不動産の法定相続持分は売却できる?売却方法や注意点を解説

法定相続持分の売却には、遺産分割前に自分の相続分そのものを他の相続人や第三者へ譲渡する方法と、相続登記後に不動産の共有持分を売却する方法があります。

このうち、遺産分割前に売却できる「相続分」とは、遺産全体に対する相続人の取り分を指します。そのため、相続分そのものを譲渡すると、不動産だけでなく預貯金などを含む遺産全体に対する権利を譲渡することになります。

一方、不動産の共有持分だけを売却する場合は、相続登記をしたうえで売却します。このように、法定相続持分の売却方法は、売却する権利や遺産分割の状況によって異なります。

不動産の法定相続持分を売却する方法は、大きく次の3つです。

売却方法 概要
遺産分割前に「法定相続分」を売却する 遺産全体に対する自分の相続分を、他の相続人や第三者へ譲渡する
遺産分割前に「法定相続分で相続登記した共有持分」を売却する 法定相続分どおりに相続登記をしたうえで、不動産の共有持分だけを売却する
遺産分割後に「合意した割合で相続登記した共有持分」を売却する 遺産分割で不動産の取得者や持分割合を確定し、相続登記をした後に共有持分を売却する

遺産分割から早く離れたいのか、不動産の共有持分だけを現金化したいのかによって、適した売却方法は異なります。また、遺産分割前に共有持分を売却すると、その後の遺産分割の内容によっては権利関係や登記手続きが複雑になることもあるため、状況に応じた方法を選ぶことが大切です。

当記事では、不動産の法定相続持分を売却する3つの方法や、それぞれに向いているケース、売却時の注意点について解説します。

なお、株式会社クランピーリアルエステートは、1,600を超える士業と連携している不動産会社です。遺産分割前でも、法定相続分どおりに相続登記した共有持分であれば買取に対応していますので、「遺産分割がまとまらないものの共有持分を早めに現金化したい」といった場合にはお気軽にご相談ください。

※本記事では、「法定相続持分」を不動産相続における持分を表す便宜上の表現として使用しています。

相続発生時の法定相続分の前提知識

最初に、法定相続分や相続した不動産の持分を売却する方法について理解するうえで、必要な前提知識を紹介します。

  • 法定相続分とは|民法で定められた相続財産の取り分を指す
  • 法定相続分の決まり方|相続順位と相続人の組み合わせで決まる
  • 遺産の分け方|原則として遺言書の内容が優先される
  • 遺産分割協議がまとまらない場合|調停・審判で解決を図る

法定相続分とは|民法で定められた相続財産の取り分を指す

法定相続分とは、民法第900条などで定められた、各法定相続人が相続する遺産の割合です。誰が法定相続人になるか、また相続人の組み合わせによって割合が決まります。

法定相続人や法定相続分は、法律上の親族関係や相続人の組み合わせによって決まります。そのため、親の離婚後に長年会っていない子であっても、法律上の親子関係が続いていれば、交流がないことを理由に法定相続分が減ることはありません。

法定相続分の決まり方|相続順位と相続人の組み合わせで決まる

法定相続分は、被相続人との続柄や相続人の数によって決まります。

相続人が2人以上いる場合の法定相続分について、相続人の組み合わせに応じて、民法第900条では以下のように規定しています。

民法第900条 相続人 法定相続分
第1号 子と配偶者 配偶者と子、それぞれ二分の一
第2号 配偶者および直系尊属(親、祖父母) 配偶者三分の二、直系尊属三分の一
第3号 配偶者および兄弟姉妹 配偶者四分の三、兄弟姉妹四分の一
第4号 ・子が複数いる場合
・同じ親等の直系尊属が複数いる場合
・兄弟姉妹が複数いる場合
原則:各人の相続分は同じ
例外:父母の一方のみが同じ兄弟姉妹は、父母双方が同じ兄弟姉妹の二分の一

被相続人が亡くなった際の配偶者は、常に相続人となります。ただし、離婚した配偶者はもとより、婚姻届を出していない内縁関係や事実婚のパートナーは法定相続人にはなりません。

たとえば、配偶者と3人の子どもが相続人の場合、それぞれの法定相続分は次のようになります。

配偶者:1/2
子:それぞれ1/6(子ども3人の相続分1/2 × 1/3)

また、被相続人に子どもや直系尊属がなく、配偶者と3人の兄弟姉妹が相続する場合の相続分は次の通りです。

配偶者:3/4
兄弟姉妹:それぞれ1/12(兄弟姉妹3人の相続分1/4 × 1/3)

また、配偶者以外の親族には相続順位が定められています。

第1順位 子(もしくは代襲相続人)
第2順位 直系尊属(最も親等が近い)
第3順位 兄弟姉妹(もしくは代襲相続人)

第2順位の相続人は第1順位の相続人がいない場合、第3順位の相続人は第1・第2順位の相続人がいない場合に相続人となります。

なお、子どもと兄弟姉妹には、代襲相続が認められています。

代襲相続とは、被相続人の子どもが相続開始前に亡くなっている場合などに、その子ども(被相続人の孫)が代わって相続する制度です。孫も相続開始前に亡くなっている場合などは、その子ども(被相続人のひ孫)が代襲相続します(再代襲)。

また、兄弟姉妹にも代襲相続は認められ、兄弟姉妹が相続開始前に亡くなっている場合などは、その子ども(被相続人の甥・姪)が代襲相続します。もっとも、兄弟姉妹には、子どものように再代襲は認められません。

遺産の分け方|原則として遺言書の内容が優先される

法定相続分は民法で定められた相続割合ですが、実際の遺産の分け方が必ず法定相続分どおりになるわけではありません。有効な遺言書がある場合は、原則としてその内容が優先され、被相続人の意思に従って遺産を分けます。

たとえば、父が亡くなり、相続人が妻・長男・次男の3人だったとします。法定相続分は妻が1/2、長男と次男がそれぞれ1/4ですが、遺言書に「家は妻に相続させる」と記載されていれば、原則として遺言書の内容に従い、妻が家を相続します。

なお、相続人全員の合意など一定の条件を満たせば、遺産分割協議によって遺言書とは異なる内容で遺産を分けることも可能です。上記の例であれば、妻・長男・次男の3人で合意し、家を3人の共有とするなど、遺言書とは異なる分け方にすることも考えられます。

ただし、兄弟姉妹以外の相続人には、法律上保障された最低限の取り分である「遺留分」が認められています。

遺言によって遺留分を侵害された相続人は、遺贈や贈与を受けた人に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。(民法第1046条)

たとえば、上記のケースで家が相続財産のすべてであり、遺言書どおり妻が家のすべてを相続すると、長男・次男は遺産を取得できません。この場合、長男・次男の遺留分が侵害されていれば、それぞれ妻に対して遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます。

なお、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決めます。遺産分割協議では、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることも可能です。

遺産分割協議で合意した内容は、書面に残しておくことをおすすめします。遺産分割協議書の作成方法については、次の記事を参考にしてください。

遺産分割協議がまとまらない場合|調停・審判で解決を図る

遺産分割協議では、相続人間で意見が対立し、話し合いがまとまらないこともあります。 遺産分割協議で合意できない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停や審判を申し立てて解決を図ることができます。

遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員会が相続人それぞれの意向や事情を確認しながら、合意による解決を目指して話し合いを進める手続きです。遺産の分け方について当事者全員が合意すると調停が成立し、その内容に従って遺産を分割します。

もっとも、遺産分割調停は当事者の合意による解決を目指す手続きであるため、当事者全員が合意しなければ成立しません。話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合は、自動的に遺産分割審判へ移行します。

遺産分割審判では、裁判官が相続人から提出された資料や主張、遺産の内容などの事情を考慮して、遺産の分割方法を判断します。

遺産分割調停とは異なり、当事者全員の合意は必要ありません。審判が確定すると、その内容に従って遺産を分割することになります。

不動産の法定相続持分を売却する3つの方法

不動産の法定相続持分を売却する方法は、大きく3つあります。

  1. 遺産分割前に「法定相続分」を売却する
  2. 遺産分割前に「法定相続分で相続登記した共有持分」を売却する
  3. 遺産分割後に「合意した割合で相続登記した共有持分」を売却する

法定相続持分の売却を考える際は、遺産全体に対する「法定相続分」を売却するのか、特定の不動産の「共有持分」を売却するのかを分けて考えることが重要です。どちらを売却するかによって、必要な手続きや売却後の権利関係が異なります。

※本記事では、「法定相続持分」を不動産相続における持分を表す便宜上の表現として使用しています。

1. 遺産分割前に「法定相続分」を売却する

遺産分割前でも、自分が持つ相続分を他の相続人や第三者へ売却することができます。

ここで売却するのは、不動産や預貯金などの特定の財産ではありません。遺産全体に対して自分が持つ取り分をまとめて譲るイメージです。

たとえば、法定相続分1/2を譲る場合、預貯金や不動産、有価証券などの個々の財産をそれぞれ1/2ずつ譲るのではなく、遺産全体に対する1/2の相続分を譲ります。相続分を譲り受けた人は、その相続分を引き継いで、その後の遺産分割に参加することになります。

そのため、相続分を譲り受けても、最終的に不動産の共有持分を取得するとは限りません。実際にどの財産を取得するかは、その後の遺産分割によって決まります。

他の相続人に法定相続分を売却する

自分の相続分は、遺産分割前に他の相続人へ売却することができます。たとえば、相続人が長男・次男・三男の3人で、それぞれ1/3の相続分を持っている場合、三男が自分の相続分1/3を長男へ売却することが可能です。

相続分を譲り受けた長男は、三男が持っていた相続分を引き継ぎ、その後は長男と次男が遺産分割を進めることになります。一方、相続分の全部を譲渡した三男は、原則として遺産分割手続の当事者から外れます。

この方法は、「遺産分割には参加せず、自分の相続分を現金化したい」「他の相続人に遺産をまとめて取得してもらいたい」といった場合に選択肢となります。

売却する場合は、不動産や預貯金、有価証券、借金などの遺産内容を確認し、遺産全体の価値や相続分の割合などを踏まえて売買価格を話し合います。

売却条件が決まったら、売買価格や譲渡条件などを書面に残しておきます。また、相続分を譲渡したことを証する書面としては、「相続分譲渡証書」などがあります。

なお、相続分の売買価格に一律の決まりはないため、法定相続分を単純に遺産総額へ掛けた金額になるとは限りません。 譲渡条件や契約内容について判断が難しい場合は、相続に詳しい弁護士への相談も検討しましょう。

第三者に法定相続分を売却する

相続分は、他の相続人だけでなく、相続人ではない親族や知人などの第三者へ売却することもできます。

第三者へ相続分を売却すると、その第三者が譲渡した相続人の相続分を引き継ぎ、遺産分割に参加することになります。

たとえば、長男・次男・三男がそれぞれ1/3の相続分を持っており、三男が自分の相続分を第三者Aへ売却したとします。この場合、その後は長男・次男・Aで遺産分割を進めます。

第三者へ売却する場合も、遺産全体の内容を踏まえて買主と売買価格や譲渡条件を決め、「相続分譲渡証書」などの書面を作成します。

ポイント

【第三者への売却では「相続分取戻権」がある】
第三者へ相続分を売却した場合、民法第905条により、他の共同相続人は相続分の価額や費用を支払って、その相続分を取り戻すことができます。相続分取戻権は、第三者へ譲渡された時から1ヵ月以内に行使する必要があります。

たとえば、三男が第三者Aへ相続分1/3を売却した場合、長男や次男がAに価額や費用を支払って、その相続分を取り戻すことが可能です。

2. 遺産分割前に「法定相続分で相続登記した共有持分」を売却する

遺産分割が終わっていなくても、法定相続分どおりであれば、相続登記を先に済ませることは可能です。登記後は、自分の共有持分だけを売却することもできます。

たとえば、遺産分割協議がまとまらない一方で、自分の不動産持分を早く現金化したい場合、相続人全員について法定相続分どおりに相続登記したうえで、自分の共有持分を他の相続人や第三者へ先に売却する方法があります。

法定相続分どおりの相続登記は、共同相続人の1人が他の相続人の同意を得ずに、相続人全員分を申請することも可能です。ただし、自分の共有持分だけを単独で相続登記することはできません。

また、他の相続人との合意がないまま相続登記や共有持分の売却を進めると、その後の遺産分割や共有関係をめぐってトラブルになる可能性があります。可能であれば事前に他の相続人へ意向を伝えておくとよいでしょう。

前述した「法定相続分そのものを売却する方法」と異なるのは、売却対象が持分のみという点です。預貯金や有価証券など、ほかの相続財産に対する相続分まで譲渡することにはなりません。

参考:法務省「不動産登記制度の見直し(1)」

共有持分の相続登記の方法や必要書類については、次の記事で詳しく解説しています。

他の相続人に共有持分を売却する

法定相続分で相続登記した共有持分は、遺産分割前でも他の相続人へ売却できます。

たとえば、長男・次男・三男が実家を相続したものの、遺産分割協議がまとまらなかったケースを考えてみましょう。このケースで、今後の売却も見据え、ひとまず3人それぞれ1/3の法定相続分で相続登記を済ませたとします。

その後、三男がまとまった現金を必要とし、遺産分割を待たずに不動産持分を現金化したいと考えた場合、三男は自分の共有持分1/3を長男や次男へ売却することが可能です。

仮に三男が長男へ売却した場合、長男はもともと持っていた1/3と三男から取得した1/3を合わせて2/3、次男は1/3の共有持分を持つことになります。三男は実家の共有持分を失いますが、預貯金や有価証券など、ほかの相続財産については引き続き遺産分割に参加します。

共有持分の売却価格については、「共有持分の売却価格は売却先によって異なる」で詳しく解説します。

ポイント

【遺産分割で合意した内容が、法定相続分の登記と異なる場合】
法定相続分どおりに相続登記した後、遺産分割によって不動産の取得者や持分割合が変わった場合は、その内容を登記に反映する必要があります。

たとえば、上記の例のように法定相続分で相続登記をした後、三男が共有持分1/3を長男へ売却したとします。この時点で、実家の共有持分は長男が2/3、次男が1/3となります。

その後の遺産分割協議で、実家を長男がすべて取得することになった場合、三男から長男へ売却された1/3はそのまま長男が所有します。そのうえで、次男の1/3を遺産分割によって長男が取得し、その内容を登記に反映することで、実家は長男の単独名義となります。

このようなケースでは権利関係や手続きが複雑になりやすいため、司法書士に相談したうえで登記を進めることをおすすめします。

第三者に共有持分を売却する

法定相続分で相続登記した共有持分は、他の相続人の同意を得ずに第三者へ売却することも可能です。

たとえば、長男・次男・三男が実家をそれぞれ1/3の共有持分で相続登記し、三男が自分の共有持分1/3を第三者Aへ売却したとします。この場合、実家の共有者は長男・次男・Aとなり、それぞれ1/3の共有持分を持つことになります。

なお、Aが取得するのは実家の共有持分1/3だけであり、相続人になるわけではないため、ほかの相続財産の遺産分割には参加しません。

また、第三者への売却といっても、共有持分だけでは不動産全体を自由に利用・処分できないため、個人の買主が見つかるケースは限られます。そのため、実際は共有持分を専門に扱う買取業者へ売却するのが現実的です。

買取業者へ売却する場合の価格目安については、「共有持分の売却価格は売却先によって異なる」で詳しく解説します。

ポイント

【売却後の遺産分割で第三者の共有持分を取り戻すことはできない】
遺産分割には相続開始時にさかのぼって効力が生じますが、民法第909条では、第三者の権利を害することはできないと定められています。

そのため、上記の例で三男が共有持分1/3を第三者Aへ売却した後に、長男・次男・三男が「相続人間では実家を長男が取得する」と遺産分割で合意しても、その合意だけでAが取得した共有持分1/3を失わせることはできません。

第三者へ売却した持分を遺産分割だけで取り戻すことはできないため、残っている遺産の分け方などを調整し、相続人間の公平を図ることを検討します。

3. 遺産分割後に「合意した割合で相続登記した共有持分」を売却する

遺産分割協議が成立し、相続人全員で合意した割合で相続登記を済ませた後に、自分が取得した共有持分を他の共有者や第三者へ売却する方法もあります。

たとえば、長男・次男・三男の3人で遺産分割協議を行い、実家について長男が1/2、次男と三男がそれぞれ1/4の共有持分を取得することで合意したとします。その内容で相続登記を済ませれば、三男は自分が取得した共有持分1/4を長男や次男、第三者へ売却できます。

前述した「遺産分割前に法定相続分で相続登記して売却する方法」と異なるのは、遺産分割が完了し、不動産を誰がどの割合で取得するかが確定している点です。売却後の遺産分割によって取得者や持分割合が変わり、登記内容を改めて反映するといった問題は生じません。

共有持分の具体的な売却方法や売却相場、注意点については、次の記事も参考にしてみてください。

法定相続持分の売却が向いているケース

相続した不動産を共有状態のまま所有したくない場合や、不動産を利用する予定がなく、資産価値に対して管理・維持の負担が大きい場合は、法定相続持分の売却が選択肢となります。

ただし、法定相続持分を売却する方法は、遺産分割の前後や売却する権利によって異なります。前述した3つの方法が向いている主なケースは、以下のとおりです。

売却方法 向いているケース
遺産分割前に「法定相続分」を売却する ・遺産分割や相続不動産の管理にこれ以上関わりたくない場合
・遺産分割が長期化しており、早めに相続分を現金化したい場合
・特定の不動産だけでなく、遺産全体に対する相続分を売却してもよい場合
遺産分割前に「法定相続分で相続登記した共有持分」を売却する ・遺産分割協議がまとまっていないが、共有持分だけでも早く現金化したい場合
・預貯金など、ほかの相続財産については遺産分割に参加したい場合
・不動産を法定相続分どおりの共有とすることについて、相続人間で大きな争いがない場合
遺産分割後に「合意した割合で相続登記した共有持分」を売却する ・不動産を誰がどの割合で取得するかについて相続人間で意見が分かれている場合
・法定相続分とは異なる持分割合で不動産を取得する可能性がある場合
・売却前に不動産の取得者や持分割合を確定させておきたい場合

遺産分割がまとまらず調停・審判に進んだ場合は、解決まで長期化することもあります。裁判所の司法統計でも、遺産分割事件には審理期間が1年を超えるものがあり、3年を超えるケースもみられます。

長期化を避けて早めに自分の取り分を現金化したい場合は、遺産分割前に相続分そのものを売却する方法も選択肢となります。

参考:裁判所「司法統計年報」

法定相続持分を売却する際の4つの注意点

法定相続分や相続した不動産の共有持分を売却する際は、次のような点を確認しておきましょう。

  • 相続分の譲渡では特定の財産だけを売却できない
  • 共有持分の売却価格は売却先によって異なる
  • 相続に関わりたくない場合は相続放棄も検討する
  • 相続分を第三者へ売却するとトラブルにつながることがある

相続分の譲渡では特定の財産だけを売却できない

遺産分割前に自分の相続分を譲渡することはできますが、相続分の譲渡として、特定の財産だけを選んで売却することはできません。

相続分の譲渡では、不動産や預貯金など個々の財産を譲渡するのではなく、被相続人から承継した権利義務を包括的に譲渡するためです。

たとえば、相続財産にA不動産とB不動産、預貯金がある場合、「A不動産に対する自分の相続分だけ」を相続分の譲渡として売却することはできません。

A不動産の共有持分だけを売却したい場合は、遺産分割前に法定相続分で相続登記して売却する方法と、遺産分割後に合意した割合で相続登記して売却する方法があります。

参考:京都家庭裁判所「遺産分割調停(相続分の譲渡)」

共有持分の売却価格は売却先によって異なる

相続分そのものではなく、相続登記した共有持分のみを売却する場合、売却価格の目安は売却先によって異なります。

他の共有者(相続人)へ共有持分を売却する場合は、「不動産全体の市場価格 × 持分割合」で求めた金額が、価格交渉の出発点になります。

たとえば、実家全体の査定額が3,000万円で、三男の共有持分が1/3であれば、1,000万円を1つの目安として売買価格を話し合います。ただし、共有持分の売買価格に一律の決まりはないため、不動産の状態や利用状況などによって実際の売買価格は異なります。

一方、買取業者へ売却する場合は、「不動産全体の市場価格 × 持分割合」で求めた金額の1/3~1/2程度が売却価格の目安です。たとえば、市場価格3,000万円の実家について共有持分1/3を売却する場合、持分相当額は1,000万円となるため、約333万~500万円程度が目安となります。

実際の買取価格は、不動産の立地や状態、持分割合、利用状況、ほかの共有者との関係などによって異なります。共有持分の売却相場については、次の記事も参考にしてみてください。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

共有者への売却が必ずしも高値になるとは限らない

他の共有者(相続人)への売却は、持分相当額を基準に交渉できる場合がありますが、必ずしも高値でまとまるとは限りません。
弊社への買取相談でも、他の共有者から提示された価格が低く、何度か交渉したものの合意できず、「これ以上時間をかけるより早く現金化したい」と買取に至るケースがあります。
そのため、まず共有持分の買取業者に査定を依頼して、売却できる価格の目安を把握してから、他の共有者との価格交渉を始める方法もあります。共有者への売却価格だけでなく、交渉にかかる時間や手間、現金化までの期間なども含めて比較すると、自分に合った売却方法を判断しやすくなります。

相続に関わりたくない場合は相続放棄も検討する

法定相続持分の売却を検討している理由が、「遺産分割に関わりたくない」「資産だけでなく負債も含めて相続したくない」といったものであれば、相続放棄も選択肢となります。

相続放棄とは、被相続人の資産や負債などの権利義務を一切引き継がないための手続きです。相続放棄する場合は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。

なお、相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。相続分の譲渡とは異なり、相続放棄は売却ではないため対価を得ることはできません。また、特定の相手に相続分を譲る手続きでもないため、譲渡先を指定することもできません。
そのため、法定相続持分を現金化したい場合は売却、資産や負債を含めて相続自体から外れたい場合は相続放棄というように、目的に応じて選ぶことが大切です。

相続放棄のメリット・デメリットや注意点については、次の記事で詳しく解説しています。

相続分を第三者へ売却するとトラブルにつながることがある

法律上、第三者への相続分の売却について他の相続人の同意を得る必要はありません。ただし、自分の相続分を第三者へ売却すると、その第三者が相続分を引き継ぎ、遺産分割に参加することになります。

そのため、他の相続人に知らせず第三者へ売却すると、これまで面識のなかった人と遺産分割について話し合うことになり、トラブルにつながる可能性があります。

被相続人やほかの相続人との関係性を知らない第三者が遺産分割に参加することで、話し合いがまとまりにくくなることも考えられます。 また、遺産分割の結果、第三者が不動産の共有持分を取得することになれば、ほかの相続人と第三者が新たに共有関係になる可能性もあります。

このようなトラブルを避けるためにも、可能であれば他の相続人に相続分を売却する意向を伝え、事前に相談しておくとよいでしょう。

共有持分を早く売却したいなら専門の買取業者への相談がおすすめ

相続登記した共有持分を売却する場合、まずは他の共有者(相続人)への売却を検討するのが理想的です。不動産全体の市場価格と持分割合をもとに価格交渉しやすく、新たな共有者が加わることも避けられます。

ただし、他の共有者に買取資金がない、売却価格で合意できないなどの理由から、売却が難しいケースもあります。その場合は、第三者への売却を検討することになります。

もっとも、共有持分を一般の個人に売却できるのは、投資対象として魅力がある場合など限られたケースです。そのため、第三者へ売却する場合は、共有持分を専門に扱う買取業者が現実的な売却先となります。

買取業者へ売却する場合は、仲介のように買主を探す必要がなく、業者が直接買い取るため、比較的早く共有持分を現金化できます。

他の共有者への売却よりも価格が低くなりやすいデメリットはありますが、共有持分の取引実績が豊富な業者であれば、持分割合や不動産の利用状況、ほかの共有者との関係なども踏まえて、共有持分の価値を適切に反映した査定額を提示してもらえる可能性があります。

弊社・株式会社クランピーリアルエステートには、共有持分に関する相談が累計10,000件超寄せられています。全国1,600超の弁護士・税理士・司法書士などの士業と連携しており、権利関係が複雑な共有持分についても査定・買取を行っています。まずは、無料査定をご利用ください。

共有持分を買取業者へ売却するメリット・デメリットや、仲介との違いについては、次の記事で詳しく解説しています。

まとめ

法定相続持分の売却では、遺産分割前に相続分そのものを売却する方法と、相続登記後に不動産の共有持分を売却する方法があります。

遺産分割から早く離れたい場合は相続分そのものの売却、不動産の共有持分だけを現金化してほかの相続財産の話し合いには参加したい場合は共有持分の売却が選択肢となります。

共有持分を売却する場合も、遺産分割前に法定相続分で相続登記して売却するのか、遺産分割で持分割合を確定してから売却するのか、自分の状況に合った方法を選びましょう。

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