共有不動産を他共有者と会わずに売却する3つの方法!確実に売却するための基礎知識

共有不動産を他共有者と会わずに売却する3つの方法!確実に売却するための基礎知識

他の共有者と会わずに共有不動産全体を売却することは可能です。代理人に売買手続きを依頼したり、不動産会社に持ち回り契約を依頼したりすれば、他の共有者と会わずに済みます。

また、共有不動産をそれぞれの持ち分に分割すれば、自由に売却が可能です。共有物を分割するには、共有者間の話し合いが必要ですが、顔を合わせたくなければ、共有物分割調停で合意を目指す方法があります。

一方で、共有持分を売却する場合、他の共有者の合意は必要ありません。ただし、不動産の共有持分を一般の買主に売却するのは難しく、仲介で売却するより買取が現実的です。

特に、購入者がまったく知らない第三者と共有関係となる共有持分の売却は、一般の不動産会社でも買取は難しく、共有持分専門の買取業者に売却するほうがよいでしょう。

ただし、建物全体を売却する場合と比べ、共有持分の売却は買主が限定されることから価格は下がりやすくなります。

また、他の共有者に相談せず売却した場合、第三者と共有関係となる他の共有者とトラブルとなる可能性があります。そのため、共有持分の取扱いに慣れた買取業者がよいでしょう。

この記事では、共有持分を共有者と会わずに売却する方法から、共有持分を売却する際の注意点まで解説します。

共有不動産を共有者と会わずに売却することは難しい

不動産を複数人で共有している場合、他の共有者と会わずに売却することは簡単ではありません。その理由について解説します。

  • 共有不動産の売却には他共有者の合意が必須である
  • 共有不動産を売却した利益を他共有者と分ける際に会う必要がある

共有不動産の売却には他共有者の合意が必須である

前提として、共有不動産を売却するには他の共有者の同意が必要です。

民法251条1項では、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」と定めています。

ここでいう「変更」行為とは、共有物の主要な性質、用途などを変更する行為をいい、売却も含まれます。
その他、変更行為は、共有する建物の増改築や抵当権を設定する行為、共有する畑を宅地に造成する行為などです。

共有不動産を売却するうえで、他の共有者が必ずしも同意するかは分からず、話し合いのために会わなければならない場合もあるでしょう。

共有不動産を売却した利益を他共有者と分ける際に会う必要がある

共有不動産を売却した後、売却収入を分けあう際に会わなければならない可能性もあります。

共有不動産を売却した収入は、その共有持分に応じて分配します。

例えば、夫婦が住宅購入時に夫6/10、妻4/10の割合でペアローンなどで持ち家を購入した場合、贈与とならないよう持分登記をその割合に従ってするのが原則です。

仮に2,000万円で売却できた場合、夫は2,000万円×6/10=1,200万円、妻は2,000万円×4/10=800万円で分けあいます。

離婚にともなって共有不動産を売却する場合には、財産分与のほか、養育費や慰謝料請求などが関係することも少なくありません。そのため、持分とは異なる請求をしてくる場合もあり、会って話し合いが必要となることもあるでしょう。

また、実際に不動産を売却して分けあうには、売買契約書や決済代金の確認のほか、売却にともなって生じる仲介手数料や登記費用なども確認したうえで分配しなければなりません。

振込先を知らせることも必要なため、会う必要がなくても少なくとも連絡をとることは必要です。

共有不動産を他共有者と会わずに売却する3つの方法

では、共有不動産を他の共有者と会わずに売却するために、どういった方法が考えられるのでしょうか。ここでは3つの方法について解説します。

  • 1.代理人に依頼して売却活動を任せる
  • 2.仲介業者経由で他共有者の同意をもらう
  • 3.共有物分割調停を申し立て分割してから売却する

1.代理人に依頼して売却活動を任せる

1つめは、代理人に売却を委任する方法です。

販売活動を含めて売買契約締結から売買代金の決済・引渡しまで代理人に代わりにしてもらうことで、他の共有者と会わずに売却できます。

代理人は親族以外でも信頼できる人がいれば知人、友人でもなることができますが、司法書士や弁護士などの専門家に依頼するケースが多いでしょう。

このとき、大切なのは、委任状を作成して代理できる権限の範囲を明確にすることです。

代理人を立てる場合は委任状を作成しよう

不動産売却で代理人を立てる場合、委任状を作成します。委任状を作成することで、代理人に代理権があることが証明され、所有者本人が行う法律行為と同等の効果が発生します。

買主にとっても、代理人が有効に代理権限を持つことが分からなければ安心して取引を進めることはできません。

委任状の形式は法的に決められているわけではありませんが、作成に必要な項目は以下のようなものです。なお、代理を依頼した人を「委任者」、代理人を「受任者」といいます。

  • 代理人(受任者)の住所・氏名
  • 売買対象物件を特定する項目(所在、地番、家屋番号など)
  • 「不動産売却契約を締結する権限を代理人に委任する」一文
  • 委任の範囲(不動産売買契約、手付金や売買代金の受領など)
  • 委任状の有効期限
  • 委任状を作成日
  • 委任者・代理人の住所・氏名、押印(実印)

委任状を作成するうえでの注意点は、委任の範囲を明確にすることです。代理人が拡大解釈することがないよう限定的に記載する必要があります。

「一切の件を任せる」という文言を入れることや、委任する範囲が明確でない委任状は白紙委任となり、悪用される可能性もありトラブルの原因となります。

値引き交渉などで売却条件を変更する可能性もありますので、「売却条件を変更するときは本人と話し合う」などの一文を入れておくとよいでしょう。

委任状以外に必要な書類も全て準備する

委任状を作成するための必要書類もしっかり準備しましょう。

  • 委任者(所有者)の印鑑証明書(3か月以内のもの)
  • 委任者の実印
  • 委任者の住民票
  • 代理人の印鑑証明書(3か月以内のもの)
  • 代理人の実印
  • 代理人の本人確認書類(運転免許証などの写真付き身分証明

不動産売却を委任する際に必要な書類は、依頼する不動産会社に確認するとよいでしょう。また、物件を特定するための資料として、登記事項証明書があれば記載内容に間違いがないか確認できます。

2.仲介業者経由で他共有者の同意をもらう

2つめの方法は、仲介不動産会社に持ち回り契約で対応してもらう方法です。

持ち回り契約とは、売主が遠方に住んでいたり、高齢者で移動が難しい場合などに、売主、買主が別の日に別の場所でそれぞれ売買契約を行う手続きです。

共有者それぞれの売買契約手続きを不動産会社の担当者が別に行うことで顔を会わせずに売却できます。

持ち回り契約の流れについて法的な決まりはありませんが、売主が署名・捺印してから買主が署名・捺印する流れが一般的です。

流れとしては次のとおりです。

  1. 売買契約書・重要事項説明書などの内容を確認し、署名・捺印
  2. 他の共有者も同様に、署名・捺印
  3. 買主の署名・捺印をもらい1部を返送してもらう
  4. 買主が手付金を支払う
  5. 売主が手付金を受領し売買契約が成立

このとき、手付金の授受に関する領収書や預かり証なども必要となりますので、不動産会社に確認しながら進めましょう。

ただし、持ち回り契約を行うためには、「共有者全員が売却に同意していること」、また、「共有者全員と買主が持ち回り契約に同意していること」が必要です。

持ち回り契約は、直接対面で行う場合と比べると取引上のリスクもあり、時間がかかることから、買主が同意しない可能性もあります。

また、そもそも他の共有者が売却に同意しなければ、持ち回り契約で売却することはできません。

3.共有物分割請求を申し立て分割してから売却する

3つ目の方法は、共有物分割請求を申し立て、共有不動産を分割して売却する方法です。

民法256条1項では、「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と規定しています。これは、所有形態として単独所有が原則であることから共有関係をいつでも解消できるようにし、紛争を防止しようとする規定です。

そのため共有者はいつでも共有物の分割請求が可能です。共有物の分割請求は、当事者間で分割協議を行うことも可能ですが、顔を会わせたくない場合、調停の場で協議することもできます。

共有物分割調停では、調停委員を入れて双方個別の話を聞きながら協議しますので、顔を合わせずに進められます。協議で合意できれば調停調書が作られ、それに従って共有不動産を分割します。自分の持ち分については単独所有となり、他の共有者の同意がなくても売却が可能です。

自分の持ち分であれば他の共有者と会わずに売却できる

前段で説明したように、共有持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売却することは可能です。
例えば、兄弟姉妹3人でそれぞれ1/3ずつの持ち分で不動産を相続した場合、自分の持ち分については、他の共有者の同意がなくても売却できます。

また、共有持分だけであれば、他の共有者に会わずに売却が可能です。ただし、共有持分だけの売却は不動産全体を売却する場合と比べ、デメリットがあり、売却自体が難しくなる可能性もあります。次章で詳しく解説します。

他共有者と会わずに売却する場合の4つの注意点

ここまで他の共有者と会わずに売却する方法を紹介しましたが、注意点もあります。

  • 共有持分は仲介業者に売却が難しい
  • 需要が低いので価値が下がってしまう可能性がある
  • あとで他共有者とトラブルになる可能性がある
  • 共有物分割請求訴訟を起こされる場合がある
  • 離婚時の売却はトラブルになる可能性が高い

共有持分は仲介業者に売却が難しい

不動産会社と聞くとみな同じように聞こえるかもしれませんが、共有持分のみを売却する場合、一般の不動産仲介業者では難しい点には注意が必要です。

共有持分を購入者は、まったく知らない共有者と1つの不動産を共有することになりますので、市場を通じて一般の買主を見つけることは困難です。

そのため、一般の買主を対象として売却する不動産会社で取り扱うことは基本的にありません。

また、仮に共有持分を買い取る不動産会社があったとしても、慣れていない不動産会社だと、買い取った持分を売却する際に他の共有者とトラブルになることも考えられます。その結果、その不動産会社に売却したあなた自身が責められる可能性もあるでしょう。

需要が低いので価値が下がってしまう可能性がある

共有持分のみの売却では、買主が見つけにくいうえ、購入しても不動産を自由に活用したり処分したりすることは難しくなります。さらに、一般の不動産会社でも買取を断られるケースがあり購入対象は限定されます。

そのため、建物全体を売却する場合と比べると、不動産としての需要は低く、売却価格が下がる可能性は高くなります。

あとで他共有者とトラブルになる可能性がある

共有持分のみであれば他の共有者の同意は不要ですが、のちのち他の共有者とトラブルになる可能性があります。

共有関係になるのは、相続で取得したり、夫婦や親子で住宅を購入したりなどのケースが多く、通常は親族や婚姻関係にあるもの同士が共有者になることがほとんどでしょう。

共有持分を他の共有者に相談することなく売却すると、他の共有者は全く知らない第三者と突然共有関係となります。そのため、なぜ黙って売却したのかと非難されトラブルとなる可能性があります。

また、相談していれば「自分がもっと高い価格で買い取った」「まとめて不動産全部を売却すればよかった」と責められる可能性もあります。

他の共有者と会いたくない場合であっても、共有持分を売却する場合事前に相談すべきでしょう。

共有物分割請求訴訟を起こされる場合がある

共有物分割調停の申立てを行い協議を重ねても、必ずしも合意に至るわけではありません。分割調停で話がまとまらなければ、遺産分割請求訴訟へ発展する可能性があり、時間も費用もかかることになります。

訴訟手続きは、調停と異なり、口頭弁論が行われ、お互いが証拠書類をもとに主張・立証を重ね、最終的には裁判官の審判で決まるものです。そのため、誰も望まない結果が判決となる可能性もあります。

また、口頭弁論では他の共有者と顔を合わせることが一般的であるため、どうしても顔を合わせたくない場合は、弁護士に依頼することが必要です。そのときは、当然弁護士費用が必要となります

離婚時の売却はトラブルになる可能性が高い

離婚時に共有持分を売却する場合、夫婦間のトラブルとならないように注意しなければなりません。

離婚する際には財産分与します。財産分与の対象となるのは、不動産を含め、婚姻後に形成した財産(共有財産)はすべてです。

財産分与の割合は原則として、夫婦1/2ずつ分け合います。これは夫婦の婚姻期間中の貢献度は等しいものと考えられているためです。

ただ、家を購入した時の出資割合によっては必ずしも1/2ではないこともあります。そのとき、売却したお金などを支払う必要が生じる場合もありますが、支払いを拒否したり、支払えない場合にトラブルとなる可能性があります。

共有持分専門買取業者に買取依頼できる

共有持分を専門に買い取る事業者に売却することもできます。

不動産を売却する方法には、大きく「仲介」と「買取」があります。

仲介は、売主と買主の間に不動産会社が入り、販売活動から売買契約、引渡しまでサポートする方法です。ネット広告などを活用し、広く購入希望者を募集します。

一方、買取は、不動産会社が買主となって直接買い取る方法です。購入希望者を探す必要も対応も必要なく、現金化までの時間を短縮できます。

ただし、単独所有の土地や建物であれば、不動産会社は買取を積極的に行いますが、共有持分のみの買取は一般の不動産会社では断られることも少なくありません。

この点、共有持分専門の買取業者であれば、買い取ってもらえる可能性は高く、他の共有者にも知られることなく売却を進めやすいといえます。

また、万一売却後に他の共有者とトラブルになった場合でも、専門の買取業者であれば対応を一任しやすいでしょう。

まとめ

共有不動産を売却する場合、共有持分だけを売却することはできますが、購入する対象者は限定され、売れにくいことから価格は下がります。

そのため、可能であれば他のすべての共有者の同意のもと不動産全体を売却して、売却収入を持分割合に応じて分割するほうが得られる収入は多くなるでしょう。

共有不動産の売却で他の共有者と顔を合わせてくなければ、代理人を立てたり、不動産会社に持ち回り契約で手続きしてもらう方法もあります。

また、不動産の売却で他の共有者の同意が得られない場合、共有物分割調停の申し立て、調停委員を含めたなかで協議することで合意できる可能性もあります。

ただ、他の共有者の合意が得られず、持分のみを売却する場合、一般の買主への売却は難しく、現実的には共有持分専門の買取業者などに買い取ってもらう方法となるでしょう。

その場合でも、のちに他の共有者とトラブルとならないために事前に報告しておくとよいでしょう。

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