共有物分割請求のデメリットは?検討するべきケースや手続きの流れ

共有名義の不動産を所有していると「他の共有者と意見が合わず不動産を活用できない」「売却したいのに同意してもらえない」といった問題に直面することがあります。その際、共有状態を解消するための手段のひとつとして検討されるのが「共有物分割請求」です。
共有物分割請求は、民法に基づいて共有状態を解消するための手続きであり、原則として共有者であれば誰でも請求することができます。実務では、まず共有者同士の協議による解決を目指し、難しければ調停や訴訟などの手続きを利用して解決を図るケースが多くなります。
共有物分割請求は、共有名義を解消できる可能性がある一方で、デメリットが多いのも事実です。共有物分割請求のメリットとデメリットを以下にまとめました。
| デメリット | メリット |
|---|---|
| ・共有者との関係が悪化する原因になり得る ・共有状態が解消されるまでに手間と時間がかかる ・希望通りに共有状態を解消できるとは限らない ・場合によっては共有不動産が競売にかけられてしまう ・共有状態を解消できた後に登記手続きや税金の支払いが必要になる |
・共有状態を解消できる ・相手の同意がなくても手続きを進められる ・共有不動産を適正価格で評価できる |
実務の現場では「とにかく共有状態を解消したい」という思いだけで共有物分割請求を進めてしまい、思わぬデメリットに直面してしまうケースも多くみられます。
実際、共有持分の買取を専門とする弊社でも「共有状態を解消したくて共有物分割請求をしたが、上手くいかなかったため、買い取ってほしい」といったご相談をいただくことがあります。
後から持分の買取などによって共有状態を解消することは可能ですが、共有物分割請求が原因となり、共有者同士でトラブルが発生してしまうケースは少なくありません。そのため不動産の専門家としては、共有物分割請求を検討する際には、デメリットやリスクも踏まえたうえで決断することを推奨しております。
本記事では、共有物分割請求の概要やデメリット、実際の解決事例、手続きの流れ、かかる費用などを専門的な視点からわかりやすく解説します。共有物分割請求をすべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
共有物分割請求とは?
共有物分割請求とは、不動産を複数人で所有している状態、いわゆる「共有状態」を解消するための手続きです。
たとえば、共有している不動産を売却して代金を分けたり、特定の共有者が持分を買い取って単独所有にしたりするなど、共有関係を整理する方法を決めるために行われます。
共有名義の不動産は、売却や処分を行う際に共有者全員の同意が必要になるため、意見が対立すると不動産を活用できない状態に陥ることがあります。
こうした状況を解消するために、民法第256条では「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる」と定められており、共有者のうち1人でも他の共有者全員に対して分割を求めることが可能です。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
引用元: 民法|e-Gov 法令検索
他の共有者が分割に反対している場合でも、請求を行うこと自体は法律上認められています。ただし、契約によって一定期間は分割を行わないとする「不分割特約」が結ばれている場合には、その期間内は原則として共有物分割請求ができないため注意が必要です。
なお、共有物分割請求は、必ずしも裁判を意味するものではありません。実務上は、まず共有者同士で協議を行い、解決できない場合には調停、それでも合意に至らない場合には訴訟といった段階を踏んで解決を目指します。
あくまでも弊社の実務経験上ですが、共有物分割請求に至る前の協議で解決するケースも多く、対立が生じた場合でも調停などの手続きの中で合意に至るケースは少なくありません。訴訟まで発展するのは、話し合いができないほど共有者との関係性が悪化しているなど、ごくまれなケースのみです。
基本的には話し合いによる解決が望ましいものの、最終的には裁判所の判断によって分割方法を決めることもできるため、共有関係のトラブルを解消するための制度として位置付けられています。
共有物分割請求のデメリット
共有物分割請求は、共有状態を解消するための有効な手段ですが、手続きを進める前に知っておくべきデメリットもあります。
実務の現場でも「共有状態を早く解消したい」という思いで検討する方は多いものの、共有者との関係が悪化したり手続きに想定以上の時間や費用がかかったり、後から困難に直面するケースが多くみられます。
そのため、共有物分割請求を検討する際には、主に以下のようなデメリットを把握しておくことが大切です。
- 共有者との関係が悪化する原因になり得る
- 共有状態が解消されるまでに手間と時間がかかる
- 希望通りに共有状態を解消できるとは限らない
- 場合によっては共有不動産が競売にかけられてしまう
- 共有状態を解消できた後に登記手続きや税金の支払いが必要になる
共有者との関係が悪化する原因になり得る
共有物分割請求は、共有状態を解消するための制度ですが、共有者同士の関係が悪化する原因になることもあります。とくに、共有不動産の活用方針をめぐって意見が対立している場合には、感情的な対立が深まりやすい点に注意が必要です。
たとえば「不動産を売却して現金化したい」と考える共有者と、「自分の名義にまとめて家を建てたい」と考える共有者がいる場合、希望する分割方法が大きく異なるため、話し合いがまとまりにくくなります。
このような状況で共有物分割請求を行うと、相手から強い反発を受け、関係性が悪化してしまう原因になりかねません。
さらに、協議で解決できずに訴訟へ発展した場合には、双方が弁護士を依頼して争うことになるため、対立がより深刻化するおそれがあります。裁判にまで発展した結果、判決後も感情的なしこりが残り、関係の修復が難しくなるというケースも実際に見てきました。
そのため、共有物分割請求を検討する際には、まず共有者同士で十分に話し合いを行い、可能であれば協議による解決を目指すことを推奨します。
共有状態が解消されるまでに手間と時間がかかる
共有物分割請求は、解決までに手間と時間がかかるケースも少なくありません。
共有者同士の意見が対立している場合には、話し合いが長引き、共有状態が解消されるまでに長期間を要することもあります。
仮に共有物分割請求をしても、共有者同士の協議だけで分割方法が決まれば比較的スムーズに解決することは可能です。一方、話し合いで合意に至らない場合には、家庭裁判所での調停や訴訟といった手続きに進むことになります。
調停や訴訟などに発展すると、書類の準備や裁判所への出廷などの対応が必要となり、手続きの負担がより大きくなります。また、訴訟になった場合には、判決が出るまでに半年から1年以上かかることもあり、その間は共有状態が続くことになります。
共有物分割請求を検討する際には、解決までに一定の時間と手間がかかる可能性があることを理解しておくことが大切です。
希望通りに共有状態を解消できるとは限らない
共有物分割請求では、必ずしも自分の希望通りの形で共有状態を解消できるとは限りません。とくに、協議や調停で合意に至らず訴訟に発展した場合には、最終的な分割方法は裁判所の判断によって決定されます。
たとえば「自分が共有持分を買い取り、不動産を単独所有にしたい」と考えていても、裁判所が不動産の売却を命じ、売却代金を共有者で分ける方法が選ばれる可能性もあります。この場合、不動産を手元に残すことはできず、想定していた結果とは異なる形で共有状態が解消されることになります。
協議や調停の段階であれば、共有者同士の話し合いにより、ある程度は自分の希望を反映した解決を目指すことができます。
しかし、訴訟に進んだ場合は裁判所の判断に従うことになるため、希望通りの方法で共有状態を解消できる可能性は低くなるものと認識しておきましょう。
場合によっては共有不動産が競売にかけられてしまう
共有物分割請求が訴訟に発展した場合、裁判所の判断によっては共有不動産が競売にかけられる可能性があります。珍しいケースではありますが、「現物分割や代償分割など、他の方法で共有状態を解消することが難しい」と判断された場合などに選択される分割方法です。
競売となった場合、不動産は裁判所の手続きによって売却され、売却代金を共有者の持分割合に応じて分配することになります。通常の不動産売却と同じように見えますが、競売は買主が限定されることから、市場価格の60〜70%程度の価格になることが多いです。
結果的に、本来の市場価格で売却した場合と比べて、共有者が受け取れる金額が少なくなるおそれがあります。
共有物分割請求がこじれて訴訟に発展すると、不動産が競売にかけられるリスクがあるという点は押さえておきましょう。
共有状態を解消できた後に登記手続きや税金の支払いが必要になる
共有物分割請求によって共有状態を解消した後は、登記手続きや税金の支払いが必要になる場合があります。共有状態を解消しただけでは不動産の名義が自動的に変更されるわけではないため、分割方法に応じた手続きを行う必要があります。
たとえば、共有者の1人が他の共有者の持分を取得して単独所有にする場合には、持分移転登記を行わなければなりません。また、不動産を売却して売却代金を共有者で分ける場合には、利益の有無や金額に応じて譲渡所得税が課税される可能性があります。
もっとも、こうした登記手続きや税金の負担は、共有物分割請求に限ったものではありません。共有持分の売買や不動産の売却など、いずれの方法で共有状態を解消する場合でも発生する可能性があります。
共有物分割請求では最終的にどの分割方法が選ばれるのかにより必要な手続きが異なってくるため、事前に司法書士や税理士などの専門家に相談することが大切です。
共有物分割請求のメリット
共有物分割請求はデメリットも多い手段ですが、以下のようなメリットもあります。
- 共有状態を解消できる
- 相手の同意がなくても手続きを進められる
- 共有不動産を適正価格で評価できる
共有状態を解消できる
共有物分割請求の大きなメリットは、共有状態を解消できる点です。
共有名義の不動産は、売却や建て替えなどを行う際に共有者全員の同意が必要となるため、意見が対立すると不動産を活用できない状態に陥ります。
実際、弊社も「共有者と意見が合わない」「売却の同意が得られない」などのご相談を日々いただいております。
そこで共有物分割請求を行うことで、共有状態から解放される可能性があります。
たとえば、特定の共有者が他の共有者の持分を取得して単独所有となれば、不動産の利用方法や売却について自分の判断のみで決められるようになります。また、不動産を売却して代金を共有者で分配する形で共有状態を解消することも可能です。
相手の同意がなくても手続きを進められる
共有物分割請求は、まず共有者同士の協議によって解決を目指すのが基本となります。しかし、話し合いで合意できない場合には、調停や訴訟といった法的手続きに進むことができます。
訴訟に発展した場合には、最終的に裁判所が分割方法について判断を下すことになります。そのため、他の共有者が分割に反対している場合でも、手続きを止められてしまうことはありません。
また、裁判所の判決には法的な拘束力があるため、共有者全員がその内容に従う必要があります。共有者の一部が協議に応じない場合でも、共有状態を解消する手段を確保できる点は、共有物分割請求の大きなメリットといえるでしょう。
共有不動産を適正価格で評価できる
共有物分割請求が訴訟に発展した場合、共有不動産の価値が不動産鑑定士によって鑑定され、その評価額を参考にして分割方法や代償金の金額が判断されることがあります。
一方、共有者同士の話し合いで持分の買取や代償分割を行う場合、代償金の金額が明確な根拠のない「言い値」で決まってしまうこともあります。その結果、本来の価値よりも低い金額で持分を手放すことになったり、反対に高額な代償金を求められたりするおそれがあります。
訴訟であれば、不動産鑑定士による評価をもとに不動産の価値が判断されるため、当事者の主張だけに左右されることはありません。
裁判所の手続きの中で適正な評価額が示されることで、不当に安い価格で持分を買い取られたり、過大な代償金を請求されたりするリスクを抑えることができます。
共有物分割請求をするとどうなる?実例を紹介
共有物分割請求と聞くと、「裁判で争う手続き」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、実際には必ずしも訴訟まで進むとは限らず、協議や調停の段階で共有状態が解消されるケースもあります。
ここでは、弊社提携弁護士の関与のもと実際に解決に至った事例や、裁判所の判断が示されたケースをもとに、共有物分割請求の実例について詳しく紹介します。
共有物分割協議に弁護士が介入し、円満に買取が成立したケース
共有物分割請求では、裁判に進む前の協議によって共有状態が解消されるケースもあります。ここでは、弁護士が間に入り話し合いによって解決した事例を紹介します。
【ご相談に至った背景】
ご相談者様は、ご兄弟で実家をそれぞれ2分の1ずつの持分で相続していました。しかし、弟が一人で住み続けているにもかかわらず、兄に賃料を支払うこともなく、不動産の売却にも応じない状況が続いていました。
兄は当初、兄弟間で話し合いを試みましたが、弟は「自分の家だ」と感情的になり、冷静な話し合いができない状態でした。そこで兄が弁護士に相談し、代理人として交渉に入ってもらうことになります。
弁護士は弟に対して「共有状態が解消されない場合には共有物分割請求訴訟に発展する可能性があり、最終的には不動産が競売にかけられるリスクもある」ということを説明。そのうえで、弟が住み続ける意思があるのであれば、兄の持分を適正価格で買い取る「代償分割」という方法があることを提案しました。
【結果】
弟は住宅ローンを利用して資金を準備し、兄の持分を買い取ることで合意が成立しました。
裁判に進むことなく共有状態が解消され、兄は持分を現金化でき、弟は不動産を単独所有として住み続けることが可能となりました。また、兄弟間の関係も大きく悪化することなく、解決することができました。
共有物分割調停で売却に合意し、共有状態を解消したケース
共有者同士の話し合いで解決できない場合、裁判所の調停を利用して共有状態を解消するケースもあります。ここでは、共有物分割調停を通じて不動産を売却し、共有関係を整理した事例を紹介します。
【ご相談に至った背景】
今回のケースでは、ご相談者様が持分3分の1を所有する空き家が長年放置された状態になっていました。ご相談者様は不動産の売却を希望していましたが、他の共有者2名は「先祖代々の土地だから残したい」といった理由で明確な方針を示さず、話し合いが進まない状況に陥ります。
そこで、提携弁護士による交渉が行われましたが、相手方の回答が曖昧で協議による解決は難しいと判断されました。ご相談者様は次の段階として、裁判所に共有物分割調停を申し立てることになります。
調停では、裁判所の調停委員が第三者として間に入り、不動産を維持し続けた場合の管理費や固定資産税の負担、将来相続が発生して権利関係が複雑になるリスクなどについて、客観的な視点から説明が行われました。
【結果】
調停を経て、当初売却に反対していた共有者も「将来の世代に負担を残さないために、今のうちに整理するべき」という考えに理解を示すようになっていきます。
最終的には全員が売却に同意し、弊社による仲介で不動産を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する形で調停が成立しました。市場価格に近い金額で売却できたことで、諸費用を差し引いた売却代金を3名で公平に分けることができ、共有状態の問題を円満に解消できました。
共有物分割請求を検討するべきケース
共有名義の不動産は、共有者同士で協力して管理や活用を行うことが前提となります。しかし残念ながら、意見の対立や管理負担の偏りなどが生じると、不動産を適切に活用できなくなることがあるのも事実です。
このような状況が続く場合、共有状態を解消する方法のひとつとして、共有物分割請求を検討することがあります。一例として、以下のようなケースに当てはまる場合、共有関係を整理するために共有物分割請求を検討することが多いです。
| ケース | 具体的な事例 |
|---|---|
| 共有者との交渉が完全に決裂している | ・不動産の売却や活用方法について共有者同士の意見が対立している ・話し合いによる解決が見込めないほど関係性が悪化している |
| 固定資産税・管理負担の負担が偏っている | ・固定資産税や修繕費、管理費などを一部の共有者だけが負担している ・費用の負担を拒否する共有者がいる |
| 不動産を活用できない状態が続いている | ・売却や賃貸などの方針がまとまらない ・空き家のまま放置されている |
| 共有不動産を共有者の1人が占有している | ・特定の共有者だけが不動産を単独で使用している ・他の共有者に賃料などの対価が支払われていない |
| 共有者の一部と連絡が取れない | ・所在不明の共有者がいる ・海外在住などで連絡がつかない |
上記のような状況では、共有状態を続けること自体がリスクになる可能性があります。
いずれ共有者同士でトラブルに発展するおそれがあるほか、相続などが発生した際に権利関係が複雑になっていき、次の世代にまで迷惑をかけてしまうことになりかねません。
そのため、共有者同士の協議で共有状態が解消できない場合には、共有物分割請求を検討することになります。
共有物分割請求の流れ
共有物分割請求は、いきなり裁判を行うのではなく、協議・調停・訴訟と段階的に進んでいくのが基本となります。主な流れは以下のとおりです。
- 共有者との話し合いを行う(共有物分割協議)
- 調停委員を介して話し合いを行う(共有物分割調停)
- 共有物分割請求訴訟を提起する
- 裁判上の和解または判決で共有物の分割方法が確定する
1. 共有者との話し合いを行う(共有物分割協議)
共有物分割請求は、まず共有者同士の話し合いから始まります。共有者の1人が他の共有者に対して「共有状態を解消したい」という意思を示し、分割方法について協議を行うという流れです。
なお、共有物分割請求は、裁判外では口頭でも意思表示自体は可能ですが、「言った・言わない」の論争を避けるためにも、内容証明郵便などを利用して書面で通知することが望ましいでしょう。
共有者同士の関係が良好で、売却や持分の買取といった方向性について全員の利害が一致している場合には、協議の段階で共有状態を解消できることもあります。
一方、共有者同士で意見が対立している場合や、一方的な提案と受け取られてしまった場合には、話し合いがまとまらず交渉が決裂することもあります。トラブルが予想される場合には、事前に弁護士へ相談し、交渉の進め方や解決方法について方針をまとめておくことが重要です。
2. 調停委員を介して話し合いを行う(共有物分割調停)
共有者同士の協議で解決できない場合には、裁判所に「共有物分割調停」を申し立てて話し合いを行います。調停では、裁判所の調停委員が第三者として間に入り、当事者双方の意見を聞きながら解決を目指します。
調停では、当事者が直接話し合う必要はなく、調停委員が双方の主張を聞き取りながら手続きを進めていきます。ただし、あくまでも当事者同士の合意によって解決を目指す手続きであるため、双方が納得できる内容に至らなければ調停は成立しません。
共有物分割調停を申し立てる際には、共有物分割請求を求めた人が裁判所に申立書を提出します。その後、裁判所で調停期日が開かれ、調停委員の立会いのもと話し合いが行われます。協議がまとまった場合には調停が成立し、その内容を記載した調停調書が作成されるという流れです。
なお、共有物分割請求では「調停前置主義」が採用されていません。調停前置主義とは、訴訟を提起する前に必ず調停を行わなければならないという制度のことです。共有物分割請求の場合、調停前置主義は適用されないため、調停を経ず共有物分割請求訴訟を提起することも可能です。
3. 共有物分割請求訴訟を提起する
共有者同士の協議や調停でも解決に至らない場合には、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することになります。訴訟では、裁判所が当事者双方の主張や証拠をもとに審理を行い、最終的に共有物の分割方法を判断します。
訴訟が提起されると、まず被告となる共有者に対して訴状が送達され、裁判所から第1回口頭弁論期日の呼出状が送付されます。その後、口頭弁論や弁論準備手続などが行われ、双方の主張や証拠をもとに審理が進められていきます。
なお、口頭弁論は、裁判所が十分な審理が行われたと判断するまで、1ヶ月程度の間隔で開かれます。あくまでも弊社の実務経験上の体感ですが、共有物分割請求訴訟が終了するまでの期間は6ヶ月~1年程度が目安となっています。
4. 裁判上の和解または判決で共有物の分割方法が確定する
共有物分割請求訴訟では、審理の途中で当事者同士が合意に至り、裁判上の和解によって解決する場合もあります。裁判を進める中で条件を調整することで、双方が納得できる分割方法を決められるケースも少なくありません。
一方、和解に至らない場合には、最終的に裁判所が判決を下し、共有物の分割方法を決定します。判決では、不動産をどのような方法で分割するのかが具体的に示され、その内容に基づいて共有状態の解消が進められます。
裁判所の判決には法的な効力があるため、すべての共有者がその内容に従う必要があります。そのため、共有者の一部が分割に反対していたとしても、判決に基づいて共有物の分割を実行することが可能です。
なお、共有物の分割方法には主に以下の3つがあります。
| 分割方法 | 概要 |
|---|---|
| 現物分割 | 土地を物理的に分割してそれぞれ単独名義で登記する方法 |
| 代償分割 (価格賠償) |
共有者の1人が持分を買い取り、他の共有者に代償金を支払う方法 |
| 換価分割 | 不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法 |
現物分割

現物分割とは、土地そのものを物理的に分けて、それぞれの共有者が単独名義で登記する分割方法です。これにより、共有状態を解消して各共有者が単独で土地を活用できるようになります。
現物分割は、対象となる不動産が更地である場合や、分筆できるだけの十分な面積がある場合、土地の形状にも問題がない場合に選択される可能性があります。共有者それぞれが土地を個別に利用できるため、不動産を引き続き活用したい場合に有効な分割方法といえます。
ただし、土地を分筆すると一つ一つの区画が小さくなるため、分割前と比べて不動産の価値が下がってしまう可能性がある点には注意が必要です。
代償分割(価格賠償)

代償分割(価格賠償)とは、共有者のうち1人が不動産の所有権を取得し、代わりに他の共有者へ代償金を支払うことで共有状態を解消する方法です。
たとえば、建物が建っている不動産は物理的に分割することが難しく、現物分割が適さないケースがあります。また、不動産を引き続き利用したい共有者がいる場合にも、代償分割が選ばれることがあります。
代償分割は、特定の共有者に不動産を取得する意思と資金力があり、他の共有者が金銭による解決を受け入れる場合に有効な方法です。
協議や調停で代償分割を選択する場合には、代償金の金額について共有者全員の同意が必要です。このとき、代償金を支払う側は「安くしたい」と考えるのに対し、受け取る側は「多くもらいたい」と考えるものです。代償金の額をめぐって揉めることも多いため、弁護士などに仲介を依頼し、客観的な視点で判断することを推奨します。
なお、訴訟にの場合、裁判所が不動産の価値を踏まえて代償金の金額も含めて判断することになります。そのため、当事者間で金額を決める必要は基本的にありません。
換価分割

換価分割とは、不動産を売却して現金化し、売却代金を共有者の持分割合に応じて分配する方法です。共有不動産を物理的に分割することが難しい場合や、共有者全員が売却に同意している場合などに選択されることがあります。
換価分割は、不動産を引き続き所有することよりも、資産を現金として公平に分けることを重視する場合に向いています。売却代金を持分割合に応じて分配するため、共有状態を比較的わかりやすい形で解消できます。
ただし、換価分割を行う場合には、不動産を手放すことになる点には注意が必要です。また、訴訟の結果として競売による売却が命じられた場合には、市場での売却と比べて価格が低くなる可能性がある点も留意しておきましょう。
共有物分割請求にかかる費用
共有物分割請求は、基本的に共有者同士の協議から始まり、必要に応じて調停や訴訟へと進む可能性があるため、どの段階まで進むかによって費用の負担も変わってきます。具体的な費用目安は以下のとおりです。
| 段階 | 費用目安 |
|---|---|
| 共有物分割協議 | 数千円~30万円程度 |
| 共有物分割調停 | 30万円~80万円程度 |
| 共有物分割訴訟 | 50万円〜150万円程度 |
共有物分割協議までにかかる費用目安
共有物分割請求は、まず共有者同士の協議から始まります。協議の段階では弁護士に依頼する必要性はなく、自分で交渉を行う場合には、比較的少ない費用で進めることも可能です。
あくまでも実務経験をもとにした目安ですが、弁護士へ依頼しない場合は数千円程度、依頼する場合は10万円~30万円程度の費用が発生します。内訳の例は以下のとおりです。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 内容証明郵便 | 1,500円~2,000円程度 |
| 必要書類の取得費用 (登記簿謄本・固定資産税評価証明書など) |
数百円~数千円程度 |
| 弁護士相談料 | 1時間あたり5,000円~1万円程度 |
| 弁護士依頼 (交渉のみ) |
10万円〜30万円前後 |
弁護士への依頼をしない場合、内容証明郵便や書類の取得費用のみであるため、数千円程度の出費で済むケースがほとんどです。一方、弁護士に相談する場合、事務所や事案の内容にもよりますが、相談料込みで10万円〜30万円程度はかかるものと認識しておきましょう。
共有物分割調停までにかかる費用目安
共有者同士の協議で解決できない場合には、裁判所に共有物分割調停を申し立てることになります。調停では、裁判所に納める費用や弁護士費用などが発生するため、協議のみの場合と比べて費用負担が大きくなる傾向があります。
弊社の実務経験をもとにした目安では、共有物分割調停を申し立てると、弁護士費用含めて30万円~80万円程度の費用が発生します。内訳の例は以下のとおりです。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 申立手数料 (収入印紙) |
不動産1筆につき1,200円 |
| 郵便切手代 (予納郵券) |
5,000円~1万円 |
| 弁護士着手金 | 20万円〜40万円前後 |
| 弁護士報酬金 | 経済的利益の10〜15%程度 |
なお、弁護士費用は事案の内容や不動産の価値、交渉の難易度などによって変動する場合があります。そのため、実際に依頼する前に費用の見積もりを確認しておくことが大切です。
共有物分割訴訟までにかかる費用目安
共有物分割請求が訴訟に発展した場合、調停までの手続きと比べ、費用はさらに高額になる傾向があります。裁判所に納める費用に加えて、弁護士費用や不動産の評価に関する費用などが発生するケースがあるためです。
弊社の実務経験をもとにした目安としては、共有物分割訴訟にかかる費用は合計50万円〜150万円程度となっています。内訳の例は以下のとおりです。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 申立手数料 (収入印紙) |
数万円〜十数万円 (訴額によって異なる) |
| 弁護士着手金 | 30〜60万円程度 |
| 弁護士報酬金 | 経済的利益の10〜20%前後 |
| 不動産鑑定費用 | 20~30万円程度 |
| 測量費用 (現物分割) |
数十万円程度 |
| 登記費用 | 数万円~数十万円程度 |
訴訟では、不動産の価値を判断するために不動産鑑定士による鑑定が行われることがあり、不動産鑑定費用が追加で発生する場合があります。また、現物分割の判決が下された際には、測量費用として数十万円程度の費用が必要です。
登記費用については、登録免許税や司法書士費用、書類の取得費用などが内訳となります。こちらは判決内容や不動産の評価額によって異なるため、詳細は専門家に確認することを推奨します。
共有物分割請求以外に共有状態を整理する方法
共有物分割請求は法的に共有関係を整理できる有効な手段ですが、手続きに時間や費用がかかる可能性があります。
そのため、共有者同士の関係性や不動産の状況によっては、以下のような方法で共有名義を解消することも検討してみてください。
- 共有持分を共有者間で売買する
- 自分の共有持分を第三者に売却する
- 自分の共有持分を共有者に贈与する
- 自分の共有持分を放棄する
共有持分を共有者間で売買する
共有状態を解消する方法のひとつとして、共有者同士で持分を売買する方法があります。共有持分は原則として自由に売却できるため、共有者の1人が他の共有者の持分を買い取ることで、共有関係を解消することが可能です。
共有持分を共有者間で売買する方法は、共有者の誰かが実際に不動産に住んでいる場合や、不動産を引き続き所有して利用したいと考えている場合に有効な選択肢となります。持分を買い取った共有者が単独所有者となることで、不動産の利用や管理を自分の判断で行えるようになるためです。
専門家の立場から申し上げますと、共有者間での持分売買は、比較的スムーズに共有状態を解消できる方法のひとつです。
ただし、売買価格の設定には注意が必要です。とくに親族間での取引では、相場とかけ離れた価格で売買してしまうと税務上は「贈与をしたもの」とみなされ、贈与税が課されるおそれがあります。
そのため、持分を売買する際には、不動産の評価額や市場価格を参考にしながら、適正な価格で取引を行うことが大切です。場合によっては、不動産会社や専門家に相談し、価格の妥当性を確認しておくことも検討してみてください。
自分の共有持分を第三者に売却する
共有不動産の持分は、他の共有者の同意がなくても第三者に売却することが可能です。つまり、自分が保有している持分だけであれば、共有者以外の第三者に対しても自由に売却できます。
持分の売却方法には、不動産会社が買主を探す「仲介」と、不動産会社などが直接買い取る「買取」の主に2つの方法があります。ただし、共有持分だけの不動産は利用方法が制限されるため需要が低く、一般の不動産市場では買主が見つかりにくい傾向があります。
そのため、実際には共有持分を専門に取り扱う買取業者に売却するケースが多くなります。買取の場合は市場価格よりも低い金額になることが基本ですが、買主を探す時間がかからず、比較的短期間で現金化できる点が特徴です。
共有持分の売却は、他の共有者との交渉が難しい場合に、有効な選択肢のひとつとなります。ただし、買取業者によって提示される買取価格には差があるため、複数の業者に査定を依頼し、条件を比較したうえで売却先を検討することが大切です。
自分の共有持分を共有者に贈与する
共有持分は売買だけでなく、無償で譲渡することも可能です。他の共有者に持分を取得してもらう形で贈与契約を結び、持分移転登記を行えば、共有状態を解消できます。
自分の共有持分を共有者に贈与する方法は、不動産を引き続き家族の誰かが利用する予定があり、自分は持分を手放してもよいと考えている場合に適しています。売買のように決済が発生しないため、比較的シンプルな手続きで共有状態を解消できる点が特徴です。
ただし、持分を取得した側には、不動産取得税や贈与税が課される可能性がある点には注意が必要です。持分の評価額によっては税金が高額になる可能性もあるため、必要に応じて税理士などの専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
自分の共有持分を放棄する
共有持分は、売却や贈与だけでなく、放棄することも可能です。共有持分の放棄は、他の共有者に対して「持分を放棄する」という意思表示を行うことで成立します。
ただし、放棄された持分は原則として他の共有者に帰属するため、実際に法務局で登記名義を変更する際には、共有者の協力が必要になります。放棄自体は意思表示だけでも成立しますが、登記手続きを進めるためには、共有者の協力が欠かせない点に注意が必要です。
なお、専門家の立場から申し上げますと、共有持分の放棄は経済的なメリットがほとんどない方法となっています。持分を手放しても対価を受け取ることはできず、場合によっては手続き費用が発生することもあります。
そのため、共有状態を解消したい場合には、持分の売却や贈与など、他の方法も含めて検討することを推奨しております。状況によって最適な解決方法は異なるため、司法書士や不動産会社などの専門家に相談することが望ましいでしょう。
まとめ
共有物分割請求とは、共有名義となっている不動産の共有状態を解消するための手続きです。基本的には、共有者同士の協議から始まり、合意できない場合には調停や訴訟へと段階的に手続きを進めていく流れになります。
ただし、共有物分割請求は、共有者との関係が悪化する原因になったり、共有状態が解消されるまでに手間や時間がかかったりするなどのデメリットがあります。また、訴訟に発展した場合には、必ずしも希望通りの方法で共有状態を解消できるとは限らず、状況によっては共有不動産が競売にかけられてしまうおそれもあります。
このように、共有物分割請求は共有状態を解消できる有効な手段ではあるものの、手続きの負担やリスクも伴います。そのため、専門家としては、なるべく共有者同士の話し合いによって解決を目指すのが望ましいといえます。
話し合いだけで解決することが難しい場合には、弁護士などの専門家に相談のうえ、状況に応じて共有物分割請求の利用を検討してみてください。
よくある質問
共有物分割請求に時効はありますか?
共有物分割請求には、原則として時効はありません。民法第256条では「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定められており、共有状態が続いている限り、共有者は分割を求められるものと解釈されています。
ただし、共有者同士で「一定期間は分割しない」といった不分割特約を結んでいる場合、期間中は原則として共有物分割請求を行うことができません。なお、不分割特約の期間は最長でも5年とされており、期間が満了すれば再び共有物分割請求を行うことが可能になります。
共有物分割請求を拒否することはできますか?
共有物分割請求は、原則として拒否することはできません。
そのため、共有者の1人から請求があった場合には、まず分割方法について協議を行う必要があります。話し合いで合意できない場合には、調停や訴訟といった手続きに進み、最終的には裁判所が分割方法を判断することになります。

