共有持分売却相場を徹底解説!実際の買取事例や査定ポイントも紹介

共有持分を売却したいと考えたとき、「いくらくらいで売れるのか相場がわからない」と悩む方もいることでしょう。
結論から言うと、共有持分の売却価格は、売却先によって大きく異なります。あくまで一般的な目安ですが、売却先ごとの共有持分の売却相場をまとめました。
| 売却先 | 相場目安 |
|---|---|
| 他の共有者 | 市場価格 × 持分割合に近い水準 |
| 買取業者 | 市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2 |
| 投資家 |
市場価格 × 持分割合 × 1/2〜2/3程度 ※収益化や権利整理の見込みがある一部の案件に限られやすい |
| 一般の人 |
- ※権利関係の制約から買主が限られやすく、一般の人では成立しにくい傾向があるため |
前提として共有持分には、通常の不動産のように明確な市場相場は形成されにくいという特徴があります。
共有持分は、持分そのものは単独で売却できる一方、不動産全体を単独で自由に利用・売却できる権利ではありません。「他の共有者との合意により単独所有化や全体の売却が現実的に見込める状態」と、「共有者間の対立により売却や利用の見通しが立たない状態」のように、将来どのように売却や整理ができるかの見込みが大きく異なれば評価も大きく変わります。
本来、不動産は立地や築年数などから一定の価格目安が形成されますが、共有持分はこうした条件に加えて権利関係の状況によって評価が大きく分かれるため、取引価格が一定に収まりにくく、明確な相場が形成されにくいのが実態です。
もっとも、一般的な目安としては、共有者に売却する場合は「市場価格×持分割合に近い水準」、買取業者に売却する場合は「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2程度」とされることが多いです。
主に共有持分の買取事業を行う弊社でも、共有持分は案件ごとに価格の振れ幅が大きいのが前提です。ただし、これまでの買取実績や査定実務に照らすと、条件が大きく外れない案件では「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2程度」に収まるケースが多く見られます。
たとえば、市場価格3,000万円の不動産で持分1/2を所有している場合、共有者に売却する場合は条件が整えば1,500万円前後での成立が見込めますが、買取業者への売却では条件によって500万円〜750万円前後になるケースが多いのが実態です。
買取業者の方が共有者よりも価格が低くなりやすいのは、業者が共有持分を取得してもすぐに自由に活用できるわけではなく、権利関係の整理にコストと時間がかかるためです。
具体的には、他の共有者との交渉や合意形成に時間と手間がかかるほか、状況によっては弁護士などの専門家と連携しながら法的手続きを検討するケースもあり、こうしたコストや時間を考慮したうえで、共有持分の買取価格が判断されます。
このように、共有持分の売却価格は一律に決められるものではなく、さまざまな要因から複合的に決定されます。その中でも、実務上は「誰に売却するか」によって共有持分の売却価格の方向性が大きく変わるのが特徴です。
当記事では、共有持分の売却相場について、実際の取引事例や実務経験をもとに、売却先ごとの考え方や相場の見方を解説します。あわせて、状況別の価格シミュレーションや、買取業者が査定時に重視するポイントも紹介しますので、共有持分の売却相場が気になる場合は最後までご覧ください。
目次
- 共有持分の売却相場は売却先によって変わる
- 共有持分はいくらで売れる?売却相場の計算方法
- 共有持分の売却相場が変動する要因
- 状況別|共有持分を買取業者に売却する場合の価格シミュレーション
- 共有持分の売却相場が市場価格より安くなる理由
- 実際の買取事例から見る共有持分の売却相場
- 【事例1】他の共有者と交流がない共有持分を470万円で買取
- 【事例2】ローン残債がある不動産の共有持分を1,500万円で買取
- 【事例3】駐車場として利用している土地の共有持分を1億円で買取
- 【事例4】共有者と使い方で揉めている土地の共有持分を4,600万円で買取
- 【事例5】1,000万円での売却を迫られた相続不動産の共有持分を2,500万円で買取
- 【事例6】兄弟が使用していた建物の共有持分を200万円で買取
- 【事例7】姉妹間の関係悪化により共有持分を2,500万円で買取
- 【事例8】親族間の協議が整わない土地の共有持分を1,000万円で買取
- 【事例9】関係の悪い親族と相続した共有持分を2,000万円で買取
- 【事例10】差押え・音信不通の共有者がいる中で共有持分を800万円で買取
- 共有持分を少しでも高く売却するためのテクニック
- 共有持分の売却相場を知るための査定方法4つ
- 共有持分の売却でトラブルを避けるための買取業者の選び方
- 共有持分を買取業者に売却する流れ
- 共有持分を少しでも高く売却するための買取業者の探し方
- 共有持分の売却後に起こりうるトラブルと対処法
- まとめ
- 共有持分の売却に関するよくある質問
共有持分の売却相場は売却先によって変わる
共有持分の売却相場は、売却先によって変わります。
基本的には「買取業者・投資家などの第三者」か「他の共有者」が共有持分の主な売却先となります。詳しくは後述しますが、通常の不動産とは異なり自由に利用できない制約があることから、一般の個人が共有持分のみを購入するケースは実務上多くありません。
そのため、共有持分を売却したい場合には、所有している共有名義不動産における他の共有者、または買取業者が買主になると考えておくのがよいでしょう。
そして、共有持分の売却価格は、「誰に売るのか」によって変動しやすい特徴があります。あくまで一般的な目安ですが、第三者・他の共有者ごとの共有持分の売却相場は以下のとおりです。
- 第三者(買取業者):市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2
- 他の共有者:不動産全体の市場価格 × 持分割合に近い水準
- 第三者(投資家):市場価格 × 持分割合 × 1/2〜2/3(※)
- 一般の人:売却自体が難しいケースが多い
※収益性・立地・権利整理の見込みがある一部の案件に限られやすく、案件によっては買取業者より低く評価されることもあります。
あくまでも目安ですが、他の共有者に売却できる場合は、買取業者へ売却するよりも高い価格になりやすいです。
ここでは、共有持分の売却相場を売却先別に解説します。
第三者(買取業者)に売却するなら「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2」が目安
買取業者のような第三者に売却するなら、「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2」が目安になることが多いです。これは一般的に言われている相場でもありますが、弊社におけるこれまでの共有持分の買取実績に照らしても、一定の目安として妥当な水準といえます。

弊社の買取実績でも、目安よりも上下で成立したケースはありますが、全体としては「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2程度」に収まる傾向があります。
一見すると、「市場価格に持分割合をかけた金額がそのまま売却価格になるのでは」と考える方も多いですが、実務上はそう単純ではありません。
買取業者が共有持分を取得する場合、その目的は、他の共有者との協議や権利関係の整理を通じて、将来的に全体売却・持分整理・賃貸活用などができる状態に近づけることにあります。
しかし、その過程では他の共有者との協議や合意形成が必要となり、場合によっては長期間を要するケースもあります。話し合いで解決が難しい場合には、買取業者が取得後の対応として、弁護士に相談しながら共有物分割請求などを検討することもあります。
また、こうした調整が想定どおりに進まないリスクや、最終的に売却できるか不確実な状態で保有するリスクもあり、これらのコストやリスクを踏まえて買取業者は共有持分の価格を判断しています。
つまり、共有持分の価格は「不動産全体の価値」を基準にしつつ、権利関係を整理できる見込みや取得後のリスクを踏まえて調整されるのが実務上の考え方です。
たとえば、3,000万円の共有不動産を所有しており、持分割合が1/3だったとします。このケースで買取業者に共有持分を売却した場合、売却相場は300万円〜500万円が目安になります。
他の共有者が買い取るなら「不動産全体の市場価格 × 持分割合に近い水準」が目安
他の共有者に持分を買い取ってもらうなら、「不動産全体の市場価格×持分割合に近い水準」が目安です。
たとえば、3,000万円の共有不動産を所有しており、持分割合が1/3だったとします。このケースで他の共有者に共有持分を売却する場合、売却相場は1,000万円前後が目安になります。
共有持分は、他の共有者に売却することも可能です。「自分の持分を増やすために共有持分を買い取りたい」という共有者も一定数いるため、買い取りを希望している共有者がいるときは、買い取ってもらう方向で検討することもよいかもしれません。
共有者が持分を増やしたいと考える理由の1つは、持分割合が過半数に達すると、共有不動産の管理に関する事項を決めやすくなるためです。
たとえば、一定期間を超えない賃貸借契約や管理方法の決定などは、原則として共有持分の価格の過半数で決められます。ただし、不動産全体の売却・解体・建て替えなど、共有物の変更や処分にあたる行為は、原則として共有者全員の同意が必要です。
そのため、持分を買い取ることで持分割合が過半数に達する共有者であれば、第三者に売却するよりも高い価格で売却できると考えられます。
第三者(投資家)に売却するなら「市場価格 × 持分割合 × 1/2〜2/3」が目安
共有持分は、買取業者だけでなく一部の不動産投資家に売却できるケースもあります。その場合、条件が合えば「市場価格 × 持分割合 × 1/2〜2/3」が目安になることもあります。
ただし、共有持分を購入しても、投資家が不動産全体を自由に活用できるわけではありません。取得後も他の共有者との調整が必要になるため、通常の収益物件と比べると、購入を検討する投資家は限られます。
投資家が購入を検討しやすいのは、次のような共有持分です。
- 都心部や駅近など立地条件がよく、賃貸需要を見込みやすい不動産の共有持分
- すでに賃貸中で、賃料収入や入居状況を確認できる不動産の共有持分
- 再開発・区画整理・周辺地価の上昇などにより、将来的な資産価値の上昇を期待しやすい不動産の共有持分
つまり、投資家が収益化や将来的な売却益を見込みやすい共有持分ほど、高く評価されやすくなります。
たとえば、3,000万円の共有不動産を所有しており、持分割合が1/3だったとします。このケースで投資家に共有持分を売却する場合、売却相場は約500万円〜約670万円が目安になります。
ただし、上記は条件が整った場合のシミュレーションです。共有者との関係性や居住者の有無、賃貸状況、権利整理の見込みによっては、この水準を下回ることもあります。
一般の人に共有持分を売却するのは難しい
「仲介で共有持分を売却できないか」と考える人もいるかもしれません。共有持分は、自分の持分だけであれば一般の人に売却することも法律上は可能です。
ただし、共有持分を購入しても、買主が不動産全体を自由に使用・売却・建て替えできるわけではありません。
取得後も他の共有者との調整が必要になるため、居住用や自己利用目的で不動産を探している一般の個人が、赤の他人と共有状態になる持分だけを購入するケースは、実務上ほとんど見られません。
そのため共有持分は、まず他の共有者への売却を検討し、難しい場合は共有持分を扱う買取業者や一部の投資家への売却を検討するとよいでしょう。
共有持分はいくらで売れる?売却相場の計算方法
共有持分の売却相場は、「不動産全体の価格」と「自分の持分割合」をもとに、おおよその目安を計算できます。
ただし、共有持分は通常の不動産売却と異なり、持分だけを買った人が不動産全体を単独で占有したり、自由に売却・建て替え・賃貸したりできるわけではありません。
そのため、実際の売却価格は「市場価格 × 持分割合」で出した金額から、共有者との関係性や売却先に応じて調整されます。
まずは、次の手順で自分の共有持分がいくらで売れそうかを確認してみましょう。
- 不動産全体の市場価格を調べる
- 自分の持分割合を確認する
- 市場価格に持分割合をかけて理論上の価格を出す
- 売却先ごとの価格目安に調整する
なお、ここで計算できるのはあくまで概算です。実際の売却価格は、共有者との関係性や居住状況、ローン残債、物件の状態などによって変わるため、より実態に近い価格を知りたい場合は、共有持分の買取に対応している不動産会社へ査定を依頼しましょう。
1.不動産全体の市場価格を調べる
最初に確認するのは「共有者全員の合意で不動産全体を売却した場合に、いくらで売れそうか」です。市場価格を調べる方法としては、次のようなものがあります。
- 不動産ポータルサイトで、近隣にある類似物件の売出価格を確認する
- 不動産情報ライブラリで、周辺の取引価格を確認する
不動産ポータルサイトを見るときは、同じエリアにある物件のうち、土地面積・建物面積・築年数・駅距離などが近いものを参考にしましょう。戸建てであれば、建物の築年数や状態によって価格差が出やすいため、築浅の物件だけを見て判断しないことが大切です。
ただし、不動産ポータルサイトに掲載されている価格は、あくまで「売主の希望価格」です。掲載から長期間売れ残っている物件や、実際には値下げして成約する物件もあります。
そのため、1つの情報だけで判断せず、複数の物件や取引価格を見比べて「不動産全体として現実的に売れそうな価格」を把握しましょう。
2.自分の持分割合を確認する
次に、自分がその不動産をどの割合で所有しているのかを確認します。
持分割合は、法務局で取得できる「登記事項証明書」で確認できます。登記事項証明書の権利部には、所有者の氏名とあわせて「持分2分の1」「持分3分の1」「持分4分の1」などの形で記載されています。
取得には1通あたり数百円の手数料がかかり、土地と建物で登記が分かれている場合は、それぞれ取得して確認します。
持分割合を確認するときは、次の点に注意しましょう。
- 相続人の人数だけで単純に判断しない
- 土地と建物で持分割合が異なる場合がある
- 相続登記が済んでいないと、現在の持分割合を確認しづらい
兄弟2人で相続した不動産なら2分の1ずつ、兄弟3人なら3分の1ずつになっているケースが一般的です。ただし、遺産分割協議や贈与、過去の売買によって持分割合が異なることもあるため、思い込みで判断しないようにしましょう。
また、土地と建物で持分割合が異なるケースにも注意が必要です。たとえば、土地は兄弟で2分の1ずつ共有している一方で、建物は長男が単独所有している場合、自分が売却できるのは土地の持分だけです。このようなケースで「不動産全体の2分の1を持っている」と考えて計算すると、実際の査定額とズレやすくなります。
とくに注意したいのは、相続登記が済んでいないケースです。登記簿上の名義が亡くなった親や祖父母のままだと、登記事項証明書だけでは現在の所有者や持分割合を正確に確認できません。
実務でも、「2分の1を持っていると思っていたが、相続登記をしないまま次の相続が発生し、実際の持分はもっと細かくなっていた」というケースがあります。
相続登記が済んでいない場合、売却前に現在の権利者と持分割合を確定し、その内容を相続登記に反映する必要があります。遺産分割協議の有無や、次の相続が発生していないかによって必要な手続きは変わります。
また、登記上の住所や氏名が現在の内容と異なる場合は、住所変更登記や氏名変更登記が必要になることもあります。
戸籍や遺産分割協議書、相続関係説明図などを確認し、誰がどの割合で権利を持っているのかを整理しておきましょう。
3.市場価格に持分割合をかけて理論上の価格を出す
不動産全体の市場価格と自分の持分割合がわかったら、次は理論上の持分価格を計算します。
計算式は次のとおりです。
たとえば、不動産全体の市場価格が3,000万円で、自分の持分割合が2分の1の場合は、次のように計算します。
この1,500万円が、理論上の持分価格です。
ただし、この金額は「不動産全体を通常どおり売却できた場合の価値を、持分割合で単純に割った金額」にすぎません。
そのため、実際の売却相場を考えるときは、この理論上の持分価格をもとに、売却先ごとの価格目安へ調整する必要があります。
4.売却先ごとの価格目安に調整する
理論上の持分価格を出したら、最後に売却先や共有関係に応じて価格を調整します。
他の共有者に売却する場合は、理論上の価格に近づきやすい傾向があります。一方で、買取業者に売却する場合は、取得後の共有者対応や権利整理のリスクが査定額に反映されるため、「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2程度」がひとつの目安です。
ただし、実際の売買価格や買取価格は、共有者との関係性、居住状況、物件の状態などの個別事情によって調整されます。
他の共有者に売却する場合は理論上の価格に近づきやすい
他の共有者に売却する場合は、買取業者へ売却する場合よりも、理論上の持分価格に近い水準で売れる可能性があります。
共有者が2人だけであれば、相手の持分を買い取ることで単独所有にできます。共有者が3人以上いる場合でも、持分割合が増えることで、将来的な売却や権利整理を進めやすくなる場合があります。
買い取る側にもメリットがあるため、「市場価格 × 持分割合」で算出した価格を基準に交渉しやすいのです。
たとえば、兄弟2人で2分の1ずつ所有している実家について、一方が住み続けたい場合、もう一方の持分を買い取れば、住んでいる側は将来的な売却や建て替えの判断をしやすくなります。このようなケースでは、理論上の価格に近い金額でまとまることもあります。
ただし、実務上は、相手に資金がない、価格の認識が合わない、過去の管理費や固定資産税の負担で揉めているといった事情から、理論上の価格より低い金額でまとまることもあります。
弊社への相談でも、「共有者に買い取ってほしいと伝えたが、相場より大幅に低い金額を提示された」「話し合いはできたものの、希望額では折り合わなかった」といったケースはよくあります。
共有者に売却する場合は、価格だけでなく、相手が資金を用意できるか、契約や持分移転登記まで進められるかも確認しておきましょう。
買取業者に売却する場合は共有関係に応じて価格が調整される
買取業者に共有持分を売却する場合は、一般的に「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2程度」がひとつの目安です。
ただし、共有者と話し合える、全体売却の見込みがあるなど条件が良い案件では、これより高く評価されることもあります。
買取業者は共有持分を買い取った後、他の共有者との交渉、利用状況の確認、賃料や管理費の整理、全体売却の調整などを行います。場合によっては、弁護士などの専門家と連携しながら、共有物分割請求などの法的手続きも視野に入れて対応を検討します。
そのため、共有者との関係が良好で、取得後の話し合いが進めやすい案件は比較的高く評価しやすい一方、共有者と連絡が取れない、他の共有者が長年居住している、すでに対立が深いといった案件では、価格が下がりやすくなります。
弊社の買取相談や査定実務で見られる傾向を踏まえると、理論上の持分価格に対する掛け率の目安は次のとおりです。
- 共有者間の関係が良好で話し合いが可能:50〜80%程度
- 他の共有者が不動産に居住している:30〜60%程度
- 共有者と連絡が取れない:20〜40%程度
- 共有者間で対立・トラブルがある:10〜40%程度
- 共有者と係争中:5〜30%程度
※実務上、80%前後の評価が見込めるのは、共有者が少なく、他の共有者も売却や持分整理に前向きで、居住者・ローン・境界・接道などの大きな懸念が少ない案件に限られます。
ただし、上記はあくまで目安であり、実際の査定額は物件の立地や築年数、持分割合、共有者との関係性、居住状況、ローン残債の有無などを総合的に見て判断されます。
弊社の査定実務でも、同じ持分割合であっても、共有者と話し合える案件と、連絡が取れない・対立している案件では査定額に差が出ます。共有持分の売却相場を知るには、計算式だけで判断せず、個別の事情を整理したうえで査定額を確認しましょう。
共有持分の売却相場が変動する要因
共有持分の売却相場は、売却先だけで変わるわけではありません。次のような要因によって、価格が変動します。
| 要因 | 高く評価されやすいケース | 価格が下がりやすいケース |
|---|---|---|
| 共有者との関係性 | 共有者と連絡が取れ、話し合いができる | 音信不通・対立・係争中である |
| 居住・使用者の有無 | 空き家・空地で使用状況が整理されている | 他の共有者が居住・占有しており、使用料や費用負担が整理されていない |
| 持分割合・共有者の人数 | 持分割合が大きく、共有者数が少ない | 持分が細かく、共有者数が多い |
| 土地・建物の持分 | 土地と建物の両方に持分がある | 土地のみ・建物のみの持分で権利関係が複雑 |
| 住宅ローン残債 | ローンが完済済み、または売却時に抵当権抹消の見込みが立っている | ローン残債や抵当権が残っている |
| 境界・接道・私道 | 境界や道路条件が明確で再建築に支障がない | 境界未確定・接道不良・私道承諾なし |
| 立地条件 | 需要が高く、再販や活用の見込みがある | 需要が低い地域や災害リスクが高い地域にある |
| 建物の条件 | 築年数が浅く、管理状態が良い | 老朽化・雨漏り・残置物などの問題がある |
弊社の査定実務でも、上記のうち1つの要因だけで価格が決まることはほとんどありません。そのため、共有持分の売却相場を考えるときは、持分割合だけで判断せず、共有者との関係性や不動産の状態まで含めて確認することが大切です。
1.共有者との関係性
共有持分の査定でとくに重視されるのが、他の共有者との関係性です。
共有持分を買い取った後、買主は他の共有者と連絡を取り、今後の利用方法や売却方針、費用負担などを調整する必要があります。そのため、取得後に話し合いを進められる見込みがあるかどうかは、査定額に大きく影響します。
弊社の査定実務でも、売主から「他の共有者には売却の意向を伝えており、連絡先も把握している」と聞ける案件は、取得後の交渉を進めやすいと判断できます。
反対に、「10年以上連絡を取っていない」「相続時から揉めている」「相手が不動産の売却自体に強く反対している」といった案件では、取得後の調整に時間や費用がかかる可能性があるため、慎重に評価せざるを得ません。
なお、共有者との関係性によって買取価格がどの程度変わるかは、買取業者に売却する場合の価格目安で解説しています。
2.不動産に居住・使用している人の有無
共有持分の査定では、誰が住んでいるかだけでなく、不動産がどのように使われているかも確認されます。具体的には、次のような使用状況が査定額に影響します。
- 他の共有者が駐車場として使っている
- 倉庫や荷物置き場として使っている
- 共有者のうち1人が賃料を受け取っている
- 誰が鍵を管理しているのかわからない
- 残置物が多く、現地確認や売却準備が進みにくい
弊社の査定実務でも、共有者の1人が実家に住み続けているケースは慎重に評価します。共有者は持分に応じて共有物を使用できる立場にあるため、他の共有者が居住しているからといって、直ちに不法占拠として明渡しを求められるわけではありません。
そのため、取得後は居住継続の経緯、使用料相当額の扱い、固定資産税・管理費の負担、将来的な全体売却や共有物分割の進め方などを、居住者と個別に整理する必要があります。
また、居住していなくても、駐車場や荷物置き場として使われている場合は注意が必要です。実務上も、「誰が鍵を持っているのかわからない」「残置物の所有者が不明」「賃料を1人の共有者だけが受け取っている」といった事情があると、取得後の対応に時間がかかると判断されます。
共有物分割請求については、次の記事で詳しく解説しています。
3.持分割合・共有者の人数
持分割合や共有者の人数も、共有持分の査定額に影響します。
持分割合が大きいほど、管理方針の決定や他の共有者との交渉で影響力を持ちやすくなるため、査定上は有利に働きやすくなります。ただし、不動産全体を任意売却するには原則として共有者全員の同意が必要であり、持分割合が大きいだけで単独で全体売却を進められるわけではありません。
そのため、買取業者の査定では、持分割合の大きさだけでなく、残りの共有者と連絡が取れるか、全体売却や持分整理に向けた協議が現実的に進められるかも確認されます。
弊社の買取実務でも、共有者が多い案件では、連絡先の確認、費用負担の整理、全体売却の合意形成に時間がかかる前提で査定します。
4.建物のみの持分か、土地・建物両方の持分か
共有持分の査定では、自分が持っている権利が「土地だけなのか」「建物だけなのか」「土地と建物の両方なのか」も重要です。
一般的には、土地と建物の両方に持分があるほうが評価されやすくなります。土地と建物の権利がそろっていれば、買主が取得後に他の共有者と話し合い、全体売却や持分の買い増しなどを進めやすいためです。
一方で、土地だけ、または建物だけの持分は扱いが難しくなります。たとえば、土地の持分だけを取得しても、建物が他人名義であれば、建物を処分したり、土地全体を自由に活用したりすることはできません。反対に、建物の持分だけを持っている場合も、土地を使う権利関係を確認する必要があります。
実務上、土地と建物の権利者が分かれている不動産は、買主が取得後にできることが限られます。解体、建て替え、全体売却などを進めるにも関係者との調整が必要になりやすいため、土地・建物の両方の持分がそろっている案件よりも査定額が低くなりやすい傾向があります。
5.住宅ローン残債の有無
住宅ローン残債の有無も、共有持分の査定額に影響します。
住宅ローンを利用して不動産を購入している場合、土地や建物に抵当権が設定されているケースが一般的です。
抵当権が残ったままでも、共有持分の売却自体が法律上ただちに禁止されるわけではありません。ただし、抵当権は売却後の買主にも影響するため、買主にとって担保リスクが大きく、査定では慎重に見られやすくなります。
そのため、売却代金や自己資金でローンを完済できるか、抵当権を抹消できる見込みがあるかは、査定時に確認されます。
弊社の査定実務でも、住宅ローンが残っている案件では、ローン残債、抵当権の有無、完済や抵当権抹消の見込みを確認します。
とくに離婚後の共有不動産などでペアローンや連帯債務が残っている場合、金融機関の承諾なく共有持分を無断で売却すると、ローン契約違反(期限の利益の喪失)となり、残債の一括返済を求められるリスクがあります。 そのため、原則として売却代金や自己資金でローンを完済し、抵当権を抹消できることが売却の最低条件として見られます。
6.隣地との境界・接道条件・私道の状況
土地を含む共有持分では、隣地との境界、道路との接し方、私道の権利関係も査定額に影響します。
弊社の査定実務でも、共有持分を取得した後に不動産を売却・活用できるかを判断するため、境界や道路条件を確認します。具体的には、次のようなポイントです。
| 確認項目 | 査定で見られるポイント |
|---|---|
| 隣地との境界 | 境界標や確定測量図があり、対象地の範囲が明確か |
| 接道条件 | 敷地が建築基準法上の道路に原則2m以上接しているか |
| 私道の権利関係 | 私道持分を持っているか、通行承諾・掘削承諾があるか |
実務上、境界標や確定測量図がない土地は、査定額が下がりやすくなります。「どこまでが売却対象なのか」「隣地所有者とトラブルになる可能性はないか」を判断しにくいためです。
また、接道条件を満たしていない土地も、査定では慎重に見られやすくなります。建物を建てるには、原則として敷地が建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。
前面道路が私道であっても、建築基準法上の道路に該当し、接道義務を満たしていれば再建築できるケースはあります。
一方で、建築基準法上の道路に該当しない場合や、接道幅が不足している場合は、再建築不可となる可能性があり、将来的な建て替えや再販が難しくなるため、査定額にマイナスの影響が出やすくなります。
さらに、前面道路が私道の場合、私道持分や通行・掘削承諾の有無が不明な物件は、低く査定されやすい傾向があります。通行や工事に関する権利関係を確認する必要があり、住宅ローンの利用や建て替え、上下水道・ガス工事に支障が出る可能性があるためです。
7.物件の立地条件
共有持分に限らず、不動産の立地条件は査定額に大きく影響します。査定では、主に次のような点が評価されます。
- 駅やバス停までの距離
- 周辺の商業施設・学校・病院などの利便性
- 周辺の成約事例や売出状況
- 賃貸需要や再販需要の有無
- 洪水・土砂災害・津波などの災害リスク
弊社の査定実務でも、駅から近い、生活利便性が高い、不動産需要が見込めるエリアは、共有持分であっても評価しやすい傾向があります。取得後に他の共有者との調整が必要になっても、最終的に全体売却や賃貸活用などの出口を見込みやすいためです。
一方で、人口減少が進んでいる地域や、買い手が限られるエリアにある物件は、再販や活用の見通しが立ちにくく、査定では慎重に評価されやすくなります。
また、洪水・土砂災害・津波などの災害リスクがある地域では、買主側の活用や再販に影響することがあり、査定額が下がる要因になる場合があります。
8.建物の条件(築年数・構造など)
建物がある不動産では、築年数や構造、管理状態も共有持分の査定額に影響します。
ただし、共有持分の査定では「築浅だから必ず高い」「鉄筋コンクリート造だから必ず高い」と単純に判断されるわけではありません。実際の査定では、建物をそのまま使えるのか、修繕が必要なのか、解体費用がかかるのかまで確認します。
| 建物の条件 | 高く評価されやすいケース | 査定額が下がりやすいケース |
|---|---|---|
| 築年数 | 築年数が浅い、または築古でも修繕・管理状況が良い | 築古で、耐震性や大規模修繕の必要性が懸念される |
| 構造 | 耐久性があり、修繕・再利用しやすい構造 | 老朽化が進み、修繕費や解体費がかかりやすい構造 |
| 管理状態 | 雨漏り・傾き・シロアリ被害などがなく、管理状態が良い | 雨漏り・傾き・シロアリ被害・設備故障などがある |
| 利用状況 | 空き家でも管理されており、残置物が少ない | 長期間放置され、残置物が多い、現地確認がしにくい |
| 間取り・再利用のしやすさ | 周辺需要に合う間取りで、賃貸・再販・リフォームを見込みやすい | 間取りが特殊で、リフォームや再販に手間がかかりやすい |
弊社の査定実務でも、建物の状態が良く、そのまま居住・賃貸・再販に活用できる見込みがある物件は評価しやすい傾向があります。
一方で、建物の状態が悪い場合は、修繕費や解体費がかかるだけでなく、取得後に他の共有者との合意形成が必要になる点も査定に影響します。
状況別|共有持分を買取業者に売却する場合の価格シミュレーション
共有持分を買取業者に売却する場合の価格は、一般的には「市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2程度」がひとつの目安です。
ただし、共有者と話し合える、全体売却の見込みがあるなど条件が整っている場合は、この目安より高く評価されることもあります。
ここでは、次の4つのケースに分けて買取価格をシミュレーションします。
- 共有者との関係が良好なケース
- 他の共有者が不動産に住んでいるケース
- 共有者と連絡が取れないケース
- 共有者間で対立・トラブルがあるケース
シミュレーションの前提条件は、次のとおりです。
不動産全体の市場価格:4,000万円
売却する持分割合:2分の1
理論上の持分価格:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
なお、以下の金額はあくまで目安です。実際の査定額は、物件の立地や築年数、住宅ローン残債、境界・接道条件、共有者との交渉状況などによって変わります。
共有者との関係が良好なケース
共有者との関係が良好で、売却の意思や今後の方針について話し合いができ、さらに全体売却や持分整理の見込みがあるケースでは、理論上の持分価格に対して比較的高く評価されやすくなります。
今回の条件では、理論上の持分価格は2,000万円です。共有者と連絡が取れるうえに、取得後に全体売却や持分の整理などが具体的に見込める場合、理論上の持分価格に対して50〜80%程度まで評価される可能性があります。
ただし、80%に近い価格が見込めるのは、共有者が少なく、他の共有者も持分の買取や全体売却に前向きで、居住者・ローン・境界問題などの大きな懸念が少ないケースに限られます。単に「共有者と連絡が取れる」「関係が悪くない」というだけでは、上限に近い価格になるとは限りません。
弊社の査定実務でも、共有者と話し合いができる案件は、共有持分のなかでは価格を出しやすい傾向があります。とくに、売却の意向を共有者に伝えており、連絡先や今後の方針もある程度整理されている案件は、取得後の対応を見通しやすく、査定上も評価しやすくなります。
他の共有者が不動産に住んでいるケース
他の共有者が不動産に住んでいる場合、買取価格は下がりやすくなります。
共有持分を買い取った第三者は、取得後すぐに不動産全体を売却したり、居住者を退去させたり、建て替えや賃貸活用を単独で進めたりできるわけではありません。居住者との話し合いが必要になり、居住継続の可否、退去・明渡しの協議、使用料、固定資産税・管理費の負担などを整理する必要があるためです。
今回の条件では、居住者との調整が必要になる前提で、理論上の持分価格2,000万円に対して30〜60%程度まで評価される可能性があります。
60%に近い価格が見込めるのは、居住者の退去予定が立っている、または居住している共有者自身が持分の買取や全体売却に前向きで、取得後の調整を進めやすいケースです。
一方で、30%に近づきやすいのは、居住者が売却や退去に強く反対している、使用料の取り決めがない、固定資産税の負担で揉めている、荷物や残置物が多いといったケースです。
弊社の査定実務でも、他の共有者が居住している案件は、空き家の共有持分より慎重に評価します。居住者の意向や使用状況が整理されているかどうかによって、取得後の調整にかかる時間や費用が変わるためです。
共有者と連絡が取れないケース
共有者と連絡が取れないケースでは、買取価格はさらに下がりやすくなります。
買主が共有持分を取得しても、他の共有者と連絡が取れなければ、今後の利用方針や全体売却について話し合いを進められません。共有者の所在確認や連絡手段の調査から始める必要があり、解決までの時間が読みづらくなるためです。
今回の条件では、共有者と連絡が取れない事情がある場合、理論上の持分価格2,000万円に対して20〜40%程度で評価される可能性があります。
40%に近い価格が見込めるのは、現在は返事がないものの住所や連絡先は把握できており、過去のやり取りや関係性から今後連絡が取れる可能性があるケースです。たとえば、相続後しばらく連絡していないだけで、住所・電話番号・親族内の連絡経路がわかっている場合は、取得後の調査負担をある程度見通せます。
一方で、20%に近づきやすいのは、共有者の現在の住所がわからない、相続人が複数世代に広がっている、誰が窓口になるのか不明といったケースです。このような場合、買主は所在確認や相続関係の整理から始める必要があるため、査定では慎重に評価されやすくなります。
弊社への相談でも、売主自身が他の共有者の現在の住所や連絡先を把握していないケースはあります。このような場合でも共有持分の売却自体は可能ですが、買取業者は取得後の調査や交渉にかかる負担を見込んで査定します。
共有者間で対立・トラブルがあるケース
共有者間で対立やトラブルがあるケースでは、買取価格は低くなりやすいです。
すでに感情的な対立がある場合、買主が共有持分を取得した後も、他の共有者との交渉がスムーズに進まない可能性があります。売却への反対、使用料や固定資産税の負担、賃料の受け取り、居住者の退去・明渡しなど、複数の問題が絡んでいるケースもあります。
今回の条件では、共有者間で対立やトラブルがある場合、理論上の持分価格2,000万円に対して10〜40%程度で評価される可能性があります。
40%に近い価格が見込めるのは、対立はあるものの、連絡自体は取れており、争点がある程度整理されているケースです。たとえば、固定資産税や使用料の負担で揉めているものの、共有者の所在や主張が把握できている場合は、取得後の対応を見通しやすくなります。
一方で、10%に近づきやすいのは、他の共有者が売却に強く反対している、長年の感情的な対立がある、居住者の退去・明渡しや賃料の受け取りなど複数の問題が絡んでいるケースです。
さらに、調停・訴訟などに発展している係争中の案件では、弁護士などの専門家と連携しながら対応を検討する必要があり、解決までの期間や費用、争点の複雑さを見込むため、通常の対立案件より慎重に評価されます。
弊社の査定実務でも、対立が深い案件ほど、現在どの手続きまで進んでいるのか、何をめぐって揉めているのか、解決の見込みがあるかを重視します。状況によって取得後の対応にかかる時間や費用が変わるため、査定額にも大きく影響します。
共有持分の売却相場が市場価格より安くなる理由
共有持分を買取業者などの第三者へ売却する場合、売却価格は「不動産全体の市場価格 × 持分割合」で算出した理論上の価格よりも安くなるのが一般的です。
とくに、買取業者などの第三者へ売却する場合、既存の共有者のように「持分を増やせる」「単独所有に近づけられる」といったメリットが限られます。取得後も他の共有者との調整が必要になるため、その手間やリスクが価格に反映されやすくなります。
共有持分の売却相場が安くなりやすい理由は、主に以下の3つです。
- 不動産全体を自由に活用・売却できないから
- 他の共有者とのトラブルに巻き込まれる可能性があるから
- 買主が限られ、買取業者側のリスクが査定額に反映されるから
不動産全体を自由に活用・売却できないから
共有持分の価格が下がりやすい理由は、買取業者などの第三者が取得しても、その持分だけでは不動産全体を自由に活用・売却できないことです。
たとえば、2分の1の共有持分を取得しても、買主が単独で建物全体を売却したり、解体したり、建て替えたりすることはできません。共有不動産全体に影響する行為には、他の共有者の同意が必要になるためです。
共有不動産で必要な同意は、行為の内容によって以下のように異なります。
| 行為の種類 | 必要な同意 | 具体例 |
|---|---|---|
| 重大な変更行為・処分行為 | 共有者全員の同意 | 不動産全体の売却、建て替え、解体、不動産全体への担保設定など ※自己の共有持分のみの売却・担保設定は除く |
| 管理行為・軽微な変更 | 共有持分の価格の過半数の同意 | 一定期間を超えない賃貸借契約、賃料改定、管理方法の決定、形状や効用を大きく変えないリフォームなど |
| 保存行為 | 各共有者が単独で可能 | 雨漏りの応急修繕、破損箇所の補修、第三者による無権限占有への対応など ※他の共有者が居住・使用している場合は、直ちに不法占拠といえるわけではなく、使用状況や合意の有無、使用料相当額の扱いなどを個別に確認する必要があります。 |
買主にとってとくに問題になるのは、売却・解体・建て替えなど、物件の価値を大きく動かす行為ほど単独では進められない点です。
たとえば、市場価格4,000万円の空き家でも、共有持分だけを取得した買主は、不動産全体をそのまま売却できません。建物を解体して更地にする、建て替えて再販売するといった行為には、原則として共有者全員の同意が必要です。
また、賃貸に出す場合も、契約期間や条件によって必要な同意が変わるため、買主が単独で自由に収益化できるわけではありません。
つまり、共有持分の買主が取得するのは「4,000万円の不動産を自由に使える権利」ではなく、「他の共有者との同意や調整を前提に扱う共有持分」です。
弊社の査定実務でも、他の共有者と連絡が取れており、全体売却や賃貸活用について協議できる共有持分と、共有者の同意が得られる見込みが低い共有持分では評価に差が出ます。
共有持分は所有権の一部ではあるものの、単独名義の不動産のように自由に活用できる権利ではありません。買主にとって利用や売却の自由度が低いため、持分割合どおりの価格では売れにくくなります。
共有名義不動産の建て替えや取り壊しについては、次の記事も参考にしてみてください。
他の共有者とのトラブルに巻き込まれる可能性があるから
共有持分を購入した買主は、取得後に他の共有者と関わる必要があります。そのため、共有者間で意見の対立や連絡不能、費用負担の不公平がある不動産は、買主にとって取得後の対応が読みにくく、査定額が下がりやすくなります。
弊社に寄せられる共有持分の買取相談でも、売却理由が単なる現金化ではなく、共有者との不仲・連絡不能・費用負担の不公平などにあるケースは少なくありません。
実務上よく見られるのは、以下のようなケースです。
- 他の共有者が不動産に住み続けており、売却に応じない
- 固定資産税や修繕費を一部の共有者だけが負担している
- 賃料収入を特定の共有者だけが受け取っている
- 共有者の1人と長年連絡が取れない
- 相続をきっかけに兄弟姉妹間で意見が対立している
たとえば、共有者の1人が不動産に住み続けている場合、買主が共有持分を取得しても、すぐに不動産全体を売却したり、賃貸活用したりできるわけではありません。
また、固定資産税や修繕費を一部の共有者だけが負担している、賃料収入を特定の共有者だけが受け取っているなど、共有者間で過去の費用負担や収益配分が争点になっているケースもあります。
このような事情がある共有持分は、取得後に他の共有者との話し合いが必要になりやすいため、買主にとってリスクが高いと判断されます。その結果、共有者間のトラブルが少ない物件と比べて、売却相場も下がりやすくなります。
共有持分のメリット・デメリット、リスクについては次の記事も参考にしてみてください。
買主が限られ、買取業者側のリスクが査定額に反映されるから
共有持分は、一般的な不動産と比べて買主が限られます。購入しても不動産全体を自由に使えるわけではないため、一般の個人が積極的に買うケースはほとんどありません。実際の買主は、共有持分を専門に扱う買取業者や一部の投資家が中心です。
買主が少ないということは、売主が価格交渉で有利になりにくいということです。さらに買取業者は、共有持分を買い取った後に発生するリスクやコストを見込んで査定します。
たとえば、買取業者は取得後に以下のような対応を行うことがあります。
- 他の共有者への連絡・協議
- 話し合いで解決が難しい場合の弁護士との連携
- 共有者の居住状況や使用状況の確認
- 固定資産税・管理費・修繕費の負担状況の確認
- 賃料収入や未清算金の有無の確認
- 全体売却・持分整理・共有物分割請求など出口戦略の検討
※買取業者が売主の代理人として、他の共有者と法的な交渉を行うわけではありません。法的な請求や交渉、共有物分割請求などが必要になる場合は、弁護士などの専門家と連携して対応を検討します。
共有者の1人が不動産に無償で住んでいる場合、買取業者が共有持分を取得しても、すぐに収益を得られるわけではありません。居住している共有者に使用状況を確認し、必要に応じて使用料相当額の請求可否や今後の管理方法について、弁護士などの専門家と連携しながら検討することがあります。
固定資産税や修繕費の負担状況も、取得後の交渉で争点になりやすい部分です。本来は持分割合に応じて負担するのが基本ですが、実際には「特定の共有者だけが何年も固定資産税を払っていた」「誰がいくら負担したのか記録が残っていない」といったケースもあります。
このような共有持分を買い取る場合、買取業者は物件そのものだけでなく、取得後の交渉・費用負担・法的手続きの可能性まで見込んで査定します。
そのため共有持分の査定では、物件の立地や築年数だけでなく、取得後の共有者対応、費用負担の整理、法的手続きの可能性にどれくらい時間と費用がかかるかも重要な判断材料になります。
実際の買取事例から見る共有持分の売却相場
ここまで共有持分の売却相場や査定額が変動する要因を解説してきましたが、実際の買取価格は、物件の条件や持分割合、共有者との関係性、居住・使用状況などによって大きく変わります。
そのため、買取事例を見るときは「いくらで売れたか」だけでなく、「どのような事情が査定で評価されたのか」「どのような要因で価格が調整されたのか」まで確認することが大切です。
たとえば、共有者と連絡が取れない、ローン残債がある、他の共有者が居住しているといった事情がある共有持分でも、買取できるケースはあります。ただし、こうした事情は査定額に影響するため、同じ共有持分でも買取価格には差が出ます。
実際、弊社の共有持分の買取データを見ても、買取価格は複数の価格帯に分かれており、物件ごとの条件によって価格差が出ていることがわかります。

| 買取価格 | 割合 |
|---|---|
| 500万未満 | 29.40% |
| 500万~3,000万未満 | 38.94% |
| 3,000万~5,000万未満 | 15.33% |
| 5,000万~1億未満 | 10.55% |
| 1億円以上 | 5.78% |
| 合計 | 100.00% |
※データ集計日:2018年2月(21日)〜2025年12月(31日)
※データ集計方法:社内での買取データを集計
以下では、弊社が実際に取り扱った共有持分の買取事例を紹介します。買取金額だけでなく、相談背景や査定時に評価・考慮されたポイントもあわせて見ていきましょう。
- 他の共有者と交流がない共有持分を470万円で買取
- ローン残債がある不動産の共有持分を1,500万円で買取
- 駐車場として利用している土地の共有持分を1億円で買取
- 共有者と使い方で揉めている土地の共有持分を4,600万円で買取
- 1,000万円での売却を迫られた相続不動産の共有持分を2,500万円で買取
- 兄弟が使用していた建物の共有持分を200万円で買取
- 姉妹間の関係悪化により共有持分を2,500万円で買取
- 親族間の協議が整わない土地の共有持分を1,000万円で買取
- 関係の悪い親族と相続した共有持分を2,000万円で買取
- 差押え・音信不通の共有者がいる中で共有持分を800万円で買取
※共有持分の価格は、不動産全体の市場価格、持分割合、共有者との関係性、居住者の有無、ローン・差押え、接道・境界などによって大きく変わります。
※同じ地域・同じ持分割合であっても、同程度の価格で売却できるとは限りません。事例は、価格そのものよりも「どのような事情が査定に影響したか」を確認するための参考としてご覧ください。
その他の買取事例については、弊社の共有持分サービスページでも紹介しています。
【事例1】他の共有者と交流がない共有持分を470万円で買取
まずは、東京都にある戸建ての土地と建物の共有持分を買い取った事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 東京都 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 4人 |
| 物件種別 | 一戸建て |
| 買い取った持分割合 | 4分の1 |
| 買い取った金額 | 470万円 |

売主様は相続によって共有持分を取得したものの、共有不動産に居住している人や他の共有者とはほとんど交流がなく、手紙を送っても反応がない状態でした。そのため、共有持分を持っていても不動産の活用や話し合いを進められず、弊社へ売却をご相談いただきました。
本事例では、他の共有者と交流がないことや、共有不動産に居住している人と連絡を取りづらいことが査定上のマイナス要因になりました。買い取った後に他の共有者と話し合えるかを見通しにくいためです。
一方で、売却対象が土地・建物の4分の1持分であること、共有者の人数が把握できていること、売主様の売却意思が明確であることは評価しやすいポイントでした。
そのため、他の共有者と交流がないリスクを考慮しつつも、共有持分のみを470万円で買い取ることができました。
このように、他の共有者と交流がないケースでも、共有持分の売却自体は可能です。
【事例2】ローン残債がある不動産の共有持分を1,500万円で買取
2つ目は、神奈川県にあるマンションの共有持分を買い取った事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 神奈川県 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 2人(夫婦) |
| 物件種別 | 区分マンション |
| 買い取った持分割合 | 2分の1 |
| 買い取った金額 | 1,500万円 |

元夫である共有者が区分マンションに居住しており、ローン残債もある物件でした。売主様は、離婚後も元配偶者と不動産の権利関係が残っている状態を解消したいと考え、弊社へ売却をご相談いただきました。
本事例では、共有者が居住していることや、ローン残債があることが査定上のマイナス要因になりました。取得後に居住者との調整が必要になるうえ、ローン残債や抵当権抹消の見込み、連帯債務・連帯保証の有無を確認する必要があるためです。
一方で、物件が神奈川県の好立地にある区分マンションであり、再販や活用の見込みを立てやすかった点は評価しやすいポイントでした。また、共有者が夫婦2人で、売却対象の持分割合が2分の1と明確だったことも、査定上プラスに働きました。
そのため、共有者の居住やローン残債といった事情を考慮しつつも、最終的に2分の1の共有持分を1,500万円で買い取りました。
このように、ローン残債がある場合や、他の共有者が不動産に住んでいる場合でも、共有持分を売却できる可能性はあります。
【事例3】駐車場として利用している土地の共有持分を1億円で買取
3つ目は、大阪府にある駐車場の共有持分を買い取った事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 大阪府 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 4人 |
| 物件種別 | 駐車場 |
| 買い取った持分割合 | 4分の1 |
| 買い取った金額 | 1億円 |

売主様には早期に現金化したい事情があり、できるだけ短期間で売却を進めたいというご相談でした。
本事例では、共有者が4人おり、売却対象が4分の1持分に限られる点は査定上の調整要因になりました。共有持分のみを取得しても、買主が土地全体を単独で売却・活用できるわけではないためです。
一方で、対象不動産は大阪府にある駐車場として利用されている土地であり、収益性や将来的な活用を見込みやすい点は評価しやすいポイントでした。また、売主様の売却意思が明確で、手続き面の確認を進めやすかった点も、買取条件を検討しやすい要素でした。
そのため、共有者が複数いる土地の4分の1持分である点を考慮しつつも、最終的に1億円で買い取りました。
このように、駐車場として利用されている土地の共有持分でも、立地や収益性、活用見込みによっては高額で買い取れるケースがあります。とくに、駐車場として利用されている土地のように収益性や活用の見込みがある場合は、査定上プラスに働きやすくなります。
【事例4】共有者と使い方で揉めている土地の共有持分を4,600万円で買取
4つ目は、東京都世田谷区にある土地の共有持分を買い取った事例です。
| 地域 | 東京都 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 2人 |
| 物件種別 | 土地 |
| 買い取った持分割合 | 4分の3 |
| 買い取った金額 | 4,600万円 |

売主様は、老朽化した建物の建て替えや売却を検討していましたが、共有者である居住者様との話し合いがまとまらず、土地の共有持分4分の3を売却したいと考えて弊社へご相談いただきました。
本事例では、共有者との間で不動産の使い方をめぐる意見の対立があったことが査定上のマイナス要因になりました。買い取った後も、建て替えや全体売却を進めるには共有者との調整が必要になるためです。
一方で、対象不動産が東京都世田谷区にある土地であり、需要の高いエリアだったことは評価しやすいポイントでした。また、売却対象の持分割合が4分の3と大きく、共有者の人数も2人に限られていたため、取得後の権利整理や交渉の見通しを立てやすい案件でもありました。
そのため、共有者との対立というリスクを考慮しつつも、最終的に土地の共有持分4分の3を4,600万円で買い取りました。
このように、共有者と不動産の使い方で揉めているケースでも、立地や持分割合によっては高額で買い取れる可能性があります。
【事例5】1,000万円での売却を迫られた相続不動産の共有持分を2,500万円で買取
5つ目は、神奈川県にある戸建ての共有持分を買い取った事例です。
| 地域 | 神奈川県 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 3人 |
| 物件種別 | 一戸建て |
| 買い取った持分割合 | 10分の3 |
| 買い取った金額 | 2,500万円 |

本件は、売主様のお父様が所有していた実家を相続した不動産について、売主様が取得した持分10分の3を売却したいというご相談でした。
売主様が悩まれていたのは、共有者同士の話し合いがこじれてしまっていた点です。実家に居住している共有者様から「1,000万円で持分を手放してほしい」と提示されたものの、金額の妥当性が分からず、協議も進まない状態でした。
本事例では、共有者間で意見が対立していたことや、他の共有者が実家に居住していたことが査定上のマイナス要因になりました。買い取った後に居住者との調整が必要になり、全体売却や活用をすぐに進められるわけではないためです。
一方で、対象不動産が神奈川県にある戸建てであり、売却対象の持分割合が10分の3と確認できていた点は評価しやすいポイントでした。また、共有者から提示された金額だけで判断せず、買取業者の査定を通じて持分の売却可能額を確認できたことも、売主様にとって大きな意味がありました。
その結果、共有者間の対立や居住者がいる点を考慮しつつも、最終的に10分の3の共有持分を2,500万円で買い取りました。
このように、他の共有者から買取価格を提示されている場合でも、その金額が適正とは限りません。共有者間で話し合いがまとまらないときは、第三者の査定を受けることで、持分の価値や売却の選択肢を確認できる場合があります。
【事例6】兄弟が使用していた建物の共有持分を200万円で買取
続いては、東京都台東区にある建物の共有持分を買い取った事例です。
| 地域 | 東京都 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 2人 |
| 物件種別 | 建物 |
| 買い取った持分割合 | 3分の1 |
| 買い取った金額 | 200万円 |

本件は、兄弟間で共有していた建物についてのご相談です。売主様が3分の1、弟様が3分の2の持分を所有していましたが、実際には弟様が建物を使用しており、売主様は自分の持分を活用しづらい状態でした。
売主様は、弟様の生活状況にも配慮しており、すぐに退去や明渡しを求めたいわけではありませんでした。一方で、固定資産税・都市計画税の滞納もあり、当事者同士での話し合いが進みにくいことから、弊社へ売却をご相談いただきました。
本事例では、他の共有者が建物を使用していることや、税金の滞納があることが査定上のマイナス要因になりました。取得後に使用者との調整や費用負担の整理が必要になるためです。
一方で、共有者は兄弟2人で、売却対象の持分割合も3分の1と確認できていました。また、売主様の売却意思が明確で、共有関係から離れたいという目的もはっきりしていたため、査定を進めやすい案件でした。
そのため、弟様が建物を使用している状況や税金滞納のリスクを考慮しつつ、最終的に建物の共有持分3分の1を200万円で買い取りました。
このように、他の共有者が建物を使用している場合や、税金の滞納がある場合でも、共有持分を売却できるケースがあります。
【事例7】姉妹間の関係悪化により共有持分を2,500万円で買取
次に、東京都中央区にある区分マンションの共有持分を買い取った事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 東京都中央区 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 3人 |
| 物件種別 | 区分マンション |
| 買い取った持分割合 | 3分の1 |
| 買い取った金額 | 2,500万円 |

こちらの売主様は相続により持分を取得されましたが、相続協議時のいざこざが原因で姉妹間の関係が悪化しており、共有状態が深刻なトラブルに発展していました。現地には長女夫妻が居住し、売却や使用料の支払いにも応じてもらえない状況だったため、売主様は共有関係から離れたいと考え、弊社へ売却をご相談いただきました。
本事例では、共有者間の関係が悪化していることや、他の共有者が区分マンションに居住していることが査定上のマイナス要因になりました。取得後に居住者との調整が必要になり、全体売却や活用をすぐに進められるわけではないためです。
一方で、対象不動産が東京都中央区の区分マンションであり、需要の高いエリアにあった点は評価しやすいポイントでした。また、売却対象の持分割合が3分の1と明確で、売主様の売却意思もはっきりしていたため、短期間で査定・買取条件を提示できました。
そのため、共有者間の関係悪化や居住者がいるリスクを考慮しつつも、ご相談から6日で共有持分3分の1を2,500万円で買い取りました。
このように、共有者との関係が悪化しているケースでも、立地や物件種別によっては短期間で共有持分を売却できる場合があります。
【事例8】親族間の協議が整わない土地の共有持分を1,000万円で買取
続いては、相続後の協議がまとまらず、相続手続きが進まないケースでの共有持分買取事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 東京都目黒区 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 6人 |
| 物件種別 | 土地 |
| 買い取った持分割合 | 6分の1 |
| 買い取った金額 | 1,000万円 |

相続後、親族間の話し合いがまとまらず、共有不動産の管理や今後の方針を決めにくい状態でした。対象不動産の固定資産税は売主様が代表して支払っており、費用負担が重くなっていたため、弊社へ売却をご相談いただきました。
本事例では、共有者が6人と多く、親族間の協議が整っていないことが査定上のマイナス要因になりました。取得後に共有者全員の意向確認や費用負担の整理が必要になり、全体売却や活用まで時間がかかる可能性があるためです。
一方で、対象不動産が東京都目黒区の土地であり、不動産需要が見込めるエリアだった点は評価しやすいポイントでした。また、売却対象の持分割合が6分の1と明確で、売主様の売却意思もはっきりしていたため、買取条件を検討しやすい案件でした。
そのため、親族間の協議が整っていないリスクを考慮しつつも、最終的に土地の共有持分6分の1を1,000万円で買い取りました。
このように、相続後の協議がまとまらない場合でも、立地や権利関係の整理状況によっては共有持分を売却できるケースがあります。
【事例9】関係の悪い親族と相続した共有持分を2,000万円で買取
今回は、神奈川県鎌倉市にある戸建ての共有持分を買い取った事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 神奈川県鎌倉市 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 3人 |
| 物件種別 | 一戸建て |
| 買い取った持分割合 | 10分の3 |
| 買い取った金額 | 2,000万円 |

売主様は、お父様の相続により土地・建物それぞれ10分の3の持分を取得しました。しかし、もともと親族関係が良好ではなく、実家にも居住していなかったため、共有不動産を活用できない状態が続いていました。
さらに、共有者である居住者からは、売主様が納得しにくい金額で持分を手放すよう求められており、当事者同士での交渉も難航していました。
本事例では、共有者との関係が悪く、他の共有者が実家に居住していることが査定上のマイナス要因になりました。取得後に居住者との調整が必要になり、全体売却や活用をすぐに進められるわけではないためです。
一方で、対象不動産が神奈川県鎌倉市の戸建てであり、一定の需要が見込めるエリアだった点は評価しやすいポイントでした。また、売却対象が土地・建物それぞれ10分の3の持分であることも明確だったため、査定を進めやすい案件でした。
そのため、親族関係の悪化や居住者との交渉リスクを考慮しつつも、最終的に土地・建物の共有持分10分の3を2,000万円で買い取りました。
このように、関係の悪い親族と相続した共有持分でも、立地や持分割合などの条件によっては売却できるケースがあります。
【事例10】差押え・音信不通の共有者がいる中で共有持分を800万円で買取
続いては、神奈川県横浜市の共有持分を、弁護士からのご依頼で買い取った事例です。
詳細は以下のとおりです。
| 地域 | 神奈川県横浜市 |
|---|---|
| 共有者の人数 | 2人 |
| 物件種別 | 区分マンション |
| 買い取った持分割合 | 8分の3 |
| 買い取った金額 | 800万円 |

依頼は、家庭裁判所から選任された相続財産清算人を務める弁護士の方からでした。物件には義理の兄が居住中でしたが、途中で連絡が取れなくなり、さらに市からの差押えも入っていたため、通常の売却が難しい状態でした。
本事例では、共有者と連絡が取れないこと、居住者がいること、差押えが入っていることが査定上のマイナス要因になりました。取得後に居住者との調整に加え、差押えの内容や解除・抹消の見込みを確認する必要があり、売却・活用までの見通しを立てにくいためです。
一方で、相続財産清算人を通じて売却の前提や権利関係を確認しやすかった点は、査定を進めるうえで評価しやすいポイントでした。また、対象物件が神奈川県横浜市の区分マンションであり、一定の需要が見込める点も考慮しました。
そのため、差押えや音信不通の共有者がいるリスクを踏まえつつも、最終的に区分マンションの共有持分8分の3を800万円で買い取りました。
このように、差押えや音信不通の共有者がいる場合でも、権利関係や売却の前提を整理できれば、共有持分を売却できるケースがあります。
共有持分を少しでも高く売却するためのテクニック
共有持分だけを売却する場合、買主は不動産全体を単独で自由に売却・活用できないため、通常の不動産よりも査定額が下がりやすい傾向があります。
ただし、事前に情報を整理したり、他の共有者との売却方法を検討したりすることで、不要な減額を防ぎ、査定額が低くなりすぎるのを避けられるケースもあります。
共有持分を少しでも高く売却するために、次の方法を検討しましょう。
- 概算の持分価格と査定額を比較する
- 査定額が下がる要因を事前に減らしておく
- 他の共有者に買い取ってもらえないか検討する
- 他の共有者と協力して全体売却や持分のまとめ売りを目指す
共有持分の査定額は、共有者との関係性や物件状況によって変わるため、対策だけで必ず高値になるとは限りません。
とはいえ、弊社の実務でも、必要な情報が整理されている案件や、共有者との調整余地がある案件のほうが、取得後のリスクを読みやすく、価格を検討しやすい傾向があります。
なお、共有持分を売却する際の基本的な流れや注意点については、次の記事でも解説しています。
概算の持分価格と査定額を比較する
共有持分を売却する前に、概算の持分価格を把握しておくと、買取業者から提示された査定額が妥当か判断しやすくなります。
概算の持分価格は、不動産全体の市場価格や自分の持分割合をもとに計算できます。詳しい計算方法については、前述の「共有持分はいくらで売れる?売却相場の計算方法」で解説しています。
ただし、概算の持分価格は「その金額で必ず売れる」という意味ではありません。買取業者の査定額と比較し、金額に大きな差がある場合に「なぜ低く評価されているのか」を確認するための基準として使いましょう。
たとえば、概算の持分価格に対して査定額が大きく低い場合は、他の共有者の居住状況、共有者との連絡可否、抵当権や差押えの有無など、どの要因が価格に影響しているのかを確認することが大切です。
減額理由の説明が曖昧な場合は、別の買取業者にも査定を依頼し、金額と査定根拠を比較しましょう。
弊社に寄せられる相談でも、査定額が低い理由を説明してもらえず不安になったというケースがあります。複数社を比較しておくと、極端に低い査定額を見抜きやすくなります。
査定額が下がる要因を事前に減らしておく
買取業者に共有持分を売却する場合、買取価格は共有関係や権利関係の不確定要素によっても変わります。買主である買取業者が「取得後の確認や調整に時間がかかりそう」と判断するほど、査定額は慎重に見られやすくなります。
そのため、売却前にできる範囲で不明点やトラブルの種を減らしておくことが大切です。具体的には、次のような対応を検討しましょう。
- 登記事項証明書で共有者の人数や持分割合を確認し、売却対象となる権利関係を明らかにしておく
- 登記上の住所や氏名が現在の内容と異なる場合は、住所変更登記・氏名変更登記を済ませておく
- 固定資産税・管理費・修繕積立金などに未清算分がある場合は、支払者・支払時期・金額がわかる資料を整理し、清算できる場合は対応しておく
- 賃貸中の場合は、誰がいつから賃料を受け取っているか、未分配分があるかを整理し、清算できない場合でも査定時に正確に伝える
- 他の共有者との対立を必要以上に深めないよう、売却前の連絡内容や伝えるタイミングに注意する
これらは、買取業者が取得後に行う権利関係の確認や、他の共有者との管理・利用に関する協議の負担を、売却前にできる範囲で減らし、不要な減額を防ぐための対応です。
実務上、登記上の住所変更や氏名変更が済んでいれば、決済前の手続きがスムーズになります。また、固定資産税や賃料収入の清算状況が整理されていれば、売却後に他の共有者から請求や反発を受けるリスクを抑えやすくなります。
すべてを解決してから売却する必要はありませんが、不明点が多いままだと、買取業者は将来の確認・調整コストを査定額に反映することがあります。分かっている事情は事前に整理し、査定時に正確に伝えておきましょう。
共有持分を揉めずに売却する方法については、次の記事も参考にしてみてください。
他の共有者に買い取ってもらえないか検討する
共有持分を高く売却したい場合は、他の共有者に買い取ってもらえないか検討するのも有効です。他の共有者にとって持分を買い取るメリットが大きい場合は、交渉の余地があります。
たとえば、自分を含めて共有者が2人で、対象不動産の持分をすべて相手に売却できる場合、相手は単独所有にできます。将来的な活用や売却がしやすくなるため、相手に資金力と取得意思があれば、買取業者へ売却するよりも、理論上の持分価格に近い水準で話し合える可能性があります。
ただし、共有者間で価格の認識がズレて話が止まることもあります。実務では、売主は「市場価格 × 持分割合」に近い金額を希望する一方で、買主側の共有者は「親族間だから安くしてほしい」「固定資産税を負担してきた分を差し引きたい」と主張するケースも少なくありません。
価格で話が止まりそうな場合は、複数社の査定額や周辺相場を示し、金額の根拠を共有しましょう。実務上も、希望額だけを伝えるより、査定書や周辺の売却事例をもとに説明したほうが、相手も検討しやすくなります。
他の共有者と協力して全体売却や持分のまとめ売りを目指す
可能であれば、自分の持分だけでなく、他の共有者の持分もまとめて売却できないか検討しましょう。売却できる持分割合が大きくなるほど、買主側が取得後に活用・売却しやすくなるため、自分の持分だけを売る場合よりも高値で評価される可能性があります。
もっとも高値を目指しやすいのは、共有者全員で合意して不動産全体を売却する方法です。不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、合意できれば通常の不動産売却に近い形で買主を探せるため、共有持分だけを売るよりも高く売れる可能性があります。
全員の合意が難しい場合でも、一部の共有者と協力して持分をまとめて売却できれば、買主が取得できる持分割合が大きくなるため、単独の少数持分よりも高く評価される可能性があります。
たとえば、3人で3分の1ずつ共有している不動産では、自分の3分の1だけを売却するよりも、2人分の持分をまとめて3分の2として売却したほうが、買主にとって取得するメリットは大きくなります。
買取業者の実務でも、取得する持分割合が大きいほど、取得後に協議・調整が必要な共有者が減り、全体売却や残る共有者との持分整理の見通しを立てやすくなります。そのため、買主側にとって取得するメリットが大きくなり、単独の少数持分よりも高い評価につながるケースがあります。
共有持分の売却相場を知るための査定方法4つ
共有持分の売却価格は、共有者との関係性や物件の利用状況、抵当権・差押えの有無などによって変わるため、より現実的な金額を知りたい場合は査定を利用するのも有効です。
査定方法ごとに、向いている場面は異なります。共有持分の査定方法と主な使い分けは、次のとおりです。
- 机上査定:まず概算額を知りたいとき
- 訪問査定:現地の状態を踏まえて、より具体的な査定額を知りたいとき
- 不動産鑑定士査定:共有者間売買・遺産分割・裁判資料など、客観的な評価資料が必要なとき
- AI査定:不動産全体の概算価格を手軽に知りたいとき
なお、いずれの査定方法でも、提示された査定額がそのまま最終的な売却保証額になるとは限りません。共有持分では、共有者の居住状況や連絡可否、抵当権・差押え、未登記の相続、境界・接道の問題などが後から判明し、最終的な買取価格が変わることもあります。
査定額を確認する際は、その金額がどの情報を前提にしたものか、どのような場合に再査定となるのかもあわせて確認しておきましょう。
1.机上査定
机上査定とは、現地を直接確認せず、所在地や持分割合、建物の築年数、周辺の取引事例、固定資産税評価額などをもとに概算額を出す方法です。「簡易査定」と呼ばれることもあります。
登記事項証明書や固定資産税評価額などの資料があれば査定の精度は上がりますが、相談時点ですべての書類がそろっている必要はありません。実務でも、「持分割合が分からない」「登記事項証明書をまだ取得していない」という段階で相談を受けるケースはあります。
机上査定は、まず概算額を知りたい場合に向いています。訪問を受けずに相談でき、早ければ当日〜数日で概算額を確認できることがあります。
そのため、「まだ売却するか決めていない」「共有者に知られずに相場だけ確認したい」「他の共有者に売却を知られたくない」という段階でも利用しやすい方法です。
ただし、机上査定で分かるのは、あくまで現時点の情報をもとにした目安です。実務では、後から「他の共有者が住んでいる」「共有者と連絡が取れない」「住宅ローンや差押えがある」といった事情が分かり、実際の買取価格が変わることがあります。
机上査定を受ける際は、所在地や持分割合だけでなく、共有者の人数、誰が住んでいるか、共有者と連絡が取れるか、ローンや差押えがあるかなども分かる範囲で伝えましょう。最初に事情を伝えておくほど、後から査定額が大きく変わるリスクを抑えやすくなります。
2.訪問査定
訪問査定とは、不動産会社や買取業者が現地を確認したうえで査定額を出す方法です。建物や土地の状態を直接確認できるため、机上査定よりも具体的な査定額を出しやすくなります。
訪問査定では、主に以下のような点を確認します。
- 建物の状態(築年数・外壁・屋根・室内の傷みなど)
- 土地の状態(形状・日当たり・眺望・境界など)
- 前面道路や接道状況
- 上下水道・ガスなどのライフラインの整備状況
- 周辺環境や近隣トラブルの有無
具体的に売却を進めたい場合や、机上査定よりも具体的な査定額を知りたい場合は、訪問査定を検討するとよいでしょう。
とくに、建物の老朽化が進んでいる、私道に接している、境界がはっきりしないといった物件では、現地を確認したほうが価格のブレを抑えやすくなります。
ただし、共有持分の売却では、他の共有者が住んでいて室内に入れない、売却を知られたくないなどの理由で、訪問査定が難しいケースもあります。実務上も、建物の傷み具合や残置物の量が分からないまま相談に来られるケースは少なくありません。
このような場合、買取業者は外観や登記情報、周辺相場、聞き取り情報をもとに査定し、取得後に判明するリスクを価格に反映します。
他の共有者に無断で室内確認を進めるとトラブルにつながることがあるため、現地確認の可否や進め方は、共有持分の取扱実績がある業者へ相談しながら判断しましょう。
なお、登記・権利関係の確認や共有者の利用状況の把握に時間がかかる場合は、通常の不動産査定より査定結果が出るまでに日数を要することがあります。
3.不動産鑑定士査定
不動産鑑定士査定とは、国家資格者である不動産鑑定士が不動産の経済価値を判定し、不動産鑑定評価書を作成する方法です。正式には「不動産鑑定評価」と呼ばれます。
不動産鑑定士査定は、単に「共有持分を売ったらいくらになるか」を知りたい場合よりも、価格の妥当性を客観的に示す必要がある場面に向いています。たとえば、以下のようなケースです。
- 共有者間で価格の認識が大きくズレている
- 遺産分割協議で不動産の評価額を決める必要がある
- 共有物分割請求などの裁判資料として評価額を示したい
- 親族間売買で価格の妥当性を説明したい
上記のようなケースでは、当事者同士の希望額を出し合うだけでは話がまとまりにくいことがあります。不動産鑑定評価書があれば、第三者の専門家による評価資料として、価格を話し合う際の土台にしやすくなります。
ただし、不動産鑑定士査定は費用と時間がかかります。依頼内容や物件の規模によって異なりますが、費用は数十万円程度が目安になることが多く、結果が出るまでに数週間から1ヵ月程度かかる ケースもあります。
また、不動産鑑定士査定は、買取業者に売却する場合の実際の買取価格を知りたいときには向いていないことがあります。鑑定評価額は不動産の価値を示す資料であり、買取業者の買取価格とは算出の考え方が異なるためです。
買取業者は、取得後に他の共有者との協議や管理対応が必要になる可能性、再販までの期間、法的手続きに移行する可能性、資金回収までのリスクなども踏まえて価格を出します。
たとえば、鑑定評価額で持分価格が1,200万円とされた場合でも、他の共有者が居住していて全体売却や持分整理の見通しが立たないケースでは、買取価格がそれより低くなることがあります。
そのため、買取業者への売却価格を知りたい場合は、不動産鑑定士査定ではなく、まず共有持分の買取業者に査定を依頼するのが現実的です。
4.AI査定
AI査定とは、過去の取引データや物件情報をもとに、AIが不動産価格を算出する方法です。フォームに所在地や面積、築年数などを入力するだけで、短時間で概算価格を確認できます。
AI査定は、他の共有者へ持分を売却する際に、不動産全体のおおよその価格を確認し、理論上の持分価格を出したい場合に向いています。
たとえば、不動産全体の価格が4,000万円、持分割合が2分の1であれば、理論上の持分価格は2,000万円です。ただし、AI査定の結果はあくまで概算であり、共有者間で価格を話し合う際の出発点として考えましょう。
また、買取業者へ相談する前に、おおよその価格感を知りたい場合にもAI査定は利用できます。ただし、共有持分の実際の買取価格は、AI査定の結果と差が出ることがあります。
実務上も、共有者が居住している、連絡が取れないといった事情がある場合は、買取業者の査定額はAI査定より低くなることがあります。
そのため、共有者間で話し合うために不動産全体の目安を知りたい場合はAI査定、買取業者へ共有持分を売却する場合の価格を知りたい場合は、共有者との関係性や物件状況まで確認してもらえる買取業者の机上査定や正式査定を利用するとよいでしょう。
共有持分の売却でトラブルを避けるための買取業者の選び方
共有持分を売却する際は、買取価格だけでなく、売却前後に起こりうるトラブルを見極め、必要に応じて専門家と連携できる業者かを確認することが大切です。
不動産全体ではなく自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却できます。 しかし実際には、他の共有者が住んでいる、共有者と連絡が取れない、固定資産税や管理費の負担で揉めている、相続登記が終わっていないなど、売却前から問題を抱えているケースも少なくありません。
弊社に寄せられる相談でも、こうした事情を背景に「他社に査定を依頼したが、共有者と連絡が取れないことや居住者がいることを理由に断られた」「査定額の根拠が曖昧で不安だった」「売却後に他の共有者から連絡が来ないか心配」といった声があります。
このようなトラブルを避けるためには、次の3つを確認しておきましょう。
- 共有持分の買取実績が豊富か確認する
- 弁護士や司法書士などの士業と連携しているか確認する
- 査定額の根拠や契約条件を丁寧に説明してくれるか確認する
共有持分の買取実績が豊富か確認する
共有持分の売却では、通常の不動産売却とは異なり、他の共有者の居住状況、連絡可否、費用負担、登記や担保の有無などが取引の進行に影響します。そのため、買取業者を選ぶ際は、共有持分特有の事情を扱った実績があるかを確認しましょう。
たとえば、次のような案件では、共有持分の扱いに慣れているかどうかで対応に差が出ます。
- 他の共有者と何年も連絡を取っていない
- 他の共有者が不動産に住み続けている
- 相続人同士で売却方針がまとまっていない
- 離婚後も元配偶者との共有状態が続いている
- 固定資産税や管理費の負担で揉めている
- 住宅ローンや差押えが関係している
実務上、共有持分の対応範囲が限られる業者では、査定時点では前向きな回答をしていても、共有者との関係性や登記上の問題が分かった段階で買取を見送るケースがあります。
また、契約後に想定外の問題が分かり、住所変更登記や権利証紛失時の本人確認手続き、抵当権・差押えの確認などが必要になって、決済日が延びることもあります。
一方で、共有持分の買取実績が豊富な業者であれば、査定時に共有者の居住状況や連絡可否、過去のトラブル、登記・ローン・差押えの有無などを確認し、売却後に起こりうる問題を見込んだうえで取引を進めやすくなります。
共有持分の買取実績を確認する際は、公式サイトの買取事例や相談実績を見るのも有効です。ただし、単に実績数を見るだけでなく、自分の状況に近い案件を扱った経験があるかを確認しましょう。
なお、買取実績を公開していない業者が必ずしも悪いわけではありません。その場合は、無料相談の段階で「共有者と連絡が取れないケースを扱ったことがあるか」「他の共有者が住んでいる物件でも買い取れるか」「相続や離婚が絡む共有持分の対応経験があるか」などを聞いておくとよいでしょう。
弁護士や司法書士などの士業と連携しているか確認する
共有持分の売却では、弁護士や司法書士などの士業と連携している業者かどうかも確認しておきましょう。
共有者との関係性に問題がある場合や、相続登記・住所変更登記・抵当権・差押えなどが絡む場合、売却前に専門家の確認が必要になることがあります。
共有者との間で請求・交渉・法的主張が絡む場合は弁護士、持分移転登記や住所変更登記は司法書士、売却益や税金の不安がある場合は税理士というように、内容に応じて相談先が変わります。
とくに、次のような場合は士業連携の有無を確認しておきましょう。
- 共有者から売却に反対され、強い抗議や請求を受けている
- 共有者同士で費用負担や使用方法を巡って揉めている
- 相続登記が終わっていない
- 登記上の住所や氏名が現在の内容と異なる
- 権利証や登記識別情報を紛失している
- 抵当権や差押えが付いている
買取業者が売主の代理人として、共有者と法的な交渉を行うわけではないため、トラブルの内容に応じて、弁護士や司法書士などへ相談できる体制があるかを確認することが大切です。
実務では、登記や権利関係の確認が不十分なまま契約を進めると、決済直前になって「住所変更登記が必要だった」「抵当権の抹消が必要だった」「相続登記を先に済ませる必要があった」と分かり、手続きが止まることがあります。
相談時には、「士業と連携していますか」だけでなく、追加手続きが必要になった場合に誰が案内してくれるのかまで確認しておくと、売却途中のトラブルを防ぎやすくなります。
査定額の根拠や契約条件を丁寧に説明してくれるか確認する
共有持分の売却では、査定額の根拠や契約条件を丁寧に説明してくれる業者を選びましょう。
共有持分は、物件の市場価格だけでなく、共有者との関係性、居住者の有無、持分割合、ローン・差押え、境界・接道・私道の状況などによって、査定額や契約条件が変わります。
説明が曖昧なまま契約すると、後から「聞いていた金額と違う」「費用負担があると知らなかった」「売却後の共有者対応をどうすればよいか分からない」といったトラブルにつながる可能性があります。
弊社の相談現場でも、「他社から査定額だけ提示されたが、根拠の説明がなかった」「契約直前に共有者の居住状況を理由に減額された」「売却後に他の共有者から連絡が来た場合の対応を説明されていなかった」といった相談を受けることがあります。
無料相談や査定時には、少なくとも次の点を確認しておきましょう。
- 査定額の根拠を説明してくれるか
- 査定額が変更になる可能性があるタイミングと条件を説明してくれるか
- 契約日・決済日・入金時期を明確にしてくれるか
- 売主側で負担する費用や、売却前に対応すべき作業が残るか
- 契約不適合責任や告知事項の扱いを説明してくれるか
- 売却後に他の共有者から連絡が来た場合、誰がどこまで対応するのかを説明してくれるか
査定額の高さだけを強調し、減額条件や売却後の注意点を説明しない業者には注意が必要です。
買取価格・費用負担・解除条件などの契約条件について質問しても回答が曖昧だったり、メリットだけを説明して契約を急がせたりする場合は、すぐに契約せず、ほかの業者にも相談しましょう。
買取業者の選び方は、次の記事も参考にしてみてください。
共有持分を買取業者に売却する流れ
共有持分を買取業者に売却する場合、一般的には次の流れで進みます。
- 買取業者に査定依頼を出す
- 査定額や売却条件を確認する
- 買取業者と売買契約を結ぶ
- 決済と持分移転登記を行う
なお、共有持分の売却では、共有者との関係性や物件の使われ方も査定額に影響します。
弊社に寄せられる相談でも、「共有者と何年も連絡を取っていない」「他の共有者が住み続けている」「過去の管理費や固定資産税の負担で揉めている」といった事情があるケースは少なくありません。
こうした事情が最初から分かっていれば、買取業者側も取得後のリスクを見込みやすく、現実的な査定額を提示しやすくなります。そのため、査定依頼の段階で、分かっている事情はできるだけ具体的に伝えておくことをおすすめします。
1.買取業者に査定依頼を出す
まずは、共有持分の買取に対応している業者へ査定を依頼します。「共有持分を少しでも高く売却するための業者の探し方」でも解説していますが、複数社に査定依頼することが重要です。
査定前に整理しておきたい情報や、契約・登記までに確認されやすい書類は次のとおりです。
| 確認されやすい内容 | 整理しておきたい情報・書類 | 査定で見られるポイント |
|---|---|---|
| 物件の基本情報 | 所在地、不動産の種類(土地・戸建て・マンションなど)、間取り図、建物図面など | 物件の市場価格や流通性を確認するために使われます。 |
| 権利関係 | 自分の持分割合、共有者の人数、登記事項証明書(相続未登記の場合は戸籍謄本等) | 売却対象となる持分の範囲や、共有者の人数による調整リスクを確認します。 |
| 利用状況 | 誰が居住・使用しているか、賃貸中の場合は賃貸借契約書 | 取得後に使用者との調整が必要になるか、賃料収入があるかなどを確認します。 |
| 共有者との関係性 | 共有者と連絡が取れるか、売却に反対している人がいるか、過去のトラブルの有無 | 取得後に話し合いや全体売却を進められる可能性があるかを確認します。 |
| 費用負担の状況 | 固定資産税の納税通知書・課税明細書、管理費・修繕積立金の明細書 | 税金や管理費の滞納、共有者間の清算トラブルがないかを確認します。 |
| 土地・境界の状況 | 測量図、境界確認書、境界確定図など | 隣地との境界トラブルや、将来的な売却・活用時のリスクを確認します。 |
| 担保・差押えの有無 | 住宅ローン残債、抵当権、差押えの有無が分かる資料 | 売却時に金融機関や債権者との調整が必要かを確認します。 |
| 登記手続きに関する書類 | 権利証または登記識別情報、印鑑証明書、住民票、住所変更の履歴がわかる附票など | 売買契約後の持分移転登記をスムーズに進められる状態かを確認します。 |
すべての書類をそろえる必要はありませんが、物件や共有関係に関する情報を整理しておくと、買取業者が権利関係や取得後のリスクを把握しやすくなり、査定額の精度も高まりやすくなります。
なお、印鑑証明書や住民票などは、契約や登記の段階で必要になる書類です。査定依頼の時点で急いで取得する必要はありませんが、権利証や登記識別情報を紛失している場合、登記上の住所と現住所が異なる場合、住宅ローンや差押えがある場合は、手続きに時間がかかることがあります。
実務でも、契約直前に「権利証が見つからない」「登記上の住所が古いままだった」と判明し、決済日を調整するケースがあります。そのため、不明な点や不安な事情がある場合は、査定依頼の段階で買取業者に伝えておくとスムーズです。
2.査定額や売却条件を確認する
査定額が提示されたら、金額だけでなく売却条件も確認しましょう。とくに確認しておきたいのは、以下の点です。
- 提示された金額が概算なのか、正式な買取価格なのか
- どのような事情が判明すると減額される可能性があるのか
- 契約日・決済日・入金時期はいつになるのか
- 売却後に売主側で対応すべきことが残るのか
- 権利証の紛失や住所変更登記など、必要書類に不備がある場合でも進められるのか
実務では、最初の査定時に1,000万円と提示されていても、後から「他の共有者が居住している」「土地の境界が未確定だった」「登記上の住所が古いままだった」といった事情が分かり、買取価格や決済日が変更になることがあります。
そのため、査定額だけで判断せず、金額の根拠や減額される可能性がある条件まで確認しておくことが大切です。契約日や決済日、入金時期もあわせて確認しておけば、売却までの流れを具体的に把握しやすくなります。
3.買取業者と売買契約を結ぶ
査定額や売却条件に納得できたら、買取業者と売買契約を結びます。契約時には、売買契約書の内容を確認し、買取価格・決済日・費用負担・引き渡し条件などに問題がなければ署名押印を行います。
とくに共有持分の売買契約で確認したいのは、以下の項目です。
- 売却する持分割合が正しく記載されているか
- 売買代金と支払い時期が明確か
- 契約後に減額される条件がないか
- 手付金・違約金・契約解除の条件が明確か
- 固定資産税や管理費の清算方法
- 境界・越境・残置物などの扱い
- 契約不適合責任や告知事項の扱い
- 共有者への通知や説明を誰が行うのか
契約不適合責任とは、売却後に契約内容と異なる問題が見つかった場合に、売主が修補・代金減額・損害賠償などを求められる可能性がある責任のことです。
共有持分の買取に慣れている業者では、共有者との関係性や物件状況などのリスクを査定額・契約条件に織り込んだうえで、契約不適合責任を免責とする契約を提案するケースがあります。
免責条項が定められていれば、売却後に境界・越境、建物の不具合などが判明した場合でも、契約で定めた範囲については、売主が追加対応や損害賠償を求められるリスクを抑えやすくなります。
ただし、売主が知っている問題を伝えなかった場合まで責任を免れられるとは限りません。越境の指摘や雨漏り、共有者との深刻なトラブル、過去の費用負担や賃料収入の未清算などを把握している場合は、契約前に告知し、契約書で扱いを明確にしておきましょう。
契約書の内容や法的な不安がある場合は弁護士へ相談し、登記手続きや登記簿上の権利関係については司法書士に確認することをおすすめします。
4.決済と持分移転登記を行う
売買契約を結んだあとは、契約で定めた日に決済を行います。決済では、買主である買取業者から売買代金を受け取り、売主は登記に必要な書類を引き渡します。そのうえで、通常は司法書士が、共有持分を買主へ移すための登記申請を進めます。
持分移転登記で必要になる主な書類は、以下のとおりです。
| 書類 | 概要 |
|---|---|
| 登記申請書 | 法務局へ提出する申請書です。司法書士に依頼する場合は、司法書士が作成するのが一般的です。 取得先:司法書士または売主・買主が作成 費用:書類の作成自体に公的な手数料はかかりません。ただし、登記申請時には登録免許税や司法書士報酬が別途かかることがあります。 |
| 登記原因証明情報 | 売買によって共有持分が移転したことを証明する書類です。売買契約書の内容をもとに作成されます。 取得先:司法書士または売主・買主が作成 費用:書類の作成自体に公的な手数料はかかりません。ただし、登記申請時には登録免許税や司法書士報酬が別途かかることがあります。 |
| 権利証または登記識別情報 | 売主がその共有持分の権利者であることを確認するための書類です。紛失している場合でも、持分移転登記が絶対にできないわけではありません。ただし、法務局の事前通知や司法書士による本人確認情報の作成など、通常とは異なる手続きが必要になり、決済日程や費用に影響することがあります。 取得先:売主が保管しているものを用意 費用:取得費用は不要。紛失時に本人確認情報を作成する場合は、司法書士報酬が別途かかることがある |
| 売主の印鑑証明書 | 売主本人の実印を確認するための書類です。登記手続きでは、発行から3か月以内のものが必要になります。 取得先:市区町村役場・コンビニ交付など 費用:300円前後 ※自治体により異なる |
| 固定資産税評価証明書 | 登録免許税の計算などに使われる書類です。固定資産税の課税明細書で足りる場合もありますが、評価証明書や評価通知書が必要になることもあるため、事前に司法書士や法務局へ確認しましょう。 取得先:不動産所在地の市区町村役場 費用:300円〜400円前後 ※自治体により異なる |
| 買主側の住所証明情報 | 買主の住所を確認するための書類です。買主が法人の場合は、会社法人等番号や会社の登記事項証明書などを用いることがあります。 取得先:買主である買取業者が用意 費用:売主負担にならないケースが多い |
| 委任状 | 司法書士に登記申請を依頼する場合に必要です。共有持分の売却では、買取業者側が司法書士を手配し、売主が委任状に署名・押印する流れが一般的です。 取得先:司法書士が作成し、売主が署名・押印 費用:司法書士報酬に含まれることが多い |
| 住民票 | 登記上の住所と現住所が異なる場合などに必要です。住所変更登記をあわせて行う場合は、追加書類が必要になることがあります。 取得先:市区町村役場・コンビニ交付など 費用:300円前後 ※自治体により異なる |
なお、上記は一般的な必要書類です。住宅ローンの抵当権が残っている場合や、差押えがある場合、登記上の住所・氏名が現在の内容と異なる場合は、追加書類や別の登記手続きが必要になることがあります。決済日程に影響する可能性もあるため、該当する事情がある場合は早めに買取業者へ確認しておきましょう。
法務局の処理状況にもよりますが、登記申請後、問題がなければ1〜2週間程度で登記が完了するケースが一般的です。ただし、書類に不備がある場合や、住所変更登記・抵当権抹消登記などを同時に行う場合は、さらに時間がかかることがあります。
持分移転登記の手続きや、司法書士に登記申請を依頼する際の委任状については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有持分を少しでも高く売却するための買取業者の探し方
共有持分を少しでも高く売却したい場合は、複数の買取業者に査定を依頼しましょう。物件の条件や共有関係によっては査定額に数十万円〜数百万円単位の差が出ることもあるため、可能であれば2~3社に査定依頼することをおすすめします。
ただし、共有持分の売却では、査定額が高い業者を選べばよいとは限りません。
机上査定では高く見えても、登記・権利関係や物件状況の確認後に、他の共有者の居住状況、住宅ローンや差押えの有無、接道・境界・私道の状況などが判明し、最終的な買取価格や契約条件が変わることがあります。
そのため、複数社の査定額を比較する際は、金額だけでなく、前述の「共有持分の売却でトラブルを避けるための買取業者の選び方」で解説したように、共有持分の買取実績や士業との連携体制も確認しておきましょう。
実務上、共有持分への対応範囲が限られる業者では、取得後の調整期間や権利関係の確認にかかる負担を大きく見込み、査定額が低めに出るケースがあります。
反対に、共有持分の買取実績が豊富な業者であれば、取得後の調整期間や再販までの見通しを踏まえて査定できるため、物件の状況によってはリスクを過度に見込みすぎず、実態に即した価格を提示できる可能性があります。
弊社の実務でも、相談者から「他社では900万〜950万円程度の査定だった」と共有された案件について、共有関係や物件状況、取得後の整理見込みを詳しく確認した結果、1,000万円前後で評価を検討できたケースがあります。
ただし、査定額の差は単に高く買う・安く買うという違いだけでなく、「どの情報を前提に査定しているか」「後から減額される可能性があるか」「契約条件にどこまでリスクを織り込んでいるか」などによっても生じます。
共有持分の売却後に起こりうるトラブルと対処法
共有持分は、自分の持分のみであれば他の共有者の同意がなくても売却できます。
ただし、法律上は売却できても、売却後に他の共有者から連絡や反発を受けるケースはあります。実務でも、親族間で共有している不動産では「事前に相談してほしかった」「知らない第三者が共有者になるとは思わなかった」といった不満が出ることは少なくありません。
また、売却前の費用負担や収益の清算、売却後の確定申告など、共有持分を手放した後に確認が必要になる事項もあります。
共有持分を売却する際は、次のような売却後に起こりやすいトラブルと、その対処法を把握しておくことが大切です。
- 他の共有者から連絡や反発を受ける可能性がある
- 売却前の管理費用や収益の清算が必要になることがある
- 売却益が出た場合は確定申告が必要になる
他の共有者から連絡や反発を受ける可能性がある
自分の共有持分だけを売却する場合、原則として他の共有者の同意は不要です。
ただし、第三者や買取業者に売却すると新しい共有者が加わるため、他の共有者から「知らない人が共有者になるとは思わなかった」と反発されるケースがあります。
また、共有者が3人以上いる不動産で、既存の共有者1人に持分を売却した場合は、残りの共有者から「自分にも声をかけてほしかった」「一部の共有者だけで話を進めたのか」と不満が出ることがあります。
筆者の体感に過ぎませんが、共有持分の買取相談では「共有者と直接やり取りしたくない」という理由で売却を希望される方も多く、売却後の連絡を不安に感じている方は少なくありません。
共有持分を買取業者に売却した後は、買主である買取業者が新たな共有者となるため、売却後の利用方法や管理方針に関する協議は、原則として買主側が対応することになります。
そのため、売主本人が売却後も他の共有者と利用方法や管理方法について協議を続ける必要は基本的にありません。
ただし、売却前の費用清算や契約内容に関する確認など、売主本人に確認が必要な事項が残ることはあります。契約前に「売却後に共有者から連絡が来た場合、どのように対応すればよいか」を買取業者に確認しておくと、対応方針を整理しやすくなります。
弊社で対応した事例でも次のようなケースがありました。
長年、兄弟で実家を共有していたものの、弟は固定資産税や維持管理の負担をせず、兄がほとんどの管理を担っていたケースです。
相談者である兄は、これ以上管理を続けることに精神的な負担を感じ、弊社に共有持分のみを売却しました。
ところが、売却後に弟から「なぜ勝手に売ったのか」と強い連絡が入り、相談者様が再び対応に悩まれることになりました。
弊社では、相談者様に「売却後の不動産の利用・管理に関する連絡窓口は、買主である弊社が対応します」とお伝えしました。弟様に対しても、売却後の利用・管理に関する連絡は弊社宛てにいただくよう案内しました。
実務上、共有持分の売買成立後に「共有者から繰り返し連絡がくる」といったご相談を受けることは少なくありません。売却後の共有者対応が不安な場合は、契約前に買取業者の対応方針を確認しておきましょう。
売却前の管理費用や収益の清算が必要になることがある
共有持分を売却する際は、売却前に発生した固定資産税や修繕費、賃料収入などの扱いに注意が必要です。費用負担や収益分配が曖昧なままだと、売却後に清算を求められることがあるため、売買契約前に整理しておきましょう。
共有名義不動産にかかる固定資産税は、自治体との関係では共有者が連帯して納付義務を負いますが、共有者間の内部負担としては、原則として持分割合に応じて清算する考え方になります。修繕費や火災保険料などの管理費用も、共有者間では持分割合を基準に整理するのが一般的です。
実務上多いのが、固定資産税の納付書が代表者1人に届き、その人が数年分を立て替えているケースです。共有者間で負担ルールを決めていない場合、売却のタイミングや売却後に「過去に立て替えた分を清算してほしい」と連絡が入り、話がこじれることがあります。
また、共有名義不動産を賃貸しており、他の共有者だけが賃料収入を受け取っている場合は、持分割合に応じた収益分配が問題になることもあります。
こうした費用負担や収益分配の整理が必要な場合は、弁護士や税理士などの士業に確認し、売却前に清算できるのか、売却価格や契約条件に反映するのか、売却後に別途整理するのかを検討しておきましょう。
買取業者に売却する場合は、士業と連携している業者を選ぶことで、内容に応じて適切な専門家を紹介してもらえることがあります。
たとえば、固定資産税の立替金や未分配の賃料収入について士業に整理を相談し、その整理内容をもとに買取業者が査定額や契約条件へ反映する、といった進め方が考えられます。
弊社で対応した事例でも次のようなケースがありました。
兄弟で相続した土地について、兄が固定資産税を数年間立て替えていたものの、弟との間で明確な清算ルールを決めていなかったケースです。
弟から共有持分の売却相談を受けた時点で、将来的に兄から「これまで立て替えた固定資産税をどうするのか」と確認される可能性がありました。
そのため、弊社では納税通知書や支払い状況を確認したうえで、必要に応じて連携先の士業へ相談する流れをご案内しました。固定資産税の立替分をどのように整理するか確認したうえで、その内容を踏まえて査定額や契約条件を検討しました。
固定資産税の立替金や未分配の賃料収入などがある場合の清算方法や売却後の対応方針は、買取業者によって異なります。
そのため、売買契約を結ぶ前に「売却価格へ反映するのか」「別途清算が必要なのか」「他の共有者から請求や確認が来た場合、どのような対応方針になるのか」を確認しておくことが大切です。
売却益が出た場合は確定申告が必要になる
共有持分を売却して利益が出た場合は、譲渡所得にかかる税金の対象となり、原則として確定申告が必要です。
共有持分の売却では、売却価格そのものではなく、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して課税されます。譲渡所得が出ているかどうかは、次の式で確認します。
取得費とは、不動産の購入代金や購入時の仲介手数料、登記費用など、その不動産を取得するためにかかった費用のことです。譲渡費用とは、売却時の仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代など、売却するために直接かかった費用を指します。
上記の計算で譲渡所得が出た場合、適用される税率は不動産の所有期間によって変わります。土地や建物の譲渡所得は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
| 種類 | 所有期間 | 税率 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
※上記の税率は、所得税・復興特別所得税・住民税を含めた税率です。
たとえば、所有期間7年の共有持分を1,000万円で売却した場合でも、取得費や譲渡費用によって次のように税額が変わります。
| 取得費・譲渡費用 | 譲渡所得 | 税金の目安 |
|---|---|---|
| 1,500万円 | 1,000万円-1,500万円=-500万円 | 利益が出ないため税金は発生しない |
| 900万円 | 1,000万円-900万円=100万円 | 100万円×20.315%=20万3,150円 |
実務上、共有持分は通常の不動産売却より売却価格が低くなりやすいため、取得費や譲渡費用を差し引くと譲渡所得が出ないケースもあります。
さらに、マイホームの共有持分を売却する場合は、一定の要件を満たせば3,000万円特別控除や10年超所有軽減税率の特例を使える可能性があります。特例を使う場合は確定申告が必要ですが、税額が発生しない、または税額を抑えられるケースもあります。
一方で、先祖代々の土地や、長期間所有している間に土地価格が大きく上がった不動産では、共有持分の売却でも譲渡所得が出ることがあります。
とくに相続で取得した共有持分は、被相続人が不動産を取得したときの取得費や取得時期を引き継いで計算します。そのため、売却価格が高くなくても、取得費が低い場合は譲渡所得が出ることがあるため注意が必要です。
弊社で対応した事例でも次のようなケースがありました。
先祖代々引き継がれてきた土地の共有持分を所有していたものの、相談者様自身は土地を利用しておらず、固定資産税の負担だけが続いていたケースです。
他の共有者には土地を売却する意思がなく、管理や税金の負担から解放されたいという理由で、相談者様は自分の共有持分のみを売却しました。売却後に確認したところ、長期間保有している土地で取得費が低く、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いても譲渡所得が出る可能性がありました。
そのため、弊社から連携先の税理士をご紹介し、相談者様には売買契約書や取得費がわかる資料、譲渡費用の領収書などを整理したうえで、確定申告について税理士に相談していただきました。
弊社の実務でも、共有持分の売却後に譲渡所得にかかる税金が発生しないケースはあります。ただし、譲渡所得が出ているか判断しにくい場合や、特例を使えるか迷う場合は、自己判断で申告不要と決めつけず、税理士や税務署に確認しましょう。
不動産売却でかかる税金については、次の記事も参考にしてみてください。
まとめ
共有持分の売却相場は売却先によって異なり、他の共有者に売却する場合は「不動産全体の市場価格 × 持分割合」に近い水準、買取業者に売却する場合はその1/3 ~1/2程度が目安です。
ただし、実際の売却額は計算式だけで決まるわけではありません。
他の共有者や第三者の居住・利用状況、共有者との連絡状況や協議のしやすさ、持分割合、住宅ローン残債や抵当権の状況、接道・境界・私道の状況、建物の状態などによって価格は変動します。
少しでも高く売却したい場合は、共有者との関係や連絡状況を踏まえたうえで、他の共有者への売却や不動産全体の売却ができないか検討しましょう。
共有者が直接買い取る場合や、共有者全員の合意を得て全体売却できる場合は、共有持分だけを第三者に売るより高い価格で売却できる可能性があります。
実務では、共有者と連絡が取れない、他の共有者が住んでいる、意見が対立しているなど、共有者への売却や全体売却が難しいケースもあります。
その場合は、共有持分の買取実績が豊富な業者へ複数社査定を依頼し、査定額の根拠や契約条件、売却後に想定される共有者対応、登記・契約手続きの説明を比較しながら、納得して依頼できる業者を見極めましょう。
共有持分の売却に関するよくある質問
共有持分は共有者に同意がなくても売却できますか?
自分が所有している共有持分のみであれば、原則として他の共有者の同意がなくても売却できます。
一方で、不動産全体を売却する場合や、共有不動産の形状・効用を大きく変えるような変更行為を行う場合は、原則として共有者全員の同意が必要です。
また、自分の共有持分だけを売却する場合、原則として共有者への事前通知は不要です。ただし、売却後に他の共有者から「事前に相談してほしかった」と反発を受けるケースもあります。
さらに、買主が新たな共有者になるため、残った共有者は、その買主との間で不動産の使用方法や管理費用の負担などについて話し合いが必要になる場合があります。
共有者との関係が良好な場合は、事前に共有者への売却や全体売却を打診しておくのも一つの方法です。余計なトラブルを避けやすくなるだけでなく、共有者が直接買い取る、または全体売却に進めることで、共有持分のみを第三者に売るより高い価格で売却できる可能性があります。
不動産会社や買取業者に断られた共有持分は売却できないのでしょうか?
一度断られた場合でも、共有持分の買取実績が豊富な業者であれば、売却できる可能性があります。
一般的な不動産会社では、共有者との調整や売却後の権利関係の整理が難しいため、共有持分だけの売却を断られることがあります。
とくに、他の共有者が居住している、共有者と連絡が取れない、共有者間で対立している、相続登記が未了になっているといったケースでは、通常の仲介で買主を見つけるのは難しくなりやすいです。
また、買取業者であっても、共有持分の買取実績が少ない場合は対応できなかったり、売却後の調整リスクを正確に見込めず、査定額が低く出たりすることがあります。
一方で、共有持分の買取実績が豊富な業者であれば、共有者との関係性や物件状況、売却後に想定される調整リスクを踏まえて買取できる可能性があります。
ただし、権利関係や物件の状態によって査定額や必要な手続きは変わるため、まずは共有持分の買取実績がある業者に相談してみるとよいでしょう。
共有持分の売却で費用はかかるのでしょうか?
共有持分を売却する際は、売却方法や物件の状況によって費用がかかることがあります。
売主側で発生しやすい主な費用は以下のとおりです。
- 売買契約書に貼付する印紙代:200円〜3万円程度(売却価格が1億円以下の場合)
- 印鑑証明書や住民票などの必要書類の取得費:1通あたり数百円程度
- 抵当権抹消登記・住所変更登記などが必要な場合の登録免許税:不動産1個につき1,000円
- 上記の登記を司法書士に依頼する場合の費用:2万〜5万円程度
印紙代は売却価格によって変わります。たとえば、共有持分の売却価格が500万円超1,000万円以下であれば5,000円、1,000万円超5,000万円以下であれば1万円、5,000万円超1億円以下であれば3万円が目安です。売却価格が1億円を超える場合は、印紙代もさらに高くなります。
上記以外にも、売却益が出た場合は譲渡所得税・住民税の対象になることがあります。相続で取得した共有持分の登記がまだ済んでいない場合は、売却前に相続登記の費用が必要です。また、買取ではなく仲介で売却する場合は、成約時に仲介手数料が発生します。
実際にいくらかかるかは、売却価格、取得費、所有期間、住宅ローンや登記の状況によって変わります。税金の具体的な計算は税理士、登記の要否や手続きは司法書士に確認しながら進めましょう。




