相続不動産は自分で名義変更すべき?自分で登記するべきかの判断基準や相続登記の流れ

親や親族が亡くなり、実家や土地などの不動産を相続することになったとき、避けて通れないのが不動産の名義変更手続きです。相続不動産の名義変更は、「相続登記」によって行います。
相続登記の準備や申請は、司法書士などの専門家へ依頼するのが一般的です。しかし、司法書士報酬として5万~15万円の費用がかかるため、「できることなら自分で手続きをして費用を節約したい」と考える方もいるのではないでしょうか。
相続登記は、司法書士に依頼しなくても自分で行うことは可能です。しかし、相続登記は「戸籍の収集・読み解き」「相続登記の申請書の作成」など非常に専門性が高い手続きが必要なうえに、少しでも不備があると登記が完了しません。
書類に不備があれば、平日の日中に何度も法務局へ出向いて修正する必要があります。また、2024年4月からは相続登記が義務化されたため、悠長に構えていると最大10万円の過料のリスクも発生します。
まずは以下6つのチェックポイントを確認し、「本当に自分だけで進めるべきなのか」を検討することが大切です。
- 調べ物や必要書類の読み解きをする時間と根気があるか
- 平日に時間が取れるか
- 相続人の数が多すぎないか
- 相続人同士の争いが発生していないか
- 相続不動産の管理や遺品整理に追われていないか
- 相続登記未了・共有名義など不動産の権利関係が複雑になっていないか
自分で相続登記を進める際の流れは、主に次の通りです。
| 相続登記手続き | 概要 |
|---|---|
| 相続する不動産の状況や権利関係を確認する | 不動産の住所地情報や共有名義などの権利状態を確認し、相続予定の不動産の全容を把握する |
| 不動産を相続する人や財産を確定させる | 誰が相続権を持っているのか、不動産を含めてどのような相続財産があるのかを確定させ、遺産分割が正しく進められるよう準備する |
| 遺産分割で誰が不動産を相続するかを決定する | 誰が不動産を相続するかをはっきりさせ、登記する不動産や不動産の名義人を決定する |
| 法務局で相続登記の手続きを進める | 登記申請書や法定相続情報一覧図の作成、戸籍謄本や住民票の除票などの必要書類の準備、法務局での申請、登録免許税の納付を行う |
| 登記識別情報通知を受領する | 登記識別情報通知の交付を受け、売買契約や住宅ローン借り入れ時などに使えるよう大切に保管しておく |
自分で相続登記を進める場合でも、書類収集や実費、登録免許税の支払いで数万円程度かかるので注意しましょう。
本記事では、「相続不動産の名義変更を自分で完了させるマニュアル」として、相続登記の概要、自力で相続登記を進めるべきかの判断基準、相続不動産の名義を変更する具体的な手順を徹底解説します。
目次
相続不動産の名義変更は「相続登記」によって行う
相続した不動産の名義を変更するには、相続登記が必要です。
相続登記とは、亡くなった方が所有していた土地や建物などの名義を、相続人名義に書き換える公的な手続きです。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)へ申請する必要があります。2024年4月1日より申請は義務化されており、3年の期限内に完了しなければ最大10万円の過料の対象になります。
法務省 相続登記の申請義務化特設ページ
相続登記は、登記申請書の作成や書類収集が正しくできれば、自分だけで手続きが可能です。
ただし、相続登記を完了するには遺産分割の話し合いや戸籍の調査など、負担が大きい作業をこなさなければなりません。そのため、登記の専門家である司法書士に代理を依頼するケースが一般的です。
とはいえ、なかには「司法書士に頼らずに自分だけで終わらせた」「相続人が自分だけだったので難しくなかった」というケースも少なからず存在します。
自力で進める場合は、途中で挫折したり、書類の不備が続いたりしないよう、事前に「必要な書類」と「手続きの流れ」をしっかりと把握して計画的に進めることが重要です。
なお、相続時には不動産以外にも、預貯金、自動車、株式、クレジットカードや水道・ガス・電気といった契約関係の名義変更が必要です。
相続不動産の名義変更を自分で進めるメリット
相続不動産の名義変更を自分で進める最大のメリットは、費用を抑えられることです。
相続登記を司法書士に依頼する場合、1件あたり5万~15万円ほどかかります。自力で進めることができれば、かかる費用は書類収集の実費や登録免許税のみで済み、大幅な節約になります。
2024年3月1日から始まった「広域交付請求」のおかげで、被相続人の戸籍を自分でも集めやすくなりました。
広域交付請求を利用すれば、「必要な戸籍が全国各地に点在している」「被相続人の本籍地が自分の住むところから離れている」といったケースでも、自宅や勤務先の近くの窓口で一括で取得できます。
ただし、戸籍が集めやすくなったとはいえ、手続きの難易度が高いこと自体は依然として変わらないので注意しましょう。また、広域交付請求で取得できる戸籍は親、子ども、祖父母、孫などの直系のみで、兄弟姉妹は対象外となります。
電子化された戸籍謄本は「戸籍全部事項証明書」、除籍謄本は「除籍全部事項証明書」と呼びます。これらは呼び方が違うだけで、どちらも同じものであると認識しておいてください。
自分だけで相続登記を進めるべき?判断基準となる6つのチェックポイント
相続登記は自分だけで進められるとはいえ、経験がない方が司法書士抜きで完了させるには難しい手続きです。
相続の内容や権利関係が複雑になるほど、登記実務が初めての方には高いハードルになるでしょう。司法書士でさえ、事案によっては完了までに数か月以上かかることもあります。
もし相続登記を自力で進めることを検討している場合は、事前に「この相続登記は自分の手に負えるのか」「プロに任せるべき事案なのか」を確認しておきましょう。
そこで以下では、「相続登記を自分ですべきかの判断基準」として、以下6つのチェックポイントを紹介します。
- 調べ物や必要書類の読み解きをする時間と根気があるか
- 平日に時間が取れるか
- 相続人の数が多すぎないか
- 相続人同士の争いが発生していないか
- 相続不動産の管理や遺品整理に追われていないか
- 相続登記未了・共有名義など不動産の権利関係が複雑になっていないか
調べ物や必要書類の読み解きをする時間と根気があるか
相続登記の実務を進めるうえでは、日常生活では滅多に見られない「法定相続分」「戸籍謄本」「尊属」などの専門用語が登場します。
戸籍が古いと旧字体を読み解く必要もあるため、「戸籍が読めない」という悩みを抱える方も多くおられます。また、不動産登記法や民法などの法知識に基づいた作業をこなさなければなりません。
これまで登記と縁がなかった方にとっては、耳慣れない言葉や手続きの連続です。そのため、自分で相続登記を行う場合は、「知らない言葉を都度調べる」「登記関係の必要書類を正しく読み解く」という作業に割く時間と根気が求められます。
もし曖昧なまま見よう見まねで進めたとしても、不備があれば法務局から修正を求められて手続きがストップします。不備の修正方法も自分で調べる必要があり、相続登記がいつまでも完了しないという事態になりかねません。
「公的書類を読むのが苦手」「書籍やネットでの調べ物が苦手」といった方は、司法書士への依頼を検討したほうがよいでしょう。
弊社から相続に強い司法書士を紹介して手続きを完了させ、ご相談から約2か月後に無事に不動産を買い取らせていただきました。
平日に時間が取れるか
書類取得や手続きに対応する法務局や役所の窓口は、平日の日中にしか開いていません。例えば、法務局の窓口受付時間は、原則として平日8時30分~17時15分です。
月曜日から金曜日の9〜18時に勤務している会社員が手続きを進めるには、1日または半日分の休みを取る必要があります。
しかし、相続登記手続きは1日や2日で終わるものではありません。とくに自分で進める場合は、「登記相談の予約」「戸籍の請求や受け取り」「登記申請書の補正」などで、各窓口に何度も足を運ぶことになるでしょう。
平日に時間がなかなか取れない方は、司法書士に書類収集や申請手続きを依頼することを推奨します。
相続人の数が多すぎないか
相続人の数が多いほど、相続登記に必要な作業や書類は増加し、手続きの難易度が格段に上がります。
まず相続登記を始めとする相続手続きには、被相続人だけでなく相続人全員の戸籍が必要になります。「相続人全員が生存しているか」「相続人が誰で何人いるか」を、法的に証明するためです。
相続人調査では、相続人の数が多いほど確認すべき戸籍が一気に増えます。例えば、兄弟が相続に絡んだり代襲相続で孫に相続権が発生したりする場合、相続人が10人以上になるケースも想定されます。
この場合、10人以上の戸籍を収集したうえで、「死亡者や行方不明者がいないか」「非嫡出子(隠し子)はいないか」などを調査しなければなりません。
また、戸籍調査の過程で相続人全員と連絡を取り、遺産分割協議書への署名・押印や印鑑証明書の取得をお願いする必要があります。しかし、相続人が多いと連絡が取れない方や、非協力的な方が出てくるリスクも高まります。
逆に言えば、相続人が「夫である自分のみ」「子ども2人だけ」といった少人数なら、自分で相続登記を進めるハードルが比較的低いと言えるでしょう。
このレベルになると、専門家の手を借りずに相続登記を正式に完了させるのは困難と言わざるを得ません。
相続人同士の争いが発生していないか
前提として、相続登記を円滑に進めるには「不動産を誰が相続するか」を決めなければなりません。相続人が「実家は老朽化しているから相続したくない」「弟がアパートを継ぐなんて納得できない」などと争っている場合は、相続登記以前に遺産分割を終わらせる必要があります。
弊社の経験上、相続争いは感情的な対立も多く、相続人同士の話し合いだけでは問題が長引くケースが珍しくありません。相続人同士の争いが激しい場合は、そもそも自分で相続登記を進めるべきかを検討する段階ではないでしょう。
この場合は、司法書士に登記をお願いする以前の問題として、弁護士に紛争の仲裁や代理交渉を依頼すべきです。
相続人同士の紛争解決に対応できるのは、弁護士だけです。遺産分割協議の代理人になれる士業は、代理交渉権の制限がない弁護士のみだからです。
司法書士が対応できるのは、相続登記のほかに、相続人・相続財産の調査や遺産分割協議書の作成、相続放棄の申述書といった裁判所へ提出する書類の作成などが挙げられます。
相続不動産の管理や遺品整理に追われていないか
親族が亡くなると、相続登記やその他相続手続き以外にも、以下の手続きや作業をこなす必要があります。
- 相続不動産内の残置物やその他遺品の整理
- 葬儀や四十九日の手配
- 被相続人の銀行口座の凍結解除
- 被相続人の株式などの名義変更
- 相続不動産が空き家になる場合は、継続的な草木の剪定や設備のメンテナンスなどの管理業務
自分で相続登記を進める場合、上記の肉体的な作業と事務的な作業を並行しなければなりません。例えば、被相続人の銀行口座の凍結解除手続きは、相続登記と同じく戸籍収集や金融機関での手続きが必要です。
相続不動産が遠方にある方は、法務局の窓口や相続不動産へ足を運ぶだけでも一苦労でしょう。
しかし、上記の手続きがおろそかになれば、他の相続人や自分の家族にしわ寄せがいき、大きな負担をかける可能性があります。不満が積み重なると、感情的な対立や関係性の破綻につながるかもしれません。
これらの対応に追われながらも登記準備を進める余裕があるかどうかは、自分で名義変更に対応するかどうかの判断材料になります。
被相続人の銀行口座の凍結解除や株式などの名義変更に関しては、相続登記と同じく司法書士に手続き代理を依頼できます。
相続登記未了・共有名義など不動産の権利関係が複雑になっていないか
以下の権利関係を含む不動産の場合、相続登記やその他相続手続きにかかる負担が大きくなります。
- 「亡くなった親ではなく祖父や曽祖父名義だった」など、過去の相続登記が未了で不動産が被相続人名義になっていなかった
- 相続不動産が、他人と共同で所有している「共有名義」になっている
- 不動産に借地契約(土地賃貸借契約)が存在し、所有者とは別に借地人や地主がかかわっている
権利関係が複雑な不動産ほど、相続手続き時に話し合う内容や遺産分割にあたって調査すべき項目が増え、専門的な法律判断が必要になります。対応を誤ると、共有者や地主などと意見が対立したり、登記申請に不備が出たりするリスクが高くなるでしょう。
上記のようないわゆる「訳あり物件」は、専門家でも対応に苦労するケースが珍しくありません。これまで相続や登記手続きを経験したことがない方では、適切に対応できるケースはほんの一握りです。
相続不動産が訳あり物件に該当する場合は、司法書士に相続登記を依頼することを推奨します。
自分で相続不動産の名義変更を進める手順
ここからは具体的に、自分で相続不動産の名義変更を進める手順を見ていきましょう。
- 相続する不動産の状況や権利関係を確認する
- 不動産を相続する人や評価額を確定させる
- 遺産分割で誰が不動産を相続するかを決定する
- 法務局で相続登記の手続きを進める
- 登記識別情報通知を受領する
相続する不動産の状況や権利関係を確認する
最初に、相続予定の不動産の状況や権利関係を確認します。不動産の調査結果は、今後作成する書類に必要な情報です。
この調査を怠ると、相続登記がスムーズに進まないどころか、遺産分割や相続税申告などの別の手続きに支障をきたすリスクが非常に高くなります。土地と建物は個別に登記が必要になるので、それぞれの情報を正確に把握しておきましょう。
確認する主な情報は、次の通りです。
- 不動産の地番・家屋番号などの住所地情報
- 不動産の現在の名義人
- 被相続人が名義人でない場合は、以前の相続登記の実施状況
- 抵当権の有無
- 共有名義なら各共有者の共有持分割合(1人あたりの所有権の割合)
相続不動産を調査する際は、不動産が所在する市区町村の窓口で「名寄帳」を取得します。名寄帳とは、市区町村が作成する、土地や建物などの固定資産情報を所有者ごとにまとめた台帳です。
名寄帳なら、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する場合と異なり、被相続人の名前さえわかればそこから逆引きして確認できます。名寄帳には所在地、地番、持分割合などの基本情報が載っているほか、自治体によっては非課税不動産が記載されている場合があります。
ただし、名寄帳で確認できるのは同一市区町村にある不動産のみです。また、取得の際には自分が相続人であることを証明する戸籍などが必要になります。
他の市区町村にある不動産を調べる際には、被相続人の固定資産税納税通知書、登記識別情報(登記済権利証)などから課税対象の不動産の所在地を把握し、その所在地を管轄する市区町村から名寄帳を取得してください。
また、抵当権の有無は名寄帳には記載されていないため、名寄帳で判明した地番を基に、法務局で登記事項証明書を取得して確認しましょう。
2026年2月2日からスタートする「所有不動産記録証明制度」なら、自治体ごとの名寄帳を取得する必要がなくなります。
所有不動産記録証明制度とは、被相続人が名義人として登記されている不動産を、法務局が一覧でリスト化してくれる不動産登記法第119条の2上の決まりです。
この制度がスタートすれば、市区町村外に所有していた不動産や、私道などの非課税不動産でも一気に調査しやすくなります。
不動産を相続する人や財産を確定させる
相続対象の不動産の情報が確定したら、次に「誰が相続人になるのか」「相続不動産の評価額はいくらなのか」を確定させる調査に入ります。
相続人と相続財産を明確にしなければ、遺産分割を適切に進められません。相続登記は不動産に関する遺産分割が終わらなければ完了できないので、相続人と相続財産の調査はしっかりと行いましょう。
相続人調査の基本は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得して確認することです。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を辿り、「相続権を持つ血縁は誰か」「前夫・前妻や未婚の相手との間に子どもがいないか」「異父母の兄弟がいないか」を把握し、誰が正式な相続人であるかを確定させます。
戸籍の旧字体を読むのが難しい場合は、法務局や市区町村役場の窓口に相談しましょう。
相続財産調査は、プラスの財産だけではなくマイナスの財産の確認が必要です。銀行や証券口座、自動車、貴金属、金銭消費貸借契約書(借用書やローンの契約書など)などを調査し、「相続人は何を相続するのか」を明確にします。
なお、被相続人が遺言書を作成している場合、相続人や相続割合は原則として遺言書内容が何よりも優先されます。調査時には、自宅や公証役場などに遺言書が残されていないかを必ず確認してください。
相続人・相続財産調査も、専門家に頼らず自分だけで進められます。しかし、相続登記と同じく専門知識が必要になるうえに、調査に膨大な時間と労力を要します。ここで抜け漏れが発生すると遺産分割が難航し、相続登記手続きも滞ってしまうでしょう。
そのため、相続登記を自分で進めたい方であっても、相続人・相続財産調査については弁護士や司法書士に協力を依頼することをおすすめします。
法定相続情報証明制度を利用すると後が楽になる
相続人調査の過程で苦労して集めた「被相続人の出生から死亡までの戸籍」や「相続人全員の戸籍」は、「法定相続情報証明制度」を利用して一覧図として保管することをおすすめします。
法定相続情報証明制度とは、被相続人と相続人の関係を「法定相続情報一覧図」としてまとめ、その写しが戸籍の代わりになり相続関係を簡易的に証明できる制度です。
法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係を家系図のようにまとめた内容を法務局が認証し、公的な証明書として機能させた書類です。
要するに、「分厚い戸籍の束を1枚の紙にまとめられる制度」とお考えください。
自分で作成した一覧図と、一覧図に関する戸籍を提出して登録しておけば、5年間の保管期間中ならいつでも無料で写しの交付を受けられます。そしてその写しを1枚提出すれば、一覧図と関係する戸籍一式をすべて出したことと同じ扱いになります。
法定相続情報証明制度を利用する具体的なメリットは、次の通りです。
- 戸籍の束を何度も準備する必要がなくなる
- 戸籍情報を紛失するリスクを減らせる
- 複数枚の写しがあれば、「A銀行から戸籍が返ってくるまで他の手続きを待つ」といった手間がなくなる
集めた戸籍は、相続不動産の名義変更、金融機関の手続き、相続税申告などで利用します。法定相続情報証明制度を使って戸籍を一覧図にしておけば、相続関係の手続きをスムーズに進められるでしょう。
遺産分割で誰が不動産を相続するかを決定する
相続人・相続財産が確定した後は、遺産分割で「誰に相続させるか」「分配割合はどうするのか」を決定します。遺産分割で不動産を相続することになった方が、原則として相続登記を担当します。
遺言書にて相続内容が決まっていない場合、遺産分割の方法は主に「遺産分割協議」と「法定相続」の2通りです。
| 遺産分割の方法 | 概要 |
|---|---|
| 遺産分割協議 | 相続人全員で相続財産の分け方を話し合う方法 |
| 法定相続 | 民法上の規定に従って相続財産を分配する方法 |
遺産分割協議を選択した場合、相続登記の手続き時に「遺産分割協議書」が必要になります。
なお、被相続人のプラスの財産を被相続人の借金や未払金などに充当し、それでも余ったプラスの財産のみを相続する「限定承認」や、相続権そのものを放棄して初めから相続人でなくなった扱いにする「相続放棄」などが行われるケースがあります。
例えば相続放棄を選択すれば、相続する権利自体がなくなるため、原則として自分で名義変更を行う必要もありません。
相続人全員で話し合って割合を決める「遺産分割協議」
遺産分割協議とは、被相続人の財産を誰がどれくらいの割合で相続するかについて、相続人全員で話し合って決める手続きです。相続人全員が合意しなければ成立しませんが、合意さえあれば「長男が実家を所有する代わりに次男が預貯金をすべて相続する」といった、柔軟な分け方が可能です。
遺産分割協議で「長男が実家を相続する」と決まった場合は、原則として長男が不動産所有者として実家の相続登記を担当します。
遺産分割協議の内容は、遺産分割協議書にまとめ、その書面に相続人全員の押印と署名を行います。遺産分割協議書は相続登記や相続税申告で使用するため、必ず作成して保管しておいてください。
また、遺産分割協議書を作成しておけば、後から相続人同士の言った言わないのトラブルを避けられます。
遺産分割協議の詳細については、以下の記事もご覧ください。
民法で定められた範囲で分割する「法定相続」
法定相続とは、民法で定められた相続の範囲にしたがって財産を分割する方法です。
民法では、誰が優先的に相続人になれるかを決めた「相続順位」と、どのくらいの割合で相続財産を受け取れるかを決めた「法定相続分」が定められています。
法定相続においては、「配偶者+相続順位が一番高い人」が原則として相続人です。配偶者がすでに亡くなっているなどの場合は、「相続順位が一番高い人」が相続人になります。
| 相続順位 | 被相続人との間柄 |
|---|---|
| 配偶者 | 配偶者は常に相続人になる |
| 第1順位 | ・直系卑属(養子を含む) ・子ども、子どもが亡くなっている場合は孫、孫が亡くなっている場合はひ孫など |
| 第2順位 | ・直系尊属 ・父母、父母が亡くなっている場合は祖父母、祖父母が亡くなっている場合は曽祖父母など |
| 第3順位 | 兄弟姉妹、甥姪 |
例えば、被相続人の配偶者と子どもがいる場合は配偶者と子どもが相続人です。配偶者が亡くなっており、被相続人の子どもと父親がいる場合は、子どものみが相続人になります。
第3順位の兄弟姉妹が相続人になるケースは、子ども・孫や親・祖父母などが誰もいない場合です。
配偶者と子ども2人で不動産を相続する場合、不動産は3人全員で所有することになります。この場合、相続登記で被相続人から配偶者・子ども2人の共有名義に変更します。
相続割合などの法定相続の詳細については、以下の記事もご覧ください。
法務局で相続登記の手続きを進める
不動産を誰が相続するか決まったら、法務局で相続登記の手続きを進めましょう。相続登記手続きで必要な作業は、主に次の通りです。
- 相続登記に必要な書類を準備する
- 登記申請書を作成する
- 相続不動産の所在地を管轄する法務局で申請手続きを行う
必要書類の取得方法や登記申請書の作成方法は、本記事の「相続登記に必要な書類と取得方法」にて解説します。
管轄の法務局がどこになるのかは、法務局公式ホームページの「管轄のご案内」にて検索可能です。
相続登記の申請には、以下3つの方法があります。自身の状況に合わせて、最適なものを選んでください。
| 相続登記の申請方法 | 概要 |
|---|---|
| 法務局の窓口 | ・管轄の法務局の窓口へ直接足を運んで申請する ・不備があっても、訂正印などがあればその場ですぐに修正できる ・自分で相続登記を進める場合は、窓口での直接申請がおすすめ |
| 郵送 | ・管轄の法務局に書留で郵送する ・管轄の法務局が遠方にあっても手続きができる、夜間や土日でもポスト投函で書類を提出できるなどのメリットがある ・書類の不備があった場合は、直接窓口に赴くか返送された書類を修正して送り返す手間が発生する |
| オンライン申請 | ・自宅のパソコンなどを利用して、オンライン上で大部分の手続きを進める方法 ・管轄の法務局が遠方にあっても手続きできるうえに、不備があった場合もオンライン上で修正できる ・インターネット環境やマイナンバーカードが必要であり、添付書類は別途持参や郵送が必要 |
登記申請書や添付書類に少しでも不備があると、登記は完了しません。後日、法務局から補正のための呼び出しや書類の返送が行われます。
登記申請書や法定相続情報一覧図・相続関係説明図の作成、および提出書類の準備などには、高い専門知識および正確性が求められます。
とくに登記申請書は記載内容の専門性の高さや厳格な書式などから、自分だけで作成するのは非常に難しいのが実情です。わからないところがある場合は、法務局に直接相談したり、公式ホームページにある手順書を確認したりしてしっかり対応してください。
「ウェブ登記手続案内」を利用すれば、事前に登記申請のアドバイスや書類のチェックなどを受けられます。ただし利用時間は1回につき20分なので、相談内容や必要書類はあらかじめ準備しておきましょう。
また、申請時には「登録免許税」の納付も必要です。登録免許税については、「相続不動産の名義変更を自分で進める際にかかる費用」で詳しく解説します。
原本還付について
原本還付とは、相続登記やその他相続手続きで提出する戸籍や住民票などの原本を、原寸大コピーと一緒に提出することで、原本を返してもらえる仕組みです。原本還付を利用すれば、同じ書類を何度も取得する必要がなくなります。
とくに、遺産分割協議書や遺言書などは1枚しか存在しないため、必ず原本還付を利用しましょう。
窓口で直接相続登記を進める方法
相続不動産を管轄する法務局の窓口に出向き、登記申請書や必要書類一式を直接提出します。もし形式的な不備があれば担当者が指摘してくれるので、その場ですぐに修正できます。
ただし、その場で修正するには、訂正印として「登記申請書に押印した印鑑」が必要です。窓口に赴く際には、登記申請書に押印した印鑑を持参してください。
登記が完了した後は、再び窓口に足を運び、登記識別情報や戸籍の原本などの返却を受けましょう。受け取りには、本人確認書類と登記申請書に押印したものと同じ印鑑が必要です。
郵送で相続登記を進める方法
郵送で相続登記を進める場合は、登記申請書や必要書類一式を封筒に入れ、書留郵便やレターパックプラスで管轄の法務局へ送付します。封筒の表面には、「不動産登記申請書在中」と朱書きで記載してください。
登録免許税の納付は、登記申請書に金額分の収入印紙を貼り付けて行います。
提出した戸籍などの原本の返却や郵送での登記識別情報送付を希望する場合は、書留用の切手を貼った返信用封筒も同封しておきましょう。
オンライン申請で相続登記を進める方法
オンライン申請で登記を進める場合、パソコンに申請用のソフトをインストールする必要があります。
まず「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスし、申請者情報を登録しましょう。申請者IDとパスワードを取得した後は、申請用総合ソフトをダウンロードしてパソコンにインストールします。
申請用総合ソフトのダウンロード手引は、公式ホームページから入手可能です。
また、オンライン申請にはマイナンバーカードの電子証明書やICカードリーダライタも必要になります。
一通りの準備ができたら、申請用総合ソフトを使って申請情報を入力し、管轄の法務局に送信してください。登録免許税の支払いは、同じく申請用総合ソフトから電子納付で行えます。
申請情報を入力したとしても、戸籍などの必要書類は法務局窓口への持参や郵送が必要です。
オンライン申請と聞くと、一見便利な印象を受けます。しかし、実際には「ソフトの設定が手間である」「必要書類は別途提出が必要になる」といった理由があるため、ITスキルに自信がない場合は窓口申請や郵送申請のほうが結果的に早く終わるケースが多いです。
なお、登記・供託オンライン申請システムの利用時間は平日8:30~21:00までです。オンライン申請の準備や登記方法については、法務省動画チャンネルで動画が配信されています。
登記識別情報通知を受領する
相続登記手続きに問題がなければ、1~2週間程度で審査は完了します。登記が終わった後は、法務局から登記識別情報通知の交付を受けてください。
登記識別情報通知とは、従来の登記済権利証に代わる重要な書類です。12桁の英数字からなるパスワードのようなもので、不動産の権利者であることを証明するための重要な情報となります。
今後、不動産の売買契約や住宅ローンの借り入れなどで必要になるため、紛失しないよう大切に保管しましょう。
登記識別情報通知は、原則として再発行できません。もし紛失した場合は「事前通知制度」や「本人確認情報」など、別の手段で権利者であることを証明する必要があります。
受け取った登記識別情報通知の目隠しシールなどは、剥がさないようにしましょう。これは第三者に番号を盗み見られることを防ぐ目的がある重要なものです。剥がしてしまうと、不正利用の危険性が高まり、権利証としての信頼が失われるリスクがあります。
相続登記に必要な書類と取得方法
自分で相続不動産の名義変更を完了させるには、必要書類をいかに効率よく収集できるか、正確に作成できるかが成功の鍵を握ります。
まずは相続登記に必要な書類について、「遺言書での相続」「遺産分割協議による相続」「法定相続」の3つに分けてまとめました。
【遺言書】
| 対象者・作成者 | 書類の名称 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 | ・本籍地の市区町村役場 ・各市区町村役場で一括請求が可能 |
遺言書の内容に基づき必要な分を取得する |
| 住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地または本籍地の市区町村役場 | 登記簿上の住所・本籍と住民票上の住所とをつなぐために利用 | |
| 遺言書 | ・自筆証書遺言なら自宅または法務局(保管制度利用時)など ・公正証書遺言なら作成した公証役場 |
・自筆証書遺言は原則として家庭裁判所の検認が必要 ・自筆証書遺言でも保管制度を利用している場合は検認不要 ・公正証書遺言は検認不要 |
|
| 相続人 | 戸籍謄本または戸籍抄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | ・被相続人の死亡時点での法定相続人であることを証明する書類 ・死亡日以降に発行されたもの |
| 新しい所有者となる相続人 | 住民票 | 住所地の市区町村役場 | 相続登記後の登記簿に記載される住所を証明する書類 |
| 固定資産評価証明書または固定資産課税明細書 | ・不動産所在地の市区町村役場 ・登記申請をする年度のもの |
登録免許税の課税価格を確認するために使用 | |
| 新しい所有者となる相続人または代理人 | 登記申請書 | 書式は法務局の公式ホームページからダウンロード、または法務局窓口で入手可能 | 「相続による所有権移転登記」の申請内容を記載する書類 |
| 法定相続情報一覧図 相続関係説明図 |
自作する | 提出すると戸籍類の原本還付を受けやすくなる任意書類 |
【遺産分割協議】
| 対象者・作成者 | 書類の名称 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 | ・本籍地の市区町村役場 ・各市区町村役場で一括請求が可能 |
相続人を確定するために、在籍していたすべての戸籍が必要 |
| 住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地または本籍地の市区町村役場 | 登記簿上の住所・本籍と住民票上の住所とをつなぐために利用 | |
| 相続人 | 戸籍謄本または戸籍抄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | ・被相続人の死亡時点での法定相続人であることを証明する書類 ・死亡日以降に発行されたもの |
| 印鑑証明書 | ・各相続人の住所地の市区町村役場 ・遺産分割協議書へ押印した印鑑が登録されているもの |
遺産分割協議書に実印を押印するために添付 | |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員で作成 | 不動産の取得者・持分など遺産分割の内容を明記し、相続人全員の署名・実印押印が必要 | |
| 新しい所有者となる相続人 | 住民票 | 住所地の市区町村役場 | 相続登記後の登記簿に記載される住所を証明する書類 |
| 固定資産評価証明書または固定資産課税明細書 | ・不動産所在地の市区町村役場 ・登記申請をする年度のもの |
登録免許税の課税価格を確認するために使用 | |
| 新しい所有者となる相続人または代理人 | 登記申請書 | 法務局の公式ホームページからダウンロード、または法務局窓口で入手可能 | 「相続による所有権移転登記」の申請内容を記載する書類 |
| 法定相続情報一覧図 相続関係説明図 |
自作する | ・提出すると戸籍類の原本還付を受けやすくなる任意書類 |
【法定相続】
| 対象者・作成者 | 書類の名称 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 | ・本籍地の市区町村役場 ・各市区町村役場で一括請求が可能 |
相続人を確定するために、在籍していたすべての戸籍が必要 |
| 住民票の除票または戸籍の附票 | 最後の住所地または本籍地の市区町村役場 | 登記簿上の住所・本籍と住民票上の住所とをつなぐために利用 | |
| 相続人 | 戸籍謄本または戸籍抄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | ・被相続人の死亡時点での法定相続人であることを証明する書類 ・死亡日以降に発行されたもの |
| 印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 原則として提出は不要だが、申請内容によっては求められる場合あり | |
| 新しい所有者となる相続人 | 住民票 | 住所地の市区町村役場 | 相続登記後の登記簿に記載される住所を証明する書類 |
| 固定資産評価証明書または固定資産課税明細書 | ・不動産所在地の市区町村役場 ・登記申請をする年度のもの |
登録免許税の課税価格を確認するために使用 | |
| 新しい所有者となる相続人または代理人 | 登記申請書 | 法務局の公式ホームページからダウンロード、または法務局窓口で入手可能 | 「相続による所有権移転登記」の申請内容を記載する書類 |
| 法定相続情報一覧図 相続関係説明図 |
自作する | ・提出すると戸籍類の原本還付を受けやすくなる任意書類 |
参考:法務省「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
各種書類は、提出時にホッチキスなどであらかじめまとめておきます。実務上は、以下の資料のようにまとめるケースが多いです。
法務局 相続登記ガイドブック
まとめると、「登記申請書+収入印紙」「原本還付を希望する添付書類のコピー」「原本還付を希望する添付書類の原本」「その他書類」の4区分に分け、区分ごとに契印をします。
原本還付を利用する場合は、返還を求める原本のコピーをひとまとめにし、一番上に「原本に相違ありません」と記載して、署名・押印を行います。
以下では、必要書類の詳細や入手・作成方法について解説します。
登記申請書
登記申請書の書式は、法務局の公式ホームページからダウンロードして使用するのが一般的です。 記載事項や余白の取り方などが細かく決まっているため、ひな形を利用するのが無難です。
登記申請書の書式をダウンロードしたら、以下に挙げた公式ホームページの記載例などを確認しながら作成していきましょう。
法務局 登記申請書
相続登記の場合は、申請書には以下の項目を記載します。事前に固定資産評価証明書や登記事項証明書などを準備しておくと、スムーズに作成できます。
| 相続登記申請書に記載する項目 | 相続登記の場合に記載する内容 |
|---|---|
| 登記の目的 | ・どのような登記を行うのかを記載 ・被相続人から相続人に所有権が移転することから「所有権移転」と記載 |
| 原因 | ・相続登記が必要になった原因の発生日などを記載 ・被相続人が亡くなった年月日を「令和◯年◯月◯日相続」と記載 |
| 相続人 | ・不動産の被相続人と相続人の情報を記載 ・最初に被相続人の氏名をかっこ書きで記載 ・次に相続人の氏名・住所を記載(複数人いる場合は持分割合も併せて全員分を記載) |
| 氏名ふりがな、生年月日、メールアドレス | ・相続登記の義務化に伴い、2025年4月21日より記載が必要 ・相続人の氏名ふりがな、生年月日、メールアドレスを全員分記載 |
| 添付情報 | ・登記申請書に添付する各種情報について記載 ・相続登記の場合は登記原因証明情報、住所証明情報、評価証明書を記載するケースが一般的 ・司法書士に代理申請を任せる際には代理権限証書も記載 |
| 申請年月日と申請する法務局 | 相続登記を申請する年月日と申請先となる法務局を記載 |
| 課税価格 | ・登録免許税の算出根拠となる不動産の課税価格 ・原則として固定資産評価証明書や固定資産税課税証明書などに記載された評価額を転載 ・1,000円未満の数字は切り捨てて記載 |
| 登録免許税 | ・納付する登録免許税の金額 ・課税価格 × 0.4%で算出 |
| 不動産の表示 | ・登記事項証明書に記載された不動産番号、住所、地積(床面積)などを正確に記載 ・マンションの場合は一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の表示なども記載 |
登記申請書は、パソコン上で作成しプリンターで印刷するのが基本です。手書きの場合は、黒ボールペンなど時間経過で消えない筆記用具で作成しましょう。
用紙サイズはA4、複数枚にわたる場合は、ページとページの間に契印が必要です。
登記申請書を作成する際に注意したいのは、住所の書き方です。省略せず、漢数字と算用数字を正しく使い分ける必要があります。
基本的に不動産の表示の欄は、登記事項証明書の内容を一言一句そのまま転載してください。
以下では、不動産を「1人で相続する場合」と「2人の共有名義として相続する場合」での記載例を紹介します。

一般的な分譲マンションを相続する場合も、不動産表示は登記事項証明書などの記載内容を正確に書き写します。
法務局 登記手続ハンドブック
登記申請書の作成は、相続登記手続きのなかでも難易度が高い作業です。わからないところがあれば、都度調べたり法務局の事前相談を利用したりしてください。
登記事項証明書
登記事項証明書は、申請時に提出する必要はありませんが、登記申請書に記載する不動産情報を正確に書き写すための見本として必須です。不動産番号、所在、地番・家屋番号など、必要な不動産情報がほとんど載っています。
長野県 全部事項証明書について
登記事項証明書は、法務局の窓口での請求や、インターネットを利用したオンライン請求などで取得できます。オンライン請求は、「登記情報提供サービス」で手続きできます。
窓口での書面請求は1通あたり600円、オンライン請求の郵送受取は520円、オンライン請求の窓口受取は490円です。
戸籍謄本などの戸籍一式
相続登記手続きでもっとも時間がかかるのが、被相続人および相続人の戸籍集めです。以下では、相続登記手続きで必要な戸籍を一覧でまとめました。
| 戸籍の種類 | 概要 |
|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 個人の出生、結婚、死亡、本籍、親族関係などの個人情報がまとめられたもの |
| 除籍謄本(除籍全部事項証明書) | 死亡や結婚、本籍地の転籍などで、載っていた人全員がいなくなった戸籍の写し |
| 改製原戸籍 | 法改正以前の古い様式の戸籍 |
東京都北区 区民事務所で発行する戸籍の証明書
東京都北区 区民事務所で発行する戸籍の証明書
各種戸籍を入手する場合は、お近くの市区町村の窓口で、広域交付請求を利用して一括請求できます。
ただし、被相続人の兄弟姉妹や甥姪の戸籍は制度の対象外なので、それぞれの本籍地の市区町村の窓口に郵送請求する必要があります。
相続登記申請時に収集する戸籍は、主に次の通りです。
- 被相続人:出生から死亡まで、在籍していたすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
- 相続人:被相続人の死亡日以降に発行された戸籍謄本(戸籍抄本でも可能だが、他の相続手続きでも使うことを考えると戸籍謄本が望ましい)
1通あたりの取得にかかる費用は、戸籍謄本450円、除籍謄本750円、改製原戸籍750円です。
住民票や住民票の除票
「相続人の住民票」と、「被相続人の住民票の除票または戸籍の附票」も取得します。
住民票の除票とは、死亡や転出などで住民登録が消去された後の住民票の記録です。
戸籍の附票は、戸籍とともに保管されている「戸籍が作成された時点、またはその戸籍に入籍してからの住所の異動」が記された書類です。
住民票や住民票の除票、戸籍の附票の取得費用は、1通あたり300円程度が一般的になります。ただし、住民票に関しては、自治体によって150円や200円で取得できる場合もあります。
ここで注意したいのが、マイナンバー(個人番号)が載せられた書類だと、法務局に受け取ってもらえないリスクがある点です。これは、不動産登記実務ではマイナンバーの利用権限がなく、法務局が受け取ってしまうと法的な問題が発生する可能性があるからです。
そのため、住民票を取得する際には、本籍地あり・マイナンバーなしのものを取得しましょう。
法定相続情報一覧図・相続関係説明図
法定相続情報一覧図および相続関係説明図は、自分で作成する必要があります。これらは戸籍があれば提出しなくてもよいものの、戸籍の原本還付を受けるために実務上は作成しておくのが一般的です。
法定相続情報一覧図は、主な法定相続情報一覧図の様式および記載例を参考に、サイズや余白を確認して作成してください。様式を厳守しないと、法務局の認証を受けられなくなります。
一方で、相続関係説明図の様式は自由ですが、法定相続情報一覧図を参考にするのが無難です。
法務局 登記申請書
法定相続情報一覧図のメリットは、法務局の認証を受けることで、公的文書としての証明力を持てる点です。準備しておけば、相続登記以外の相続手続きにも利用できます。
一方で相続関係説明図は手軽に作成できる反面、公的な証明力はありません。利用できるのは、相続登記のみになります。
相続手続き先が少ない場合は「相続関係説明図」で済ませ、多い場合は「法定相続情報一覧図」を作成するという考え方が一般的です。
法定相続情報一覧図や相続関係説明図を作成するには、被相続人の戸籍一式・住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本・住民票または戸籍の附票が必要です。
法定相続情報一覧図として認証を受けるには、作成した一覧図と上記の必要書類を準備したうえで、対象の法務局にて申出します。
対象の法務局は、「被相続人の本籍地」「被相続人の最後の住所地」「申出人の住所地」「被相続人名義の不動産の所在地」のいずれかを管轄するところです。
以下の申請書を作成し、一覧表と必要書類と一緒に、窓口へ持参するか郵送で提出しましょう。
問題がなければ法定相続情報一覧図の手続きが完了し、写しを法務局の窓口または指定の住所への郵送による受取が可能になります。申出人であれば、申出日の翌年から5年間経過するまで再交付を受けられます。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、不動産などの固定資産の評価額を証明する書類です。相続登記にかかる登録免許税の計算に必要な不動産の価格を証明するために取得します。
東京都 固定資産評価証明書の見方
登録免許税の計算には、固定資産評価証明書の「価格」を用います。この価格は、「固定資産税評価額」のことです。
固定資産税や都市計画税の計算基準となる「固定資産税課税標準額」とは異なるので注意しましょう。
固定資産評価証明書は、不動産が所在する市区町村役場の窓口で請求します。
取得費用は、1通あたり300円程度です。請求時には、本人確認書類のほか、除籍謄本のような被相続人が亡くなったことがわかる書類などが必要です。
なお、価格を確認するだけであれば被相続人宛てに毎年届く「固定資産税課税明細書」や、被相続人の名寄帳を確認する方法もあります。
ただし、これらは相続登記の添付書類としては原則使えないので注意しましょう。
また、固定資産評価証明書を登記申請書に添付する場合は年度の確認が大切です。新年度である4月1日になると内容が切り替わるため、4月1日以降に相続登記を行う場合は、4月1日以降に取得した固定資産評価証明書が必要です。
遺産分割協議書
遺産分割協議の合意内容をまとめた遺産分割協議書も、相続登記を申請する際に提出します。
遺産分割協議書に決まった書式はないものの、合意内容は漏れなく正確に記載するようにしましょう。不動産に関する内容なら、「相続不動産の所在や地番などの情報」「不動産の名義人になる人」「共有名義なら共有持分割合」に間違いがないかを必ず確認しておいてください。
以下では、法務局が公開している遺産分割協議書の記載例を紹介します。
法務局 遺産分割協議書
遺産分割協議書には、相続人の署名および市区町村に印鑑登録された実印による押印が全員分必要です。また、後述する印鑑証明書の添付も忘れないようにしましょう。
遺産分割協議書が2枚以上におよぶ場合は、ページとページのつなぎ目に契印を行います。
印鑑証明書
遺産分割協議書の押印に使用した実印の「印鑑証明書」を、印鑑登録した市区町村から取得しておきます。
岐阜市 印鑑登録証明書が必要なとき
印鑑証明書は、市区町村役場の窓口、マイナンバーカードがあればコンビニで入手できます。ただし、相続人全員分を提出するため、他の相続人にも協力してもらう必要があります。
取得費用は、1通あたり300円程度です。
なお、不動産を買ったり銀行口座を作ったりするときは発行後3か月や6か月以内の印鑑証明書を求められますが、相続登記の手続きにおいては有効期限がありません。
遺言書
被相続人が遺言書を遺していた場合は、相続登記申請時に遺言書を添付します。申請内容が、遺言書の内容と相違ないようにしましょう。
もし遺言書が「自筆証書遺言」だった場合は、家庭裁判所の検認を受け、遺言書の形状や状態を確認してもらうことで偽造や変造を防ぎます。ただし、自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言や、公正証書遺言に関しては検認が不要です。
封印されている遺言書を家庭裁判所外で勝手に開封すると、最大5万円の過料の対象になるので注意してください。
遺言書については、以下の記事にて詳しく解説しています。
相続不動産の名義変更を自分で進める際にかかる費用
相続不動産の名義変更を自分で進める場合でも、書類取得の手数料や実費、相続登記時に支払う登録免許税などがかかります。
また、通常の相続であれば不動産取得税はかかりませんが、もともとの相続人以外の人が遺言書で不動産をもらう「遺贈」の場合は、不動産取得税が発生する可能性があります。
書類取得にかかる費用や交通費などの実費
以下では、相続登記に必要な書類の取得費用をあらためてまとめました。市区町村によって若干金額が異なる場合があるので、一般的な金額を記載しています。
| 相続登記に必要な書類 | 1枚(1通)あたりの取得費用 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | ・法務局の窓口請求:600円 ・オンライン請求(窓口交付):490円 ・オンライン請求(郵送交付):520円 |
| 戸籍謄本 | 450円 |
| 除籍謄本 | 750円 |
| 改製原戸籍 | 750円 |
| 住民票 | 300円 |
| 住民票の除票 | 300円 |
| 戸籍の附票 | 300円 |
| 固定資産評価証明書 | 300円 |
| 印鑑証明書 | 300円 |
1通あたりの費用はそこまで高くはないものの、相続内容によっては何十通も取得する必要があります。
とくに、相続人である子どもの代わりに孫が相続する「代襲相続」や、被相続人以前の代も相続登記が完了していない状態で相続が続いていた「数次相続」が発生していた場合は、戸籍だけでも20通、30通以上になるかもしれません。
書類取得にかかる費用以外には、法務局までの交通費、郵送関係の手続きにかかる費用などがかかる可能性があります。
相続登記の登録免許税
相続登記の登録免許税の計算式は、次の通りです。
【相続登記の登録免許税の計算式】
不動産の固定資産税評価額 × 0.4%
相続登記の登録免許税の計算には、以下のルールがあります。
- 共有名義の場合は、共有者の共有持分割合ごとに計算する
- 評価額の1,000円未満の金額は切り捨てる
- 算出した登録免許税額のうち、100円未満は切り捨てる
では実際に、相続登記の登録免許税の簡単なシミュレーションを見ていきましょう。条件は、「固定資産税評価額の合計額2,000万850円」「共有持分2分の1を相続」です。
・固定資産税評価額は共有持分1/2を反映して1,000万425円
・425円を切り捨てて1,000万円
・登録免許税=1,000万円×0.4%=4万円(100円未満がないので切り捨てなし)
・登録免許税額は4万円
登録免許税の納付は、原則として登記申請書、または収入印紙貼付台紙に登録免許税額分の収入印紙を貼り付け、申請時に一緒に提出します。また、納付書を利用した現金納付や、オンライン申請時の電子納付などがあります。
貼り付けた収入印紙には、割印や消印しないように注意しましょう。
なお、2027年3月31日までに100万円以下の土地を相続する場合は、登録免許税が免税になる措置があります。
【補足】遺贈で取得した場合は不動産取得税
遺産分割協議、法定相続、遺言書による相続のいずれにおいても、法的に正式な相続人が不動産を相続した場合は不動産取得税がかかりません。
一方、遺言書によってもともと相続人でなかった人が不動産を取得した場合、それが「特定遺贈」に該当すると不動産取得税が発生します。
遺贈で発生する不動産取得税の計算式は、次の通りです。
【遺贈時の不動産取得税の計算式】
・土地と住宅:不動産の評価額(原則として固定資産税評価額)×3%
・土地と住宅以外:不動産の評価額×4%
例えば、特定遺贈で評価額1,000万円の土地を取得した場合は、不動産取得税30万円が発生します。
なお、宅地や市街化区域内農地等宅地を2027年3月31日までに取得した場合に限り、課税標準額が2分の1になる特例があります。
自分で進めるのが難しい際は司法書士に依頼するのがおすすめ
ここまで自分で手続きを進める方法を解説してきましたが、「想像以上に大変そうだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。 平日日中に何度も役所へ行けない方や、書類作成に不安がある方は、登記の専門家である「司法書士」への依頼をおすすめします。
司法書士に依頼するメリットは、次の4つです。
- 戸籍関係の書類収集を任せられる
- 登記申請書や相続関係説明図などの書類を作成してくれる
- 法務局での手続きを代理で進めてくれる
- 名義変更以外の相続手続きについて相談できる
以下では、相続登記を司法書士に依頼するメリットを具体的に見ていきましょう。
被相続人が遺言書を残している場合、遺言執行者を指定しているケースがあります。遺言書の内容に応じた名義変更や遺産分割の取りまとめは、原則として遺言執行者が担当しなければなりません。しかし、司法書士になら遺言執行者の代理人として遺言執行業務を委任できます。
司法書士のメリット1.戸籍関係の書類収集を任せられる
司法書士は、職務上請求によって、相続人の代わりに戸籍関係の書類を収集できます。「平日に役場に行く時間がない」「古い戸籍を読み解いて全国の役場を辿るのが難しい」といった方にとって、非常に大きなメリットと言えるでしょう。
司法書士のメリット2.登記申請書や相続関係説明図などの書類を作成してくれる
司法書士なら、相続登記手続きの際に法務局に提出する各種書類を正確に作成してくれます。作成を任せられる書類は、主に次の通りです。
- 登記申請書
- 相続関係説明図
- 法定相続情報証明制度における法定相続情報一覧図
- 遺産分割協議書
いずれの書類も、一字一句の誤りも許されず、不備があると度重なる修正が必要になったり、相続トラブルの原因になったりする厳格なものです。司法書士が作成した書類なら、相続登記だけでなく、他の相続手続きにも安心して使い回せるでしょう。
司法書士のメリット3.法務局での手続きを代理で進めてくれる
司法書士は、法務局での相続登記手続きの代理人になれます。
「法務局が開いている時間に何度も窓口に行けない」といった方でも、原則としてすべての申請手続きを司法書士に任せられます。依頼者本人が、法務局に出向く必要がありません。
司法書士のメリット4.名義変更以外の相続手続きについて相談できる
司法書士が対応できる業務は、不動産の名義変更だけではありません。 相続に強い司法書士であれば、以下のような手続きもまとめて相談に乗ってくれます。
- 銀行口座の解約・払い戻し手続き
- 証券口座の名義変更
- 住宅ローンの抵当権抹消手続き
ただし、相続争いの代理交渉や相続税申告の代理などは、司法書士の業務範囲外です。代理交渉は弁護士、相続税申告は税理士に依頼しましょう。
まとめ
不動産を相続した際の名義変更は、相続登記で行います。
自力で行うには専門知識が必要なうえに時間と労力がかかるため、まずは「本当に自分だけで進めるべきか」をしっかり検討しましょう。
戸籍の収集、遺産分割協議、登記申請書の作成などは専門的な手続きではあるものの、正しい手順と必要書類を把握すれば、自分で行うことは可能です。
一方で、「相続人の数が多い」「権利関係が複雑」「平日に時間が取れない」という状況であれば、無理をせず司法書士に依頼することをおすすめします。
相続不動産の名義変更を自分でする際によくある質問
名義変更が完了するまでどれくらいの時間がかかりますか?
個々の事情によりますが、一般的には1~2か月程度を見ておくとよいでしょう。 これには、戸籍を集めたり書類を作ったりする「準備期間」と、法務局での「審査期間」が含まれます。
相続人が多いなど複雑な事案なら2か月以上かかることもありますし、そもそも遺産分割の話し合いがまとまらない場合は、1年以上解決しないケースも珍しくありません。
相続不動産の名義変更をしないままだとどうなりますか?
相続不動産の名義変更をしないまま放置すると、以下のリスクが想定されます。
- 最大10万円の過料の対象となる
- 名義変更をしない限り相続不動産の売却や担保設定ができない
- 子どもや孫の代にまで相続人が増え続ける数次相続になり相続トラブルが発生しやすくなる
名義変更しないリスクについては、以下の関連記事もご覧ください。
相続不動産を活用するプランがないのですが放置しても問題ないでしょうか?
相続登記を完了した場合でも、活用せずそのまま放置していると以下のリスクが想定されます。
- 建物が特定空き家などに指定されると、住宅用地の特例が解除され、固定資産税が最大6倍になる
- 不動産を所有し続ける限り、維持管理費や固定資産税の支払いが続く
- 放置して老朽化した建物が倒壊し、周辺の住民に被害が出て損害賠償請求に発展する
- 相続不動産の管理責任や義務について相続人同士で押し付け合いになる

















