共有名義から単独名義に変更する方法!費用・税金・シミュレーションも解説

共有名義の不動産は、持分の売買・贈与・放棄、相続、財産分与などによって、特定の1人へ持分を集約し、単独名義に変更できます。
共有名義から単独名義に変更する主な8つの方法と、それぞれが向いているケースは次のとおりです。
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共有名義から単独名義への変更には、登録免許税や司法書士報酬のほか、方法によって不動産取得税・贈与税・譲渡所得税・相続税などがかかります。費用を比べる際は、登記費用だけでなく、持分の買取代金や税金、必要に応じて発生する測量・裁判手続きなども含めて総額で考えることが大切です。
実務では、費用の安さだけで方法を決めることはできません。たとえば、不動産を残したくても持分の買取資金を用意できなければ買取は難しく、贈与であれば買取資金は不要でも贈与税の負担が大きくなることがあります。 また、住宅ローンが残っている場合や、共有者に行方不明者・認知症・未成年者がいる場合は、持分を移すだけでは手続きを進められません。
まずは「誰を単独所有者にするのか」「単独名義にした後も所有するのか、それとも最終的に売却するのか」を決め、そのうえで実行できる方法と費用を比較することが大切です。
本記事では、共有名義から単独名義に変更する8つの方法をはじめ、具体的な手続きや必要書類、費用・税金のシミュレーション、変更が難しい場合の対処法まで詳しく解説します。
共有名義から単独名義に変更する8つの方法
共有名義から単独名義に変更する主な方法は次の8つです。
- 他の共有者に自分の持分を売却する
- 他の共有者の持分を買い取る
- 共有持分を贈与する
- 共有持分を放棄する
- 共有名義の土地を分筆する
- 相続で共有持分を1人に集約する
- 財産分与で配偶者の共有持分を取得する
- 共有物分割請求を検討する
実務では、単独名義にしたい人が決まっていても、他の共有者が持分の移転に応じるか、持分を買い取る資金を用意できるか、住宅ローンや税金をどう整理するかによって、選べる方法は変わります。
まずは「誰を単独所有者にするのか」「土地を分けてそれぞれ単独所有にするのか」といった最終的な所有状態を決めたうえで、各方法の条件や負担を比較し、実行できる方法を絞り込むことが重要です。
他の共有者に自分の持分を売却する

自分の共有持分を他の共有者へ売却し、特定の共有者に持分を集約することで、共有名義から単独名義に変更できます。自分の共有持分は、各共有者が個別に処分できる財産として扱われるため、他の共有者の同意を得ずに売却できます。
・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者:兄・弟
・持分割合:それぞれ1/2
不動産全体の市場価格が3,000万円であれば、弟が所有する2分の1の持分は、持分割合だけで単純計算すると1,500万円相当です。
兄弟が1,500万円での売買に合意し、弟から兄へ持分を移転すれば、兄の持分は100%となり、兄の単独名義にできます。
他の共有者へ持分を売却する場合のポイントは次のとおりです。
実務上とくに重要なのは、共有者同士の感覚だけで持分価格を決めず、まず不動産全体の市場価格を確認することです。
単独名義にすること自体には合意していても、持分価格の認識が合わず、話し合いが止まることがあります。そのため、事前に不動産会社の査定を受け、不動産全体の市場価格を基準に売買条件を調整するのが実務的です。
株式会社クランピーリアルエステート
大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
他の共有者への売却を含む共有持分の売却方法、売却価格の考え方や相場については、次の記事でも詳しく解説しています。
他の共有者の持分を買い取る

他の共有者全員の持分を買い取り、自分の持分と合わせて100%にすることで、共有名義から単独名義に変更できます。単独名義になれば、住み続ける、賃貸物件として活用する、不動産全体を売却するといった方針について、他の共有者との調整は原則として不要になります。
・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:4,000万円
・共有者:長男・次男・長女・次女
・持分割合:それぞれ1/4
不動産全体の市場価格が4,000万円であれば、次男・長女・次女が所有するそれぞれ1/4の持分は、持分割合だけで単純計算すると1,000万円相当です。
長男がそれぞれ1,000万円での買取に合意し、3人の持分をすべて取得すれば、長男の持分は100%となり、長男の単独名義にできます。この場合、長男が支払う買取代金は合計3,000万円です。
他の共有者の持分を買い取る場合のポイントは次のとおりです。
複数人から持分を買い取る場合は、1人でも売却に応じなければ任意の買取だけでは単独名義にできません。まず全員の売却意思を確認し、そのうえで不動産全体の査定額を基準に買取条件を調整するのが実務的です。
また、買い取る持分が多いほどまとまった資金が必要になります。自己資金だけで不足する場合は、持分の買取に利用できる融資があるか、金融機関へ早めに確認しておきましょう。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
他の共有者の持分を買い取る方法はこんな人におすすめ!
他の共有者の持分買取は、自分や家族が住み続けたい、賃貸に活用したいなど、不動産を手元に残す明確な目的がある人に向いています。
ただし、単独所有後は、不動産の維持や管理に関する負担も自分で負うことを忘れてはなりません。買取価格だけでなく、取得後の利用目的や維持負担まで考慮し、不動産を残す合理性があるかを判断することが大切です。
他の共有者から持分を買い取る場合の交渉方法や価格の決まり方、話し合いでまとまらない場合の対応については、次の記事でも詳しく解説しています。
共有持分を贈与する
他の共有者へ共有持分を無償で贈与し、特定の1人にすべての持分を集約することで、共有名義から単独名義に変更できます。売買と異なり、持分を取得する側が買取代金を用意する必要はありません。
・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者:親・子
・持分割合:それぞれ1/2
不動産全体の市場価格が3,000万円であれば、親が所有する1/2の持分は、市場価格を基準に単純計算すると1,500万円相当です。
親がこの持分を子へ贈与すれば、子はもともと所有している1/2と合わせて持分を100%取得し、子の単独名義に変更できます。
ただし、持分を受け取った子には贈与税がかかる可能性があります。計算方法や税率については、「贈与税|基礎控除後の課税価格に応じて10%~55%」で詳しく解説します。
共有持分を贈与する場合のポイントは次のとおりです。
贈与でとくに注意したいのは、受贈者が買取代金を支払う必要がない一方、贈与税などの税負担が生じる可能性があることです。事前に税負担の目安を確認し、納税資金を用意できるか確認しておきましょう。
また、後から認識の違いが生じないよう、実務では贈与契約書を作成し、贈与する持分や時期などを書面に残しておくことが重要です。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
共有持分の贈与はこんな人におすすめ!
共有持分の贈与は、持分の対価を求めず、親子や夫婦などの間で生前に名義を整理したい人に向いています。
一方、贈与税などの負担が大きい場合は、受贈者にとって必ずしも有利な方法とは限りません。受贈者の税負担や取得後の維持・管理まで踏まえ、売買など他の方法と比較して決めることが大切です。
共有持分の贈与手続きや贈与契約書、親子間で生前贈与する場合の税金や注意点については、次の記事でも詳しく解説しています。
共有持分を放棄する
共有持分の放棄とは、共有者が自分の持分を手放し、その持分を他の共有者へ帰属させる方法です。(民法255条)共有者が2人であれば一方が持分をすべて放棄することで、3人以上いる場合は特定の1人を除く共有者全員が持分を放棄することで、単独名義にできます。
・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者:兄・弟
・持分割合:それぞれ1/2
不動産全体の市場価格が3,000万円であれば、兄が所有する1/2の持分は、市場価格を基準に単純計算すると1,500万円相当です。
兄が1/2の持分をすべて放棄すると、その持分は弟へ帰属し、弟の持分は100%となります。持分放棄を原因とする所有権移転登記を行えば、登記簿上も弟の単独名義に変更できます。
ただし、税務上、弟は兄の持分を贈与によって取得したものとして取り扱われ、贈与税がかかる可能性があります。贈与税の計算方法や税率については、「贈与税|基礎控除後の課税価格に応じて10%~55%」で詳しく解説します。
共有持分を放棄する場合のポイントは次のとおりです。
実務上とくに注意したいのは、放棄そのものは他の共有者の同意がなくてもできますが、登記簿上の名義を変更するには、原則として持分を取得する共有者との共同申請が必要な点です。他の共有者の協力を得られず持分移転登記ができない場合は、登記簿上は共有名義のままです。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
共有持分の放棄はこんな人におすすめ!
共有持分の放棄は、持分の売却代金を受け取ることよりも、共有関係から抜けることを優先したい人に向いています。
ただし、放棄すると持分を無償で手放すことになります。資産価値のある持分であれば、放棄を決める前に、他の共有者や共有持分の買取業者へ売却できないか確認し、売却と比較したうえで判断することが大切です。
共有持分を放棄する際の手続きや税金、放棄を検討した方がよいケースについては、次の記事でも詳しく解説しています。
共有名義の土地を分筆する
共有している不動産が土地であれば、土地を分筆し、分けた土地をそれぞれ単独名義にする方法があります。分筆とは、登記簿上の1つの土地を複数の土地に分けて登記する手続きです。
・共有している不動産:200㎡の土地
・不動産全体の市場価格:4,000万円
・共有者:兄・弟
・持分割合:それぞれ1/2
兄と弟がそれぞれ2分の1ずつ持分を所有している場合、不動産全体の市場価格4,000万円を持分割合で単純計算すると、それぞれ2,000万円相当です。
たとえば、接道状況や土地の形状などを考慮して110㎡と90㎡に分け、それぞれの市場価値がおおむね2,000万円になるとします。このように、面積が異なっていても、市場価値がおおむね同程度になるよう分けることができます。
分け方について兄弟が合意し、分筆登記を行ったうえで、それぞれが取得する土地について相手の持分を移転する登記を行えば、各土地を兄・弟それぞれの単独名義にできます。
共有名義の土地を分筆する場合のポイントは次のとおりです。
とくに注意したいのは、土地を分筆できても、それだけでは単独名義にはならない点です。分筆後の土地をそれぞれ単独名義にするには、誰がどの土地を取得するかについて共有者全員で合意し、持分を移転する登記まで行う必要があります。
また、土地は同じ面積に分けても、接道状況や形状などによって市場価値に差が出ることがあります。そのため、面積だけでなく分筆後の土地の価値まで踏まえて分け方を決めることが重要です。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
共有名義の土地の分筆はこんな人におすすめ!
共有名義の土地の分筆は、土地に十分な広さがあり、各共有者が自分の土地を単独名義で残したい場合に向いています。
ただし、分筆には測量や分筆登記が必要となり、土地家屋調査士への依頼費用もかかります。境界が確定していない土地では、確認に時間や費用がかかることもあるため、分筆後の土地の価値だけでなく、手続きにかかる費用や期間も踏まえて判断しましょう。
共有名義の土地を分筆する方法や手続き、費用については、次の記事でも詳しく解説しています。
相続で共有持分を1人に集約する
相続では、遺言や遺産分割によって、被相続人が所有していた不動産や共有持分を特定の相続人に取得させることで、単独名義にできる場合があります。
・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:4,000万円
・父の持分:1/2
・長男の持分:1/2
・相続人:長男・次男
父の1/2の持分は、不動産全体の市場価格を基準に単純計算すると2,000万円相当です。
長男と次男が父の持分を法定相続分に応じて取得すると、それぞれ不動産全体の1/4ずつを相続するため、長男の持分は3/4、次男の持分は1/4となり、共有状態が続きます。
一方、長男が父の1/2の持分をすべて取得し、その代わりに次男へ1,000万円の代償金を支払うことで合意した場合、長男はもともとの1/2と相続した1/2を合わせて持分100%となり、単独名義にできます。
相続で単独名義にする場合のポイントは次のとおりです。
なお、相続で取得できるのは、被相続人が所有していた共有持分のみです。たとえば、兄弟で不動産を共有していて兄が亡くなった場合、相続の対象になるのは兄の持分であり、弟の持分まで相続できるわけではありません。
兄の配偶者や子どもが兄の持分を相続しても、弟の持分を買い取るなどして取得しなければ、単独名義にはできません。
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相続で単独取得する方法はこんな人におすすめ!
すでに被相続人と不動産を共有している相続人で、単独取得について他の相続人と話し合える余地がある場合に向いています。また、相続財産に預貯金や有価証券など、共有持分以外の財産があり、他の相続人との取り分を調整しやすい場合にも向いています。
共有名義不動産を相続した場合の持分の決め方や相続登記の手順、必要書類・費用については、次の記事でも詳しく解説しています。
財産分与で配偶者の共有持分を取得する
夫婦共有名義の不動産は、離婚時の財産分与で一方が相手の持分を取得し、持分を100%にすることで単独名義にできます。財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して築いた財産を、離婚時に分ける制度です。
・共有している不動産:マンション
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者:夫・妻
・持分割合:夫4/5・妻1/5
妻が購入時に頭金の一部を負担し、夫が単独で住宅ローンを組み、夫4/5・妻1/5の共有名義で登記していたとします。
不動産全体の市場価格が3,000万円であれば、妻の1/5の持分は、市場価格を基準に単純計算すると600万円相当です。
離婚時の財産分与で妻の持分を夫へ移転することで合意し、持分移転登記を行えば、夫の持分は100%となり、夫の単独名義にできます。
財産分与で単独名義にする場合のポイントは次のとおりです。
住宅ローンが残っている場合は注意が必要です。住宅ローンは契約者本人が居住することを前提としていることが多く、金融機関に無断で持分を移転すると、ローン契約に違反する可能性があります。
ペアローンや連帯債務型ローンの場合はもちろん、夫名義の住宅ローンが残る家に離婚後は妻だけが住む場合なども、事前に金融機関へ相談したうえで進めましょう。
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大江 剛
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宅地建物取引士
財産分与による単独取得はこんな人におすすめ!
離婚後も夫婦の一方がその不動産に住み続ける予定で、住宅ローンや他の財産の分け方について調整できる場合に向いています。
一方、住宅ローンの負担が大きい場合は、単独取得にこだわらず、売却して清算する方法も比較することが大切です。
離婚時の財産分与で共有名義を解消する方法については、次の記事でも詳しく解説しています。
共有物分割請求を検討する

他の共有者との話し合いで単独名義への変更が難しい場合は、共有物分割請求によって共有関係の解消を求める方法があります。共有者間で話し合いがまとまらない場合は、民事調停を申し立てて解決を目指すほか、調停を経ずに共有物分割請求訴訟を提起することもできます。
・共有している不動産:一戸建て
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者:兄・弟
・持分割合:それぞれ1/2
・利用状況:兄が居住
兄は今後も住み続けるため、弟の持分を買い取って単独名義にしたいと考えていました。しかし、弟が持分の売却に応じず、話し合いでも共有関係を解消できなかったため、兄が共有物分割請求訴訟を提起したとします。
不動産全体の市場価格が3,000万円であれば、弟の1/2の持分は、市場価格を基準に単純計算すると1,500万円相当です。
裁判所が価格賠償による分割を相当と判断し、兄が不動産全体を取得して弟へ適正な対価を支払うことになった場合は、兄の単独名義にできます。
共有物分割請求を行う場合のポイントは次のとおりです。
共有物分割請求訴訟は、必ずしも自分の希望どおりの結果になるとは限りません。単独名義にすることを目的に訴訟を起こしても、裁判所が競売による分割を命じれば、不動産を手放すことになる可能性があります。
とくに自分が居住している不動産を残したい場合は、競売となったときの影響も踏まえて慎重に判断することが重要です。
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共有物分割請求はこんな人におすすめ!
共有物分割請求は、共有者との話し合いでは解決できず、法的に共有関係を解消したい場合に検討する方法です。
ただし、訴訟は費用がかかるだけでなく、解決までに時間や労力がかかり、共有者との関係にも影響するため、最終手段の一つとして慎重に検討しましょう。
共有物分割請求訴訟の流れや分割方法、費用については、次の記事でも詳しく解説しています。
共有名義から単独名義に変更する具体的な手続きの流れ
共有名義から単独名義への変更は、当事者間で合意するだけでは登記簿に反映されません。売買、贈与、財産分与、遺産分割など、変更の原因に応じた手続きを行ったうえで、所有権移転登記や相続登記を法務局へ申請する必要があります。
必要な手続きや書類は、単独名義に変更する原因によって異なります。ここでは、離婚・相続・親子間の3パターンに分けて、具体的な流れを解説します。
離婚で共有名義から単独名義に変更する場合の手続き
離婚によって共有名義から単独名義に変更する場合は、不動産の価値や住宅ローンを確認したうえで、財産分与の内容を決めて登記を進めます。
離婚時に共有名義から単独名義へ変更する手続きや必要書類、住宅ローンが残る場合の対応については、次の記事でも詳しく解説しています。
相続で共有名義から単独名義に変更する場合の手続き
相続で共有名義から単独名義に変更する場合は、遺言の内容や相続人を確認し、必要に応じて遺産分割協議を行ったうえで相続登記を申請します。
共有名義不動産を相続した場合の持分の決め方や相続登記の手続き、必要書類については、次の記事でも詳しく解説しています。
親子間の売買・贈与で共有名義から単独名義に変更する場合の手続き
親子間では、売買または贈与によって持分を移転し、単独名義に変更する方法があります。
親子間で共有名義から単独名義へ変更する方法や必要書類、税金については、次の記事でも詳しく解説しています。
共有名義から単独名義に変更する際の費用・税金
共有名義から単独名義に変更する際には、登記費用のほか、名義変更の原因に応じて税金や専門家への報酬などがかかります。実際に負担する費用や税金は、売買、贈与、相続、財産分与など、単独名義に変更する方法によって異なります。
主な費用・税金とかかるケースは次のとおりです。
登録免許税|原則0.4%~2%
登録免許税とは、不動産の所有権移転登記などを行う際に納める税金です。
所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産課税台帳に登録された不動産の価格をもとに、移転する持分と税率をかけて計算します。
固定資産課税台帳に価格が登録されていない新築建物などは、登記官が認定した価額が課税標準となります。認定方法や課税標準額については、その不動産を管轄する法務局で確認できます。
登録免許税の税率は、単独名義に変更する原因や不動産の種類によって異なります。主な税率は次のとおりです。
売買によって単独名義に変更する場合でも、土地と建物では適用される税率が異なります。また、住宅用家屋の軽減税率や相続登記の免税措置にはそれぞれ要件があるため、実際の税額を計算する際は適用条件まで確認しましょう。
なお、単独名義への変更とあわせて抵当権抹消登記を行う場合や、登記簿上の住所・氏名に変更があり住所等変更登記を申請する場合は、それぞれ原則として不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります。
司法書士への報酬|5万円~8万円程度
共有名義から単独名義に変更するための登記手続きを司法書士へ依頼する場合は、登録免許税とは別に司法書士への報酬がかかります。
司法書士の報酬は一律ではなく、各司法書士が自由に設定しています。日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した報酬アンケートでは、一定の条件で所有権移転登記を依頼した場合の平均報酬は次のとおりです。
贈与・売買の平均額は、固定資産評価額の合計が1,000万円の土地1筆・建物1棟について、登記原因証明情報の作成と登記申請の代理を依頼したケースをもとにしています。相続は、これに加えて戸籍謄本等の取得や遺産分割協議書などの作成を依頼したケースの平均額です。
実際の司法書士報酬は、登記原因や不動産の数、共有者・相続人の人数、必要書類の作成・取得をどこまで依頼するかなどによって変わります。また、単独名義への変更とあわせて抵当権抹消登記や住所・氏名変更登記が必要な場合は、それらの登記を司法書士へ依頼するための報酬も追加でかかります。
自分で登記を申請すれば司法書士への報酬はかかりませんが、必要書類や申請内容に不備があると補正が必要になる場合があります。とくに相続など手続きが複雑なケースでは、司法書士への依頼も検討するとよいでしょう。
不動産取得税|土地・住宅用家屋は3%、非住宅用家屋は4%
売買や贈与などによって共有持分を取得した場合は、原則として不動産取得税が課税されます。不動産取得税とは、土地や建物を取得した人に課せられる都道府県税です。
相続による不動産の取得には、不動産取得税はかかりません。共有物分割による取得も、分割前に有していた持分割合に相当する部分は非課税ですが、その割合を超えて取得した部分は課税対象となります。
不動産取得税は、原則として固定資産課税台帳に登録された不動産の価格をもとに計算します。税率は次のとおりです。
※土地・住宅用家屋は2027年3月31日まで3%の特例税率が適用されます。(原則4%)
参考:東京都主税局「不動産取得税」
取得した不動産が土地か家屋かによって、軽減措置や税額の計算方法が異なります。
2027年3月31日までに宅地や宅地比準土地を取得した場合は、土地の価格の2分の1を課税標準とする特例措置があります。共有持分を取得した場合の当初税額は、次のように計算できます。
納税額 = 当初税額 - 軽減額
さらに、住宅用土地について一定の要件を満たす場合は、次のいずれか高い金額が当初税額から軽減されます。
- 4万5,000円
- 土地1㎡当たりの価格 × 住宅の床面積の2倍(1戸当たり上限200㎡) × 取得した住宅の持分 × 3%
宅地等の場合、「土地1㎡当たりの価格」は、固定資産税評価額に1/2を乗じた金額を土地面積で割って算出します。なお、軽減額が当初税額を上回る場合、納税額は0円です。
家屋についても、一定の要件を満たす住宅では課税標準から所定の金額を控除できる場合があります。
非住宅用家屋の納税額 = 固定資産税評価額 × 取得した家屋の持分 × 4%
住宅に適用される控除額や要件は、新築住宅・中古住宅の別や床面積、建築時期、耐震基準への適合状況などによって異なります。実際に利用できる軽減措置については、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所などで確認しましょう。
印紙税|契約金額によって200円~48万円
印紙税とは、不動産売買契約書など、印紙税法で定められた課税文書を作成した場合にかかる税金です。売買や贈与によって共有持分を移転する際、紙の契約書を作成すると印紙税がかかります。
不動産の贈与契約書も「不動産の譲渡に関する契約書」に該当します。ただし、贈与は無償で行われるため、契約書に不動産の評価額を記載しても、その評価額は印紙税の契約金額にはなりません。そのため、紙の贈与契約書を作成した場合の印紙税は原則200円です。
売買の場合は、契約書に記載された売買金額によって印紙税額が次のようになります。
※10万円超の金額区分は、2027年3月31日までの軽減税率です。
参考:国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
共有持分の売買では、不動産全体の価格ではなく、契約書に記載した共有持分の売買金額をもとに印紙税額を判断します。
なお、売買・贈与のいずれの場合も、電子契約として作成した電磁的記録は印紙税の課税文書に含まれないため、原則として印紙税はかかりません。
譲渡所得に対する税金|原則20.315%または39.63%
共有持分を売却して課税譲渡所得が生じた場合は、売主に所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。また、財産分与によって不動産を渡した場合も、譲渡所得の課税対象となることがあります。
譲渡所得に対する税金は、次のように計算できます。
譲渡価額:売買では原則として売却代金、財産分与では分与時の不動産の時価
取得費:不動産の購入代金や購入手数料、取得時の登録免許税・不動産取得税など
譲渡費用:仲介手数料、売買契約書の印紙税、売却のために支払った立退料や建物の取壊し費用など
特別控除額:マイホーム売却時の3,000万円特別控除など、要件を満たす場合に利用できる控除額
共有持分を売却する場合は、売却した持分の売却代金を譲渡価額とし、その持分に対応する取得費や、売却のためにかかった譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。たとえば、2分の1の共有持分を1,000万円で売却した場合は、1,000万円を譲渡価額として、2分の1の持分に対応する取得費や譲渡費用などを差し引きます。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。税率は次のとおりです。
なお、マイホームなど一定の要件を満たす不動産を売却した場合は、3,000万円特別控除や軽減税率などを利用できる場合があります。
贈与税|基礎控除後の課税価格に応じて10%~55%
共有者間の贈与によって共有持分を取得した場合は、取得者に贈与税が課されることがあります。
また、他の共有者が持分を放棄した場合や、共有持分を著しく低い価格で売買した場合、離婚時の財産分与が夫婦の財産状況などからみて多すぎる場合も、贈与税がかかることがあります。
通常の贈与で贈与税を計算する際、不動産は一般的な売買価格ではなく、土地は原則として路線価方式または倍率方式、家屋は原則として固定資産税評価額によって評価します。共有持分の場合は、その評価額に取得する持分割合を掛けて計算します。
ただし、低額売買の場合は評価方法が異なり、共有持分の通常の取引価額(時価)と実際に支払った対価との差額を贈与額として、贈与税を計算します。
暦年課税における基本的な計算方法は、次のとおりです。
基礎控除後の課税価格 = 1年間に贈与を受けた財産の贈与税評価額の合計額 - 110万円
贈与税額 = 基礎控除後の課税価格 × 税率 - 控除額
贈与税の税率には、一般税率と特例税率があります。18歳以上の人が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合は特例税率、それ以外は一般税率が適用されます。
一般税率は次のとおりです。
特例税率は次のとおりです。
なお、相続時精算課税を選択した場合は、年間110万円の基礎控除や累計2,500万円の特別控除があり、特別控除後の金額には一律20%の税率が適用されるため、暦年課税とは計算方法が異なります。
参考:国税庁「土地家屋の評価」「相続時精算課税の選択」「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
相続税|法定相続分に応ずる取得金額に応じて10%~55%
相続によって共有名義不動産や共有持分を取得し、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は、相続税の課税対象となります。
相続税の基礎控除額は、次のように計算します。
課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額
被相続人が共有持分を所有していた場合は、その持分も相続財産に含まれます。共有地では、原則として土地全体の相続税評価額に被相続人の持分割合を掛けて、共有持分の価額を計算します。
相続税の総額を計算する際は、課税遺産総額を法定相続分で分けた金額に、次の税率を適用します。
参考:国税庁「相続税の税率」
なお、実際の納税額は、各相続人が取得した財産の割合や、配偶者の税額軽減などの適用によって異なります。
参考:国税庁「共有地の評価」
土地家屋調査士への報酬|測量や境界確認を含む分筆登記は40万円~50万円程度が目安
共有名義の土地を分筆してそれぞれ単独名義にする場合は、測量や分筆登記を土地家屋調査士へ依頼するための報酬がかかります。
日本土地家屋調査士会連合会が令和7年度に実施した調査では、土地全体の測量や隣接地・道路との筆界確認、境界標の設置などを含む一定の条件で分筆登記を行った場合、報酬額の全国中央値は約46万円、平均は約48万円でした。
実際の費用は、土地の広さや形状、境界の状況、隣接地の数などによって変わります。また、土地の境界がすでに確定しており、測量や筆界確認の負担が小さい場合は、費用を抑えられることもあります。
依頼前に、測量や境界確認を含めてどこまでの作業が必要になるか確認し、総額の見積もりを取っておきましょう。
参考:日本土地家屋調査士会連合会「土地分筆登記|業務報酬統計資料(令和7年度)」
裁判費用・弁護士費用|弁護士費用20万円~50万円程度・訴訟では30万円~80万円程度が目安
共有物分割請求を弁護士へ依頼する場合、弁護士費用は20万円~50万円程度が一つの目安です。話し合いで解決せず訴訟まで進む場合は、30万円~80万円程度が目安となり、事案によってはさらに高額になることがあります。
弁護士費用には、依頼時に支払う着手金と、解決内容に応じて支払う報酬金などがあります。料金体系は法律事務所によって異なり、報酬金を取得した不動産や金銭などの経済的利益に応じて設定するケースもあります。
訴訟を提起する場合は、弁護士費用とは別に、訴額に応じた申立手数料などの裁判費用も必要です。また、不動産の価額が争点となり、裁判所による鑑定が必要になった場合は、別途不動産鑑定費用がかかることがあります。
実際の総額は、交渉だけで解決できるか、訴訟まで進むか、報酬金の算定方法、不動産鑑定の有無などによって大きく変わります。依頼前に、着手金だけでなく報酬金や裁判費用、鑑定費用まで含めた見積もりを確認しましょう。
共有名義から単独名義に変更する際の費用・税金のシミュレーション
共有名義から単独名義に変更する際の費用・税金は、その原因によって大きく変わります。同じ1/2持分を移転する場合でも、方法によって負担額に数百万円の差が出ることがあります。
ここでは、計算条件をそろえるため、次のケースを前提に費用の目安を簡単にシミュレーションしました。
- 共有している不動産:住宅である家屋
- 家屋全体の固定資産税評価額:3,000万円
- 移転する持分:1/2
- 移転する持分に対応する固定資産税評価額:1,500万円
- 不動産取得税の住宅軽減:適用しない
- 財産分与:夫婦が婚姻中に形成した財産を清算する「清算的財産分与」を前提とする
- 司法書士報酬:クランピーリアルエステートにおける実務上の目安
本シミュレーションでは、相続税がかからない相続と、暦年課税による贈与を比較するため、贈与の方が費用負担は大きくなります。実際の負担額は、相続財産の総額や贈与方法などによって異なり、相続の方が大きくなる場合もあります。
離婚の財産分与で共有名義から単独名義に変更する場合の費用・税金
離婚に伴う通常の財産分与では、取得者に贈与税は原則としてかかりません。一方、登録免許税はかかり、不動産取得税については財産分与の内容によって課税関係が異なります。
夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を清算する「清算的財産分与」であれば、不動産を取得した側に不動産取得税は基本的にかかりません。
ただし、離婚後の生活保障を目的とする扶養的財産分与や、慰謝料として不動産を取得する場合は、不動産取得税の課税対象となる場合があります。また、夫婦の共有財産を大きく偏った割合で分ける場合や、婚姻前から一方が所有していた不動産などを取得する場合も、課税される可能性があります。
本シミュレーションの条件で不動産取得税が課税される場合は、約45万円(1,500万円 × 3%)が別途加わります。
相続で共有名義から単独名義に変更する場合の費用・税金
相続による不動産の取得には不動産取得税がかからず、相続登記の登録免許税率は原則として0.4%です。そのため、相続税がかからないケースでは、比較的税負担を抑えやすいといえます。
なお、上記の合計には相続税を含んでいません。相続税の有無や金額は、不動産だけでなく、預貯金などを含む遺産総額、債務、法定相続人の人数などによって決まります。
また、相続人が多い場合や代襲相続が発生している場合は、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成が複雑になり、費用や期間が増えることがあります。
親子間の贈与で共有名義から単独名義に変更する場合の費用・税金
親子間の贈与では、登録免許税や不動産取得税に加えて、取得者に贈与税がかかる場合があります。
贈与税は、次のように計算します(贈与年の1月1日時点で18歳以上の子が親から贈与を受け、その年にほかの贈与を受けていない場合の特例税率)。
贈与税 = 1,390万円 × 40% - 190万円 = 366万円
なお、土地を含む場合や一般税率が適用される場合、相続時精算課税を選択する場合などは、税額が異なります。
状況別|共有名義から単独名義への変更が難しいときの対処法と追加費用
共有名義から単独名義へ変更する方法はいくつかありますが、すべてのケースでスムーズに手続きできるわけではありません。共有者の状況によっては、通常の登記手続きだけでは単独名義に変更できず、裁判所での手続きや専門家への依頼などによって追加費用がかかることもあります。
とくに以下のような状況では、単独名義への変更が難しくなり、手続きも複雑になりやすいです。
- 共有者の誰かが変更に同意していない場合
- 共有者に行方不明・音信不通の人がいる場合
- 共有者の中に認知症を患っている人がいる場合
- 共有者に未成年者がいる場合
- 誰が共有者なのかがわからない場合
- 住宅ローンが残っており、金融機関の承諾を得られない場合
ここからは、共有名義から単独名義に変更するのが難しいケースについて、実際に寄せられた相談事例をもとに、対処法や追加でかかる費用を解説していきます。
※事例については、実際に寄せられた相談内容をもとに、個人が特定されないよう一部の情報を変更・再構成しています。
株式会社クランピーリアルエステート
大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
単独名義への変更が難しい場合は専門家に相談を
共有者が行方不明、認知症、未成年などの複雑なケースは、個人だけで対応するのが難しいです。弊社がこうした物件を買い取る際も、必要に応じて弁護士や司法書士と連携して進めるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
なお、最終的に売却することが目的なら、買取業者に相談する方法もあります。弊社のように弁護士や司法書士と連携している買取業者であれば、共有関係や権利上の問題をすべて解決してからでなくても、共有持分の売却を進められる場合があります。
共有者の誰かが変更に同意しない場合
共有者が複数いる場合、単独名義に変更するには、他の共有者から持分を取得する必要があります。そのため、持分の移転に反対する共有者がいると、話し合いだけで単独名義に変更するのは難しくなります。
実務では、持分の売買条件で折り合わないケースや、共有者が話し合い自体に応じないケースもみられます。
父親から相続した実家を兄弟3人で共有していた方から、「自分の単独名義にしたいが、兄が持分の売却に応じず、話し合いが一切進まない」というご相談がありました。
実家は空き家となっており、相談者様は維持費や将来の管理負担を考えて共有状態を解消したいと考えていましたが、共有者間の話し合いが進まず、別の解決方法を検討することになりました。
共有者の同意を得られない場合は、まず持分の買取条件を見直したり、弁護士を通じて交渉したりする方法があります。弁護士への依頼費用は20万円~50万円程度が一つの目安です。話し合いで解決せず訴訟まで進む場合は、30万円~80万円程度かかることがあります。
それでも合意が難しい場合は、単独名義への変更にこだわらず、自分の共有持分だけを売却する方法も検討できます。自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに売却できます。
共有持分の売却方法については、次の記事で詳しく解説しています。
共有者に行方不明・音信不通の人がいる場合
共有者の中に行方不明・音信不通の人がいる場合は、その共有者と持分の移転について話し合えないため、通常の方法で単独名義に変更するのは困難です。
相続をきっかけに共有者となった親族と長年連絡が取れず、名義変更を進められないケースもみられます。
母親から相続した土地を兄弟3人で共有していた方から、「長年音信不通の兄と連絡が取れず、単独名義への変更を進められない」というご相談がありました。
相談者様が固定資産税を負担しながら土地を管理していましたが、共有者の所在がわからないため協議ができず、今後の対応を検討するためご相談に至りました。
行方不明の共有者の持分を取得して単独名義にしたい場合は、一定の要件を満たせば「所在等不明共有者持分取得制度」を利用できます。裁判所の決定を得ることで、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得できる制度です。
所在等不明共有者持分取得制度を利用する場合は、申立ての実費に加え、専門家へ依頼する場合は30万円~50万円程度が一つの目安です。さらに、裁判所が定めた金額の供託も必要になります。
また、行方不明者の代わりに遺産分割協議への参加が必要な場合などは、不在者財産管理人制度を利用する方法もあります。こちらは申立実費と専門家費用で30万円~100万円を超える場合があり、事案によっては予納金も必要です。
行方不明の共有者がいる場合に利用できる制度や具体的な手続きについては、次の記事で詳しく解説しています。
共有者の中に認知症を患っている人がいる場合
共有者が認知症を患い、名義変更の内容を理解して判断する意思能力を欠いている場合は、本人から有効な同意を得られないため、通常の方法では単独名義への変更を進められません。
認知症の共有者が施設へ入居し、不動産の整理を進めたいものの、本人の意思確認ができず困っているケースもみられます。
母親と家を共有していた方から、「母が認知症で施設に入居しており、共有名義の家を整理したいが手続きを進められない」というご相談がありました。
相談者様は維持費の負担から早期の整理を希望していましたが、母親の意思確認が難しく、家全体を動かせない状態でした。そのため、相談者様自身の共有持分のみを弊社へ売却し、共有関係から離れる方法も含めて今後の対応を検討することになりました。
本人に意思能力がない場合は、家庭裁判所へ申し立てて成年後見人等を選任し、本人に代わって手続きを進める方法があります。ただし、成年後見人等は本人の利益を優先して判断するため、希望どおりに持分を移転できるとは限りません。
成年後見制度の申立てにかかる裁判所への手数料や郵便料などは、通常1万円前後が目安です。ただし、弁護士・司法書士へ申立てを依頼する場合や、鑑定が必要な場合は、さらに数十万円程度の追加費用がかかることもあります。
また、弁護士や司法書士などの専門職が成年後見人に選任され、家庭裁判所が報酬付与を認めた場合は、本人の財産から報酬が支払われます。報酬額の目安は月額2万円程度で、管理する財産額によっては月額3万円~6万円程度です。
認知症の共有者がいる場合の売却方法や成年後見制度については、次の記事で詳しく解説しています。
共有者に未成年者がいる場合
共有者に未成年者がいる場合は、原則として親権者などの法定代理人が本人に代わって手続きを行います。
ただし、親が子どもの持分を取得する場合や、親子がともに相続人として遺産分割を行う場合などは、親権者が子どもを代理できないため、家庭裁判所で特別代理人を選任する必要があります。
夫を亡くし、未成年の子どもとともに自宅を相続した方から、「自宅を自分の単独名義にしたいが、手続きを進められない」というご相談がありました。
相談者様自身も相続人であるため、親権者として子どもを代理して遺産分割協議を進めることができず、特別代理人の選任が必要でした。
さらに、自宅が遺産の大部分を占めており、子どもの取得分を預貯金や代償金で確保することも難しい状況でした。そのため、相談者様だけが自宅を取得するのは難しく、共有名義での相続も含めて対応を検討することになりました。
特別代理人の選任申立てにかかる費用は、未成年者1人につき800円の申立手数料と郵便料などで数千円程度です。申立書の作成などを司法書士へ依頼する場合は、5万円~10万円程度が一つの目安です。
未成年者と共有する不動産の名義変更や売却方法、特別代理人が必要となるケースについては、次の記事で詳しく解説しています。
誰が共有者なのかがわからない場合
相続登記が長期間行われていない不動産では、相続が繰り返されて相続人が増え、現在の共有者を把握できなくなっていることがあります。共有者が確定しなければ、単独名義に変更するための遺産分割協議なども進められません。
祖父名義のまま40年以上相続登記がされていなかった土地について調べたところ、相続人が12人に増え、そのうち半数程度としか連絡が取れないというご相談がありました。
相談者様は固定資産税を負担していましたが、相続人を把握できず、土地の名義整理や処分について話し合うことも難しい状態でした。
このような場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍などを収集し、現在の相続人を確定させたうえで、遺産分割協議や相続登記を進めます。
戸籍などの必要書類を自分で収集する場合は5,000円~1万円程度、相続登記を司法書士へ依頼する場合は5万円~10万円程度が一つの目安です。ただし、相続人が多数いる場合や複数回の相続が発生している場合は、調査範囲が広がり、費用も高くなることがあります。
共有持分の相続登記に必要な書類や相続人の調べ方、費用については、次の記事で詳しく解説しています。
住宅ローンが残っており金融機関の承諾を得られない場合
住宅ローンが残っている不動産を単独名義に変更する場合は、事前に金融機関へ相談し、承諾を得たうえで進めるのが基本です。無断で名義を変更すると、住宅ローン契約に違反するおそれがあります。
離婚後も妻が住み続ける予定の家について、「自分の単独名義に変更したいが、住宅ローンが残っており銀行から承諾を得られない」というご相談がありました。
夫婦間では財産分与について合意していましたが、住宅ローンの主債務者は夫であり、妻単独では借換えの審査に通らなかったため、家と住宅ローンを妻の単独名義にまとめることが難しい状況でした。
住宅ローンが残っている場合は、住み続ける人が単独で住宅ローンを借り換える方法のほか、金融機関の承諾を得て債務者を変更する方法や、ローンを完済してから名義を変更する方法などを検討します。
住宅ローンを借り換える場合は、事務手数料や保証料、抵当権の抹消・設定登記、司法書士報酬などがかかります。借入額や金融機関によって異なりますが、諸費用が数十万円~100万円を超えることもあります。
借換えの審査に通らない場合などは、不動産全体を売却して住宅ローンを完済する方法も検討できます。離婚時の住宅ローンの整理方法については、次の記事で詳しく解説しています。
共有名義から単独名義に変更しない方がいいケース
ここまでは共有名義から単独名義に変更する方法を解説してきましたが、状況によっては、すぐに単独名義へ変更しない方がよいケースもあります。
代表的なケースと理由は次のとおりです。
共有のマイホームでは、要件を満たす共有者ごとに最高3,000万円の特別控除を受けられます。夫婦双方が要件を満たせば合計最大6,000万円まで控除できる可能性があるため、将来売却する可能性がある場合は、単独名義へ変更する前に税負担を比較しておきましょう。
また、住宅ローンに関しては、借換えなどでローン契約を整理し、不動産を取得して居住する人と住宅ローンの契約者をそろえられれば、単独名義へ変更できる場合があります。借換えには改めて審査が必要になるため、まずは金融機関へ相談しましょう。
賃貸中の共有不動産についても、共有名義のまま安定して収入を得られているのであれば、単独名義への変更を急ぐ必要はありません。ただし、費用負担の偏りや管理方針の対立、賃貸経営から抜けたい共有者がいる場合は、単独名義化や持分売却なども含めて共有関係を見直しましょう。
共有名義不動産の売却時に利用できる3,000万円特別控除や、住宅ローンが残る場合の名義変更、共有名義不動産の賃貸については、次の記事でも詳しく解説しています。
不動産を単独名義に変更せずに共有名義のままでいるリスク

前述したように、税負担や住宅ローン、賃貸経営などの事情によっては、すぐに単独名義へ変更しない方がよいケースもあります。ただし、現時点で変更を急がない方がよいからといって、共有名義の状態を長期間そのままにしておくのはおすすめできません。
共有状態が続くと、不動産全体の売却や活用方法によっては共有者間の合意・調整が必要になるほか、相続によって共有者が増え、権利関係や費用負担が複雑になることがあります。
- 不動産の売却や活用に制限がある
- 相続によって権利関係が複雑になりやすい
- 固定資産税や維持費の負担をめぐってトラブルになりやすい
- 離婚時に不動産や住宅ローンの整理で揉めやすい
実務上とくに注意したいのは、現在は共有者同士の関係に問題がなくても、時間が経つにつれて共有関係を解消しにくくなることです。
たとえば、共有者の1人が亡くなれば、その持分を複数の相続人が引き継ぎ、新たな共有者が増えることがあります。また、「売却したい」「そのまま所有したい」など共有者ごとの考え方が変われば、不動産を売却・活用したいタイミングで合意できないこともあります。
そのため、現在すぐに問題がなくても、今後誰が不動産を利用するのか、将来売却する予定があるのか、相続が発生した場合にどうするのかまで考えたうえで、共有名義を維持するか判断することが大切です。
共有名義不動産の制限やリスク、共有者間で起こりやすいトラブル、離婚後も共有名義を残す場合の注意点については、次の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
共有名義から単独名義へ変更する方法は、持分の売買・贈与・放棄、相続、財産分与など複数あります。どの方法を選ぶかは、誰を単独所有者にするのか、今後も所有を続けるのか、売却するのかまで含めて考えることが大切です。
また、共有者の状況や住宅ローンによっては、通常の手続きだけでは変更できず、専門家への相談が必要になることもあります。最終的な目的が売却であれば、単独名義への変更にこだわらず、自分の共有持分を売却する方法も選択肢です。
一方、すぐに単独名義へ変更しない方がよいケースもあります。ただし、共有状態を長く続けると、相続などによって権利関係や共有者間の調整が複雑になりやすいため、将来の利用・売却・相続まで見据えて判断しましょう。

他の共有者への持分売却はこんな人におすすめ!
他の共有者への持分売却は、不動産を今後利用する予定がなく、持分を現金化して共有関係から抜けたい人に向いています。
一方、他の共有者に購入する意思や資金がない、売買価格の調整がまとまらないといった場合は、この方法にこだわって交渉を続ける必要はありません。自分だけ共有関係から抜けたいのであれば、共有持分を取り扱う買取業者への売却も検討できます。