任意売却は共有名義でもできる?売却の条件や手続きの流れを徹底解説

住宅ローンの返済が苦しくなり、競売だけは避けたいと考えているものの、「共有名義の不動産なので任意売却できるのかどうかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった場合に、金融機関の承諾を得たうえで、不動産を市場に近い価格で売却して競売を回避する方法です。共有名義の不動産を任意売却するためには、以下4つの条件を満たしている必要があります。

  • 共有者全員から同意を得ていること
  • 金融機関(抵当権者)の承諾を得ていること
  • 共有持分・名義関係が確定していること
  • 競売までの期限に余裕があり任意売却を進める時間が残っていること

共有名義の不動産を任意売却するためには原則として共有者全員の同意が必要となり、また金融機関の承諾や名義関係の確定も必要です。また、競売までの時間は限られていることから、任意売却を進めるための時間が残っていなければなりません。

共有名義不動産を任意売却できれば、競売を避けて市場価格に近い金額で売却できる可能性がある一方、共有者同士の調整や残債の整理といった課題もあります。また、必ずしも金融機関から承諾が得られるとは限らず、売却価格によっては任意売却後も住宅ローンが残るおそれがあります。

そのため、住宅ローンの返済が厳しくなったときには早めに任意売却を検討し、余裕を持って判断できるような態勢を整えておきましょう。

本記事では、共有名義不動産を任意売却するために必要な条件やメリット・デメリット、任意売却を検討するケースなどについて詳しく解説します。共有名義で任意売却を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

共有名義でも任意売却は可能

共有名義の不動産であっても、共有者全員の同意があれば任意売却の手続きを進めることが可能です。共有名義の不動産を任意売却するためにはいくつかの条件がありますが、とくに重要なのは「金融機関(抵当権者)の承諾を得られるかどうか」という点です。

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった場合に、金融機関の同意を得たうえで不動産を売却し、競売を回避する手続きのことを指します。通常、住宅ローンを利用して不動産を購入すると、その不動産には金融機関の抵当権が設定されます。

抵当権とは、ローンの返済が滞った場合に、金融機関が不動産を差し押さえ、売却によって債権を回収するための担保権の1つです。

抵当権が設定された状態では、不動産の売却が極めて困難になります。抵当権が残っている不動産は、将来的に差し押さえや競売にかけられるリスクを抱えており、買主が安心して購入できないからです。そのため、不動産を売却する際には、原則として売買と同時に抵当権を抹消する必要があります。

しかし、不動産の売却金額が住宅ローンの残債を下回っておりローンを完済できない場合には、金融機関は簡単には抵当権の抹消に応じません。このような状態は「オーバーローン」と呼ばれ、実務上でもよくあるケースです。オーバーローンの状態では、自己資金を追加して不足分を補填しない限り、通常の売却は困難を極めます。

もしも住宅ローンの返済が滞った状態が長期化すると、金融機関は抵当権を実行し、担保不動産を競売にかけて債権回収を図ることになります。

ただし、競売では市場価格よりも大幅に低い金額で落札されるケースが多く、結果として残債が多く残ってしまうことも珍しくありません。そのため、金融機関としても、必ずしも競売が最善の回収手段とは考えていないのが実情です。

そこで、競売よりも高い価格での売却が見込まれる場合に限り、金融機関が例外的に抵当権の抹消を認め、不動産の任意売却を許可することがあります。任意売却では、市場に近い価格で売却できる可能性が高く、金融機関にとっても競売より残債を回収しやすいというメリットがあります。

任意売却の基本的な仕組みは、共有名義の不動産にも適用されます。共有名義だからといって任意売却ができないわけではありませんが、共有者全員の同意や名義関係の整理など手続きが増えるため、実務上では共有名義の任意売却が難航するケースも多くみられます。

共有名義不動産を任意売却するために必要な条件

共有名義不動産を任意売却するために必要な条件は、主に以下の4つです。

  • 共有者全員から同意を得ていること
  • 金融機関(抵当権者)の承諾を得ていること
  • 共有持分・名義関係が確定していること
  • 競売までの期限に余裕があり任意売却を進める時間が残っていること

共有者全員から同意を得ていること

共有名義の不動産を任意売却するためには、原則として共有者全員の同意が必要になります。これは任意売却に限らず、共有名義の不動産そのものを売却する場合の前提条件となります。

この点については、民法第251条において、以下のように定められています。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元:民法|e-Gov 法令検索

ここでいう「変更」とは、共有物の性質や用途を大きく変更する行為のことを指します。不動産の売却は、所有権そのものが第三者に移転するため、共有不動産の性質を根本から変える行為に該当すると判断されます。

そのため、任意売却であっても、共有者全員が売却に同意し、契約内容に合意していなければ手続きを進めることはできません。たとえ金融機関から任意売却の承諾を得られたとしても、共有者のうち誰か1人でも反対している場合、売却手続きを進められないのが原則です。

共有名義の売却を検討するにあたって、「共有者の反対があって売却ができない」というご相談は弊社にも非常に多く寄せられます。共有名義不動産の任意売却では、金融機関の承諾以前に共有者間での合意形成が最初のハードルになるため、しっかりと話し合いの場をもうける必要があります。

金融機関(抵当権者)の承諾を得ていること

前述したとおり、共有名義の不動産であっても、任意売却を成立させるためには金融機関(抵当権者)の承諾を得なければなりません。金融機関の同意がなければ、抵当権を抹消することができず、結果として任意売却が実行できないためです。

住宅ローンの返済が滞った状態が続くと、金融機関は担保としている不動産を差し押さえ、競売によって債権回収を図ることになります。もっとも、競売では市場価格よりも低い金額で落札される傾向があるため、金融機関としても好ましい手段ではありません。

このような背景から、競売よりも高い価格での売却が見込まれる場合には、例外的に任意売却が認められることがあります。

ただし、単に「住宅ローンの返済ができないため、任意売却をさせてほしい」と申し出るだけでは、金融機関に応じてもらえない可能性が高いです。実際の交渉では、売却によってどの程度の回収が見込めるのか、オーバーローンとなっている場合に残債をどのように返済していくのかといった点を具体的に説明する必要があります。

そのため、金融機関との交渉にあたっては、売却価格の見込みや返済計画など、客観的な材料を整えたうえで話を進めることが大切です。実務上は、任意売却の経験が豊富な不動産会社や、弁護士などの専門家に交渉を任せるのが基本となります。

共有持分・名義関係が確定していること

共有名義の不動産を任意売却するにあたっては、共有持分や名義関係が確定していることが前提となります。「誰が、どの程度の権利を有しているのか」が法的に明確になっている状態でなければ、売却手続きを進めることができないためです。

具体的には、各共有者の持分割合が登記簿上に記載されており、その内容について共有者間で争いがない状態を指します。

たとえば、共有持分の相続が発生しているにもかかわらず、相続登記がされておらず、名義が被相続人のままになっているケースがあります。このように、誰が権利を承継するのかが確定していない状態では売買契約が締結できず、任意売却も進められません。

名義関係が不明確なまま売却を進めた場合、後から別の権利者が現れ、売買の有効性が争われるおそれがあります。売買の安全性を確保する観点からも、共有持分や名義関係が確定していない不動産の任意売却を進めることはできません。

任意売却を検討する際には、登記簿上の名義人と実際の所有者が一致しているかを必ず確認しましょう。相続が発生している場合には、先に相続登記を行い、名義関係を整理しておく必要があります。

競売までの期限に余裕があり任意売却を進める時間が残っていること

共有名義不動産の任意売却を検討する際には、競売までの期限にどれだけ余裕があるかが重要なポイントになります。任意売却は、準備から売却成立まで一定の期間を要するため、期限が差し迫っている場合には、売却が成立する前に競売が強制的に実行されてしまうおそれがあります。

住宅ローンの延滞が続くと、一般に滞納3〜6ヶ月前後で「期限の利益喪失」に関する通知が届き、その後は保証会社の代位弁済や競売手続きへ移行します。期限の利益を喪失すると、分割返済の権利が失われ、残りのローン全額を一括で返済する義務が生じます。

一括返済ができなかったときは裁判所への申し立てが行われ、不動産の差し押さえ手続きが進められます。差し押さえの手続きが申し立てられると、通常1週間から2週間ほどで裁判所から競売開始決定通知が届きます。その後、執行官による現地調査を経て約3ヶ月〜5ヶ月ほどで入札・開札が行われる流れになります。

任意売却のタイムリミットは「競売の開札期日の前日まで」とされていますが、買主を見つけて代金の決済までを完了させなければなりません。そのため、開札の1ヶ月〜2ヶ月前には契約を完了させておくのが現実的な期限となります。

不動産の条件や市場状況にもよりますが、任意売却が成立するまでには概ね1〜3ヶ月の時間がかかるケースが多いです。もっとも、共有名義の場合は、共有者間の合意形成や権利関係の調整に想定以上の時間がかかることも少なくありません。

住宅ローンの返済が難しいことが明らかになった時点で、早い段階から任意売却を視野に入れて不動産会社や弁護士などの専門家に相談することが大切です。

共有名義不動産を任意売却するメリット

共有名義不動産を任意売却するメリットは以下のとおりです。

  • 共有名義でも競売を回避し、不動産を市場価格に近い金額で売却できる
  • 共有名義人全員の合意があれば、競売よりも有利な条件で債務整理ができる
  • 共有名義不動産のローン返済や残債の整理を現実的に進められる

共有名義でも競売を回避し、不動産を市場価格に近い金額で売却できる

任意売却を選択すれば、共有名義の不動産であっても、競売を回避し、市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。任意売却に関して共有者全員の同意が取れていれば、共有名義だからといって売却価格が下がることは基本的にありません。

任意売却は、競売とは異なり、一般の不動産市場で買主を探すことを前提とした売却方法です。そのため、広告の出し方や内覧対応、価格交渉なども通常の不動産売却と同様の形で行われます。

共有名義の場合でも、共有者全員の同意が得られていれば、売主が複数人になるという違いはあるものの、単独名義の不動産と同じ流れで売却を進めることが可能です。

一方、競売では裁判所主導で手続きが進められますが、「事前に室内を確認できない」「売主の瑕疵担保責任がない」など、買主側のリスクが非常に高いという背景があります。そのため、落札価格は市場価格の5〜7割程度にとどまるケースが多いです。

これに対して任意売却では、市場の需要を踏まえた価格設定ができるため、競売と比べて高い水準での売却が期待できます。売却価格が高くなれば、その分、住宅ローンの残債を圧縮できる可能性も高まり、売却後の負担を現実的な範囲に抑えやすくなります。

共有名義人全員の合意があれば、競売よりも有利な条件で債務整理ができる

任意売却は、競売とは異なり、金融機関との話し合いを前提として進められる手続きです。競売では、裁判所主導で強制的に手続きが進むのに対し、任意売却では売却方法や売却後の対応について、金融機関と協議を行う余地があります。

共有名義不動産の場合、共有名者全員が任意売却に同意していれば、売却後の返済方針を具体的に固めたうえで、金融機関に提示することが可能になります。

たとえば、「売却によってどの程度の返済が見込めるのか」「残債が発生した場合にどのような形で返済を続けていくのか」といった点を事前に説明できます。また、一部債務の減額や支払い猶予について協議が行われるケースもあります。

このように返済方針が明確な状況であれば、金融機関側から見ても債権回収の見通しが立てやすく、交渉に応じてもらいやすい傾向があります。

一方、共有者の中に反対する人がいる場合、売却後の返済計画をまとめることができず、金融機関としても任意売却に応じることが難しくなります。交渉が長引いた末に競売が実行され、結果的に残債が増えてしまうケースも少なくありません。

共有者全員が任意売却に同意したうえで金融機関と話し合うことができれば、競売を回避できる可能性は高まります。結果的に、残債を無理なく整理できる条件を引き出しやすくなる点は、任意売却のメリットといえるでしょう。

共有名義不動産のローン返済や残債の整理を現実的に進められる

任意売却は、住宅ローンを完済できない状況であっても、不動産を売却できる制度です。売却代金はまず住宅ローンの返済に充てられ、残った借金については売却後に返済していく流れとなります。

住宅ローンの返済や残債の整理に関しては、競売と比べて任意売却に大きなメリットがあります。具体的な違いは以下のとおりです。

競売の場合 任意売却の場合
・売却価格は市場価格よりも大幅に低くなることが多い
・売却価格が低くなれあば、想定以上に多額の残債が確定する
・売却後の残債について金融機関と交渉する余地はほとんどなく、返済条件も厳しくなる傾向にある
・市場価格に近い金額で売却できる可能性がある
・売却価格が高くなれば、その分、残債を圧縮できる
・売却後に残った借金について、金融機関と返済条件の協議をする余地がある

なお、共有名義不動産の場合、連帯債務や連帯保証が付いていることも多く、「誰がどこまで返済義務を負うのか」がわかりにくいという難点があります。事前に確認しないまま任意売却を進めると、売却後になって想定外の残債が残ったり、共有者同士でトラブルに発展したりするおそれがあります。

任意売却する方針が固まった時点で、連帯債務や連帯保証の内容を含めて返済義務を整理しておけば、共有者それぞれの負担を把握しやすくなり、想定外の請求や返済トラブルを防止できます。

競売まで放置すると返済義務に関する確認が十分にできず、共有者間でのトラブルも起こりやすくなります。早めに任意売却を検討し始めておけば、ローン返済や残債の整理を現実的に進められるでしょう。

共有名義不動産を任意売却するデメリット

一方で、共有名義不動産を任意売却するデメリットとして以下のようなものがあります。

  • 必ず金融機関から承諾を得られるわけではない
  • 任意売却後もローン残債の返済義務が残ることがある
  • 行方不明・音信不通・未成年といった共有者がいると売却の同意を得るのが難航しやすい

必ず金融機関から承諾を得られるわけではない

任意売却は、あくまで金融機関の承諾を前提とした手続きであり、必ずしも希望どおりに認められるとは限りません。任意売却に応じるかどうかは、最終的には抵当権者である金融機関の判断に委ねられます。

とくに注意が必要なのが、複数の金融機関から借り入れをしており、抵当権が2本以上設定されているケースです。この場合、それぞれの金融機関と個別に交渉し、すべてから承諾を得る必要があります。

抵当権には優先関係があり、第1順位の抵当権者から順にローン残債を回収できる仕組みになっています。そのため、先順位の抵当権者は残債を回収できる見込みがあっても、売却代金の配分によっては、後順位の抵当権者がほとんど残債を回収できない状況になることがあります。

その結果、仮に第1順位の抵当権者から承諾を得られたとしても、後順位の金融機関から承諾を得られず、任意売却が成立しないケースもあります。

また、共有名義不動産の場合、共有者全員の同意が得られていなければ、金融機関としても任意売却に応じる判断をしにくくなります。共有者間で方針が定まっていないと、売却後の返済計画や責任の所在が不明確になるため、交渉のハードルがさらに上がります。

弁護士や任意売却に詳しい不動産会社などの専門家に依頼することで、交渉の余地が広がることはありますが、それでも必ず金融機関の承諾が得られるとは限りません。

任意売却後もローン残債の返済義務が残ることがある

任意売却が認められたとしても、住宅ローンを完済できなかった場合には、売却後も返済義務が残ることがあります。任意売却は住宅ローンがゼロになる制度ではなく、不動産を売却したうえで、残った債務を整理していく手続きであるためです。

たとえば、住宅ローンの残債が3,000万円あるのに対し、任意売却による売却価格が2,500万円だった場合、差額の500万円については返済義務が残ります。

このように、売却価格がローン残債を下回っているオーバーローンの状態では、不動産を手放した後も借金の返済を続けることになります。

なお、任意売却では、金融機関と協議を行うことで、売却後に残った残債について分割払いを認めてもらえるケースが基本です。交渉次第にはなりますが、収入や生活状況を踏まえ、無理のない範囲で毎月の返済額を設定されるケースが実務上でも多く見られます。

任意売却は住宅ローンが消えるのではなく、利息込みで残債を返済していかなければならないと認識しておきましょう。

売却後の生活設計や返済計画を含めて検討しなければ、想定以上の負担が長期にわたって続く可能性があります。とくに共有名義の場合、共有者同士で残債の返済に関する認識をすり合わせておくことが大切です。

行方不明・音信不通・未成年といった共有者がいると売却の同意を得るのが難航しやすい

共有名義の不動産を任意売却するためには、原則として共有者全員の同意が必要になります。そのため、共有者の中に行方不明・音信不通の人や、未成年者が含まれている場合、同意を得る手続きが難航しやすくなります。

共有者が行方不明や音信不通の場合、連絡が取れないからといって、同意を得ずに売却を進めることはできません。本人の所在を確認するための調査を行うか、家庭裁判所に申し立てをして不在者財産管理人を選任する必要があります。

不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を管理・処分する権限を与えられた人物で、弁護士などの専門家が選任されるのが基本です。ただし、選任手続きには数ヶ月程度かかることが多く、期限が限られている任意売却では、時間的な制約が大きなネックになります。

一方、共有者が未成年者の場合は、原則として親権者が同意すれば手続きを進めることが可能です。ただし、親権者自身も共有者に含まれているケースでは、売却が未成年者の利益を害するおそれがあるとして、利益相反の問題が生じることがあります。

この場合、家庭裁判所に申し立てを行い、特別代理人を選任しなければならないケースもあります。特別代理人の選任にも一定の期間を要するため、任意売却のスケジュールに影響が出ることは避けられません。

このように、行方不明者や音信不通者、未成年者といった共有者がいる場合、同意を得るために法的手続きが必要となり、任意売却の期限に間に合わなくなるおそれがあります。

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任意売却をしてもローン残債がある場合、原則として債務者が返済を続けていくことになります。共有名義の場合、住宅ローンが連帯債務なのか、また連帯保証人がいるのかなどによって返済方法が異なります。

ポイント

任意売却後に残った借金は、不動産という担保を失った無担保の債務となり、売却後にも返済義務が生じます。

ただし、任意売却を選択する時点で長期間の延滞に陥っているケースも多く、実務上は「従来どおりの返済を続けることが難しい」という状況であることがほとんどです。そのため、売却後の残債については、債権を引き継いだ「債権回収会社」と協議のうえ、分割返済や返済額の見直しが認められることがあります。

代位弁済後は保証会社や債権回収会社が窓口になることがあり、状況に応じて分割返済や返済条件の見直しについて協議できる場合があります。ただし、減額や免除が当然に認められるわけではなく、収入状況・延滞経緯・回収見込み等を踏まえ個別に判断されます。

ここでは、以下2つのケースを想定して任意売却後の共有名義不動産の返済についてシミュレーションしていきます。

  • 共有名義・連帯債務の場合の返済シミュレーション
  • 共有名義・連帯保証人がいる場合の返済シミュレーション

共有名義・連帯債務の場合の返済シミュレーション

ここでは、共有名義で連帯債務となっているケースを想定して、任意売却後の返済シミュレーションを行います。

たとえば、住宅ローン残債が3,500万円あり、夫婦がそれぞれ持分2分の1ずつで共有している不動産を連帯債務として借り入れているケースを想定します。不動産を任意売却したところ、以下のような結果となりました。

  • 売却価格:2,900万円
  • 仲介手数料など:100万円
  • 売却価格の手取り:2,800万円
  • ローン残債:3,500万円-2,800万円=700万円

この場合、主債務者と連帯債務者の双方が700万円全額について返済義務を負います。夫婦の持分は2分の1ずつですが、連帯債務では持分割合に応じて借金が分割されるわけではなく、金融機関は「どの債務者に対して返済を求めるか」を自由に判断できます。

実務上は、収入や資産状況などを踏まえ、返済能力が高いと判断された方に対して一括返済を求めるケースが多く見られます。仮に主債務者が夫、連帯債務者が妻だったとしても、妻の方が安定した収入を得ていると判断されれば、妻に対して返済請求が行われます。

ただし、返済請求を受けなかった債務者の返済義務が消えるわけではありません。請求を受けた債務者が返済を滞納した場合には、もう一方の債務者に対して請求が行われることになります。

連帯債務では、主債務者と連帯債務者が同一の返済義務を負うため、どのような形で返済を求められるかは、金融機関の判断に委ねられる点に注意が必要です。

共有名義・連帯保証人がいる場合の返済シミュレーション

ここでは、共有名義で片方が連帯保証人となっているケースを想定して、任意売却後の返済シミュレーションを行います。

たとえば、住宅ローン残債が4,000万円あり、親子がそれぞれ持分2分の1ずつで不動産を共有しているケースを想定します。ローン契約上は、親が主債務者、子どもが連帯保証人となっている状況です。不動産を任意売却したところ、以下のような結果となりました。

  • 売却価格:3,300万円
  • 仲介手数料など:100万円
  • 売却価格の手取り:3,200万円
  • ローン残債:4,000万円-3,200万円=800万円

この場合、返済義務を負うのは主債務者の親であるため、金融機関は主債務者に対して残った800万円の一括返済を求めるのが基本です。ただし、主債務者が返済できない場合には、連帯保証人に対して請求が行われます。

注意が必要なのは、連帯保証人は「持分が2分の1だから400万円だけ支払えばよい」という扱いにはならない点です。連帯保証人は、主債務者が支払えない場合、残債800万円の全額について返済義務を負う立場になります。

また、連帯保証人には、「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」が認められていません。

催告の抗弁権:主債務者に先に請求するよう求める権利
検索の抗弁権:主債務者の財産を優先的に差し押さえるよう求める権利

そのため、金融機関が「主債務者による返済は見込めない」と判断した場合、主債務者への請求を飛ばし、最初から連帯保証人に対して返済を求めることもあります。

なお、主債務者が事前に金融機関と交渉し、分割返済などの条件で合意できていれば、返済が継続されている限り連帯保証人へ請求が及ぶことはありません。

ただし、金融機関と交渉せず返済を滞納した場合や、合意条件が守られなかった場合には、連帯保証人に一括請求が行われる可能性がある点には注意が必要です。

共有名義不動産の任意売却を検討するケース

共有名義不動産の任意売却を検討するケースとして、主に以下2つのパターンが挙げられます。

  • 住宅ローンの返済を滞納しており返済の見通しが立たない場合
  • 離婚によって夫婦の共有名義不動産を売却する場合

住宅ローンの返済を滞納しており返済の見通しが立たない場合

共有名義不動産の任意売却を検討するケースとして最も多いのが、住宅ローンの返済を滞納しており、今後も安定した返済を続けられる見通しが立たない状況です。

単に「支払いが苦しい」というだけでなく、以下のようなケースが重なったタイミングで任意売却を選択することが多くなります。

  • 住宅ローンの滞納が3ヶ月以上続いている
  • 金融機関からの督促に応じられていない
  • 収入が減少しており、今後も返済の見通しが立たない
  • 売却してもローンを完済できないオーバーローンであることが判明している
  • 共有名義でペアローンなどを組んでおり、一方の共有者が返済を滞納している

住宅ローンの滞納が約1ヶ月~2ヶ月の段階では、金融機関から電話や書面による支払いの催促が行われます。その後、滞納が約3ヶ月~6ヶ月続くと督促状が届くようになり、記載された期限までに支払いがなされなかった場合、「期限の利益の喪失」となります。

期限の利益を喪失とは、これまで認められていた分割返済の権利を失うことです。期限の利益を喪失すると保証会社による「代位弁済」が行われ、債務者に代わって銀行へローン全額が支払われます。

代位弁済が実行された後は債権が保証会社に移り、債権者が銀行から保証会社になります。債権者である保証会社は、利益の期限を喪失した債務者に対し、住宅ローンの一括返済を求めることができます。

しかし、債務者は分割返済が苦しい状況にあることから、一括返済ができないケースが大半を占めます。不動産査定をした結果、売却価格が住宅ローンを下回るオーバーローンの状態にある場合は通常の売却ができないため、任意売却を検討することになるという流れです。

また、共有名義でペアローンなどを組んでいる場合、一方の債務者が返済を滞納した状態が続いていると、競売や任意売却しか選択肢がなくなることもあります。他の債務者が通常通りに返済をしていても、債務者の1人が返済を滞納すると他の債務者も期限の利益を喪失するためです。

他の債務者が返済を肩代わりできれば問題ありませんが、ペアローンは2人の収入を前提として返済額を設定していることから、返済が難しくなるケースが多いものです。たとえば夫婦の共有名義でペアローンを組んだものの、一方が失業するなどで収入を失ったケースなどが挙げられます。

住宅ローンの返済を滞納している場合、滞納が一時的なものなのか、根本的な解決が難しいものなのかをまず確認しましょう

数ヶ月以内に問題が解決できそうであれば、金融機関と交渉することで一時的に返済額を減らしたり、返済を待ってもらえたりする可能性があります。しかし、今後も返済の見通しが立たない場合には、問題を解決するために任意売却が現実的な選択肢となります。

離婚によって夫婦の共有名義不動産を売却する場合

任意売却を検討するケースとして、離婚に伴い夫婦の共有名義不動産を処分する必要が生じる場面も多く見られます。具体的なケースは以下のとおりです。

  • 売却代金を住宅ローンの返済に充てても完済できない
  • 夫婦の共有資産を合算しても不足分を補填できない
  • 金融機関に単独名義への変更を認めてもらえない
  • 離婚協議が長期化し、不動産の取得者について夫婦間で合意できない

夫婦のどちらも家を出ていく場合には、不動産を売却して住宅ローンの返済に充てる方法が基本になります。不動産の売却価格が住宅ローン残債を上回っていれば通常の売却で対応できますが、下回っている場合には、競売を避ける手段として任意売却を検討することになります。

一方、共有名義のまま夫婦のどちらか一方が住み続けるのは、非常にリスクの高い選択肢です。住宅ローン契約では、債務者本人が居住することを前提としているケースが多く、離婚によって一方が退去すると、契約違反になる可能性があります。

契約違反とみなされると、金融機関からローン残債の一括返済を求められるリスクがあるため、どちらか一方が住む際には単独名義に変更するのが得策です。

ただし、単独名義に変更するためには金融機関からの承諾が必要です。交渉して承諾を得られれば問題ありませんが、実務上は名義変更が認められないケースも多くあります。共有名義のまま離婚するのはリスクが高いため、結果的に任意売却を検討せざるを得なくなります。

また、離婚協議が長期化してしまい、不動産をどちらが取得するのかの話し合いに合意できない場合にも、落としどころのひとつとして任意売却が提案されるケースもあります。

共有名義不動産を任意売却する流れ

共有名義不動産を任意売却する流れは以下が基本となります。

  1. 共有名義人全員と任意売却の方針について話し合う
  2. 任意売却に対応できる専門業者へ相談する
  3. 不動産業者を通じて債権者へ任意売却の相談・申請を行う
  4. 売却活動を行い、購入希望者を探す
  5. 売買条件を確定し、売買契約・返済条件の調整を行う
  6. 代金決済・所有権移転登記を行い、任意売却が完了する

共有名義人全員と任意売却の方針について話し合う

共有名義不動産の任意売却を進めるにあたって、最初に行うことは、共有者全員で任意売却の方針について話し合うことです。

任意売却は、共有者全員の同意がなければ実行できないためです。共有者のうち1人でも任意売却に反対していれば、売却手続きを進めることはできません。

そのため、住宅ローンの返済状況や競売に移行した場合のリスク、売却後の返済方針などについて、最初に共有者全員ですり合わせておくことが大切です。

任意売却に対応できる専門業者へ相談する

次に、任意売却に対応できる専門業者へ相談しましょう。任意売却では金融機関と交渉するにあたって、不動産の査定額や売却見込み価格を提示する必要があり、査定に関する資料は不動産会社に作成してもらいます。

ただし、任意売却は通常の不動産売却とは手続きが異なるため、すべての不動産会社が対応できるわけではありません。共有名義不動産の場合は、共有者全員の同意や、連帯債務・連帯保証の整理といった要素が加わるため、任意売却の中でも難易度が高い部類に入ります。

そのため、共有名義の任意売却を取り扱った実績が豊富で、かつ金融機関との調整にも慣れている不動産業者に相談するのがおすすめです。

不動産業者を通じて債権者へ任意売却の相談・申請を行う

任意売却を進める際、債権者である金融機関への相談や申請は、不動産業者を通じて行うのが基本となります。

不動産業者は、事前に算出した査定額や市場動向をもとに、売却によってどの程度の回収が見込めるのかをまとめた資料を作成し、金融機関に提示します。

金融機関は、競売に移行した場合との回収額の比較や、債務者の返済状況を踏まえて、任意売却に応じるかどうかを判断します。金融機関からの合意を得られれば任意売却が可能な状態となり、次のステップに進めます。

売却活動を行い、購入希望者を探す

金融機関から任意売却の承諾を得られた後は、不動産業者を通じて売却活動を行い、購入希望者を探します。売却活動の進め方は、通常の不動産を売却する場合と変わりません。

具体的には、不動産ポータルサイトへの掲載やチラシなどを通じて広告を出し、購入希望者を募ります。問い合わせが入った場合には内覧に対応し、物件の状態や周辺環境について説明を行います。

売買条件を確定し、売買契約・返済条件の調整を行う

買主が見つかり、価格や引き渡し時期などの売買条件について合意ができた段階で、売買契約を締結します。

任意売却の場合も、売買契約の進め方は通常の不動産取引と同様で、共有名義であれば共有者全員が売主として契約に関与することになります。

なお、売却代金を充当しても住宅ローンが完済できない場合には、残った借金をどのように返済していくのかを債権者と協議することになります。

実際の任意売却の場面では、収入状況や生活状況を踏まえ、分割返済や返済条件の見直しについて話し合いが行われるケースが多く見られます。

代金決済・所有権移転登記を行い、任意売却が完了する

売買契約後、決済日には売却代金の支払いと同時に物件の引き渡しが行われ、鍵の引き渡しや所有権移転登記(名義変更)が進められます。

所有権移転登記は法務局で行う手続きですが、専門知識が必要となるため、司法書士に依頼するのが基本です。

決済と所有権移転登記の手続きが済んだら、債権者にローンの返済を行い、任意売却の手続きは完了です。ローンが残っている場合、債権者との間で取り決めた内容に従い、借金を返済していくことになります。

まとめ

共有名義の不動産であっても、条件を満たせば任意売却を行うことが可能です。

共有者全員の同意があること、金融機関から任意売却の承諾を得ること、共有持分や名義関係が確定していること、競売までに十分な時間が残されていることなどの条件をクリアする必要があります。

任意売却は競売と比べて市場価格に近い水準で売却できる可能性が高く、その分、住宅ローンの残債を圧縮できる点が大きなメリットです。一方で、必ず金融機関の承諾が得られるとは限らず、共有名義であることが交渉を難しくする場合もある点には注意が必要です。

また、任意売却は競売の開札期日までに完了させなければならないため、時間的な余裕も重要になります。住宅ローンの返済が難しいと感じた時点で、できるだけ早めに任意売却に対応できる専門の不動産業者へ相談することをおすすめします。

よくある質問

任意売却を進めている途中で、共有者が同意を撤回した場合はどうなりますか?

原則として、同意が撤回された時点で任意売却の手続きは中断され、競売へ進む可能性が高くなります。売買契約を締結する前の段階であれば、共有者は同意を撤回することが可能であり、その場合は売却が進められません。
共有名義不動産の任意売却では、売却が完了するまで共有者全員が方針を維持し、協力し続けることが大切です。

共有者の1人が海外にいる場合でも、任意売却はできますか?

共有者の1人が海外に居住している場合でも、任意売却の同意が得られていれば進めることができます。
ただし、国内に共有者がいる場合と比べて、書類のやり取りや同意の確認に時間がかかりやすくなります。そのため、共有者が海外にいる場合には、通常よりも早い段階から準備に着手し、スケジュールに余裕を持って進める必要があります。

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