共有持分と区分所有の違いとは?マンションにおける共有持分の調べ方も解説
不動産の「共有持分」と「区分所有」の違いに疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
端的に言いますと、共有持分は一つの不動産に対してそれぞれの共有名義人が所有する権利で、区分所有は分譲マンションのように建物内の独立した各部分を所有する権利です。
また、「共有持分」と「区分所有」とでは権利の範囲も異なります。
権利(行為) | 内容 |
---|---|
変更行為の権利 | 不動産全体の売却や増築、大規模な改修など、共有不動産の形や性質を変える行為をとる権利のこと。行うには共有者全員の同意が必要。 |
管理行為の権利 | 賃貸借契約の締結など、共有不動産の性質を変えない範囲で、それを利用・改良する行為をとる権利のこと。行うには持分の過半数の同意が必要。 |
保存行為の権利 | 建物の修理や相続登記、不法占拠者に対する明け渡し請求など、共有不動産を維持するための行為をとる権利のこと。共有者の同意は不要。 |
一方、区分所有の権利は以下の通りです。
権利 | 内容 |
---|---|
専有部分の所有権 | 住居部分の所有権を保有する権利のこと。 |
共有部分の共有持分権 | 廊下やエントランス、エレベーターなどの共有部分について、他の区分所有者とともに持分を所有する権利のこと。 |
土地の共有持分権 | 区分所有建物の敷地を利用する「敷地利用権」のこと。他の区分所有者との共有となる。 |
本記事では、共有持分と区分所有の違いを詳しく解説しますので、ぜひご覧いただければと思います。
共有持分とは
共有持分とは一つの不動産に対してそれぞれの共有名義人が所有する権利です。不動産の共有は珍しいことではなく、1つの不動産を相続人で相続する場合や夫婦でペアローンを組んで住宅を購入した場合など、さまざまな原因で共有は発生します。
1つの不動産を複数人で所有すること(所有権の共有)
1つの不動産を複数人で所有していることを「共有」といい、それぞれの所有権の割合を「共有持分」と呼びます。たとえば、2人で平等に所有権を持っている場合はそれぞれの共有持分は1/2、3人で等しく不動産を共有していればそれぞれ1/3ずつ共有持分を持っていることになります。
また、共有者が持つ権利を「共有持分権」と言いますが、「共有持分が1/3ずつなので、物理的に1/3を所有する」のではなく「共有不動産に対して1/3の割合の権利を持っている」という意味です。共有持分権を持つ人は、持分に応じてさまざまな権利が行使できます。
- 共有物を処分する権利
- 共有物を保存する権利
- 共有物を管理する権利
それぞれの権利についての制約や詳しい内容は「持分所有の権利」にて後述します。
不動産の共有が発生する原因
不動産の共有が発生する原因には、主に以下の4種類があります。
- 複数の相続人に1つの不動産が相続された
- マイホームをペアローンを組んだり夫婦連名で購入した
- 私道を複数の隣接地所有者が共有している
- 複数人で不動産を購入(出資)し共同事業に使用する
それぞれの共有状態の詳しい内容やリスクなどを解説します。
1つの不動産を複数人で相続した
不動産の単独所有者が亡くなって相続が発生した際に、複数の相続人で該当の不動産を共有するケースです。この場合、共有持分は基本的に法定相続分に従って分けられます。
不動産は物理的な分割が難しいため、相続人で共有するのは一見良い方法だと思われますが、不動産を共有しているとさまざまなリスクが発生します。共有不動産は持分所有者1人の意思では売却や増改築などができません。共有者が単独でできるのは不動産の「使用」と「保存」だけのため、不動産の活用や売却が難しくなります。自分の持分のみなら自由に売却可能なので、他の共有者が勝手に持分を売ってしまい、見ず知らずの第三者との共有状態になる可能性もあるでしょう。また、将来的に現在の共有者が亡くなった際に、相続によってさらに共有者が細分化されるリスクもあります。
マイホームをペアローンを組んだり夫婦連名で購入した
マイホームを購入する際にペアローンを組んだり、頭金などをお互いに出資したりした場合、不動産は夫婦の共有名義となります。共有持分割合はローン負担や出資額の割合に応じて決まります。夫婦で共有名義にした場合、住宅ローン控除が夫婦それぞれで受けられる他、マイホームを売却した際の「3,000万円特別控除」も2重で適用されるなどのメリットがあります。
一方で、離婚時の財産分与が難しくなったり、相手の同意無しでは売却できない、どちらか片方が亡くなった際の相続で権利関係が複雑になるなどのデメリットもあります。なお、夫婦で共有状態になっている不動産の名義を変更したり、共有状態を解消するのは禁止されていません。ただし、名義変更は財産分与の協議をおこなったうえで行いましょう。また、住宅ローンの残債がある状態での単独名義への変更は、銀行から断られる可能性があることにも注意が必要です。
私道を複数の隣接地所有者が共有している
私道とは、自治体が管理する「公道」ではなく、個人が所有している道路です。個人の所有物のため、原則的にその道路を利用できるのは所有者本人か、所有者が通行を許可した人のみとなります。私道は1人が所有しているもののほか、1つの私道に複数の土地が面している場合はそれぞれの土地の所有者が私道を利用できるよう共有しているケースもあります。
建物や土地などの共有持分と同じく、私道持分も自分自身のものだけなら自由に売却が可能です。ただし、私道の持分のみを買い取っても活用しにくく業者にとってあまりメリットはありません。持分の買い取りは専門の業者に依頼すると良いでしょう。
複数人で不動産を購入(出資)し共同事業に使用する
共同事業における共有には、以下の3つの形があります。
共有方法 | 内容 |
---|---|
組合による購入 | 複数人が共同で不動産を購入し、組合の財産として共同事業に使用 |
現物出資 | 組合員の1人が所有する不動産を組合に出資し、組合の財産として共同事業に使用 |
不動産特定共同事業 | 複数の投資家が金銭や不動産の共有持分を出資し、不動産を共有する |
不動産特定共同事業では、投資家に代わり不動産会社などの専門家(事業者)が不動産取引を行い、利益を投資家へ分配します。また、組合の財産として共同事業に使用されている不動産は、共有状態の解消が制限される場合があります。
区分所有とは
区分所有とは、分譲マンションのように建物内の独立した各部分を所有することです。区分所有のマンションには「専有部分」と「共用部分」がありますが、バルコニーなど意外な場所も共用部分である場合があるので注意しましょう。また、マンションを区分所有する際には同時に「敷地権」も持つことになります。区分所有と敷地権はセットになっているため、それぞれについて詳しく理解しておく必要があります。
分譲マンションのように建物の独立した各部分を所有すること
「区分所有」とは、マンションやビルなどのように建物内が2つ以上の部屋に区切られている場合、その独立した各部屋を所有することです。区分所有には、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 構造上の独立性があること
- 利用上の独立性があること
建物の区分所有等に関する法律 第一条|e-Gov法令検索
「構造上の独立性」とは、建物内の各部分が壁などで完全に遮断されていることを指します。障子やふすまなどで仕切っているだけでは独立性があるとは認められません。「利用上の独立性」は、たとえば居住用物件なら、独立した各部分がそれぞれ1つの住居として使用できることを指します。つまり、構造上と利用上の独立性が確保できれば、マンションだけでなくオフィスビルや倉庫、店舗なども区分所有可能です。
区分所有のマンションには「専有部分」「共用部分」が存在
区分所有のマンションには、実際に所有する各部分(部屋)である「専有部分」と、他の居住者とも共同で使用する「共用部分」が存在します。専有部分は建物内の独立した部分として区分所有の対象となる部分=各部屋のためわかりやすいですが、共有部分については廊下やエレベーター、階段などわかりやすいものの他に、ベランダやバルコニーなど一見専有と思われがちな部分も該当するため注意が必要です。主に共用とされる部分には以下のものがあります。
- (部屋の外の)廊下、エレベーター、階段
- 躯体(壁や床、天井などの構造体※壁紙・床材は専有部分)
- バルコニー・ベランダ
- インターホン
- 玄関ポーチ
- 玄関ドア
- 室外機置場
- 窓ガラス・網戸
- 給排水管
ただし、バルコニーやベランダ、玄関ポーチなどは専用使用権が認められた共用部分として「専用使用部分」と呼ばれます。専用使用部分の補修やリフォームを所有者と管理組合のどちらが負担するのかについては、管理規約を確認しましょう。
「敷地権」は区分所有建物である一棟の建物の敷地に関する権利
敷地権とは、区分所有建物である一棟の建物の敷地に関する権利で、専有部分と一体化して登記された敷地利用権のことです。分譲マンションの場合、区分所有者は建物の一部を専有すると同時に、マンションの敷地(土地)も所有することになります。この「マンションの敷地を所有する権利」が「敷地利用権」です。ただし、敷地の特定の部分を専有しているわけではなく、他の区分所有者との共有となります。
一軒家であれば建物と土地は別々の不動産のためそれぞれ個別に売却や処分ができますが、敷地権付の区分建物の場合は原則として権利と建物を別々に処分はできません。
共有持分と区分所有の権利の違い
共有持分と区分所有とでは、不動産を所有する範囲や所有方法だけでなく、それぞれの持つ権利も異なります。
共有持分の権利
共有持分の場合は「変更」「管理」「保存」の3つの行為について権利を有しますが、実行するのは共有者の同意が必要な場合があります。
権利(行為) | 内容 |
---|---|
変更行為の権利 | 不動産全体の売却や増築、大規模な改修など、共有不動産の形や性質を変える行為をとる権利のこと。行うには共有者全員の同意が必要。 |
管理行為の権利 | 賃貸借契約の締結など、共有不動産の性質を変えない範囲で、それを利用・改良する行為をとる権利のこと。行うには持分の過半数の同意が必要。 |
保存行為の権利 | 建物の修理や相続登記、不法占拠者に対する明け渡し請求など、共有不動産を維持するための行為をとる権利のこと。共有者の同意は不要。 |
区分所有の権利
区分所有者が持つ権利は、以下の3つです。
権利 | 内容 |
---|---|
専有部分の所有権 | 住居部分の所有権を保有する権利のこと。 |
共有部分の共有持分 | 廊下やエントランス、エレベーターなどの共有部分について、他の区分所有者とともに持分を所有する権利のこと。 |
土地の共有持分 | 区分所有建物の敷地を利用する「敷地利用権」のこと。他の区分所有者との共有となる。 |
すなわち、専有部分は単独所有権、その他共有部分や敷地に関しては共有持分を所有します。
まとめ
共有持分は1つの不動産を複数人が所有している状態、区分所有は分譲マンションのように建物の独立した各部分を所有することと、不動産の所有形態に違いがあります。また、それぞれの所有形態で持てる権利も異なるため、共有持分と区分所有は全く別のものだと理解しておきましょう。また、区分所有のマンションでも購入時や相続によって共有持分が発生する場合があります。不動産を共有したままにしているとトラブルになることもあるため、共有状態の解消を望むなら自分の持分を売却することも検討しましょう。共有持分の売却は、持分専門の買取業者に相談するのがおすすめです。
よくある質問
マンションにおける共有持分の調べ方は?
マンションの共有持分を調べる方法は、主に3つあります。
- 法務局で登記簿(登記事項証明書)を取得する
- 固定資産評価証明書を取得
- 固定資産税納税通知書で調べる
1.法務局で登記簿(登記事項証明書)を取得する
登記簿(登記事項証明書)の「権利部(甲区)」の項目で確認できます。登記簿は管轄法務局の窓口か郵送、オンラインで取得可能です。窓口で請求書を提出すれば10~15分程度で入手できますが、来庁できない場合は「申請書」と「登記印紙(手数料)」、「切手貼付済の返信用封筒」を郵送しましょう。また、法務局のHPからオンライン申請も可能です。
2.固定資産評価証明書を取得
「固定資産評価証明書」は、土地や建物など固定資産税の対象となる資産の評価額を証明するものです。不動産のある市町村役場の窓口で申請するか、申請書と手数料、切手貼付済の返信用封筒を郵送して取得します。自治体によってはコンビニ交付が可能な場合もあるので、確認してみましょう。
3.固定資産税納税通知書で調べる
毎年届く「固定資産納税通知書」にも共有持分割合が記載されています。固定資産納税通知書は、毎年4月~5月頃に不動産所在地の市町村から発送されるのが一般的です。ただし、自治体によっては共有持分の記載がない場合もあるので、その際は登記事項証明書か固定資産評価証明書で確認しましょう。
マンションの共有持分を登記するときの割合の決め方は?
マンションの持分割合の決め方は、「購入するとき」「相続のとき」で異なります。
【購入のときの決め方】
マンション購入時の「出資割合」に応じて決めるのが一般的です。また、1つの住宅ローン契約に対して主債務者と連帯債務者で返済を行う「連帯債務型」のローンの場合は、返済割合や収入の割合応じて持分割合を決めるケースがほとんどです。ただし、片方が債務者でもう片方が連帯保証人の「連帯保証型」のローンを組んだ場合は、債務者1人が不動産の所有者となるため持分割合を決める必要はありません。
【相続のときの決め方】
相続でマンションを引き継いだときは、「遺産分割協議」の有無で決まります。遺産分割協議では相続割合を相続人同士で話し合い、合意に至った割合が採用されます。もし遺産分割協議が行われなかった場合には、各相続人の「法定相続分」に応じた共有持分割合で登記をすることになります。
ただし、複数の相続人で1つのマンションを共有していると、居住している相続人が他の共有者から家賃を請求されたり、不動産の売却や活用がしにくいなどトラブルが発生する可能性があります。トラブルを回避するためには、共有状態を解消するのがおすすめです。
共有状態の解消には他の共有者の持分を買い取る、共有物分割請求訴訟を申し立てるなどいくつかの方法がありますが、自分の持分を売却するのも1つの方法です。自身の持分のみなら共有者の同意なく自由に売却できるため、スムーズに共有状態を解消できるでしょう。共有持分は一般的な不動産会社では取り扱っていないことがほとんどなため、売却を考えるなら共有持分専門の買取業者に相談するのがおすすめです。クランピーリアルエステートなら、共有持分の高額買取が可能です。