事故物件売却の完全ガイド!売却方法・相場・告知義務など徹底解説

訳あり物件を専門とする弊社には、「事故物件でも売却できるのでしょうか」「仲介に出しても売れなくて困っています」といった相談が多々寄せられています。

事故物件の売却は法律で禁じられているわけではないため、購入希望者がいれば売却は可能です。とはいえ、人の死があった影響から通常の物件に比べて買主がつきにくく、価格も安くなりやすいのが実情です。

なお、事故物件として扱われるのかどうかは、心理的抵抗を与えるのかどうかで変わります。人の死があったとしても心理的な抵抗を与えないのであれば事故物件には該当しないという考え方もできるため、人の死があった物件が必ず事故物件として扱われるわけではありません。

そのため、売却のしやすさも、下記のように死因によって異なるケースが多いです。

死因 事故物件に該当するか 売却のしやすさ
孤独死・病死 該当しない 比較的売却しやすい
自殺 該当する 心理的抵抗が強く売却しづらい
他殺 該当する 事故物件の中でも最も売却困難

事故物件の売却を検討している場合、まずは所有する物件が事故物件に該当するのかを確かめるのがよいでしょう。

なお、事故物件を売却する場合、基本的には「告知義務」が生じるため、買い手に対して人の死があったことを伝えなければなりません。告知義務を果たさずに売買契約を締結させると損害賠償を請求される可能性があるため、事故物件を売却するのであれば、告知義務に関しても十分に把握をしておくべきです。

当記事では、事故物件の売却方法から、売却相場や高値売却のポイントまで解説していきます。事故物件に該当しない場合でも、実際には売却活動が長引き、結局は成約に至らないケースも少なくありません。

そのため、なるべくスピーディーに売却したい方には、事故物件専門の買取業者に依頼する方法がおすすめです。弊社クランピーリアルエステートでは、残置物があるままでも買取が可能で、最短即日で現金化できる体制を整えています。

売却後の契約不適合責任も免責となるため、「事故物件を安心して手放したい」と考えている方はぜひご相談ください。

目次

事故物件の売却は難航しやすいが売却できないわけではない

前提として、事故物件であっても法律によって事故物件の売却が禁止されているわけではないため、絶対に売却できないわけではありません。しかし、「過去に人が亡くなった」という事実から、心理的抵抗を覚える人が多いため、なかなか買い手がつかないのが基本です。

実際に弊社が全国の男女969人を対象に「事故物件」についてアンケート調査を実施した結果、男女ともに70%以上が「抵抗がある」と回答していました。

実際に弊社へ寄せられた相談には「仲介に出したけど長年売れ残っている」「そもそも仲介を断られてしまった」という事例もあります。そのため、事故物件を売却したくても、買主が現れずに売れ残ってしまうケースも十分に考えられます。

そもそも事故物件に該当しないケースもある!事故物件になるのかは売却前に確認しておくべき

大前提として、事故物件に該当する基準は明確に定められていません。一般的に事故物件とは、買い手や借り手が心理的に敬遠してしまうような瑕疵がある物件のことを指し「心理的瑕疵物件」とも呼ばれます。

そして、物件内で起きる人の死には、「他殺」「自殺」「病死」などさまざまな原因が考えられます。一般的には人の死があった物件は敬遠されてしまうものの、感じ方は人それぞれであり、「気にしない」という人も一定数存在するのも事実です。

つまり、基準が明確に定められていない以上、人の死があったからといって必ず心理的に敬遠されてしまうわけではなく、事故物件として扱われないケースもあるのです。

国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、人の死があった物件でもその事案を告知する必要がないケースもあると記載されています。ガイドラインを参考にして、事故物件として扱われるケースと扱われないケースをまとめましたので、参考にしてみてください。

  • 事故物件に該当するケース:殺人・他殺・火事などの事故死があった物件
  • 事故物件に該当しないケース:自然死や日常生活における不慮の死があった物件

弊社の経験則から見ると、事故物件に該当する場合はやはり買い手が見つかりにくく、結果的に売却できずに弊社にご相談いただくケースも多くありました。ただし、ガイドライン上「事故物件にあたらない」と整理できるケースでは、心理的な抵抗を感じる人が比較的少なくなることから、買主が現れることも考えられます。

売却を検討されている方は、まずご自身の物件が本当に事故物件として扱われるのかを確認することが第一歩です。その上で、売却が難しいと感じる場合は、専門の買取業者にご相談いただくのが安心といえます。

事故物件に該当するケース:殺人・他殺・火事などの事故死があった物件

国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」には、不動産取引において契約を締結する際の判断に重大な影響を及ぼす可能性がある場合、売り手や貸し手は物件で起きた事案を告知する必要があると定められています。

具体的には、事件性、周知性、社会に与えた影響などが高い事案は必ず告知しなければなりません。

また、下記のように自然に起こり得る死因でない場合も、事件性や周知性、社会に与えた影響などが高いといえるため、事故物件として扱われます。

  • 殺人
  • 他殺
  • 火事などの事故死

このようなケースでは買主が心理的に強い抵抗を示すと考えられており、実務経験上でも通常の物件と同じ条件で売れることはまずありません。売却活動をしても買主が見つかりにくく、価格は相場よりも大きく下がるのが現実です。

だからこそ、こうした物件は専門の買取業者に相談していただくのが現実的な解決策だといえます。

事故物件に該当しないケース:自然死や日常生活における不慮の死があった物件

居住用の不動産では、老衰や病死といった自然死や、日常生活の中で起こり得る不慮の死は決して珍しいものではありません。こうしたケースは心理的瑕疵にあたらないと判断された判例も多く、実務上も事故物件には該当しないケースがほとんどです。

具体的には、下記のような事案が当てはまります。

  • 老衰
  • 病死
  • 階段からの転落
  • 入浴中の溺死や転倒事故
  • 食事中の誤嚥(ごえん)

参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

そのため、老衰や病死などがあった物件は事故物件として扱われないのが一般的で、その場合は売却や賃貸の際にその事案を告知する義務はありません。

特殊清掃を行った場合は死因が不慮の死でも事故物件として告知が必要になる

自然死や日常生活における不慮の死は心理的瑕疵に該当しないと解説しましたが、特殊清掃を行った場合には告知が必要です。特殊清掃が必要になるということは物件に「物理的瑕疵」が発生していることになり、これが買い手や借り手に心理的な抵抗を与える可能性があるためです。

物理的瑕疵とは、物件内にある物理的な欠陥のことです。人の死が原因で発生する物理的瑕疵の例には、下記が挙げられます。

  • 遺体の体液や血液が畳やコンクリートにまで染み込んでいる
  • 遺体の異臭が壁や床に染み付いている
  • 害虫(ハエやウジなど)が大量発生し、痕跡が残っている
  • 腐敗によって床材や下地木材が変色・劣化している

体液が滲み込んでいたり、異臭が染み付いていたりする場合、特殊清掃をしたとしても買い手に心理的な抵抗を与える可能性があります。これらは売買契約を締結するための判断に影響を及ぼす可能性があるため、日常生活において発生しうる死因であっても事故物件として扱われるのが基本です。

事故物件を売却のしやすさはどのような事故・事件があったのかで変わる

弊社では、全国の男女969人を対象に「事故物件」についてアンケート調査を実施しました。その際、どのような事故・事件があったのかで、下記のように事故物件の売却のしやすさに違いが出る結果となりました。

  • 自然死や病死があった物件|事故物件のなかでも比較的買主がつきやすい
  • 自殺があった物件|心理的な抵抗を与えやすく買主がつきづらい
  • 他殺があった物件|事故物件のなかで最も買主がつきづらい

実際に、自然死や孤独死などの日常生活で起こりえる死があった物件は、通常相場に近い価格で成約するケースも少なくありません。一方で、自殺や他殺が絡む物件は、買主が極端に減り、売却活動に入っても長期間売れ残ることが多いのが現実です。

自然死や病死があった物件|事故物件のなかでも比較的買主がつきやすい

前述の通り、自然死や病死があった物件はそもそも事故物件にはあたりません。そのため、過去に人が亡くなった物件であっても、事故物件の中では比較的買主がつきやすいです。

実際に、事故物件に住むことに対するアンケート調査によると、どの事故物件なら住めるかという質問に対し、60%以上が「自然災害死」や「孤独死」などの事件性の少ない自然死なら住めると回答していました。

そのため、事件性のない不慮の死に対しては、比較的寛容である人が多いと判断できます。したがって、自然死や病死が原因の事故物件は売却活動が比較的スムーズに進めやすいです。

自殺があった物件|心理的な抵抗を与えやすく買主がつきづらい

自殺があった物件は、事故物件の中でも買主が比較的つきづらい傾向にあります。自ら命を絶った人がいる物件は、「死」や「不幸」といったイメージを想起させやすく、次の住み手にも不幸が起こるのではないかと思わせることが原因です。

どの事故物件なら住めるかというアンケート調査でも、「自殺」なら住めると答えた人は全体の4.2%に留まりました。このことから見ても、自然死や病死による事故物件に比べて買い手がつく可能性が低く、売れるまでに時間がかかることがわかります。

実際に弊社の事例から見ても、自殺物件は仲介での売却がほぼ成立しなかったことから、最終的に買取という形でご相談いただくケースも多いです。

他殺があった物件|事故物件のなかで最も買主がつきづらい

事故物件の中で最も買い手がつきづらいのが、他殺があった事故物件です。自殺以上に買主の心理的抵抗が強く、「ここで事件があった」という事実だけで敬遠されるのが実情です。

特に、社会的に大きく報道された事件の現場であれば、周囲の目や近隣トラブルを懸念して購入を避ける人がほとんどです。上記の調査でも、「殺人があった物件なら住める」と答えた人はわずか2.4%に留まっており、市場での取引はほぼ成立しないといえるでしょう。

弊社にも「売却活動をしてみたが全く反応がないから買い取ってほしい」といった相談が数多く寄せられます。他殺物件は相場の半値にしても買い手が見つからないケースも少なくなく、仲介での売却は非常に厳しいと考えてよいでしょう。

事故物件の売却相場は市場価格よりも安くなるのが基本

弊社での買取事例をもとにしても、事故物件の売却相場は市場価格よりも安くなるのが基本です。人の死があった物件でも「買いたい」「住みたい」と考える人は多くなく、同じ価格であれば事故物件でない物件を選ぶのが自然といえるためです。

事故物件を市場価格の相場で売ること自体は、法律面において問題ありません。しかし、上記の理由から市場価格で売れるケースは少ないため、相場よりも安い価格で売るのが基本です。

ただし、相場より安いからこそ「価格次第では買ってもいい」という層が一定数存在します。そのため、値下げ幅を調整することで売却に成功することも少なくありません。

あくまで弊社の相談・買取の事例をもとにしたものですが、事故物件の売却相場は事故・事件の種類によって下記のように変動します。

  • 孤独死や病死があった物件は通常物件よりも1割〜2割ほど下がりやすい
  • 自殺があった物件は通常物件よりも1割〜3割ほど下がりやすい
  • 他殺があった物件は通常物件よりも3割〜5割ほど下がりやすい

孤独死や病死があった物件は通常物件よりも1割〜2割ほど下がりやすい

孤独死や病死は日常生活における不慮の死に該当するとされており、事件性がある死因よりも心理的な抵抗は少なく感じる方が多いです。そのため、孤独死や病死があった物件は、事故物件のなかでも売却金額の下落率が少ない傾向があります。

あくまで目安ですが、孤独死や病死の場合は通常物件よりも売却相場が1割〜2割ほど下がった価格で成約するケースが多い傾向です。例えば、通常1,000万円で売却できる金額であれば、800万円〜900万円程度が相場です。

とはいえ、人が亡くなった物件であるため、心理的な抵抗を与えやすいのは変わりません。価格の下落率は少ないといっても、通常物件よりも売れづらいことを踏まえて、売却活動をするのがよいでしょう。

自殺があった物件は通常物件よりも1割〜3割ほど下がりやすい

自殺は周知性がある死因であり、孤独死や病死以上に強い心理的抵抗を与えやすいです。そのため、自殺があった物件の場合、孤独死や病死があった物件よりも売却価格は下がるのが基本です。

あくまで目安ですが、通常の物件に比べて売却価格が1割〜3割下がります。たとえば通常なら1,000万円で売れる物件でも、700万円〜900万円程度に落ち着くことが多いのです。

ただし、自殺の状況によって下落率は変わります。たとえば、リストカットのように物件への物理的な影響が比較的少ない場合は、価格の下落幅も小さくなる傾向があります。逆に、長期間の放置や特殊清掃が必要になったケースでは、価格がさらに落ち込むのは避けられません。

また、弊社で扱った事例でも、飛び降り自殺があった物件は下落率が緩やかになるケースが見られました。特に立地条件が良いマンションの場合、「価格次第なら購入しても構わない」という買主が一定数存在するため、事故物件であっても高値で売却できる可能性があります。

とはいえ、自殺物件が通常相場で売れることはまずないので、必ず値下げを前提に考えましょう。

他殺があった物件は通常物件よりも3割〜5割ほど下がりやすい

殺人などの他殺は事件性や周知性、社会に与えた影響が高い死因です。前述の通り、他殺があった物件は事故物件の中でも最も心理的に敬遠されてしまうことからも、なかなか買主がつかないのが現実です。

あくまで目安ですが、通常の物件に比べて売却価格が3割〜5割下がります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、500万円〜700万円程度が目安となります。

また、この下落率は原因となった事件によっても変動します。特に、テレビや新聞で大きく報道された殺人事件の現場だった場合は悪印象が強く残り、買主が現れる可能性は極めて低くなります。

場合によっては、仲介会社や通常の買取業者から「当社では取り扱えません」と断られることもあるのです。だからこそ、他殺物件の売却は最初から専門業者に任せるのが現実的な選択といえます。

事故物件売却には告知義務が生じる!事故物件であることは原則隠せない

事故物件を売却する場合、原則売り手には告知義務があります。

前提として、事故物件で発生した人の死は、売買契約の締結を判断する際に大きな影響を及ぼす可能性があります。国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、重要な影響を及ぼす可能性がある事案は、買い手に対して告知をしておくべきと記載されています。

これを「告知義務」といい、事故物件を売却する場合、売り手は買い手に対して事前に人の死があったことを原則告知しなければなりません。

事故物件の売却を検討している場合、「人の死があったことは隠せないのか」と考えるかもしれません。しかし、隠して売却すれば後に発覚した際にトラブルになるのはほぼ確実で、裁判沙汰になるリスクさえあります。そのため、事故物件の売却では「必ず告知が必要」というのが業界のルールです。

なお、前述したように、自然死や日常生活における不慮の死があった物件は事故物件に該当しないため、これらの物件を売却する際に告知義務は生じません。とはいえ、買い手から人の死があったかどうかなどを尋ねられた際には、正しい情報を提供しなければならないため注意してください。

ポイント

一部では、事件・事故後に誰かが1回でも住んだ事故物件については、新しい購入希望者に告知義務が生じないと言われていますが、これは事実ではありません。たとえ事件・事故後に何回か住人が入れ替わっていたとしても、人が死亡した事実は消えないため、購入希望者が現われる度に告知する義務があります。

事故物件の売却の際に告知をする方法

事故物件であることの告知は、売買契約が締結されるまでに行う必要があります。基本的には、重要事項説明書や売買契約書に記載をして告知を行います。

なお、宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、事故物件であることを告知する際に下記の項目を告げるように定められています。

項目 概要
発生時期 人の死がいつ発生したのかについて。特殊清掃を行った場合は、いつ特殊清掃が入ったのかを告知する。
発生場所 人の死がどこで起きたのかについて。共用部分で起きた場合、その場所を明確に伝える。
死因について 「病死」「他殺」「自殺」などと人の死の原因について告知する。
特殊清掃の有無 特殊清掃を行ったかどうかについてを告知する。

参照:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

いずれか1つでも告知をしなかった項目があると、告知義務を果たしたことにはなりません。事故物件を売却する場合、少なくとも上記の項目は買い手に対して伝えるようにしてください。

事故物件の売却時に告知義務を果たさないと契約解除や損害賠償の請求の可能性がある

事故物件であることを隠そうと、人の死があったことを売却した場合、告知義務違反となります。

告知義務違反をすると、売買契約の解消や損害賠償の請求となる可能性があります。実際に、過去には1年以上前に建物内で自殺があったことを故意に隠して賃貸借契約をした賃貸人が賃借人から訴訟を起こされ、約114万円の支払いを命じられた判例もあります。

そもそもですが、不動産取引は公正であることが大前提です。売主・貸主には、相手が適切な判断を下せるよう正しい情報を提供する責任があります。人の死があったことを隠すのは公正な取引とは言えず、むしろ後から発覚すれば信用を失い、金銭的にも大きな損を被るリスクがあります。

そのため、告知義務は必ず守りましょう。

事故物件の売却において告知義務はなくならない

「事故物件の告知義務はなくなるのか」のように考えている人もいることでしょう。

宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、賃貸契約であればおおむね3年の時効がありますが、売却契約の場合は時効は定められていません。

つまり、事故物件を売却する場合は「何年経過しても人の死があった事実を伝える必要がある」ということです。実際に「もう古い話だから大丈夫」と誤解したまま売却を進めようとして、後からトラブルになり当社に相談が来るケースは少なくありません。

事故物件の売却方法には仲介または買取の2種類ある

事故物件の売却を検討している場合、どのような方法で売却するかを考えている人もいることでしょう。

事故物件に限りませんが、不動産の売却方法には「仲介」「買取」の2種類があります。どちらも異なる特徴があるため、所有している事故物件や売却できるまで待てる期間に合わせて売却方法を選ぶのがよいでしょう。

概要 向いているケース
仲介 不動産会社に売却活動を依頼して、現れた購入希望者に売却する方法。市場価格に近い価格で売却できるため、買取よりも高値がつきやすい ・立地や広さや築年数といった条件がよい
・売却までに数か月待てる
買取 買取業者に依頼して、直接不動産を買い取ってもらう方法。仲介よりも早く売却できるのが一般的だが、売却価格は安くなりやすい。 ・条件がよいとはいえず、買い手がつきそうにない
・なるべく急ぎで事故物件を売りたい

ここからは、事故物件の売却方法である「仲介」「買取」について、それぞれ解説していきます。

仲介:立地や築年数などの条件がよい場合

立地や築年数といった条件がよい事故物件であれば、まずは仲介で売却することを検討するのが得策です。

不動産における仲介とは、不動産会社が売り手と買い手の間に入り、第三者である一般の人に不動産を売却する方法のことです。所有する事故物件を買いたいと考えている人を不動産会社に探してもらい、そのような人が現れれば事故物件を売却できます。

市場価格に近い価格で売れるケースもあるため、条件の良い事故物件なら仲介を検討する余地があります。

ただし、事故物件は心理的抵抗が強いため、条件が悪かったり大きな事件が発生した事故物件だったりすると、そもそも買い手がつかないのが現実です。たとえば、「駅近・築浅だから仲介で売れると思ったが、事件で報道されてしまったためか半年経っても内覧が入らない」というケースも少なくありません。

そのため、最終的に専門業者に持ち込まれるケースが多いのが実情です。事故物件の条件がよく、買い手がつく見込みがある場合には仲介で売却することを検討するのがよいでしょう。条件がよい事故物件の例としては、下記が挙げられます。

  • 都心のような人気のエリアにある
  • 駅から徒歩5分圏内にある
  • タワーマンションなど価値が高い物件
  • 築年数が5年以下の築浅物件

一般的には、仲介で物件売却できるまでにかかる期間は3か月〜6か月程度が目安といわれています。そのため、売却までにある程度の期間がかかっても問題ない場合には、仲介で事故物件を売却することを検討してみてもよいでしょう。

買取:条件がよいとはいえず買い手がつきそうにない場合

買取とは、私たちのような買取専門業者が直接買い手となり、物件を引き取る方法です。仲介のように内覧や広告といった売却活動が不要で、そのまま業者が買い取るため、仲介よりもスピーディーに売却できます。

また、不動産買取業者の目的は、買い取った物件の価値を高めて再販売をすることで利益をあげることです。仮に買い取った物件の価値が低かったとしても、リフォームやリノベーションを行って価値を高めたうえで再販売するため、条件が悪い物件であっても積極的に買取に応じています。

ただし、不動産買取業者はその物件の価値を高めるためのコストを考慮したうえで買取を行います。それらのコストを差し引いた金額が買取価格になるため、仲介よりも安価になるのが基本です。

あくまで目安ですが、買取の場合は仲介の7〜8割程度が相場となります。そのため、「安値であっても事故物件を売却したい」という場合には、買取業者に依頼することを検討するのがよいでしょう。

事故物件を売却する可能性を少しでも高めるポイント

心理的な抵抗を与えやすい事故物件は買い手が現れづらく、仲介では売却が難しいことも少なくありません。また、買取業者に依頼すれば絶対に売却できるとも言い切れません。

事故物件を売却する場合、その可能性を少しでも高めるために下記を実践しておくことも検討してみてください。

  • 心理的な抵抗を軽減するために特殊清掃やリフォームをしておく
  • ご供養やお祓いをしておく
  • 事件が風化するまで売却を控える

ここからは、事故物件を売却する可能性を少しでも高めるポイントについて、それぞれ解説していきます。

ポイント

○売れないからといって事故物件を解体するのはおすすめできない
事故物件の売却を検討している場合、「人の死があった建物を解体すれば土地部分は売却できるのでは?」のように考える人もいるかも知れません。しかし、独断で事故物件を解体するのは避けるべきです。

事故物件を解体するには費用がかかり、100万円以上の解体費用がかかることも珍しくありません。また、解体したからといって、その土地を売却できる保証もありません。

そもそも、建物を取り壊したとしても人の死があった事実はなくならないため、事故物件を解体しても告知義務は残ります。

事故物件の売却が難しいとしても、独断で建物の解体はせずに、そのままの状態で売却することを検討するのが得策です。

心理的な抵抗を軽減するために特殊清掃やリフォームをしておく

事故物件が売れづらいのは、主に人の死があったことが理由です。人の死があったこと自体はなくせませんが、特殊清掃やリフォームをすることで事故物件の心理的瑕疵を和らげることは可能です。

事故物件を売却する可能性を少しでも高めたいのであれば、特殊清掃やリフォームをしたうえで売却を依頼することを検討してみるのもよいでしょう。

ただし、特殊清掃やリフォームをするには費用がかかります。特にリフォームの場合は数百万円ほどの費用がかかるケースもあるため、不動産会社に相談しながらどの部分をリフォームするべきかを決めるのが得策です。

ご供養やお祓いをしておく

事故物件の心理的な抵抗をやわらげる方法として、ご供養やお祓いをしておくことが挙げられます。

ご供養やお祓いをした事実は、そのまま買い手に伝えることが可能です。「ちゃんと供養されている物件なら安心できる」と考える人も少なくないため、心理的ハードルの軽減につながる可能性があります。

事故物件においてご供養やお祓いの費用相場は、3万円〜5万円程度です。不動産会社によっては住職や神主を紹介してもらえるため、事故物件の売却を検討している場合にはご供養・お祓いをすることも視野に入れてみてください。

事件が風化するまで売却を控える

人の死がどのように起きたかにもよりますが、ある程度の時間が経過すれば、事故物件で発生した事件が風化する傾向があります。そのため、事故物件の売却が難航しそうであれば、事件が風化するまで売却を控えることも対策になります。

ただし、その間は物件を保有し続けることになるため、固定資産税や管理費、場合によっては近隣からの目など、さまざまな負担が続くことになります。

「すぐに売りたいわけではない」「時間をかけてでも高く売りたい」という方には、事件の風化を待つという選択肢も一つの方法です。一方で、「管理の負担を減らしたい」「現金化を急ぎたい」という場合には、待つよりも買取で早めに整理するほうが得策になることもあります。

事故物件の売却が難航しそうなら専門の買取業者を検討するべき

事故物件の売却が難航しそうな場合、専門の買取業者に依頼することも検討してみてください。事故物件専門の買取業者に依頼することには、下記のようなメリットがあるためです。

  • そのままの状態でも事故物件を買い取ってもらえる
  • 数日〜1か月程度で事故物件を売却できる
  • 契約不適合責任がが免除されるのが一般的

ここからは、専門の買取業者に事故物件を売却するメリットについて、それぞれ解説していきます。事故物件の売却が難航しそうであれば、参考にしてみてください。

そのままの状態でも事故物件を買い取ってもらえる

不動産を売却する際には、家財などの残置物を撤去しておくのが一般的です。そのため、家財などが残っている事故物件を売却する場合、売り手が事前に残置物を処分しなければなりません。

一方、専門の買取業者であれば、残置物があるままの状態でも買い取りが可能です。そのため、「残置物を撤去する費用や手間を省きたい」という場合、専門の買取業者に依頼するのが得策です。

弊社クランピーリアルエステートでも、残置物やゴミが残ったままの物件をそのままで買取可能です。孤独死で荷物がそのままになった空き家や、片付けが進まないゴミ屋敷のような物件でも問題ありません。ご相談いただければ、撤去や清掃も不要で、そのままスピーディーにお引き取りいたします。

数日〜1か月程度で事故物件を売却できる

専門の買取業者の場合、事故物件の買取に関するノウハウがあるため、ほかの業者に依頼するよりもスムーズに売却手続きを進められます。

買取にかかる期間は業者によって変わりますが、数日程度で買い取ってもらえる事故物件専門の買取業者もあります。

弊社では、最短12時間で査定、最短48時間で現金化が可能です。「できるだけ早く手放したい」「管理や維持の負担をすぐに解消したい」と考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

契約不適合責任がが免除されるのが一般的

事故物件に限らず不動産を売却する場合、売り手は「契約不適合責任」を負うのが一般的です。

契約不適合責任とは、売却する不動産が契約内容に適さない場合、売り手が負担しなければならない責任のことです。

たとえば、売却したい事故物件に雨漏りのような欠陥があると仮定します。それを買い手に伝えずに不動産の売買契約を結んだ場合、売り手は契約不適合責任に問われて損害賠償や契約の解除を求められる可能性があります。

一方、事故物件専門の買取業者では、契約不適合責任が免除されるのが一般的です。そのため、事故物件の売却で契約不適合責任に問われるリスクは低いといえます。

弊社でも、契約不適合責任を免責としたうえで買取を行っています。「売却後のトラブルが心配」「余計な責任を負いたくない」という方にとって、安心して手放せる仕組みをご用意しています。

事故物件を実際に買い取った事例

実際に業者が買い取った事例は、事故物件が実際にはいくらほどで売却できるかの参考になります。事故物件の売却を検討している場合、買取事例から相場感を確認しておくのもよいでしょう。

ここからは、当社「株式会社クランピーエステート」が実際に買い取った事例を紹介していきます。

  • 孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例
  • 変死があった戸建てを500万円で買い取った事例
  • 共用部分で飛び降りがあったマンションを1,300万円で買い取った事例

孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例

東京都品川区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。

買い取った物件種類 マンション
物件があるエリア 東京都品川区
事故・事件の内容 1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、腐臭が発生していた物件
買取金額 1,000万円

この物件は、1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、その腐臭から近隣住民の方が通報し発覚した事故物件です。疎遠になっていた相続人からのご依頼で、相続手続きの相談を含めて1,000万円で買い取らせていただきました。

変死があった戸建てを500万円で買い取った事例

千葉県松戸市にある戸建てを買い取った事例です。詳細は以下となります。

買い取った物件種類 戸建て
物件があるエリア 千葉県松戸市
事故・事件の内容 親子が建物内で変死してしまった物件
買取金額 500万円

この物件は、居住者である親子2人が建物内で変死してしまった事故物件です。2年以内に起きた事故で、なかなか買い手がつかなかったとのことですが、物件について詳しく調査をしたうえで査定を行い、500万円で買い取らせていただきました。

共用部分で飛び降りがあったマンションを1,300万円で買い取った事例

東京都足立区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。

買い取った物件種類 マンション
物件があるエリア 東京都足立区
事故・事件の内容 マンションの共用部分で飛び降り自殺があった物件
買取金額 1,300万円

この物件は、マンションの共用部分で飛び降り自殺が起きた事故物件です。依頼者は早めの取引がご希望とのことでしたので、スピード感を持って物件調査を行い、1,300万円で買い取らせていただきました。

事故物件を売却できるまでの流れ

事故物件を売却できるまでの流れは、おおまかに下記のとおりです。

  1. 不動産会社や買取業者に査定を依頼する
  2. 依頼する業者を決めて売買契約を結ぶ
  3. 決済・事故物件の引き渡しを行う
  4. 確定申告のために譲渡所得税を算出しておく

ここからは、事故物件を売却する流れについて、各工程を解説していきます。

不動産会社や買取業者に査定を依頼する

事故物件を売却する場合、まずは不動産会社や買取業者に査定を依頼しましょう。不動産における査定とは、土地や建物がどの程度の金額で売却できるのかを調査してもらうことです。

査定を依頼すると、業者から売却金額の目安が提示されます。提示された金額に納得できれば、次の売買契約へと進みます。

なお、査定の方法や基準は業者によって変わる可能性があり、複数の業者に査定を依頼することで査定結果に差が出ることもあります。事故物件の場合は特に、扱い慣れていない不動産会社だと大幅に安い査定をされることも少なくありません。そのため、最も査定額が高い業者をみつけるためにも、事故物件を売却する際には複数の業者に査定を依頼するのがよいでしょう。

依頼する業者を決めて売買契約を結ぶ

依頼する業者が決まった後には、その業者と売買契約を結びます。

事故物件に限らず、不動産の売買を行う際には宅地建物取引業法によって「不動産売買契約書」の作成が義務付けられています。売買契約書には買取価格や引き渡し時期などの合意内容が記載されているのが特徴で、依頼した業者が契約書を作成するのが基本です。

なお、売買契約を締結させる際には、さまざまな必要書類を用意する必要があります。追加書類の提出が求められるケースもありますが、下記のような書類が必要です。

必要書類 概要
登記済権利書 法務局から所有者に登記名義人に交付される書類。再発行できないため、紛失した場合には法務局に相談をする
固定資産税納付通知書 固定資産税などが記載された書類。税務署から毎年4月上旬ごろに送付される。
境界確認書 隣地との土地の境界を証明できる書類。測量士に依頼をして作成してもらえる
印鑑証明書 原則3か月以内に発行したものに限られる
本人確認書類 運転免許証やマイナンバーカードといった身分を証明できる書類
住民票 役所で取得できる書類

提出書類については所有する物件などによって変わることがあるため、依頼する業者が決まった際には、どのような書類が必要なのかを尋ねておくのがよいでしょう。

弊社でも、契約に必要な手続きや書類の準備をスタッフがサポートしています。「不動産取引が初めてで不安」という方でも安心して進められる体制を整えています。

決済・事故物件の引き渡しを行う

売買契約が締結した後は、契約内容に沿って決済や事故物件の引き渡しを行います。

決済や引渡しの日程は、売買契約を締結させる際に決定されます。売買契約の際には、引き渡しの都合がつきそうな日程をあらかじめ決めておき、その日に引き渡しができるようにスケジュールを調整しておくとよいでしょう。

なお、事故物件を引き渡す際には、物件の鍵を買い手に渡す必要があります。引き渡し日には売りたい物件の鍵を忘れずに持っていきましょう。

確定申告のために譲渡所得税を算出しておく

事故物件を売却する場合、譲渡所得税を納めなければならないケースがあります。その場合、原則的には売却した翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告をする必要があります。

譲渡所得税は個人でも算出することは可能ですが、いくつかの手順を踏んで算出しなければなりません。

譲渡所得税の算出は、まず事故物件の売却によって得られた利益である「譲渡所得」の計算から始めます。譲渡所得は下記の計算式で算出可能です。

「買い手から受け取った金額-(事故物件の取得費+譲渡にかかった費用)」

たとえば、「取得費2,000万円」「譲渡費用150万円」「売却金額3,000万円」の場合を想定すれば、「3,000万円ー(2,000万円+150万円)=850万円」と計算できます。なお、譲渡所得税は譲渡所得によって発生するため、売却によって利益が出なければ譲渡所得税はかかりません。

次に、譲渡所得に一定の税率をかけて、譲渡所得税を算出します。一定の税率は、事故物件の所有期間によって下記のように変わります。

所有期間 所得税率
5年超 15%
5年以下 30%

譲渡所得が850万円であれば、所有期間が5年以下の場合は「850万円×30%=255万円」、所有期間が5年を超えていれば「850万円×15%=127.5万円」と計算します。

基本的にはご自身で算出も可能ですが、不動産の取得費や経費計上の仕方などで金額は変わるため、専門家に相談した方が安心です。

弊社では、全国の弁護士や税理士とも連携しています。「譲渡所得税がかかるか不安」「確定申告の仕方が分からない」という場合でも、税務面のご相談まで一貫してサポートいたしますので、一度ご相談ください。

まとめ

事故物件は通常物件よりも売却が難しいといっても、絶対に売れないわけではありません。条件のよい物件であれば仲介で売れる可能性はあり、専門の買取業者であれば買い手がつきづらい事故物件でも売却に期待できます。

ただし、事故物件を売却する際には、基本的に告知義務が生じます。売買契約を締結する前に、買い手に対して人の死があった事実について説明しなければなりません。

仮に告知義務を果たさずに事故物件を売却した場合、契約解除や損害賠償の請求となる可能性もあります。事故物件の売却を検討している場合、売却の方法だけでなく告知義務についても把握しておくようにしましょう。

よくある質問

告知義務に時効はありますか?

事故物件の売却においては、告知義務に時効はありません。国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、賃貸に関しては原則3年の時効が設けられています。

しかし、売買についてはこのような期間制限がないことから、事故物件の売却における告知義務には時効が存在しないと判断できます。つまり、たとえ30年経過していても、事故物件を売るときには告知義務が生じます。

事故物件で特殊清掃やリフォームは必ず必要ですか?

法律上は必要ありません。しかし、特殊清掃やリフォームをしていない事故物件は買い手がつきにくいことから、売却を希望する場合は必要です。

たとえ老衰や病死のような自然死であっても、人が死亡した物件には体液が混じったシミや汚れ、死臭などの臭いが大なり小なり残ります。このような物件に住みたいと思う人はまず現われません。

一方で、特殊清掃やリフォームをした上で、市場相場よりも安い価格で売り出せば、購入希望者が現われる可能性がでてきます。

このように、事故物件や特殊清掃やリフォームは法律上絶対に必要ではありませんが、売却に成功したいのであれば事実上必要です

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