共有不動産の管理費用はどう決める?支払いに応じない共有者への対処法も解説
共有不動産の維持・管理で困りがちな問題が管理費用の負担です。「誰が管理費用を払うべきなのか」「自分は住んでいないのに管理費用を支払わなければならないのか」「管理費用にはどのような出費が該当するのか」など、さまざまな疑問があるでしょう。
共有名義の不動産では、所有者(共有者)であれば全員が管理費用を支払わなければならない義務があります。共有者の代表が管理費用を立て替えて支払っている場合は、他の共有者は代表者に管理費用を支払わなければなりません。ただし、不動産にかかる全ての費用に共有者全員で分担する義務があるわけではなく、法律や過去の判例から管理費用に該当する費用はおおよそ決まっています。
本記事では、共有不動産の管理費用の分担方法と管理費用に該当するもの・該当しないものを詳しく解説します。管理費用を支払いたくない場合や、他の共有者が管理費用を支払ってくれない場合の対処法についても確認していきましょう。
当社、株式会社クランピーリアルエステートは、共有名義の不動産を専門に買取を行っています。不動産問題に強い1200以上の士業事務所と連携しており、共有者間でトラブルになっている共有不動産でも買取が可能です。「管理費用の支払いが負担になっていて、自己持分を手放したい」「管理費用を滞納していて、他の共有者から請求されている」という場合は、お気軽にご相談ください。
目次
共有不動産の管理費用の分担方法
共有名義の不動産における管理費用の分担方法のポイントは以下2点です。
- 共有持分に応じて負担する管理費用の金額が決まる
- 他者が居住していても原則として持分割合で金額が決まる
まずは、共有者間で管理費用をどのように分割し、支払うのかお伝えします。
管理費用は共有持分の割合で決められる
原則として、共有不動産の管理費用は、自身の所有する共有持分の割合に応じて決定されます。持分割合による管理費の分担は民法第253条で規定されています。
「共有物に関する負担」
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
e-Gov法令検索 民法第253条1項
よって、共有者であれば全員が不動産の維持・管理にかかる費用を支払う義務があり、他の共有者の合意なしに管理費用を支払わない・持分割合以下の金額しか支払わないということはできません。
例えば、毎月8万円の管理費用がかかる不動産を、Aが持分2分の1、B・Cがそれぞれ持分4分の1で共有している場合。Aの負担すべき金額は8万円の2分の1の4万円で、B・Cの負担すべき金額8万円の4分の1で2万円ずつ負担することとなります。
誰か一人が居住していても原則として持分割合で決める
共有不動産の管理費の負担割合は、居住者がいたとしても共有持分の割合に応じて決まります。
民法第253条では「対象の不動産に居住しているか」ではなく、「対象の不動産を所有しているか」で管理費を誰が負担するのかを定めています。そのため、共有者や賃借人が居住していたとしても、原則として共有者全員が管理費を負担する義務があるのです。言い換えれば、共有不動産に共有者の1人が住んでいるからといって、居住している共有者のみが管理費を全て負担する義務はありません。
ただし、一部の共有者が居住している場合、やはり居住していない共有者との間に不公平感が生まれます。この場合には、共有者全員が合意すれば、「居住者が全額負担する」「居住者が他の共有者よりも多く負担する」などと、居住している共有者の負担を大きく設定することができます。これは、管理費の負担に関する法律は、当事者間の約束が優先される「任意法規」であるためです。
任意法規とは、法律上の定めはあるものの、当事者間で法律とは異なる合意や定めをした場合は、当事者間の合意・定めが優先されるという法律の規定。対して、強行法規は、当事者間での合意や定めにかかわらず、強制的に法律上の定めが適用される法律の規定を指す。民法の大半は任意法規だが、労働者や消費者を保護し、公の秩序を維持するための法律は強行規定であるのが一般的。
管理費用は一人が立替えするケースが多い
法律上は共有持分者全員が管理費用を分担すると定められているものの、共有者の持分割合に応じて各々に請求書が発行されるわけではありません。そのため、実際には共有者の代表者1人が立て替えて支払い、他の共有者は後から代表者に対して持分割合に応じた金額を代表者に支払うのが一般的です。
例えば、固定資産税の納付用紙は代表者1人に送られます。管理業務や修繕にかかる費用も、代表者1人に対して請求書が発行されます。代表者が立て替えた費用を他の共有者に請求することを「求償」と呼びます。求償された共有者は、自分の持分割合に相当する金額を代表者に支払わなければなりません。
代表が滞納すると不動産全体が差し押さえられる場合がある
代表者1人が管理費用を立て替えることから、一部の共有者が負担すべき費用を支払わないというトラブルが起きがちです。しかし、一部の共有者が管理費用を負担しないからといって、納税や各種支払いを行わないと、共有者全員の財産や不動産全体が差し押さえられる恐れがあります。
固定資産税・都市計画税の納税や管理費用の支払いには、連帯責任を負う制度「連帯納付義務(連帯債務)」があります。つまり、不動産を管理する責任・管理にかかる費用を負担する責任は所有者全員にあり、支払いができなかった場合の責任は全共有者が負わなければならないということです。
固定資産税・都市計画税の納付書は代表者に送られますが、期限までに納付しなかった場合に届く督促状は他の共有者にも送付されます。督促状の送付から10日経つと法律上は差し押さえが可能です。督促を受けた共有者も納付しないと、文書・電話・自宅訪問などで催促を受け、財産調査や身辺調査を経て、最終的には財産の差し押さえが実行されます。差し押さえの対象は、預貯金や給与、不動産全体などです。
なお、共有者間で誰かが全額を支払うことで合意していても、その合意内容は債権者に関係のないことです。納税・各種支払いの義務は全員にあり、どのような事情があっても支払いがなければ共有者全員で責任を取らなければなりません。「自分の持分に応じた金額しか払いたくない」も認められないので留意が必要です。
共有不動産の管理費用に該当する費用
共有者間で管理費用を分担する際に押さえておきたいのが、不動産にかかる費用のうち、どのような費用が共有者全員で分担すべき管理費用に含まれるのかという点です。時には、代表者から本来は管理費用に含まれないはずの出費まで請求される可能性もあるため、共有者全員が負担すべき費用をしっかり抑えておく必要があります。
- 必要費|不動産の保存・管理・維持のための費用
- 有益費|不動産の改良のための費用
- (共有者全員の合意がある場合)売却・建て替えの費用
共有不動産の管理費用に該当する費用について詳しく確認していきましょう。
管理費や修繕費、税金などの必要費
不動産の現状を維持し、使用可能な状態を保つための費用「必要費」は、不動産の管理に欠かせないため、共有者全員で負担すべき管理費用に該当します。具体的には、下記のような費用が必要費に含まれます。
- 自然災害や経年劣化による損傷の修復にかかる修繕費用
- 電気・ガス・水道など基本的な設備の修理・更新にかかる費用
- 固定資産税・土地計画税
- 火災保険料・地震保険料
- (マンションの場合)管理費・修繕積立金
- (山林の場合)樹木の管理・侵入者対策などにかかる監守費用
有益費|不動産の改良のための費用
不動産の価値や利便性を高めるための改良にかかる費用「有益費」も、共有者全員で負担します。具体的には、下記のような費用が有益費に含まれます。
- 建物の増改築費用
- 設備の高機能化・省エネ化にかかる費用
- 共有部の塗装・電灯設置にかかる費用
- 新しい設備の導入にかかる費用
- 庭園の造成にかかる費用
- 商店の模様替え
ただし、有益費は必要費と違って、不動産の維持管理に必ずしも必要な費用とは言い切れません。有益費か否かの判断は難しく、あくまでも不動産の価値が増加する場合に限って有益費として認められます。個人の嗜好・趣味と判断される行為にかかる費用は有益費として認められません。そのため、有益費の負担は事前に共有者間で合意を得るのが一般的です。
共有者全員が合意した場合の売却や建て替えの費用
共有者全員が合意した場合に限られますが、不動産の売却・建て替えにかかる費用も、共有者全員が負担すべき管理費用に該当します。
不動産の売却・建て替えを含む「変更行為」は、共有者全員の合意が必要です。そのため、一部の共有者が不動産を売却したいと思っても、反対する共有者がいれば不動産全体の売却はできません。共有者が単独の判断で売却できるのは、自身が所有する持分のみです。
「共有物の変更」
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
e-Gov法令検索 民法第251条
共有物の変更とは、共有物の維持管理の範囲を超え、共有物の性質・用途を変える行為。例えば、不動産を取り壊す・不動産を立て替える・共有物全体を第三者に売却する・共有物全体を借入の担保にするなどが該当する。
よって、変更にかかる費用は、共有者全員が合意した場合に限って持分割合に応じた金額を全員が負担することになります。
共有不動産の管理費用に該当しない費用
続いては、共有物の管理費用に該当しない費用を紹介します。
- 管理会社への報酬
- 建物で使用する水道光熱費
- 個人の嗜好・趣味の造作にかかる費用
負担する義務のない費用まで無駄に支払ってしまわないように、管理費用に含まれない費用をしっかり把握しておきましょう。
不動産の管理を管理会社に任せた場合の報酬
不動産の管理を不動産管理会社に依頼した際の管理報酬は、管理費用に含まれない費用とされています。
民法には記載がないものの、「土地の管理報酬を必要費・有益費に含むことに疑問がある(東京地裁平成14年2月28日)」という判例に基づき、管理会社への管理報酬は管理費用に含まれないと解釈されています。そのため、土地や建物を不業者に委託して管理する場合は、原則として委託した共有者が単独で費用を負担しなければなりません。
ただし、この判例では「不動産の管理報酬が必要費・有益費に含まない」と断言しているわけでもありません。実際の裁判では個別の事情が重視されます。よって、個別の事情と主張の方向性によっては、管理会社への報酬も共有者全員が分担すべき管理費用として認められることも考えられます。
現状では、管理会社への報酬は管理費と認められないという解釈なので、管理会社に管理を委託したいという場合は、「共有者全員が持分に応じて費用を分担する」旨の合意を得ておく必要があります。
建物を利用したときの水道光熱費
水道光熱費は、不動産の保存・管理・維持・改良のために必要な費用とは言えないため、管理費用に含まれない費用です。水道光熱費も管理会社への報酬と同様に、実際に契約した利用者のみが負担すべき費用といえます。
ただし、建物を共同で利用しており、代表者が水道光熱費を立て替えた場合は、他の利用者に対して費用を請求可能です。水道・電気・ガスなどを使用しているにもかかわらず、費用を支払わないことは「不当利益」となり、民法第703条に基づき、損失を被った人は不当利得を得た人に対して利益の返還を求める手続き「不当利得返還請求」が可能です。また、相手が自分が不当に利益を受け取っていることを認識していた場合は、第704条に基づいて利益に利息を付けて返還を求めることができます。
不当利得は、法律上の原因がないにもかかわらず、本来利益を得るはずでない人が、他人の損失によって不当に利益を得ていること、または不当に得ている利益。「法律上の原因がない」とは、公平性の観点から利益を得た人が、その利益を保有させておく実質的・相対的な理由や法律的な権利がないことを意味する。
「不当利得の返還義務」
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
e-Gov法令検索 民法第703条
「悪意の受益者の返還義務等」
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
e-Gov法令検索 民法第704条
なお、共有不動産における不当利益の取得は、共同利用時の費用よりも、一部の共有者が居住(占有)したり、第三者に貸し出して家賃収入を独占したりといった「独り占め」が問題になることがほとんどです。
参考:不当利得返還請求とは?時効前にやるべき手続きや注意点を解説
趣味の造作にかかる費用など
一部の共有者の個人的な嗜好や趣味を実現させるための造作費用は、管理費用に含まれない費用です。造作とは、建物の構造に直接関わらない部材や設備に対する装飾や大工工事、仕上げ工事を指します。「建物の構造に直接関わらない部材や設備」とは、具体的には床やドア、階段、水道設備、空調設備などです。
例えば、造作家具や造り付け収納、オリジナルの造作キッチン・造作洗面台は、使い勝手やデザインには大きな影響を及ぼすものの、動産の不動産の保存・管理・維持のため、不動産の価値を高めるために必要だとはいえません。よって、造作物の設計や工事にかかる費用は、造作を依頼した本人が全額を負担しなければなりません。
共有者が管理費用の支払いに応じない場合の対処法
法律上は共有者全員で管理費用を分担する義務がありますが、実際には一部の共有者が管理費用の支払いに応じないことは珍しくありません。管理費用の分担は共有者間のトラブルになりやすく、共有名義での不動産の所有が推奨されない大きな理由といえます。
ここからは、共有者が管理費用を支払わない場合の対処法を2つ紹介します。
- 求償請求訴訟で強制的に支払いを求める
- 買取請求で支払わない共有者の持分を強制的に買い取る
いずれも法的な知識と手間・労力が必要になるため、相手が素直に管理費用を支払わない場合は弁護士を入れて進めるのがおすすめです。
求償請求訴訟を提起する
他の共有者から管理費用が支払われないときは、「求償請求訴訟」を提起して支払いを求めることができます。裁判を起こすことで、裁判所が管理費用未払いの共有者に対して、滞納された管理費用を5年まで遡って支払い命令を出してくれます。支払い命令が出ても支払わない場合は、強制執行の申し立てをすることで預貯金や給与、不動産などの財産を差し押さえることも可能です。
求償請求訴訟は、強制的に未払いの管理費用を回収できる手段ではありますが、金銭的・精神的・時間的な負担が大きいため、手軽に使える手段とはいえません。
まず、裁判を起こすためには裁判所手数料がかかります。裁判所手数料は、100万円までなら10万円ごとに1,000円、1億円までなら100万円ごとに3,000円などと回収したい金額によって決まります。裁判となると、法的な知識と手続きが必要になるため、弁護士に依頼するのが一般的です。原則として訴訟費用は訴える側が負担するため、裁判を起こすだけで裁判所手数料と弁護士への報酬でまとまった資金が必要となります。
また、共有者は親族や知人であることが大半で、裁判で争うとなると、相手との関係はほぼ確実に悪化します。場合によっては、裁判に参加しない親族・相手家族との関係にも影響する可能性があります。
裁判には通常1年、長ければ2~3年の期間が必要です。求償請求訴訟は、訴える側の諸々の負担が大きいので、できるだけ話し合いで解決できる道を探るほうがよいでしょう。
支払わない共有者の持分を強制的に買い取る
もう1つの解決策としては、「持分買取請求」によって管理費の支払いを拒んでいる共有者の共有持分を強制的に買い取ることができます。
民法第253条では、管理費用を滞納している共有者がいる場合、他の共有者は相当な対価を支払うことで、管理費用を滞納している共有者の持分を取得できることを定めています。あくまでも買取の制度であり、無償で相手の持分を没収することはできません。
「共有物に関する負担」
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
e-Gov法令検索 民法第253条2項
持分買取請求を行うには、下記の条件を満たす必要があります。
- 請求者が他の共有者の管理費用を立て替えている
- 他の共有者が1年以上権利費用の支払いを拒んでいる
共有持分買取請求では、まず口頭や文書、電話などで管理費の支払いを請求します。請求を無視されたり支払いを拒まれたら、買取を提案し、買取金額を決めるために話し合いの場を持ちましょう。一般的に、買取金額は不動産全体の評価額に滞納者の持分割合を乗じ、滞納分を差し引いて算出されます。不動産の価格の妥当性を担保するために、不動産の評価額は不動産鑑定士に見積もってもらいましょう。
当事者間での話し合いがまとまらない場合は、裁判所に仲介に入ってもらって話し合いを進める手続き「持分買取請求調停」を申し立てます。調停でも合意に至らなかった場合は、「持分買取請求訴訟」を起こして、裁判で決着をつけることになります。
裁判となると、求償請求訴訟と同様にまとまった資金が必要になるうえ、相手や家族間の関係が悪くなることが予想されます。
共有者に求償する際の注意点
管理費用を支払わない共有者がいる際は、まずは下記の2点に注意して支払いを請求しましょう。
- 管理費用に該当しない場合は求償できない
- 複数の共有者が一緒に居住している場合は不当利得請求を行う
それぞれ詳細を確認します。
管理費用に該当しない場合は求償できない
求償できるのは、管理費用に該当する費用に限られます。管理費用に該当しない費用に関しては、求償しても相手に支払い義務はないので回収できません。
求償できる費用 | 不動産の保存・管理・維持のための費用 不動産の改良のための費用 (共有者全員の合意がある場合)売却・建て替えの費用 |
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求償できない費用 | 管理会社への報酬 建物で使用する水道光熱費 個人の嗜好・趣味の造作にかかる費用 |
ただし、マンション管理費や修繕積立金は、不動産の保存・管理・維持に欠かせないため、「管理費用」として認められます。よって、特定の共有者が単独で居住している場合でも、マンション管理費や修繕積立金は求償が可能です。
複数の共有者が一緒に居住している場合は不当利得請求を行う
水道光熱費は使用者のみが負担すべき費用です。ただし、共有不動産で複数の共有者が共同生活している場合、居住者全員が水道・電気・ガスを使用することから、利用状況に応じて使用者全員で費用を負担すべきであるといえます。使用した水道・電気・ガスの料金を支払わないことは、不当利得に当たり、返還義務があります。水道光熱費を立て替えた人は、費用を負担してくれない人に対して、不当利得の返還を請求しましょう。
不当利得返還請求を行うためには、まずは不当利得を得ている証拠を収集し、請求者の損失金額を算出しなければなりません。水道光熱費の領収書や預金口座の預金通帳や取引履歴、クレジットカードの明細などが証拠になりますが、個人で証拠を集め、証拠の証明力を判断するのは難しいため、弁護士に相談して進めるのがおすすめです。その後は、相手に費用の請求を行い、必要に応じて当事者間での協議・不当利得返還請求調停・不当利得返還請求訴訟を行うことになります。
なお、不当利得返還請求は、民法第703条に基づく「不当利得の返還義務」によるものであり、民法第253条2項に基づく「管理費用の求償」ではありません。
居住していない共有不動産の管理費を支払いたくない場合の対処法
最後は、共有不動産の管理費用を払いたくない場合の対処法も確認しておきましょう。共有者であるにもかかわらず、「管理費用を支払っていない」「所有者としての義務を怠っている」という場合は、他の共有者の権利を害するとして不法行為になる危険があります。
管理費を支払いたくないという場合は、他の共有者全員から支払いをしないことに合意を得るか、自身の所有している持分を売却しましょう。
売却方法には下記の2つの選択肢があります。
- 自分の持分を他共有者に売却する
- 共有持分専門の買取業者に売却する
1つずつ確認します。
自分の持分を他共有者に売却する
管理費を支払いたくないときは、まず自分の持分を他の共有者に買い取ってもらえるか交渉してみましょう。
売却する側は、管理費の支払いがなくなるだけでなく、対価としてまとまったお金を手にできます。買い取る側は、自身の持分を増やせる、または単独名義で不動産を所有できるようになります。買い取る側が不動産の所有を続けたいと考えており、買取資金を用意できる場合は有効な手段となるでしょう。
ただし、売買金額には注意が必要です。親族・知人だからといって、実際の価値よりも安い金額で取引をすると、贈与とみなされ、贈与税が課される恐れがあります。贈与税率は所得税率よりも高く、適切な金額で取引しないと高額の贈与税が発生しかねません。
参考:国税庁「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
また、所得税は利益を得た人、つまり売却する側に課税されます。一方で、贈与税は贈与を受けた側に課されるため、共有持分の売買が贈与とみなされた場合、買い取ってくれた親族・知人との金銭トラブルに発展することも考えられます。
共有者同士の取引でも、不動産鑑定士に評価額を調査してもらったり、弁護士や税理士を入れて話し合ったりと、専門家に相談しながら取引を進めるのがよいでしょう。また、不動産会社を通すことで、適正な金額での取引であるとみなされやすく、トラブル防止に役立ちます。
共有持分専門の買取業者に売却する
共有持分だけであれば、他の共有者の同意なしに、自分の判断だけで売却が可能です。そのため、管理費用を支払いたくないという場合は、不動産買取業者に売却するという手もあります。
不動産買取業者であれば、資金不足で買い取れないということはないので、速やかに共有持分を現金化できます。他の共有者に自身の持分を買い取れるだけの資金がない場合や、他の共有者と直接やり取りをしたくない場合は、不動産買取業者に売却しましょう。
不動産買取業者に共有持分を売却するときのポイントは、「共有持分の専門買取業者」に相談することです。共有持分は、共有者単独の判断で不動産を活用・売却することができないため、通常の不動産会社では買取を断られる、または安く買い叩かれる可能性があります。対して、共有持分の専門買取業者であれば、共有不動産の活用・売却に関するノウハウ・経験があるため、通常の不動産会社よりも高くを買取が可能です。
なお、管理費用を滞納している場合の買取の可否は、業者によって異なります。なかには、管理費用の滞納分を買取金額から差し引いて、未払いの管理費用ごと共有持分を買い取ってくれる業者も存在します。「管理費用を滞納しているが、滞納分を支払えない」という場合も、共有持分専門の買取業者に相談してみましょう。
まとめ
今回は、共有不動産の管理費用の分担方法と管理費用に該当する費用、他の共有者が管理費用を支払ってくれない場合の対処法、管理費用を支払いたくない場合の対処法をまとめて解説しました。
不動産の所有者である限り、原則として不動産の管理にかかる費用を負担する義務があります。管理費用を支払ってくれない共有者がいる場合は、まずは支払いを請求し、対応してくれなければ求償請求や持分買取請求で未払い分の回収を目指しましょう。一方、これ以上管理費用を負担したくないという場合は、自身の所有する持分を売却してしまうのがおすすめです。専門買取業者に相談すれば、通常不動産会社では買い取ってもらいにくい共有持分でもスムーズに売却できるでしょう。
クランピーリアルエステートでは、共有名義の不動産を専門に買取を行っています。共有持分の買取に特化して社内でノウハウを効率的に共有することで、高値が付きにくい共有持分でも売り主様が納得いく金額での取引を実現しました。また、1200以上の士業事務所と連携しているので、共有者間でトラブルになっている不動産も買取できます。共有持分だけ売却したい方や管理費用の支払いでお困りの方はぜひ当社にご相談ください。