共有持分の売買契約書とは?作成の書式や記載例など徹底解説

共有持分を売却する際には、「売買契約書」の作成が必要です。親族や知人など個人間での共有持分の売買を検討している場合、「簡単な契約書なら自分で作成できる」と考える方もいるかもしれません。
しかし、不動産売買は法的な権利が複雑に絡む重大な取引です。法律の知識や経験が不足していると、契約書の内容によって思わぬトラブルが発生するリスクがあります。
このようなトラブルを防止するためにも、共有持分の売却時には売買契約書の作成が重要です。
不動産の売買を仲介業者に依頼すれば、通常は仲介業者が契約書を作成してくれますが、個人間での取引の場合は、当事者同士で契約書を作成することも不可能ではありません。その場合、あくまでイメージではありますが、下記のような売買契約書を作成します。
□共有持分売買契約書のイメージ

※画像1枚に収めており、簡略化した売買契約書のイメージになります。実際の売買契約書とは異なりますのでご注意ください。
たとえ相手が契約書を作成し、自分が確認するだけの場合でも、記載内容の抜け漏れや不利な条項が含まれていないか、しっかりとチェックすることが大切です。
とはいえ、契約書の作成や内容確認には法的な専門知識が求められるため、不備がないかを自分で判断するのは難しいでしょう。契約後に、契約の解除や損害賠償を請求されたり、実際には不利な条件で取引していることもあり得ます。
そのため、そもそもですが個人間での不動産売買はリスクが高くおすすめできません。どうしても個人間で取引を行う場合は、トラブルを未然に防ぐためにも、契約書の作成や内容の確認を不動産業者、弁護士、または司法書士といった専門家に依頼することを強く推奨します。
本記事では、個人間での共有持分の売買を検討されている方向けに、共有持分を売却するときに作成する「不動産売買契約書」のひな形や作成時の注意事項、作成を依頼できる専門家を解説していきます。
目次
共有持分の売却に必要な不動産売買契約書とは
不動産売買契約書は、売買契約を結ぶ際に取引内容を整理し、まとめた書面です。不動産売買契約書を交わすことで、売主・買主の双方が取引内容に相違がないかを確認し、合意したことが記録として残ります。
そもそも契約とは、2人以上の当事者が、お互いに合意することで成立する法律行為です。契約自体は口頭でも成立しますが、契約書がなければ取引に合意したことはもちろん、合意した内容を確認することができません。契約書を交わすことで、合意した内容が書面として残るため、合意内容の証拠となり、トラブルを未然に防ぐことができます。
不動産売買契約書には、対象の不動産情報や売主・買主の情報、売買代金、手付金、支払期日、所有権の移転・引き渡し期日などが記載されます。土地・建物の情報には、地番(登記簿上の住所)や面積、隣地との土地の境界などが含まれます。
ちなみに、不動産会社が直接の買主になる場合、売主の契約不適合責任はなくなることが一般的です。
売買契約書は不動産業者が作成することが一般的
一般の人が不動産売買をする場合、多くは不動産業者を通じて取引されます。不動産業者には、売買契約書の作成・交付する法律上の義務があるうえ、契約手続きにも慣れていることから、不動産業者が不動産契約書を作成するのが一般的です。なお、不動産業者が作成・交付する売買契約書については、法律によって記載すべき項目まで定められています。
「書面の交付」
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、(中略)書面を交付しなければならない。
e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第37条
個人間で不動産売買を行う場合は、売主と買主が話し合って、売買契約書を作成します。個人間の売買においては契約書作成・交付の義務はないものの、トラブル回避のため必ず作成するようにしましょう。
個人間で取引をする場合、売買契約書に記載すべき内容や規定のひな形はありません。しかし、記載内容の漏れや不備があると、どちらか一方が大きな損をすることになったり、契約解除を求められたりとトラブルに発展します。不動産や法律に関する専門的な知識がない場合は、個人間の取引の場合では契約書作成代行を行っている不動産業者、または弁護士や司法書士に作成を依頼することが推奨されています。
相手方が作成した契約書を確認する場合でも、不動産業者や専門家に依頼し、確認してもらうことをおすすめします。契約書の作成は当事者の誰が作成しても構いませんが、交渉や文面作成の主導権を握れる作成側が有利な立場にあります。基本的に相手が作成した契約書は相手に有利になるように作られるがため、自分に不利な条項が記載されていないか、専門家にチェックしてもらったほうが安心でしょう。
共有持分の売買契約書と通常の契約書の違い
共有持分の不動産売買契約書も、通常の不動産売買契約書と作成の流れや記載内容に大きな違いはありません。売買契約書に、持分割合と自己持分のみの売却であることを明記すれば、共有持分のみを売却することが可能です。
持分割合は、共有者が所有している権利の割合です。例えば、夫婦での共同購入の場合なら購入時に負担した金額の割合で決まり、相続の場合なら多くが法定相続分に従って決まります。
そのほか、「契約不適合責任の免責」「設備修復義務の免責」についても契約書に明記します。この2つについては、共有持分の売買契約書を作成する際の3つの注意点にて詳しく解説します。
共有持分の不動産売買契約書の作成方法
共有持分の不動産を売買する際に、「このひな形を必ず使わなければならない」という決まった契約書様式があるわけではありません。実務上は、取引の内容や当事者の関係性、物件の状況に応じて、既存の不動産売買契約書をベースに調整しながら作成されます。
もっとも、まったくの白紙から契約書を作るケースはほとんどなく、多くの場合は、一般的な不動産売買契約書の構成を踏まえたうえで、「共有持分の売買であること」に合わせて表現や条文を整理したひな形が用いられます。
共有持分の売買契約書でも、基本的な構成は通常の不動産売買契約書と大きく変わりません。契約書の冒頭で売主・買主を特定し、売買の目的物や代金、支払条件を定め、そのうえで所有権移転、引渡し、契約解除、契約不適合責任といった条項が続く流れが一般的です。
ただし、共有持分の売買では、不動産全体ではなく「持分のみ」を売買対象とする点や、他の共有者が契約当事者ではない点など、通常の売買とは前提が異なります。そのため、ひな形をそのまま流用するのではなく、どの部分をどのように書き換えるべきかを理解したうえで使うことが重要です。
ここからは、実務でよく用いられる不動産売買契約書の形式をベースに、共有持分の売買で使われることが多い契約書のひな形を、条項ごとに分けて全文掲載しています。
売買契約書に入れる情報を整理する
共有持分の売買契約書を作成する際は、まず「どのような条件で売買を行うのか」を整理することから始めます。
たとえば、ある土地について、共有者の一人が自分の持分だけを第三者へ売却し、売買代金は300万円、代金の支払いと同時に持分移転登記を行う、という条件で取引を行うケースを想定してみましょう。
このような場合、契約書では「誰が売主で、誰が買主なのか」「どの不動産の、どの共有持分を売買するのか」といった前提関係を、最初に明確に記載する必要があります。そのため、契約書の冒頭部分では、次のように売主・買主を特定します。
ここでは、売主・買主の氏名や住所を、本人確認書類や登記事項証明書と一致する形で記載します。共有持分の売買では、後に登記手続きを行うことを前提とするため、この段階での記載の正確性が非常に重要になります。
続いて、契約書の「売買の目的物」の欄に、対象となる不動産と共有持分を記載します。先ほどの条件を契約書に落とし込むと、次のような書き方になります。
土地
所在地:○○市○○町
地番:○番○
地目:宅地
地積:○○㎡
持分:2分の1
このように、共有持分の売買では、不動産全体ではなく「持分のみ」を売買対象として明記することが不可欠です。実際の利用状況や感覚ではなく、あくまで登記簿の記載を基準にして書く点が、通常の不動産売買契約書との大きな違いといえます。
この段階で、売主・買主・不動産・持分の関係を正確に整理しておくことで、後の売買代金の記載や、所有権移転登記の手続きをスムーズに進めることができます。
売買の対象となる共有持分を契約書に明記する
共有持分の売買契約書で最も重要なのが、「何を売買の対象としているのか」を誤解の余地なく示すことです。
たとえば、ある土地について複数人で共有しており、そのうち一人が自分の持分だけを第三者に売却する場合、売買の対象は「土地そのもの」ではありません。あくまで、登記上その人が有している共有持分のみが売買の対象になります。
この点を契約書上で明確にするため、売買の目的物の欄では、登記事項証明書の記載をそのまま写す形で、不動産の表示と持分割合を記載します。
土地
所在地:○○市○○町
地番:○番○
地目:宅地
地積:○○㎡
持分:2分の1
このように、「持分:2分の1」と明記することで、売買の対象が土地全体ではなく、共有持分のみであることが明確になります。
共有持分の売買では、この記載が曖昧だと、後から「土地全部を売ったつもりだった」「持分だけとは思っていなかった」といった認識のズレが生じやすく、トラブルの原因になります。そのため、実務では「登記簿どおり」「持分まで含めて正確に書く」ことが強く意識されます。
売買代金・支払条件を具体的に記入する
売買の対象を特定したあとは、売買代金と支払条件を契約書に落とし込みます。共有持分の売買では、価格が一般的な不動産相場とは異なるケースも多いため、金額と支払条件を明確にしておくことが特に重要です。
たとえば、共有持分2分の1を300万円で売却し、契約締結時に全額を支払う場合、契約書では次のように記載します。
売買代金総額 金300万円
手付金 金0円
残代金 金300万円(令和○年○月○日まで)
このように、手付金を設定せず、残代金として一括で支払う形を取ることも、共有持分の売買では実務上よくあります。
重要なのは、「いくらを、いつまでに支払うのか」が契約書を見れば一目で分かる状態にしておくことです。ここが曖昧だと、支払時期を巡るトラブルや、解除・違約金の判断が難しくなります。
所有権移転・引渡し・登記のタイミングを決める
共有持分の売買では、売買代金の支払いとあわせて、持分移転登記をいつ行うのかを明確にしておく必要があります。
実務では、残代金の支払いと同時に所有権移転を行うケースが一般的で、その日付を契約書で次のように定めます。
令和○年○月○日
この日付は、単なる形式的な記載ではありません。売買代金の支払日であると同時に、所有権が移転する基準日となり、固定資産税などの精算にも影響します。
共有持分の売買では他の共有者の同意は不要ですが、持分移転登記を行わなければ、法的には所有者が変わったことになりません。
そのため、契約書の段階で、登記まで含めたスケジュールを明確にしておくことが重要です。
トラブル防止のために重要条項も確認する
共有持分の売買契約書では、売買条件以外の条項についても確認しておく必要があります。
契約書の条文構成自体は、通常の不動産売買契約書と大きく変わりませんが、共有持分の売買では、共有持分の売買では、とくに次の条項が実務上重要になります。
まず確認したいのが、手付解除に関する条項です。
第15条 売主は、買主に受領済の手付金の倍額を現実に提供して、又買主は、売主に支払済の手付金を放棄して、それぞれこの契約を解除することができる。
この条文は、「一定の段階までは、理由を問わず契約を解除できる」というルールを定めたものです。
共有持分の売買では、契約後に他の共有者との関係が悪化したり、想定していなかった事情が発覚することも少なくありません。そのため、いつまでなら解除できるのか、解除した場合にどのような金銭的負担が生じるのかを、この条文で必ず確認しておく必要があります。
次に重要なのが、契約違反による解除・違約金に関する条項です。
第17条 売主又は買主は、相手方がこの契約に定める債務を履行しないとき、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除することができる。
2 前項の契約解除がなされた場合、売主又は買主は、相手方に標記の違約金を請求することができる。
この条文は、代金が支払われない、引渡しが行われないといった契約違反が起きた場合の最終的な対応を定めています。
共有持分の売買では、売主・買主のどちらか一方が契約を履行できなくなると、高額な違約金が発生する可能性があります。「解除できるかどうか」だけでなく、解除した場合にいくら支払うことになるのかまで含めて確認しておくことが重要です。
さらに、共有持分の売買で特に意識しておきたいのが、契約不適合責任に関する条項です。
第17条 売主又は買主は、相手方がこの契約に定める債務を履行しないとき、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除することができる。
2 前項の契約解除がなされた場合、売主又は買主は、相手方に標記の違約金を請求することができる。
この条文は、引渡し後に不動産に不具合が見つかった場合の責任範囲を定めています。共有持分の売買では、売主が不動産全体の管理状況を把握していないケースも多く、引渡し後に問題が発覚することもあります。
その場合に、「売主がどこまで責任を負うのか」「買主は修補や損害賠償、解除を求められるのか」などすべてこの条文を基準に判断されます。
共有持分の売買では、不動産全体を自由に調査できないまま契約に至ることも多く、引渡し後に建物や土地に関する不具合が判明するケースもあります。その際、売主がどこまで責任を負うのか、買主はどのような対応を求められるのかは、この条項で判断されます。
これらの条項は、金額や日付のように目立つ部分ではありませんが、トラブルが生じた際には、最終的な判断材料となる重要な規定です。
共有持分の売買契約書では、条件面だけでなく、こうした条文の位置や内容にも目を通したうえで、全体を確認していくことが重要です。
共有持分の不動産売買契約書のひな形
共有持分の不動産を売買する際に、「このひな形を必ず使わなければならない」という決まった契約書様式があるわけではありません。実務上は、取引の内容や当事者の関係性、物件の状況に応じて、既存の不動産売買契約書をベースに調整しながら作成されます。
もっとも、まったくの白紙から契約書を作るケースはほとんどなく、多くの場合は、一般的な不動産売買契約書の構成を踏まえたうえで、「共有持分の売買であること」に合わせて表現や条文を整理したひな形が用いられます。
共有持分の売買契約書でも、基本的な構成は通常の不動産売買契約書と大きく変わりません。契約書の冒頭で売主・買主を特定し、売買の目的物や代金、支払条件を定め、そのうえで所有権移転、引渡し、契約解除、契約不適合責任といった条項が続く流れが一般的です。
ただし、共有持分の売買では、不動産全体ではなく「持分のみ」を売買対象とする点や、他の共有者が契約当事者ではない点など、通常の売買とは前提が異なります。そのため、ひな形をそのまま流用するのではなく、どの部分をどのように書き換えるべきかを理解したうえで使うことが重要です。
ここからは、実務でよく用いられる不動産売買契約書の形式をベースに、共有持分の売買で使われることが多い契約書のひな形を、条項ごとに分けて全文掲載しています。
共有持分の売買契約書ひな形|契約書の冒頭・売買の目的物
共有持分の売買契約書では、最初に「何を売るのか」を誤解の余地なく確定させることが重要です。
ここで曖昧になりやすいのが、「不動産そのもの」ではなく売主が有する共有持分のみが売買対象である点です。そのため、目的物の条項では、対象不動産の表示に加えて持分割合(○分の○)を必ず明記し、「不動産全体を売買するものではない」ことも確認条項として入れるのが実務上安全です。
以下は、こうした前提を反映した条文例です。
(売買の目的物及び売買代金)
第1条
売主は、次条に定める不動産について、売主が有する共有持分のみ(以下「本持分」という。)を、標記の代金をもって買主に売り渡し、買主はこれを買い受けた。
(売買の目的物)
第2条
本契約の売買対象は、次に表示する不動産についての共有持分とする。
土地
所在地:
地番:
地目:
地積:
持分:○分の○
2 本契約は、不動産全体の所有権を売買するものではなく、売主が有する共有持分のみを対象とすることを、売主および買主は相互に確認する。
共有持分の売買契約書ひな形|売買代金・支払条件に関する条項
次に、売買代金と支払条件を定めます。共有持分の売買では、通常の売買と比べて価格の考え方や支払方法がケースによって振れやすく、「いつ・いくら・どう支払うか」を条文上で明確にすることがトラブル防止につながります。
手付金を設定する場合は「手付の性質(解除の可否)」とも連動するため、金額だけでなく支払タイミングも含めて整合するように条文化します。
第3条
買主は、売主に対し、手付としてこの契約締結と同時に標記の金額を支払う。
2 手付金は、残代金支払いの際、売買代金の一部に無利息で充当する。
(売買代金の支払時期および方法)
第4条
買主は、売主に対し、売買代金を標記の期日までに、現金(振込送金を含む)により支払う。
共有持分の売買契約書ひな形|所有権移転・引渡し・登記に関する条項
共有持分の売買では、「引渡し」よりも共有持分移転登記のタイミングが実務上でも重要になります。
他の共有者の同意は不要であっても、登記をしなければ第三者に対して権利を主張できず、売買が完了したことになりません。そのため、所有権(持分)の移転時期と登記申請のタイミングは、代金決済とセットで定めるのが一般的です。
第5条
本持分の所有権は、買主が売買代金の全額を支払い、売主がこれを受領したときに、売主から買主に移転する。
(共有持分移転登記)
第6条
売主は、売買代金全額の受領と同時に、買主名義への共有持分移転登記申請手続きを行うものとする。
2 前項の登記手続きに要する費用は、買主の負担とする。ただし、売主側の事情により必要となる登記については、売主の負担とする。
共有持分の売買契約書ひな形|物件の状態・負担関係に関する条項
共有持分の売買であっても、不動産に関するリスクがゼロになるわけではありません。
ただし、共有持分売買は「不動産全体を単独で所有できない」前提があるため、境界や付帯設備などの条項はそのまま入れると実務とズレることがあります。この見出しでは、売主が把握している範囲での告知、持分に付随する担保権の整理、公租公課の清算など、共有持分でも必要性が高い部分を中心に条文化します。
第7条
売主は、本持分に関して売主が知り得る範囲の事項について、買主に告知するものとする。
(負担の消除)
第8条
売主は、本持分に設定されている抵当権その他の担保権で、買主の共有持分としての権利行使を妨げるものがある場合には、所有権移転時までにこれを消除する。
(公租・公課の負担)
第9条
本不動産に対して賦課される公租・公課は、標記の基準日をもって、売主と買主との間で日割精算するものとする。
共有持分の売買契約書ひな形|契約解除・違約金に関する条項
解除・違約金の条項は、トラブルが起きたときに最終的な結論を決める保険のような条文です。
共有持分の売買では、契約後に事情が変わって履行できなくなるケースもあり得るため、手付解除の可否や解除できる期限、債務不履行時の解除・違約金の扱いは事前に明確化しておく必要があります。
以下は、解除や違約金を整理するための基本条文例です。
第10条
売主は受領済みの手付金の倍額を提供して、また買主は支払済みの手付金を放棄して、相手方が本契約の履行に着手するまでの間、本契約を解除することができる。
(契約違反による解除)
第11条
売主または買主は、相手方が本契約に違反した場合、相当期間を定めて催告したうえで、本契約を解除することができる。
共有持分の売買契約書ひな形|契約不適合責任・その他の重要条項
契約不適合責任や反社会的勢力排除条項は、契約締結時には軽視されがちですが、問題が起きた際には実務上の影響が大きい条項です。
共有持分の売買では、売主が不動産全体の管理状況を把握しきれないこともあるため、責任範囲をどこまで負わせるかを、取引の実態に合わせて整理します。以下は、共有持分売買で組み込まれやすい条文例です。
第12条
本持分について契約不適合がある場合における売主の責任は、売主の責めに帰すべき事由がある場合に限り、協議のうえ解決するものとする。
(反社会的勢力の排除)
第13条
売主および買主は、自らが反社会的勢力に該当しないことを相互に確約する。
共有持分の売買契約書ひな形|署名・押印・契約締結部分
最後は、契約の成立を証する署名・押印欄です。
共有持分の売買では、売主が複数人になることもあるため、契約当事者全員が署名・押印できる欄を用意し、誰が当事者かを最終的に明確にします。以下は、最低限の形として整理した記載例です。
売主および買主が署名押印のうえ、各自1通を保有する。
令和 年 月 日
<売 主>
住所
氏名 印
<買 主>
住所
氏名 印
共有持分の売買契約書を作成する際の3つの注意点
共有持分の売買契約では、不動産全体を売買するときにはない注意事項が存在します。
- 契約不適合責任について記載する
- 売却後に設備の不備が見つかっても責任を負わない
- 実測売買ではなく公簿売買として取引を行う
個人間で売買する場合、特に注意が必要です。契約書を作成するのが相手方だったとしても、契約の当事者としてしっかりと押さえておきましょう。
「契約不適合責任」について記載する
共有持分のみの売却では、不動産売買契約書に売主の契約不適合責任を負わない旨を記載するのが一般的です。
契約不適合責任とは、売主が目的物を引き渡した後に契約内容と適合していないことが判明した際に、売主が買主に対して負う責任です。以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年の民法改正によって「契約不適合責任」という名称に変更されました。
売買契約を締結し、物件を引き渡した後に、契約時に買主が知らされていない欠陥が見つかった際に、買主は売主に対して、「損害賠償請求」「契約解除」「追完請求」「代金減額請求」を行って責任を問うことができます。
- 損害賠償請求:(買主が損害を被り、売主に落ち度があった場合)損害賠償を請求できる
- 追完請求:目的物の修補や代替品・不足分の引き渡しを請求できる
- 代金減額請求:(追完請求で売主の対応がない場合)契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる
- 契約解除:(追完請求で売主の対応がない場合)買主から一方的に契約の解除を請求できる
一般的な個人間の不動産売買では、買主を守るために契約不適合責任に関する条項を設けます。しかし、共有持分のみの売却では、対象の不動産に他の共有者が居住しており、内見ができないことも珍しくありません。この場合、契約不適合責任の免責を契約書に盛り込み、売主の責任の範囲を制限することで取引後のトラブルを防止するのです。
なお、契約不適合責任の免責は売主が欠陥を知らなかった場合のみが対象であり、知っていたにも関わらず告知しなかった欠陥がある場合は、契約不適合責任を問われることになります。小さな欠陥であっても、必ず告知してから売却するようにしましょう。
契約不適合責任は、法律によって定めはあるものの、契約書に異なる契約内容で合意した記載があれば、法律より契約書の内容が優先される「任意規定」です。そのため、当事者間で免責の範囲や特約を設けることができます。例えば、契約不適合責任を問う記載がある契約書でも、損害賠償責任を免責にしたり、契約不適合責任を追及できる期間を短く設定したりすることもできるのです。
ちなみに、不動産会社が直接の買主になる場合、売主の契約不適合責任はなくなることが一般的です。
売却後に設備の不備が見つかっても責任を負わない
共有持分の売却においては、引き渡し後の設備の不備についても売主が責任を負わない旨を契約書に明記しましょう。
前項で解説したとおり、売却した不動産に何かしらの欠陥があった場合、原則として売主が責任を負うこととなります。そのため、不動産全体を売却する場合、不動産の引き渡し後に設備における欠陥が発覚すれば、売主に修復義務が発生します。しかし、共有物件の場合、各共有者は一部の権利しか持っておらず、設備という不動産全体の問題の責任を問うには、持分割合に応じて修復の責任を負う範囲を具体的に定めなければなりません。設備は劣化や故障によってトラブルになりやすい項目です。責任を取ることになると、売主にとってはかなりの負担となります。
よって、設備に関しては、売主の責任を問わない、つまり修復の費用を負担しないことで取引することが大切です。個人間での取引で売主になる場合、契約不適合責任を負うリスクをできるだけ下げることが重要といえます。
実測売買ではなく公簿売買として取引を行う
共有持分の売却では、「公簿売買」で取引を行います。公簿売買とは、登記簿に記載された面積を基準にして取引を行う方法です。不動産の売却においては、実際に土地を測量して算出された土地を基準に取引を行う「実測売買」が選択されることもあります。登記簿上の面積と測量して得た面積に差異があることも多く、公簿売買だとトラブルになることも珍しくありません。ただし、測量にはお金も時間もかかるため、個人間の取引では公簿売買が選択されるのが一般的です。
公簿売買は、時間的・金銭的コストをかけずに売買を進められますが、実際の面積よりも小さい・大きい地籍で売買する可能性が生まれます。売却後に、取引した土地の面積が登記簿に記録された面積よりも小さかったことが分かれば、売主は責任を追及されかねません。
そのため、売却後に実際の面積と登記簿上の面積に差異があっても、責任の追及や金銭の請求を行わないことを契約書に記載しておくことが重要です。
その他に共有持分を売却する際の必要書類一覧
共有持分の売買においては、売買契約書の他に下記5つの書類を準備しなければなりません。
- 重要事項説明
- 権利証または登記識別情報
- 土地測量図及び境界確認書(土地の売却の場合)
- 身分証明書・住民票
- 印鑑・印鑑証明書
1つずつ概要と入手方法について確認しましょう。
重要事項説明書
重要事項説明書(重説)とは、物件や取引の内容など契約上重要な情報を記載した書面です。宅地建物取引業法により、不動産業者を介して行う取引、または不動産売買が売主になる取引においては、宅地建物取引士による重要事項説明書の作成と、重要事項の説明が義務付けられています。他方で、不動産業者が買主になる取引では、重要事項説明は不要、重要事項説明書を渡すだけでよいとされています。
「重要事項の説明等」
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、(中略)書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第35条
個人間の不動産取引では、売主に重要事項説明書の作成や重要事項の説明義務はありません。しかし、不動産売買契約書と同様に、義務がなくても重要事項説明書を作成することが推奨されています。重要事項説明書なしで契約を進めた場合、後から言った・言わないのトラブルになる可能性があります。特に、不動産の欠陥に関する事項は、契約不適合責任に問われるか否かを左右する重要な情報です。万が一に揉めたとしても、重要事項説明書を交付していれば買主側の「知らされていない」という意見は通らないため、トラブル防止のために作成をおすすめします。
なお、重要事項説明書は、宅地建物取引士(宅建士)しか作成できません。個人が勝手に作成しても法的な効力を発揮しないため、作成に際しては宅建士に依頼しましょう。多くの事務所で不動産調査・重要事項説明書作成がセットになっており、土地の広さやマンション・戸建てなどによって金額は代わりますが、10万円程度で依頼できます。売買契約書も作成一緒に依頼できるため、まとめて依頼すると安心です。
権利証または登記識別情報
「権利証」または「登記識別情報」は、不動産の正式な所有者であることを証明するためのものです。2005年に不動産登記法が改正されるまでは、「登録済証(通称、権利証)」が発行されていましたが、以降は12桁の数字と記号の組み合わせである「登記識別情報」が通知されています。
権利書は、1つの物件で1冊しか発行されなかったため、共有不動産の一部の共有者は、共有持分を売りたくても権利証が手元になく、売却できないケースが多々ありました。しかし、登記識別情報は名義人ごとに異なる符号が発行され、各人が受け取ることができます。この改正により、共有持分のみの売却がスムーズに行えるようになりました。登記識別情報は、不動産の名義人となる登記申請をした後に1度のみ法務局から通知されます。紛失してしまった場合、再発行はできません。
権利証を持っていない、または登記識別情報を紛失した場合は、法務局が本人確認を行う「事前通知制度」や、弁護士・司法書士が本人確認を行う「資格者代理人による本人確認情報制度」を使って、自分が土地の所有者であることを証明しなければなりません。権利証または登記識別情報がない場合は、手続きが煩雑になるため、売却の進め方については不動産仲介会社や専門家に相談するとよいでしょう。
土地測量図及び境界確認書(土地の売却の場合)
所有している不動産に土地が含まれる場合、隣地・道路との境界線を明確にするために「土地の測量図」や「境界確認書」の準備も必要です。
土地測量図とは、土地の面積を算出するための図面を指します。土地の測量図には3種類あり、「地積測量図」のみ法務局で取得できます。ただし、地積測量図では、隣地との境界線を証明できないこともあります。そのため、土地を含む不動産の売買では、原則として土地を測量し、隣地の土地所有者と境界線を確認したことを証明する「確定測量図」が必要とされます。
そのほか、隣地との境界を測量し、境界線を確認したことを証明する書類である「境界確認書」でも隣地との境界を証明できます。
土地の境界が曖昧な場合、売却後に買主が近隣との境界トラブルに巻き込まれるリスクがあったり、土地の評価額が下がったりするため売却は困難になります。確定測量図や境界確認書がない場合は、測量会社や土地家屋調査士に依頼し、土地境界確定測量を行うのが一般的です。
身分証明書・住民票
不動産の売買では、自分が不動産の所有者本人であることを証明するための身分証明書が必要です。
身分証明書には、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど、顔写真の付いたものが求められます。登記簿上の住所が、現住所と異なる場合は、3ヶ月以内に発行された住民票も必要です。住民票は、市町村役場で、またはマイナンバーカードを持っている場合はコンビニエンスストアで発行できます。
印鑑・印鑑証明書
売買契約書には実印で捺印するため、印鑑と3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書も用意しましょう。認印でも契約自体は可能ですが、契約の安全性・信ぴょう性を担保するために、実印を使うのが一般的です。
実印と認印、いずれも形状の定義はなく、使用するタイミングや役割に違いがあります。実印は、不動産売買や自動車の購入などの重要なシーンで使用され、認印は荷物の受け取りや雇用契約など日常的なシーンで使用されます。さらに、実印は市町村役場で印鑑登録をして初めて実印として認められます。
高額な取引になる重要なシーンにおいては、その印鑑が本人のものであることを証明するために、印鑑とは別に印鑑登録証明書も必要です。印鑑登録を行っている印鑑がないという場合は、事前に登録を済ませておきましょう。
共有持分の売買契約書作成は専門家への依頼がおすすめ
売買契約書には法律の専門的知識が必要なので、専門家に依頼したほうが安心です。
| 弁護士 | 司法書士 | 行政書士 | 税理士 | 土地家屋調査士 | 不動産鑑定士 | 宅地建物取引士 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| トラブル解決 | 〇 | × | × | × | × | × | × |
| 売買契約書作成 | 〇 | 〇 | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
| 重要事項説明書作成 | × | × | × | × | × | × | 〇 |
| 不動産調査 | 〇 | × | × | × | 〇 | 〇 | 〇 |
| 測量 | × | × | × | × | 〇 | × | × |
| 権利関係調査 | 〇 | 〇 | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
| 登記関係 | 〇 | 〇 | × | × | 〇 | × | × |
| 税務関係 | × | × | × | 〇 | × | × | × |
一覧表をみて分かるように、各士業が担当する業務は異なり、状況によって適切な依頼先が変わることもあります。都度、相談先を探すとなると手間も時間もかかるため、専門家の紹介も受けられる買取業者を選ぶのがおすすめです。
なお、不動産の買取は、個人の買主を探す仲介役をしてくれる不動産仲介業者よりも、業者が直接不動産を買い取る不動産買取業者のほうが得意としています。同じ不動産業界でも「仲介」と「買取」は分野が異なるうえ、共有持分の購入を希望する個人はほとんどいないため、共有持分の売却では不動産買取業者の利用が向いているといえます。
まとめ
本記事では、共有持分を売却するときに作成すべき「不動産売買契約書」について詳しく解説しました。買取業者に依頼する場合は業者が作成してくれますが、個人間で取引する場合は当事者間で話し合って作成しなければなりません。相手が契約書を作成し、自分は確認するだけという場合でも、記載内容の抜け漏れや、不利になる条項が勝手に追加されていないかの確認が必要です。
契約書の作成・内容の確認に不備がないかは、専門知識がないと判断できません。引き渡し後に契約不適合責任を追及されたり、実は損をしていたりということもあるため、トラブル防止のためにも、契約書の作成は専門家に依頼するのがおすすめです。ただし、不動産の売買では、契約書作成以外にも重要事項説明書の作成や登記、税申告など法律や手続きに専門的な知識が必要とされます。
共有持分売却の必要書類についてよくある質問
売買契約書や重要事項説明書は誰が用意すればいい?
売買契約書は当事者の誰が作成しても問題ありません。重要事項説明書は、宅地建物取引士に依頼して用意します。
不動産売買の多くは、不動産業者を通じて取引されます。そのため、一般的には不動産売買のプロである、業者側が売買契約書を用意します。個人間で作成する場合は、司法書士や弁護士などの契約書作成に精通した専門家、または代行サービスを行っている不動産業者に依頼するのが一般的です。
重要事項説明書は、宅地建物取引士しか作成できず、他の士業の人や個人が作ったものでは法的効力を持ちません。必ず宅地建物取引士に依頼するようにしましょう。
単独名義不動産の売却と共有持分の売却の手続き内容で大きな違いはある?
単独名義の不動産と共有持分のみの売却において、手続き内容に大きな違いはありません。いずれも、不動産業者に相談し、売却することになります。ただし、共有持分のみの売却ではなく、自分が一部権利を持っている不動産全体を売却したい場合、「共有者全員の合意を得る」というステップが必要になります。
共有名義の不動産の場合、自分の共有持分のみの売却に関しては、自身の判断で行えます。しかし、共有不動産を全体を売却する場合、共有者全員の同意を得て、全員分の必要書類を揃えなければなりません。売買契約書には、共有者全員の署名・捺印が必要です。
共有持分は、専門家に頼らずに売却可能?
共有持分の売却は、個人間の話し合いのみで完結することができます。しかしながら、不動産の個人間売買はトラブルに発展することが多く、当事者に法律や専門知識がある場合を除き、専門家に依頼するのが得策でしょう。
トラブルになっている、またはトラブルになりそうな場合は、トラブル解決を含めて弁護士に依頼するのがおすすめです。トラブルになっていない場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士には、売買契約書の作成や登記手続き、必要書類の収集などを依頼できます。ただし、測量や税務相談など専門外の業務もあるため、必要に応じて他の専門家にも依頼が必要になる可能性があります。
司法書士に売買契約書の作成を依頼する場合、依頼する業務内容や不動産の状況などによって異なりますが、相場は1万〜3万円です。
共有持分を専門の買取会社に売却する流れは?
- ほかの共有者に売却することを通知する
- 買取業者に査定をしてもらう
- 売却先と売買契約を締結する
- 決済を済ませて所有権移転登記を行う
- 確定申告のために譲渡所得税を算出する
1. ほかの共有者に売却することを通知する
共有持分の売却は、他の共有者の同意なしでも可能ですが、多くの人は親族でも知人でもない業者や個人との権利を共有することに抵抗感を覚えます。トラブルにならないよう、事前に共有持分の売却を予定していることを他の共有者に通知しましょう。トラブルに発展した場合は、弁護士への相談がおすすめです。
2. 買取業者に査定をしてもらう
複数の不動産買取業者で相見積もりを取ることで、より高く売却できる可能性があります。一般的な不動産買取業者は、活用しにくい共有持分の買取を避けることが多いため、共有持分に特化した専門の買取業者に依頼するのがおすすめです。不動産価値は、市場価値を調べたり、不動産鑑定士に査定してもらって、事前に目安を把握しておくとよいでしょう。
3. 売却先と売買契約を締結する
業者から提示された金額に納得したら、売買契約書を作成し、必要書類を揃えて契約を交わします。測量が必要な場合は、土地家屋調査士や測量会社との連携が必要になることもあります。
4. 決済を済ませて所有権移転登記を行う
契約書で合意した支払期日までに決済を完了させます。所有権移転登記は、原則として売主と買主が共同で行います。手続きについては、業者がサポートをしてくれるのが一般的ですが、不安がある場合は司法書士に相談してもよいでしょう。測量から必要な場合は、土地家屋調査士に依頼することになります。
5. 確定申告のために譲渡所得税を算出する
共有持分を売却して得た利益は、確定申告で譲渡所得として申告しなければなりません。確定申告は毎年2~3月に行われますが、税金の計算に不慣れな場合は事前に税額を算出しておきましょう。税金に関することは、税理士に相談できます。

