共有者が行方不明で不動産を売却する方法!改正民法を踏まえた解決法を紹介

共有者が行方不明の場合、そのままの状態で共有名義不動産を売却することは原則できません。共有状態の不動産を売却するには、共有者全員からの同意が原則必要になるためです。

法改正以前は、共有者と連絡が取れない場合、不在者財産管理人制度や失踪宣告の手続きを利用して、不動産全体の売却を目指すのが主な方法でした。

しかし、これらはあくまで行方不明者の財産管理や身分関係を整理するための制度であり、行方不明の共有者がいる共有不動産を売却すること自体を目的とした制度ではありません。そのため、これらの方法で行方不明者がいる共有名義不動産全体を売却するには、手続きに時間や費用がかかりやすいという問題がありました。

これに対して、2023年4月に施行された改正民法では、所在等不明共有者の持分取得制度・持分譲渡制度が整備されました。これらは、所在がわからない共有者がいることで共有不動産を管理・処分できない問題に対応するための制度です。

つまり、従来制度が「行方不明者の財産や身分関係をどう扱うか」という観点から利用されていたのに対し、法改正後は「所在不明の共有者がいる共有不動産をどう動かすか」という問題により直接対応できる点に違いがあります。そのため、裁判所の手続きを経る必要はあるものの、従来よりも行方不明者がいる共有名義不動産全体の売却につなげやすくなっています。

とはいえ、裁判所の手続きが必要になる以上、すぐに不動産全体を売却できるとは限りません。そのような場合は、不動産全体の売却だけでなく、自身の共有持分のみを売却する方法も選択肢になります。

共有持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却できるため、共有関係からすぐにでも抜け出したい場合には現実的な方法です。

これらをまとめると、共有者行方不明の状態で売却する対策としては下記が挙げられます。

方法 概要
所在等不明共有者持分譲渡制度 裁判所の決定を得ることで、所在等不明共有者の持分を含めて不動産全体を第三者へ売却できる制度です。
従来制度よりも売却につなげやすい一方、申立てや供託金などの裁判所手続きが必要で、買主や売却条件も共有者側で調整しておく必要があります。
所在等不明共有者持分取得制度 裁判所の決定を得ることで、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得できる制度です。
行方不明者の持分を整理し、その後の売却や管理につなげやすくなりましたが、申立てや供託金などの裁判所手続きが必要です。
自身の共有持分を売却する 自分の共有持分だけを第三者や買取業者へ売却する方法です。
他の共有者の同意なしで売却でき、共有関係から早く抜け出せますが、不動産全体を売る場合より価格は安くなりやすいです。
不在者財産管理人制度 行方不明者の財産を管理する人を家庭裁判所に選任してもらう制度です。
不在者財産管理人の選任後、家庭裁判所の許可を得られれば売却できる場合があります。ただし、本来は行方不明者の財産管理を目的とした制度のため、手続きに時間や費用がかかり、売却目的だけで利用するには負担が大きいです。
失踪宣告 行方不明者を法律上死亡したものとみなし、相続関係を整理するための制度です。
失踪宣告により相続人との協議で売却につなげられる可能性がありますが、手続きに時間がかかり、相続人の合意も必要なため、売却目的だけでは利用しづらい制度です。

当記事では、行方不明の共有者がいる共有名義不動産の売却方法や、行方不明者を探す方法、共有名義不動産を放置するリスクなどについて、共有持分の買取をしている弊社の視点で解説していきます。

なお、弊社クランピーリアルエステートでは、行方不明の共有者がいる不動産の共有持分についても査定・買取を承っております。現在の状況を踏まえて買取可否や査定額の目安をご案内できますので、共有持分の買取を検討されている場合にはお気軽にご相談ください。

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目次

行方不明の共有者がいる共有名義不動産を売却する方法

行方不明の共有者がいる場合でも、裁判所の手続きを利用することで、不動産全体の売却につなげられます。

共有名義不動産全体の売却には、原則として共有者全員の同意が必要です。そのため、共有者の所在がわからない場合、従来は不在者財産管理人制度や失踪宣告を利用し、行方不明者の財産管理や相続関係を整理したうえで売却を目指すのが主な方法でした。

しかし、これらの制度は「共有者の所在がわからないため、共有不動産を売却したい」という場面に直接対応する制度ではなかったため、売却までに時間や費用がかかりやすいという課題がありました。

現在は、2023年4月1日に施行された民法改正により、所在等不明共有者持分譲渡制度・取得制度も利用できるようになっています。一定の要件を満たす必要がありますが、行方不明の共有者の持分を含めた不動産全体の売却や持分整理を進めやすくなった点が、従来制度との大きな違いです。

売却方法 概要
不在者財産管理人制度を利用して売却手続きを進める 難易度:高
期間目安:1年程度
費用目安:申立実費+専門家費用30万〜100万円超

■向いているケース
・不動産全体を売却したい場合
・行方不明者の財産管理や遺産分割協議も必要な場合
失踪宣告によって相続関係を整理し、相続人と売却協議を進める 難易度:高
期間目安:1年半〜
費用目安:申立実費+専門家費用10万〜30万円程度

■向いているケース
・不動産全体を売却したい場合
・共有者が長期間生死不明で、相続人と売却について話し合いたい場合
所在等不明共有者持分譲渡制度で行方不明者の持分も含めて売却する 難易度:中~高
期間目安:半年〜1年程度
費用目安:申立実費+専門家費用30万〜50万円程度+供託金

■向いているケース
・不動産全体を売却したい場合
・行方不明者以外の共有者全員が売却に合意している場合
所在等不明共有者持分取得制度で行方不明者の持分を取得してから売却する 難易度:中~高
期間目安:半年〜1年程度
費用目安:申立実費+専門家費用30万〜50万円程度+供託金

■向いているケース
・すぐに売却せず、不動産の活用も検討したい場合
・行方不明者の持分を取得する意思や資金がある場合

※上記の期間・費用はあくまで目安です。実際の期間・費用は事案によって異なるため、ご自身の状況でどれほど期間・費用がかかるのかについては、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

ただし、各制度は目的や要件が異なるため、自由に選べるわけではありません。所在等不明共有者持分譲渡制度・取得制度を利用する場合でも、裁判所への申立てや供託金の準備が必要です。

また、譲渡制度では裁判所手続きと並行して買主探しや売却条件の調整を進める必要があります。取得制度も、不動産全体を直接売却する制度ではないため、持分取得後の売却や活用は共有者側で進めなければなりません。

単に「法改正後の制度を使えばよい」と考えるのではなく、不動産全体を売却できる準備ができるのか、先に行方不明者の持分整理を行いたいのか、相続関係の整理も必要なのかを踏まえて、適した手続きを選ぶことが大切です。

不在者財産管理人制度を利用して売却手続きを進める

不在者財産管理人制度とは、行方不明者の財産を管理する人を家庭裁判所に選任してもらう制度です。

共有者が行方不明の場合でも、不在者財産管理人を選任し、さらに家庭裁判所から売却許可が得られれば、共有名義不動産全体の売却につなげられます。

ただし、不在者財産管理人制度は、行方不明の共有者がいる共有名義不動産の売却に特化した制度ではありません。不在者の財産全般を管理する前提で進むため、売却以外の手続きに時間や費用がかかることがあります。

さらに、不動産の売却は、行方不明者の財産を大きく動かす行為のため、不在者財産管理人の選任とは別に、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。

権限外行為許可を申し立てても、必ず売却が認められるとは限りません。家庭裁判所は、売却の必要性や売却条件が不在者にとって不利益にならないかを確認したうえで許可を判断します。たとえば、相場より安い価格で売却することになりそうな場合や、価格変動が大きく「今売るべき」といえる事情が弱い場合は、許可が出ないケースもあります。

そのため、売却目的であれば、先に所在等不明共有者持分譲渡制度を利用できるか確認しましょう。とはいえ、次のようなケースであれば、不在者財産管理人制度の利用が向いていることもあります。

  • 行方不明の共有者の代わりに、遺産分割協議への参加が必要な場合
  • 預貯金や他の不動産などの財産管理も必要な場合
  • 所在等不明共有者持分譲渡制度を利用する要件を満たさない場合

なお、不在者財産管理人は親族が候補者になる場合もありますが、弁護士や司法書士などの専門家が選任された場合は報酬が発生します。

一般的には月額1万〜5万円程度が目安とされることもありますが、最終的には家庭裁判所の判断によります。報酬や管理費用は基本的に不在者本人の財産から支払われますが、不足する場合は申立人に数十万円単位の予納金の納付が求められることがあります。

不在者財産管理人制度を利用するための要件

不在者財産管理人制度を利用するには、主に次のような要件を満たす必要があります。

  • 不在者が従来の住所地や居所を離れ、容易に戻る見込みがないこと
  • 不在者が自分で財産管理人を置いていないこと
  • 利害関係人または検察官が、家庭裁判所に申立てを行うこと
  • 不動産を売却する場合は、選任後に家庭裁判所の権限外行為許可を得ること

他の共有者は、不在者の持分がある不動産の売却や管理に利害関係を持つため、申立人になれる可能性があります。ただし、申立ての可否や必要資料は事案によって異なるため、実際に手続きを進める際は弁護士や司法書士などの専門家に確認しましょう。

申請手続きから売却までの流れ

不在者財産管理人制度を利用して不動産売却を進める場合の流れは、次のとおりです。

  1. 行方不明者の所在確認を行い、不在の事実を示す資料を整理する
  2. 行方不明者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる
  3. 家庭裁判所が事案を確認し、不在者財産管理人を選任する
  4. 不在者財産管理人が、共有者や不動産会社と売却条件を整理する
  5. 不動産売却について、家庭裁判所に権限外行為許可を申し立てる
  6. 家庭裁判所の許可が出たら、売買契約、決済、所有権移転登記などを進める

申立てでは、主に次のような書類や費用が必要になります。

■書類
・不在者の戸籍謄本、戸籍の附票
・不在の事実を示す資料(警察署の行方不明者届出証明書、職権消除された住民票・戸籍附票など)
・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金残高がわかる資料など)
・申立人が利害関係人であることを示す資料(共有者であることがわかる不動産登記事項証明書、親族関係がわかる戸籍謄本など)
・不在者財産管理人候補者がいる場合は、その候補者の住民票または戸籍の附票
■費用
・申立手数料:収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手:申立先の家庭裁判所によって異なる

必要書類は事案によって異なるため、実際に申し立てる際は家庭裁判所や弁護士に確認しましょう。

失踪宣告によって相続関係を整理し、相続人と売却協議を進める

失踪宣告とは、長期間にわたって生死がわからない人について、法律上死亡したものとして扱い、相続関係を整理するための制度です。

行方不明の共有者について失踪宣告が認められると、その共有者の持分は相続人に引き継がれます。相続人を新たな共有者として確定し、相続登記を行ったうえで売却に同意を得られれば、不動産全体の売却を進められます。

ただし、失踪宣告は、共有名義不動産の売却を目的とした制度ではないため、売却まで遠回りになりやすいです。

普通失踪の場合は原則として7年以上生死が明らかでないことが必要であり、家庭裁判所による調査や官報公告を経て慎重に判断されます。申立てから審判が確定するまでに半年から1年程度、事案によってはそれ以上かかることがあります。

さらに、失踪宣告後も相続人調査、遺産分割協議、相続登記が続くため、不動産売却までの道のりが長くなります。相続人の所在がわからない場合や、相続人が売却に同意しない場合は、売却までさらに時間がかかる可能性があります。

不動産全体の売却が目的であれば、まず所在等不明共有者持分譲渡制度を利用できるか確認しましょう。譲渡制度を利用できない場合や、次のようなケースであれば、失踪宣告を検討します。

  • 共有者が長期間生死不明で、本人との協議が見込めない場合
  • 相続人が確認できており、不動産全体の売却について話し合える場合
  • 行方不明の共有者の死亡を前提に、相続手続きで財産を整理したい場合
  • 所在等不明共有者持分譲渡制度を利用する要件を満たさない場合

失踪宣告を利用するための要件

失踪宣告を利用するには、主に次のような要件を満たす必要があります。

  • 普通失踪の場合、不在者の生死が7年間明らかでないこと
  • 危難失踪の場合、戦争、船舶の沈没、震災などの危難が去った後、1年間生死が明らかでないこと
  • 配偶者、相続人にあたる人、財産管理人、受遺者など、法律上の利害関係人が申立てを行うこと
  • 不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てること

失踪宣告は行方不明者を法律上死亡したものとして扱う制度であるため、申立ての可否は行方不明者との関係や利害関係によって判断されます。

他の共有者であっても、共有不動産の売却や権利関係に法律上の利害がある場合は申立人になれる可能性がありますが、実際に手続きを進める際は弁護士などの専門家に確認しましょう。

申請手続きから売却までの流れ

失踪宣告によって相続関係を整理し、不動産売却を進める場合の流れは、次のとおりです。

  1. 共有者の生死不明期間や行方不明になった経緯を確認する
  2. 失踪宣告後に相続人となる人を確認し、売却協議を進められる見込みがあるか確認する
  3. 戸籍謄本、戸籍の附票、失踪を証する資料などを準備する
  4. 不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる
  5. 家庭裁判所による調査や官報公告を経て、失踪宣告の審判を受ける
  6. 審判確定後、必要に応じて遺産分割協議や相続登記を行う
  7. 相続人と売却条件を協議し、不動産全体の売却を進める

申立てでは、主に次のような書類や費用が必要になります。

■資料
・申立書
・不在者の戸籍謄本
・不在者の戸籍の附票
・失踪を証する資料
・申立人の利害関係を証する資料(親族関係がわかる戸籍謄本など)
■費用
・申立手数料:収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手:申立先の家庭裁判所によって異なる
・官報公告料:5,298円

必要書類や官報公告料は変更される場合があるため、実際に申し立てる際は家庭裁判所や弁護士に確認しましょう。

所在等不明共有者持分譲渡制度で行方不明者の持分も含めて売却する

所在等不明共有者持分譲渡制度とは、所在がわからない共有者の持分も含めて、共有名義不動産全体を第三者に譲渡するための制度です。(民法第262条の3)

従来の不在者財産管理人制度や失踪宣告は、共有名義不動産の売却だけを目的とした制度ではなく、財産全体の管理や相続関係の整理を前提とするため、時間や手間、費用がかかりやすい点が課題でした。その結果、売却や活用が進まないまま不動産が放置され、所有者不明土地や空き家が増える一因となっていました。

こうした問題に対応するため、2023年4月1日に施行された民法改正により、不動産全体の売却を進めやすくする制度として、所在等不明共有者持分譲渡制度が設けられました。

この制度を利用すると、行方不明の共有者の持分についても第三者へ譲渡できるようになります。裁判所の手続きは必要ですが、所在がわかっている共有者全員の持分と行方不明の共有者の持分を合わせて同じ買主に売却できます。

たとえば、兄弟3人の共有名義になっている実家のうち1人が行方不明でも、残り2人が売却に合意し、買主候補も決まっていれば、この制度を使って不動産全体の売却を目指せます。

所在等不明共有者持分譲渡制度は、次のようなケースに向いています。

  • 行方不明者以外の共有者全員が、不動産全体の売却に合意している場合
  • 買主候補が決まっており、売却価格や売却条件を具体的に示せる場合
  • 行方不明者の財産全体を管理する必要はなく、不動産全体の売却だけを進めたい場合

注意点は、裁判所が買主探しや売却条件の調整まで行ってくれる制度ではない点です。

また、譲渡制度は、裁判の効力が生じた後、原則として2ヵ月以内に第三者への譲渡の効力が生じないと、その裁判は効力を失います。(非訟事件手続法第88条3項)

そのため、申立ての段階で売却先や売却条件を具体的に示せるよう、買主探しや条件調整、契約・決済・登記に向けた準備は所在がわかっている共有者側で進めておく必要があります。

ポイント

【買取業者を買主として売却準備を進める方法もある】

所在等不明共有者持分譲渡制度は、裁判所の手続きが終わってから売却準備を始めるのでは間に合わないため、申立て前の段階から買主を確保しておくことが重要です。

仲介業者に依頼して買主を探す方法もありますが、譲渡制度の手続き完了を待って売買を進める必要があるため、引渡しや決済の時期について事前に調整しておく必要があります。

一方、買取業者であれば、業者自身が買主となるため、買主探しの手間を抑えられます。共有名義を専門とする業者など、譲渡制度の流れも把握している買主であれば、手続き完了後の買取まで見据えて相談しやすいでしょう。

所在等不明共有者持分譲渡制度を利用するための要件

所在等不明共有者持分譲渡制度を利用するには、主に次のような要件を満たす必要があります。

  • 共有者の氏名・名称または所在を調査しても確認できないこと
  • 行方不明者以外の共有者全員が、自分の持分を同じ第三者へ譲渡すること
  • 不動産の共有者が、不動産所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行うこと
  • 裁判所が定めた供託金を納付すること
  • 裁判の効力が生じた後、原則として2ヵ月以内に第三者への譲渡を成立させること
  • 所在等不明共有者の持分が、共同相続人間で遺産分割をすべき相続財産に含まれている場合は、相続開始から10年が経過していること

とくに注意が必要なのが、売却したい不動産の遺産分割協議が終わっていないケースです。たとえば、親が数年前に亡くなり、遺産分割が終わらないまま兄弟の一人が行方不明になっている場合、相続開始から10年が経過していなければ、この制度を利用できない可能性があります。

相続開始から10年が経過していない場合は、不在者財産管理人制度など、別の方法を検討することになります。

申請手続きから売却までの流れ

所在等不明共有者持分譲渡制度を利用して不動産売却を進める場合の流れは、次のとおりです。

  1. 所在等不明であることを示す資料や、不動産の評価資料を準備する
  2. 行方不明者以外の共有者全員で売却方針を固め、買主候補や売却条件を整理する
  3. 不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる
  4. 裁判所による公告・通知が行われる
  5. 裁判所が定めた供託金を納付する
  6. 譲渡権限が付与されたら、原則2ヵ月以内に売買契約・決済などを行い、第三者への譲渡を成立させる

申立てでは、主に次のような書類や費用が必要になります。

■資料
所在等不明共有者持分譲渡権限付与決定申立書
・不動産の登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・不動産の評価に関する資料(不動産会社の査定書、不動産鑑定士による評価書など)
・共有者の所在等が不明であることを裏付ける資料(住民票、戸籍の附票、返送された郵便物など)
・行方不明者以外の共有者全員の売却意思や、買主候補・売却条件がわかる資料(売買契約書案、売却同意書、買主候補・売却価格を整理した資料など)
■費用
・申立手数料:収入印紙1,000円 × 申立て対象となる持分の数
・官報公告費用の予納金:7,000〜8,000円台程度
・郵便切手:6,000円分
・共有者など通知対象となる関係者が増える場合の追加郵便切手
・専門家に依頼する場合の報酬
・裁判所が定める供託金

供託金とは、所在等不明共有者が本来受け取るべき金銭を確保するためのお金です。譲渡制度では、行方不明者の持分も含めて不動産全体を第三者へ売却するため、行方不明者が本来受け取るべき持分に応じた売却代金相当額を、法務局などの供託所に預けます。

供託金の額は、裁判所が不動産の評価資料などをもとに判断します。不動産会社の査定書や不動産鑑定士による評価書などが参考にされることもありますが、申立ての内容や不動産の状況によって必要な資料は異なります。

申立て前に弁護士や不動産評価に詳しい専門家へ相談しておくと、必要な評価資料や供託金の見通しが立てやすくなるでしょう。

参考:裁判所「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与の申立てについて」

所在等不明共有者持分取得制度で行方不明者の持分を取得してから売却する

所在等不明共有者持分取得制度とは、地方裁判所の決定を得て、所在がわからない共有者の持分を他の共有者が取得できる制度です。(民法第262条の2)

所在等不明共有者持分取得制度も、前述の譲渡制度と同じ背景から、2023年4月1日に施行された民法改正で設けられた制度です。

譲渡制度は不動産全体の売却を前提とする手続きですが、取得制度は、持分取得後に売却するか、活用するかを改めて検討できます。譲渡制度のように、申立て前から買主候補や売却条件を固めておく必要がない点が大きな違いです。

たとえば、兄弟3人の共有名義になっている実家のうち1人が行方不明でも、取得制度を利用してその持分を取得できれば、残り2人で売却や活用の方針を決めやすくなります。

所在等不明共有者持分取得制度は、次のようなケースに向いています。

  • 行方不明者の財産全体を管理する必要はなく、不動産の共有関係だけを整理したい場合
  • 持分取得後に、売却時期や売却条件をじっくり検討したい場合
  • 他の共有者が、行方不明者の持分を取得する意思や資金を持っている場合

取得制度では、行方不明者の持分を取得するための資金が必要になります。所在等不明共有者の持分の時価相当額を考慮して裁判所が定めた金額を、供託金として納めるためです。

譲渡制度では売却代金から供託金を回収できる見込みがありますが、取得制度はすぐに売却するとは限らないため、申立人の一時的な持ち出しになる可能性があります。

行方不明者以外の共有者全員が不動産全体の売却に合意しており、買主候補や売却条件も決まっている場合は、取得制度よりも所在等不明共有者持分譲渡制度の方が向いている場合があります。

所在等不明共有者持分取得制度を利用するための要件

所在等不明共有者持分取得制度を利用するには、主に次のような要件を満たす必要があります。

  • 共有者の氏名・名称または所在を調査しても確認できないこと
  • 不動産の共有者が、不動産所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行うこと
  • 裁判所が定めた供託金を納付すること
  • 所在等不明共有者の持分が、共同相続人間で遺産分割をすべき相続財産に含まれている場合は、相続開始から10年が経過していること

譲渡制度と同様に、対象不動産の遺産分割協議が終わっていない場合は、相続開始から10年が経過していないと制度を利用できない可能性がある点に注意が必要です。その場合は、不在者財産管理人制度など、別の方法を検討する必要があります。

申請手続きから売却までの流れ

所在等不明共有者持分取得制度を利用する流れは、次のとおりです。

  1. 所在等不明であることを示す資料や、不動産の評価資料を準備する
  2. 持分取得後の売却・活用方針や、取得する共有者を整理する
  3. 不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる
  4. 裁判所による公告・通知が行われる
  5. 裁判所が定めた供託金を納付する
  6. 裁判が確定したら、所在等不明共有者の持分移転登記を行う
  7. 持分取得後に、不動産全体の売却や活用を検討する

取得制度では、裁判が確定すると、申立人が所在等不明共有者の持分を取得できます。申立人が1人であればその人が持分を取得し、複数の場合は各申立人の持分割合などに応じて取得するため、取得後の持分関係も確認しておきましょう。

申立てでは、主に次のような書類や費用が必要になります。

■資料
所在等不明共有者持分取得決定申立書
・不動産の登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・不動産の評価に関する資料(不動産会社の査定書、不動産鑑定士による評価書など)
・共有者の所在等が不明であることを裏付ける資料(住民票、戸籍の附票、返送された郵便物など)
■費用
・申立手数料:収入印紙1,000円 × 申立て対象となる持分の数 × 申立人の数
・官報公告費用の予納金:7,000〜8,000円台程度
・郵便切手:6,000円分
・共有者など通知対象となる関係者が増える場合の追加郵便切手
・専門家に依頼する場合の報酬
・裁判所が定める供託金

取得制度では、行方不明者の持分を取得するため、その対価にあたる金額を供託します。行方不明の共有者本人に直接支払えないため、申立人がいったん供託所に預け、所在等不明共有者が後から請求できるようにします。

参考:裁判所「所在等不明共有者持分取得申立てについて」

できるだけ裁判所手続きを避けて不動産全体を売却したい場合や、共有者本人と話し合える余地がある場合は、まず所在確認から進めるのが現実的です。共有者の所在がわかり、本人から売却の同意を得られれば、裁判所手続きを使わずに共有名義不動産全体の売却を進められます。

共有者が行方不明の場合は、まず兄弟・子ども・配偶者などの親族、昔の勤務先の関係者、近隣住民、共通の知人などに確認し、連絡を取れるか検討しましょう。

それでも所在がわからない場合は、次のような方法で行方不明の共有者を探すこともできます。

  • 登記事項証明書で登記上の住所を確認する
  • 住民票や戸籍の附票で現在の住所を確認する
  • 探偵調査を検討する
ポイント

【「連絡が取れた=売却できる」ではない】

共有者の所在がわかり、連絡が取れたとしても、必ず不動産全体を売却できるわけではありません。最終的には、共有者本人が売却に同意する必要があるためです。

長年連絡を取っていなかった共有者の場合、親族間の不仲や過去のトラブルなどを理由に、「売却に協力したくない」と同意してもらえないケースもみられます。

所在確認は大切ですが、連絡が取れれば売却できると過度に期待しすぎず、相手の意向を確認しながら慎重に交渉を進めましょう。

登記事項証明書で登記上の住所を確認する

不動産の登記事項証明書を取得すれば、共有者の氏名・持分割合・登記上の住所などを確認できます。登記事項証明書は、共有者本人や利害関係者でなくても取得できます。

対象不動産の地番や家屋番号がわかれば、法務局の窓口やオンライン請求で取得できます。住所と地番は異なる場合があるため、地番がわからないときは、固定資産税の納税通知書や権利証、法務局の地番照会などで確認しましょう。

取得費用は、書面請求の場合は1通600円、オンライン請求で郵送受取をする場合は1通520円、オンライン請求で窓口受取をする場合は1通490円です。

登記上の住所に手紙を送ったり、過去の連絡先と照合したりすることで、連絡の糸口が見つかることがあります。

ただし、登記上の住所が現在の住所とは限りません。住所変更登記がされていない場合は古い住所が残っていることもあるため、連絡が取れない場合は住民票や戸籍の附票による調査も検討します。

住民票や戸籍の附票で現在の住所を確認する

登記事項証明書に記載された住所で連絡が取れない場合は、住民票や戸籍の附票で現在の住所を確認できる場合があります。

住民票では現在の住所や前住所、戸籍の附票では住所の移転履歴を確認できます。共有者が登記上の住所から転居している場合でも、これらの書類から現在の住所をたどれる可能性があります。

ただし、住民票や戸籍の附票は、他の共有者が自由に取得できるわけではありません。住民票は原則として本人または同一世帯の人、戸籍の附票は本人・配偶者・直系尊属・直系卑属などが請求できます。兄弟姉妹や別世帯の親族、他の共有者が請求する場合は、権利行使や義務履行のために必要であることなど、正当な理由や資料を求められます。

実務上は、共有物分割請求や不在者財産管理人の申立てなどを見据えて、弁護士や司法書士に相談する方法が一般的です。専門家に依頼すれば、手続きに必要な範囲で住民票や戸籍の附票などを確認してもらえる場合があります。

探偵調査を検討する

親族や公的書類による確認でも所在がわからない場合は、探偵業者への調査依頼を検討する方法もあります。探偵業者は、聞き込みや張り込みなどによって、共有者の所在に関する情報を調査し、結果を報告してくれます。

ただし、探偵に依頼できるのは、基本的に所在調査までです。共有者が見つかった後の売却交渉や、共有物分割請求や不在者財産管理人の申立てなどの法的手続きは、自分で対応するか、弁護士などの専門家に依頼する必要があります。

探偵調査の費用は、調査期間や難易度、調査員の人数、遠方調査の有無などによって大きく変わります。簡単な所在調査であれば10万円程度で済むこともありますが、情報が少ない場合や行方がわからなくなってから長期間経過している場合は、100万円以上かかることもあります。

そのため、探偵調査は、過去の住所や勤務先、親族関係、電話番号など、共有者につながる手がかりがある程度残っている場合や、行方がわからなくなってからの期間が比較的短い場合に向いています。

売却を目的として共有者を探す場合は、探偵調査だけで解決できるか、見つかった後の交渉や法的手続きまで見据えて弁護士に相談すべきかを比較して判断しましょう。

共有者行方不明時に不動産全体を売却できないときの対策

裁判所の手続きを利用するのが難しい場合は、共有名義不動産全体の売却ではなく、自分の共有持分のみを売却する方法もあります。

共有持分は、各共有者がそれぞれ持つ権利です。自分の共有持分のみであれば、行方不明の共有者の同意を得ずに売却できます。

ただし、共有持分を取得しても、不動産全体を単独で自由に利用・売却できるわけではないため、一般の個人買主が共有持分だけを購入するケースは実務上多くありません。

そのため、共有持分を売却する場合は、通常の不動産のように不動産仲介で一般の買主を探すのではなく、共有持分の売却に適した方法を検討するのが基本です。主な方法としては、次の2つが挙げられます。

  • 自分の共有持分を他の共有者に売却する
  • 自分の共有持分を買取業者に売却する

共有持分の売買に携わる弊社の立場では、まず他の共有者への売却を検討することをおすすめします。第三者が新たな共有者になると、他の共有者との間でトラブルに発展する可能性があり、売却価格も安くなりやすいためです。

他の共有者に買い取る意思や資金がない場合、関係性の問題で交渉が難しい場合など、共有者への売却が難しい事情があるときは、共有持分を扱う買取業者への売却を検討するとよいでしょう。

共有持分の売却については、次の記事でも詳しく解説しています。

自分の共有持分を他の共有者に売却する

行方不明の共有者以外に、所在がわかる共有者がいる場合は、その共有者に自分の持分を売却する方法があります。相手が不動産を手放したくない場合や、今後も利用・管理を続けたいと考えている場合は、持分の買い取りに応じてもらえる可能性があります。

売却までの流れは、次のとおりです。

  1. 他の共有者に持分を売却したい意向を伝える
  2. 登記事項証明書や固定資産評価額などをもとに価格を話し合う
  3. 売買価格や支払時期、登記手続きの負担を確認する
  4. 売買契約を締結し、決済・持分移転登記を行う

他の共有者に売却する場合は、「市場価格 × 持分割合」を交渉の出発点にするのが一般的です。親族間などで相場から大きく離れた価格で売買すると、差額が贈与とみなされる可能性があります。

また、共有者間で売買する場合でも、口約束だけで進めるのは避けましょう。不動産会社や司法書士、税理士などに相談し、価格の妥当性や税金、登記手続きを確認したうえで、売買契約書を作成して進めることが大切です。

自分の共有持分のみを買取業者に売却する

他の共有者への売却が難しい場合は、買取業者に共有持分を売却する方法があります。共有持分専門の買取業者であれば、共有者が行方不明の状態でも持分を買い取れる場合があり、早期に現金化できる可能性があります。

売却までの流れは、次のとおりです。

  1. 共有持分の買取業者へ相談する
  2. 登記事項証明書や固定資産税納税通知書などをもとに査定を受ける
  3. 買取価格や契約条件を確認する
  4. 売買契約を締結し、決済・持分移転登記を行う

ただし、買取業者に共有持分を売却する場合の価格は、「市場価格 × 持分割合 × 1/3〜1/2程度」がひとつの目安となり、不動産全体を売却する場合よりも価格が低くなる傾向にあります。

ポイント

【共有持分の買取価格が低くなりやすい理由】

共有持分の買取価格が低くなりやすいのは、買取業者が持分取得後にかかる手間やコストを査定額に反映するためです。

弊社の査定実務でも、取得後に共有関係をどう整理できるか、どの程度の時間や費用がかかるかを確認します。共有者が行方不明の場合は、行方不明者の所在確認や他の共有者との協議、裁判所手続きなど、共有関係を整理するまでのコストを見込んで価格を判断します。

ただし、行方不明の共有者がいるだけで、必ず査定額が大きく下がるわけではありません。持分割合が大きい、立地条件がよい、他の共有者との協議が見込めるといった事情があれば、査定額が相場より上振れすることもあります。

共有持分の売却相場については次の記事を参考にしてみてください。

共有者が行方不明のケースにおける共有持分の買取事例

株式会社クランピーリアルエステートでも、共有者が行方不明の共有持分を買い取った事例があります。

事案によって異なりますが、通常2週間程度で買取手続きを進められ、お急ぎの事情があれば最短即日で買取できる体制をとっています。下記事例のように、数週間程度で共有持分の買取が完了し、共有状態から抜け出せるケースもあります。

【相談内容】
相続した実家を兄弟2人で共有していたものの、共有者の一人と長年連絡が取れず、不動産全体の売却を進められない状態でした。空き家の維持管理費や固定資産税の負担だけが続き、相談者は「持分を売却してこの負担から抜けたい」と悩んでいました。

【持分売却を検討した理由】
不在者財産管理人制度や所在等不明共有者持分譲渡制度も検討しましたが、裁判所手続きには時間や費用がかかり、すぐに不動産全体を売却するのは難しい状況でした。

【弊社の対応】
弊社では、共有者が相談者と行方不明者の2人のみで権利関係を整理しやすいこと、相談者の持分割合が大きいこと、取得後の権利整理や売却を見込めることなどを評価し、ご相談から1週間程度で共有持分の買取を行いました。結果として、相談者は自分の共有持分を手放し、空き家の維持管理費や固定資産税の負担から離れられました。

※事例は、相談内容の傾向をもとに、個人が特定されないよう再構成しています。

共有者が行方不明のまま共有名義不動産を放置するリスク

共有名義不動産は、複数人で1つの不動産を所有するため、売却や管理、費用負担などについて共有者全員の足並みがそろわないと手続きが進みにくく、トラブルに発展することがあります。

共有者が行方不明だからといって、共有名義不動産をそのまま放置すると、次のようなリスクが生じます。

  • 共有名義不動産全体の売却を通常どおり進められない
  • 固定資産税や維持管理費の負担が所在のわかる共有者に偏りやすい
  • 相続が発生すると共有者が増えて権利関係が複雑になる
  • 空き家の場合は管理不全空家等・特定空家等に指定される可能性がある

共有持分のリスクについては、次の記事も参考にしてみてください。

共有名義不動産全体の売却を通常どおり進められない

共有名義不動産全体の売却は、共有者全員の権利をまとめて処分する行為にあたるため、一部の共有者だけで進めることはできません。民法第251条でも、共有物に変更を加えるには、原則として他の共有者の同意が必要とされています。

そのため、共有者のうち一人でも行方不明で同意を確認できない場合、通常の方法では不動産全体の売却を進められません。

共有者の同意を得られないまま放置すると、売却のタイミングを逃したり、固定資産税や管理費の負担だけが続いたりするおそれがあります。

不動産全体の売却が難しい場合は、所在確認を進めるのか、裁判所手続きを検討するのか、自分の共有持分だけを売却するのかを早めに整理しましょう。

共有名義不動産が売却できないときの対処については、次の記事でも詳しく解説しています。

固定資産税や維持管理費の負担が所在のわかる共有者に偏りやすい

行方不明の共有者がいる場合、固定資産税や維持管理費の実質的な負担が、所在のわかる共有者に偏りやすくなります。

不動産を所有する限り、固定資産税・都市計画税のほか、建物の修繕費、庭木の手入れ費用、空き家の見回り費用、マンションの管理費・修繕積立金などが継続的に発生します。

これらの費用は、本来であれば共有者全員で負担します。民法第253条に基づき、持分割合に応じて負担するのが原則です。

しかし、共有者の所在がわからないと、費用分担について話し合ったり、立て替えた費用を精算したりすることが難しくなります。とはいえ、固定資産税の納付や最低限の管理を放置できないため、実務上は、所在のわかる共有者がいったん負担せざるを得ないケースもあります。

固定資産税や維持管理費の負担が続いている場合は、放置せず、裁判所手続きを利用した売却や共有持分のみの売却も含めて、早めに対応を検討しましょう。

ポイント

【共有名義は固定資産税や維持管理費の負担トラブルが多い】

実務では、共有名義不動産では、固定資産税や維持管理費の負担をめぐるトラブルは珍しくありません。

実際、弊社にも「長期間、自分だけで固定資産税を支払ってきたが、負担が大きくなってきた」といった相談が寄せられます。年10万円の固定資産税でも、10年続けば100万円の負担になり、「このお金を裁判所手続きの費用に充てればよかった」と悔やまれるケースもあります。

共有者が行方不明で、固定資産税や維持管理費の負担が続いている場合は、費用の分担や精算について話し合うことも難しいため、早めに売却方法や共有関係の整理を検討しましょう。

共有名義不動産における固定資産税のルールは、次の記事も参考にしてみてください。

相続によって権利関係がさらに複雑になることがある

行方不明の共有者が亡くなって相続が発生すると、その人の共有持分は相続人に引き継がれ、権利関係がさらに複雑になるおそれがあります。

登記上は従前の共有者のままでも、実際にはその相続人が関係者になるため、売却や管理について誰の同意が必要なのかを確認するだけでも時間がかかることがあります。

たとえば、兄弟3人で共有している不動産について、行方不明の兄弟の一人が亡くなっていた場合、その配偶者や子どもが持分を承継している可能性があります。この場合、不動産全体を売却するには、行方不明だった共有者本人ではなく、その相続人の範囲や所在を確認しなければなりません。

共有者が増えるほど、全員の所在確認や意思確認に時間がかかり、不動産全体の売却や維持管理に関する協議も進めにくくなります。すでに共有者と連絡が取れない場合は、相続関係がさらに複雑になる前に、相続人調査や売却方法の整理を進めておくことが大切です。

不動産を共有名義で相続するデメリットについては、次の記事も参考にしてみてください。

空き家の場合は管理不全空家等・特定空家等に指定される可能性がある

共有名義不動産が空き家のまま放置されると、管理不全空家等や特定空家等として扱われ、行政指導や固定資産税等の住宅用地特例を受けられなくなるおそれがあります。

  • 管理不全空家等:適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれがある空き家
  • 特定空家等:建物の倒壊、悪臭や害虫の発生、景観の悪化などにより、周辺に迷惑や危険を及ぼすおそれがある空き家

2023年の法改正により、特定空家等になる前段階の「管理不全空家等」も、行政による指導・勧告の対象になりました。倒壊の危険があるほど状態が悪化していなくても、管理が不十分な空き家は、市区町村から改善を求められる可能性があります。

市区町村から勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例を受けられなくなる場合があります。小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されているのが基本ですが、この特例による減税が外れてしまうため、土地の固定資産税負担が増えます。

また、特定空家等に指定された後、行政からの命令に従わない場合は、50万円以下の過料の対象になることがあります。必要な対応をしないまま放置すると、行政代執行によって解体などが行われ、その費用を請求される可能性もあります。

共有者が行方不明の場合、空き家の管理状態が悪化しても、修繕・伐採・解体・売却などの方針を共有者間で話し合うのが難しくなります。その間に屋根や外壁の傷み、庭木の越境などが進むと、近隣から苦情が入り、修繕・伐採・解体などの対応が必要になることもあります。

管理不全空家等や特定空家等に指定される前に、所在確認や売却方法、解体・管理費用の負担方法を早めに整理しておくことが大切です。

まとめ

共有者が行方不明の場合でも、登記事項証明書や住民票、戸籍の附票などで所在を調査し、所在が判明して本人の同意を得られれば、共有者全員の合意によって不動産全体の売却を進められます。

調査しても共有者の所在がわからない場合は、売却したい範囲や共有者の状況に応じて、所在等不明共有者持分譲渡制度や所在等不明共有者持分取得制度、不在者財産管理人制度、失踪宣告などを専門家に確認しながら検討します。

売却目的であれば、まず所在等不明共有者持分譲渡制度・取得制度が利用できるかを確認しましょう。これらの制度は、共有名義不動産の売却や持分整理を目的とした制度であるため、従来の制度のように売却まで遠回りになりにくいです。

ただし、行方不明者の財産全般を管理する必要がある場合や、死亡を前提に相続関係を整理する必要がある場合は、不在者財産管理人制度や失踪宣告が適しているケースもあります。そのため、制度ごとに目的や要件、売却までの見通しや手続きの負担を踏まえて判断することが重要です。

また、不動産全体の売却が難しい場合でも、自分の共有持分のみであれば、他の共有者の同意を得ずに売却できます。不動産全体の売却にこだわらず、早期の現金化や共有関係から離れることを優先したい場合は、共有持分の買取に対応している不動産会社へ相談することも選択肢です。

まずは所在調査の結果と売却したい範囲を整理し、不動産全体を売却したいのか、自分の共有持分だけを売却したいのかに応じて、弁護士・司法書士・不動産会社へ相談しましょう。

よくある質問

共有者の住所はわかるものの連絡が取れない場合も、所在等不明共有者として扱えますか?

住所が判明しているものの、電話やメールに応じないだけの場合は、所在等不明共有者として扱えるとは限りません。所在そのものが確認できないケースと、所在はわかっているものの協議に応じてもらえないケースは分けて考える必要があります。

住民票や戸籍の附票などで現在の住所を確認できている場合は、「所在がわからない」というよりも、「連絡が取れない」「売却の同意を得られない」状態として整理するのが自然です。

一方で、登記上の住所に郵便物を送っても戻ってくる、住所地に住んでいる実態がない、住民票や戸籍の附票をたどっても現在の所在がわからないといった場合は、所在等不明共有者として裁判所手続きを検討できる余地があります。

共有者と連絡が取れない場合は、現在の住所を確認できているのか、所在そのものがわからないのかを整理したうえで、弁護士や司法書士に相談しましょう。

行方不明の共有者の家族や親族の同意があれば売却できますか?

行方不明の共有者の家族や親族から同意をもらっても、それだけで共有名義不動産全体を売却することはできません。

行方不明の共有者がいる状態で不動産全体を売却したい場合は、親族の同意だけで進めようとせず、不在者財産管理人制度や所在等不明共有者持分譲渡制度など、裁判所手続きの利用可否を弁護士に確認する必要があります。

なお、本人が有効に代理権を与えており、本人の意思確認や本人確認ができる場合は、親族が代理人として売却手続きに関与できる可能性があります。

ただし、古い委任状があるだけでは、現在も本人の意思に基づく代理権があると確認できない場合もあります。不動産売却や登記手続きでは、本人確認や意思確認が重視されるため、事前に不動産会社・司法書士・弁護士へ確認しましょう。

また、自分の共有持分だけであれば、行方不明の共有者やその親族の同意がなくても売却できます。

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