
  • 私道の持分割合

実際に弊社が私道に接する土地の買取を行う際も「私道の所有権を持っているか」「私道を通行できる根拠を確認できるか」「掘削に関する承諾書や取り決めを確認できるか」「再建築できる道路に接しているか」を査定の判断材料にしています。

私道の所有形態

私道に接する土地は、私道の所有形態によって売却難易度が大きく変わります。

  • 私道を単独所有している:比較的売却しやすい
  • 共有私道の持分を所有している:条件次第で売却できる
  • 私道の所有権・持分がなく、通行や掘削に関する利用根拠も確認しにくい:売却しにくい

たとえば、私道を単独所有している場合は、共有者との同意調整が不要になりやすく、共有私道よりも売却しやすい傾向があります。

ただし、建築基準法上の道路に該当する場合や、近隣住民の通行、埋設管の利用状況などによっては、通行・掘削・管理に一定の制約が残ることもあります。

また、近隣住民と私道を共有している「共有私道」の場合でも、私道持分があり、通行や掘削に関する取り決めが明確であれば、買主が権利関係を判断しやすくなります。

一方で、持分があっても他の共有者と連絡が取れない、掘削に関する承諾書や取り決めを整理しにくいといった事情がある場合は、買主が購入後の利用リスクを判断しづらくなります。

なお、他人が所有する私道に接しており、自分に私道持分がない場合は、通行や掘削に関する利用根拠を確認しておく必要があります。

通行や上下水道・ガス管などの掘削工事では、私道所有者との取り決めや調整が問題になりやすいためです。改正民法により、一定の要件を満たせばライフライン設備の設置・使用が認められる余地はありますが、自由に掘削できるわけではありません。

実務上も、通行・掘削に関する利用根拠や取り決めが不明確なままだと、買主や金融機関に不安視され、売却条件や住宅ローン審査に影響することがあります。

弊社に寄せられる私道に接する土地の買取相談でも、私道持分がない、または通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できないケースは一定数あります。その多くが「仲介業者に断られた」「買主が見つからない」といった理由でご相談に至っています。

ポイント

【共有私道とは?】
共有私道とは、複数人が利用・所有に関わっている私道のことです。主に「共同所有型」と「相互持合型」の2種類があります。

  • 共同所有型:1本の私道を複数人で共有している状態
  • 相互持合型:私道部分を区画ごとに分け、それぞれの所有者が持ち合っている状態

共同所有型は、分譲地内の道路を宅地の所有者全員で共有しているケースなどが該当します。各共有者は私道全体に対する権利を持つため、通常の通行であれば、基本的には他の共有者から個別に許可を得ずに利用できるケースが多いです。

ただし、長時間の駐車や掘削工事、舗装・設備の変更など、他の共有者の利用に影響する行為については、別途同意や調整が必要になることがあります。

一方、相互持合型は、見た目は1本の私道でも、登記上は区画ごとに所有者が分かれている状態です。たとえば、各宅地の前の私道部分をそれぞれの宅地所有者が単独で所有し、それらがつながって1本の道路として使われているケースがあります。

この場合、自分が所有していない部分を通行するには、分譲時の取り決め、通行承諾書、通行地役権など、通行できる根拠を確認する必要があります。また、水道管・ガス管などの工事で私道を掘削する場合は、所有者との取り決めや、民法に基づくライフライン設備の設置・使用に関する権利が問題になることがあります。

そのため、私道に接する土地を売却する際は、見た目だけで判断せず、登記上の所有関係まで確認することが重要です。

私道の利用条件や状態

私道の利用条件や状態も、売却難易度を左右します。弊社が私道に接する土地を査定する際も、土地の広さや立地だけでなく、次のような点を確認します。

確認項目 売却への影響
通行に関する書面・取り決め 通行承諾書や既存の取り決めを確認できない場合、私道をどの範囲で通行できるのかを買主や金融機関に説明しづらくなり、購入後のトラブルを懸念されやすい
掘削に関する書面・取り決め 掘削承諾書や既存の取り決めを確認できない場合、上下水道・ガス管などの工事をめぐって所有者との調整が必要になり、住宅利用やローン審査に影響することがある
接道義務 建築基準法上の道路に2m以上接していない場合、再建築が認められない可能性があり、買主が限定されやすい
所有者・共有者の明確さ 相続未登記などで所有者が分からないと、承諾書や取り決めの確認、関係者との調整が進みにくい
境界の明確さ 私道と敷地、隣地との境界が曖昧だと、越境や利用範囲をめぐるトラブルにつながりやすく、買主側の不安要素となる
舗装状態・維持管理 舗装の傷みや排水不良があると、補修費用や管理負担を理由に買主から敬遠されやすい

なかでも、他人所有の私道に接している場合や、相互持合型の私道で他人が所有する部分を通行・掘削する必要がある場合は、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの有無が重要です。

実務では「現状は通行できているが、通行できる根拠や取り決めを書面で確認できない状態」のまま売却相談に至るケースは少なくありません。

このような場合、買主が購入後のトラブルを不安視したり、住宅ローン審査で確認を求められたりして、契約前の段階で売却交渉が進まなくなることがあります。

私道の持分割合

共有私道の場合、私道持分の有無だけでなく、持分割合も確認しておきましょう。

共同所有型の私道では、1本の私道を複数人で所有するため、それぞれの所有者に持分割合が設定されています。

分譲地などでは、各宅地所有者が均等に持分を持っているケースもありますが、相続や売買を経て持分割合が変わっているケースもあります。そのため、売却前には登記事項証明書で、自分に私道持分があるか、どの程度の持分を持っているかを確認しておくことが重要です。

持分割合は、私道を自由に使えるかどうかを直接決めるものではありません。ただし、管理費や修繕費の負担、共有者間の取り決め、売却時に買主へ説明すべき権利関係を確認するうえで重要な判断材料になります。

また、持分があっても、舗装の大規模な変更や設備工事など、行為の内容によっては他の共有者の同意や所定の手続きが必要になることがあります。

持分割合は、売却価格を大きく左右するというよりも、私道の権利関係や管理負担を説明するための確認項目として考え、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの有無、共有者との関係性、私道の利用状況なども含めて総合的に判断することが重要です。  

私道持分に関する詳細は以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

私道に接する土地が売れないと言われる理由

買主は、購入後に私道を問題なく使えるか、建て替えやライフライン工事に支障がないかを重視します。そのため、次のような不安要素があると、購入判断が慎重になり、売却が進みにくくなることがあります。

  • 前面道路の扱いによっては再建築できないことがある
  • 私道の通行に関する権利関係や費用負担が問題になることがある
  • 買主が住宅ローンを組めない可能性がある
  • 掘削工事にあたって所有者との調整が必要になることがある
  • 共有者との調整や維持管理が負担になることがある
  • 境界や登記内容が不明確なことがある

弊社の買取相談でも「最終的に共有私道がネックとなり、購入希望者が離れてしまった」「通行や掘削に関する承諾書や取り決めを整理できず、仲介での売却が進まなかった」といった声が寄せられます。

こうした相談内容からも、権利関係や通行・掘削に関する承諾書、取り決めが整理されていない私道付きの土地は、一般の仲介では買主の検討が進みにくくなる傾向があるといえます。

前面道路の扱いによっては再建築できないことがある

前面の私道が建築基準法上の道路として認められていない場合や、道路の幅・敷地との接し方に問題がある場合、いわゆる「再建築不可」の物件となり、売却難易度が大きく上がります。

建築基準法では、建物を新築・建て替えする際、原則として「敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していること」が求められます。

ただし、土地の形状や建物の用途・規模、自治体の条例によっては、2m以上接していても建築に制限がかかることがあります。また、建築基準法上の道路は、原則として幅員4m以上ですが、42条2項道路のように、一定の条件を満たせば幅員4m未満でも道路として扱われるケースがあります。

接道義務を満たしていない場合、原則として建築確認を受けられず、将来建て替えができない可能性があります。

なお、建築基準法43条2項の認定・許可によって例外的に建築が認められるケースもありますが、自治体の判断や敷地周辺の状況によって可否が分かれるため、事前に建築指導課などで確認する必要があります。

地震や火災で建物が使えなくなった場合でも、同じ場所に同じような建物を再建築できないおそれがあるため、買主は慎重になりやすいです。

私道であること自体は再建築不可の直接的な原因ではありませんが、私道の中には、見た目は道路として利用されていても、建築基準法上の道路として認められていないケースがあります。

弊社に寄せられる買取相談でも、「ずっと家が建っていたから問題ないと思っていたが、売却を検討して初めて、再建築できない土地だと分かった」というケースがあります。

再建築できない土地は、買主が限定されるだけでなく、査定価格にも影響しやすいです。そのため、売却を検討している場合は、土地に接する私道が建築基準法上の道路として認められているか、敷地が道路に2m以上接しているかを、自治体の建築指導課などで確認することが重要です。

ポイント

【再建築できない可能性がある私道の例】
見た目は道路として使われていても、建築基準法上の道路として認められない私道もあります。たとえば、次のようなケースです。

  • 未指定の私道:昔から通路として使われているが、建築基準法42条上の道路や位置指定道路などとして扱われていない
  • 幅員や指定状況に問題がある私道:道路幅が4m未満で、建築基準法42条2項道路に該当せず、位置指定道路・既存道路としての要件も満たしていない
  • 農道・里道:通行に使われていても、当然に建築基準法上の道路として扱われるわけではない。ただし、道路種別や指定状況、建築基準法43条2項の認定・許可の可否によって再建築の可否が変わるため、自治体の建築指導課などで確認が必要

このような私道に接している場合は、接道義務を満たさず、再建築できない可能性があります。

再建築できない理由や対処については、次の記事でも詳しく解説しています。

私道の通行に関する権利関係や費用負担が問題になることがある

私道の所有権や持分がない場合でも、通行地役権や通行承諾書、分譲時の取り決めなどによって通行できるケースはあります。

ただし、通行できる根拠が不明確な場合は、所有者との協議や通行料・管理費の負担が問題になることがあり、購入後の費用負担や利用条件を見通しづらい点が、買主に敬遠されやすい理由です。

また、相互持合型の私道でも、自分が所有していない部分を通行する場合は、他の所有者との間で通行条件が問題になるケースがあります。

通行できる根拠が書面で確認できない場合や、口頭の合意しかない場合は、将来的に通行条件をめぐって所有者とトラブルになるリスクがあります。買主にとっては「将来、所有者が変わった途端に通行を禁止されるのではないか」「車の出し入れで文句を言われるのではないか」といった不安要素になります。

弊社に寄せられる買取相談でも、近隣住民との関係悪化により、突然「車で通るなら通行料を払ってほしい」と求められたケースがあります。こうした通行条件や費用負担の不明確さは、一般の買主が敬遠しやすいポイントです。

買主が住宅ローンを組めない可能性がある

私道に接する土地の場合、買主が住宅ローンを組めず、売買のハードルが上がるケースがあります。

金融機関は融資の際、対象物件の担保価値を慎重に査定します。とくに前面道路が建築基準法上の道路として認められず、再建築不可となっている場合は、住宅ローンの利用が難しくなります。

また、再建築可能な土地であっても、私道の権利関係が不明確だったり、通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できなかったりすると、担保評価に影響し、融資を見送られることがあります。

弊社の査定実務でも、私道に接する土地を評価する際は、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの有無、再販時のリスクを重視して確認しています。そのため、条件が整理されていない場合は、査定額が下がりやすいのが実情です。

住宅ローンを利用できない物件は、現金で一括購入できる買主や専門業者などにターゲットが限られやすくなります。そのため、物件を気に入った買主がいても、住宅ローンの利用が見込めないと購入検討が止まり、結果として売却が進みにくくなるケースがあります。

実際に弊社へ寄せられる相談でも、「仲介で売りに出したものの、検討客の住宅ローン審査が私道の権利関係を理由に進まず、売却の見通しが立たなくなった」といった声が寄せられることがあります。

このように、私道に関する権利関係や通行・掘削に関する承諾書、取り決めが整理されていない場合、たとえ物件そのものが魅力的であっても、住宅ローン審査で慎重に見られ、結果として売却が難しくなることがあります。

掘削工事にあたって所有者との調整が必要になることがある

上下水道やガスの引き込み、配管の老朽化による補修工事などを行う際は、工事車両が私道を通行したり、配管を通すために私道を掘削したりすることがあります。

土地に接しているのが他人所有の私道の場合、上下水道・ガス管などの工事では、私道所有者との調整が必要になり、承諾書の有無や工事条件、費用負担が問題になるケースがあります。

相互持合型の私道であっても、自分が所有していない部分を工事車両が通行したり、掘削したりする場合は、他の所有者との調整が必要になることがあります。

もっとも、2023年4月施行の改正民法により、一定の要件を満たす場合には、ライフライン設備の設置・使用のために他人の土地を使用できる余地があります。そのため、掘削承諾書の有無だけで工事の可否が決まるわけではありません。

ただし、事前通知や損害が少ない方法の選択などが必要であり、自由に掘削できるわけではありません。実務上も、金融機関やインフラ事業者、買主から掘削承諾書や取り決めの内容を確認されることがあるため、売却時の判断材料になりやすいです。

掘削承諾書や取り決めの内容を確認できない場合、建物の新築や建て替え、水道管の交換、ガス工事などを行う際に、私道所有者との調整が必要になることがあります。

そのため、買主にとっては「将来、必要な工事がスムーズにできないのではないか」という不安要素となり、購入を見送られることがあります。

また、通行・掘削に関する合意が口頭のみで書面化されていない場合や、過去の取り決めの内容が曖昧な場合は、所有者の代替わりなどによって、将来的に条件が変わるリスクもあります。

実際、弊社の買取相談でも「相続で私道の所有者が代替わりし、承諾料をめぐって調整が難航した」といったケースがあります。

このように、掘削承諾書や取り決めの内容を確認できない場合、将来的な工事や設備利用に不安が残るため、買主が購入に慎重になり、結果として売却が難しくなることがあります。

共有者との調整や維持管理が負担になることがある

共同所有型の私道の場合、複数人で1つの私道を所有するため、維持管理について他の共有者と調整する必要があります。この仕組み自体が、買主にとって将来的な負担として敬遠される要因になります。

私道の舗装や排水設備の補修、固定資産税が課される場合の負担割合、清掃の頻度などは、共有者同士で協力して対応する必要があります。そのため、1人でも協力が得られないと管理が滞り、私道の状態が悪化することがあります。

実務上、とくに懸念されやすいのが共有者の高齢化や代替わりです。昔からの顔見知りであれば話が通じても、共有者が変わることで「うちは通らないから払わない」「聞いていない」と協力が得られなくなるケースがあります。

実際に弊社へ寄せられる買取相談でも、道路の補修費用を相談したところ「うちは車を持っていないから払わない」と言われた、というケースを伺ったことがあります。

このように、共有者との調整や維持管理の負担が大きい場合、買主が「購入後も他の共有者と調整し続けなければならないのではないか」と不安を感じ、結果として売却が難しくなることがあります。

私道持分や固定資産税のトラブルについては、次の記事も参考にしてみてください。

境界や登記内容が不明確なことがある

私道と宅地の境目がはっきりしていない、私道として使っている部分と登記上の土地の範囲が一致していない、といったケースもあります。

このような状態では「どこまでが自分の土地なのか」「どの範囲を通行・利用できるのか」が曖昧になるため、買主にとっては大きな不安要素になります。

とくに、隣地との境界が未確定のままでは、越境や利用範囲をめぐるトラブルにつながる可能性があり、購入を見送られる要因になりやすいです。

また、登記上の情報と現況が一致していない場合、権利関係の確認や修正に時間がかかり、売買手続きがスムーズに進まないケースもあります。

実務上も、境界確認や測量が必要になると、売却までに数ヵ月以上かかることもあり、買主が離れてしまう原因になることがあります。

弊社の買取相談でも、境界や登記内容が不明確なことを理由に「測量を求められたが費用や手間の問題で進められない」「境界が曖昧で購入希望者に敬遠された」といった話を伺うことがあります。

このように、境界や登記内容が整理されていない場合、買主が慎重になりやすく、結果として売却が難しくなることがあります。

私道に接する土地で売却しやすい・売却しにくいケース

私道に接する土地は、「私道だから売れない」と一概に決まるわけではありません。前面道路の扱いや私道持分の有無、通行・掘削に関する承諾書や取り決め、境界や登記内容の整理状況によって、買主が感じる不安の大きさや売却の進みやすさが変わります。

売却しやすいケース ・前面道路が建築基準法上の道路で、接道義務を満たしている場合
・私道を単独所有している、または共有持分を持っている場合
・通行や掘削に関する承諾書や取り決めが書面で整理されている場合
・境界や登記内容が明確で、権利関係が整理されている場合
・共有者との関係が良好で、管理ルールも明確な場合
・都心部・駅近など、立地や物件条件に需要がある場合
売却しにくいケース ・前面道路が建築基準法上の道路に該当せず、再建築できない場合
・私道が他人所有で持分がなく、利用条件が不明確な場合
・通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できない、または内容が不明確な場合
・相続未登記や境界不明など、権利関係に不安がある場合
・共有者との関係が悪い、または管理ルールが曖昧な場合
・地方部や交通アクセスが悪いエリアなど、買主の需要が限られやすい場合

実際、弊社が私道に接する土地を査定する際も、私道の所有権や持分の有無、通行・掘削に関する承諾書や取り決め、再建築の可否、境界や登記内容などを総合的に確認しています。

これらの条件が整理されている物件は、購入後の通行・建築・ライフライン工事に関するリスクを判断しやすく、買主や不動産会社が検討しやすくなります。

一方で、条件が不明確なままでは、再販時のリスクを見込む必要があるため、査定価格に影響することがあります。

通常の仲介で売却する場合も、買主や金融機関が確認するポイントは大きく変わらないため、事前に権利関係や通行・掘削に関する承諾書・取り決めを整理しておくことが重要です。

なお、土地の売れやすさは私道の条件だけで決まるわけではなく、立地や物件の状態も大きく影響します。実務でも、都心部や駅近など需要の高いエリアでは、多少の私道に関する制約があっても、立地の魅力を優先して購入を検討されるケースがあります。

一方で、地方部や交通アクセスが悪いエリアでは、もともとの需要が限られるため、私道に関する権利関係や通行・掘削に関する取り決めの不安が重なることで、売却のハードルがさらに上がる傾向があります。

私道に接する土地が売れない原因を見極めるチェックポイント

私道に接する土地は、「何となく売れにくい」のではなく、前面道路の扱いや私道の権利関係、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの確認状況など、売却の妨げになっている要素があるケースが多いです。

実務上は「ひとつの大きな問題」よりも、複数の不安要素が重なって買主の判断が慎重になるケースが多く見られます。

そのため、まずはどの条件が売却時のハードルになっているのかを整理することが重要です。 以下のチェックポイントをもとに、売却前に確認すべき点を整理しておきましょう。

チェックポイント 確認すべき理由・売却への影響
前面道路は建築基準法上の道路で、接道義務を満たしているか 前面道路の扱いや接道状況は、再建築の可否や住宅ローンの利用に関わる重要なポイントです。
建築基準法42条の道路に該当しない、または敷地が道路に2m以上接していない場合は、買主が限定されやすくなります。
私道の所有者と持分の有無はどうなっているか 私道が他人所有なのか、共有私道なのか、単独所有なのかによって、通行や掘削の自由度は変わります。とくに他人所有で持分がない場合は、将来的な利用トラブルを懸念されやすいです。
また、共有私道でも共同所有型か相互持合型かによって、話し合う相手や確認範囲が異なるため、買主の判断に時間がかかるケースがあります。
通行や掘削に関する承諾書・取り決めは確認できるか 通行承諾書・掘削承諾書や既存の取り決めの有無は、買主が購入後も安心して土地を利用できるかを判断する材料になります。書面で確認できない場合や口頭合意のみの場合は、将来的な利用トラブルを懸念されやすくなります。
共有者の人数や関係性に問題はないか 共同所有型の共有私道では、共有者の人数や連絡の取りやすさに加え、修繕費や固定資産税などの費用負担ルールが明確になっているかも重要です。
これらが曖昧な場合、将来の管理やトラブル対応に不安が残りやすくなります。
境界や登記内容は明確になっているか 私道部分の範囲や隣地との境界、登記内容は、買主が権利関係を正確に把握するために必要です。
境界未確定や未登記、相続登記未了がある場合は、取引前に整理を求められるケースがあります。
住宅ローンの利用に影響する要素はないか 再建築の可否、通行・掘削に関する承諾書や取り決め、権利関係、境界の明確さなどは、金融機関の審査で確認されやすい要素です。
ローン利用が難しい場合は、現金購入者に限られるなど、売却条件に影響することがあります。
物件の立地条件や周辺環境に問題はないか 私道の条件だけでなく、駅距離や周辺需要、土地の形状、車の出入りのしやすさなども売却判断に影響します。私道条件に立地面の弱さが重なると、買主が慎重になりやすいです。

上記の項目を確認すると、仲介で売却を目指せる状態なのか、事前に条件整理が必要なのかを判断しやすくなります。

たとえば、承諾書や境界、登記内容を整理できれば、買主の不安を軽減できるケースがあります。一方で、共有者と連絡が取れない、通行・掘削に関する承諾書や取り決めを整理するのが難しいといった場合は、一般の買主に売るハードルが高くなりやすいです。

仲介での売却が難しいと判断できる場合は、買取という選択肢も視野に入れてみましょう。買取であれば、再建築の可否や通行・掘削に関する承諾書・取り決めの有無、私道持分の状況などを確認したうえで、売主側で大きな条件整理を行わずに売却できる可能性があります。

ただし、権利関係や再販時のリスクによっては、買取可否や査定額に影響するため、まずは個別に確認することが重要です。

ポイント

【私道の所有者や持分がわからないときの確認方法】
「そもそも私道や持分を所有しているかわからない」「他人が所有しているようだけど、誰が所有者かわからない」といった場合は、公図と登記事項証明書で確認できます。

住所と登記上の地番は一致する場合もありますが、別の番号になっていることもあります。そのため、私道の所有者や持分を確認するときは、住所だけで判断せず、公図で前面道路の地番を特定することが重要です。

確認の流れは、次のとおりです。

  • 公図を取得し、前面道路の地番を確認する
  • 確認した地番をもとに、法務局で登記事項証明書を取得する
  • 登記事項証明書の所有者欄を見て、所有者名や、単独所有なのか共有なのかを確認する
  • 共有の場合は、自分に私道持分があるか、持分割合がどうなっているかを確認する

公図とは、土地の位置や形状、地番などを大まかに把握できる地図のことです。法務局の窓口や郵送、登記・供託オンライン申請システム登記情報提供サービスなどで取得できます。

なお、自治体の道路管理課などで前面道路が公道か私道かを確認できる場合もありますが、所有者や持分を正確に確認するには登記事項証明書の確認が必要です。

私道に接する土地を売却するための対処法

私道に接する土地を売却するには、売れない原因を把握したうえで、買主が不安に感じやすい要素を整理しておくことが重要です。

弊社の査定実務でも、私道に接する土地は「将来トラブルになりそうな要素をどこまで事前に整理できているか」を確認します。これは、仲介で買主を探す場合にも重要な視点です。

前面道路の扱いや私道持分の有無、通行・掘削に関する承諾書や取り決め、境界や登記内容などを明確にできれば、買主や不動産会社が判断しやすくなり、売却につながる可能性があります。

具体的には、以下のような対処法を検討しましょう。

  • 接道条件を改善できるか確認する
  • 必要に応じて私道持分の取得を検討する
  • 通行・掘削に関する承諾書や取り決めを整理する
  • 境界や登記内容の不明点を解消する
  • 売却条件を明示して買主の不安を減らす
  • 価格や売却条件を見直す
  • 隣地所有者や私道の共有者に売却を打診する
  • 訳あり物件に強い買取業者に相談する

ただし、私道持分の取得や承諾書・取り決めの整理、境界・登記内容の確認には、費用や時間、関係者との調整が必要になるケースもあります。状況によっては、売却前にすべての問題を解消することが現実的ではない場合もあるでしょう。

「訳あり物件に強い買取業者に相談する」で詳しく解説しますが、条件整理に時間や費用をかけたくない場合は、買取業者へ相談する方法もあります。

仲介での売却を目指して条件を整えるのか、手間や費用を抑えて買取を選ぶのかを比較しながら、自分に合った方法を検討しましょう。

共有私道に接する土地の売却方法や仲介・買取の違いについては、次の記事でも詳しく解説しています。

接道条件を改善できるか確認する

接道条件に問題がある場合は、まず改善できる余地があるかを確認しましょう。

接道条件を改善できれば、再建築できる可能性が高まったり、住宅ローンを利用できる買主に売却しやすくなったりするケースがあります。

ただし、接道条件の改善には、敷地面積の減少や整備費用、関係者との調整などが発生する場合があります。そのため、どの方法で改善できるのか、売却価格への影響に見合うのかを確認することが大切です。

接道義務を満たす方法は次のとおりです。ただし、どの方法が使えるかは、前面道路が建築基準法上の道路に該当するか、接道長さが足りているか、私道所有者や隣地所有者の協力を得られるかによって異なります。

改善方法 概要 メリット・デメリット
セットバックを行う 建築基準法42条2項道路など、前面道路が建築基準法上の道路として扱われる場合に、道路中心線などを基準に敷地の一部を後退させる方法 メリット:前面道路が42条2項道路などに該当する場合は、接道条件を整理できる可能性がある。
デメリット:敷地の有効面積が減るため、建築プランや売却価格に影響することがある。前面道路が建築基準法上の道路に該当しない場合は、セットバックだけでは再建築できる状態にならないことがある。
隣地の一部を取得する 道路に接している幅が足りない場合に、隣地の一部を買い取って接道幅を確保する方法 メリット:自分の土地の面積を減らさずに接道条件を整えられる可能性がある。
デメリット:隣地所有者の同意が必要。取得費用や測量・登記費用がかかるため、売却価格に見合うかを慎重に判断する必要がある。
位置指定道路として整備する 私道を一定の基準に沿って整備し、建築基準法上の道路として扱ってもらう方法 メリット:既存の私道が位置指定道路の基準をおおむね満たしていれば、大きな整備工事や土地の買い足しをせずに済み、他の改善方法より費用を抑えられる可能性がある。
デメリット:幅員・すみ切り・排水設備などの基準を満たす必要があるうえ、私道の所有者や抵当権者など、関係権利者の承諾が必要になる。共有者が多い場合や、連絡が取れない権利者がいる場合は調整が難航しやすく、既存の私道を後から位置指定道路として整備するのは現実的に難しいケースもある。

接道条件の改善は、立地が良い、改善後の売却価格が見込める、隣地所有者や私道所有者の協力を得られそう、といったケースでは検討する価値があります。

一方で、費用をかけても売却価格への反映が見込みにくい場合や、関係者との調整が難しい場合は、現状のまま買取を検討した方が現実的なケースもあります。

実際、弊社の買取相談でも「隣地との調整や整備費用まで負担するのは難しい」「手間や時間をかけずに売却したかった」といった声を聞くことがあります。

接道条件を改善できたとしても、必ず買主が見つかるとは限りません。希望する価格で売れる保証もないため、改善にかかる費用や期間、売却価格への影響を比較したうえで、対応するかどうかを慎重に判断しましょう。

必要に応じて私道持分の取得を検討する

他人所有の私道に接している土地は、私道の所有者や共有者から持分を取得することで、売却しやすくなるケースがあります。

私道持分を取得できれば、通行や私道利用について説明しやすくなり、買主や不動産会社が売却可否を判断しやすくなることがあります。ただし、持分を取得しても、掘削工事や舗装の変更、設備工事などについては、他の共有者との調整が必要になる場合があります。

弊社でも、私道持分のない土地を買い取る際は、買取後に持分取得ができるかを確認し、土地の利用価値を高めたうえで再販を目指すことがあります。

具体的には、まず公図や登記事項証明書で私道の所有者を確認し、事情を説明したうえで、持分を買い取れないか交渉します。

交渉に進む前に、買取価格や登記費用の負担、取得後の通行・管理に関する取り決めを整理しておくと、相手にも話を持ちかけやすくなります。

ただし、いくら取得したくても、相手が同意してくれなければ持分は取得できません。共有者が多い場合や関係性が悪い場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めた方がよいケースもあります。

また、私道持分の取得には、持分の買取費用や登記費用がかかります。相手が売却に応じないケースもあるため、時間や費用をかけてでも売却条件を整えたいのか、交渉の手間を省いて現状のまま売却したいのかを比較したうえで判断しましょう。

通行・掘削に関する承諾書や取り決めを整理する

他人所有の私道に接している土地や、相互持合型の共有私道に接している土地では、通行や掘削に関する承諾書や取り決め、過去の合意内容を整理しておくと、売却時の安心材料になります。

実際、弊社が私道に接する土地を査定する際も、購入後に通行を制限されるリスクがないか、上下水道・ガス管などの補修や引き込み工事の際に道路を掘削できるかを確認します。通行承諾書・掘削承諾書や既存の取り決めを提示できれば、買主や金融機関が購入後の利用リスクを判断しやすくなります。

具体的には、他人所有の私道であれば所有者に通行・掘削に関する取り決めを書面化できないか相談し、共有私道であれば必要な共有者との合意内容や既存の取り決めを確認します。

承諾書や取り決めの内容は将来の建て替えやインフラ工事にも関わるため、口頭の約束だけで済ませないことが重要です。

ただし、承諾書の取得や取り決めの書面化には相手の協力が必要です。無償で応じてもらえる場合もありますが、承諾料や条件の調整が必要になるケースもあり、金額に明確な相場はありません。関係性や承諾書・取り決めの範囲、掘削工事の内容によって変わるため、条件面で折り合えるかも確認しておきましょう。

共有者が多い場合や、私道所有者と付き合いがなく書面化を依頼しづらい場合、承諾料の目安や承諾書・取り決めの内容で迷う場合は、内容に応じて専門家へ確認することが重要です。

登記手続きや権利関係の確認は司法書士、境界の確認や測量は土地家屋調査士、承諾書・取り決めの法的整理や相手方との交渉、トラブル対応は弁護士に確認しながら進めましょう。

なお、相手が応じない場合や条件面で折り合わない場合は、売却までに時間がかかることがあります。承諾書や取り決めを整理して仲介で売るのか、現状のまま買取を検討するのか、手間や費用を比較して判断しましょう。

境界や登記内容の不明点を解消する

私道に接する土地を売却する際は、私道部分の範囲や隣地との境界、登記内容の不明点をできるだけ整理しておきましょう。

境界や登記内容が明確になっていれば、買主や不動産会社が権利関係を確認しやすくなり、売却手続きを進めやすくなります。

実際、弊社の査定実務でも、私道部分の地番や持分割合、境界の確認状況、相続登記の有無などを確認しており、これらが整理されている物件は査定額の評価にもプラスに働くことがあります。

まずは公図や登記事項証明書、測量図などを確認し、土地と私道の位置関係、私道持分の有無、所有者名義、相続登記の状況などを整理しましょう。

境界が不明確な場合は土地家屋調査士に測量を依頼し、相続未登記や名義の不一致がある場合は、司法書士に登記手続きを相談するとよいでしょう。

ただし、専門家に依頼する場合は費用がかかります。私道部分の境界確定測量では、土地の面積や隣接地の数、道路・水路との境界確認の有無などによっては40万円〜80万円前後かかるケースもあります。隣地所有者の立ち会いが必要になることもあるため、完了までに時間がかかる点にも注意が必要です。

相続登記や所有者名義を変更する登記、住所変更登記などを司法書士に依頼する場合も、司法書士報酬や登録免許税などで数万円〜十数万円程度かかるケースがあります。

境界や登記内容の整理は、売却時の不安を減らすうえで有効です。ただし、測量や登記に時間や費用をかけても、売却価格に十分反映されるとは限りません。

条件を整えて仲介で売るのか、手続きの負担を抑えて現状のまま買取を検討するのか、費用・期間・売却見込みを比較して判断しましょう。

売却条件を明示して買主の不安を減らす

私道に接する土地を売却する際は、買主が購入後の通行や管理、再建築のリスクを判断できるよう、売却条件を事前に整理しておきましょう。

たとえば、以下のような内容を事前に整理しておくと、売却時に説明しやすくなります。

  • 私道の所有者や共有者は誰か
  • 自分に私道持分があるか
  • 通行・掘削に関する承諾書や取り決めは確認できるか
  • 私道の修繕費や管理費の負担ルールはあるか
  • 再建築の可否や接道状況に問題はないか
  • 境界や登記内容に不明点はないか

売却条件を整理する目的は、良い点だけを強調することではありません。買主にとって安心材料になる情報と、事前に説明すべき注意点の両方を明確にし、購入後のリスクを判断しやすくすることが重要です。

たとえば、「相互持合型の私道だが、通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できる」「共同所有型の私道だが、管理や費用負担のルールが書面で残っている」「私道に接しているが、再建築に問題がないと確認できている」といった情報は、買主の判断材料になります。

弊社の買取相談でも、仲介で話が進んでいたものの、契約前に私道の承諾関係や費用負担の不明点が出てきて、話が進まなくなったというケースを聞くことがあります。売却条件を事前に明示できれば、買主の不安を減らし、こうした認識違いによる停滞を防ぎやすくなります。

条件を整理してもリスクが残る場合や、買主が見つからない場合は、私道に接する土地や私道持分のみの買取に対応している専門業者へ相談することも検討しましょう。

価格や売却条件を見直す

私道に接する土地は、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの有無、再建築の可否、私道持分の状況などによって、周辺相場どおりの価格では売れにくいケースがあります。

仲介で反響が少ない場合は、売り出し価格の調整に加えて、引き渡し条件や売主側で対応できる範囲に見直す余地がないかを確認しましょう。

たとえば、通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できなかったり、境界の一部が未確認であったりする場合、買主は購入後の利用やトラブル対応に不安を感じやすくなります。

その場合は、現況のまま引き渡す代わりに価格を調整する、売主が一部書類の取得に協力するなど、リスクに応じて売却条件を見直す方法があります。あらかじめ条件を整理しておけば、買主との交渉も進めやすくなるでしょう。

ただし、私道に接する土地は、単純に価格を下げれば売れるとは限りません。弊社の買取相談でも、仲介会社の助言を受けて段階的に価格を下げたものの、「私道の将来利用に不安がある」という理由で買主がつかず、相談に来られるケースがあります。

そのため、条件整理によって仲介での売却を目指すのか、追加の値下げや売却期間の長期化を避けて買取を検討するのか、売却までの期間や手残り額を踏まえて判断しましょう。

隣地所有者や私道の共有者に売却を打診する

一般の買主にとっては扱いづらい土地でも、隣地所有者や私道の共有者にとっては利用価値が高い場合があります。

たとえば、土地が狭い、形が悪い、単独では使いづらいといった場合でも、隣地所有者であれば、敷地の拡張や接道条件の改善に活用できる可能性があります。駐車場や庭として使えるほか、将来的に自宅と一体で売却しやすくなる点もメリットです。

また、隣地所有者と2人で私道を共有しているケースでは、こちらの持分を買い取ってもらうことで、相手が私道を単独所有できる場合があります。単独所有になれば、将来の通行や管理、修繕の判断をしやすくなるため、第三者よりも前向きに検討してもらえるケースがあります。

実務上、隣地所有者にとって利用価値が高い土地であれば、第三者よりも前向きに検討してもらえることがあります。たとえば、敷地の拡張や接道条件の改善につながる場合は、価格面で折り合いやすいケースもあります。

ただし、隣地所有者や共有者が必ず買い取ってくれたり、高値がついたりするとは限りません。価格や利用目的が合わない場合、関係性によっては交渉が進みにくい場合もあります。

打診しても話がまとまらない場合は、無理に交渉を続けず、私道に接する土地や私道持分の扱いに慣れた買取業者へ相談することも検討しましょう。

訳あり物件に強い買取業者に相談する

仲介で売り出しても反響が少ない、買主が見つかっても私道条件を理由に話が進まないといった場合は、訳あり物件に強い買取業者へ相談する方法もあります。

買取業者は、接道条件や通行・掘削に関する承諾書・取り決めの有無、私道持分の状況、境界や登記内容などを確認したうえで、物件ごとのリスクを踏まえて査定します。

私道持分がない土地や、通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できない土地でも、再販可能性や権利関係を確認したうえで、売主側で大きな手続きを行わずに買取を検討できる場合があります。

ただし、通行・再建築・ライフライン利用に重大な支障がある場合は、買取可否や査定額に影響する点には注意が必要です。

買取のメリットは、業者が私道の権利関係や通行・掘削に関する承諾書・取り決めの状況を確認したうえで、現状に近い状態での買取を検討できる点にあります。

ただし、通行・再建築・ライフライン利用に重大な支障がある場合や、売主様が把握している事実を説明していない場合は、買取可否や契約条件に影響することがあります。事前に分かっている事情は査定時に共有しておくことが重要です。

「私道所有者との交渉に時間をかけたくない」「売却前の手続き負担を抑えたい」といった場合は、買取を検討する価値があります。

また、私道に接する土地は、時間が経つほど権利関係の整理が複雑になるケースもあります。弊社の買取相談でも、私道所有者や共有者の高齢化、認知症、相続の発生によって、通行・掘削に関する取り決めを話し合う相手が増えたり、連絡先が分からなくなったりしたケースがありました。

もちろん、仲介で時間をかけて好条件の買主を待つのも一つの方法です。ただし、私道問題のように自力での解決が難しい場合は、買取業者に相談することで、売却前の調整負担や、将来的なトラブルリスクを抑えられる可能性があります。

売却価格を優先するのか、手間や時間を抑えて早めに手放すのかを比較しながら、自分に合った売却方法を検討しましょう。

私道に接する土地の売却で起こりやすいトラブル

私道に接する土地は、前面道路の扱いや通行・掘削に関する承諾書や取り決め、境界、共有者との関係などが曖昧なままだと、売却活動中や契約前後にトラブルが起こることがあります。

具体的には、以下のようなトラブルに注意が必要です。

  • 私道の条件をめぐって契約前後でトラブルになる
  • 売却後に通行や工事をめぐってクレームが発生する
  • 共有者や隣地所有者との関係が売却をきっかけに悪化する
  • 想定よりも売却期間が長期化する
  • 値下げ交渉が大きくなり想定より安く売却することになる

弊社に寄せられる買取相談でも、私道の権利関係や承諾書の有無、共有者との調整が原因で、売却が思うように進まなかったという声を聞くことがあります。

こうしたトラブルを避けるには、売却前に問題になりやすい点を把握し、整理できるものは一つずつ解消しておくことが重要です。

なお、私道の通行・掘削に関する承諾書や取り決め、再建築の可否、境界や管理ルールなどについて売主様が把握している事情がある場合は、売却前に不動産会社や買主へ共有しておくことが重要です。

不利な事情を説明しないまま売却すると、引き渡し後に「聞いていた条件と違う」として、契約不適合責任や損害賠償、契約解除などのトラブルにつながる可能性があります。

そのため、私道に関する不明点や不安要素がある場合は、隠さずに整理し、売買契約書や重要事項説明書にどのように反映するかを不動産会社や専門家に確認しておきましょう。

ここでは、弊社の買取相談で見られるケースもまじえながら、私道に接する土地の売却で起こりやすいトラブルを解説します。

私道の条件をめぐって契約前後でトラブルになる

私道に接する土地は、管理ルールや費用負担の範囲が曖昧なままだと、契約前後でトラブルになることがあります。

とくに共同所有型の共有私道では、私道の舗装補修や排水設備の修繕、管理費などを誰がどの割合で負担するのかが問題になりやすいです。費用負担のルールが書面で残っていない場合、買主が購入後の負担や共有者との調整に不安を感じることがあります。

実際、弊社の買取相談でも次のようなケースがありました。

【共有私道の管理ルールが曖昧で契約前に話が止まったケース】
売主様は、共同所有型の共有私道に接する土地を仲介で売り出し、購入希望者も見つかっていました。しかし、契約前の確認で、私道の修繕費や管理費を誰がどの割合で負担するのかが書面で残っていないことが分かりました。

売主様自身は、これまで大きな修繕がなく、共有者間で問題になったこともなかったため、特に気にしていませんでした。しかし、買主は購入後に舗装の補修や排水設備の修繕が必要になった場合の負担を不安に感じ、最終的に仲介での売却が進まなくなったという相談でした。

売主にとっては問題なく使えている私道でも、買主や金融機関は購入後の管理負担や共有者との調整リスクまで確認します。

私道の条件をめぐるトラブルを避けるには、売却前に管理費・修繕費の負担ルールや共有者間の取り決めを確認し、買主に説明できる状態にしておくことが重要です。

売却後に通行や工事をめぐってクレームが発生する

宅建業者が仲介する売買では、重要事項説明のなかで私道負担や通行・掘削に関する承諾書や取り決めの有無などが説明されるのが一般的です。ただし、承諾書や取り決めの範囲、将来の工事への対応が曖昧なままだと、売却後に買主との認識違いが生じることがあります。

たとえば、購入後に建て替えやリフォームを進める際、上下水道・ガス管などの工事で私道を掘削できるかが問題になるケースがあります。

通行や掘削について口頭の約束しかない場合や、古い承諾書しか残っていない場合は、買主が同じ条件で利用できるか、将来の工事まで認められるかを別途確認する必要があります。

実際、弊社の買取相談でも次のようなケースがありました。

【掘削承諾の不備が分かり買取相談に切り替えたケース】
売主様は、私道に接する土地を仲介で売却しようとしていました。しかし、購入希望者から「建て替え時に水道管の引き込み工事ができるのか」と確認され、調べたところ掘削承諾書がないことが分かりました。

売主様自身は長年問題なく通行していたため、私道の利用に大きな問題はないと考えていました。しかし、売却後に工事をめぐって買主とトラブルになる可能性があると分かり、仲介で進めることに不安を感じて弊社へ相談に来られたケースです。

これは売却後にクレームが発生する前に買取へ切り替えたケースですが、売却後のトラブルを防ぐには、通行できるかどうかだけでなく、建て替えやライフライン工事の際に掘削できるかまで確認しておくことが重要です。

共有者や隣地所有者との関係が売却をきっかけに悪化する

私道に接する土地を売却する際は、通行・掘削に関する取り決めや私道持分の売却、管理費・修繕費の確認などをきっかけに、共有者や隣地所有者との関係が悪化することがあります。

実務上も、これまで大きな問題なく使えていた私道でも、売却を機に費用負担や承諾関係の話が出ることで、過去の不満が表面化するケースがあります。

実際、弊社が対応した相談でも次のようなケースがありました。

【共有私道の承諾依頼をきっかけに関係がこじれたケース】
売主様は、共同所有型の私道に接する土地を仲介で売却するため、私道の共有者に通行・掘削に関する承諾書への署名をお願いしました。しかし、共有者から「これまで私道の管理費をきちんと負担していなかったのではないか」「売却するなら過去の負担分も整理してほしい」と言われ、話し合いが進まなくなりました。

売主様としては、売却に必要な書類を整えるつもりでしたが、相手側はこれまでの管理や費用負担に不満を抱えていたようです。結果として承諾書の取得が難しくなり、仲介での売却を続けることに不安を感じて弊社へ相談が寄せられました。

共有者や隣地所有者との関係悪化を避けるには、売却前に承諾関係や費用負担の有無を整理し、相手に伝える内容を慎重に確認しておくことが重要です。

直接の交渉が難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談するか、現状のまま買取を検討する方法もあります。

想定よりも売却期間が長期化する

私道に接する土地は、接道条件や通行・掘削に関する取り決め、私道持分の有無などがネックとなり、想定よりも売却期間が長引くことがあります。

たとえば、一般の買主が見つかっても、住宅ローンの審査や重要事項説明の段階で私道条件への不安が出ると、検討が止まってしまうケースがあります。

とくに、再建築の可否が曖昧な場合や、承諾書・境界・登記内容に未整理の部分がある場合は、買主や金融機関の判断に時間がかかりやすくなります。

実際、弊社の買取相談でも次のようなケースがありました。

【私道条件の確認が進まず売却が長期化したケース】
売主様は、駅から近く、周辺需要も見込める私道に接する土地を仲介で売り出していました。当初は数ヵ月ほどで売れると考えていましたが、購入希望者が現れても、私道条件の確認段階で検討が止まり、なかなか契約まで進みませんでした。

売主様としては、価格を見直しながら仲介での売却を続けていましたが、確認事項が多く、そのたびに買主の判断が慎重になってしまったようです。結果として売却期間が長期化し、早めに手放したいと考えて弊社へ買取相談に来られたケースです。

売却期間の長期化を防ぐには、売り出す前に私道条件を整理し、買主や金融機関が判断しやすい状態にしておくことが重要です。売却期限がある場合は、仲介で時間をかけるのか、早期売却を優先して買取を検討するのか、資金計画も踏まえて判断しましょう。

値下げ交渉が大きくなり想定より安く売却することになる

私道に接する土地は、承諾関係や権利関係に不安が残っていると、買主から値下げ交渉を受けることがあります。

売主としては相場に近い価格で売り出していても、買主側から見ると「購入後に費用や手間がかかる土地」と判断される場合があります。そのため、未整理のリスクを価格に反映してほしいと求められやすくなります。

実際、弊社の買取相談でも次のようなケースがありました。

【私道条件を理由に何度も値下げ交渉を受けたケース】
売主様は、周辺相場を参考にして私道に接する土地を仲介で売り出し、購入希望者も見つかっていました。しかし、契約前の確認が進むなかで、買主側から何度も価格交渉を受けることになりました。

最初は「通行・掘削に関する承諾書がないなら、その分を価格に反映してほしい」と言われ、その後も「境界の一部が未確認なら測量費用を見込んでほしい」「再建築や工事のリスクが残るなら、さらに価格を調整してほしい」と、確認事項が増えるたびに値下げの話が出てきました。

売主様としては、どこまで価格を下げれば契約できるのか見通しが立たず、仲介での売却を続けることに不安を感じて弊社へ相談が寄せられました。

値下げ交渉を抑えるには、売却前に私道条件を整理し、買主が不安に感じやすい点を説明できる状態にしておくことが重要です。

条件整理に費用や時間がかかる場合や、値下げ交渉が続く場合は、仲介と買取のどちらが現実的かを、手元に残る金額や売却までの期間を踏まえて検討することも一つの方法です。

まとめ

私道に接する土地は、私道の所有形態や利用条件、通行・掘削に関する承諾書や取り決めの確認状況などによって売却のしやすさが変わります。再建築の可否や通行・掘削に関する取り決め、私道持分、境界や登記内容に不安がある場合は、買主が慎重になりやすいため注意が必要です。

売却を進めるには、まず売れにくい原因を整理し、必要に応じて通行・掘削に関する承諾書や取り決めの確認、境界・登記内容の確認、価格や売却条件の見直しを行いましょう。

一方で、条件整理に時間や費用がかかる場合は、現状のまま買取を検討するのも一つの選択肢です。仲介と買取のどちらが合っているか、売却価格・期間・手間を比較しながら判断しましょう。

よくある質問

私道にはどのような種類がありますか?

私道には、建築基準法上の道路として主に次の3種類があります。

  • 法42条1項3号道路
  • 法42条1項5号道路
  • 法42条2項道路

法42条1項3号道路は、建築基準法の規定が適用される前から存在していた幅員4m以上の道路です。「既存道路」と呼ばれることもあります。

法42条1項5号道路は、特定行政庁から位置の指定を受けた道路で、「位置指定道路」と呼ばれます。土地を建築物の敷地として利用する目的で築造され、幅員4m以上などの基準を満たす必要があります。

法42条2項道路は、幅員4m未満でも特定行政庁により道路とみなされる道路です。ただし、原則として道路の中心線から2mの範囲が道路とみなされるため、建築時にはセットバックが必要になることがあります。

私道持分がない不動産は売れませんか?

私道持分がない不動産でも売却できる可能性はありますが、一般的な土地よりも売却難易度は高くなります。

理由は、私道を通行する権利や、水道管・ガス管などの掘削工事に関する承諾書・取り決めを確認できない場合、買主が購入後にトラブルを抱えるおそれがあるためです。

また、金融機関によっては担保評価が下がり、買主が住宅ローンを組みにくくなることもあります。

そのため、通常の仲介で売却する場合は、通行・掘削に関する承諾書や私道持分の取得などを検討し、買主の不安を減らすことが重要です。

承諾書や持分取得が難しい場合は、訳あり物件に強い不動産会社や買取業者へ相談する方法もあります。買取業者であれば、通行・掘削に関する承諾書や取り決めを確認できない状態でも、物件の状況を踏まえて買取を検討できるケースがあります。

私道に面した土地は価格が安くなりますか?

私道に面した土地でも、必ず価格が安くなるわけではありません。私道を単独所有している場合や、私道持分があり、通行・掘削に関する取り決めも整理されている場合は、価格が大きく下がりにくいといえます。

一方で、権利関係や通行・掘削に関する取り決めに問題がある場合は、通常の土地より価格が下がることがあります。

たとえば、私道持分がない、通行・掘削に関する取り決めがない、前面道路の扱いによって再建築できないといったケースは、買主が限定されやすく、価格交渉でも不利になりやすいです。

とくに再建築不可の土地や、私道の利用条件が不明確な土地は、売却価格に影響しやすいと考えておきましょう。

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