住宅ローンの持分割合の決め方は?具体例や注意点、間違った際の対処法

不動産を購入する際、夫婦や親子で住宅ローンを組んだり、自己資金や親からの資金援助を組み合わせて頭金を準備したりする場合は、持分割合を定めたうえで不動産を共有名義とするのが一般的です。
もっとも、「持分割合」といわれても初めて触れる方が多く、どのように設定すればよいのか分からないというケースも少なくありません。
実務でも「不動産会社に任せているが、この設定で問題ないのか不安」「仕組みをきちんと理解しておきたい」といった声を耳にすることは少なくありません。
不動産の持分割合は、住宅ローンの返済額に加え、出資した頭金や親からの資金援助などを含めた「各自の負担額」をもとに、次の計算式で算出します。
たとえば、4,000万円の不動産を夫が3,000万円、妻が1,000万円を負担して購入する場合、夫は「3,000万円 ÷ 4,000万円 = 3/4」、妻は「1,000万円 ÷ 4,000万円 = 1/4」の持分となります。
一方で、各自の負担額と持分割合が一致していない場合は、その差額が贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。また、住宅ローン控除の適用可否や控除額にも影響が及ぶため、持分割合の設定は慎重に行う必要があります。
持分割合は一度設定すると、後から修正する際に手続きや費用が発生するため、あらかじめ考え方や計算方法を理解し、適切に設定しておくことが重要です。
本記事では、住宅ローンを利用して不動産を購入する際の持分割合の考え方や計算方法、住宅ローンの種類別の具体例、注意点について解説します。あわせて、負担額と持分割合が異なる場合の対処法や、共有名義にするメリット・デメリットについても解説します。
目次
住宅ローンで不動産を購入する際の持分割合の考え方
持分割合とは、1つの不動産を複数人で所有する「共有名義」において、それぞれがどの程度の所有権を持つかを示す割合です。
不動産を購入する際に、夫婦や親子で住宅ローンを組んだり、自己資金や親からの資金援助を受けて頭金を出したりする場合は、それぞれの負担額に応じて持分割合を決めます。
また、住宅ローンの組み方によって持分割合の考え方は異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで判断することが重要です。
持分割合は「実際の負担割合」で決める
不動産の持分割合は、自己資金と住宅ローンの負担額を合計した「実際の負担割合」をもとに決めるのが基本です。
具体的には、頭金や住宅ローンの返済をそれぞれがどの程度負担するかによって、持分割合を按分します。親や親族から資金援助を受けている場合も、その資金が誰の負担にあたるのかを整理したうえで持分に反映させる必要があります。
たとえば、夫婦で住宅ローンや頭金を出し合い、双方の負担額がそれぞれ2,000万円ずつだった場合、持分割合は「1/2ずつ」となります。
収入の多寡ではなく、あくまで実際に支払う金額ベースで判断する点に注意が必要です。実務でも、この考え方を前提に持分割合を設定するケースが一般的です。
住宅ローンの組み方で考え方が変わる
住宅ローンの組み方によって、持分割合の考え方や設定方法は異なります。代表的な4つのパターンは次のとおりです。
- ペアローンの場合:各自の返済額に応じて持分割合を設定する
- 連帯債務型ローンの場合:各自の返済負担割合に応じて持分割合を設定する
- 連帯保証型ローンの場合:原則として主債務者の単独名義となるが、連帯保証人が頭金などを出資している場合は、その負担額に応じて持分を設定する
- 単独名義ローンの場合:原則としてローン契約者の単独名義となるが、契約者以外が頭金などを出資している場合は、その負担分に応じて持分割合を設定する
いずれのパターンであっても、住宅ローンの借入額だけでなく、頭金や親からの資金援助なども含めた「実際の負担額」をもとに持分割合を判断することが重要です。
ペアローンの場合
ペアローンは、夫婦や親子それぞれが債務者となり、別々に住宅ローンを組む方法です。それぞれが別々に住宅ローン契約を結ぶ形となり、お互いが相手の連帯保証人となるケースが一般的です。
それぞれが自分の借入額に応じて返済義務を負うため、持分割合も各自の住宅ローンの借入額や当初の負担予定額に応じて設定するのが基本です。頭金や親からの資金援助がある場合は、それらも含めて負担額を考えます。
夫:住宅ローンの返済額 + 頭金 + 親からの資金援助
妻:住宅ローンの返済額 + 頭金 + 親からの資金援助
連帯債務型ローンの場合
連帯債務型ローンは、夫婦や親子で1つの住宅ローンを契約し、主債務者と連帯債務者として双方が返済義務を負う方法です。ペアローンと異なり、契約は1本のローンである点が特徴です。
持分割合については、ペアローンと同様の考え方です。各自の住宅ローンの返済負担割合をベースに、頭金や親からの資金援助を加えた「実際の負担額」で持分割合を決めます。
なお、連帯債務型ローンでは、返済負担割合を収入割合をもとに決めるケースも多く、結果として収入割合に近い持分割合になることがあります。ただし、持分割合はあくまで「実際の負担額」に基づいて設定する点に注意が必要です。
夫:住宅ローンの返済額 + 頭金 + 親からの資金援助
妻:住宅ローンの返済額 + 頭金 + 親からの資金援助
連帯保証型ローンの場合
連帯保証型ローンは、主債務者が単独名義で住宅ローンを組み、配偶者などが連帯保証人となる方法です。たとえば夫婦の場合、夫が主債務者であれば妻が連帯保証人となり、夫の返済が滞った際には妻が返済義務を負います。
この場合、住宅ローンは主債務者の単独契約となるため、主債務者の単独名義とし、基本的には連帯保証人に持分を設定しません。
ただし、連帯保証人が頭金などを負担している場合には、その負担分に応じて持分を設定することもあります。
なお、単独名義の住宅ローンの場合、金融機関によってはローン契約者以外が持分を持つことに制限が設けられていることがあります。
ローン契約者以外の持分にも抵当権を設定し、担保提供者となることで承諾されるケースもありますが、いずれにせよ事前に金融機関へ相談しておくことが重要です。
夫:住宅ローンの返済額 + 頭金 + 親からの資金援助
妻:頭金 + 親からの資金援助
夫婦で組む住宅ローンについては、次の記事でも詳しく解説しています。
単独名義ローンの場合
単独名義ローンは、契約者1人で住宅ローンを組み、単独で返済する方法です。たとえば夫の単独名義であれば、妻は原則として返済義務を負いません。
この場合、ローン契約者の単独名義とするのが基本で、もう一方には持分を設定しません。ただし、頭金などを負担している場合には、その負担分に応じて持分を設定することがあります。
また、先述したとおり、ローン契約者以外に持分を設定する場合は、その人も担保提供者となるケースが多いです。金融機関の承諾が必要になるため、事前に確認しておくことが重要です。
夫:住宅ローンの返済額 + 頭金 + 親からの資金援助
妻:頭金 + 親からの資金援助
ローンは夫、頭金は妻といったケースについては、次の記事も参考にしてみてください。
住宅ローンで不動産を購入する際の持分割合の計算方法
持分割合は「実際に誰がいくら負担するか」を基準に計算します。基本的な考え方はシンプルで、各自の負担額を物件価格で割ることで算出できます。
各自の負担額 = 住宅ローンの返済額(または当初の返済負担予定額) + 頭金 + 親からの資金援助
「各自の負担額」は、住宅ローンの借入額だけでなく、頭金や親からの資金援助なども含めて考える点が重要です。
3,000万円の不動産を夫婦で購入するケースを例に挙げます。
夫:住宅ローンの返済額2,000万円 + 頭金500万円 = 2,500万円
妻:親からの資金援助500万円
■各自の持分割合
夫:2,500万円 ÷ 3,000万円 = 5/6
妻:500万円 ÷ 3,000万円 = 1/6
このように、持分割合は住宅ローンの名義や収入割合ではなく、あくまで実際に負担する金額に応じて決める点に注意しましょう。
【端数調整が行われるケース】
持分割合は分数で設定できるため、「17/22」のように一見して割合が分かりにくい数値になることがあります。小数にすると「0.7727…」のように端数が生じ、割り切れません。
このような場合でも、分数のまま持分を設定することは可能です。ただし、実務上は分かりやすさを優先して、四捨五入により「0.8(80%)」など、小数点第一位までの割合にすることがあります。
その場合、本来の負担割合との差分が生じるため、その差額が贈与とみなされる可能性があります。贈与額が年間110万円の基礎控除を超えると贈与税が課されるため、端数を調整する際は注意が必要です。
たとえば、3,000万円の不動産を購入したケースで考えると、「0.7727…(=17/22)」を「0.8」に調整した場合、その差分である「約2.7%」が贈与とみなされます。贈与額は次のとおりです。
このケースでは年間の基礎控除額110万円の範囲内であるため贈与税は発生しません。しかし、調整の仕方によっては課税対象となることもあるため、端数調整を行う際は注意が必要です。
住宅ローン別の持分割合の決め方&具体例
持分割合の計算方法は理解できても、「自分たちの場合はどう当てはめればいいのか」と迷う方もいるのではないでしょうか。
そこで、ここでは次の住宅ローンの種類ごとに、実際の負担額をもとにした持分割合の具体例を紹介します。
- ペアローンの場合
- 連帯債務型ローンの場合
- 連帯保証型ローンの場合
- 単独名義ローンの場合
いずれのケースでも、住宅ローンに加えて、頭金や親からの資金援助を含めた「実際の負担額」を基準に持分割合を算出します。
ペアローンの場合
ペアローンの場合は、各自の住宅ローンの返済額をベースに、頭金や親からの資金援助を加えた「実際の負担額」に応じて持分割合を決めます。
物件価格:5,000万円
■各自の負担額
夫:住宅ローン2,500万円 + 頭金500万円 = 3,000万円
妻:住宅ローン1,500万円 + 親からの資金援助500万円 = 2,000万円
■持分割合
夫:3,000万円 ÷ 5,000万円 = 3/5
妻:2,000万円 ÷ 5,000万円 = 2/5
ペアローンはそれぞれが自分の借入分を返済するため、負担額と持分割合が一致しやすく、持分の設定でトラブルが起こりにくいのが特徴です。
連帯債務型ローンの場合
連帯債務型ローンの場合は、各自の住宅ローンの返済負担割合をベースに、頭金や親からの資金援助を加えた「実際の負担額」に応じて持分割合を決めます。
物件価格:5,000万円
■各自の負担額
夫:住宅ローン3,000万円
妻:住宅ローン2,000万円
■持分割合
夫:3,000万円 ÷ 5,000万円 = 3/5
妻:2,000万円 ÷ 5,000万円 = 2/5
連帯債務型ローンは1つの住宅ローンを共同で負担するため、あらかじめ取り決めた返済割合に応じて持分割合を設定するのが特徴です。
連帯保証型ローンの場合
連帯保証型ローンは原則として主債務者の単独名義となりますが、ここでは連帯保証人が頭金を負担、親からの資金援助も受けたケースを想定し、「実際の負担額」に応じた持分割合の計算例を紹介します。
物件価格:3,000万円
■各自の負担額
夫(主債務者):住宅ローン2,500万円
妻(連帯保証人):頭金300万円 + 親からの資金援助200万円 = 500万円
■持分割合
夫:2,500万円 ÷ 3,000万円 = 5/6
妻:500万円 ÷ 3,000万円 = 1/6
連帯保証型ローンでは、主債務者が中心となって返済を行うため、持分も主債務者に大きく偏るのが一般的です。また、連帯保証人が資金を負担していない場合は、持分を設定しないケースもあります。
単独名義ローンの場合
単独名義ローンは原則としてローン契約者の単独名義となりますが、ここでは契約者以外が頭金を負担したケースを想定し、「実際の負担額」に応じた持分割合の計算例を紹介します。
物件価格:3,000万円
■各自の負担額
夫(契約者):住宅ローン2,700万円
妻:頭金300万円
■持分割合
夫:2,700万円 ÷ 3,000万円 = 9/10
妻:300万円 ÷ 3,000万円 = 1/10
単独名義ローンでは、基本的にローン契約者が大部分の持分を持ちます。もう一方が資金を負担していない場合は、持分を設定しないケースもあります。
住宅ローンを組んで持分割合を決める際の注意点
夫婦や親子で住宅ローンを組み、不動産の持分割合を決める際は、資金面や税制面に影響するポイントを正しく理解しておくことが重要です。
持分割合の設定を誤ると、思わぬ税負担やトラブルにつながる可能性があるため、次の点に注意しましょう。
- 負担額と持分割合が異なると贈与税が発生する可能性がある
- 頭金や親からの資金援助も持分計算に計上する
- 建物の共有持分を設定しないと住宅ローン控除を利用できない
- 返済割合と持分割合が異なると住宅ローン控除が減額される可能性がある
- 持分割合は不動産の管理や修繕費の負担割合に影響する
負担額と持分割合が異なると贈与税が発生する可能性がある
不動産の持分割合は、実際に負担した金額に応じて設定するのが原則です。負担額と持分割合が一致していない場合、その差額は贈与とみなされる可能性があります。
たとえば、5,000万円の不動産を購入し、夫が4,000万円、妻が1,000万円を負担しているにもかかわらず、持分割合を夫婦で1/2ずつにした場合を考えてみましょう。
本来、妻の負担額は1,000万円ですが、持分は2,500万円(5,000万円×1/2)となるため、差額である1,500万円については、夫から妻への贈与とみなされるおそれがあります。
贈与には年間110万円の基礎控除がありますが、これを超える部分には贈与税(10〜55%)が課されます。
夫婦間の贈与は一般贈与に該当し、仮に1,500万円が贈与とみなされた場合は、45%の税率と175万円の控除が適用され、約450万5,000円の贈与税が発生します。
予想外の税負担を避けるためにも、持分割合は必ず実際の負担額に基づいて設定することが重要です。
頭金や親からの資金援助も持分計算に計上する
持分割合を計算する際は、住宅ローンの借入額だけでなく、頭金や親からの資金援助なども含めた「実際の負担額」で考える必要があります。
これらを考慮せずに持分を設定すると、実際の負担割合とズレが生じ、共有者間で贈与があったとみなされる可能性があります。
たとえば、妻が頭金を負担しているにもかかわらず持分に反映していない場合、その分が夫への贈与と判断されるおそれがあります。
また、親からの資金援助も贈与に該当するため、税務上の取り扱いに注意が必要です。
親からの資金援助については、「住宅取得等資金の贈与の非課税特例」を利用できる場合があります。一定の要件を満たせば、省エネ等住宅で最大1,000万円、それ以外の住宅でも最大500万円まで贈与税が非課税となります。
なお、この特例を適用する場合は、贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告が必要となるため注意しましょう。
国税庁|No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
建物の共有持分を設定しないと住宅ローン控除を利用できない
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、一定期間、年末のローン残高に応じて所得税などが軽減される制度です。
持分割合を決めて不動産を共有名義にする場合は、条件を満たせば共有者それぞれが控除を受けることができます。
ただし、住宅ローン控除は、居住用の建物の取得等を前提とした制度であり、一定の要件を満たす場合には土地の取得費用も対象に含まれます。そのため、建物に対する持分を持っていない場合は、住宅ローン控除の適用を受けられないケースがあります。
たとえば、夫婦で住宅を購入し、土地は共有名義にしたものの、建物を夫の単独名義とした場合、妻は住宅ローン控除の対象外となります。
住宅ローン控除を活用する場合は、建物についても持分割合を適切に設定することが重要です。
返済割合と持分割合が異なると住宅ローン控除が減額される可能性がある
住宅ローン控除は、実際の返済額に基づいて適用されるため、返済割合と持分割合が一致していない場合は、控除を十分に受けられない可能性があります。
たとえば、夫婦で持分割合を1/2ずつに設定しているにもかかわらず、実際には夫が住宅ローンの大部分を返済している場合、夫は実際の負担に見合った住宅ローン控除を十分に受けられず、不利になる可能性があります。
住宅ローン控除を最大限活用するためには、持分割合と返済割合をできるだけ一致させることが重要です。
持分割合は不動産の管理や修繕費の負担割合に影響する
持分割合は、単なる所有権の割合にとどまらず、不動産の管理や修繕費の負担割合にも影響します。
一般的に、固定資産税や修繕費などの費用は、持分割合に応じて負担することになります。そのため、持分割合が実態と合っていない場合、「誰がどれだけ費用を負担するのか」をめぐってトラブルにつながることがあります。
たとえば、夫婦や親子であっても関係性が変化した場合、「持分に応じて負担してほしい」といった主張が生じ、費用負担をめぐって対立するケースは実務でも少なくありません。
また、不動産の管理や修繕に関する意思決定にも、持分割合が影響します。軽微な修繕であれば単独で行える場合もありますが、大規模な修繕やリフォームなどは、共有持分の過半数の同意が必要です。
そのため、自分の持分が少なく、他の共有者が過半数の持分をもっている場合には、自分の意向に反してリフォームが進められたり、逆に希望する修繕が実施できなかったりする可能性もあります。
住宅ローンの負担額と持分割合が異なる場合の対処法
住宅ローンの借入額や頭金、親からの資金援助などを含めた「実際の負担額」と持分割合が異なっている場合、贈与税を課されるリスクや住宅ローン控除の面で不利になるおそれがあります。
登記後に誤りに気づいた場合は、状況に応じて次の方法で対処しましょう。
- 登記申請中なら「登記の補正」を行う
- 登記済なら「更正登記」を行う
登記申請中なら「登記の補正」を行う
登記申請後、まだ登記が完了していない段階であれば、「登記の補正」によって持分割合を修正できる場合があります。
登記の補正は、記入漏れや誤字脱字、添付書類の不足などの不備を修正する手続きです。持分割合の誤りについても、記載ミスや計算ミスであれば補正で対応できるケースがあります。原則として、追加費用はかかりません。
申請後に法務局の担当者がミスに気づいて申請者に連絡し、補正を求められるケースのほか、申請者自身が誤りに気づいて補正を申し出ることも可能です。
一般的に、登記申請から完了までは1〜2週間程度かかるため、その間に誤りに気づき、「登記申請補正書」を提出すれば、適切な持分割合に修正できる可能性があります。
ただし、登記が完了してしまうと補正では対応できず、更正登記など別の手続きが必要になります。そのため、誤りに気づいた場合はできるだけ早く対応することが重要です。
登記済なら「更正登記」を行う
すでに登記が完了している場合は、「更正登記」によって持分割合を修正します。
更正登記とは、登記時点ですでに誤りがあった内容を、正しい状態に修正する手続きです。本来は負担割合に応じて持分を設定すべきところ、計算ミスなどにより誤った割合で登記してしまった場合が該当します。
更正登記では、「錯誤(記載ミス)」や「遺漏(記載漏れ)」といった理由を記載した「更正登記申請書」を法務局に提出し、売買契約書や資金の内訳など、実際の負担額が分かる資料をもとに修正します。また、持分が減少する側など利害関係者の承諾が必要になるケースもあります。
費用としては、登録免許税が不動産1件につき1,000円程度かかるほか、司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。
なお、更正登記が認められるのは、当初から誤っていた内容を正す場合に限られ、後から持分割合を変更する場合には利用できません。
たとえば、実際は「夫が2/3、妻が1/3」で購入したにもかかわらず、「1/2ずつ」で登記してしまったようなケースは、更正登記で修正可能です。
一方で、「後から持分を変えたい」「妻の持分を増やしたい」といったように、新たな合意に基づいて割合を変更する場合は、更正登記では対応できず、贈与や売買による持分移転登記が必要になります。
持分割合の誤りを放置すると、税務上の不利益や将来的なトラブルにつながる可能性があるため、気づいた時点で早めに対応することが重要です。
更正登記については、次の記事でも詳しく解説しています。
持分割合を決めて不動産を共有名義にするメリット・デメリット
持分割合を設定するということは、不動産を複数人で所有する「共有名義」にすることを意味します。
共有名義の主なメリット・デメリットは次のとおりです。
| メリット |
・借入可能額が増える ・住宅ローン控除を各共有者が受けられる ・不動産を勝手に売却されるのを防げる ・売却時の特例を各共有者が利用できる |
|---|---|
| デメリット |
・住宅ローンの諸費用が増えることがある ・不動産の売却・活用の際に共有者との調整が必要になる ・固定資産税や維持管理費の負担で揉めやすい ・離婚時の対応が複雑になる ・相続によって権利関係が複雑になる可能性がある |
不動産の専門家の立場からすると、共有名義は一度設定すると解消が難しく、権利関係も複雑化しやすいため、安易に選択することはあまりおすすめできません。
ただし、資金面や税制面でのメリットがあるのも事実であるため、メリット・デメリットを踏まえたうえで、本当に共有名義にするべきかを慎重に判断することが重要です。
共有名義のメリット
共有名義の主なメリットは、資金面や税制面にあります。
主な内容は次のとおりです。
| 借入可能額が増える | 夫婦や親子などで収入を合算することで、単独よりも高額な住宅ローンを組みやすくなります。 |
|---|---|
| 住宅ローン控除を各共有者が受けられる | 条件を満たせば、それぞれの共有者が住宅ローン控除を受けられ、節税効果が高まることがあります。 |
| 不動産を勝手に売却されるのを防げる | 売却に共有者全員の同意が必要となるため、一方の判断だけで売却されるリスクを防げます。 |
| 売却時の特例を各共有者が利用できる | 条件を満たせば、3,000万円特別控除などの税制優遇をそれぞれの共有者が利用できる可能性があります。 |
実務では、借入可能額を増やしたい場合や、税制メリットを活用したい場合には、共有名義が選択されるケースがあります。
共有名義のデメリット
共有名義は、複数人で1つの不動産を所有することから、さまざまなデメリットが生じる可能性があります。
主な内容は次のとおりです。
| 住宅ローンの諸費用が増えることがある | ペアローンなどを利用する場合、契約が複数になるため、事務手数料や保証料などの費用が増えます。 |
|---|---|
| 不動産の売却・活用の際に共有者との調整が必要になる | 売却や長期間の賃貸借契約には共有者全員の同意が必要であり、大規模リフォームなども持分割合の過半数の同意が求められます。共有者間の調整が欠かせないため、不動産の売却・活用の意思決定に時間がかかることがあります。 |
| 固定資産税や維持管理費の負担で揉めやすい | 持分割合に応じて費用を負担するため、支払い状況や認識の違いからトラブルになることがあります。 |
| 離婚時の対応が複雑になる | 離婚時に、登記名義や住宅ローンの返済、居住の継続について協議が必要になります。選択肢によっては名義変更や金融機関への相談、住宅ローンの借り換えなどの対応が必要になり、時間や手間がかかります。 |
| 相続によって権利関係が複雑になる可能性がある | 共有者が亡くなると持分が相続され、共有者が増えることで権利関係がさらに複雑になるおそれがあります。 |
不動産の実務では、共有名義はトラブルの原因になりやすいケースも少なくありません。そのため、目先のメリットだけで判断せず、長期的な視点で慎重に検討することが重要です。
共有名義のデメリットについては、次の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
住宅ローンで不動産を購入する際の持分割合は、住宅ローンの負担額だけでなく、頭金や親からの資金援助を含めた「実際の負担割合」に応じて設定するのが基本です。
負担額と持分割合が一致していない場合は、贈与税が発生する可能性があるほか、住宅ローン控除の適用可否や控除額にも影響することもあります。
また、後から持分割合の誤りに気づいた場合は、更正登記などの手続きが必要になり、手間や費用が発生します。不動産の実務でも、持分割合の設定ミスによって後からトラブルになるケースは少なくありません。
そのため、不動産を購入する前の段階で、誰がいくら負担するのかを明確にし、適切な持分割合を設定しておくことが重要です。迷った場合は、不動産会社や税理士、司法書士などの専門家に相談しながら慎重に判断するとよいでしょう。
よくある質問
住宅の持分割合を決めるのはいつですか?
住宅の持分割合は、夫婦や親子で不動産を購入したときや、親や親族の不動産を複数人で相続したときに決めます。
不動産購入の場合、持分割合は所有権移転登記の前までに決めておく必要があります。住宅ローンを利用するケースでは、金融機関との契約内容や実際の資金負担額をもとに設定するのが一般的です。
相続によって不動産を取得する場合は、遺産分割協議のなかで持分割合を決めます。持分割合は法定相続分を目安にしつつ、実際の利用状況や他の財産とのバランスを考慮して調整するのが一般的です。
専業主婦でも持分をもてますか?
専業主婦(主夫)であっても、持分を持つことは可能です。
たとえば、自分の貯金などから頭金を出した場合や、親からの資金援助を受けて出資した場合には、その負担額に応じて持分を設定できます。
一方で、資金負担なしで持分を設定した場合は、夫から妻への贈与とみなされる可能性があります。この場合、基礎控除(年間110万円)を超えた部分については贈与税が課されるおそれがあります。
そのため、「将来のために名義を入れておきたい」といった場合でも、安易に持分を設定するのではなく、資金の負担実態に基づいて慎重に判断することが重要です。
持分割合を確認するにはどうすればいいですか?
持分割合は、法務局で取得できる「登記事項証明書(登記簿謄本)」を確認することで把握できます。
登記事項証明書には、不動産の所有者とあわせて「持分○分の○」といった形で持分割合が記載されています。最寄りの法務局で取得できるほか、オンライン請求にも対応しています。取得費用は法務局の場合は1通600円、オンライン請求の場合は1通480円です。
なお、住宅購入時の売買契約書や登記申請時の書類にも記載されていますが、最も正確なのは登記簿上の情報です。
持分割合を後から変更することはできますか?
持分割合は後から変更することも可能ですが、手続きや条件に制限があるため注意が必要です。具体的には、次のような登記手続きによって変更できます。
| 持分一部移転登記 | 共有者の一部の持分を他の共有者に移転し、割合を調整する方法。夫婦間の割合変更などでよく用いられます。 |
|---|---|
| 持分全部移転登記 | 一方の持分すべてを他の共有者に移転する方法。単独名義にする際に選択されます。 |
| 更正登記 | 登記時の持分割合が誤っていた場合に、実態に合わせて修正する方法。記載ミスなどの場合に限られます。 |
いずれの手続きも、持分を渡す「登記義務者」と、持分を受け取る「登記権利者」が共同で申請するのが原則です。
なお、売買ではなく無償で持分を移転した場合は、贈与とみなされる可能性があり、贈与税が課されるおそれがあります。また、住宅ローンが残っている場合は、金融機関の承諾が必要になるケースもあるため注意が必要です。
後からの持分変更は手間やコストがかかるため、購入時や相続時に適切な持分割合を設定しておきましょう。

