不動産は相続せずに売却できる?売却するために必要な流れを解説

不動産の買取を専門とする弊社では、「不動産を相続せずに売却できる?」「相続の話し合いがまとまらず、登記ができないが売却したい」などのご相談が寄せられることがあります。

結論から述べると、不動産を相続せずに売却することはできません。

相続登記をしていない状態では名義が被相続人のままであり、相続人は正式な所有者とは認められないからです。所有権を持たない相続人が売却しようとしても、法的に売買契約を結ぶことはできません。

仮に相続登記をしないまま売却を進めると、契約が無効になるだけでなく、損害賠償や違約金請求などのトラブルに発展するおそれがあります。

また2024年4月1日からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく手続きを怠った場合は10万円以下の過料が科されます。そのため相続財産に不動産が含まれる場合、まずは相続登記で名義変更することを優先させましょう。

不動産の相続から売却までの流れは以下が基本です。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人を確定する
  3. 相続財産を調査する
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 相続登記を行う
  6. 不動産仲介会社や買取業者に売却を依頼する

なお、相続登記が完了していない段階であっても、不動産会社に売却の相談をすることは可能です。早めに売却を完了させたい場合は、まず遺産分割協議で不動産を誰が引き継ぐのかを決めたうえで、売却の手続きを先行して進めておきましょう。

弊社クランピーリアルエステートでは、弁護士や司法書士などの士業と連携し、相続登記の申請から売却手続きまでをワンストップでサポートしています。

書類の収集や相続人同士の調整などもすべて専門家が代行するため、遠方に住んでいる方や多忙な方でも売却手続きを進めさせていただきます。

「手間なく売却を終わらせたい」「相続登記から売却まで一任したい」とお考えの方は、ぜひ一度クランピーリアルエステートへお気軽にご相談ください。

目次

不動産は相続せずに売却することはできない

結論から述べると、不動産を相続せずに売却することはできません。

不動産は、原則として所有者本人しか売却する権利がないためです。売却とは、単に売買契約を結ぶだけでなく、登記簿上の所有権を買主へ移転する手続きまでを含みます。

相続登記をおこなっていない場合、不動産の名義は亡くなった方(被相続人)のままの状態です。たとえ相続人が売却を希望していても、現時点ではその不動産の「正式な所有者」ではありません。

つまり、法的には売主としての資格を持たない状態です。不動産の売買においては、登記簿上の名義人と売主が一致していなければ所有権移転登記ができず、実質的に売却を成立させることができません。

この点については、民法第177条で不動産の権利に関するルールとして明確に定められています。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
引用元: 民法|e-Gov 法令検索

つまり、登記をしていない状態では、所有権の移転が法的に認められないということです。相続登記をおこなわずに売買契約を締結しても、不動産の権利を買主へ移転できないため、取引自体が無効となってしまいます。

そのため、不動産を売却する場合には、まず相続登記によって被相続人名義から相続人名義へ変更し、正式な所有者として登記簿上に記載される必要があります。相続登記が完了して初めて、相続人は売主として不動産の売却手続きを進められます。

2024年4月から相続登記申請は義務化されたため注意

2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した人に相続登記が義務化されました。

相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になりました。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
遺産分割(相続人間の話合い)で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります。
引用元: 相続登記の申請義務化に関するQ&A|法務省

相続人は、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記手続きをおこなわなければなりません。遺産分割協議がおこなわれた場合は、協議が成立した日から3年以内に申請する必要があります。

正当な理由がないまま期限を過ぎてしまうと、10万円以下の過料というペナルティが科されます。

なお、2024年4月1日より以前に相続が発生していた場合でも、相続登記の義務化対象となります。過去の相続の場合は、法律が施行された日から3年間、つまり2027年3月31日まで猶予期間が設けられています。

このように、不動産は相続しなければ売却できないだけでなく、法律でも登記が義務化されています。相続財産に不動産が含まれている場合は、早めに相続登記の手続きを進めましょう。

参照:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始|東京法務局

不動産を相続せずに売却した場合のリスク

不動産を相続せずに売却した場合、以下のようなリスクを伴います。

  • 売買契約が法的に無効になる
  • 買主から損害賠償を請求される可能性がある
  • 違約金が発生する可能性がある

売買契約が法的に無効になる

相続登記をおこなわずに売買契約を結んだ場合、登記簿上の名義が被相続人のままであるため、所有権の移転登記ができません。これは、法的に売主が所有権を移転する義務を果たせない状態、すなわち民法上の「債務不履行」に該当します。

売主が債務を履行できない場合、買主は契約を解除する権利を有しており、その契約は初めから存在しなかったものとして扱われます。結果として、売主は受け取った売買代金を買主に返還しなければならなくなります。

債務不履行については、民法でも以下のように定められています。

(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
(以下略)
引用元: 民法|e-Gov 法令検索

相続登記を済ませていない不動産の売買契約は、最初から履行が不可能な「無効に等しい契約」とみなされます。

たとえば、相続登記をしないまま買主との間で契約書を交わし、手付金を受け取った後に登記ができないことが判明すれば契約は解除され、代金を全額返さなければなりません。

もしも代金を返還できなければ、買主から訴訟を受けるなど法的トラブルに発展するリスクがあります。

買主から損害賠償を請求される可能性がある

相続登記をおこなわないまま不動産を売却すると、売主が所有権を移転できない状態となり、債務不履行に該当します。この場合、買主は契約の解除だけでなく、損害賠償を請求することも可能です。民法第415条では、以下のように定められています。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
引用元: 民法|e-Gov 法令検索

たとえば、買主がマイホームとして購入する予定でリフォーム業者に工事の予約を入れていた場合、登記ができないことが判明すれば工事の契約を取り消さざるを得ず、キャンセル料などの損失が発生します。こうした費用は、売主に対して損害賠償として請求される可能性があります。

また、買主が入居日を決めて引っ越しの準備をしていた場合にも、引き渡しができないことで一時的な住居費用や引っ越しの延期費用など、想定外の出費が生じるケースがあります。これらも損害として認められる可能性が高いでしょう。

さらに注意すべきなのは、損害賠償を回避するためには売主側が「自分に故意や過失がなかった」ことを証明しなければならない点です。しかし、相続登記を怠ったまま契約を進めていた場合には過失を否定するのは難しく、訴訟に発展するケースもあります。

このように、相続登記を済ませないままの売却は、契約の無効だけでなく金銭的な負担にもつながるリスクがあります。

違約金が発生する可能性がある

不動産売買契約では、契約違反が生じた際に支払う「違約金」に関する条項が設けられています。

違約金は、債務不履行によって契約を履行できなかった場合に、相手方へ損害賠償を簡潔におこなうための仕組みです。相続登記を行わないまま売却した場合、所有権の移転ができずに契約が解除されることになれば、違約金を支払う義務が生じます。

違約金は、売買価格の10〜20%程度が相場です。たとえば、4000万円の不動産を売却する場合、契約不履行により解除されたときの違約金は400万〜800万円程度に設定されます。

売買金額が大きくなるほど違約金も膨れ上がり、大きな損失につながります。

なお、売主が宅地建物取引業者(不動産会社など)の場合には、宅地建物取引業法第39条により、「違約金の上限は売買代金の20%まで」と定められています。

(手付の額の制限等)
第三十九条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。
引用元: 宅地建物取引業法|e-Gov 法令検索

一方、個人間の売買では上限規定が直接適用されないため、契約書に基づいて高額な違約金を求められる恐れもあります。相続登記せずに売却を進めると、契約無効になるだけでなく、多額の違約金による経済的損失にもつながります。

相続する前でも不動産売却の相談や依頼は可能

相続登記を済ませていない段階では、不動産の売買契約は成立しませんが、売却に向けた相談や依頼をすること自体は法的にも問題ありません。相続前の段階で動き出すことで、相続後の売却をスムーズに進められるようになります。

不動産会社や買取業者に相談・依頼することで、以下のような準備が可能です。

  • 査定・見積もりで売却価格の目安を把握できる
  • 必要書類や登記の流れについてアドバイスを受けられる/li>
  • 売却活動の段取りや広告計画を事前に立てられる
  • 士業と連携している業者なら、相続登記のサポートがある
  • どの不動産会社・買取業者に依頼するのかをじっくり選べる

このように、相続登記が終わっていなくても売却の準備を進めておくことで、登記完了後すぐに売却手続きを開始できます。

なお、弊社クランピーリアルエステートでは、司法書士や税理士などの士業と連携し、相続登記の申請や必要書類の収集サポートもおこなっています。

相続登記が完了した時点でそのままスムーズに売却へ移行できるため、ご依頼者様の負担を大幅に減らすことが可能です。また、税理士とも連携しているため、相続税や譲渡所得税など税金面の相談についても弊社が窓口となることも可能です。

「相続の進め方がわからなくて不安」「早めに売却を終わらせたい」と考えている方は、相続登記が未完了の状態でもぜひ一度ご相談ください。

実際に相続手続きのサポートから売却まで対応した買取事例

弊社に寄せられたご相談の中から、実際に相続手続きのサポートから売却まで対応した買取事例をピックアップして紹介します。

  • 未登記のまま放置していた人からの相談事例
  • 兄弟間で手続きが進まず困っていた人からの相談事例
  • 遠方に住んでいて手続きが面倒だと感じていた人からの相談事例
  • 固定資産税の督促があった人からの相談事例
  • 相続人が多く売却が難航していたケース

未登記のまま放置していた人からの相談事例

「長年放置していた親名義の不動産を売りたい」というご相談をいただいた事例です。

ご依頼者様は、数年前にお父様が亡くなった後も自宅をそのままにしており、「名義変更をしていない状態でも売却できるのか」と不安を抱えていました。

そこで弊社は司法書士と連携し、相続人の調査と必要書類の整理から着手しました。その後、相続登記を完了させてご依頼者様の名義に変更し、弊社で直接買取を実施しました。

ご依頼者様からは「手続きが複雑で困っていたけれど、最初から最後まで任せられて安心した」とのお声をいただきました。

不動産を未登記のまま放置していると、名義人の確認や書類の準備に手間がかかり、結果的に売却のタイミングを逃してしまうことがあります。

クランピーリアルエステートでは、相続登記の段階から司法書士と連携し、登記完了後の買取までを一括でサポートしています。名義変更が済んでいない不動産の売却を検討している方も、安心してご相談ください。

兄弟間で手続きが進まず困っていた人からの相談事例

兄弟間で話し合いが進まず、相続登記が何年も止まっていた方からご相談をいただいた事例です。

ご依頼者様は、ご両親が亡くなった後も兄弟の誰もが相続登記の手続きを進めず、長年そのままの状態が続いていました。売却を希望しても、登記名義が被相続人のままであったため売買契約を結ぶことができず、お困りの状況でした。

弊社では、まず司法書士を通じて相続人全員と連絡を取り、合意をえたうえで相続登記を完了させました。その後は弊社が直接不動産を買い取り、売却代金を兄弟で公平に分けられるようサポートしました。

相続人が複数いる場合、誰が中心となって手続きを進めるかが決まらず、相続登記が後回しになることがあります。

クランピーリアルエステートでは、司法書士をはじめとする専門家と連携し、相続人間の調整から登記の完了、売却までを一貫してサポートしています。兄弟間で話し合いが進まない場合でも、専門家を交えながら円滑に手続きを進めることが可能です。

遠方に住んでいて手続きが面倒だと感じていた人からの相談事例

地方にある実家を相続したものの、遠方に住んでいて手続きが進まないという方からご相談をいただいた事例です。

ご依頼者様は関東在住で、実家がある地方まで頻繁に行くことが難しく、「現地に行かずに売却できないか」と悩まれていました。登記の書類手続きや役所への申請などを自分で進めるのは負担が大きく、対応を先延ばしにしていた状況です。

弊社では、司法書士と連携して委任状を作成し、ご依頼者様が現地に出向くことなく相続登記を完了させました。登記完了後は、弊社が残置物の片付けや土地の測量も代行し、そのまま買取を実施しました。

ご依頼者様からは「すべて任せられて短期間で片付いた」と安心の声をいただきました。

相続した不動産が遠方にある場合、登記や片付け、現地確認などに多くの時間と労力がかかります。

クランピーリアルエステートでは、委任状による登記手続きの代行や現地作業のサポートもおこなっており、ご依頼者様が現地へ行かなくても売却まで完結できる体制を整えています。遠方の不動産を相続して手続きが進まない方も、安心してご相談ください。

固定資産税の督促があった人からの相談事例

相続登記をしていない土地に固定資産税の督促状が届き、売却を希望された方からご相談をいただいた事例です。

ご依頼者様は、亡くなったお父様の名義のまま土地を放置しており、ある日突然「固定資産税の督促状」が届いたことでご相談に来られました。登記が完了していない状態では売却の契約が進められず、どこから手を付けてよいか分からない状況でした。

弊社では、司法書士と連携して相続人の確認と登記の準備を進め、相続登記を優先的に完了させました。その後、弊社が不動産を直接買取し、売却代金の一部を税金の支払いに充てることで、ご依頼者様の負担を軽減しました。

相続登記をしていない状態でも、相続人には固定資産税の納付義務が生じます。そのため、不動産の活用予定がなければ、早めに手放したほうが税金の負担を抑えられます。

クランピーリアルエステートでは、司法書士や税理士などの専門家と連携し、登記や税金の整理を含めた一連の手続きに対応しています。固定資産税の督促に悩んでいる方は、ぜひお早めにご相談ください。

相続人が多く売却が難航していたケース

相続人が多く、手続きの調整が進まない状況でご相談をいただいた事例です。

ご依頼者様は、10人以上いる相続人のうちの一人で、「自分が動いても他の相続人の同意が得られず、手続きがまったく進まない」とお困りでした。

弊社では、司法書士と連携して相続人全員への連絡を一括で引き受け、書類の収集や合意形成を進めました。相続人全員の同意を得たうえで相続登記を完了させ、その後は弊社が速やかに買取を実施しました。

ご依頼者様からは「相続人同士の関係が悪化する前に解決できて本当に助かった」という感謝の言葉をいただきました。

相続人が多い場合、連絡や書類のやり取りだけでも時間がかかり、話し合いが長期化する傾向があります。

クランピーリアルエステートでは、司法書士と連携し、複数の相続人が関わる複雑な案件でも一貫して対応しています。合意形成から登記の完了、買取までをスムーズに進める体制を整えているため、相続人が多くて話し合いが進まない方も安心してご相談ください。

不動産を相続してから売却するまでの流れ

不動産を相続してから、売却するまでの一連の流れは以下のとおりです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人を確定する
  3. 相続財産を調査する
  4. 遺産分割協議を行う
  5. 相続登記を行う
  6. 不動産仲介会社や買取業者に売却を依頼する

1. 遺言書の有無を確認する

不動産の相続手続きを始める前に、まず遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書が存在する場合、原則としてその内容が法的に優先されるため、遺言に従って相続を進める必要があります。確認せずに遺産分割協議をおこなうと、あとから遺言書が見つかった際に手続きをやり直すことになり、相続人全員に余計な負担がかかります。

遺言書には、主に以下3つの種類があります。

種類 概要
公正証書遺言 公証人と2人の証人の立ち会いのもとで作成される
自筆証書遺言 被相続人が自筆で作成する
秘密証書遺言 内容を秘密にしたまま存在を公証役場で保証してもらう

なお、自筆証書遺言や秘密証書遺言を見つけた場合は、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で相続人立ち合いのもと「検認」という手続きを経て内容を確認する必要があります。誤って自分で開封してしまうと、5万円以下の過料の対象となるため注意が必要です。

2. 相続人を確定する

遺言書がない場合、不動産を含む遺産をどのように分けるかは「遺産分割協議」で決める必要があります。遺産分割協議は相続人全員が参加しなければ無効となり、協議や登記手続きがやり直しになってしまうため、相続人調査で相続人を確定させましょう。

相続人を確定するためには、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得して、家族関係をたどる必要があります。

自分で戸籍を集めることも可能ですが、時間と手間がかかるうえ、調査漏れが生じてしまうことがあります。そのため、自分で対応するのが難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相続人調査を依頼しましょう。

3. 相続財産を調査する

相続人を確定したら、次に相続財産の調査を進めていきます。財産の調査を怠ると、あとから新たな資産や借金が発覚し、遺産分割協議がやり直しになる可能性があります。

相続財産には、現金や預貯金、不動産、株式、債券、貴金属、自動車などプラスの財産のほか、借金やローン、連帯保証債務、未払の税金などマイナスの財産も含まれます。

たとえば、親名義の住宅ローンが残っていた場合や、固定資産税を滞納していた場合も、相続人がその債務を引き継ぐことになります。

なお、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合には、相続放棄も合わせて検討しましょう。相続放棄とは、被相続人の財産や債務を一切引き継がずに放棄する手続きのことです。

自分で判断が難しい場合、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談してみてください。

4. 遺産分割協議を行う

相続人が複数いて遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をおこない、誰がどの財産を相続するかを話し合う必要があります。

遺産分割協議は、全員の合意がなければ成立しません。直接集まっておこなうのが理想ですが、遠方に住んでいる場合は電話やオンライン、書面などでも意思確認が可能です。協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印をします。

遺産分割協議書は、相続登記のほか、自動車や預貯金の名義変更、相続税の申告などでも提出が求められる非常に重要な書類です。

なお、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で「遺産分割調停」を申し立てられます。調停では裁判官と調停委員が中立の立場から間に入り、合意形成をサポートします。それでも解決に至らない場合は、裁判所が最終的に判断を下す「審判」に移行します。

5. 相続登記を行う

遺産分割協議で不動産を誰が相続するかが決まったら、次に不動産の相続登記を進めていきます。

相続登記をおこなうためには、戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書などの必要書類を集め、法務局に登記申請書を提出します。

登記申請書は法務局の窓口でも入手できますが、法務局の公式サイトからダウンロードして作成することも可能です。申請書には相続人の氏名、不動産の所在地、登記の目的などを正確に記入し、添付書類と一緒に提出します。

提出した書類に不備がなければ、通常1週間前後で登記が完了し、登記完了証と登記識別情報通知書が交付されます。

なお、相続登記の必要書類については、「不動産を相続してから売却するまでに必要な書類」で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。

6. 不動産仲介会社や買取業者に売却を依頼する

相続登記が完了したら、不動産仲介会社や買取業者などに依頼のうえ、不動産の売却を進める手続きに入ります。

仲介で売却を依頼する場合は、不動産会社に査定を依頼したうえで「媒介契約」を結びます。媒介契約とは、不動産会社に仲介を正式に依頼する手続きのことであり、仲介手数料などに関する内容も含まれます。契約締結後に売却活動をおこない、買主が決定したら売買契約を締結します。

一方、専門の買取業者に依頼する場合、業者が直接不動産を買い取るため、売却活動は必要ありません。査定額や条件に納得できれば、買取業者と売買契約を結び、そのまま売却手続きに進みます。

不動産の引き渡し日には、売却代金の決済と所有権移転登記が同時におこなわれます。すべての手続きを終え、必要書類や鍵などを買主に引き渡せば、取引は完了です。

不動産を相続してから売却するまでに必要な書類

不動産の相続や売却をスムーズに進めるためには、各手続きに必要な書類を事前に用意しておくことが大切です。ここでは、不動産を相続してから売却するまでに必要な書類を以下に分けて紹介します。

  • 相続登記に必要な書類の一覧
  • 不動産売却で必要な書類の一覧

相続登記に必要な書類の一覧

相続登記に必要な書類の一覧は以下のとおりです。

書類 概要 取得方法
遺言書(ある場合) 被相続人が遺産の分配方法の意思表示をする書類 被相続人が生前に作成
登記申請書 法務局に相続登記を申請するための書類 法務局の公式サイトからダウンロード
遺産分割協議書
(遺言がない場合)
遺産の分割内容を記載した書類 遺産分割協議で相続人全員が合意のうえ作成
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 相続人を確定するために必要な戸籍記録の一式 本籍地の市区町村役場
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 被相続人の最終住所を確認するための書類 住所地の市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本 相続人であることを証明するための書類 本籍地の市区町村役場
相続人全員の印鑑登録証明書 実印の正当性を証明するための書類 住所地の市区町村役場
固定資産評価証明書 不動産の評価額や所有者が記載された書類 毎年4月頃に市区町村から送付
相続関係説明図 被相続人と相続人の関係を図で示した書類 自作または司法書士に作成を依頼

類の不備や不足があると法務局から訂正を求められ、手続きが長引くことがあります。相続人が多い場合や書類収集に不安がある場合は、司法書士に依頼しましょう。

不動産売却で必要な書類の一覧

不動産売却に必要な書類の一覧は以下のとおりです。

書類 概要 取得方法
本人確認書類 売主本人であることを証明するための書類
(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
書類によって異なる
住民票 登記や契約書に記載する住所を証明するための書類 ・現住所地の市区町村役場
・マイナンバーカード対応のコンビニ端末
印鑑証明書 実印が正式に登録されていることを証明する書類 ・現住所地の市区町村役場
・マイナンバーカード対応のコンビニ端末
登記済権利証(登記識別情報) 不動産の所有権を証明するための書類 不動産の購入時または相続登記完了時に法務局から交付
固定資産税納税通知書 固定資産税の課税額や評価額を確認するための書類。 毎年5~6月に市区町村から郵送
建築確認済証・検査済証 建物が建築基準法に適合して建てられたことを証明する書類。 建物の建築時に発行
地積測量図・境界確認書 土地の面積や境界を正確に示すための書類 法務局で申請
物件状況等報告書 売主が把握している物件の状態を買主に伝えるための書類 フォーマットに沿って売主が作成

不動産売却の必要書類については、不動産会社に収集・作成をサポートしてもらえます。どのように書類を取得すれば良いのかわからないときは、売却を依頼する不動産会社に相談しましょう。

相続した不動産を早く売却するためのポイント

相続した不動産を早く売却するためのポイントは以下のとおりです。

  • 遺産分割協議を済ませておく
  • 相続登記の手続きを司法書士に依頼する
  • 相続が発覚したタイミングで不動産会社に相談しておく

遺産分割協議を済ませておく

相続した不動産を早く売却するためには、まず遺産分割協議を優先的に完了させましょう。

遺産分割協議は、相続人全員で財産の分け方を話し合い、合意した内容を書面化する手続きのことです。協議がまとまらなければ不動産の名義変更ができず、売却手続きにも進めません。

なお、相続財産が多い場合や話し合いが長引く場合は、不動産に関する部分だけを先に協議しておく方法もあります。不動産だけを対象にした遺産分割協議書でも法的に有効とされ、法務局でも相続登記の申請が可能です。

不動産の売却を急ぎたい場合は、すべての財産を一度に分けようとせず、まず不動産に関する協議を優先して済ませるようにしてみてください。

相続登記の手続きを司法書士に依頼する

相続した不動産を早く売却したい場合は、相続登記の手続きを司法書士に依頼することをおすすめします。

登記申請は自分でおこなうことも可能ですが、戸籍の収集や登記申請書、相続関係説明図の作成など、多くの作業が発生します。内容に不備があると補正や再提出が必要となり、手続きが長引いてしまうこともあります。

その点、司法書士は相続登記の流れを熟知しているため、必要書類の収集から申請までをスムーズに進めてもらえます。相続人調査や遺産分割協議書の作成など、登記以外の手続きもまとめてサポートしてもらえる点も大きなメリットです。

また、司法書士と連携して登記から買取まで一貫対応している買取業者に相談する方法もあります。

弊社クランピーリアルエステートでは、司法書士や税理士と連携し、相続登記を終えた後にスムーズに売却へ移行できる体制を整えています。手続きにかかる手間を減らし、早期売却を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

相続が発覚したタイミングで不動産会社に相談しておく

相続した不動産をスムーズに売却するためには、相続登記が完了する前の段階で不動産会社に相談しておきましょう。

相続登記が済んでいなくても、不動産会社に相談すれば査定の依頼や売却の流れ、必要書類に関するアドバイスを受けられます。早い段階で相談しておくことで、相場感を把握したり、どの会社に依頼するか検討できたりする点もメリットです。

また、複数の不動産会社に相談することで、売却戦略やサポート体制を比較しやすくなります。担当者の対応や取引実績、広告活動の内容などを確認し、信頼できる会社を選びましょう。

まとめ

不動産は、被相続人の名義のままでは法的に売却が認められないため、相続せずに売却することはできません。

相続せず売買契約を結んでしまうと、法律上契約は無効となり、損害賠償や違約金の支払いなどのトラブルに発展します。そのため、まずは相続登記を完了させたうえで、売却に進みましょう。

ただし、相続登記が完了していなくても、不動産会社への相談や査定依頼は可能です。事前に相談しておけば、売却の見通しを立てたり相場感を把握したりできるため、登記が完了した時点でスムーズに取引を進められます。

なお、相続登記から売却までの手続きを効率的に進めたい場合は、司法書士と連携して相続登記から買取まで一括でサポートしている業者に相談するのがおすすめです。

クランピーリアルエステートでは、司法書士や税理士などの専門家と連携し、相続登記の申請から不動産の買取までをワンストップで対応しています。相続手続きに不安を感じている方や、できるだけ早く売却を完了させたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

よくある質問

親の家を相続して売却すると税金はかかりますか?

相続した不動産を売却した際には、譲渡所得税(所得税+住民税)がかかる場合があります。譲渡所得税は、売却した翌年に確定申告をしたうえで納めなければなりません。ただし、特例による軽減措置を適用できる場合もあるため、詳細は税理士に相談しましょう。

相続登記と売却を同時に行うことはできますか?

基本的には相続登記をおこなったあとに売却を進める流れになります。ただし、司法書士と不動産会社が連携していれば、登記と売却を並行して進めることも可能です。

相続せずに家を解体しても大丈夫ですか?

相続登記をしていない場合、相続人全員の同意がなければ建物の解体はできません。無断で解体すると損害賠償請求を受けるリスクがあるため、相続前に解体をする場合、必ず相続人全員の合意を得るようにしましょう。

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