共有名義から単独名義に変更する⽅法!費⽤や税⾦・必要書類などを徹底解説

マイホームの購入や相続をきっかけに共有名義となった不動産は、持分の売買・贈与・放棄、遺産分割などによって単独名義に変更できる場合があります。しかし、「自分の単独名義にして住み続けたい」「他の共有者へ持分を移して共有関係から抜けたい」と考えていても、どの方法を選べばよいのか分からない人も多いのではないでしょうか。

共有名義から単独名義に変更する主な8つの方法と、それぞれが向いているケースは次のとおりです。

共有名義から単独名義に変更する方法 概要 向いているケース
他の共有者に自分の持分を売却する 他の共有者へ自分の持分を売却し、最終的に特定の1人へすべての持分を集約する方法 ・自分は不動産を利用しない場合
・他の共有者に買取意思と取得資金がある場合
他の共有者の持分を買い取る 他の共有者からすべての持分を取得し、自分の持分と合わせて100%にする方法 ・自分が住み続ける、活用する場合
・買取資金を用意できる場合
共有持分を贈与する 対価を受け取らずに共有持分を移し、最終的に特定の1人へすべての持分を集約する方法 ・親子や夫婦などの間で、金銭的な対価を求めずに持分を移したい場合
・贈与税などの負担を確認したうえで、生前に名義を整理したい場合
共有持分を放棄する 自分の持分を放棄して、他の共有者へ帰属させる方法。残る共有者が1人なら単独名義になる ・対価の取得よりも、税金や管理費などの負担から抜けることを優先したい場合
・持分の価値が低く、売買や贈与による移転が難しい場合
土地を分筆して共有物分割を行う 土地を分筆し、分筆後の各土地について持分を移転して、それぞれの単独所有にする方法 ・共有しているのが土地である場合
・分筆後も接道や面積を確保できる場合
相続・遺産分割で1人に取得させる 遺言や遺産分割により、被相続人の不動産または共有持分を特定の相続人が取得する方法 ・相続人の1人が実家などに住み続ける場合
・共有登記をする前に取得者を決め、他の相続人への代償金などを調整できる場合
財産分与で夫婦の一方が取得する 離婚時の財産分与により、夫婦の一方へ持分を移す方法 ・夫婦共有名義の不動産を離婚時に整理する場合
・一方が住み続ける予定で、住宅ローンについても金融機関と調整できる場合
共有物分割請求を検討する 他の共有者に共有状態の解消を求め、協議がまとまらない場合は、民事調停や訴訟によって分割を目指す方法 ・他の共有者との話し合いがまとまらず、共有状態を解消したい場合
・他の共有者への対価を用意でき、賠償分割による単独取得を目指す場合

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上記の方法は、単独名義になるまでの流れや実行条件、メリット・デメリット、かかる費用・税金がそれぞれ異なります。

どの方法が自分に合うかを判断するには、まず「最終的に誰が不動産を所有するのか」「自分だけ共有関係から抜けたいのか」「単独名義にした後、その不動産をどのように利用したいのか」を明確にしましょう。

そのうえで、共有者との合意、必要な資金、税金、住宅ローンなどの条件を確認し、実現可能な方法を比較することが大切です。

そこで本記事では、共有名義から単独名義に変更する8つの方法と、各方法が向いているケースを解説します。変更が難しい事例、具体的な手続き、費用・税金のシミュレーション、共有名義を維持するリスクも紹介するため、自分の状況に合った方法を判断する際の参考にしてください。

共有名義から単独名義に変更する8つの方法

共有名義から単独名義に変更する主な方法として、共有持分の売却や贈与など、「特定の共有者に持分をすべて取得させること」が挙げられます。

また、不動産が土地なら、分筆した各土地について共有物分割を行い、それぞれを単独名義にする方法を検討できます。そのほか、相続時なら遺言や遺産分割、離婚時なら財産分与と、状況に応じた手続きで単独名義にできる可能性があります。

不動産実務において、共有名義から単独名義に変更する具体的な方法は次の8つです。

  1. 他の共有者に自分の持分を売却する
  2. 他の共有者の持分を買い取る
  3. 共有持分を贈与する
  4. 共有持分を放棄する
  5. 共有名義の土地を分筆する
  6. 相続で共有名義の不動産を単独取得する
  7. 財産分与で夫婦のどちらかが不動産を単独取得する
  8. 共有物分割請求を検討する

自分に合う実現可能な方法を選ぶには、変更後に実現したい所有状態を明確にしたうえで、共有者の意思、必要な資金、税金、住宅ローンなどの条件と照らし合わせることが重要です。各種方法は、それぞれメリット・デメリットや利用できる状況・時期に違いがあるためです。

まずは、「最終的に誰が不動産を所有するのか」「自分だけ共有関係から抜けたいのか」「土地を分けて各共有者が所有するのか」を整理し、その目的を実現できる方法を選びましょう。

共有名義から単独名義に変更する方法を選ぶ際に、優先して確認したい項目は次のとおりです。

事前に確認したい項目 確認する理由 具体的な確認項目
単独名義にした後に実現したい状態 最終的に実現したい状態が決まれば、検討すべき方法の範囲を絞れるから ・自分が不動産全体を所有したいのか
・他の共有者に不動産全体を取得させたいのか
・自分だけ共有関係から抜けたいのか
・土地を分けて各共有者が単独所有したいのか
他の共有者の意思・判断能力・所在 売買・贈与・分筆などの方法を実行できるかは、他の共有者との合意や手続きへの協力が得られるかによって変わるから ・売却・贈与・共有物分割に応じる意思
・希望する価格や条件
・持分を買い取る資金の有無
・話し合いや連絡ができる関係か
・未成年者・認知症の人・行方不明者の有無
不動産の市場価格・利用状況・物理的条件 持分の売買価格や売却先、土地を分筆する価値と実現可能性を判断する材料になるから ・不動産全体の市場価格
・居住者や賃借人の有無
・建物の劣化や修繕の状況
・土地の境界、接道、形状、面積
・分筆後も各土地を利用・売却できるか
現在の登記名義と手続きの段階 登記名義人や持分割合、相続・離婚などの進行状況によって、先に行う手続きや選べる方法が変わるから ・登記簿上の所有者と持分割合
・登記名義人の住所・氏名が現在の情報と一致しているか
・死亡した共有者の相続登記が済んでいるか
・相続で共有登記をする前か、すでに共有登記をした後か
・離婚成立前か、成立後か
必要な資金・費用・税金 法律上は可能な方法でも、買取代金や税金などを負担できなければ実行が難しいから ・他の共有者へ支払う買取代金
・遺産分割などで支払う代償金
・登録免許税、不動産取得税、贈与税、相続税、譲渡所得に対する所得税・住民税
・司法書士や税理士などへの報酬
・不動産鑑定、測量、分筆にかかる費用
・誰が各費用や税金を負担するか
住宅ローンと抵当権 所有権の名義と住宅ローンの債務者は別であり、持分を移しても債務者や連帯保証人から当然に外れるわけではないから ・住宅ローンの残債額
・債務者と連帯保証人
・抵当権者となっている金融機関
・所有権移転に関するローン契約の条件
・金融機関の承諾や事前相談の要否
・借換え、完済、債務者変更、抵当権抹消が必要か

たとえば、「自分が不動産全体を所有して住み続けたい」「持分の購入資金があり、他の共有者も売却に応じている」という場合は、他の共有者の持分を買い取る方法が向いています。

一方、将来的に複数人で不動産を相続する可能性がある場合は、遺言、生前売却、遺産分割協議によって、不動産の取得者を1人に決められないか検討するとよいでしょう。

ここからは、共有持分の査定・買取を取り扱ってきた弊社が、不動産会社の実務的な視点から、共有名義を単独名義に変更する各方法の特徴や向いているケースを解説します。

ポイント

■自分が所有する共有持分の概要や取り扱いについて補足
共有名義の不動産では、それぞれの共有者が「共有持分」という割合的な所有権を持っています。

各共有者は、他の共有者の同意を得ずに自分の共有持分を処分することが可能です。共有持分は他の共有者の所有権が及ばない自分の権利であり、民法第206条に基づいて、法令の制限内において、所有物を使用・収益・処分する権利が認められています。

他の共有者に自分の持分を売却する

この方法のポイント・特徴

  • 自分の共有持分は、売買当事者ではない他の共有者の同意を得ずに売却できる
  • 不動産全体の市場価格と持分割合を基に、共有者同士で売買条件を決める
  • 単独名義にするには、最終的に1人がすべての持分を取得する必要がある

共有名義から単独名義に変更する方法のひとつが、他の共有者に自分の持分を売却する方法です。そのうえで、特定の1人に対して他の共有者全員が持分の売却・贈与などを行い、最終的に1人が他の共有者の持分をすべて取得すればその人の単独名義にすることが可能です。

共有持分を手放す対価を、売買代金として受け取れるのがこの方法です。金銭を得る方法には相続時の遺産分割や離婚時の財産分与がありますが、特定の機会に限られずに検討できる点も、売却のメリットとして挙げられます。

他の共有者が持分を手放さない場合でも、自己持分を売却できれば自分1人だけでも共有状態から離れられるのも特徴です。

ただし、売却するには、相手方に共有持分を購入する意思や資金が必要です。また、売却した際には、譲渡所得(売却益)に対して所得税・住民税がかかる可能性があるため、あらかじめ確認しておきましょう。

他の共有者へ共有持分を売却する場合の相場は、「不動産全体の市場価格×持分割合」が1つの目安です。とはいえ、実際にいくらで売れるかは、さまざまな事情を考慮したうえで、当事者間の合意によって決まります。

売却価格を左右する要素は、次のとおりです。

  • 共有持分割合
  • 不動産の利用状況
  • 居住者や賃借人の有無
  • 抵当権などの権利関係
  • 買主が取得後に単独所有できるか

他の共有者と売買について交渉する際には、まずは不動産全体の市場価格を査定してもらい、その価格を根拠にすると話し合いを進めやすくなるでしょう。

また、間に誰も挟まずに当事者だけで進めると、市場価格の判断や売買契約書の作成、登記手続きなどで不備が生じる可能性があります。個人間で完結させるのではなく、不動産仲介業者に売買契約の確認や手続きのサポートを依頼するのがよいでしょう。

【共有持分の売却で共有名義から単独名義に変更する場合のシミュレーション】


・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者の人数:2人(兄・弟)
・持分割合:それぞれ1/2


不動産全体の市場価格を3,000万円とした場合、弟が所有する1/2の持分は、単純計算では1,500万円相当です。この金額を価格交渉の基準とし、兄弟が1,500万円で売買することに合意したとします。


弟が1/2の持分を兄へ売却し、売買代金の支払いと所有権移転登記を行えば、兄の持分は100%となり、共有名義から兄の単独名義へ変更できます。


弟は売買代金として1,500万円を受け取りますが、売却に必要な費用がかかるほか、譲渡益が生じた場合は所得税・住民税がかかる可能性があります。そのため、売買代金の全額がそのまま手元に残るとは限りません。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

他の共有者への持分売却はこんな人におすすめ!

他の共有者への持分売却は、不動産を今後利用する予定がなく、持分を現金化して共有関係から抜けたい人に向いています。一方、金銭を受け取ることよりも他の共有者の単独名義にすることを優先する場合は、贈与なども選択肢になります。他の共有者が購入を希望しない場合や価格について合意できない場合は、不動産全体の売却や、共有持分を取り扱う買取業者への売却も比較してみてください。

他の共有者の持分を買い取る

この方法のポイント・特徴

  • 他の共有者からすべての持分を買い取り、自分の持分と合わせて100%にする方法
  • 単独所有後は、居住・賃貸・売却などの方針を自分で決めやすくなる
  • 他の共有者全員との売買合意と、買取代金を含む資金の準備が必要

他の共有者全員の持分を買い取り、自分の持分と合わせて100%にすることで、共有名義から単独名義にする方法があります。

他の共有者の持分を買い取るメリットは、不動産を手元に残したまま共有関係を解消できることです。住み続ける、賃貸物件として運用する、不動産全体を売却するといった方針について、他の共有者の同意を得る必要がなくなります。

一方で、この方法で単独名義にするには、他の共有者全員と、それぞれの売買条件について合意しなければなりません。共有者によって売却意思や希望価格、売却できる時期が異なるため、共有者の数が多いほど単独名義にするハードルは上がるでしょう。

また、「実家を母親と兄弟姉妹で相続した」といったケースでは、感情面の調整も必要になることがあります。

他の共有者から共有持分を買い取る場合の価格は、売却する場合と同じく「不動産全体の市場価格×持分割合」を目安とし、不動産や共有者の状況などが考慮されます。あらかじめ不動産全体について不動産会社の査定を受けておき、買取価格に説得力が出るようにしておきましょう。

自己資金に余裕があり、単独名義化を優先したい場合は、他の共有者が希望する金額を踏まえて「不動産全体の市場価格×持分割合」を上回る買取価格を提示することも交渉方法の1つです。

とはいえ、他の共有者全員から持分を買い取るにはまとまった資金が必要になります。自己資金で足りない場合は、持分買取に利用できる融資の有無を金融機関へ事前に確認しておきましょう。

ただし、市場価格から大きくかけ離れた金額を設定すると、税務上の問題が生じる可能性があります。親子や兄弟姉妹などの間で相場より大幅に高い価格を設定する場合は、あらかじめ税理士へ確認しましょう。

【共有持分を買い取る形で共有名義から単独名義に変更する場合のシミュレーション】


・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:4,000万円
・共有者の人数:4人(兄・弟・姉・妹)
・持分割合:それぞれ1/4


兄が不動産全体を取得するには、自分が所有する1/4の持分に加え、弟・姉・妹が持つ合計3/4の持分をすべて買い取る必要があります。


不動産全体の市場価格を4,000万円とした場合、各共有者が持つ1/4の持分は、単純計算では1,000万円相当です。この金額を価格交渉の基準とし、弟・姉・妹がそれぞれ1,000万円で売却することに合意したとします。


この場合、兄が支払う買取代金は合計3,000万円です。3人からすべての持分を買い取れば、兄の持分は100%となり、共有名義から兄の単独名義に変更できます。


一方、3人のうち1人が売却に応じず、兄が2人分の持分だけを買い取った場合、兄の持分は3/4になりますが、残る1人との共有関係は続きます。兄は、持分価格の過半数で決められる管理行為については単独で決定できますが、不動産全体の売却や建て替えなどは、残る共有者の同意がなければ原則として進められないため注意しましょう。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

他の共有者の持分を買い取る方法はこんな人におすすめ!

他の共有者の持分買取は、自分や家族が住み続けたい、賃貸に活用したいなど、不動産を手元に残す明確な目的がある人に向いています。ただし、単独所有後は、不動産の維持や管理に関する負担も自分で負うことを忘れてはなりません。買取価格だけでなく、取得後の利用目的や維持負担まで考慮し、不動産を残す合理性があるかを判断することが大切です。

共有持分を贈与する

持分贈与は、自身の共有名義不動産の持分を贈与して他の共有名義人の持分に帰属させること

この方法のポイント・特徴

  • 売買代金を支払わずに持分を移せる
  • 贈与者と受贈者の合意が必要で、実務上は贈与契約書を作成する
  • 取得者に贈与税などがかかる可能性がある

共有持分を共有者間でやり取りする方法には、売買だけではなく、無償で相手に渡す贈与があります。贈与を受けた人がもともと所有する持分と、贈与によって取得した持分の合計が100%になれば、その人の単独名義にできます。

「タダであげるのは、渡す人が一方的に損するのでは?」と思われるかもしれませんが、贈与は、受贈者が購入代金を用意する必要がないため、売買よりも合意しやすいというメリットがあります。贈与者と受贈者が合意できれば、親子や夫婦などの間で希望する時期に名義を整理できることも特徴です。

あくまで弊社の実務経験ではありますが、「名義を整理する際に家族へ購入代金を負担させたくない」「売買価格をめぐって親子で対立したくない」といった理由で選ばれることがあります。

とはいえ、贈与者が持分の対価を受け取れないことは明確なデメリットです。「贈与される側が住宅ローンなどの債務を引き受けること」を条件として持分を贈与する「負担付贈与」もありますが、金融機関との調整や税務上の扱いも確認する必要があります。

贈与を検討するときは、あらかじめ贈与する持分の税務上の評価額を調べ、受贈者が贈与税などを負担できるか確認しておきましょう。評価方法や利用できる税制上の特例によって負担が変わるため、実行前に税理士へ相談することをおすすめします。

なお、贈与契約は口頭でも成立し得ますが、合意内容や贈与の時期をめぐるトラブルを防ぐため、実務上は贈与契約書を作成して書面に残すことを推奨します。

【共有持分を贈与する形で共有名義から単独名義に変更する場合のイメージ】


・共有している不動産:戸建て住宅
・共有者:親・子
・持分割合:それぞれ1/2


この場合、親の1/2の共有持分を子へ贈与すれば、子はもともと所有していた1/2と合わせて持分を100%取得し、共有名義から子の単独名義に変更できます。


ただし、子には贈与税などがかかる可能性があるため、贈与前に持分の評価額と税負担を確認しておくことが大切です。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

共有持分の贈与はこんな人におすすめ!

共有持分の贈与は、持分の対価を求めず、親子や夫婦などの間で生前に名義を整理したい人に向いています。ただし、持分を受け取る側には税金や取得後の維持・管理に関する負担が生じる可能性があります。贈与者だけで決めるのではなく、受贈者も負担を理解したうえで贈与に同意していることが重要です。

共有持分を放棄する

持分放棄は、自身の共有名義不動産の持分を放棄し他の共有名義人の持分に帰属させること

この方法のポイント・特徴

  • 他の共有者の同意を得ずに、自分の共有持分を無償で放棄できる
  • 残る共有者が複数いる場合は、それぞれの持分割合に応じて帰属する
  • 放棄の成立と登記簿上の名義変更は別で、通常の登記には他の共有者の協力が必要

共有持分の放棄とは、共有者が自分の持分を手放し、その持分を残る共有者へ帰属させることです。共有者の1人が持分を放棄したときは、その持分が他の共有者へ帰属するという民法255条が根拠となっています。

1人の共有者による持分放棄だけで、共有名義から単独名義にできるのは、原則として共有者が2人だけのケースです。残る共有者が複数いる場合、放棄された持分は、それぞれの持分割合に応じて帰属するためです。

たとえば、A・B・Cの3人がそれぞれ1/3ずつ所有している不動産についてAが持分を放棄すると、Aの1/3はBとCへそれぞれ1/6ずつ帰属します。その結果、BとCが1/2ずつ所有する共有状態となるため、単独名義にはなりません。

売却や贈与と大きく異なるのは、本人が放棄する意思表示をすれば、他の共有者の同意なく持分を手放せる点です。相手と価格や譲渡条件について合意する必要がなく、持分を取得する共有者が代金を用意する必要もないことはメリットと言えるでしょう。

一方、共有持分の放棄は、税務上、残る共有者は放棄された持分を贈与によって取得したものとして取り扱われます。そのため、持分を取得した共有者に贈与税がかかる可能性があります。

また、放棄自体は本人の意思表示だけで行えますが、登記簿上の名義は自動的には変わりません。放棄された持分について、持分を取得する共有者への所有権移転登記を行う必要があります。

さらに、持分を取得した共有者は、取得後の維持・管理や税金に関する実質的な負担が増える可能性があります。事前の相談なく放棄すると、「不要な持分を一方的に押しつけられた」と受け取られ、共有者間のトラブルにつながるかもしれません。

このように、共有持分の放棄は他の共有者の同意を必要としない一方、他の共有者の理解や協力が必要です。円滑に登記を進め、放棄後のトラブルを防ぐためにも、放棄前に事情や取得後の負担を説明しておくことが大切になるでしょう。

【共有持分を放棄する形で共有名義から単独名義に変更する場合のイメージ】


・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者の人数:2人(Aさん・Bさん)
・持分割合:それぞれ1/2


Aさんが1/2の持分を放棄すると、その持分はBさんへ帰属します。持分放棄を原因とする所有権移転登記を行えば、登記簿上もBさんの持分が100%となり、Aさん・Bさんの共有名義からBさんの単独名義へ変更できます。


ただし、BさんはAさんの持分を贈与によって取得したものとして取り扱われ、贈与税がかかる可能性があります。放棄前に持分の評価額と、Bさんに生じる負担を確認しておくことが大切です。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

共有持分の放棄はこんな人におすすめ!

共有持分の放棄は、持分の売却代金を受け取ることよりも、共有関係から抜けることを優先したい人に向いています。ただし、対価を得られないうえ、通常の登記には他の共有者との調整が必要です。持分を取得する共有者に生じる税金や維持・管理の負担も踏まえ、慎重に判断しましょう。

共有名義の土地を分筆する

分筆とは、1つの土地を複数に分けて登記し直す手続きのこと

この方法のポイント・特徴

  • 土地を売却せず、分筆後の各土地をそれぞれの単独名義にできる
  • 面積だけでなく、分筆後の土地の市場価値を考慮して分ける
  • 話し合いによる共有物分割には全員の合意が必要で、測量などの費用もかかる

共有名義の土地は、分筆と共有物分割を行うことで、分筆後の各土地をそれぞれの単独名義にできる場合があります。

分筆とは、登記簿上の1つの土地を複数に分け、それぞれを独立した土地として登記する手続きです。分筆後の土地を各共有者が単独で取得する方法は、共有物を現物で分ける「現物分割」に当たります。

ただし、分筆だけでは各土地の共有状態は変わらないため、単独名義にするには、共有物分割の合意に基づく持分移転登記も必要です。

この方法のメリットは、土地全体を売却せずに共有関係を解消し、それぞれが土地を単独名義で手元に残せることです。単独名義となった後は、自分が取得した土地の利用や売却について、原則として他の共有者の同意を得る必要がなくなります。

一方、分筆によって単独名義にするには、土地の分け方について共有者全員で合意し、測量や登記を行う必要があるため、実務上のハードルが高い点がデメリットです。

まず、土地の分け方を決めるときは、面積だけでなく、分筆後の各土地の市場価値を比較することが重要です。なぜなら、同じ面積でも、接道状況、形状、間口、高低差などによって、利用価値や売却価格が異なる場合があるからです。

実際に弊社には、「分筆後の土地の価値に大きな差があり、共有者の不満が強かったため、分筆を断念して持分の売却を相談しに来た」というケースもあります。また、通常は境界の確認や測量が必要となるため、費用と期間がかかりすぎて断念したとの声もあります。

分筆後の土地の価値に差がある場合は、差額について金銭を支払って調整する方法もあります。ただし、課税関係が生じる可能性があるため、必要に応じて税理士へ確認しましょう。

分筆の可否や測量については土地家屋調査士、分筆後の利用価値や市場価値については不動産会社へ相談するとよいでしょう。

【分筆によって共有名義から単独名義に変更する場合のイメージ】


・共有している不動産:土地(面積200㎡)
・共有者:Aさん・Bさん
・持分割合:それぞれ1/2


接道状況や形状などを踏まえ、土地を市場価値がおおむね等しい100㎡ずつの2区画に分けることについて、Aさん・Bさんが合意したとします。分筆登記と共有物分割に伴う持分移転登記を行えば、Aさんが一方、Bさんがもう一方の土地をそれぞれ単独名義で所有できます。


ただし、同じ面積に分けても、接道状況や形状によって各土地の市場価値が異なる場合があります。分筆前に各区画の利用方法と市場価値を確認し、共有者間で分け方に合意しておくことが大切です。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

共有名義の土地の分筆はこんな人におすすめ!

共有名義の土地の分筆は、土地全体を売却せず、各共有者が自分の土地を残したい場合に向いています。とくに、土地に十分な広さがあり、全員が分け方と取得する区画に納得しているケースでは検討しやすい方法です。将来の居住・建築・売却まで見据え、分筆後も各区画を独立して活用できるかを確認しましょう。

相続で共有名義の不動産を単独取得する

この方法のポイント・特徴

  • 遺言または遺産分割により、被相続人の不動産や共有持分を特定の相続人へ集約できる
  • 相続によって取得できるのは原則として被相続人の財産・持分までで、他の共有者の持分は取得できない
  • 遺産分割協議には相続人全員の合意が必要で、代償分割では取得者に代償金の負担が生じる

相続開始前に遺言で取得者を指定しておくか、相続開始後に遺産分割協議で取得者を決めることで、被相続人が所有していた不動産や共有持分を特定の相続人に取得させられる場合があります。

相続によって不動産や共有持分を1人に集約する方法は、次のとおりです。

  • 遺言:不動産の所有者が生前に、特定の相続人へ不動産や共有持分を相続させる旨の遺言を作成する
  • 遺産分割協議:遺産分割協議を行い、特定の相続人が不動産や共有持分を取得することについて、相続人全員で合意する
被相続人が共有持分だけを所有していた場合、相続によって取得できるのは原則としてその持分までです。取得する相続人がもともと残りの持分を所有していれば、相続によって持分を100%にできます。一方、他の共有者が残る場合は、被相続人の持分をすべて相続しても共有状態は続くため、単独名義にするには残りの持分を売買や贈与などで取得する必要があります。

有効な遺言によって取得者が指定されている場合は、原則として遺言の内容に従います。遺言がない場合などに遺産分割協議で取得者を決めるには、相続人全員の合意が必要です。

不動産の取得者を1人に決めておけば、複数の相続人による共有状態が続くことを防ぎやすくなります。逆に、共有名義で相続すると、そのまま次世代の相続時に「共有持分をさらに複数人に分けて相続する」という状況が発生し、子どもや孫の世代で権利関係が複雑になる可能性があります。

遺産分割において注意したいのは、特定の相続人が受け取る財産に大きな偏りが出てしまうケースです。

たとえば、「不動産を単独名義で相続するし、他の預貯金も変わらず引き継ぐ」など特定の相続人に財産が集中する分割だと、他の相続人と意見が合わず、遺産分割協議がまとまらないリスクが出てきます。

また、遺言で取得者を指定する場合も、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分である「遺留分」を侵害すると、取得者が遺留分侵害額請求を受けることがあります。

遺産分割でのトラブルを防ぐには、不動産以外の財産も含め、相続人間の公平性を調整することが重要です。長男と次男で不動産を相続する場合なら、次のような分け方が考えられます。

  • 長男が不動産を取得し、次男がその価値を考慮して預貯金や有価証券を取得する「現物分割」
  • 長男が不動産を取得する代わりに、次男へ代償金を支払う「代償分割」

なお、遺産分割を検討するときは、相続人と相続財産の範囲、不動産の市場価値、代償金の支払能力などを確認する必要があります。相続人間の合意が難しい場合は弁護士、相続税について確認したい場合は税理士など、相談内容に応じた専門家へ相談しましょう。

さらに、遺言や遺産分割協議で1人が不動産を取得することになっても、相続登記をしなければ、その取得を第三者に対抗できない場合があります。相続登記は2024年4月1日から義務化されているため、申請を忘れないようにしましょう。

【相続・遺産分割で単独取得する場合のシミュレーション】


・共有している不動産:戸建て住宅
・不動産全体の市場価格:4,000万円
・被相続人である父の持分:1/2
・長男がもともと所有する持分:1/2
・相続人:長男・次男の2人


父が所有していた1/2の持分は、不動産全体の市場価格を基に単純計算すると2,000万円相当です。遺産分割を行わず、長男と次男が法定相続分に応じて相続すると、それぞれが不動産全体の1/4ずつを取得します。


その場合、長男の持分は、もともと所有していた1/2と相続した1/4を合わせて3/4となり、次男が残りの1/4を所有するため、共有関係が続きます。


そこで、他の遺産を考慮しない前提で、長男が父の1/2の持分をすべて取得し、次男へ1,000万円の代償金を支払うことに2人が合意したとします。長男は、もともとの1/2と相続した1/2を合わせて持分を100%取得し、単独名義にできます。


株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

遺産分割による単独名義化はこんな人におすすめ!

相続人同士で円滑に話し合える見込みがあり、不動産を取得する人や他の財産の分け方について合意できそうな人にとって、遺産分割による単独名義化は有力な選択肢です。とくに、不動産を引き継ぐ人が決まっており、他の相続人もその人の単独取得に納得している場合は、分け方を決めやすいでしょう。

財産分与で夫婦のどちらかが不動産を単独取得する

この方法のポイント・特徴

  • 財産分与により、夫婦の一方が相手の持分を取得して単独名義にできる
  • 離婚後も共有名義を残すと、不動産の売却・管理・費用負担をめぐる調整が続く
  • 所有権の名義と住宅ローンの債務は別で、ローンが残る場合は事前に金融機関との調整が必要

夫婦共有名義の不動産は、離婚時の財産分与によって一方が相手の持分を取得し、持分を100%にすることで単独名義にできます。

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を、離婚時に分ける制度です。夫婦間の協議で不動産の取得者を決めるほか、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で財産分与を求める方法があります。

一方が不動産を単独取得すれば、離婚後もその家に住み続けながら、元配偶者との共有関係を解消することが可能です。むしろ、離婚後も共有名義を残すと、元配偶者との調整が続き、次のような問題が生じる可能性があります。

  • 不動産全体の売却や建て替えなどを行う際、元配偶者との合意が必要になる
  • 元配偶者が自分の持分を第三者へ売却し、知らない人が共有者になる可能性がある
  • 元配偶者が死亡すると、その相続人が持分を取得し、共有関係が複雑になる可能性がある
  • 固定資産税、管理費、修繕費などの負担をめぐって対立する可能性がある
  • 共有物分割を請求され、話し合いがまとまらなければ裁判所での手続きに進む可能性がある

住宅ローンが残っている場合は、不動産の所有名義と住宅ローンの債務を分けて考える必要があります。財産分与によって所有名義を一方へ変更しても、もう一方が住宅ローンの債務者や連帯保証人から当然に外れるわけではありません。

また、金融機関に無断で所有名義を変更すると、住宅ローン契約に違反する可能性があります。財産分与の内容を決める前に金融機関へ相談し、借換えや債務の引受けが可能か確認しておきましょう。

なお、通常の財産分与であれば、不動産を取得する側に贈与税は原則としてかかりません。一方、不動産を渡す側には、譲渡所得に対する所得税・住民税がかかる可能性があります。

【財産分与で単独取得する場合のシミュレーション】


・共有している不動産:マンション
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・住宅ローン残高:1,200万円
・共有者:夫・妻
・持分割合:それぞれ1/2
・住宅ローンの債務者:夫・妻の連帯債務


離婚後も妻がマンションに住み続けることを希望し、夫婦が「夫の1/2の持分を財産分与として妻へ移す」と合意したとします。財産分与を原因とする持分移転登記を行えば、妻の持分は100%となり、単独名義にできます。


ただし、所有権を妻へ移しただけでは、夫は住宅ローンの連帯債務者から外れません。財産分与の内容を確定する前に金融機関へ相談し、妻単独での借換えや債務の引受けが認められ、夫が債務から外れられるかを確認する必要があります。


妻だけで返済を続けることが難しい場合や、金融機関の審査を通過できない場合は、共有名義のまま返済を続けるリスクも踏まえ、不動産全体を売却して住宅ローンを清算する方法も比較しましょう。


株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

離婚後も一方が住み続けるなら単独名義化がおすすめ

離婚後も夫婦の一方が住み続ける場合は、元配偶者との共有状態を長く残さず、できるだけ単独名義へ整理することをおすすめします。ただし、一方だけで住宅ローンを返済することが難しい場合や、金融機関との調整がまとまらない場合は、無理に単独取得せずに不動産全体を売却して清算する方法も比較しましょう。

共有物分割請求を検討する

共有物分割訴訟

この方法のポイント・特徴

  • 各共有者は原則として共有物の分割を請求でき、協議がまとまらない場合は裁判所に分割を求められる
  • 賠償分割が選ばれ、適正な対価を支払える場合は、共有者の1人が不動産全体を取得して単独名義にできる
  • 希望する分割方法が採用されるとは限らず、現物分割や競売になる可能性もある

共有者間の話し合いで単独名義化できない場合、最終的には「共有物分割請求」によって共有状態の解消を求める方法があります。共有物分割請求とは、民法第256条に基づき、他の共有者に対して共有状態の解消を求めることです。

民法上、5年以内の不分割特約がある場合などを除き、各共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求できます。

共有物分割請求を行った後は、共有者間でどのような方法により共有状態を解消するかを話し合います。共有者全員が合意すれば、共有者の1人がほかの共有者へ金銭を支払って不動産全体を取得する、土地を物理的に分けるなど、合意内容に従って共有状態を解消できます。

そして、この請求のポイントは、共有者間で協議が調わない場合や協議自体ができない場合に、民事調停を申し立てたり、共有物分割請求訴訟を提起したりできることです。実務では、民事調停を経ずに共有物分割請求訴訟が提起されるケースが多く見られます。

共有物分割請求訴訟とは、民法第258条に基づく法的手続きです。裁判所は、不動産の性質や利用状況、共有者の希望などを考慮し、次の方法を基本として分割方法を判断します。

  • 現物分割:土地などの共有物を物理的に分ける
  • 賠償分割:共有者の1人または複数人が不動産を取得し、ほかの共有者へ持分に応じた金銭を支払う
  • 換価分割:不動産を競売し、その売却代金を持分に応じて分ける

共有物分割請求訴訟は、話し合いによる持分買取などとは異なり、裁判所が判決で分割方法を定め、最終的に共有関係の解消を図れる点がメリットです。訴訟の途中で和解が成立した場合は、その内容が和解調書に記載され、確定判決と同一の効力を持ちます。

一方、共有物分割請求訴訟のデメリットは、必ずしも自分が希望する分割方法が選ばれるとは限らない点です。自分が不動産を単独取得できるとは限らず、判決によって換価分割が選ばれ、不動産自体が売却される可能性もあります。

また、共有物分割請求訴訟が最終手段の1つといわれる理由として、ほかの共有者との関係が悪化するおそれが挙げられます。法的な争いに発展した時点ですでに関係が悪化しているケースもあり、判決が出ても感情的なわだかまりが残る可能性があります。

そのため、弊社としては、最初から共有物分割請求訴訟を検討するのではなく、「他の方法を考えたうえで、それでも協議がまとまらない場合に裁判手続き」というスタンスを推奨しています。

なお、訴訟では弁護士費用や不動産鑑定費用などがかかる場合があります。単独取得を希望する場合は、ほかの共有者へ支払う対価を準備できるかも確認しておきましょう。

【共有物分割請求によって単独取得する場合のシミュレーション】


・共有している不動産:一戸建て
・不動産全体の市場価格:3,000万円
・共有者:A・B
・持分割合:それぞれ1/2
・不動産の利用状況:Aが居住
・Aの希望:不動産全体を取得して住み続けたい
・Bの希望:自分の持分に相当する金銭を受け取りたい


AとBの間で金額について合意できず、共有物分割請求訴訟を提起したとします。単純化のため、Bの持分に対する適正な対価を1,500万円と仮定します。


裁判所が、Aに1,500万円を支払う能力があり、Aに不動産全体を取得させても共有者間の公平を害しないと判断した場合は、Aが不動産を取得し、Bへ1,500万円を支払う賠償分割が命じられる可能性があります。判決内容に従って登記を行えば、登記簿上もAの単独名義に整理できます。


ただし、実際の対価は不動産の評価や個別事情によって判断されるため、「市場価格×持分割合」で自動的に決まるわけではありません。また、裁判所が競売など別の分割方法を選ぶ可能性もあり、Aによる単独取得が保証されるわけではありません。


株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

共有物分割請求を検討すべき人

共有物分割請求は、共有者間の話し合いがまとまらないものの、これ以上共有関係を続けることが難しい場合に検討できる方法です。単独名義化やその他のトラブルなどについて、共有者と意見調整が難しい場合の解決手段として頭に入れておくとよいでしょう。

共有名義から単独名義に変更しない方がいいケース

ここまでは共有名義から単独名義に変更する方法や向いている人について解説してきましたが、実は無理に単独名義へ変更しない方が良いケースもあります。

  • 共有名義不動産を売却する際の税金負担を軽くしたい場合
  • 夫婦の収入合算で住宅ローンを組んでおり、名義変更が制限される場合
  • 共有者全員が賃貸経営を続けたい場合
  • 遺産分割協議がまとまっていない場合

上記に該当する場合は、すぐに単独名義へ変更せず、共有名義を維持するか変更の時期を見直すことも検討しましょう。

一方、当てはまらない場合でも、名義変更にかかる費用や税金、住宅ローン、不動産の利用状況などを比較したうえで、単独名義化や共有状態の解消を判断することが重要です。

共有名義不動産を売却する際の税金負担を軽くしたい場合

共有名義から単独名義に変更しても、売却時の税金が有利になるとは限りません。各共有者に3,000万円の特別控除が適用される場合は、共有名義のまま売却したほうが税負担を軽くできるケースがあります。

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、その譲渡所得に対して所得税や住民税などが課されます。ただし、マイホームを売却する場合は、一定の要件を満たすことで、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。

共有名義の不動産であっても、各共有者がこの特例の要件を満たしていれば、共有者一人ひとりについて最高3,000万円の特別控除が適用されます。たとえば、夫婦が家屋と敷地を共有名義で所有し、双方が実際に居住していたマイホームを売却する場合は、合計で最大6,000万円まで控除を受けられる可能性があります。

共有名義のまま売却することで、共有者全員に特例控除が適用される可能性がある代表的なケースは次のとおりです。

  • 夫婦が共有名義で所有し、双方が実際に居住していたマイホームを売却する場合
  • 共有者それぞれが実際に居住していた二世帯住宅を売却する場合
  • 相続によって共有取得した後、複数の相続人が実際に居住し、それぞれがマイホームの特例の要件を満たしている場合

このようなケースで売却前に単独名義へ変更すると、その後の第三者への売却について特例を利用できるのは単独所有者だけとなり、結果として税負担が増えることがあります。

売却時の税負担を抑えたい場合は、単独名義に変更する前に、共有者それぞれが特例の対象になるかを確認したうえで判断することが重要です。

夫婦の収入合算で住宅ローンを組んでおり、名義変更が制限される場合

夫婦の収入合算やペアローンを利用して住宅ローンを組んでいる不動産では、共有名義から単独名義への変更を慎重に検討すべきケースがあります。名義を1人にまとめたくても、住宅ローンの契約内容によっては、名義変更が事実上制限されることがあるためです。

前提として、住宅ローンが残っている不動産には、金融機関による抵当権が設定されています。この場合、不動産の所有者を変更するには、ローン契約や抵当権設定契約との整合性が重要になります。

収入合算やペアローンでは、夫婦双方が債務者や連帯保証人となっていることが多く、所有名義を変更する際は、住宅ローン契約上、金融機関の事前承諾を求められるのが一般的です。

実務で見られるのは、「登記上は名義変更できるはず」と考えて手続きを進めたものの、金融機関の承諾が得られず、単独名義化の計画を見直すことになるケースです。

金融機関に無断で名義変更を行うと、ローン契約違反となり、契約内容によっては一括返済を求められる可能性があります。金融機関が債務の引受けや借換えを認めない場合は、住宅ローンの完済や不動産の売却まで共有名義を維持することも選択肢の1つです。

住宅ローンが絡む不動産では、名義変更の可否を登記手続だけで判断せず、ローン契約全体を踏まえたうえで対応を検討することが重要です。

共有者全員が賃貸経営を続けたい場合

賃貸に出している共有不動産について、共有者全員が今後も所有者として賃貸経営を続けたい場合は、無理に単独名義へ変更しないほうがよいケースがあります。共有名義を維持することで、各共有者が持分割合に応じて家賃収入を得ながら、不動産の所有を続けられるためです。

共有不動産から得られる家賃収入は、原則として各共有者に持分割合に応じて帰属します。実際の家賃が代表者1人の口座へ振り込まれていても、代表者だけの不動産所得になるわけではありません。各共有者は、自分に帰属する家賃収入と必要経費を計算し、確定申告が必要な場合はそれぞれ申告します。

一方、単独名義に変更した後の家賃収入は、原則として単独所有者に帰属します。

単独名義化後も元共有者へ金銭を渡す場合は、支払いの根拠や割合を別途決める必要があり、税務上の取扱いも個別に確認しなければなりません。取り決めが曖昧なままでは、支払額や費用負担をめぐって不満が生じるおそれもあります。

ただし、共有名義で賃貸経営を続けると、家賃の受け取りだけでなく、修繕、賃貸条件の変更、管理会社の選定、将来の売却などについても共有者間の調整が必要になります。共有名義を維持して賃貸経営を続ける場合は、あらかじめ次の内容を共有者間で決めておきましょう。

  • 家賃の受取口座と各共有者への精算方法
  • 固定資産税、管理費、修繕費などの負担割合
  • 賃貸管理や修繕を担当する共有者
  • 大規模な修繕や賃貸条件の変更を決める方法
  • 共有者の一部が持分を手放したい場合の対応
  • 将来、不動産全体を売却する場合の方針

共有者全員が賃貸経営の継続に賛成し、収入・費用・管理のルールについて合意できる場合は、共有名義を維持する方法が向いています。一方、賃貸経営から抜けたい共有者がいる場合や、管理方針について意見が分かれている場合は、単独名義化や不動産全体の売却も比較しましょう。

遺産分割協議がまとまっていない場合

相続が発生したものの、遺産分割協議がまとまっていない場合は、特定の相続人への単独名義化を急がないほうがよいでしょう。取得者が決まる前に法定相続分どおりの共有登記をすると、その後の遺産分割で1人が取得することになった場合に、追加の登記や費用が必要になるためです。

遺産分割協議によって1人が不動産を取得するには、原則として相続人全員の合意が必要です。まずは不動産の取得者や代償金、売却方針などを話し合い、その内容を遺産分割協議書にまとめたうえで、相続登記や売却を進めましょう。

ただし、遺産分割がまとまらなくても、相続登記の申請義務に関する期限は進みます。期限内に協議が成立しない場合は、相続人申告登記を申し出るなど、申請義務を履行するための対応が必要です。

共有名義から単独名義に変更するのが難しいケースもあるため注意!実際の相談事例をもとに紹介

共有名義から単独名義へ変更する方法はいくつかありますが、すべてのケースでスムーズに手続きできるわけではありません。実務上、共有者の事情や不動産の状態によって、合意形成や登記手続きが難航するケースも少なくありません。

特に、以下のような状況がある場合は、当事者間の話し合いだけでは単独名義に変更できなかったり、裁判所や専門家の関与が必要になるほど手続きが複雑化したりすることがあります。

  • 共有者の誰かが変更に同意していない
  • 共有者に行方不明・音信不通の人がいる
  • 共有者の中に認知症を患っている人がいる
  • 共有者に未成年者がいる
  • 誰が共有者なのかがわからない
  • 住宅ローンが残っており、金融機関の承諾を得られない

なお、弊社は共有名義不動産や相続不動産などの買取を行う業者です。日々、共有や相続などによってトラブルが起きた方からの買取相談が寄せられ、中には共有名義から単独名義に変更できなかった方からのご相談もあります。

ここからは、共有名義から単独名義に変更するのが難しいケースについて、実際に寄せられた相談事例をもとに解説していきます。

共有者の誰かが変更に同意しない

共有名義から単独名義へ変更するには、売買や贈与などによって、最終的に1人へすべての持分を集約する必要があります。たとえば、共有者のうち誰か1人でも持分の譲渡に応じなければ、話し合いだけで特定の共有者の単独名義にする方向に持っていくのは相当困難になるでしょう。

実務上もっとも多いのが、「価格面で折り合いがつかないケース」や、「そもそも話し合いに応じてもらえないケース」です。

実際に、共有者の兄から同意が得られなかった人から寄せられた相談事例があります。

「父の相続で兄弟3人の共有となった実家を、自分の名義にまとめたいと考えて兄に相談したものの、『今は売りたくない』『名義変更にも応じない』と強く拒否され、話し合いが一切進まない」というご相談をいただいた事例です。


相談者様は、空き家となっている実家の維持費や将来的な管理負担を重く感じており、売却も含めた整理を検討していました。しかし、共有者である兄が名義変更や売却のいずれにも同意しないため、協議自体が成立せず、具体的な手続きを進めることができない状態が続いていました。


話し合いを重ねようとするほど関係は悪化し、感情的な対立から冷静な協議が困難に。共有名義である以上、変更行為や管理行為を進めるためには他の共有者の判断に左右されるという現実に対し、強いストレスを感じるようになっていきました。


このように、共有者の同意が得られず名義整理も売却も進められない状態となり、個人での解決が難しいと判断したことから、今後の選択肢について相談に至った事例です。

このように合意形成ができない共有名義不動産では、持分売却が現実的な解決策になることが少なくありません。

共有者に行方不明・音信不通の人がいる

共有者の所在が分からず連絡も取れない場合は、その人と協議できないため、通常の話し合いだけで単独名義へ変更することは困難です。

特に、数十年前から音信不通の親族が共有者になっているケースは、相続不動産で非常に多く見られます。

「母の相続で土地が3兄弟の共有になったものの、30年前に家を出た兄の行方が分からず、名義変更の話がまったく進まない」というご相談をいただいた事例です。


相続後、土地の整理や名義変更を進めようとしましたが、共有者の一人と長年連絡が取れない状態が続いており、協議そのものができませんでした。そのため、土地の活用や売却についても一切話を進めることができない状況でした。


固定資産税については相談者様が代表して負担しており、使う予定のない土地に対して支払いだけが続いていました。


このように、所在不明の共有者がいることで名義整理も処分もできず、負担だけが続く状態となったことから、今後の対応について相談に至った事例です。

行方不明者が共有者でも、不在者財産管理人の選任などを行えば名義変更が不可能というわけではありません。

ただし、不在者財産管理人の選任に加え、遺産分割や不動産売却などを行うには家庭裁判所の権限外行為許可が必要となるため、相応の期間や費用がかかる可能性があります。

2023年4月施行の改正民法における「所在等不明共有者の持分取得制度」といった新しい制度のおかげで、行方不明・音信不通の共有者がいても、名義変更や売却判断がある程度進めやすくなりました。とはいえ、申立てのための一定の要件や裁判所での手続きを求められるため、誰でも簡単に行えるわけではありません。

そのため、実務では「現実的に名義変更が難しい」と判断し、共有持分の売却によって早期に共有状態から離脱したいと考える人も珍しくありません。

共有者の中に認知症を患っている人がいる

共有者が認知症を患い、名義変更の内容を理解して判断する能力がない場合は、本人による有効な売買や贈与などができないため、通常の方法では手続きを進められません。状況によっては、家庭裁判所に成年後見人などの選任を申し立てる必要があります。

「母が認知症で施設に入ったまま戻れないため、共有名義の家を私の単独名義に変更して売却したいが、母の同意が得られず手続きが進まない」というご相談をいただきました。


相談者様は維持費の負担が増えており、早期売却を希望していましたが、名義変更できないため身動きが取れない状態でした。


このケースでは、名義変更を試みても長期化する可能性が高く、相談者様もご不安を抱えていました。最終的には、相談者様が自分の共有持分のみを弊社に売却し、共有関係から離脱することで負担を軽減する形を選択されました。

共有者が認知症を患っていても、成年後見人などを選任することで、不動産の売却等を進められる場合があります。

ただし、成年後見人は本人の利益を考えて判断するため、他の共有者が希望する条件で持分を移転できるとは限りません。また、本人の居住用不動産を売却する場合は家庭裁判所の許可も必要となるため、短期間での名義整理が難しいことがあります。

そのため、共有者に認知症を患う人がいるケースでは、共有持分の売却によって負担から離れる方法を選ぶことも多いのが実情です。

共有者に未成年者がいる

未成年者が共有者の場合、原則として親権者などの法定代理人が、本人に代わって名義変更の手続きを行います。

親権者と未成年者の利益が相反する取引では、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければなりません。また、特別代理人は未成年者の利益を守る立場にあるため、未成年者に不利な内容は認められない可能性があります。

「夫が亡くなり、未成年の子と一緒に相続人となって自宅を自分の単独名義にしようとしたものの、手続きを進められなかった」というご相談をいただいた事例です。


相談者様も相続人であるため、親権者として子を代理して遺産分割協議を行うことは利益相反に当たります。そこで、家庭裁判所に子のための特別代理人を選任してもらう必要がありました。


しかし、遺産の大部分を自宅が占めており、子へ渡せる預貯金だけでは法定相続分を確保できませんでした。相談者様にも不足分を代償金として支払う余力がなかったため、自宅を単独取得する内容では手続きを進めることが難しい状況でした。


その結果、相談者様による単独取得を断念し、自宅を相談者様と子の共有名義で相続登記することになりました。子が成年に達した後、子の同意を得たうえで弊社に売却の相談をしていただいたという流れです。

誰が共有者なのかがわからない

相続登記がされていない不動産では、相続人が10人以上に及ぶことも珍しくなく、誰が共有者なのかすら確定できない状況が生まれます。

共有者が確定しない限り、共有名義から単独名義に変更するための協議をスタートすることもできません。

「祖父名義のまま40年以上放置されていた土地が見つかり、調べてみたところ相続人が12人にもなっており、そのうち連絡が取れるのは半分程度しかいない」というご相談をいただいた事例です。


長年相続登記が行われていなかったため、代替わりのたびに権利関係が細分化し、誰が共有者なのかを把握するだけでも大きな負担となっていました。実際に連絡が取れない相続人も多く、遺産分割や名義整理について話し合いを行うことは現実的に困難な状況でした。


一方で、土地は利用することも処分することもできないまま、固定資産税の支払いだけを相談者様が続けており、「なぜ自分だけが負担しているのか」という不公平感と将来への不安が強くなっていきました。


このように、相続人が多数に及び共有関係が複雑化したことで、整理や活用の見通しが立たず、負担だけが続く状態となったことから、今後の対応について相談に至った事例です。

戸籍などを収集して相続人を調査し、遺産分割協議や相続登記によって名義を整理する方法があります。ただし、相続人が多い場合や一部の相続人と連絡が取れない場合は、調査や合意形成に時間と費用がかかることがあります。

そのため、実務では「相続関係が複雑で全員の同意を得られないため、まず自分の持分だけを売却して負担を軽減したい」という相談も多く寄せられます。

住宅ローンが残っており金融機関の承諾を得られない

共有名義の不動産に住宅ローンが残っているまま無断で名義を変更すると、住宅ローン契約に違反する可能性があります。

「離婚後も妻が住み続ける予定なので単独名義に変更したいが、住宅ローンが残っており銀行から名義変更を断られた」というご相談をいただいた事例です。


夫婦間では財産分与の合意が成立していましたが、ローン契約上の主債務者は夫であり、妻単独では審査を通過できない状況でした。


金融機関の承諾を得られなかったため、住宅ローン契約上の問題を避けるには名義変更を進められず、共有名義のままとなりました。実際には元夫が居住していないにもかかわらず、共有名義と住宅ローンの関係が残る不安定な状態が続いていました。


「このまま将来売却もできないのではないか」「どちらかが支払えなくなったらどうなるのか」という不安から、現実的な整理方法を検討したいとのことで相談に至ったケースです。

住宅ローンが残っている場合は、次のような対応を検討する必要があります。

  • 単独での住宅ローンへの借換え
  • 債務の引受けや債務者の変更について金融機関の審査を受ける
  • 住宅ローンを完済して抵当権を抹消する
  • 不動産全体を売却して住宅ローンを清算する

特に離婚や親族間の名義整理では、「登記はできても住宅ローンの契約関係は別に残る」という点を見落としがちです。そのため、ローンが残っている不動産の名義変更を検討する際は、事前に金融機関へ相談し、承諾の可否や債務を整理できるかを確認することが不可欠です。

実務では、「ローンの問題が解決できないため、単独名義への変更を断念し、売却や持分売却を検討したい」というご相談も多く寄せられます。

共有名義から単独名義に変更する具体的な手続きの流れ

共有名義から単独名義への変更は、当事者間で合意するだけでは登記簿に反映されません。売買、贈与、財産分与、遺産分割など、変更の原因に応じた手続きを行ったうえで、所有権移転登記や相続登記を法務局へ申請する必要があります。

共有名義から単独名義へ変更する手順は、その原因によって必要書類や流れが大きく異なります。ここでは、離婚・相続・親子間整理の3パターンに分けて、実務上の流れを解説していきます。

なお、2026年4月1日から、不動産所有者の住所・氏名変更登記は義務化されており、原則変更から2年以内、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料対象になり得ます。義務化以前の未変更分も対象であるため、注意しましょう。

離婚で共有名義から単独名義に変更する場合の手続き

離婚によって共有名義から単独名義に変更する場合の手続きを、大まかにまとめました。

手順 内容 実務上の注意点
① 財産分与の内容を確定 どちらが不動産を取得するかを合意する 住宅ローン残債の有無を必ず確認する
② 合意内容を書面化 離婚協議書や公正証書を作成する 不動産の表示は登記簿どおり正確に記載する
③ 金融機関へ確認 ローンがある場合は名義変更や債務整理について相談する 債務者の変更や借換えには金融機関の審査・承諾が必要
④ 登記書類の準備 戸籍・印鑑証明書・評価証明書などを取得 離婚成立前に申請はできない
⑤ 所有権移転登記 財産分与を原因として登記申請 登記完了までは登記簿上の名義が変わらない

相続で共有名義から単独名義に変更する場合の手続き

相続の際に共有名義から単独名義に変更する場合の流れは次のとおりです。

手順 内容 実務上の注意点
① 遺言書の確認 単独取得の指定があるか確認 自筆遺言は検認が必要な場合あり
② 相続人の確定 被相続人の出生から死亡までの戸籍などを収集する 相続人が漏れたままでは有効な遺産分割協議ができない
③ 遺産分割協議 遺言で取得者が決まっていない場合は、単独取得者を決めて協議書を作成する 原則として相続人全員の合意が必要
④ 登記書類の準備 戸籍一式・住民票・評価証明書を揃える 物件表示は登記簿と一致させる
⑤ 相続登記申請 法務局へ相続登記を申請する 2024年4月1日から義務化され、原則として取得を知った日から3年以内に申請する

相続人が多い場合、遺産分割協議によって1人の単独名義にするには、原則として相続人全員の合意が必要です。連絡が取れない相続人がいる場合は、家庭裁判所での手続きが必要になることもあります。

親子間で共有名義から単独名義に変更する場合の手続き

親子間では売買または贈与による名義変更が一般的です。

手順 内容 実務上の注意点
① 方法を決める 売買か贈与かを選択 税務の影響が異なる
② 契約内容を確定 価格や移転割合を明確にする 著しく低い価格では、時価との差額に贈与税がかかる可能性がある
③ 契約書作成 売買契約書または贈与契約書を作成 口頭でも成立し得るが、実務上は契約書を作成する
④ 書類準備 印鑑証明書・評価証明書などを取得 持分を譲渡する人の意思能力が必要
⑤ 所有権移転登記 法務局へ登記申請 ローンがあれば事前に金融機関へ相談する

親子間では「家族だから簡単」と考えがちですが、実務では次のようなミスが多く見られます。

  • 契約書を作らない
  • 不動産の時価を確認せずに売買価格を決める
  • 住宅ローンの存在を忘れている
  • 親が高齢で意思能力が問題になる

親子間で名義を変更する場合は、契約を結ぶ前に不動産の時価や住宅ローンの契約内容、当事者の意思能力を確認し、売買と贈与のどちらが適しているかを比較しましょう。

共有名義から単独名義に変更する場合にはどんな費用や税金がかかる?

ここでは、共有名義から単独名義に変更する際にかかる可能性がある費用や税金を紹介します。実際に負担する費用や税金は、売買、贈与、相続、財産分与など、名義変更の原因によって異なります。

また、登録免許税や不動産取得税などは、原則として移転する持分に対応する価額を基準に税額を計算します。

費用・税金 金額・税率の目安
司法書士への報酬 4万円から16万円程度
登録免許税 登記原因によって異なる
※例:相続0.4%、贈与・財産分与2.0%。軽減・免税措置あり
印紙税 200円から48万円
※紙の契約書の種類や契約金額によって異なる
不動産取得税 土地・住宅は3%(2027年3月31日まで)、住宅以外の家屋は4%
※軽減・非課税措置あり
譲渡所得に対する税金 課税譲渡所得に対して原則20.315%または39.63%
贈与税 暦年課税では基礎控除後の課税価格に応じて10%~55%

それぞれ詳しく解説します。

司法書士への報酬|4万円から16万円程度

共有状態にある不動産の単独名義への変更に関する手続きを司法書士に依頼すると、司法書士への報酬が発生します。

司法書士事務所によって金額は異なりますが、報酬の一般的な目安は以下のとおりです。

登記内容 報酬の目安
所有権移転登記 2万円~10万円
抵当権抹消登記 1万円~3万円
住所変更登記 1万円~3万円

自分で登記を申請すれば司法書士報酬はかかりませんが、必要書類や申請内容に誤りがあると手続きが進まない可能性があります。とくに相続登記は相続関係の手続きや遺産分割などが絡むため、専門家である司法書士に依頼するのが実務上一般的です。

司法書士へ依頼する場合の報酬は、必要な登記の種類や不動産の数、共有者の人数などによって異なります。事前に見積もりを取り、報酬の内訳を確認しましょう。

登録免許税|登記原因によって税率が異なる

登録免許税とは、登記手続きの際に支払う税金のことです。

税額は不動産の固定資産税評価額に税率をかけて算出します。固定資産税評価額とは、固定資産税を決める際の基準となる評価額のことで、各自治体が管理している固定資産課税台帳に記載されています。

なお、固定資産税課税台帳に価格の登録がない(新築住宅)の場合は、法務局の登記官が認定した課税標準額に対して税率をかけて登録免許税を計算するため、共有不動産を管轄する法務局に問い合わせる必要があります。

また、登記の種類によって税額の算出方法が異なります。具体的な算出方法は以下のとおりです。

登記原因 税率
売買による土地の所有権移転登記 移転する持分に対応する固定資産税評価額×1.5%
※2029年3月31日まで。通常は2.0%
売買による建物の所有権移転登記 移転する持分に対応する固定資産税評価額×2.0%
※一定の要件を満たす住宅用家屋は2027年3月31日まで0.3%
贈与・財産分与・持分放棄による所有権移転登記 移転する持分に対応する固定資産税評価額×2.0%
相続による所有権移転登記 相続する持分に対応する固定資産税評価額×0.4%
※原則税率。一定の土地には2027年3月31日まで免税措置あり
共有物分割による土地の所有権移転登記 分割前に有していた持分に応じた価額に対応する部分は0.4%
※その価額を超えて取得する部分は原則2.0%
抵当権抹消登記・住所変更登記 それぞれ不動産1個につき1,000円

売買による土地の所有権移転登記の税率は原則として2.0%ですが、2029年3月31日までに登記を受ける場合は1.5%の軽減税率が適用されます。

印紙税|200円から48万円(契約金額によって異なる)

売買や贈与によって持分を移す際、紙の契約書を作成すると印紙税がかかります。一方で、電子契約として作成された電磁的記録には、原則として印紙税はかかりません。

印紙税とは、紙の売買契約書や贈与契約書など、印紙税法上の課税文書を作成した場合にかかる税金です。

通常の無償の不動産贈与について紙の契約書を作成した場合は、不動産の評価額にかかわらず、原則として200円の収入印紙を貼付します。

一方、不動産の売買契約(譲渡)に関連する書類を作成する場合に必要な印紙税額は以下のとおりです。

作成する書類 印紙税額
・不動産の譲渡に関する契約書
(不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡契約書など)
・地上権や土地の賃借権の設定、譲渡に関する契約書
(土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など)
・1万円未満:非課税
・1万円以上10万円以下:200円
・10万円を超え50万円以下:400円
・50万円を超え100万円以下:1,000円
・100万円を超え500万円以下:2,000円
・500万円を超え1,000万円以下:1万円
・1,000万円を超え5,000万円以下:2万円
・5,000万円を超え1億円以下:6万円
・1億円を超え5億円以下:10万円
・5億円を超え10億円以下:20万円
・10億円を超え50億円以下:40万円
・50億円を超えるもの:60万円

ただし、2027年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約金額が10万円を超えるものには、次の軽減税率が適用されます。

契約書に記載された契約金額 税額
10万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円
1億円超5億円以下 6万円
5億円超10億円以下 16万円
10億円超50億円以下 32万円
50億円超 48万円

※不動産譲渡に関する契約書に記載された契約金額が10万円以下の場合は軽減税率の対象外(税額200円)、契約金額が1万円未満は非課税
※不動産の譲渡に関する契約書のうち、平成26年4月1日から令和9年3月31日まで作成される場合の軽減税率

参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

不動産取得税|土地・住宅は3%、住宅以外の家屋は4%

贈与や売買によって共有持分を取得した場合は、原則として不動産取得税が課税されます。

不動産取得税とは、土地や建物を取得した人に課せられる都道府県税のことです。

相続による取得には、不動産取得税がかかりません。共有物分割による取得も、分割前の持分割合を超えない範囲は非課税ですが、その割合を超えて取得した部分には課税される可能性があります。

税額は固定資産税評価額に税率をかけて算出します。税率は以下のとおりです。

取得する不動産 税率
土地 3%
※2027年3月31日まで
住宅 3%
※2027年3月31日まで
住宅以外の家屋 4%

なお、取得した不動産が土地か家屋かによって不動産取得税額の計算方法が異なります。

土地を取得した場合の計算方法は以下のとおりです。なお、2027年3月31日までに宅地等を取得した場合は、固定資産税評価額の2分の1が課税標準となります。

宅地等の当初税額=固定資産税評価額×取得した土地の持分×1/2×3%
納税額=当初税額-軽減額

住宅用土地について一定の要件を満たす場合は、次のいずれか高い金額が税額から軽減されます。

  • 4万5,000円(当初税額が4万5,000円未満の場合はその税額)
  • 土地1㎡当たりの価格×住宅の床面積の2倍(上限200㎡)×取得した住宅の持分×3%

家屋を取得した場合の計算方法は以下のとおりです。

住宅の納税額=(固定資産税評価額-控除額)×取得した住宅の持分×3%
非住宅の納税額=固定資産税評価額×取得した家屋の持分×4%

一定の要件を満たす新築住宅や中古住宅では、固定資産税評価額から所定の金額を控除できる場合があります。

適用要件や控除額は、住宅の種類、床面積、建築年月日、耐震基準への適合状況などによって異なるため、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所へ確認しましょう。

譲渡所得に対する税金|原則20.315%または39.63%

共有持分を売却して利益が生じた場合は、売主に譲渡所得に対する所得税、復興特別所得税、住民税がかかる可能性があります。また、財産分与によって不動産を渡す側にも、譲渡所得が生じる場合があります。

譲渡所得に対する税金とは、不動産の譲渡によって生じた利益に課される所得税、復興特別所得税、住民税のことです。

税額は、課税譲渡所得に税率を掛けて計算します。課税譲渡所得の基本的な計算方法は、次のとおりです。

課税譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

共有持分を売却した場合は、売却した持分に対応する譲渡価額、取得費、譲渡費用を基に計算します。譲渡価額は、売買では原則として売却代金、財産分与では分与時の不動産の時価です。

取得費には、不動産の購入代金や購入手数料などが含まれます。ただし、建物の取得費は、購入代金や建築代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

取得費に含まれる主な費用は、次のとおりです。

  • 土地・建物の購入時に納めた登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税
  • 借主がいる土地や建物を購入するとき、借主を立ち退かせるために支払った立退料
  • 土地の埋立て、土盛り、地ならしのための造成費用
  • 土地の取得に際して支払った測量費用
  • 所有権などを確保するための訴訟費用
  • 当初から土地の利用が目的と認められる場合の建物の購入代金や取壊し費用
  • 土地や建物の購入に充てた借入金の利子のうち、実際に使用を開始する日までの期間に対応する利子
  • 土地などの購入契約を解除し、ほかの物件を取得した場合に支払った違約金

譲渡費用には、仲介手数料、売買契約書の印紙代、売却のために支払った立退料、土地を売るための建物の取壊し費用などが含まれます。

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。一般的な税率は次のとおりです。

所得税 復興特別所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得(所有期間が5年以下) 30% 0.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得(所有期間が5年超) 15% 0.315% 5% 20.315%

なお、マイホームなど一定の不動産を売却した場合は、特別控除や軽減税率を利用できる可能性があります。

贈与税|基礎控除後の課税価格に応じて10%~55%

共有者間の贈与によって共有持分を取得した場合は、取得者に贈与税が課されることがあります。

贈与税を計算する際の不動産の価額は、一般的な売買価格とは限りません。土地は原則として路線価方式または倍率方式、家屋は原則として固定資産税評価額によって評価します。共有持分を贈与した場合は、原則として不動産の贈与税評価額に贈与する持分割合を掛けて計算します。

暦年課税における基本的な計算方法は、次のとおりです。

基礎控除額=年間110万円
基礎控除後の課税価格=1年間に贈与を受けた財産の贈与税評価額の合計額-110万円
贈与税額=基礎控除後の課税価格×税率-控除額

贈与税の税率には、一般税率と特例税率があります。

特例税率とは、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の人が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用される税率です。

一般税率は、特例税率に該当しない贈与に適用されます。

一般税率の税率と控除額は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

特例税率の税率と控除額は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

一般税率の対象となる財産と特例税率の対象となる財産の両方を同じ年に贈与された場合は、それぞれの財産の割合に応じた計算が必要です。

なお、相続時精算課税を選択した場合は、基礎控除や税率などの計算方法が異なります。

共有名義から単独名義に変更する際の費用・税金のシミュレーション

共有名義から単独名義に変更する際の費用・税金は、その原因によって大きく変わります。相続税がかからない相続と、暦年課税による贈与を比較した場合、同じ1/2持分の移転でも数百万円の差が出ることがあります。

ここでは、計算条件をそろえるため、次のケースを前提に費用の目安を簡単にシミュレーションしました。

  • 共有している不動産:住宅である家屋
  • 家屋全体の固定資産税評価額:3,000万円
  • 移転する持分:1/2
  • 移転する持分に対応する固定資産税評価額:1,500万円
  • 不動産取得税の住宅軽減:適用しない
  • 司法書士報酬:クランピーリアルエステートにおける実務上の目安

離婚の財産分与で共有名義から単独名義に変更する場合の費用・税金

離婚に伴う通常の財産分与では、取得者に贈与税は原則としてかかりません。ただし、登録免許税がかかるほか、不動産取得税が課税される場合があります。

費用・税金 目安金額
登録免許税(1,500万円×2%) 約30万円
不動産取得税(1,500万円×3%) 約45万円
※軽減措置を適用しない場合
贈与税 原則0円
司法書士報酬 6万円~12万円
合計目安 約81万円~87万円
※別途、分与する側に譲渡所得税が生じる場合あり

上記の不動産取得税は、軽減措置を適用しない場合の金額です。婚姻後に共同で取得した不動産を清算する目的で財産分与する場合は、申告によって軽減されることがあります。

相続で共有名義から単独名義に変更する場合の費用・税金

相続による不動産の取得には不動産取得税がかからず、相続登記の登録免許税率は原則として0.4%です。そのため、相続税がかからないケースでは、売買や贈与よりも登記時の税負担を抑えやすいといえます。

費用・税金 目安金額
登録免許税(1,500万円×0.4%) 約6万円
不動産取得税 0円
司法書士報酬 8万円~15万円
戸籍取得などの実費 1万円~2万円
合計目安 約15万円~23万円
※相続税を除く

なお、上記の合計には相続税を含んでいません。相続税の有無や金額は、不動産だけでなく、預貯金などを含む遺産総額、債務、法定相続人の人数などによって決まります。

また、相続人が多い場合や代襲相続が発生している場合は、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成が複雑になり、費用や期間が増えることがあります。

親子間の贈与で共有名義から単独名義に変更する場合の費用・税金

本シミュレーションでは、親子間の贈与は相続よりも費用負担が大きくなります。登録免許税と不動産取得税に加え、取得者に贈与税がかかるためです。

費用・税金 目安金額
登録免許税(1,500万円×2%) 約30万円
不動産取得税(1,500万円×3%) 約45万円
※住宅の軽減措置を適用しない場合
贈与税 366万円
司法書士報酬 6万円~12万円
合計目安 約447万円~453万円

贈与税は、次のように計算します(贈与年の1月1日時点で18歳以上の子が親から贈与を受け、その年にほかの贈与を受けていない場合の特例税率)。

課税価格=1,500万円-110万円=1,390万円
贈与税=1,390万円×40%-190万円=366万円

なお、土地を含む場合や一般税率が適用される場合、相続時精算課税を選択する場合などは、税額が異なります。

不動産を単独名義に変更せずに共有名義のままでいるリスク

弊社には「不動産を単独名義にせずに共有名義のままにしていてもよいのか」という相談が寄せられることもあります。

共有者が死亡した場合の相続登記の申請義務は別として、法律上、共有名義を単独名義に変更しなければならないわけではありません。とはいえ、単独名義が必ずしも最善とは限らないものの、共有名義を解消しておいたほうがリスク低減につながるのも事実です。

たとえば、不動産を単独名義に変更せず、共有名義のままにするリスクとして、次のものが挙げられます。

  • 不動産の活用に制限がある
  • 不動産の権利関係が複雑化する
  • 固定資産税などの支払い負担について共有者間でトラブルが起こりやすい
  • 離婚時にトラブルになりやすい

ここからは、それぞれのリスクについて解説します。

不動産の活用に制限がある

共有名義不動産の行為

共有名義不動産では、各共有者に、その不動産全体を持分に応じて使用する権利が認められています。ただし、共有者の1人が、不動産全体の売却や賃貸、建て替えなどを自由に決められるわけではありません。

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
e-Gov法令検索 民法第249条

共有名義不動産を活用する場合は、行為の内容に応じて、共有者全員の同意や持分価格の過半数による決定が必要になります。

行為の種類 共有者の同意 行為の具体例
変更・処分行為 共有者全員の同意が必要 ・不動産全体の売却
・家屋の取り壊し・建て替え
管理行為・軽微な変更 持分価格の過半数で決定 ・短期間の賃貸借契約
・外観・構造・用途を大きく変えない改修
保存行為 各共有者が単独で行える ・雨漏りなどの修繕
・実体に合わせた建物滅失登記

たとえば、共有名義の不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。誰か1人でも反対すれば、不動産全体を売却することはできません。

また、売却や賃貸、改修などを行う際に共有者間で協議が必要となり、意見の対立からトラブルに発展することも珍しくありません。不動産の有効活用を検討している場合は、共有状態の解消を検討したほうがよいでしょう。

不動産の権利関係が複雑化する

不動産を共有名義のままにすると、権利関係が複雑化するおそれがあります。

共有者の1人が死亡して相続が発生した場合、その持分は相続人に引き継がれます。相続人が複数いる場合は持分がさらに細分化され、権利関係が複雑になってしまうのです。

なかには疎遠な親族が新たな共有者となるケースもあり、意思疎通が難しくなるほか、共有物の分割や不動産の活用・売却について協議がまとまらなくなる場合もあるでしょう。

結果として、不動産が放置され、問題の解決が先送りされることもあります。トラブルを避けるためにも、共有不動産への対処を早めに検討することが大切です。

固定資産税などの支払い負担について共有者間でトラブルが起こりやすい

不動産の共有状態が続くと、固定資産税などの支払い負担をめぐって、共有者間でトラブルになることがあります。

共有名義不動産の固定資産税については、共有者全員が連帯して納税義務を負います。一方、共有者間の内部関係では、固定資産税や管理費などを持分に応じて負担するのが原則です。

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
e-Gov法令検索 民法第253条

法律上は持分に応じた負担が原則ですが、実務上は「共有者の一部が費用を支払わない」「代表者1人だけが負担している」といったケースも少なくありません。税金や管理費を負担しない共有者がいると、費用を負担している共有者との間でトラブルに発展する可能性があります。

共有者間の関係が悪化するおそれもあるため、費用負担に問題が生じている場合は、共有状態の解消を早めに検討しましょう。

離婚時にトラブルになりやすい

夫婦で不動産を共有している場合、離婚時にトラブルが起こるおそれがあります。

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚時または離婚後に分ける制度です。

婚姻中に夫婦が協力して取得した共有名義の不動産は、原則として財産分与の対象になります。しかし、不動産は現物のまま均等に分けることが難しいため、夫婦のどちらかの単独名義に変更したり、売却して代金を分けたりする方法が取られます。

一方、不動産を売却して現金化することが難しく、共有名義のまま離婚するケースもあります。離婚後の売却や管理、費用負担をめぐるトラブルを防ぐためにも、離婚時には共有状態を解消できるか検討することが大切です。

共有者間の協議がまとまらない場合は専門家(弁護士・司法書士)に相談しよう

共有不動産の処理や活用について共有者同士の話し合いがまとまらない場合は、相談内容に応じて弁護士や司法書士へ相談することをおすすめします。

意見がかみ合わず、不動産を自由に活用できない状態でも、維持管理費用や固定資産税などのコストは発生します。また、そのまま不動産を放置すると、子どもや孫の世代まで問題を先送りすることにもなりかねません。

共有者との交渉や共有物分割請求訴訟については弁護士、合意成立後の所有権移転登記などについては司法書士へ相談しましょう。

まとめ

共有名義の不動産を単独名義に変更する方法には、売買・贈与・放棄・相続・財産分与・共有物分割など、いくつかの手段があります。

しかし、どの方法を選ぶべきかは「共有者の関係性」「税金」「住宅ローンの残債」「不動産の形状」「共有者の意思能力」などによって大きく異なります。

共有名義のままにすると、売却や活用の妨げになるだけでなく、相続のたびに権利関係が複雑化し、将来的な手続きが難しくなるおそれがあります。

本記事で紹介したように、共有名義不動産では、住宅ローンの滞納、固定資産税の負担、共有者との連絡不能、認知症、相続人の増加などが重なり、問題の解決が難しくなることがあります。共有名義を適切なタイミングで整理しておくことは、不動産を円滑に管理・処分するうえで重要です。

共有名義から単独名義への変更は、方法の選定から登記、税務、共有者との調整まで、多くの専門知識を必要とします。特に共有者間の合意が得られない場合や、権利関係が複雑化している場合には、個人だけで解決することが難しいケースも少なくありません。

共有名義の解消で悩んでいる方は、早い段階で専門家に相談し、自分の状況に合った方法を検討することをおすすめします。権利関係が複雑になる前に動き出すことで、解決までの時間や費用を抑えられる可能性があります。

共有名義から単独名義の変更でよくある質問

共有名義から単独名義に変更するにはどこで手続きをすればいいですか?

共有名義の不動産を単独名義に変更するには、不動産の所在地を管轄する法務局へ、変更の原因に応じて所有権移転登記や相続登記を申請します。

必要書類は売買、贈与、財産分与、相続などの原因によって異なります。登記は自分でも申請できますが、手続きに不安がある場合は司法書士へ相談しましょう。

共有名義から単独名義に変更するには、共有者全員の同意が必要ですか?

必ずしも共有者全員の同意が必要とは限りません。売買や贈与によって1人にすべての持分を集約する場合は、持分を手放す各共有者の合意が必要です。

一方、自分の共有持分だけを第三者へ売却する場合は、他の共有者の同意を必要としません。持分放棄も他の共有者の承諾を必要としない単独行為ですが、登記簿上の名義を変更するには、通常、残る共有者の協力が必要です。

共有名義から単独名義に変更する場合は必ず贈与税がかかりますか?

共有名義から単独名義に変更しても、必ず贈与税がかかるわけではありません。贈与税は名義変更そのものではなく、共有持分を無償または著しく低い価格で取得したかどうかなどによって判断されます。

共有持分を無償で譲り渡した場合や放棄した場合、売買の形を取っていても代金の支払いがない場合などは、贈与税がかかる可能性があります。

一方、実際に時価で持分を売買した場合や、通常の財産分与、相続を原因とする名義変更では、贈与税は原則としてかかりません。

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