孤独死があった物件は事故物件になる?事故物件の基準や告知義務など孤独死物件の完全マニュアル

孤独死があった物件は事故物件になる?事故物件の基準や告知義務など孤独死物件の完全マニュアル

物件を所有している人のなかには、物件内で孤独死が起きてしまった人もいるかもしれません。その場合、「孤独死があった物件は事故物件になるのか」のように考えることでしょう。

結論から述べれば、孤独死があったからといって、その物件は必ず事故物件になるとはいえません。孤独死があった物件であっても、事故物件とはみなされないケースもあります。

前提として、事故物件になる基準は法令で明確に定められてはいません。あくまで一般的には、「人の死があったことで心理的な抵抗を感じさせるような物件」は事故物件とみなされます。

孤独死は日常生活を送るうえで発生しうる死因と考えられています。人によって捉え方は変わりますが、他殺や自殺などと比べれば心理的な抵抗は小さいとされているため、孤独死があった物件は事故物件にならないケースがあるのです。

ただし、「遺体の発見が遅れて特殊清掃を行った」などの物件の場合、心理的な抵抗を与えやすいため、基本的には事故物件としてみなされるため注意が必要です。

事故物件として扱われてしまった場合には告知義務が生じるため、通常物件と同じように売却や賃貸はできません。

そのため、所有している物件で孤独死が起きた場合には、まず事故物件になるのかどうかを確かめて、事故物件になる場合には告知義務などについて把握しておくことが大切です。

当記事では、事故物件になるのかどうかの基準や告知義務など、孤独死があった物件について網羅的に解説していきます。孤独死があった物件の売却方法についても紹介していくため参考にしてみてください。

目次

孤独死があった物件が必ず事故物件になるわけではない!まずは事故物件の基準を把握しておく

結論から述べますが、孤独死があったからといって、その物件が必ず事故物件になるわけではありません。

そもそも、事故物件の明確な定義や基準は法令などで定められていません。一般的には、心理的瑕疵がある物件は事故物件として扱われています。

心理的瑕疵(かし)とは、不動産の買い手や借り手が心理的な抵抗感を持つような欠損や欠点のことです。人の死は心理的な抵抗を与えやすいため、孤独死が起きた物件も心理的瑕疵物件に該当する可能性はあります。

とはいえ、心理的な抵抗感を持つかどうかはその人の捉え方によって変わり、孤独死が起きてもまったく気にしない人もいれば、抵抗を感じてしまう人もいます。そのため、一般的な定義上では孤独死があった物件が事故物件に該当するかどうかを判断するのは難しいです。

なお、国土交通省が2021年に制定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、現時点で可能な限り妥当と考えられる事故物件の基準が公表されています。

法令で定められた基準ではありませんが、孤独死があった物件が事故物件に該当するのかどうかを判断する目安になります。

具体例
該当する物件 ・他殺があった物件
・自殺があった物件
・火事などの事故死があった物件
・遺体が人知れず放置されてしまい、特殊清掃や大規模なリフォームを行った物件
該当しないと考えられる物件 ・自然死があった物件
・日常生活において不慮の死があった物件

端的にいえば、孤独死の死因が自然死や日常生活を送るうえでの不慮の死であれば、事故物件にならない可能性があるのです。

ここからは、孤独死があった物件が事故物件に該当するケースと該当しないケースについて、それぞれ解説していきます。

ポイント

□孤独死が起きてから遺体が発見されるまでの日数は事故物件の基準に直接かかわらない
「孤独死が起きてから遺体が発見されるまでに何日が経過すると事故物件になるのだろう」のように考える人もいるかもしれませんが、人の死が起きてからの日数は事故物件の基準に直接かかわらないといえます。

前述したように、事故物件に該当するかどうかの主な要因は、買い手や借り手に心理的な抵抗を与えるかどうかです。孤独死が起きてすぐに遺体が発見された場合でも、事故物件としてみなされることも考えられます。

とはいえ、遺体が長期間放置されたような物件の場合、心理的な抵抗をより与えやすくなるため、事故物件としてみなされる可能性はあります。そのため、直接的な要因にはならなくとも、事故物件の基準に間接的にはかかわっていると言えるでしょう。

孤独死のあった物件が事故物件に該当するケース

宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を参考にすれば、「他殺・自殺・火事などの事故死があった」「遺体が人知れず放置されてしまい、特殊清掃や大規模なリフォームを行った物件」は事故物件に該当するといえます。

そのため、「事件性がある」「発見までに時間がかかってしまい、血液や体液が染み出して建物にダメージを与えてしまった」といった物件の場合は事故物件に該当すると考えられます。

具体的なケースを挙げれば、遺体の発見時に腐敗が進んでしまった物件を想定します。夏場は72時間程度、冬場は2週間程度で遺体が腐敗するとされているため、遺体発見までにこの程度時間がかかってしまった物件は事故物件に該当する可能性があります。

孤独死のあった物件が事故物件に該当しないケース

孤独死があったとしても、心理的な抵抗を与えないような物件であれば事故物件にはなりません。宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を参考にすれば、自然死や日常生活において不慮の死の場合は心理的な抵抗を与えづらく、事故物件に該当しないと考えられます。

具体例を挙げれば、孤独死の死因が下記のような場合には事故物件に該当しない可能性があります。

  • 老衰
  • 病死
  • 階段からの転落
  • 入水中の溺死や転倒事故
  • 食事中の誤嚥(ごえん)

ただし、上記の死因であっても、遺体が長期間発見されずに血液や体液が染み出していたり腐敗臭が発生していたりすると、買い手や借り手に心理的な抵抗を与えやすくなり、事故物件としてみなされる可能性もあるため注意が必要です。

孤独死があった事故物件を売却する場合には告知義務が生じる

孤独死があった物件は心理的な抵抗を与えやすいため、通常物件よりも売却や賃貸が難しくなります。そのため、孤独死があった物件を所有している場合、「孤独死があったことを買い手や借り手に隠せないのか」のように考えるかもしれません。

しかし、事故物件を売却・貸借する場合には告知義務が生じるため、買い手や借り手に対して孤独死があった事実を隠すことは認められません。

国土交通省のガイドラインには、事故物件のような心理的瑕疵物件を売却・賃貸する際は、不動産契約を判断する際に影響を及ぼすような重要な事例を相手に対して伝える必要があると定められています。

これを「告知義務」といい、心理的瑕疵物件を所有する場合、その物件を売ったり貸したりする際にはこの義務を負わなければなりません。

なお、自然死や日常生活において不慮の死の場合など、孤独死があった物件によっては事故物件としてみなされない物件もあります。その場合には告知義務は不要とされています。

とはいえ、前述したように、事故物件の基準は明確に定められていないため、どのような物件であれば心理的抵抗を与えづらく事故物件にならないと判断するのは難しいです。

人の死が起きた物件であるのは変わらないため、ガイドラインでは不要とされていても、孤独死があった物件を売却・賃貸する場合には取引相手にその事実を伝えるべきだといえます。

孤独死があったことを隠して売却すると告知義務違反になる

人の死があったことは、不動産契約を判断する際に重大な影響を与えるものだと考えられています。孤独死があったことを意図的に隠して売却や賃貸をすると告知義務違反になり、契約不適合責任に問われてしまう可能性があります。

契約不適合責任とは、契約時に買主へ伝えていなかった不具合や欠陥が見つかった場合に売り手が買い手に対して負う責任のことです。契約不適合責任に問われた場合には、孤独死があった物件の契約解除や損害賠償を請求される可能性もあります。

実際に、過去には1年以上前に建物内で自殺があったことを故意に隠して賃貸借契約をした賃貸人が賃借人から訴訟を起こされ、約114万円の支払いを命じられた判例もあります。

孤独死があった物件を売ったり貸したりする際には、その相手に対して「孤独死がいつ・どこで起きたのか」「どのような死因だったのか」「特殊清掃は行ったのか」といった点を必ず伝えるようにしましょう。

孤独死があった物件を売却する方法!事故物件に該当するかどうかを基準にして売却方法を選ぶ

孤独死のあった物件に限りませんが、不動産を売却する方法には「仲介」「買取」が挙げられます。孤独死があったからといって法令などで売却が制限されているわけではないため、仲介・買取のどちらでも売却することは可能です。

しかし、事故物件は心理的な抵抗を与えやすいことから、通常物件よりも買い手が見つかりづらいのも事実です。そのため、孤独死が起きた物件が事故物件に該当するかどうかを基準に、下記のように物件の売却方法を決めるのもよいでしょう。

  • 事故物件に該当する場合:基本的に仲介ではなく買取を検討する
  • 事故物件に該当しない場合:仲介と買取の両方から希望に合った方法を検討する

ここからは、事故物件に該当するかどうかを基準にした孤独死物件の売却方法の決め方について、それぞれ詳しく解説していきます。

事故物件に該当する場合:基本的に仲介ではなく買取を検討する

仲介の場合は不動産会社による売却活動によって買い手を探してもらい、基本的には一般の人が買い手になります。一般の人から購入を敬遠されやすい事故物件の場合、仲介で物件を売却するのは難しいです。

実際に当社で10代~80代以上の男女1000人にアンケートを実施したところ、事故物件にやや抵抗がある・抵抗があると答えた人は、85%に上る結果となりました。

一方、買取は不動産買取業者が買い手となり、直接不動産を買い取ってもらう方法です。不動産買取業者は、買い取った物件を活用して利益をあげることを目的としており、リフォームやリノベーションなどを行って物件の価値を高めたうえで再販売をしています。

条件がよくない物件であっても積極的に買い取ってもらえるのが一般的であるため、孤独死があった事故物件でも売却できる見込みはあります。つまり、仲介では買い手が見つからない可能性はありますが、買取であれば孤独死があった事故物件も売却に期待できるのです。

また、買取であれば買い手を探すための売却活動が不要になる分、仲介よりも早く物件売却が完了するのが一般的です。あくまで目安ですが、仲介の場合は3か月〜6か月程度の期間がかかりますが、買取では数日〜1か月程度で物件売却が完了します。

そのため、「孤独死があった事故物件をなるべく早く手放したい」という場合にも、買取は向いているといえます。

ただし、不動産買取業者は買い取った物件の価値を高めるためのコストを考慮して、物件の買取価格を決定するため、仲介よりも売却価格が安くなるのが一般的です。仲介の7割〜8割程度が買取価格の相場といわれているため、「安くなったとしても孤独死があった事故物件を売却したい」という場合には、買取を検討するのがよいでしょう。

事故物件に該当しない場合:仲介と買取の両方から希望に合った方法を検討する

孤独死の死因が自然死や日常生活を送るうえでの不慮の死の場合、そもそも事故物件に該当しない可能性があります。その場合には仲介でも買い手が見つかることに期待できるため、仲介と買取の両方から自身の希望に合った方法を検討するのがよいでしょう。

仲介と買取の特徴をまとめましたので、参考にしてみてください。

特徴 選ぶべき状況
買取 ・数日〜1か月程度で売却できる
・仲介よりも売却価格が安くなりやすい
・仲介では買い手が見つからないような条件の物件も売却に期待できる
・孤独死のあった物件をすぐにでも売却したい
・物件自体の条件がよくない
仲介 ・市場価格に近い金額で売却できるのが一般的
・売却できるまでに3か月〜6か月程度の期間がかかる
・時間がかかってでもなるべく高値で売却したい
・物件自体の条件がよい

なお、買取と仲介のどちらを選ぶかの基準として、売りたい物件の条件のよさが挙げられます。

「都心などの人気のエリアにある」「築年数が浅い」「駅から徒歩5分圏内にある」のような条件がよい物件であれば、比較的需要が見込めるため、仲介でも売却できる可能性はあります。

一方、「築年数が古い」「アクセスがよくない」のように条件が良いとはいえない物件の場合は需要が見込めず、事故物件に該当しなかったとしても仲介では売れ残ってしまう可能性があるのです。

孤独死があった物件の売却方法に悩んだときには、まずは不動産会社に自身の希望を伝えたうえで、どちらの方法で売却するべきかのアドバイスをもらうのもよいでしょう。

孤独死のあった物件が売れづらいときには事故物件専門の買取業者を検討してみる

孤独死があった物件は心理的な抵抗を感じられやすいため、前述したように仲介ではなかなか買い手がつかないことも考えられます。また、すべての買取業者が孤独死があった物件の買取りに対応しているわけではありません。

そのため、場合によっては「孤独死があった物件を売りたくても断られてしまった」ということにもなりかねません。

このように孤独死のあった物件が売れづらい場合には、事故物件専門の買取業者に依頼することも検討してみてください。事故物件専門の買取業者であれば、孤独死があった物件も積極的に買い取ってもらえるのが一般的です。

また、事故物件専門の買取業者に依頼することには、ほかにも下記のようなメリットがあります。

  • 契約不適合責任が免除されるのが一般的
  • 仲介手数料が不要で孤独死があった物件を売却できる
  • お祓いやリフォーム、特殊清掃をせずに買い取ってもらえる

ここからは、事故物件専門の買取業者に依頼するメリットについて、それぞれ解説していきます。

契約不適合責任が免除されるのが一般的

仲介の場合、売り手は契約不適合責任を負わなければなりません。

たとえば、孤独死があったことを隠して物件を売却して、それが売却後に発覚した場合、損害賠償や契約の解除が求められるリスクがあります。また、ほかにもシロアリ被害や雨漏りといった瑕疵が売買後に発覚した場合も同様です。

しかし、専門の買取業者であれば、「契約不適合責任を一切負わない」という条件で売買契約が成立するのが一般的です。そのため、孤独死があった物件を売却した後に契約不適合責任に問われるリスクは仲介よりも低いといえます。

仲介手数料が不要で孤独死があった物件を売却できる

仲介で物件を売却する場合、売買契約が成立した後には報酬として不動産会社に仲介手数料を支払うのが一般的です。

しかし、買取業者であれば、不動産会社が買い手となり仲介が不要になるため、仲介手数料が発生しません。そのため、事故物件専門の買取業者に依頼すれば、仲介手数料分の費用を抑えて孤独死のあった物件を売却することが可能です。

なお、仲介手数料は不動産会社によって異なりますが、不動産会社が受領できる仲介手数料の上限額は下記のように定められています。

不動産の売却価格 仲介手数料の上限
200万円以下 売却金額の5%+消費税
200万円超400万円以下 売却金額の4%+2万円+消費税
400万円超 売却金額の3%+6万円+消費税

たとえば、売買価格が税抜500万円の事故物件の場合、「500万円×3%+6万円+(500万円×10%)=71万円」が仲介手数料の上限となります。この場合、買取業者に依頼すれば、最大71万円の仲介手数料を抑えつつ孤独死のあった物件を売却できるとも言えるのです。

お祓いやリフォーム、特殊清掃をせずに買い取ってもらえる

孤独死があった物件を仲介で売る場合、特殊清掃やお祓いを事前に行っておくのが一般的です。また、場合によってはリフォームを行っておく必要もあり、それらの費用は基本的に売り手が負担します。

しかし、事故物件専門の買取業者は特殊清掃やお祓い、リフォームを自社で行ったうえで再販売しているのが一般的です。そのため、事故物件専門の買取業者であれば、孤独死があった物件をそのままの状態で売却することも可能です。

特殊清掃やお祓い、リフォームをすべて自身で行う場合、数十万円〜数百万円ほどの費用がかかるケースも少なくありません。これらの費用を負担することなく、また残置物の撤去などの手間もかからずに物件を売却できるのは、事故物件専門の買取業者に依頼するメリットといえるでしょう。

孤独死があった物件の売却相場は通常物件よりも1割〜2割ほど安くなりやすい

孤独死があった物件は事故物件に該当しなかったとしても、通常物件よりも売却相場が安くなる傾向があります。これは、孤独死が起きた事実が心理的な抵抗を感じさせやすいことが関係しており、あくまで目安としては通常物件よりも1割〜2割ほど安くなります。

たとえば、通常1,000万円で売却できる物件を想定すれば、孤独死があった物件の売却金額の相場が800万円〜900万円程度です。

なお、事故物件のなかでも、孤独死があった物件は心理的な抵抗は小さいと考えられています。そのため、他殺や自殺があった事故物件よりも売却相場は下がりにくい傾向があります。

ポイント

○特殊清掃を行った物件は売却相場がさらに安くなりやすい
孤独死があった物件によっては、遺体の発見が遅れてしまったために特殊清掃を行った物件もあることでしょう。

特殊清掃を行った物件は告知義務が生じ、事故物件として扱われてしまいます。そのため、特殊清掃の必要がない物件よりも心理的な抵抗を感じさせやすくなり、売却金額も安くなる傾向があるのです。

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当社の孤独死があった物件の買取事例:孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例

実際の物件の売却金額は、物件で起きた事故・事件の内容や物件自体の状態などによって変動します。そのため、所有する物件によっては、売却金額が相場とは大きく異なるケースも少なくありません。

実際に業者が買い取った事例を参考にすれば、孤独死のあった物件が実際にはいくらほどで売却できるかがみえることもあります。孤独死があった物件の売却相場を知りたい場合、買取事例も参考にするのもよいでしょう。

ここからは、当社「株式会社クランピーエステート」が実際に孤独死があった物件を買い取った事例を紹介していきます東京都品川区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。

買い取った物件種類 マンション
物件があるエリア 東京都品川区
事故・事件の内容 1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、腐臭が発生していた物件
買取金額 1,000万円

この物件は、1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、その腐臭から近隣住民の方が通報し発覚した事故物件です。疎遠になっていた相続人からのご依頼で、相続手続きの相談を含めて1,000万円で買い取らせていただきました。

孤独死があった物件を少しでも高値で売却するための対策

孤独死があった物件の売却を検討している人のなかには、「少しでも高値で物件を売却したい」のように考える人もいることでしょう。その場合、孤独死があった物件を少しでも高値で売却するための対策を講じてみてください。

  • 複数の不動産会社に査定をしてもらったうえで依頼先を決める
  • リフォームや特殊清掃をして資産価値を高めておく

ここからは、孤独死があった物件を少しでも高値で売却するための対策について、それぞれ詳しく解説していきます。

複数の不動産会社に査定をしてもらったうえで依頼先を決める

孤独死があった物件を少しでも高値で売却したい場合、複数の不動産会社や買取業者に査定を依頼してみてください。

孤独死があった物件の売却金額は、業者が行う査定でおおかた決まります。査定による売却金額を決める基準は業者によって異なると考えられ、複数の業者に査定を依頼することで査定額にばらつきが出ると予想されます。

これにより最も高い査定額を提示してもらえた業者を見つけることができ、その業者に依頼することでほかの業者よりも高値で孤独死があった物件を売却できる可能性があるのです。

不動産会社や買取業者では、査定のみであれば無料で対応してもらえるのが一般的です。「すぐにでも孤独死があった物件を売りたい」のように考える人もいるかもしれませんが、まずは複数の業者に査定を依頼することを検討してみましょう。

リフォームや特殊清掃をして資産価値を高めておく

孤独死があった物件に限った話ではありませんが、物件の売却金額は建物の状態の良さによっても変動します。そのため、リフォームや特殊清掃を事前に行っておくことで、孤独死があった物件を高値で売却できると考えられます。

とはいえ、特殊清掃やリフォームを行う場合、数万円〜数十万円の費用がかかるのが一般的です。そのため、特殊清掃やリフォームを行った場合、物件自体の査定額は高値で提示されたとしても、これらのコストによって利益が見込めない可能性もあります。

特殊清掃やリフォームを検討している場合、これらを行うことでどの程度の利益が見込めるのかを物件売却を依頼する業者に相談しておくのが得策です。

特殊清掃やリフォームを行った場合と、そのままの状態で売却する場合の売却金額の目安を算出してもらうことで、「どちらのほうがお得に孤独死があった物件を売却できるのか」を判断できます。

孤独死があった物件を売却する流れ

仲介か買取かなどにもよりますが、孤独死があった物件を売却する場合には、おおまかに下記のような流れとなります。

  1. 不動産会社や買取業者に査定を依頼する
  2. 物件の買い手と売買契約を結ぶ
  3. 決済・孤独死があった物件の引き渡しを行う

ここからは、孤独死があった物件を売却する流れについて、各工程で詳しく解説していきます。

不動産会社や買取業者に査定を依頼する

孤独死があった物件に限りませんが、不動産を売却する場合、まずは不動産会社や買取業者に査定を依頼する必要があります。

査定をしてもらうことで、売りたい物件がどの程度の金額で売れるのかの目安になる査定額を提示してもらえます。業者から提示してもらった査定額に問題がなければ、合意をして物件の売買契約に進みます。

物件の買い手と売買契約を結ぶ

孤独死があった物件の売却先となる買い手が決まった後には、売買契約を結びます。

不動産の売買を行う際には、「宅地建物取引業法」という法律によって不動産売買契約書の作成が義務付けられています。売買契約書には買取価格や引き渡し時期などの合意内容が記載されており、基本的には依頼した業者が契約書を作成してくれます。

なお、売買契約を締結させる際には、さまざまな必要書類を用意する必要があります。追加書類の提出が求められるケースもありますが、下記のような書類が必要になるのが一般的です。

必要書類 概要
登記済権利書 法務局から所有者に登記名義人に交付される書類。再発行できないため、紛失した場合には法務局に相談をする
固定資産税納付通知書 固定資産税などが記載された書類。税務署から毎年4月上旬ごろに送付される。
境界確認書 隣地との土地の境界を証明できる書類。測量士に依頼をして作成してもらえる
印鑑証明書 原則3か月以内に発行したものに限られる
本人確認書類 運転免許証やマイナンバーカードといった身分を証明できる書類
住民票 役所で取得できる書類

提出書類については所有する物件などによって変わることがあるため、依頼する不動産会社や買取業者に、どのような書類が必要なのかを尋ねておくのがよいでしょう。

決済・孤独死があった物件の引き渡しを行う

売買契約が締結した後は、契約内容に沿って決済や孤独死があった物件の引き渡しを行います。

決済や引渡しの日程は、売買契約を締結させる際に決定されます。売買契約の際には、引き渡しの都合がつきそうな日程をあらかじめ決めておき、その日に引き渡しができるようにスケジュールを調整しておくとよいでしょう。

なお、引渡し当日には買い手に物件の鍵を渡す必要があります。引き渡し日には売りたい物件の鍵を忘れずに持っていきましょう。

孤独死があった物件を売却する際にかかる費用

孤独死があった物件を売却する場合には、下記のような費用がかかるため事前に把握しておくのがよいでしょう。

  • 印紙税
  • 譲渡所得税

ここからは、孤独死があった物件を売却する際にかかる費用について、それぞれ詳しく解説していきます。

印紙税

孤独死があった物件を売却する場合、売買契約書の作成が必須です。売買契約書は印紙税の課税対象となる「課税文書」に該当するため、契約書の作成時には収入印紙が必要です。

売却金額 本則税率 軽減税率
10万円を超える~50万円以下 400円 200円
50万円を超える~100万円以下 1千円 500円
100万円を超える~500万円以下 2千円 1千円
500万円を超える~1千万円以下 1万円 5千円
1千万円を超える~5千万円以下 2万円 1万円
5千万円を超える~1億円以下 6万円 3万円
1億円を超える~5億円以下 10万円 6万円
5億円を超える~10億円以下 20万円 16万円
10億円を超える~50億円以下 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

たとえば、孤独死があった物件が3,000万円で売れた場合、通常収入印紙の金額が2万円となります。

なお、不動産売買の印紙税には軽減措置が設けられており、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成された売買契約書であれば、軽減率が適用されます。買取金額が3,000万円で軽減措置が適用されれば、収入印紙の金額が2万円から1万円になります。

譲渡所得税

孤独死のあった物件を売却したことで利益が出た場合、原則として譲渡所得税を納めなければなりません。その場合には、物件を売却した翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告をする必要があります。

そのため、孤独死があった物件を売却する場合、「自身の状況では確定申告が必要になるのか」「譲渡所得税はいくらなのか」といった点を事前に確認しておくことが大切です。

譲渡所得税は個人でも算出することは可能ですが、いくつかの手順を踏んで算出しなければなりません。

譲渡所得税の算出は、まず孤独死があった物件を売却したことで得られた利益である「譲渡所得」の計算から始めます。譲渡所得は「買取金額-(物件の取得費+譲渡にかかった費用)」の式で算出可能です。

たとえば、「取得費2,000万円」「譲渡費用150万円」「買取金額3,000万円」の場合を想定すれば、「3,000万円ー(2,000万円+150万円)=850万円」と計算できます。なお、譲渡所得税は譲渡所得によって発生するため、物件の売却で利益が出なければ譲渡所得税はかかりません。

次に、譲渡所得に一定の税率をかけて、譲渡所得税を算出します。一定の税率は、売却した物件の所有期間によって下記のように変わります。

所有期間 所得税率
5年超 15%
5年以下 30%

譲渡所得が850万円のケースを想定すると、所有期間が5年以下の場合は「850万円×30%=255万円」、所有期間が5年を超えていれば「850万円×15%=127.5万円」と計算します。

なお、不動産会社や買取業者では、「譲渡所得税が発生するかどうか」「確定申告でどのような手続きをするのか」などを相談できるのが一般的です。孤独死があった物件を売却する場合、譲渡所得税や確定申告についても依頼する業者に相談しておくとよいでしょう。

まとめ

孤独死があった物件が事故物件になるかどうかは、死因や特殊清掃の有無などによって異なります。孤独死があった物件であっても、死因が自然死や日常生活を送るうえでの不慮の死の場合で特殊清掃が必要ない物件であれば、事故物件としてみなされないと考えられます。

事故物件に該当する場合、物件の所有者には告知義務が生じます。そのため、その物件を売ったり貸したりする際には、孤独死があったことを相手に伝えなければなりません。

告知義務を果たさずに不動産取引をした場合、取引相手から損害賠償を請求される可能性があります。孤独死があった物件を売ったり貸したりする場合、相手に孤独死があった事実を必ず伝えるようにしてください。

なお、不動産の買取業者のなかには、事故物件を専門とする買取業者も存在します。

そのような業者であれば、「特殊清掃やお祓いなどをせずにそのままの状態で売却できる」「基本的には契約不適合責任が免除される」といったメリットがあるため、孤独死があった物件を売却する場合には、専門の買取業者の利用も視野に入れてみてください。

よくある質問

孤独死があった物件は売却せずに賃貸で活用したほうがよいでしょうか?

物件の条件次第であるため一概にはいえません。

なお、賃貸であっても告知義務は生じるため、賃貸なら孤独死があったことを隠せるわけではありません。孤独死があった場合には入居希望者が現れづらくなるため、不動産会社に相談して売却と賃貸ではどちらのほうが利益が見込めるのかなどを相談するのがよいでしょう。

孤独死があったことを隠した場合、絶対にバレてしまうのでしょうか

告知義務は法令で定められているものではないため、物件を購入した人に対して国や自治体から人の死があったような事実が通知されるわけではありません。そのため、孤独死があった事実が絶対にバレるかどうかは断言できません。

ただし、孤独死があったことを知っている近隣住民から買い手に伝わるケースが考えられます。

そもそも不動産取引では、公平性を保つために売り手や貸し手はその物件の状態について、可能な限り取引相手に伝えなければなりません。

孤独死があった事実は物件購入を検討する際に重大な影響があるとも考えられているため、事故物件に該当しない場合でも孤独死があったことを隠さずに売却することが好ましいです。

孤独死があった物件でも誰かが1度住めば事故物件にならないのでしょうか?

「誰かが1度でも住めば事故物件にならない」といううわさもありますが、実際はそのようなことはありません。誰かが住んだとしても人の死があった事実は変わらないため、今後も告知義務は生じます。

孤独死があった物件の告知義務はいつまで生じるのでしょうか?

事故物件を売却する場合には、告知義務に時効は定められていません。そのため、孤独死が発覚してから数年経過していた物件であっても、売却をする場合にはその事実を買い手に伝える必要があります。

なお、事故物件を賃貸物件として貸す場合、人の死から3年程度が経過していれば、その事案について告知する必要がないと定められています。

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