共有持分放棄の費用はどれくらいかかる?費用の一覧やシミュレーション

不動産実務の現場において、「共有名義の不動産から抜け出したい」「管理の負担をこれ以上負いたくない」といったご相談をいただく際、多くの方が一度は検討されるのが共有持分の放棄です。

しかし、いざ手続きを進めようとすると「放棄するだけなのに費用がかかるのはなぜ?」「誰がどの費用を負担すべきかわからず、共有者と話がまとまらない」といった壁に突き当たるケースが多いものです。

まず大前提として、共有持分の放棄は所有者に認められた権利であり、持分を手放すこと自体は無償となります。

しかし、実際には法務局での登記費用や司法書士費用、書類取得費用などの負担が発生します。また、放棄された持分は他の共有者に帰属するのが原則であり、税務上は「贈与を受けた」とみなされるため、贈与税が発生する可能性がある点にも注意が必要です。

放棄する人に関しては、基本的に手続き費用のみなので、約3万円〜6万円の費用負担で済むケースが多いです。一方、持分を取得する人は手続き費用の約6万円~12万円に加え、登録免許税や不動産取得税、贈与税などが発生するため、総額が数十万円以上に膨らんでしまう可能性があります。

専門家の立場から見ると、費用負担の内訳を正しく把握せずに放棄を進めた結果、想定外の出費が重なり、他の共有者との間で金銭トラブルに発展してしまうケースは珍しくありません。

そのため、持分の放棄をする際には費用のシミュレーションを行ったうえで、他の共有者に納得してもらえるよう話し合うことが大切です。

また、共有持分の放棄自体は単独の意思表示で成立しますが、登記名義を変更するには取得者側の協力が必要となるのが実務上の原則です。

そのため、相手方の協力が得られなければ進められないという実務上のハードルもあり、場合によっては、費用を支払って放棄するよりも、専門の買取業者へ売却した方が、経済的に合理的な選択肢となるケースもあります。

本記事では、共有持分放棄の費用はどれくらいかかるのか、持分を放棄する人と取得する人に分けて内訳を詳しく解説します。共有持分放棄の費用感がわからず悩んでいる方は、ぜひ本記事をご活用ください。

目次

共有持分放棄にかかる費用の総額目安

あくまでも弊社の実務経験をもとにした目安ですが、共有持分放棄にかかる費用の総額目安は以下のとおりです。

費用項目 取得する人の費用目安 放棄する人の費用目安
登録免許税 固定資産税評価額 × 2%(持分相当分) 原則かからない
司法書士への依頼報酬 5万円〜10万円前後 3万円〜5万円程度
※実務上は依頼しないケースも多い
必要書類取得費
(登記事項証明書・評価証明など)
5,000円〜1万円程度 300円〜500円程度
郵送費・実費 数千円程度 数千円程度
不動産取得税 原則として固定資産税評価額×3% 原則かからない
専門家相談料 1時間ごとに1万円程度 1時間ごとに1万円程度
固定資産税の精算金
(調整金)
数千円〜数万円 取得者から放棄者へ支払われるケースが多い
合計目安 6万円~12万円程度
+登録免許税+不動産取得税
数千円〜6万円程度

なお、上記の合計目安には、登録免許税および不動産取得税は含まれていません。これらは不動産の固定資産税評価額や取得する持分割合によって変動するため、個別に計算する必要があります。

登録免許税は、持分を取得する側に課される税金であり、原則として「固定資産税評価額×2%(取得する持分相当分)」で算出されます。

不動産取得税も原則として取得者側に課税される税金であり、税率は固定資産税評価額の3%(令和9年3月31日までの軽減税率)です。住宅以外の家屋の持分を取得する場合には、税率が4%となる点に注意が必要ですが、実務上は不動産所得税がかかるケースはあまりありません。

ここでは固定資産税評価額を1,000万円と仮定し、登録免許税、および不動産取得税の計算シミュレーションを行いました。

【評価額1,000万円の不動産で2分の1の持分を取得する場合】
登録免許税:1,000万円×2分の1×2%=10万円
不動産取得税:1,000万円×2分の1×3%=15万円
合計:25万円

取得者側の手続き費用の目安は約6万円〜12万円なので、上記を合算すると総額31万円〜37万円の費用が発生する計算となります。

共有持分放棄は取得者側の費用負担がどうしても大きくなってしまうため、トラブルを招かないよう、放棄する人は事前に他の共有者からの理解を得ておくことが重要となります。

共有持分を放棄する人が負担する費用

共有持分の放棄は無償で持分を手放す行為ではあるものの、実務上は放棄をするために各種手続きが必要であり、その際に一定の費用が発生します。以下では、共有持分を放棄する人が負担する費用について一覧でまとめました。

項目 費用目安
書類取得費用
(印鑑証明書など)
1通につき約300円〜500円
内容証明郵便費用 約1,500円〜2,500円
司法書士への依頼費用 約3万円〜5万円
弁護士への相談費用 1時間ごとに約1万円

最低限なら数千円程度の費用で済みますが、司法書士へ手続きを依頼する場合には3万円〜5万円程度が追加で発生することになります。

また、実務上は珍しいケースではあるものの、共有者間に対立がある紛争案件の場合、弁護士費用を含めて数万円〜十数万円にまで費用が膨らむこともあります。専門家に手続きを依頼するかどうかで、費用感が大きく異なってくると認識しておきましょう。

印鑑証明書などの書類取得費用:1通につき300円〜500円程度

共有持分を放棄する場合、放棄する人が準備する主な書類としては、登記識別情報通知、印鑑証明書、固定資産税の課税明細書、登録印鑑、本人確認書類などがあります。

このうち、新たに役所で発行手続きが必要となるのは、原則として印鑑証明書のみです。役所のほか、対応している地域であれば、マイナンバーカードを使用してコンビニで発行することもできます。取得方法や自治体によって費用は異なりますが、1通につき300円〜500円程度が目安となります。

なお、固定資産税の課税明細書を紛失している場合、代わりに「固定資産税評価証明書」を役所で発行する必要があります。こちらも役所の窓口やコンビニで発行が可能で、費用は1通につき200円〜300円程度となります。

そのため、書類取得費用の合計額は300円〜800円程度が目安と考えておきましょう。

内容証明郵便費用:1,500円〜2,500円程度

共有持分の放棄は、民法上、単独の意思表示によって効力が生じるとされています。そのため、共有者に対して放棄の意思を明確に伝える必要があります。

実際に持分放棄が行われる際には、意思表示を証拠として残すために「内容証明郵便」を利用するのが基本です。内容証明郵便とは「いつ・誰が・どのような内容の文書を送ったのか」を郵便局が証明してくれる制度であり、将来の紛争防止に役立ちます。

費用は文書の枚数や送付方法によって異なりますが、実務上は1,500円〜2,500円程度に収まることが多いでしょう。

なお、口頭での意思表示も法律上は可能ですが、その場合は証拠が残らないため、後に「聞いていない」「合意していない」といったトラブルに発展するリスクがあります。共有者間の関係性が良好であっても、将来的な紛争防止の観点からは、専門家の立場としても内容証明郵便による通知を推奨します。

司法書士への依頼費用:3万円〜5万円前後

司法書士報酬は事務所や依頼内容によって異なりますが、意思表示書の作成や関連手続きのサポートといった限定的な依頼であれば、3万円〜5万円前後が一つの目安となります。

共有持分の放棄に関する登記手続きは、通常、持分を取得する側が主体となって行います。そのため、放棄する側が司法書士へ登記業務を依頼するケースは、実務上は少ないものです。

しかし、共有者間で対立が生じている場合には、後に「放棄は無効だ」「正式な意思表示ではない」といった争いにならないよう、放棄者自身が証拠として文書を残しておかなければなりません。

このようなケースの場合は、放棄の意思表示書の作成や、手続きのサポートを受けるために放棄者側が司法書士に依頼する場合があります。

弁護士への相談費用:1時間ごとに1万円程度

共有持分の放棄について弁護士に相談する場合、1時間あたり1万円程度の法律相談料が発生します。実際の金額は法律事務所によって異なりますが、初回相談から時間単位で費用が発生する料金体系を採用している事務所が大半です。

もっとも、持分放棄そのものについて弁護士へ相談するケースは、実務上は非常に少ないものです。共有者間で大きな対立がない場合には、基本的に司法書士に書類作成や登記手続きを依頼するだけで済みます。

一方で、「共有者が放棄に強く反対している」「登記手続きに協力してもらえず話し合いがまとまらない」といった状況では、紛争化する可能性があります。このような場合には、今後の見通しや法的な対応について助言を受ける目的で、弁護士へ相談するケースがみられます。

専門家の立場から見ると、書類作成や登記手続きの代行のみであれば、弁護士の関与は必須ではありません。しかし、共有者間で感情的な対立が発生している場合には、早い段階で弁護士に相談して法的見解を確認しておくことで、無用な紛争や余計な費用が発生するリスクを抑えられます。

共有持分を取得する人が負担する費用

共有持分の放棄において、実際に費用負担が大きくなるのは、持分を取得する側です。放棄は無償で行われる手続きであっても、取得者側には登記や税金に関する負担が生じるため、想定以上の出費となるケースも少なくありません。

実際、持分買取を専門とする弊社にも「持分放棄の費用負担が大きくなりそうだから、買取とどちらが良いか比較したい」といったご相談が寄せられることがあります。

そのため、とくに持分放棄によって新たに持分を取得する人は、どれほどの費用がかかりそうなのかを事前に調べておくことが大切です。以下では、共有持分を取得する人が負担する費用について一覧でまとめました。

項目 費用目安
登録免許税 固定資産税評価額×2%
司法書士への依頼費用 5万円〜10万円前後
不動産取得税 固定資産税評価額×3%
(土地・住宅の場合)
弁護士への相談費用 1時間ごとに1万円程度
固定資産税の精算金
(調整金)
数千円〜数万円
贈与税 持分の課税額によって異なる

登録免許税:固定資産税評価額 × 2%

登録免許税とは、不動産の所有権移転登記などを行う際に課される税金です。共有持分の放棄に伴い、共有者が持分を取得する登記を行う場合にも、登録免許税が発生します。

登録免許税の税率は、持分の移転原因によって異なります。共有持分の放棄は実質的に贈与を受けたものと扱われるため、原則として「固定資産税評価額 × 2%」となります。なお、課税対象となるのは取得する持分相当分のみです。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地について、2分の1の持分を取得する場合、以下のように計算します。

登録免許税:1,000万円 × 1/2 × 2%=10万円

登録免許税は金融機関で現金納付を行い、発行された領収証書を登記申請書に貼付して法務局へ提出します。なお、司法書士へ登記を依頼する場合には、登録免許税相当額を実費として預け、納付から登記申請までを一括して代行してもらう形が実務上の基本となります。

司法書士への依頼費用:5万円〜10万円前後

共有持分の放棄による移転登記を司法書士に依頼する場合、報酬の目安は5万円〜10万円前後となります。ただし、具体的な金額は不動産の種類や共有者間の関係性、手続きの難易度によって変動するため、正式な依頼前に見積もりを確認しましょう。

なお、移転登記は本人でも申請することはできますが、専門知識が求められることから、書類の作成や収集に時間がかかってしまうことが多いです。また、登記申請書の記載内容や添付書類に不備があると、法務局から補正や差し戻しを受け、さらに大幅な時間を要するケースもあります。

そのため、専門家の立場としては、速やかに登記申請を済ませるためにも司法書士に依頼して登記手続きを代行してもらうことを推奨します。とくに、共有者の人数が多く申請書の内容が複雑になりそうな場合には、司法書士のサポートが心強い味方となるでしょう。

不動産取得税:固定資産税評価額×3%が原則

不動産取得税とは、その名のとおり不動産を取得した際に課される地方税です。共有持分の放棄によって持分を取得した場合も、取得者側に不動産取得税が課される可能性があります。

税率は原則として「固定資産税評価額 × 4%」ですが、土地・家屋を取得する場合は3%の軽減税率が適用されます(令和9年3月31日まで)。

住宅以外の家屋の持分を取得する場合には、本則税率である4%の税率が適用されます。いずれの場合も、不動産全体の評価額ではなく、取得する持分相当分が課税対象となります。

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の住宅について、2分の1の持分を取得する場合、以下のように計算します。

不動産取得税:2,000万円 × 1/2 × 3% = 30万円

不動産取得税は地方税であるため、取得からおおむね半年〜1年程度経過したころに、都道府県から納付書が自宅へ送付されるのが通常の流れです。

実務では、不動産取得税の存在を失念しており、納付書が届いてから資金の準備に慌てるというケースも多く見受けられます。持分を取得した時点で不動産取得税を計算しておき、納付書が届くまでに納税資金を確保しておくことが大切です。

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弁護士への相談費用:1時間ごとに1万円程度

弁護士事務所によって金額に差はあるものの、弁護士へ相談する場合の費用は、1時間あたり1万円程度が目安となります。相談料の水準については、放棄者側が弁護士へ相談する場合と大きく変わりません。

取得者側が弁護士へ相談するのは、持分を取得したくないにもかかわらず他の共有者から押し付けられていると感じる場合や、実質的な価値が乏しい不動産をめぐって当事者間で対立が生じているケースなどです。

また、まれな事例ではあるものの、共有者同士の話し合いが決裂し、双方が弁護士を選任して主張を交わす状況に発展する場合もあります。弁護士に正式に依頼をした場合、相談料に加えて着手金や成功報酬などが発生するため、さらに大きな費用がかかります。

放棄する人との間でトラブルが生じそうな場合には、早めに弁護士に相談し、今後の対応についての助言を受けるようにしましょう。

固定資産税の精算金(調整金):数千円〜数万円

固定資産税の精算金(調整金)とは、その年の固定資産税を、持分を放棄する人と取得する人の間で「実際に所有していた期間」に応じて按分するためのお金のことです。不動産の実務では、名義が移転するタイミングを基準に、日割り計算をする形がとられています。

たとえば、1月1日を起算日とし、6月30日に持分の引き渡しが完了した場合、7月1日から12月31日までの分を取得者側が負担する形で精算することになります。金額は固定資産税によって異なりますが、数千円~数万円程度になることが多いです。

実務上の注意点として、起算日を1月1日とするのか、4月1日とするのかは地域によって異なる場合があります。どの日を基準に計算するのかは自由に決められるため、放棄する人と話し合って決めましょう。

また、固定資産税の精算金は法律で義務付けられている制度ではなく、不動産業界における慣例として扱われています。そのため、持分を取得するからといって、必ず精算しなければならないというわけではありません。

実際の事例においては、売買では精算を行うことが基本とされていますが、無償での譲渡となる共有持分の放棄では精算を行わないケースも多くみられます。最終的には当事者間の合意によって決められるため、事前によく話し合っておく必要があります。

贈与税

贈与税とは、無償で財産を受け取った場合に課される税金です。

共有持分は放棄されると共有者に帰属するのが原則ですが、この「帰属」というのは「無償で持分を取得したもの」とみなされます。そのため、実務上多くはありませんが、放棄によって持分を取得した人には贈与税が課される可能性があります。

贈与税の計算方法は以下のとおりです。

(持分の評価額 - 110万円) × 税率 - 控除額

贈与税には年間110万円の基礎控除が設けられており、取得した持分の評価額から110万円を差し引いた残額が課税価格となります。課税価格に税率を掛け、さらに税率ごとに定められた控除額を差し引けば贈与税が算出できます。

贈与税の税率および控除額については、「誰から財産を譲渡されたのか」によって異なります。まず、親から18歳以上の子、祖父母から18歳以上の孫などへ持分の贈与があった場合の税率は以下のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

上記以外のケース、たとえば兄弟間や夫婦間、親から子への贈与で子が未成年者の場合などは、以下の税率と控除額が適用されます。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

共有持分の贈与税については、持分の評価額を適切に判断する必要があり、計算方法が非常に複雑になります。そのため、実務上は税理士に依頼して正しい税額を計算してもらったうえで、税金を納めるケースが基本です。

持分の取得によって贈与税が発生しそうなときは、早めに税理士に相談しておきましょう。

参照:贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

共有持分放棄にかかる費用をシミュレーション

共有持分放棄にかかる費用は、不動産の評価額や持分割合、当事者間の関係性によって大きく変わります。

ここでは、以下のような前提条件を設定し、共有持分放棄にかかる費用のシミュレーションを行います。

  • 兄弟2人名義の住宅
  • 持分割合は各2分の1
  • 弁護士の関与は無し

不動産全体の固定資産税評価額が1,000万円・3,000万円・5,000万円の場合について、放棄する側と取得する側それぞれの費用目安を具体的に試算していきます。

不動産全体の評価額が1,000万円の場合の費用シミュレーション

不動産全体の評価額が1,000万円で、司法書士へ移転登記を依頼し、弁護士の関与はないものとしてシミュレーションを行います。

不動産全体の固定資産税評価額が1,000万円の場合、取得する持分は2分の1なので、持分相当分の評価額は500万円です。そのため、税金については500万円を基準に計算していきます。

まず、共有持分を放棄する人の費用シミュレーションの内訳は以下のとおりです。

項目 概要 費用目安
書類取得費 印鑑証明書など 300円〜800円
内容証明郵便 文量・通数により変動 1,500円〜2,500円
司法書士費用 意思表示書の作成を依頼する場合のみ 約3万円〜5万円
合計費用 約2,000円〜3,300円
(司法書士に依頼するなら約3万円〜5万円台)

次に、共有持分を取得する人の費用シミュレーションの内訳は以下のとおりです。

項目 計算方法 費用目安
登録免許税 500万円 × 2% 10万円
不動産取得税 500万円 × 3% 15万円
司法書士報酬 事務所によって異なる 5万円〜10万円
固定資産税の精算金 所有期間に応じて按分 数千円〜数万円
贈与税 (500万円−110万円)×20%−25万円 53万円
合計費用 約83万円〜90万円

持分を放棄する人は数千円から数万円の費用で済む一方、取得する人には100万円近い費用がかかる結果となりました。

なお、贈与税は持分の評価方法によって変動し得るため、あくまで概算の目安としてもらい、正しい税額は税理士に相談してみてください。

不動産全体の評価額が3,000万円の場合の費用シミュレーション

次に、不動産全体の評価額が3,000万円で、司法書士へ移転登記を依頼し、弁護士の関与はないものとしてシミュレーションを行います。

不動産全体の固定資産税評価額が3,000万円の場合、取得する持分は2分の1なので、持分相当分の評価額は1,500万円です。そのため、税金については1,500万円を基準に計算していきます。

まず、共有持分を放棄する人の費用シミュレーションの内訳は以下のとおりです。

項目 概要 費用目安
書類取得費 印鑑証明書など 300円〜800円
内容証明郵便 文量・通数により変動 1,500円〜2,500円
司法書士費用 意思表示書の作成を依頼する場合のみ 約3万円〜5万円
合計目安 約2,000円〜3,300円
(司法書士に依頼するなら約3万円〜5万円台)

次に、共有持分を取得する人の費用シミュレーションの内訳は以下のとおりです。

項目 計算方法 費用目安
登録免許税 1,500万円 × 2% 30万円
不動産取得税 1,500万円 × 3% 45万円
司法書士報酬 事務所によって異なる 5万円〜10万円
固定資産税の精算金 所有期間に応じて按分 数千円〜数万円
贈与税 (1,500万円−110万円)×45%−175万円 約450.5万円
合計目安 約530万円〜540万円

持分を放棄する人は評価額が高くなっても費用は大きく変わりませんが、取得する人の負担は評価額に比例して大きくなります。とくに贈与税の影響が大きく、評価額3,000万円の場合には数百万円規模の税負担となる点に注意が必要です。

なお、贈与税は持分の評価方法や当事者の関係性によって税率や控除額が変わるため、上記はあくまで概算の目安です。正確な税額については税理士に確認するようにしてください。

不動産全体の評価額が5,000万円の場合の費用シミュレーション

最後に、不動産全体の評価額が5,000万円で、司法書士へ移転登記を依頼し、弁護士の関与はないものとしてシミュレーションを行います。

不動産全体の固定資産税評価額が5,000万円の場合、取得する持分は2分の1なので、持分相当分の評価額は2,500万円となります。そのため、税金については2,500万円を基準に計算します。

まず、共有持分を放棄する人の費用シミュレーションの内訳は以下のとおりです。

項目 概要 費用目安
書類取得費 印鑑証明書など 300円〜800円
内容証明郵便 文量・通数により変動 1,500円〜2,500円
司法書士費用 意思表示書の作成を依頼する場合のみ 約3万円〜5万円
合計目安 約2,000円〜3,300円
(司法書士に依頼するなら約3万円〜5万円台)

次に、共有持分を取得する人の費用シミュレーションの内訳は以下のとおりです。

項目 計算方法 費用目安
登録免許税 2,500万円 × 2% 50万円
不動産取得税 2,500万円 × 3% 75万円
司法書士報酬 事務所によって異なる 5万円〜10万円
固定資産税の精算金 所有期間に応じて按分 数千円〜数万円
贈与税 (2,500万円−110万円)×50%−250万円 約945万円
合計目安 約1,075万円〜1,080万円

持分を放棄する人の費用は評価額が上がってもほぼ変わりませんが、取得する人の負担は評価額に比例して大きく増えます。不動産の評価額5,000万円規模になると、贈与税だけで900万円以上の負担が発生し、合計で1,000万円を超える可能性もあります。

共有持分を放棄する際の実務において、放棄する人と取得する人の費用差が非常に大きいことから、話し合いが難航するケースも多くみられます。そのため、共有者同士での話し合いにより、「高額な費用を支払うくらいなら不動産を手放そう」と決断する方がいるのも事実です。

なお、贈与税は評価方法や当事者の関係性によって変動します。上記は兄弟間を前提とした概算の目安であり、正確な税額については税理士に確認するようにしてみてください。

共有持分放棄の費用を抑えるための対策

共有持分放棄は取得者側に多額の費用がかかってしまうケースが多いですが、対策次第では費用を抑えることも可能です。

ここでは、共有持分放棄にかかる費用をできるだけ抑えるために知っておきたい具体的な対策について、不動産専門家の視点で詳しく解説します。

  • 不動産取得税の軽減制度を確認する
  • 司法書士報酬は事前に見積もりを取る
  • 放棄に必要な書類は可能な限り自分で取得する

不動産取得税の軽減制度を確認する

不動産取得税には、一定の要件を満たす場合に税負担を軽減できる制度があります。

まず、不動産取得税の税率は原則4%ですが、令和9年3月31日までは住宅および土地については3%の軽減税率が適用されます。

そのため、専門家の立場としては、持分を放棄する場合は軽減税率が適用される期間内に手続きを完了させることを推奨しております。

さらに、住宅用不動産の場合には、課税標準から一定額を控除できる特例が設けられており、条件を満たせば最大1,200万円の控除が認められるケースもあります。控除が適用されれば、不動産取得税の負担を大幅に軽減することが可能です。

軽減制度の適用要件は建物の種類や床面積、築年数などによって細かく定められており、自治体ごとに取り扱いが異なります。そのため、軽減措置の対象となるかどうかは、不動産の所在地を管轄する都道府県や市区町村の窓口に確認するのが確実です。

なお、不動産取得税は地方税なので、上記のほかにも各自治体が軽減制度を実施している可能性があります。持分の放棄に伴い不動産取得税が発生しそうな場合には、事前に軽減制度の有無や適用可否を調べておきましょう。

司法書士報酬は事前に見積もりを取る

共有持分の移転登記を司法書士に依頼する場合は、事前に見積もりを取っておくことが大切です。可能であれば、複数の事務所に相談し、費用の内訳や対応を比較するようにしましょう。

司法書士の報酬は自由化されており、全国で一律の料金が定められているわけではありません。そのため、同じ内容の登記手続きであっても、司法書士事務所ごとに報酬額や費用の算定方法が異なります。

実際、「司法書士Aに相談したら相場を超える見積もりを出されたが、司法書士Bに相談したら相場の範囲内だった」という事例もあります。

見積もりの段階で、報酬額のほかに実費や追加費用の有無まで確認しておくことで、想定外の請求を避けることができます。無駄な出費を抑えるためにも、費用の内訳を比較したうえで依頼する司法書士を選びましょう。

放棄に必要な書類は可能な限り自分で取得する

共有持分を放棄する際には、印鑑証明書などの書類が必要になります。

必要書類は司法書士に依頼して代理で取得してもらうことも可能ですが、費用を抑えたい場合には可能な限り自分で取得するようにしましょう。

なぜなら、代理取得を依頼した場合には、発行手数料に加えて郵送費や事務手数料などの実費が上乗せされることがあるためです。金額自体は大きくはありませんが、余計な追加費用がかかってしまいます。

印鑑証明書などの書類はコンビニでも手軽に取得できるため、基本的には自分で取得し、司法書士に提出する形を取りましょう。

共有持分放棄の流れ

共有持分の放棄は意思表示のみで成立するとはされていますが、実際には意思表示をしてから共有者同士で話し合い、全員が納得のうえで登記手続きまで完了させる必要があります。

ここでは以下の手順に沿って、共有持分放棄をする際の流れについて詳しく解説します。

  1. 放棄する人が他の共有者へ放棄の意思を通知する
  2. 登記に必要な書類・費用を確認する
  3. 法務局への登記申請を行う
  4. 取得した人が不動産取得税や贈与税を納める

1.放棄する人が他の共有者へ放棄の意思を通知する

最初に行うのは、持分を放棄する人が他の共有者全員に対して、放棄の意思を明確に伝えることです。

口頭で伝えることも可能ですが、後から「聞いていない」「合意していない」といった争いに発展するおそれがあります。そのため、専門家としては証拠を残すという意味でも、内容証明郵便で通知することを推奨しております。

なお、通知を行う前に、固定資産税評価額や自分の持分割合を確認しておくことも大切です。放棄によって他の共有者にどの程度の持分が帰属するのか、税金が発生しそうかといった点を把握しておけば、相手に対して具体的な説明ができます。

手続きに不安がある場合や、共有者間の関係が複雑な場合には、通知を出す前に司法書士へ相談して状況を整理してもらうのも一つの手段です。

2.登記に必要な書類・費用を確認する

放棄の意思表示を行い、共有者同士で登記手続きに関する合意が取れたら、持分移転登記に向けた準備に入ります。

放棄する側は、印鑑証明書や登記識別情報通知、固定資産税評価証明書などを用意します。

持分を取得する人は住民票や本人確認書類などに加え、登録免許税などの税金がどの程度かかるのかをシミュレーションしておく必要があります。後から「想定外の出費が発生してしまい、納税資金が用意できない」といった事態にならないよう、正確な試算が必要です。

しかし、税金を正確に計算するためには専門知識が必要となるため、とくに不動産の評価額が高い場合には、税理士に相談するようにしましょう。なお、登記手続きについては司法書士などの専門家に相談のうえで進めるのが基本となります。

3.法務局への登記申請を行う

必要書類がそろったら、不動産を管轄する法務局へ共有持分移転登記の申請を行います。放棄の意思表示だけでは名義は変わらず、登記手続きをすることで公的な名義変更が完了します。

申請方法は、法務局の窓口、郵送、オンラインの3つがあります。いずれの方法でも、登記申請書や添付書類に不備があると補正や差し戻しとなるため、書類の内容は慎重に確認する必要があります。

なお、実務では司法書士に依頼して登記を代行してもらうケースが基本です。登録免許税の納付から申請書作成、法務局とのやり取りまで一括して任せられるため、手続きを確実に進めることができます。

自分で申請する場合は、事前に法務局の「登記手続案内」を利用することをおすすめします。法務局では予約制で相談を受け付けており、必要書類や申請書の書き方について説明を受けられます。

参照:登記手続案内|法務局

4.取得した人が不動産取得税や贈与税を納める

持分を取得した人には、登記が完了した後に不動産取得税と贈与税の負担が生じる可能性があります。

不動産取得税は地方税であり、登記申請が完了してからおおむね半年〜1年ほど経過した時期に都道府県から納税通知書が送付されます。通知書に記載された金額を一括で納付するのが原則です。

一方、贈与税は自動的に通知が届くものではありません。持分を取得した翌年の2月16日から3月15日までの間に、取得した人自身が確定申告を行う必要があります。評価額を算出し、基礎控除や税率を踏まえて税額を計算したうえで、一括納付するのが原則です。

不動産取得税は申告手続きが不要ですが、贈与税は自ら計算して申告する必要があるため、評価方法や税率の適用を誤ると過少申告や過大納税につながるおそれがあります。

とくに、共有持分のように計算が複雑な贈与税の確定申告はミスが発生しやすいため、税理士に依頼するのが実務上の基本となります。税理士費用はかかりますが、ミスを防いで確実に納付するためにも、税理士に確定申告を代行してもらうことを推奨します。

共有持分の放棄ができない場合の対策

共有持分の放棄は、法律上は単独の意思表示によって成立するとされています。しかし、実際には他の共有者に登記手続きの協力をしてもらう必要があるため、スムーズに手続きが進むとは限りません。

たとえば「通知をしても登記手続きに協力してもらえない」「税負担を理由に拒否されている」「共有者間の関係が悪化している」など、さまざまな事情によって手続きが停滞することがあります。

共有持分の買取を専門とする弊社でも、諸事情から持分の放棄ができず、売却を検討しているとのご相談を受けることがあります。実際によくある放棄できない理由と、それに合った対策を以下にまとめました。

放棄できない理由 対策
共有者が登記手続きを拒否している ・放棄ではなく買取をしてもらえないか打診する
・不動産全体の売却を提案する
共有者の一部と連絡が取れない状況にある ・家庭裁判所で「不在者財産管理人」を選任して代わりに登記してもらう
・専門の買取業者などに自分の持分のみを売却する
共有者との関係性が悪化している ・弁護士に依頼して仲介してもらいながら話し合いを進める
・専門の買取業者などに自分の持分のみを売却する

共有持分の放棄ができないときに重要なのは、放棄に固執しないことです。放棄はあくまで共有状態を解消するための一つの手段にすぎず、最善の方法とは限りません。

むしろ、持分の放棄は、売却や贈与などができないときにのみ検討される手段です。とくに、取得者側には多額の税金がかかるなどデメリットが多く、また放棄する人にも経済的なメリットはほぼありません。

そのため、共有持分の専門家としては、放棄ができないときは無理に進めようとするのではなく、不動産全体の売却や持分売却を検討することを推奨しております。

他の共有者との話し合いの結果、共有持分の放棄が難しいと感じたときは、他の手段も検討してみてください。

まとめ

共有持分の放棄にかかる費用は、放棄する人であれば数千円〜6万円程度に収まるケースが多い一方、取得する人には6万円〜12万円程度の費用に加え、数十万円から数百万円の税金が発生する可能性があります。とくに贈与税が課される場合、想定以上の負担になることもあるため注意が必要です。

法律上、持分放棄は放棄する人の意思表示のみで効力が生じるとされています。しかし、実務ではその後に名義変更の登記が必要となり、取得する人の協力がなければ手続きは完了しません。

そのため、実際には取得する人に事情や費用負担を説明し、納得を得たうえで進める必要があります。もっとも、取得者側に多額の費用が発生する可能性がある以上、放棄を受け入れてもらえないケースも少なくありません。

そのような場合には、放棄だけにこだわらず、不動産全体の売却や、自分の持分のみを第三者に買い取ってもらうといった選択肢も検討しましょう。あくまでも放棄は共有名義から抜け出す方法の一つにすぎません。

共有者との関係性や費用負担などを考慮したうえで、状況に合わせた方法を選ぶことが大切です。

よくある質問

共有持分の放棄は早い者勝ちなのですか?

共有持分の放棄は「早い者勝ち」と言われることがあります。これは、共有者が次々に放棄していき最後の1人になった場合、その人が単独所有者になり、放棄という形を取ることができなくなるためです。
しかし、単独所有者になれば不動産の売却や賃貸、建て替えなどについて、他の共有者の同意を得ることなく、自分の判断で行えるようになります。したがって、必ずしも不利になるとは限らず、状況によっては単独所有となることが大きなメリットになる場合もあります。

共有持分を放棄した後、固定資産税の納税通知書は誰に届きますか?

固定資産税の納税通知書は、毎年1月1日時点の登記名義人を基準に送付されます。そのため、持分放棄に伴う移転登記が完了していれば、翌年度からは放棄した人のもとには納税通知書は届きません。
共有名義のまま複数人が所有している場合、納税通知書は共有者のうち代表者として選ばれた人のもとへ送付されます。代表者は自治体に届け出る形で決めることが多く、とくに指定がなければ自治体側で選定されることもあります。

共有持分を放棄した後に、再び持分を買い戻すことはできますか?

法的には可能ですが、放棄して他の共有者に帰属した持分を取り戻すには、新たに売買契約を締結する必要があります。単に「戻してもらう」という扱いにはなりません。
その場合、売却する側には譲渡所得税、取得する側には不動産取得税が課される可能性があります。さらに、登録免許税や司法書士報酬などの登記費用も再度かかります。
税金や手続き費用が重複して発生するため、一度放棄した持分を買い戻す方法は現実的とはいえません。放棄をする前に、本当に持分が不要かどうかをしっかり検討しましょう。

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