共有持分の買取請求とは?買取請求の方法や価格の決まり方など徹底解説

共有持分の買取請求とは、一般に、共有名義の不動産について、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう、または相手の持分を自分に売却してもらうよう求めることを指します。

ただし、「共有持分の買取請求」は、法律上1つの決まった手続きだけを指す言葉ではありません。実務上は、共有者同士の話し合いによる持分売買の申し入れを指すこともあれば、民法上の買取請求権や共有物分割請求と関連して使われることもあります。

共有持分の買取請求については、具体的に次の3つの方法に分けて整理するとわかりやすいです。

方法 特徴 実務上のポイント
他の共有者への任意交渉 共有者同士の話し合いで、共有持分の売却・買取を進める方法 価格・支払時期・登記手続きなどの条件に合意できなければ成立しない
買取請求権の行使 共有物に関する費用負担などを履行していない共有者がいる場合に、相当の償金を支払ってその持分取得を求める方法 共有物に関する負担義務を一定期間履行していないなど、民法253条2項の要件を満たす必要がある
共有物分割請求 話し合いで共有状態を解消できない場合に、裁判所へ共有物の分割を求める手続き 分割方法は裁判所の判断によるため、必ずしも希望どおりに持分を買い取る、または買い取ってもらう結果になるとは限らない

共有持分の買取を行っている弊社でも、買取後に共有状態を整理する際に初めから法的措置をとるケースは多くありません。まずは他の共有者との任意交渉で、持分の売買や不動産全体の売却などによる解決を目指すのが一般的です。

任意交渉での解決が難しい場合は、買取請求権の要件を満たす事情があるか、共有物分割請求を検討すべき状況かなどを整理し、法的措置も含めて状況に応じた解決方法を選ぶことになります。

当記事では、共有持分の買取請求の方法や流れ、価格の決まり方、買取請求が難しい場合の代替案などについて、共有名義不動産・共有持分の買取業務を行う立場で、実務情報を踏まえてわかりやすく解説していきます。

目次

共有持分の買取請求とは他の共有者に持分売買を求めること

共有持分の買取請求とは、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう、または相手の持分を自分に売却してもらうよう求めることを指す言葉として一般的に使用されています。

ただし、「共有持分の買取請求」は、法律で定められた特定の手続きだけを指す言葉ではありません。

実務上は、共有者同士の話し合いによる売買の申し入れを指すこともあれば、民法上の買取請求権や、共有物分割請求による共有状態の解消と関連して使われることもあります。

もっとも、任意交渉は相手の合意が必要であり、買取請求権は共有物に関する費用を負担していない共有者がいる場合など、一定の要件を満たす場合に限られます。

共有物分割請求も、協議がまとまらない場合に裁判所へ共有状態の解消を求める手続きであり、自分が希望する形で持分を取得できるとは限りません。

そのため、「共有持分の買取請求」と一括りにされることがあっても、実務上はそれぞれの方法を区別して検討する必要があります。まずは、他の共有者との任意交渉で解決できないかを確認し、交渉が難しい場合に買取請求権の要件や共有物分割請求の可否を整理する、という流れで進めるのが一般的です。

共有持分の買取請求には任意交渉と法的な解決方法がある

共有持分の買取請求に関連する方法は、大きく分けると、任意交渉・買取請求権の行使・共有物分割請求の3つです。

方法 特徴 相手の同意が必要か
他の共有者への任意交渉 共有者同士の話し合いで、共有持分の売却・買取を進める方法 必要。相手が合意しなければ成立しない
買取請求権の行使 共有物に関する費用負担などを履行していない共有者がいる場合に、相当の償金を支払ってその持分取得を求める方法 原則不要。ただし、要件や償金額に争いがある場合は、裁判手続き等での解決が必要になることがある
共有物分割請求 話し合いで共有状態を解消できない場合に、裁判所へ共有物の分割を求める手続き 不要。ただし、分割方法は裁判所の判断による

他の共有者への任意交渉で合意できれば、裁判手続きに比べて時間や費用を抑えやすく、条件も柔軟に調整できます。そのため、まずは任意交渉で解決できないかを検討するのが基本です。

一方で、相手が話し合いに応じない、価格や費用負担で折り合わない、法的な要件を判断できない場合は、弁護士などの専門家へ相談しながら、買取請求権の行使や共有物分割請求を検討しましょう。

他の共有者への任意交渉で共有持分の売買を進める

任意交渉とは、他の共有者と話し合い、自分の共有持分を買い取ってもらう、または相手の共有持分を自分が買い取る方法です。

共有者同士で価格や条件に合意できれば、裁判手続きを使わずに共有持分の売買を進められる可能性があります。たとえば、兄弟で相続した不動産について、実際に住んでいる共有者が、他の共有者の持分を合意のもとで買い取るケースなどが該当します。

実務上も、共有者と連絡が取れ、話し合いの余地がある場合は、まず任意交渉から検討するのが現実的です。

ただし、任意交渉はあくまで話し合いのため、相手が応じなければ成立しません。「自分の持分を買い取ってほしい」と申し入れることはできますが、相手に必ず買い取らせることはできない点に注意が必要です。

弊社に寄せられる買取相談でも、他の共有者と話し合いはできていたものの、持分の価格や買取条件で折り合わず、自分の共有持分だけでも売却したいと考えて相談に至るケースがあります。

すでに共有者同士の関係が悪化している場合は、当事者だけで直接交渉すると、かえって話がこじれることもあります。直接交渉が難しい場合は、査定額や売却条件を整理したうえで、必要に応じて不動産会社や弁護士などの専門家へ相談することも検討しましょう。

買取請求権の行使で共有持分を取得する

買取請求権とは、民法253条2項に基づき、共有物に関する費用負担などを履行していない共有者がいる場合に、他の共有者が相当の償金を支払って、その共有者の持分を取得できる権利です。

たとえば、固定資産税や管理費、修繕費など、共有者が持分に応じて負担すべき費用について、負担すべき共有者が1年以内に負担義務を履行しない場合に、他の共有者が相当の償金を支払って持分取得を検討できることがあります。

ただし、買取請求権が成立したとしても、実務上は共有者が持分移転登記に協力しなければ、登記手続きまでスムーズに進むとは限りません。共有者が登記に応じない場合は、持分移転登記手続請求訴訟などの裁判手続きが必要になることもあります。

また、実務では、「未払いの内容が共有物に関する費用や負担にあたるのか」「民法253条2項の1年要件を満たしているのか」「支払う償金が相当といえるのか」が主な問題になることもあります。

とくに確認が必要になるのが、相当の償金の額です。未払いがあるからといって、相手の持分を無条件に安く取得できるわけではありません。持分自体の価値を評価したうえで、未払い分については求償債権との清算や相殺を含めて整理する必要があります。

実務上、買取請求権を行使できる可能性があっても、それだけで持分取得や登記手続きまで円滑に進むケースは多くありません。未払いの証拠や償金の算定が争点になりやすいため、相手の同意がなくても持分取得を求められる可能性はあるものの、事前に資料や金額の根拠を整理しておくことが重要です。

共有物分割請求で共有状態を解消する

共有物分割請求とは、共有者同士の話し合いで不動産の共有状態を解消できない場合に、裁判所へ共有物の分割を求める手続きです。裁判所は、不動産の性質や共有者の事情を踏まえ、現物分割・代償分割・換価分割といった方法の中から、相当な分割方法を判断します。

分割方法 内容 共有持分の買取請求との関係
現物分割 土地を分筆するなど、共有物そのものを物理的に分ける方法 共有者間で共有持分を売買する方法ではない
代償分割(価格賠償) 共有者の一人が不動産や他の共有者の持分を取得し、他の共有者に代金を支払う方法 「相手の持分を取得する」「自分の持分を取得してもらう」形に近い
換価分割(裁判上は競売が命じられることがある) 不動産全体を競売などで換価し、代金を共有者間で分ける方法 共有者間で共有持分を売買する方法ではなく、不動産全体を金銭化して分ける方法

共有者間の持分の売買に近いのは、共有者の一人が不動産や他の共有者の持分を取得し、代わりに金銭を支払う代償分割です。

この場合、自分が他の共有者の持分を取得する形になることもあれば、他の共有者に自分の持分を取得してもらう形になることもあります。

ただし、共有物分割請求は、一方の共有者が希望どおりに持分を買い取ったり、買い取ってもらったりするためだけの手続きではありません。

裁判所は、当事者の希望だけで分割方法を決めるのではなく、不動産の性質や共有者の事情、取得を希望する人の支払能力などを踏まえて、共有状態をどの方法で整理するのが相当かを判断します。

実務では、「共有者間の対立が強い」「取得を希望する側に十分な資金がない」といった場合には、換価分割が検討されることもあります。

そのため、共有物分割請求では必ずしも希望どおりの結果になるとは限らない点を理解しておく必要があります。

共有物分割請求については、次の記事でも詳しく解説しています。

共有持分の買取請求を検討できるケース

共有持分の買取請求を検討できるかどうかは、他の共有者との関係性や費用負担の状況、共有状態をどのように整理したいかによって異なります。

それぞれの方法を検討しやすいケースや確認事項は、以下のとおりです。

方法 検討しやすいケース
任意交渉による持分売買 ・他の共有者と連絡が取れる場合
・共有者の一人が不動産を使い続けたい場合
・不動産を使っていない共有者が持分を手放したい場合
・共有者間の関係が大きく悪化していない場合
・不動産の時価や持分割合を共有できている場合
買取請求権の行使 ・立替額が大きく、持分売却とは別に未払い分の回収・清算も検討したい場合
・納付書・領収書・請求した記録などが残っている場合
・相手に支払いを求めても応じる見込みが低い場合
・相手の持分を取得するための償金を用意できる場合
・相手の持分を取得できれば単独名義にできる場合
共有物分割請求 ・他の共有者が売買の話し合いに応じない場合
・売却・買取の方向性はあるものの、価格や取得者で折り合いがつかない場合
・共有者の一人が不動産を使用しているなど、当事者間で解決が難しい場合
・買取請求権の要件を満たさない場合

共有持分の買取請求は、まず任意交渉で解決できるかを確認するのが基本です。ただし、実際には共有者との関係性や費用負担の状況、相手が話し合いに応じるかどうかによって、検討すべき方法は変わります。

任意交渉が難しい場合は、買取請求権の要件や共有物分割請求の可否について、専門家へ相談することも検討しましょう。

任意交渉による持分売買を検討できるケース

任意交渉は、他の共有者と話し合い、共有持分の売却・買取を合意によって進める方法です。そのため、単に「買い取ってほしい」「買い取りたい」と希望するだけでなく、相手と条件を調整できる状況かどうかが重要になります。

任意交渉による持分売買を検討しやすいのは、次のようなケースです。

ケース 任意交渉を検討しやすい理由
他の共有者と連絡が取れる場合 価格や支払時期、登記手続きなどについて具体的に話し合えるため
共有者の一人が不動産を使い続けたい場合 居住者や利用者が他の共有者の持分を買い取る形で整理しやすいため
不動産を使っていない共有者が持分を手放したい場合 持分を売却したい側と買い取りたい側の利害が合いやすいため
共有者間の関係が大きく悪化していない場合 価格や条件のすり合わせに応じてもらいやすいため
不動産の時価や持分割合を共有できている場合 価格に対する認識のズレが小さく、交渉が進みやすいため

上記のような状況であれば、いきなり法的手続きや第三者への売却を前提にするのではなく、まずは任意交渉で解決できないかを確認する余地があります。

実際、弊社でも持分売却を検討していた方に対して、まずは他の共有者との任意交渉を提案したケースがあります。


相続により兄弟2人で実家を共有している方から、「自分の持分を売却したい」とご相談を受けた事例です。兄弟間で大きな対立はありませんでしたが、共有者である弟は実家全体の売却には消極的で、話し合いが止まっている状態でした。

ご相談者は、共有持分を弊社へ売却することも検討していました。しかし、不動産の利用状況や兄弟関係を踏まえると、いきなり弊社のような第三者へ売却するよりも、まずは弟に持分を買い取ってもらえないか確認する方が合理的と判断しました。

そこで、共有持分の売買価格の目安を整理し、ご相談者から弟へ「この金額であれば持分を買い取れないか」と確認してもらう流れを提案しました。結果として、裁判や共有物分割請求に進むことなく、兄弟間で持分整理が成立しました。

このように、任意交渉による持分売買は、共有者同士にまだ話し合いの余地がある段階で検討しやすい方法です。共有状態を解消したい意思があっても、関係が大きく悪化していない場合は、まず任意交渉で解決できないか確認する価値があります。

買取請求権の行使を検討できるケース

買取請求権は、共有物に関する費用負担などを履行していない共有者がいる場合に検討できる方法です。

ただし、買取請求権は単に「相手が話し合いに応じない」「共有状態を解消したい」というだけで行使できるものではありません。民法253条2項に基づく買取請求権を行使するには、主に次のような要件・前提を満たす必要があります。

  • 固定資産税・管理費・修繕費など、共有物に関する費用や負担が発生していること
  • その費用について、共有者が持分に応じた負担義務を履行していないこと
  • 民法253条2項の「1年以内に負担義務を履行しないとき」に該当する事情があること
  • 持分を取得する側が、相当の償金を支払う必要があること

このように、買取請求権は「共有者が協力してくれないから使える制度」ではなく、共有物に関する費用負担の未払いがある場合に検討できる制度です。

上記の前提を踏まえると、実務上は次のようなケースで買取請求権の行使を検討しやすくなります。

ケース 買取請求権を検討しやすい理由
立替額が大きく、持分売却とは別に未払い分の回収・清算も検討したい場合 共有持分を売却しても、過去の立替分の扱いが当然に解決するとは限らないため
納付書・領収書・請求した記録などが残っている場合 未払いの内容や期間、請求した事実を客観的に示しやすいため
相手に支払いを求めても応じる見込みが低い場合 任意の支払い請求だけでは回収が難しく、持分取得による整理を検討する余地があるため
相手の持分を取得するための償金を用意できる場合 買取請求権を行使するには、相当の償金を支払う必要があるため
相手の持分を取得できれば単独名義にできる場合 立替分の整理とあわせて、共有状態そのものを解消できる可能性があるため

上記のように、買取請求権を検討するには、未払いの事実だけでなく、請求した記録や償金の準備なども重要になります。

実際、弊社でも共有持分の売却を検討していた方について、売却する前に費用負担の状況や買取請求権を検討できる事情があるかを整理した方がよいと判断したケースがあります。



相続により兄弟3人で土地を共有している方から、「自分の持分を売却したい」とご相談を受けた事例です。長男であるご相談者が、他の兄弟の負担分も含めて固定資産税を4年間支払っており、他の兄弟にもその都度負担分を請求していましたが、実際には支払いがない状態でした。

ご相談者は当初、共有持分を第三者へ売却することを検討していました。しかし、未払いの立替額が大きく、請求した記録も残っていたため、すぐに持分を売却するよりも、まずは費用負担の状況を整理し、民法上の買取請求権を検討できる事情があるか確認する方が合理的と考えられました。

そこで弊社では、すぐに共有持分の買取を進めるのではなく、まずは提携弁護士への確認を前提に、固定資産税の立替状況や請求の経緯、証拠となる資料を整理する流れをご案内しました。

このように、共有物に関する費用負担の未払いがあり、買取請求権の要件に該当する可能性がある場合は、単に自分の持分を売却するだけでなく、買取請求権の行使を検討する余地があります。

とくに、立替額が大きい場合は、納付書・領収書・請求履歴・共有者とのやり取りなどを整理したうえで、必要に応じて弁護士へ相談するとよいでしょう。

共有物分割請求を検討できるケース

共有物分割請求は、共有者同士の話し合いで共有状態を解消できない場合に検討できる方法です。

任意交渉のように相手の合意だけで進める方法ではなく、裁判所に共有物の分割を求める手続きであるため、話し合いがまとまらない場合でも共有状態を解消できる可能性があります。

ただし、共有物分割請求は「相手に自分の持分を必ず買い取ってもらう」「自分が相手の持分を必ず取得する」ための手続きではありません。裁判所が不動産の性質や共有者の事情を踏まえて、現物分割・代償分割・換価分割などの方法を判断します。

共有物分割請求を検討しやすいのは、次のようなケースです。

ケース 共有物分割請求を検討しやすい理由
他の共有者が売買の話し合いに応じない場合 そもそも協議が始まらず、任意交渉だけでは共有状態を解消できないため
売却・買取の方向性はあるものの、価格や取得者で折り合いがつかない場合 話し合いはできていても、誰が持分を取得するのか、いくらで整理するのかを当事者間で決められないため
共有者の一人が不動産を使用しているなど、当事者間で解決が難しい場合 利用方法や費用負担、売却・取得の方針で合意できず、裁判所の判断による整理が必要になることがあるため
買取請求権の要件を満たさない場合 費用負担の不履行などがなくても、共有状態そのものの解消を求められる可能性があるため

上記のように、共有物分割請求は、任意交渉では解決できず、買取請求権の要件にも当てはまらない場合に検討されることがあります。

ただし、共有物分割請求は、実務上、任意交渉で解決できない場合の選択肢として検討されることが多い方法です。裁判手続きになれば時間や費用がかかり、共有者間の関係がさらに悪化することもあります。

また、共有物分割請求をしたからといって、必ず希望どおりに持分を買い取ったり、買い取ってもらったりできるわけではありません。

実際、弊社でも、他の共有者との話し合いが進まない状況で、共有物分割請求に進んだ場合の見通しを整理したうえで、再度の任意交渉につなげたケースがあります。



相続後、遺産分割を経て兄弟2人の共有名義となった土地について、「自分の持分を買い取ってほしい」とご相談を受けた事例です。

ご相談者は持分の売却を希望していましたが、もう一方の共有者は不動産全体の売却に強く反対しており、話し合いは平行線の状態でした。また、固定資産税などの未払いはなく、買取請求権の要件を満たす状況でもありませんでした。

このような状況で、共有者間の対立状況を整理しないまま共有持分の売却だけを急ぐと、他の共有者との対立がさらに強まり、結果として共有物分割請求などの法的手続きに発展する可能性がありました。

そこで弊社では、共有物分割請求に進んだ場合の一般的な流れやリスクを整理し、具体的な法的判断は弁護士への相談を前提にしたうえで、まずは共有者間で再度話し合う流れをご案内しました。

共有物分割請求に進めば、不動産全体が競売などで換価される可能性もあります。その点を踏まえて再度話し合いを行った結果、最終的には当事者間で持分整理が成立しました。

このように、まだ交渉の余地がある場合は、共有物分割請求に進んだ場合のリスクも踏まえたうえで、再度冷静に話し合うことが望ましいです。

話し合いでは解決できず、時間や費用の負担も避けたい場合は、裁判へ進む前に、自分の共有持分を買取業者などの第三者へ売却する方法を検討するのも現実的です。

なお、共有者の所在がわからない場合は、共有物分割請求だけでなく、裁判所の手続きによる所在等不明共有者の持分取得制度や持分譲渡制度なども検討対象になります。詳しくは、次の記事を参考にしてみてください。

共有持分の買取請求ができないケース

共有持分の買取請求は、希望すれば必ず成立するものではありません。

任意交渉は相手の合意が必要であり、買取請求権は一定の要件を満たす場合に限られます。共有物分割請求も、共有状態を解消する手続きであり、必ず希望どおりに持分を買い取ったり、買い取ってもらったりできるわけではありません。

実際に、共有名義不動産では共有者間で意見が分かれ、任意交渉だけでは解決が難しくなるケースもあります。弊社が共有名義不動産の所有者を対象に実施したアンケート調査では、回答者の42%が「共有名義が原因で困ったことやトラブルがある」と回答しています。

また、何らかのトラブルを経験した層に限定すると、売却の可否や処分方針などの「売却・処分」に関する悩みが32%と最も多く、共有名義不動産の売却・処分方針をめぐって当事者間の意見が分かれやすいことがうかがえます。

トラブルアンケート

調査主体:株式会社Clamppy
調査日:2026年3月5日〜3月26日
調査方法:インターネット調査
調査対象:共有名義の不動産を所有する全国の男女
有効回答数:492名

共有持分の買取請求が難しい主なケースは、以下のとおりです。

方法 できない・希望どおりになりにくいケース
任意交渉による持分売買

・共有者が話し合いを拒否している場合
・金額を提示しても返答がない場合
・感情的な対立が強く、価格交渉に入れない場合
・相手が持分の売買に応じる意思を示していない場合
・価格に対する認識が大きくズレている場合
買取請求権の行使 ・共有物に関する費用負担の未払いがない場合
・負担義務を履行していない状態が1年以上確認できない場合
・支出の内容が共有物に関する費用や負担といえない場合
・請求した記録や領収書などの証拠が残っていない場合
・相当の償金を支払う準備ができていない場合
共有物分割請求 ・持分や不動産を取得するための代償金を用意できない場合
・他の共有者も不動産の取得を希望している場合
・売買価格や評価額で大きな争いがある場合

弊社に寄せられる相談でも、他の共有者との任意交渉や法的手続きを検討しながら、買取業者への売却と比較したいというケースがあります。しかし、相手の対応や法的要件、裁判所の判断によっては、希望どおりに進まないことも少なくありません。

そのため、共有持分の買取請求を検討するときは、まず自分の状況で使える方法と使えない方法を整理することが大切です。

任意交渉だけでは成立しないケース

任意交渉は、他の共有者に対して「自分の持分を買い取ってほしい」「相手の持分を買い取りたい」と申し入れ、合意によって共有持分を売買する方法です。

相手が価格や条件に合意すれば成立しますが、相手が拒否している場合に、任意交渉だけで共有持分の売買を強制することはできません。

任意交渉だけでは売買が成立しにくいのは、次のようなケースです。

ケース 任意交渉だけでは成立しにくい理由
共有者が話し合いを拒否している場合 売買は合意が前提であり、相手が交渉に応じなければ条件をすり合わせられないため
金額を提示しても返答がない場合 価格・支払時期・登記手続きなどの具体的な条件を決められないため
感情的な対立が強く、価格交渉に入れない場合 持分の売買ではなく、過去の相続や親族関係の不満が争点になりやすいため
相手が持分の売買に応じる意思を示していない場合 共有者に持分の売買を申し入れることはできても、相手に売却や買取を強制することはできないため
価格に対する認識が大きくズレている場合 売りたい側と買いたい側で希望額が離れていると、合意に至りにくいため

上記のように、相手が話し合いに応じない、価格のすり合わせができない、感情的な対立が強いといった状況では、任意交渉だけで持分売買を成立させるのは難しくなります。

実際に弊社へ共有持分の売却相談に来られた方の中にも、当初は他の共有者に買い取ってもらうための交渉を考えていた方がいました。

相続で兄弟2人が実家を共有している方からのご相談でした。ご相談者は弊社への共有持分売却も検討していましたが、最初は兄に自分の持分を買い取ってもらいたいと考えていたそうです。

詳しく伺うと、数年前の相続をきっかけに兄弟関係が悪化しており、連絡は取れるものの、持分の話を出すと一方的に電話を切られてしまう状態でした。価格の提示すらできず、任意交渉で持分売買を成立させるのは難しい状況でした。

このケースでは、任意交渉だけで持分売買を進めるのは現実的ではないと判断しました。不動産の評価額や共有関係の状態、将来的に共有物分割請求などへ発展する可能性を踏まえ、最終的に弊社がご相談者の共有持分を買い取る形になりました。

任意交渉は、相手が応じない場合は前に進みません。そのため、相手の意思や回答状況を確認し、任意交渉で売買を成立させられる見込みがあるかを早めに見極めることが大切です。

買取請求権を行使できないケース

買取請求権は、共有物に関する費用負担などを他の共有者が履行していない場合に、相当の償金を支払ってその共有者の持分取得を求める権利です。

ただし、共有物に関する費用負担の不履行など、民法253条2項の要件を満たしていなければ行使できません。たとえば、単に「相手が協力してくれない」「共有関係を解消したい」という理由だけでは、買取請求権の対象にはなりません。

買取請求権を行使できないのは、次のようなケースです。

ケース 買取請求権を行使できない・難しい理由
共有物に関する費用負担の未払いがない場合 買取請求権は、共有物に関する負担義務の不履行が前提になるため
共有物に関する負担義務の不履行や不履行期間を客観的に確認できない場合 民法253条2項の要件に該当するか、いつから1年と見るかが争点になりやすいため
支出の内容が共有物に関する費用や負担といえない場合 私的な支出や一方的な修繕費などは、買取請求権の前提となる費用にあたるか争いになりやすいため
請求した記録や領収書などの証拠が残っていない場合 未払いの内容や期間、請求した事実を客観的に示しにくいため
相当の償金を支払う準備ができていない場合 持分を取得する側は、相手に相当の償金を支払う必要があるため

上記のように、買取請求権は要件を満たさない場合には行使が難しくなります。また、行使できる可能性がある場合でも、未払い額が少ないと、弁護士費用や手続きにかかる手間を考えたときに、費用対効果が合わないケースもあります。

実際に弊社へ「相手が税金を払っていないので持分を取得できないか」と相談に来られた方もいました。

相続により兄弟3人で土地を共有している方からのご相談でした。長男であるご相談者が固定資産税を立て替えていましたが、負担分をいつ・いくら請求したのか、不履行の期間をどう見るのかを確認できる資料が十分ではありませんでした。

この段階では、買取請求権の行使は難しい状況でした。そのため、買取請求権による持分取得ではなく、共有持分を売却して共有関係から離れる方法を検討する流れになりました。不動産の評価額や共有関係の状態を踏まえて査定を行った結果、最終的には弊社がご相談者の共有持分を買い取る形で整理しました。

買取請求権は、感情的な不公平感だけで行使できる制度ではありません。未払いの内容や請求経緯などを整理し、制度上の要件を満たしているかを確認する必要があります。

共有物分割請求で希望どおりに整理できないケース

共有物分割請求は、共有関係そのものを解消するための手続きです。共有者間の持分売買に近いのは代償分割ですが、裁判所の判断によっては換価分割など別の方法が選ばれることもあります。

そのため、共有物分割請求をしても、必ず希望どおりに持分を買い取ったり、買い取ってもらったりできるわけではありません。

共有物分割請求で希望どおりの買取・取得になりにくいのは、次のようなケースです。

ケース 希望どおりに整理できない理由
持分や不動産を取得するための代償金を用意できない場合 代償分割では、取得する側が他の共有者へ代金を支払う必要があるため
他の共有者も不動産の取得を希望している場合 誰が取得するのが相当かについて争いになりやすいため
売買価格や評価額で大きな争いがある場合 代償金の金額を決めにくく、代償分割での解決が難しくなることがあるため

実際に弊社へ、共有持分を売却するか、共有物分割請求を検討するかで迷っている方から相談を受けたケースもあります。

相続により兄弟2人で土地を共有している方からのご相談でした。ご相談者は、共有物分割請求をすれば自分が土地全体を取得できるのではないかと考えていました。一方で、取得資金の確保はできておらず、相手も「自分が取得したい」と主張している状況でした。

この場合、共有物分割請求に進んでも、ご相談者が土地を取得できる保証はありません。双方が取得を希望しているうえ、代金を支払う資金も不十分だったため、不動産全体の競売による換価分割が検討される可能性もありました。

そのリスクを説明したところ、裁判手続きに進むよりも早期に持分を整理したいという意向が明確になりました。不動産の評価額や共有関係の状態、共有物分割請求に進んだ場合の時間・費用の負担も踏まえ、最終的に弊社がご相談者の共有持分を買い取る形になりました。

共有物分割請求は、「自分が取得する」「相手に買い取ってもらう」といった着地を自分だけで選べない点に注意が必要です。

そのため、共有物分割請求を検討する場合は、希望する結果だけでなく、裁判所がどのような分割方法を相当と判断するかも踏まえて考える必要があります。

共有持分の買取請求にこだわりすぎない方がよいケースを買取業者の実務目線から紹介

共有関係から抜け出すことが目的なら、他の共有者への任意交渉や、買取請求権・共有物分割請求などの法的手続きにこだわりすぎない方がよいこともあります。

とくに、次のようなケースでは、任意交渉や法的手続きだけでなく、共有持分を買取業者などの第三者に売却する方法も選択肢になります。

  • 共有者との話し合いが長期化しているケース
  • 買取請求権の要件を示す資料がそろっていないケース
  • 共有物分割請求に時間や費用をかけたくないケース
  • 価格よりも早く共有関係から離れることを優先したいケース

このような場合は、「相手に買い取ってもらうこと」や「相手の持分を取得すること」だけにこだわると、かえって解決までの時間が長引く可能性があります。

実際に、弊社に寄せられる共有持分の買取相談でも、他の共有者との任意交渉や法的手続きだけでは解決が長期化しやすい事情が見られます。

以下は、弊社に寄せられた累計10,000件超の共有持分の買取相談について、問い合わせ理由を大まかに集計した結果です。

問い合わせ理由

理由 割合
相続トラブル・親族間の確執 26%
離婚によるトラブル 17%
固定資産税などの維持費の負担 15%
金銭的な理由
(現金が必要など)
12%
破産管財 11%
共有者の行方不明・音信不通・多人数化 5%
生前整理 3%
その他 11%

※データ集計日:2018年2月21日〜2025年12月31日
※データ集計方法:社内の買取相談データを集計

問い合わせ理由の上位には、相続トラブル・親族間の確執、離婚によるトラブル、固定資産税などの維持費の負担が挙げられます。

詳しく事情を伺うと、相続トラブル・親族間の確執や離婚によるトラブルでは、共有者同士の感情的な対立が強く、任意交渉が進みにくいケースがあります。

また、固定資産税などの維持費負担をきっかけとした相談では、買取請求権を検討していても、資料の不足や法的手続きへの負担感から、共有持分の売却など別の方法を比較したいと考える方もいます。

もちろん、条件調整の余地があれば任意交渉をご提案しますが、交渉の長期化や法的手続きの負担を避けたい場合は、共有持分を買取業者へ売却し、早期に自分が共有関係から離れる方法を検討した方が現実的なケースもあります。

共有者との話し合いが長期化しているケース

共有者との話し合いが長期化している場合は、任意交渉だけで共有持分の売買を成立させるのが難しくなることがあります。

とくに、次のような状況が続いている場合は、任意交渉だけでの解決が長期化しやすく、他の方法も比較する目安になります。

  • 買い取る意思はあると言われているものの、具体的な金額や支払時期が決まらない
  • 査定額を提示しても、相手が独自の金額を主張し、価格のすり合わせが進まない
  • 不動産全体の売却には同意すると言われているものの、媒介契約・内覧対応・必要書類の準備など実際の手続きに協力してもらえない
  • 連絡は取れるものの、持分の売買や売却条件の話になると返答が止まる
  • 親族間の感情的な対立が強く、金額や手続きの話よりも過去の不満が争点になってしまう

上記のようなケースでは、相手が明確に拒否していなくても、実際には条件交渉が止まっていることがあります。

実務でも、当初は相手が話し合いに応じていたものの、金額や支払時期、登記に必要な書類の準備、不動産を誰が使い続けるかといった点で話が止まり、任意交渉だけでは解決に至らないケースがあります。

このような場合は、相手に本当に買い取る意思があるのか、金額・支払時期・登記手続きまで具体的に進められるのかを確認しましょう。

期限を決めても回答が曖昧なままなら、任意交渉にこだわらず、買取請求権を検討できる事情があるかを専門家に確認しつつ、共有物分割請求や買取業者への共有持分売却も含めて比較するのが現実的です。

買取請求権の要件を示す資料がそろっていないケース

買取請求権の行使を検討していても、費用負担の不履行や請求経緯を示す資料がそろっていない場合は、希望どおりに相手の持分を取得するのが難しくなることがあります。

具体的には、次のような状況だと、買取請求権を主張するための資料が不足している可能性があります。

  • 固定資産税や管理費を立て替えているものの、領収書や送金記録が残っていない
  • 誰がいくら負担すべきだったのか、持分割合や負担額の整理ができていない
  • 相手に支払いを求めた記録がなく、口頭でのやり取りしか残っていない
  • 未払いの期間や金額が曖昧で、請求内容を具体的に説明できない
  • 過去に立て替えた費用と、共有物に関する費用以外の支出が混在している

上記のようなケースでは、買取請求権を行使したくても、費用負担の不履行や請求経緯を客観的に示せない可能性があります。

実務でも、年度ごとの立替額や共有者への請求履歴が整理されておらず、まずは資料の確認が必要になるケースがあります。

このような場合は、納付書・領収書・通帳の履歴、共有者とのメールやLINE、内容証明郵便がある場合はその控えなど、費用負担や請求経緯を示せる資料を整理しましょう。

資料を確認しても買取請求権を行使できる見込みが立たない場合は、任意交渉を続けるか、共有物分割請求を弁護士などに相談するか、買取業者への共有持分売却で早期に共有関係から離れるかを比較するのが現実的です。

共有物分割請求に時間や費用をかけたくないケース

共有物分割請求は、共有状態を法的に整理する方法の一つですが、早期解決や費用負担の軽減を優先したい場合は、別の方法を検討した方がよいこともあります。

とくに、次のような状況では、共有物分割請求に進む前に、他の解決方法も比較しておくと後悔を防ぎやすくなります。

  • 裁判手続きに時間をかけるより、早く共有関係から離れたい
  • 弁護士費用や不動産鑑定費用などの負担をできるだけ抑えたい
  • 他の共有者との対立をこれ以上長引かせたくない
  • 換価分割や競売など、希望とは異なる形で不動産全体を整理されることを避けたい
  • 自分が取得できるのか、相手に買い取ってもらえるのかが見通せず不安を感じている

上記のようなケースでは、共有物分割請求で共有状態を解消できる可能性はあっても、費用や時間をかけた結果、希望していた形で整理できないことがあります。

弊社に寄せられる相談でも、当初は共有物分割請求を検討していたものの、手続きにかかる期間や費用、希望とは異なる分割方法になる可能性を知り、買取業者への共有持分売却へ方針を切り替える方もいます。

このような場合は、共有物分割請求をした場合にどれくらいの期間や費用がかかりそうか、希望する結果になる見込みがあるかを整理することが大切です。

共有物分割請求の負担が大きいと感じる場合は、条件がまとまる見込みがあるなら他の共有者との任意交渉を続け、交渉が難しい場合は買取業者への共有持分売却も含めて検討するのが現実的です。

価格よりも早く共有関係から離れることを優先したいケース

共有持分を少しでも高く売ることより、早く共有関係から離れたい場合は、買取業者への売却も選択肢になります。

任意交渉や共有物分割請求では、価格交渉や手続きに時間がかかることがあります。その間も、共有者との連絡、固定資産税や管理費の負担、売却や管理に関する調整は続くため、価格だけでなく「いつ共有関係から抜けられるか」も重要な判断材料になります。

とくに、次のような状況では、早期に共有関係から離れる方法もあわせて検討するとよいでしょう。

  • 他の共有者と連絡を取り続けること自体が負担になっている
  • 固定資産税や管理費、修繕費などの負担や清算のやり取りが続いている
  • 共有者の協力が得られず、不動産を売却・活用できない状態が続いている
  • 共有持分を持ち続けても、自分で使う予定や活用する見込みがない
  • 将来の相続で子どもや家族に共有持分の問題を残したくない

上記のようなケースでは、売却価格だけを重視して時間をかけるより、早期に共有関係から離れることが負担軽減につながる場合があります。

弊社でも、買取が完了したあとに「もっと早く相談すればよかった」「長年気になっていた共有関係の問題が整理できて安心した」といった声をいただくことがあります。親族間の対立や連絡の負担が続いていたケースでは、売却価格だけでなく、共有関係から離れられること自体に大きな意味があると感じる方もいます。

買取業者へ売却する場合、他の共有者との任意交渉で合意できる場合や、不動産全体を通常売却できる場合と比べると、価格が下がる可能性があります。

ただし、共有関係が続くことで発生する費用・手間・精神的負担・将来の相続リスクを考えると、価格よりも早期解決を優先し、買取業者への売却で共有関係から離れる方法が現実的な選択肢になるケースもあります。

共有持分を整理する場合の価格の決まり方

共有持分を整理する場合の価格は、どの方法で進めるかによって決まり方が異なります。

任意交渉であれば共有者同士の合意で価格を決められますが、買取請求権を行使する場合は相当の償金が必要になります。また、共有物分割請求では、裁判所がどの分割方法を採用するかによって、支払額や最終的な受取額が変わります。

方法 価格の決まり方 実務上のポイント
任意交渉 当事者間の合意 不動産全体の時価や持分割合を基準に、共有関係や支払条件などを踏まえて調整する
買取請求権の行使 相当の償金 不動産の客観的な評価額や持分割合をもとに、相手の持分を取得するための金額を検討する
共有物分割請求 採用される分割方法によって支払額・受取額が変わる 代償金の支払いで整理される場合もあれば、不動産全体の売却によって分配される場合もある

任意交渉では共有者同士の合意で価格が決まる

共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合、価格は共有者同士の合意で決まります。これは、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう場合も、他の共有者の持分を自分が買い取る場合も同じです。

ただし、実務では、根拠のない金額を提示しても相手が納得せず、交渉が止まってしまうことがあります。そのため、まずは不動産全体の時価や持分割合をもとに基準額を出し、そこから共有状態に応じた調整を行うのが基本です。

価格を決める際の流れを簡単にまとめると、次のようになります。

  1. 不動産全体の時価を確認する
  2. 持分割合を掛けて、持分の基準額を出す
  3. 共有者の関係性や不動産の利用状況、支払条件などを踏まえて最終金額を調整する

ここでは、持分2分の1を共有者間で売買するケースを例に考えます。

条件は次のとおりです。

・不動産全体の時価:3,000万円
・持分割合:2分の1

この場合、基準となる金額は「3,000万円 × 1/2 = 1,500万円」です。

ただし、任意交渉では、単純に1,500万円で決まるとは限りません。実務では、次のような事情を踏まえて価格を調整することがあります。

・売却する側が早く現金化したいのか
・共有名義の不動産に誰が居住・使用しているのか
・不動産全体を売却したくても、他の共有者が反対している状況か
・固定資産税や管理費、修繕費などの負担が偏っていないか
・契約や支払い、登記手続きまでスムーズに進められる状況か

たとえば、売却する側が早期現金化を希望しており、共有者間の対立も強く、交渉を長引かせたくない場合は、基準額から一定の調整を入れて早期合意を目指すことがあります。

仮に、交渉上の調整例として2割下げて合意した場合は、「1,500万円 × 80% = 1,200万円」が一つの目安になります。

一方で、共有者同士の関係が良好で、他の共有者がその持分を取得するメリットも大きい場合は、基準額に近い水準でまとまることもあります。

任意交渉は価格の自由度が高い反面、共有者同士の関係性、買い取る側の資金準備、売却する側の早期現金化の希望、支払時期や登記協力の有無によって金額に幅が出やすいのが特徴です。

買取請求権を行使する場合は相当の償金が必要になる

共有持分の買取請求のうち、民法253条2項に基づく買取請求権を行使する場合は、相手の持分を取得するために「相当の償金」を支払う必要があります。

任意交渉のように当事者同士が自由に価格を決めるのではなく、不動産の客観的な評価額や持分割合をもとに、相手の持分に見合う金額を検討するのが基本です。

あくまで目安ですが、相当の償金は次のような流れで考えます。

  1. 不動産全体の客観的な評価額を確認する
  2. 相手の持分割合を確認する
  3. 評価額に持分割合を掛けて、相手持分の基準額を出す

相当の償金は、不動産全体の評価額と持分割合をもとに考えるのが基本です。ここでは、基本的な計算イメージを確認しておきましょう。

たとえば、次の条件で考えます。

・不動産全体の評価額:3,000万円
・相手の持分割合:2分の1

この場合、「3,000万円 × 1/2 = 1,500万円」が相手持分の基準額になります。

ここで注意したいのは、買取請求権の場面では、買取業者が共有持分を買い取る場合のように、大幅なリスク調整を前提に価格を考えるわけではないという点です。買取請求権は民法に基づく制度であり、裁判になった場合は、不動産鑑定評価などの客観的な評価資料が重要な判断材料になることがあります。
たとえば、不動産鑑定などによって不動産全体の評価額が2,900万円とされた場合、持分2分の1の基準額は「2,900万円 × 1/2 = 1,450万円」となります。

ただし、実際の償金額は、この基準額だけで機械的に決まるとは限りません。未払いとなっている費用の内容、立替えの有無、請求経緯、共有物に関する負担の状況などを確認したうえで、相当の償金として妥当な金額が検討されます。

つまり、買取請求権を行使する場合の価格は、「不動産全体の客観的な評価額 × 相手の持分割合」を出発点に考えるのが基本です。

任意交渉のように当事者の都合だけで大きく増減させるというより、客観的な評価額を基準に、相当の償金として妥当な金額を検討する点が特徴です。

共有物分割請求では裁判所の判断や評価額が影響する

共有物分割請求は、裁判所を通じて共有状態の解消を求める手続きです。共有物分割請求では、裁判所がどの分割方法を採用するかによって、支払額や最終的な受取額が変わります。

不動産の共有物分割では、主に次のような方法が検討されます。

  • 代償分割:共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者に代償金を支払う方法
  • 換価分割:不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分ける方法
  • 現物分割:土地などを物理的に分けられる場合に、現物で分割する方法

実務上は、不動産の性質や利用状況、共有者の希望、取得を希望する人の資金力、不動産全体の評価額などを踏まえて、分割方法が検討されます。

共有物分割請求では、評価額をもとに代償金を支払うケースと、実際に売却して残った金額を分けるケースで、最終的な金額が変わります。以下の例で、金額の違いを確認してみましょう。

たとえば、不動産全体の評価額が3,200万円、持分割合が2分の1のケースで考えます。

裁判所が「一方の共有者が不動産を取得し、他の共有者へ代償金を支払う方法(代償分割)」を採用する場合、持分2分の1に対応する金額として「3,200万円 × 1/2 = 1,600万円」が一つの基準になります。

一方で、「不動産全体を売却して代金を分ける方法(換価分割)」になった場合は、実際の売却価格や売却にかかる費用によって受取額が変わります。

たとえば、次の条件で売却されたとします。

・実際の売却価格:2,800万円
・仲介手数料などの売却費用:200万円

この場合、分配対象となる金額は「2,800万円 - 200万円 = 2,600万円」です。持分割合が2分の1であれば、最終的に受け取る金額は「2,600万円 × 1/2 = 1,300万円」が目安になります。

共有物分割請求では、自分が希望する形で不動産を取得できるとは限らず、相手に必ず買い取ってもらえるわけでもありません。不動産全体の売却によって整理される可能性もあるため、最終的な受取額は、不動産の評価額だけでなく、実際の売却価格や売却費用にも左右されます。

共有持分の買取請求をする流れ

共有持分の買取請求をする流れは、どの方法で持分を整理するかによって異なります。

任意交渉で進める場合は、価格や条件を共有者同士で合意する必要があります。一方で、買取請求権を行使する場合は、共有物に関する費用負担の不履行など、制度上の要件や証拠を整理しなければなりません。

また、共有物分割請求は、相手に持分の売買を直接求める手続きではなく、裁判所を通じて共有状態の解消を目指す手続きです。結果として一方が不動産を取得することもありますが、不動産全体の売却によって整理される可能性もあります。

ここでは、次の3つの方法に分けて、共有持分の買取請求を進める流れを解説します。

  • 他の共有者への任意交渉で共有持分を売買する流れ
  • 買取請求権の行使で共有持分を取得する流れ
  • 共有物分割請求で共有状態を解消する流れ

他の共有者への任意交渉で共有持分を売買する流れ

共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合、基本は「価格の根拠」と「売買条件」を整理したうえで、相手に提案することが重要です。

自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう場合も、他の共有者の持分を自分が買い取る場合も、最終的には共有者同士の合意が必要です。感情的に「買い取ってほしい」「売ってほしい」と伝えるだけでは、価格や支払時期の条件調整に進めず、交渉が停滞することがあります。

任意交渉で共有持分を売買する流れは、次のとおりです。

手順 内容 実務上のポイント
① 不動産の時価を把握する 不動産全体の実勢価格を確認する 査定を取得し、価格の根拠を用意しておく
② 持分割合・権利関係を確認する 登記簿で持分割合や所有者を確認する 相続登記が未了の場合や登記上の名義・住所が現在の状況と異なる場合は、先に登記・権利関係の整理が必要になる
③ 持分の基準額を算定する 不動産全体の時価に持分割合を掛ける 交渉の土台となる金額を作る
④ 売買条件を整理する 売買価格、支払時期、登記費用、税金や管理費の精算方法などを決める 一括払いか分割払いか、いつ登記するかで合意のしやすさが変わる
⑤ 相手へ提案する 金額と条件を共有者に伝える 口頭だけでなく、メールや書面で残すと後の認識違いを防ぎやすい
⑥ 売買契約・決済・登記を行う 合意後に契約を結び、代金支払いと持分移転登記を行う 司法書士が関与し、決済と登記を同時に進めるのが一般的

実務上、任意交渉では価格の根拠となる資料を示したうえで提案した方が、共有者間で条件をすり合わせやすくなります。

不動産会社の査定書、近隣の成約事例、固定資産税評価額、登記簿上の持分割合などをもとに基準額を示すと、単に金額だけを伝えるよりも、相手が検討しやすくなります。

また、任意交渉では価格だけでなく、支払時期や登記のタイミングまで具体化しておくことが重要です。とくに分割払いで合意する場合は、未払いになったときの対応や、代金支払い前に登記を移すのかどうかでトラブルになることがあります。

共有者間の売買であっても、売買契約書を作成し、代金の支払い時期、持分移転登記のタイミング、登記費用や固定資産税・管理費などの精算範囲を明確にしておくことが大切です。

買取請求権の行使で共有持分を取得する流れ

民法253条2項に基づく買取請求権を行使する場合は、共有物に関する費用負担を履行していない共有者に対して、相当の償金を支払ってその持分を取得する流れになります。

ただし、単に「相手が協力してくれない」「相手の持分を取得したい」という理由だけで行使できる制度ではありません。共有物に関する費用負担の不履行があるか、請求経緯を証拠で示せるか、相当の償金を用意できるかを整理する必要があります。

買取請求権の行使を検討する流れは、次のとおりです。

手順 内容 実務上のポイント
① 共有物に関する費用負担を整理する 固定資産税、管理費、修繕費などの支払い状況を確認する 本当に共有物に関する負担といえるかを確認する
② 負担割合と立替額を確認する 持分割合、納付書、領収書、通帳履歴などを整理する 誰がいくら負担すべきだったのかを説明できる状態にする
③ 相手への請求経緯を整理する 支払いを求めた日付、金額、方法、相手の反応を確認する 口頭だけでなく、メール・LINEの履歴や、内容証明郵便を送付している場合はその控えがあると確認しやすい
④ 不履行の期間を確認する 請求後も相手が負担を履行していない状態が続いているかを確認する 1年の起算点や請求内容が争点になり得るため、弁護士に確認するのが安全
⑤ 相当の償金を算定する 不動産全体の評価額と相手の持分割合をもとに金額を検討する 必要に応じて不動産鑑定や査定資料を用意する
⑥ 弁護士に相談したうえで買取請求権の行使を検討する 要件や償金額を整理したうえで、買取請求権を行使できるか確認する 法的な主張になるため、弁護士を通じて進めるのが安全
⑦ 合意または裁判等で持分取得を整理する 相手が応じる場合は合意により進め、争いがある場合は弁護士を通じて裁判等で持分取得の可否や償金額を整理する 償金の支払いと持分移転登記まで完了して、持分取得が実現する

買取請求権の行使では、証拠の整理が不十分なまま進めないことが重要です。固定資産税や管理費を立て替えていたとしても、年度ごとの立替額、持分割合に応じた負担額、相手へ請求した記録が整理されていなければ、費用負担の不履行を客観的に示しにくくなります。

また、民法253条2項では、共有者が共有物に関する負担を1年以内に履行しない場合に、他の共有者が相当の償金を支払ってその持分を取得できるとされています。

ただし、実務では「いつから1年と見るか」「どの費用を請求したのか」「相手に履行の機会を与えていたのか」が争点になりやすいため、自己判断で進めるのは避けた方が安全です。

買取請求権を検討する場合は、共有物に関する費用負担・請求経緯・不履行期間・相当の償金を整理したうえで、弁護士などの専門家に相談しながら進めましょう。

共有物分割請求で共有状態を解消する流れ

共有物分割請求は、共有者同士で共有状態を解消する話し合いがまとまらない場合に、裁判所を通じて分割を求める手続きです。

共有物分割請求は、必ずしも「相手に持分を買い取ってもらう手続き」ではありません。裁判所の判断によって、代償金の支払いで一方が不動産を取得することもあれば、競売などによって不動産全体を換価し、代金を分ける形になることもあります。

共有物分割請求で共有状態を解消する流れは、次のとおりです。

手順 内容 実務上のポイント
① 共有者間で協議する まずは共有者同士で売却・買取・利用方法などを話し合う 協議内容や相手の回答を記録しておくと、後の手続きで経緯を説明しやすい
② 不動産資料と希望条件を整理する 登記簿、固定資産税評価証明書、査定書、利用状況、占有者の有無などを確認する 自分が取得したいのか、相手に取得してもらいたいのか、売却でもよいのかを整理する
③ 調停・訴訟などの進め方を検討する 共有者同士の任意交渉がまとまらない場合、調停や共有物分割訴訟を検討する 共有物分割請求は調停前置ではないため、協議がまとまらない場合や協議ができない場合は、調停を経ずに共有物分割訴訟を検討できる
④ 訴訟では分割方法や評価額を主張する 現物分割、代償分割、換価分割などの希望や、不動産評価額を主張する 取得を希望する場合は、代償金を支払える資金力も重要になる
⑤ 裁判所が分割方法を判断する 不動産の性質、利用状況、共有者の希望、評価額などを踏まえて判断される 希望どおりに取得できるとは限らず、不動産全体の売却になることもある
⑥ 判決後に支払い・売却・登記を行う 判断された分割方法に応じて、代償金の支払い、競売などによる換価、登記などを行う 判決内容によっては、相手が任意に対応しない場合に強制執行などの手続きが必要になることもある

共有物分割請求は、共有者同士の協議で解決できない場合に検討されやすい、法的な整理手段です。

裁判所を通じて共有状態の解消を求められる一方で、訴訟準備、不動産評価、弁護士費用、裁判所での手続きなどに時間と費用がかかる傾向があります。また、自分が不動産を取得したい場合でも、代償金を用意できなければ希望どおりの整理が難しくなることがあります。

そのため、早く共有関係から離れることを優先したい場合は、共有物分割請求に進んだ場合の期間・費用・結果の見通しと、買取業者へ売却した場合の買取価格、決済時期、売却後に必要な対応を比較しておくとよいでしょう。

共有持分の買取請求をトラブルなくスムーズに進めるための対策

共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合は、事前に価格の根拠や共有者との話し合いの進め方、費用負担の状況を整理しておくことが重要です。

これらを整理しておくことで、任意交渉がまとまらない場合も、買取請求権や共有物分割請求などを検討する際の判断材料になります。

トラブルを防ぎながら共有持分の買取請求を進めるためには、次の点を意識しましょう。

  • 買取価格の根拠を査定書や評価資料で示す
  • 共有者との直接交渉が難しい場合は専門家に相談する
  • 未精算の費用や利用状況を整理してから条件を決める

買取価格の根拠を査定書や評価資料で示す

任意交渉で共有持分の売買を進める場合は、買取価格の根拠を示せるようにしておきましょう。

実務では、売却したい側は不動産全体の査定額を基準に考えている一方で、買い取りたい側は固定資産税評価額やこれまでの管理負担を理由に低い金額を提示するケースがあります。価格の前提が共有されていないと、「高すぎる」「安すぎる」といった感情的な反応になりやすく、話し合いが平行線になることがあります。

価格の認識がズレたまま交渉が進まなければ、任意交渉での解決が難しくなり、共有物分割請求などを検討せざるを得ないケースもあります。そのため、事前に次のような資料をもとに、金額の根拠を示せるようにしておきましょう。

  • 不動産会社や共有持分の買取業者による査定書
  • 固定資産評価証明書
  • 近隣の類似物件の売出価格や、確認できる範囲での成約事例
  • 登記事項証明書に記載された持分割合
  • 固定資産税や修繕費などの負担状況がわかる資料

不動産全体の査定額や持分割合をもとに、なぜその価格を提示するのかを説明できる状態にしておくと、相手も検討しやすくなります。

ただし、査定額や評価資料はあくまで価格判断の材料の一つです。任意交渉では最終的に当事者同士の合意が必要になるため、査定額をそのまま押し付けるのではなく、支払時期や登記手続き、未精算費用の扱いなども含めて条件を調整しましょう。

また、買取請求権を主張する場合や共有物分割請求に進む場合も、相当の償金や代償金、不動産の評価額が争点になることがあります。任意交渉の段階から価格の根拠を整理しておくことで、法的手続きを検討する際の判断材料にもなります。

共有者との直接交渉が難しい場合は専門家に相談する

共有者同士の関係が悪化している場合は、当事者だけで直接交渉しようとすると、かえって話がこじれることがあります。

このような場合は、自分の共有持分の査定額や、買取業者へ売却する場合の条件については、不動産会社・共有持分の買取業者へ相談できます。一方で、他の共有者との代理交渉や、法的な主張を伴う紛争対応については、弁護士へ相談・依頼することを検討しましょう。

とくに、次のような状況では、当事者同士だけで話し合いを進めると、かえって交渉が長期化するおそれがあります。

  • 持分の話を出すと相手が感情的になり、条件の話し合いに進めない
  • 連絡は取れるものの、金額や支払時期の回答が曖昧なまま止まっている
  • 相手がこちらの説明を聞かず、一方的な金額を主張している
  • 過去の相続・離婚・親族関係の不満が争点になっている
  • 法的手続きに進む可能性があり、当事者だけで判断するのが不安

上記のような場合は、交渉が止まっている原因が、価格の問題なのか、感情的な対立なのか、法的な判断が必要な問題なのかを整理することが大切です。

価格の妥当性や売却条件を整理したい場合は、不動産会社や共有持分の買取業者に査定を依頼することで、不動産全体の価格や共有持分として売却した場合の目安を把握しやすくなります。査定額や売却条件を整理しておけば、相手に条件を伝える際の判断材料にもなります。

一方で、相手との交渉がすでに紛争化している場合や、相続・離婚をきっかけとした感情的な対立によって話し合いが進まない場合は、弁護士へ相談することが重要です。共有物分割請求や買取請求権の主張を検討する場合も、法的な見通しを確認したうえで進めましょう。

専門家に相談することで、当事者同士では感情的になりやすい価格や条件、法的な見通しを整理しやすくなります。実務上も、査定額や売却条件を客観的に示したことで、任意交渉の段階で解決の糸口が見つかり、共有物分割請求などに進む前に合意できるケースがあります。

なお、不動産会社や買取業者は法的な代理交渉を行う立場ではないため、相手との交渉が紛争化している場合は弁護士へ相談しましょう。

未精算の費用や利用状況を整理してから条件を決める

共有持分の買取請求は、任意交渉で解決できれば、裁判や共有物分割請求に進む場合と比べて、時間や費用の負担を抑えやすくなります。

ただし、任意交渉では買取価格だけを決めればよいわけではありません。実務上問題になりやすいのは、固定資産税や修繕費などの立替分を買取価格に含めるのか、共有者の一人が居住している場合の使用利益や、賃貸している場合の賃料収入をどう扱うのかといった点です。

価格自体には合意できそうでも、固定資産税の立替分や賃料収入の扱いが曖昧なままだと、最終的な条件調整で話が止まることがあります。

そのため、条件を決める前に、次の点を整理しておきましょう。

  • 固定資産税を誰が、いつから、いくら支払っているか
  • 管理費・修繕費・保険料などを誰が負担しているか
  • 不動産に居住・使用している共有者がいるか、いつから使用しているか
  • 賃貸中の場合、誰がいつから賃料を受け取っているか
  • 未精算の費用を買取価格に含めるのか、別途清算するのか

未精算の費用や利用状況を整理しておけば、相手に提示する条件の根拠が明確になり、任意交渉で合意できるかどうかを判断しやすくなります。

後日のトラブルを防ぐためにも、合意した内容は口頭だけで済ませず、売買契約書に清算内容を明記する、または別紙で清算内容を残すなど、書面で確認できる形にしておきましょう。

共有持分の買取請求が難しい場合の代替案

共有持分の買取請求が難しい場合でも、共有関係から抜け出す方法がないわけではありません。

他の共有者に買い取ってもらえない、買取請求権の要件を示す証拠がそろっていない、共有物分割請求に時間や費用をかけたくないといった場合は、買取請求以外の方法も検討する必要があります。

とくに、価格よりも早く共有関係から離れることを優先したい場合は、次のような代替案が選択肢になります。

  • 共有持分を買取業者などの第三者に売却する
  • 共有持分を他の共有者に無償で譲る

どちらの方法も共有関係から離れる手段にはなりますが、価格・費用・税金などを含めて考えると、向き不向きがあります。実務上は、売却条件や相手の合意、税金・登記手続きの負担を確認したうえで、自分の状況に合う方法を選ぶことが大切です。

共有持分を買取業者などの第三者に売却する

共有関係から早く抜け出したい場合は、自分の共有持分を買取業者などの第三者に売却する方法があります。自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意がなくても売却できます。

ただし、共有持分は買主が取得後に他の共有者との調整を要するため、通常の不動産と同じように買主が見つかるとは限りません。早期に共有関係を整理したい場合は、共有持分の買取に対応している買取業者へ査定を依頼し、売却条件を確認してみるのも一つの方法です。

共有持分を買取業者へ売却する流れは、次のとおりです。

手順 内容 実務上のポイント
① 共有持分の状況を整理する 持分割合、共有者の人数、居住者の有無、固定資産税や管理費の負担状況などを確認する 共有者との関係性や占有状況は査定額に影響しやすい
② 買取業者に査定を依頼する 共有持分の買取に対応している業者へ相談する 複数社に相談し、買取価格だけでなく決済時期や売却条件も比較する
③ 買取価格と条件を確認する 買取価格、決済時期、必要書類、売却後に必要な対応などを確認する 価格だけでなく、いつ共有関係から離れられるかも確認する
④ 売買契約を結ぶ 条件に合意したら、共有持分の売買契約を締結する 契約不適合責任の扱いや、共有者トラブル・権利関係の問題など売主が把握している事情を事前に伝え、契約書で扱いを明確にする
⑤ 決済・持分移転登記を行う 代金の支払いと同時に、共有持分の移転登記を行う 司法書士が関与し、決済と登記を同時に進めるのが一般的

買取業者へ売却するメリットは、買主を探す手間を省き、早期に共有持分を現金化しやすい点です。一般の個人買主が見つかりにくい共有持分でも、買取業者であれば権利調整のリスクを踏まえたうえで査定・買取を検討できます。

弊社に寄せられる買取相談でも、早期解決を優先して売却を決めた方から、取引後に「早く共有関係から離れられてよかった」とお声がけいただくことがあります。

一方で、少しでも高く売ることを優先したい方には、買取業者への売却だけでなく、他の共有者との任意交渉や、必要に応じて弁護士に共有物分割請求を相談する方法も含めて比較した方がよいとお伝えすることもあります。

共有持分を買取業者へ売却するかどうかは、価格を優先するのか、早く共有関係から離れることを優先するのかを整理したうえで判断することが大切です。

共有持分を買取業者に売却するメリットについては、次の記事でも詳しく解説しています。

共有持分を他の共有者に無償で譲る

買取請求が難しい場合は、共有持分を他の共有者に贈与し、無償で譲る方法もあります。

他の共有者が買取には応じられないものの、無償であれば持分を引き受けてもよいと考えている場合には、贈与によって共有関係から抜け出せる可能性があります。

ただし、他の共有者に無償で譲る場合は、贈与を受ける相手の合意が必要です。受け取る側には、贈与税や不動産取得税、登記費用、今後の固定資産税・管理費などの負担が生じる可能性もあるため、無償でも必ず応じてもらえるとは限りません。

また、法人への贈与や、ローン・未払い金などを引き継ぐ負担付贈与にあたる場合は、譲る側にも譲渡所得に対する所得税などが生じる可能性があるため、事前に税理士などへ確認しておきましょう。

共有持分を他の共有者に無償で譲る流れは、次のとおりです。

手順 内容 実務上のポイント
① 相手に受け取る意思があるか確認する 共有持分を無償で譲りたいことを伝え、相手が受け取る意思を確認する 贈与税・不動産取得税・登記費用・今後の固定資産税や管理費など、受け取る側の負担も伝えておく
② 贈与の条件を整理する いつ持分を移すのか、登記費用や税金を誰が負担するのかを決める 口約束ではなく、条件を明確にしておくことが重要
③ 贈与契約書を作成する 共有持分を無償で譲る内容を契約書に残す 後日の認識違いを防ぐため、贈与契約書を作成しておく
④ 税金を確認する 贈与税、不動産取得税、登録免許税、譲渡所得に対する所得税などの課税関係を確認する 税額や課税関係は状況によって異なるため、税理士などに確認するのが安全
⑤ 持分移転登記を行う 贈与を原因として、共有持分の移転登記を行う 司法書士に依頼し、登記手続きを進めるのが一般的

無償譲渡は共有関係から離れる方法の一つですが、買取業務を行う弊社の実務感としては、売却できる可能性を確認せずに選ぶのは慎重になるべきです。

無償で譲れば、売却代金を受け取れないまま共有持分を手放すことになります。将来的に不動産全体の売却や、他の共有者による持分買取が見込める場合は、結果的に得られたはずの利益を失う可能性もあります。

そのため、共有持分を無償で譲る場合は、相手が受け取る意思を持っているか、税金や登記費用を誰が負担するか、譲渡によって自分が失う権利や経済的利益は何かを確認しておくことが大切です。

共有持分の買取請求を受けた場合の対処法

共有持分の買取請求は、自分が行うだけでなく、他の共有者から逆に請求されることもあります。

共有持分の買取請求を受けた場合は、まず「法的な請求なのか」「任意の売買交渉なのか」を確認することが重要です。

一口に買取請求といっても、民法253条2項に基づく買取請求権を行使されているケース、共有物分割請求のなかで価格賠償が争点になるケース、共有者同士の任意交渉として持分の売買を求められているケースでは、対応方法が異なります。

請求の種類 まず確認すべきこと 基本的な対応
民法253条2項に基づく買取請求権を行使されている 共有物に関する費用負担の不履行があるか、相当の償金が妥当か 要件や金額に争いがある場合は、資料を整理して反論を検討する
共有物分割請求を起こされている 相手が求めている分割方法、評価額、自分が不動産を取得したいかどうか 分割方法や評価額について、自分の希望と反論できる点を整理する
任意交渉で買取を求められている 提示価格、売却後のメリット・デメリット、相手との関係性 応じる・断る・自分が相手の持分を買い取る・第三者売却を検討する

実務上は、相手から任意で買取を求められている段階なのか、すでに法的手続きに進んでいる段階なのかによって、対応の緊急度が変わります。裁判所から書類が届いている場合は、後回しにせず、まず内容と対応期限を確認しましょう。

法的手続きを起こされている場合は請求内容と価格を確認する

買取請求権を行使された場合や、共有物分割請求を起こされた場合は、まず相手が何を求めているのか、価格や評価額に争う余地があるのかを確認しましょう。

法的手続きに進んでいる場合でも、相手の主張がそのまま認められるとは限りません。請求の種類によって確認すべき点が異なるため、届いた書類の内容をもとに、相手が何を求めているのかを整理することが大切です。

とくに、裁判所から書類が届いている場合は、答弁書の提出期限や期日を確認しましょう。期限内に対応しないまま放置すると、費用負担の有無、償金額、分割方法、評価額などについて、こちらの言い分を十分に主張できないおそれがあります。

買取請求権を行使されている場合

民法253条2項に基づく買取請求権を行使されている場合は、「費用負担の不履行があるか」と「相当の償金が妥当か」を確認しましょう。

固定資産税や修繕費などを他の共有者に立て替えてもらっていたとしても、直ちに相手の主張どおりに持分を取得されるとは限りません。どの費用を、いつから、いくら立て替えたと主張されているのか、自分の持分割合に応じた負担額はいくらなのか、すでに一部を支払っていないかなどを整理する必要があります。

また、相当の償金として提示されている金額が妥当かどうかも重要です。不動産全体の評価額や持分割合によって金額の見方が変わるため、相手の提示額をそのまま受け入れるのではなく、評価資料や不動産会社の査定額も参考にしながら確認しましょう。

費用負担の内訳や償金額に納得できない場合は、早めに弁護士へ相談することが大切です。

共有物分割請求を起こされている場合

共有物分割請求を起こされている場合は、相手が求めている分割方法と評価額を確認しましょう。

共有物分割請求では、不動産を現物で分ける方法だけでなく、共有者の一人が不動産を取得して他の共有者へ金銭を支払う方法や、競売によって代金を分ける方法が検討されることがあります。

自分が不動産を取得したい場合は、相手の持分を買い取る資金を用意できるかを確認する必要があります。

一方で、不動産を取得するつもりがない場合は、裁判の進行状況を踏まえながら、相手との和解や不動産全体の任意売却、自分の共有持分の売却など、競売以外の解決策を検討できるか弁護士に確認しましょう。

共有物分割請求では、分割方法や評価額によって最終的な着地が変わるため、早めに弁護士へ相談し、自分が主張すべき方針を整理しておくことが大切です。

ポイント

【法的手続きで用意しておきたい書類】
買取請求権を行使されている場合でも、共有物分割請求を起こされている場合でも、まずは権利関係や価格の根拠を確認できる資料を整理しておきましょう。なお、必要な資料は請求内容や争点によって異なります。

  • 登記事項証明書
  • 固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書
  • 不動産会社や共有持分の買取業者による査定書
  • 相手とのやり取りがわかるメール・LINE・書面
  • 固定資産税や修繕費などの支払履歴
  • 賃貸中の場合は賃貸借契約書や賃料の入金履歴

登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書は、どちらの手続きでも権利関係や価格の目安を確認するために役立ちます。

一方で、固定資産税や修繕費などの支払履歴は、主に買取請求権の要件や費用負担を争う場合に重要になります。賃貸借契約書や賃料の入金履歴も、賃貸中の不動産で収益や利用状況が争点になる場合に整理しておくとよいでしょう。

任意交渉で買取を求められている場合は応じるか判断する

他の共有者から任意交渉として持分の買取を求められている場合、その申入れだけで売却や買取を強制されるわけではありません。

たとえば、相手から「あなたの持分を買い取りたい」「自分の持分を買い取ってほしい」と言われたとしても、必ず応じなければならないわけではありません。提示価格や不動産の利用状況、相手との関係性を踏まえて、応じるかどうかを判断しましょう。

ただし、実務では、共有者同士に感情的な対立がある場合や、交渉自体を強く拒む場合に、話し合いでの解決が難しくなり、共有物分割請求などの法的手続きに進むケースもみられます。

相手の提示条件をそのまま受け入れる必要はありませんが、法的手続きに進むリスクも踏まえ、売却に応じるのか、自分が相手の持分を買い取るのか、第三者への売却も検討するのかを整理して判断しましょう。

金額に納得できるなら持分の売却に応じる

相手から提示された金額に納得できる場合は、持分の売却に応じることも選択肢になります。

実務上も、相続で共有持分を取得したものの自分では不動産を使っていない場合や、他の共有者がすでに居住している場合は、持分を売却することで管理や納税の負担を整理しやすくなります。

ただし、相手の提示価格が妥当かどうかは慎重に確認しましょう。共有者間の売買では、「親族だから安くしてほしい」など、市場価格を十分に反映しない金額を提示されるケースもあります。そのため、提示価格だけで判断せず、第三者の査定額と比較して妥当性を確認することが大切です。

一方で、他の共有者に売却する場合は、第三者に共有持分を売却する場合よりも高い価格でまとまる可能性があります。他の共有者にとっては、持分を取得することで共有関係を整理しやすくなり、不動産全体の管理や売却に向けた調整もしやすくなるためです。

提示価格に迷う場合は、「不動産全体の査定額に持分割合を掛けた金額」と「共有持分として第三者に売却した場合の査定額」を確認し、相手の提示額がどの水準に近いのかを比較しましょう。

価格に納得できる場合でも、当事者同士だけで判断すると、相場より低い金額で合意してしまう可能性があります。不安がある場合は、不動産会社に査定を依頼し、契約内容に争いがある場合は弁護士、登記手続きについては司法書士に確認したうえで進めるとよいでしょう。

不動産を手放したくないなら相手の持分を買い取る

不動産を手放したくない場合は、相手の持分を自分が買い取る方法もあります。

たとえば、自分がその不動産に住んでいる場合や、将来的に建て替え・売却・賃貸活用を考えている場合、相手の持分を買い取ることで不動産を管理・活用しやすくなります。他の共有者が少なくなれば、将来の売却や管理方針についても判断しやすくなるでしょう。

実務上も、相手が「共有関係から離れたい」「固定資産税や管理の負担をなくしたい」と考えている場合は、こちらから持分買取を提案することで交渉がまとまりやすくなるケースがあります。

ただし、持分の買取では価格の決め方で意見が分かれやすい点に注意が必要です。相手は「不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた金額」を希望する一方で、買い取る側は、これまでの費用負担や今後の管理負担も踏まえて価格を相談したいケースがあります。

相手の持分を買い取る場合は、不動産全体の査定額を確認したうえで、持分割合や利用状況、これまでの費用負担を踏まえ、相手と合意できる価格帯を検討しましょう。

また、持分だけを買い取る場合、不動産全体を担保にできない、権利関係が複雑であるといった理由から、一般的な住宅ローンを利用しにくいケースもあります。

自己資金で対応できるか、金融機関から融資を受けられるかを事前に確認し、必要に応じて不動産会社や司法書士などの専門家に相談しながら進めることが大切です。

相手に売りたくないなら第三者への売却も視野に入れる

相手の提示価格に納得できない場合や、これまでの関係性から相手に売却したくない場合は、買取業者などの第三者への売却も選択肢になります。

実務上も、他の共有者から低い金額での買取を打診されたものの、提示価格に納得できず、第三者への売却を検討するケースがあります。

また、長年の関係不和があり、「相手にだけは売りたくない」「これ以上直接交渉したくない」という理由で、買取業者への売却を選ぶ方もいます。

相手の提示価格が妥当かわからない場合は、共有持分の買取業者に査定を依頼し、相手へ売却した場合の価格と第三者へ売却した場合の価格を比較してみると判断しやすくなります。

ただし、買取業者に売却した後は、買主である業者が他の共有者へ連絡したり、共有関係の整理に向けて交渉したりする可能性があります。売却自体は可能でも、他の共有者との関係に影響が出る可能性はあるため、査定時に売却後の流れや他の共有者への連絡方針を確認しておきましょう。

共有持分の売却や売却相場については、次の記事でも詳しく解説しています。

まとめ

共有持分の買取請求とは、一般に、他の共有者へ持分の売買を求めることを指します。

ただし、一つの制度を指す言葉ではなく、任意交渉による売却・買取の申し入れ、民法上の買取請求権のほか、共有物分割請求による共有状態の解消と関連して使われることがあります。そのため、まずは自分の状況がどの方法にあたるのかを整理することが大切です。

任意交渉は共有者同士の合意が前提であり、買取請求権は一定の要件を満たす場合に限られます。共有物分割請求も、協議がまとまらない場合に裁判所の判断で共有状態の解消を目指す手続きであり、必ず希望どおりの形で持分を取得できるとは限りません。

買取請求だけで解決しようとすると、話し合いや手続きが長期化し、時間や費用の負担が大きくなることもあります。共有状態から早く抜け出したい場合や、他の共有者との交渉が難しい場合は、共有持分を買取業者などの第三者に売却する方法も選択肢になります。

共有持分の整理を進める際は、買取請求だけにこだわらず、第三者への売却なども含めて、自分の状況に合った現実的な解決方法を選ぶことが大切です。

共有持分の買取請求に関するよくある質問

共有持分の買取請求をされたら、必ず応じなければなりませんか?

共有持分の買取請求をされた場合でも、必ず応じなければならないわけではありません。

他の共有者から任意の話し合いとして買取を求められているだけであれば、価格や条件に納得できない限り、売却や買取に応じる義務はありません。

ただし、民法上の買取請求権を主張されている場合や、共有物分割請求の手続きに進んでいる場合は、単なる話し合いとは異なります。要件や裁判所の判断によっては、持分の取得や、不動産全体の競売などが問題になる可能性もあります。

まずは、相手の請求が「任意交渉」なのか、「民法上の買取請求権の主張」なのか、「共有物分割請求などの裁判手続き」なのかを確認しましょう。

共有持分の買取請求を無視するとどうなりますか?

任意交渉として共有持分の買取を求められているだけであれば、無視しただけで直ちに売却や買取に応じる義務が生じるわけではありません。

ただし、返答しない状態が続くと、共有者との関係が悪化し、共有物分割請求などの法的手続きに進む可能性があります。

また、裁判所から訴状や調停申立書などが届いている場合は、放置しないよう注意が必要です。訴状であれば答弁書の提出期限や期日、調停申立書であれば調停期日を確認し、必要に応じて専門家へ相談しましょう。

共有持分の買取請求を受けた場合は、無視するのではなく、請求内容・価格・書類の種類を確認したうえで対応しましょう。

共有持分の買取請求の価格に納得できない場合はどうすればいいですか?

共有持分の買取請求の価格に納得できない場合は、まず価格の根拠を確認することが重要です。

任意交渉であれば、再度話し合いを行い、不動産全体の時価や持分割合を出発点に価格を再提示することが可能です。複数の査定を取得し、共有持分としての評価額を比較する方法もあります。

一方、買取請求権が主張されている場合や、共有物分割請求などの裁判手続きに進んでいる場合は、評価額そのものが争点になることもあります。

納得できない価格を提示された場合は、希望額だけで判断するのではなく、査定額や評価資料などをもとに、金額の妥当性を整理することが大切です。

共有持分を買取業者に売却するとトラブルになることはありますか?

自分の共有持分のみを売却する場合、原則として他の共有者の同意は必要ありません。共有名義の不動産全体を売却する場合とは異なり、自分の持分だけであれば単独で売却できます。

ただし、他の共有者に事前に知らせずに売却した場合、売却後に「なぜ相談してくれなかったのか」「知らない業者が共有者になるのは困る」などと不満を向けられる可能性はあります。

売却後のトラブルが心配な場合は、買取後に他の共有者へどのように連絡・協議するのかを説明してくれる買取業者を選ぶことが大切です。

また、売買契約では、査定額の根拠や契約条件に加えて、売却後の他共有者対応を誰が行うのか、契約不適合責任の免責特約の有無や範囲も確認しておきましょう。

ただし、売主が知っている不具合や権利関係の問題を隠して売却した場合は、免責特約があっても責任を負う可能性があります。

買取業者に売却する際に起こりうるトラブルについては、次の記事も参考にしてみてください。

共有持分を買い取ってくれる買取業者の目的は何ですか?

共有持分を買い取る買取業者の主な目的は、取得した持分をもとに共有関係を整理し、不動産の活用や再販売につなげることです。

共有持分だけを購入しても、不動産全体を自由に売却したり使用したりできるわけではありません。そのため、買取業者は取得後に、他の共有者との話し合い、持分の買い増し、不動産全体の売却提案などを通じて、共有状態の整理を目指すのが一般的です。

ただし、共有者との調整には時間や費用がかかることもあり、状況によっては法的手続きが必要になるケースもあります。買取業者は、こうした取得後の対応負担やリスクを見込んだうえで査定額を提示しています。

そのため、共有持分の買取価格は「不動産全体の価格 × 持分割合」より低くなることがあります。一方で、売主にとっては、他の共有者との交渉を自分で進めずに共有持分を現金化できる点がメリットです。

買取業者の目的については、次の記事でも詳しく解説しています。

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