共有名義の土地を分筆するには?必要な手続きや流れ・費用・できないときの対処法を解説

共有名義の土地を分筆するには?流れや費用、分筆できない時の対処法

分筆とは、登記簿上1つの土地を複数の土地に分けて登記し直す手続きです。

共有名義の土地でも、一定の条件を満たせば分筆できます。弊社にも、「土地の分筆案の作成についてサポートがほしい」「分筆した後の土地を買い取ってほしい」といった相談が寄せられることがあります。

2023年4月に施行された改正民法によって、土地の形状や使い道を大きく変えない通常の分筆であれば、登記上の持分割合の合計が過半数となる共有者が申請人になることで、分筆登記を申請できるようになりました。

ただし、2023年4月の法改正後も、分筆登記をしただけでは共有関係は解消されない点は以前と変わりません。各土地を単独名義にするには、誰がどの土地を取得するかについて共有者全員で合意し、共有物分割に基づく持分移転登記を行う必要があります。

また、分筆後の各土地をそれぞれ単独名義にできる場合でも、分筆を実際に進めるべきかは慎重に判断したほうがよいでしょう。土地の分け方によっては、狭小地や接道条件の悪い土地が生じて価値が下がったり、分筆後の利用状況によって固定資産税等の負担が増えたりするリスクがあるためです。

「せっかく分けたのに、予定していた建築や売却ができない」という事態を避けるには、分筆後の形状や利用条件、価値、費用まで確認しておくことが大切です。

本記事では、共有名義の土地を分筆して単独名義にするための条件や注意点、メリット・デメリット、手続きの流れ、期間・費用を解説します。

分筆すべきかどうかの判断ポイントや、分筆・単独名義化が難しい場合の対処法も紹介するので、ご自身の土地に適した共有状態の解消方法を考える際の参考にしてください。

共有名義の土地を分筆してそれぞれが単独所有するための条件

共有名義の土地を分筆し、分筆後の各土地を目的どおりに利用するには、まず分筆登記や利用可否に関する以下の3点を確認します。

  1. 持分の価格の合計が過半数となる共有者が分筆登記を申請する
  2. 分筆後の土地に利用目的や法令上必要な面積がある
  3. 隣地との境界(筆界)を確認できる

しかし、ここで注意したいのは、分筆内容を登記する手続きと、分筆後の各土地を共有者それぞれの単独名義にする手続きが別である点です。分筆後の各土地を単独名義にすることについては、実務上、共有者全員の合意を得る必要があります。

法改正によって共有名義の土地の分筆は進めやすくなりましたが、その後の利用や処分まで見据えた場合は、共有者全員との話し合いが重要になる点は変わりません。

以下では、分筆登記に関する3つの条件と、分筆後の各土地を単独名義にするための条件を解説します。

持分の価格の合計が過半数となる共有者が分筆登記を申請する

法改正前は、土地の分筆は、民法第251条に基づく変更行為と解されており、原則として共有者全員による申請が必要でした。

しかし、2023年4月に施行された改正民法と、それに伴う登記事務の取り扱いにより、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わない通常の分筆は「軽微変更」として扱われます。そのため、現在は持分の価格の合計が過半数となる共有者が申請人となれば、分筆登記を申請できます。

ここでいう過半数は共有者の人数ではなく、分筆登記の申請人となる共有者の持分割合を合計して判断します。

例えば、Aが40%、Bが20%、Cが40%の持分を有している場合、Aだけでは持分が過半数に達しません。一方、AとBが共同で申請すれば、持分合計が60%となるため、原則として分筆登記を申請できます。

なお、AとBの2人がそれぞれ50%ずつの持分を有している場合は、どちらか一方だけでは過半数にならないため、両者の共同申請が必要です。

この法改正により、一部の共有者が分筆に反対していたり、連絡が取れなかったりする場合でも、申請人となる共有者の持分合計が2分の1を超えていれば、原則として分筆登記を進められるようになりました。

ただし、過半数で進められるのは分筆登記までであり、反対者の共有持分まで移転できるわけではないので注意しましょう。

分筆後の土地に利用目的や法令上必要な面積がある

分筆後の土地を目的どおりに利用するため、分筆案を決める際は土地の状態にも気を配りましょう。

まず確認しておきたいのが、建物を建てるために必要な最低敷地面積の有無です。

地域によっては、都道府県や市区町村が定める都市計画・地区計画、条例により、建物の敷地面積の最低限度が定められている場合があります。

分筆後の各土地をそれぞれ独立した建築敷地として利用する場合、最低敷地面積を下回ると、その土地だけでは新たな建物を建てられない可能性があります。

また、分筆後の土地が建築基準法上の道路に必要な長さで接していない場合や、建築予定の建物に対して狭すぎる場合などは、法令上の制限により目的どおりに利用できないことがあります。

こうした条件を確認しないまま分筆すると、「予定していた建物を建てられない」「取得する土地の価値に差が生じる」といった共有者間のトラブルにつながりかねません。

最低敷地面積などの規制は地域によって異なるため、分筆案を決める前に自治体の窓口や公式ホームページで確認しましょう。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

なお、不動産登記規則上の地積の表示単位との関係から、登記実務では、分筆後の1筆が0.01㎡未満となる分筆登記は認められないと解されています。共有名義の土地をここまで細かく分けるケースは少ないものの、極端に小さい区画を設ける場合は、事前に土地家屋調査士や管轄法務局へ確認しましょう。

隣地との境界(筆界)を確認できる

分筆登記をするには、分筆する土地と隣地との筆界を明らかにする必要があります。筆界とは、登記上、1筆の土地と隣接する土地を区画する公的な境界です。

実務上は、土地家屋調査士が法務局や自治体に備え付けられた図面、過去の地積測量図、現地の境界標などを調査し、必要に応じて隣地所有者に立ち会いを依頼します。

双方の認識が一致した場合には、筆界確認書を取り交わすのが一般的です。

隣地所有者と連絡が取れない場合でも、精度の高い地図や過去の地積測量図などから筆界を確認できることがあります。そのため、隣地所有者と連絡が取れないことだけを理由に分筆を諦める必要はありません。

分筆後の各土地を単独名義にすることについて共有者全員の合意がある

分筆後の各土地を単独名義にしたい場合は、原則として共有者全員から合意を得る必要があります。

法改正によって、通常の分筆登記は持分の価格の合計が過半数となる共有者の申請によって進められるようになりましたが、分筆後の各土地を単独名義にできるかどうかは別の問題です。

分筆登記は、登記上の1筆を複数の筆に分ける手続きであり、土地の所有者や持分割合を変更する手続きではありません。分筆登記だけを終えた状態では、分筆後の各土地も従前と同じ共有者・持分割合の共有名義になります。

例えば、A・B・Cの3人が3分の1ずつ共有している450㎡の土地を、各土地の価値が同程度になることを前提として150㎡ずつに分筆した場合、手続きの範囲によって登記名義は次のように異なります。

【分筆登記だけを行った場合】
・土地A:A・B・Cが3分の1ずつ共有
・土地B:A・B・Cが3分の1ずつ共有
・土地C:A・B・Cが3分の1ずつ共有
【共有物分割と持分移転登記まで行った場合】
・土地A:Aの単独名義
・土地B:Bの単独名義
・土地C:Cの単独名義

要するに、分筆後の各土地を単独名義にして自分の意思だけで売却したり、共有関係による制約を受けずに活用したりするには、共有者全員で誰がどの土地を取得するかについて合意し、共有物分割による持分移転登記を行う必要があります。

ポイント

■相続した土地を遺産分割により分筆する場合

被相続人(亡くなった人)が単独で所有していた土地を分筆し、各土地を相続人ごとの単独名義にする場合は、原則として遺産分割協議によって誰がどの土地を取得するかを決める必要があります。

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用します。なお、遺言がある場合や、すでに法定相続分による相続登記が済んでいる場合などは、必要な登記や手続きが異なることがあるので確認しましょう。

共有名義の土地を分筆する際に知っておきたい注意点

共有名義の土地は、分筆登記ができる場合でも、分筆線の引き方や建物・抵当権の状況、法令上の制限によっては、各共有者が予定する用途に利用できなかったり、土地全体の価値が下がったりする可能性があります。

分筆後の土地をそれぞれの単独名義にする場合は、面積だけでなく、各土地の価値や利用しやすさまで確認したうえで分筆案を決めることが重要です。

以下では、共有名義の土地を分筆する際に知っておきたい3つの注意点を解説します。

  1. 一般的には共有持分割合に応じた価額になるよう分筆する
  2. 土地上に建物がある場合でも分筆できる
  3. 市街化調整区域などでは分筆後の利用が制限される場合がある
ポイント

■分筆と分割の違いについて

土地の「分割」と「分筆」は、いずれも土地を複数の区画に分ける場面で使われますが、登記簿上の扱いが異なります。

土地の分割(敷地分割)とは、登記簿上は1筆の土地のまま、建築計画上の敷地を複数に分けて扱うことです。一方、分筆とは、登記簿上も1筆の土地を複数に分け、それぞれに独立した登記記録と地番を設ける手続きです。

「分筆」は登記簿上も土地が分かれていること「分割」は登記簿上は1つの土地のままになっている状態

分割 分筆
登記簿上の扱い 1筆の土地のまま 複数の土地として登記される
建物を新築するとき 土地の分筆登記は不要。ただし、分割後の各敷地が接道義務などの建築基準を満たす必要がある 土地の分筆登記を行う。分筆後の各土地も接道義務などの建築基準を満たす必要がある
抵当権を設定するとき 分割した区画だけを、独立した土地として抵当権の目的にすることはできない 分筆後の土地ごとに抵当権を設定できる

登記上の1筆の土地と、建築基準法上の1つの敷地は同じものではありません。そのため、登記簿上は1筆のままでも、建築計画上の敷地を分割し、それぞれの敷地が接道義務や建ぺい率、容積率などの基準を満たしていれば、別の建物を新築できる場合があります。

ただし、分割と分筆のどちらを選んでも、新築した建物については、完成後に建物の表題登記を別途行う必要があります。

また、分割しただけでは区画ごとに独立した土地にならないため、特定の区画だけを抵当権の目的にはできません。分筆して独立した土地にすれば、分筆後の土地ごとに抵当権を設定できます。

もっとも、分筆前の土地にすでに抵当権が設定されている場合、その抵当権は原則として分筆後の各土地に引き継がれます。一部の土地を担保から外すには、金融機関など抵当権者の承諾を得て、その土地について抵当権を消滅させる登記を行う必要があります。

なお、共有者間で各土地を誰の所有にするか決める「共有物分割」は、ここでいう建築上の「敷地分割」とは別の手続きです。

一般的には共有持分割合に応じた価額になるよう分筆する

分筆後に共有物分割を行い、各土地を共有者それぞれの単独名義にする場合は、一般的に、各共有者が取得する土地の価額の比がおおむね共有持分割合と等しくなるように分筆案を作成します。

ここで基準となるのは、土地の面積ではなく価額です。

例えば、共有持分をそれぞれ50%、30%、20%所有する共有者が1,000㎡の土地を分ける場合、各部分の形状や接道状況などに差がなければ、それぞれ500㎡、300㎡、200㎡に分けることが考えられます。

この分け方は法律上の要件ではありません。しかし、共有者間の公平性や税務上の取り扱いなどを考慮し、各共有者が取得する土地の価額を基準として分筆案を検討するのが実務上よく見られるケースです。

一方、道路に面した土地と奥側の土地では、同じ面積でも価額が異なる可能性があります。そのため、分筆後の土地の価額を共有持分割合に対応させるために、面積を異なる割合で分けることもあります。

共有名義の土地の分筆においては、「土地をどのように分けるのか」が、共有者同士で非常にトラブルになりやすいところです。分筆によって土地を分けるデメリットについては、後述の共有名義の土地を分筆するデメリットで解説しています。

土地上に建物がある場合でも分筆できる

更地でなく、土地上に建物がある場合でも分筆できます。

一般的には、建物がある土地と建物がない土地に分かれるように分筆線を設定しますが、建物が分筆後の複数の土地にまたがるように分筆することも、登記上は可能です。

ただし、建物が複数の土地にまたがると、土地と建物を別々に売却したり、特定の土地だけを担保にしたりする際に権利関係が複雑になります。

また、建物の出入口や給排水管、ガス管、通路などが別の共有者が取得する土地にまたがる場合は、その土地を利用するための合意や権利設定が必要になることもあります。

共有者間で話がうまくまとまっていないと、「そっちの土地に建物があって不公平だ」「邪魔な構築物を押し付けられた」と言い争いになるかもしれません。土地上に建物がある場合の共有名義の土地の分筆を進める際には、必ず土地上の建物の管理などについてもあらかじめ決めておきましょう。

土地を分筆すると、分筆後の各土地に地番が付されます。一般には分筆前の地番に支号を付し、例えば「〇〇町一丁目5番」の土地を2つに分筆した場合、「〇〇町一丁目5番1」と「〇〇町一丁目5番2」のように定められます。

分筆後の残地に、従前と同じ地番が付される場合もあります。

建物が所在する土地の地番が変わった場合や、建物が分筆後の複数の土地にまたがることになった場合など、建物の登記事項に変更が生じたときは、建物の表題部変更登記も申請する必要があります。

市街化調整区域などでは分筆後の利用が制限される場合がある

市街化調整区域内にあることだけを理由に、分筆登記そのものが一律に禁止されるわけではありません。ただし、市街化調整区域では建築や開発が制限されているため、分筆が可能でも予定している用途に利用できない場合があります。

都市計画法では、都市計画区域について必要に応じて区域区分を定め、市街化区域と市街化調整区域に分けることとしています。

市街化調整区域とは市街化を抑制しており建物などの開発が制限されている地域のこと

区域 概要
市街化区域 すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図る区域
市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域であり、原則として開発や建築が制限されている

市街化調整区域では、建物を建てるための開発許可などが必要になる場合があります。また、市街化調整区域以外でも、自治体の開発許可基準や都市計画、建築基準法に基づく条例などにより、敷地面積の最低限度が定められていることがあります。

例えば横浜市では、開発許可の基準として、市街化区域のうち一部の住居系用途地域では原則100㎡以上、市街化調整区域では原則125㎡以上とする面積制限を設けています。ただし、市街化調整区域の沿道区域では100㎡以上とされるなど、区域や計画によって基準は異なります。

最低敷地面積を下回ったからといって、直ちに分筆登記ができなくなるとは限りません。しかし、分筆後の土地に建物を建てられず、売却や活用が難しくなる可能性があります。
分筆案を作成する前に、用途地域や接道状況、最低敷地面積、開発・建築の許可要件などを、自治体の都市計画・開発許可・建築担当窓口へ確認しましょう。

参照:横浜市「敷地の最低面積は何平方メートルですか」

共有名義の土地を分筆して単独名義にするメリット

共有名義の土地を分筆して各土地を単独名義にする場合、それぞれが土地を手放さずに共有状態を解消できるという分筆ならではの特徴があります。

共有名義の土地を分筆するメリットは、まさにこの点です。具体的には、以下の2点が挙げられます。

  • 土地の共有状態を解消することで自分の判断で利用・売却などがしやすくなる
  • 共有持分だけの売却より買主が広がりやすい

土地の共有状態を解消することで自分の判断で利用・売却などがしやすくなる

1つの資産を共有している時点で、単独所有と比べて権利関係は複雑です。共有者の1人が亡くなり、その持分を複数の相続人が相続した場合は、共有者が増え、権利関係がさらに複雑になる可能性があります。

権利関係が複雑であればあるほど、土地の利用や処分についても意見が分かれ、トラブルになりやすいでしょう。

また、土地全体を第三者へ売却したり、土地全体に抵当権を設定したりする場合、原則として共有者全員の同意が必要です。共有物の管理に関する事項も、原則として、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決定します(民法第252条)。

つまり、土地を処分したり活用したりするとしても、共有状態では他の共有者との調整が必要になります。そのため、分筆後の各土地を単独名義にし、自分の判断で利用・売却・担保設定をしやすくなる点は大きなメリットといえます。

ただし、単独名義にしても、既存の抵当権や賃貸借、建築に関する規制までなくなるわけではないので注意しましょう。

共有持分だけの売却より買主が広がりやすい

共有状態の土地を売却する方法として、「土地全体を売却する」もしくは「自分の共有持分だけを売却する」方法があります。土地全体を売却するには他の共有者全員の同意が必要であり、1人でも同意が得られなければ原則として売却できません。
一方、自分の共有持分については、他の共有者の同意を得ずに売却できます。

ただし、共有持分だけを購入しても土地全体を自分の判断で自由に活用・処分できず、他の共有者との調整も必要になるため、一般の買主は限られます。そのため、共有持分だけの売却価格は低くなりやすい傾向があります。

この点、分筆後の土地を利用しやすい形状で単独名義にできれば、共有持分だけを売却する場合よりも、一般の個人や事業者にも検討してもらいやすくなります。

ただし、分筆によって狭小地や不整形地、接道条件の悪い土地になると、かえって市場性が下がることもあるため、必ず高値で売れるとは限りません。後述する分筆するかどうかの判断ポイントの1つとして、「本当に土地を分けたら高く売れるか?」という目線は常に持っておきましょう。

共有名義の土地を分筆するデメリット

共有名義の土地を分筆する場合、共有者間の調整や分筆後の利用状況によって、次のようなデメリットが生じる可能性があります。

  • 分筆や単独名義化について共有者間の調整に手間がかかる
  • 持分割合に応じて分筆しても土地の価値は下がる可能性がある
  • 住宅用地の特例から外れると固定資産税等の負担が増える

分筆や単独名義化について共有者間の調整に手間がかかる

共有物の形状または効用を著しく変えない通常の分筆は、共有物の「軽微変更」にあたります。

そのため、持分の価格の合計が過半数となる共有者が申請人になれば、分筆登記を申請できます。共有者全員の同意までは必要ありません。

ただし、申請人となる共有者の持分合計が過半数に達しなければ、原則として分筆登記を進められません。また、分筆線や測量・登記費用の負担を巡って、共有者間の調整に時間がかかることがあります。

話し合いによって分筆後の各土地を単独名義にする場合は、誰がどの土地を取得するかについて共有者全員の合意が必要です。話し合いで決まらない場合は、共有物分割請求訴訟などが必要になる可能性があります。

持分割合に応じて分筆しても土地の価値は下がる可能性がある

分筆後の各土地を持分割合に応じた価額で公平に配分できても、分筆後の土地の合計価値が、分筆前の土地全体の価値を下回る可能性があります。

例えば、分筆によって次のような土地が生じる場合です。

  • 面積が小さく、利用方法が限られる土地
  • 三角形などの不整形地や、間口が狭い旗竿地
  • 道路に接していない、または接道部分が短い土地
  • 建築敷地として利用するために必要な最低敷地面積を満たさない土地
  • 建物や通路、給排水管などが分筆線をまたいでいる土地

このような土地は、建物の新築や建て替えが難しくなったり、用途や購入希望者が限られたりするため、分筆前より売却しにくくなることがあります。

また、分筆後に各共有者が取得する土地の価額に不公平が生じ、新たな争いの火種になるかもしれません。

住宅用地の特例から外れると固定資産税等の負担が増える

建物がある土地を分筆し、建物がない部分を独立した更地として利用する場合、固定資産税のほか、都市計画税が課税される地域ではその負担も増える可能性があります。

住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の特例

住宅用地として認められた面積のうち、住宅1戸につき200㎡までの小規模住宅用地には、税額計算の基礎となる課税標準額を、固定資産税では価格の6分の1、都市計画税では3分の1とする特例があります。200㎡を超える一般住宅用地の部分は、固定資産税が3分の1、都市計画税が3分の2です。

分筆後の土地が住宅の敷地として利用されなくなり、住宅用地の特例から外れると、翌年度以降の税負担が増える可能性があります。

なお、固定資産税・都市計画税は、原則として毎年1月1日時点の所有者と土地の利用状況を基準に課税されます。そのため、年の途中で分筆しただけで、その年度の税額が直ちに変わるわけではありません。

一方、年内に建築または売却したかどうかだけで、翌年度の特例の適用を判断することはできません。分筆前に翌年1月1日時点の利用予定を整理し、住宅用地として扱われるか自治体の資産税を担当する窓口へ確認しましょう。

分筆後の1筆に建物がないだけで、直ちに住宅用地の特例から外れるわけではありません。住宅のある土地と庭や自家用駐車場などとして一体的に利用されている場合は、建物がない土地にも特例が適用されることがあります。

共有名義の土地を分筆して単独名義にする流れ

共有名義の土地を分筆し、各土地をそれぞれの単独名義にする一般的な流れは、次の通りです。

  1. 土地の権利関係や分筆の目的を確認する
  2. 土地家屋調査士に相談して資料や現地の状態を調査する
  3. 分筆案を作成する
  4. 各共有者が取得する土地や費用負担について合意する
  5. 必要に応じて役所の担当者や隣地所有者と筆界を確認する
  6. 必要に応じて境界標を設置し地積測量図を作成する
  7. 土地分筆登記を申請する
  8. 持分移転登記を申請して各土地を単独名義にする

なお、土地の状況によって一部の工程が不要になったり、分筆案の作成や共有者間の合意、筆界確認の順番が前後したりすることがあります。共有者との話し合いや土地家屋調査士・司法書士への相談は、土地の状況に応じて進めることが大切です。

土地の権利関係や分筆の目的を確認する

共有名義の土地の分筆手続きを進める前に、土地の面積や境界、権利関係、土地の利用目的など、必要な情報を確認します。単に登記上の土地を分けるだけなのか、分筆後の各土地を共有者それぞれの単独名義にするのかによって、必要な合意や登記が異なるためです。

共有名義の土地の場合は、登記事項証明書などから、現在の所有者や共有持分、抵当権などの権利関係を確認します。相続登記が済んでいない場合や、土地が第三者へ賃貸されている場合などは、その状況も事前に整理しておきましょう。

分筆後の各土地を単独名義にする場合は、誰がどの部分を取得したいのかに加え、分筆前の土地全体と分筆後の各土地の概算価格も確認しておくことが大切です。

とはいえ、土地の価格の評価は専門的な知識が必要なうえに、共有名義が関わるとより難しくなります。

そのため、土地の価格を事前に確認する際には、不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。

土地家屋調査士に相談して資料や現地の状態を調査する

共有者の意見や土地の状況を確認したら、一般的には土地家屋調査士へ相談し、分筆に必要な調査や測量、登記申請の代理を依頼します。

土地家屋調査士法第3条では、不動産の表示に関する登記に必要な土地の調査・測量や、不動産の表示に関する登記申請手続きの代理などを土地家屋調査士の業務として定めています。

土地家屋調査士への依頼は法律上必須ではなく、分筆登記の申請人となる共有者本人が申請することもできます。

ただし、専門的な測量や地積測量図の作成が必要になるため、土地家屋調査士へ依頼するのが一般的です。

調査では、主に次のような資料を確認します。

  • 登記事項証明書:土地の所在や地番、地目、地積、所有者、抵当権などを確認する資料
  • 地図または地図に準ずる図面:土地のおおまかな位置や形状、隣接関係を確認する資料
  • 地積測量図:土地の形状や地積、筆界点の座標などを確認する資料
  • 筆界確認書など:過去に隣地所有者との間で確認した筆界を示す資料

一般に「公図」と呼ばれる地図や地図に準ずる図面、過去の地積測量図は、作成年代などによって精度が異なります。そのため、これらの資料と現地の境界標、塀、建物、道路などを照らし合わせて土地の状態を調査します。

手元に売買契約書や過去の測量図などがある場合は、相談時に用意しておくと調査を進めやすくなります。

なお、土地家屋調査士は、日本土地家屋調査士会連合会のホームページから地域ごとに検索できます。報酬は、土地の面積や境界点の数、隣地所有者の人数、官民境界の確認が必要かどうかなどによって異なるため、複数の見積もりを取り、料金に含まれる業務を比較するとよいでしょう。

分筆案を作成する

資料や現地の状況を確認したら、土地家屋調査士と相談しながら概略の分筆案を作成します。

分筆案の作成時には、土地の面積だけでなく、分筆後の形状や道路との接し方、利用目的、法令上の規制なども考慮する必要があります。

例えば、分筆によって不整形地や間口の狭い土地が生じると、建物の配置や車の出し入れなどに支障が生じ、土地の価値が下がる可能性があります。

分筆後の土地へ建物を建てる予定がある場合は、接道義務や最低敷地面積などの基準を満たしているか確認しましょう。

また、共有者ごとに公平に分けるには、面積だけでなく、それぞれが取得する土地の価額を比較することが大切です。必要に応じて、不動産会社や建築士、自治体などにも相談しながら分筆案を検討します。

この段階で作成するのは、あくまで概略案です。その後の測量や筆界確認の結果によって、分筆する位置や面積を調整することがあります。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

クランピーリアルエステートでは、相談者様から査定をご依頼いただいた際、まず立地や形状、接道状況、周辺の取引事例などから土地本来の価値を確認します。そのうえで、占有状況や共有者との関係、権利調整に必要な費用・期間などを査定に反映しています。

相談者様からのご依頼があれば、弊社と連携している共有名義の土地に詳しい土地家屋調査士などの専門家も紹介しています。

各共有者が取得する土地や費用負担について合意する

分筆後の各土地を共有者それぞれの単独名義にする場合は、作成した概略の分筆案を基に、誰がどの土地を取得するかについて共有者全員で話し合います。

共有名義の土地を分筆して単独名義にする場合は、以下の内容を共有者間で確認しておくとよいでしょう。

  • 各共有者が取得する土地
  • 分筆後の各土地の価額
  • 価額に差がある場合の清算金
  • 測量費用や登記費用の負担割合
  • 抵当権や賃貸借、通路などの取り扱い
  • 分筆登記や持分移転登記を行う時期

後から「言った、言わない」のトラブルになるのを防ぐため、合意した内容は書面にまとめておくことを推奨します。税金や登記方法にも影響するため、必要に応じて司法書士や税理士、弁護士などへ相談してください。

なお、最終的な面積や価額は測量結果によって変わることがあるため、筆界確認後に分筆案や合意内容を調整する場合もあります。

必要に応じて役所の担当者や隣地所有者と筆界を確認する

分筆登記を行うには、新たに土地を区切る分筆線を定めるとともに、分筆する土地と隣地との筆界を確認する必要があります。

既存の地図や地積測量図、境界標などだけでは筆界を確認しきれない場合は、必要に応じて隣地所有者や道路・水路を管理する役所に立ち会いを依頼します。

立ち会いでは、資料や現地の境界標などを基に、隣接する土地との筆界の位置を確認してもらいましょう。

例えば、隣地が個人や法人の所有地で、双方の認識が一致した場合は、隣地所有者との間で、筆界を確認したことを証する「筆界確認書」などを取り交わすことがあります。

また、土地が公道や水路などに接している場合は、必要に応じて、それらを管理する役所へ境界の確認を申し込みます。境界を確認した後は、役所との間で境界確認書や境界確定協議書を作成するか、確認した内容を記載した書面を役所から受け取ります。

書面の名称や手続きは自治体によって異なるので、一度窓口などで直接確認してください。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

なお、隣地所有者と連絡が取れない場合や立ち会いを拒否された場合も、直ちに分筆できなくなるとは限りません。まずは土地家屋調査士に既存資料や現地の状況を調査してもらい、それでも筆界を確認できない場合は、筆界特定制度などの利用を検討します。

共有名義の土地でも、共有者全員が現地へ立ち会う必要があるとは限らず、他の共有者から委任を受けた代表者が対応する場合があります。

必要に応じて境界標を設置し地積測量図を作成する

筆界と分筆線を確認したら、必要に応じて新たな筆界点に境界標を設置したり、既存の境界標を復元したりします。

境界標とは、土地の筆界点の位置を現地で示すための標識です。コンクリート杭や石杭、プラスチック杭、金属標、金属鋲などがあり、設置場所や現地の状況に応じたものを使用します。

既存の境界標を利用できる場合もあるため、すべての分筆で新しい境界標を設置するわけではありません。

測量と筆界の確認が完了したら、土地家屋調査士が分筆後の各土地の形状や地積、筆界点の座標などを記載した地積測量図を作成します。境界標がある場合は、その種類も記載します。

土地分筆登記を申請する

地積測量図などの準備が整ったら、いよいよ土地を管轄する法務局へ分筆登記を申請します。

分筆登記を申請する際に準備する主な情報・資料は、次の通りです。

  • 登記申請書
  • 地積測量図
  • 委任状(土地家屋調査士が代理申請する場合)
  • 筆界確認書などの筆界を確認する資料(必要に応じて)

実際に必要な資料は、土地の状況や筆界の確認方法などによって異なります。

共有者全員で分筆登記を申請しない場合は、登記上の持分割合の合計が2分の1を超える共有者が申請人となります。土地所有者本人が申請することもできますが、測量を依頼した土地家屋調査士にそのまま代理申請してもらうのが一般的です。

持分移転登記を申請して各土地を単独名義にする

分筆後の各土地を共有者それぞれの単独名義にするために、共有者間で合意した内容に基づいて持分移転登記を行います。

持分移転などの権利登記を専門家へ依頼する場合は、土地家屋調査士ではなく、司法書士が担当します。土地の調査・測量や分筆登記を担当する土地家屋調査士とは専門分野が異なるため、必要に応じて連携して手続きを進めてもらいましょう。

持分移転登記が完了すると、分筆後の各土地はそれぞれの共有者の単独名義になります。

持分移転登記については、以下の記事でも詳しく解説しています。

共有名義の土地の分筆には2週間から数カ月程度かかる

土地の分筆手続きにかかる期間は、2週間から数カ月程度が目安です。ただし、法令で決められた期間ではなく、既存の測量図や境界標を利用できるか、隣地所有者や役所との筆界確認が必要かなどによって大きく変わります。

既存の地積測量図や筆界確認書などから筆界を確認でき、改めて隣地所有者などとの調整を行う必要がない場合は、必要な図面や書類がそろってから2週間程度で分筆登記が完了することがあります。

一方、既存資料だけでは筆界を確認できず、境界確定測量が必要になる場合は、3カ月から4カ月程度かかることも少なくありません。

隣地所有者と境界について意見が合わない場合や、所有者の所在が分からない場合などは、半年以上かかることもあります。

さらに、分筆後の各土地を共有者それぞれの単独名義にする場合は、分筆登記に加えて、共有物分割による持分移転登記にかかる期間も見込む必要があります。

共有名義の土地を分筆して単独名義にするまでに必要な費用

共有名義の土地を分筆し、分筆後の各土地をそれぞれの単独名義にする場合は、主に以下の費用がかかります。

  • 土地家屋調査士への報酬|25万~100万円程度
  • 分筆登記の登録免許税|分筆後の土地1筆につき1,000円
  • 単独名義化を依頼する司法書士への報酬|5万~10万円程度
  • 共有物分割による持分移転登記の登録免許税|移転する持分の課税価格などによって異なる

土地家屋調査士への報酬|25万~100万円程度

土地の調査・測量から分筆登記の申請までを土地家屋調査士へ依頼する場合、報酬は25万~100万円程度が目安です。

報酬には、主に次の業務にかかる費用が含まれます。

  • 登記簿や公図などの資料調査
  • 現地の調査・測量
  • 必要に応じた隣地所有者や自治体との境界確認
  • 地積測量図などの作成
  • 分筆登記の申請代理

既存の測量図や境界標を利用でき、筆界確認の負担が小さい場合は、上記の目安より低い10万~20万円程度で済むこともあります。

一方、「境界確定測量が必要になる」「土地が広くて労力がかかる」「境界点や隣接地が多い」といった場合は、費用がさらにかかって100万円を超える可能性があります。

実際の報酬は土地の状況や依頼内容によって異なるため、依頼前に見積もりを取り、消費税や境界標などの実費が含まれているかも確認しましょう。

分筆登記の登録免許税|分筆後の土地1筆につき1,000円

分筆登記の登録免許税は、分筆後の土地1筆につき1,000円です。

例えば、1筆の土地を2筆または3筆に分筆する場合の登録免許税は、次の通りです。

  • 2筆に分筆する場合:2,000円
  • 3筆に分筆する場合:3,000円

登録免許税は、分筆登記を申請する際に、登録免許税額分の収入印紙などで納付します。

単独名義化を依頼する司法書士への報酬|5万~10万円程度

分筆後の各土地を共有者それぞれの単独名義にするには、共有物分割に基づく持分移転登記を行います。

持分移転登記を司法書士へ依頼する場合、報酬は5万~10万円程度が目安です。ただし、土地の筆数や共有者の人数、申請件数などによっては、これを上回ることもあります。

なお、司法書士報酬とは別に、印鑑証明書・住民票などの取得費用として数千円程度が別途かかる可能性があります。

共有物分割による持分移転登記の登録免許税|移転する持分の課税価格などによって異なる

分筆後の土地を共有者それぞれの単独名義にするため、共有物分割による持分移転登記を行う場合も登録免許税がかかります。

それぞれが分筆前に持っていた持分に見合う価値の土地を取得するなど、一定の条件を満たす場合の税率は0.4%(4/1,000)です。

登録免許税=移転を受ける持分の課税価格×0.4%

参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」

例えば、移転を受ける持分の課税価格が1,000万円の場合、登録免許税は4万円です。

課税価格は、原則として固定資産課税台帳に登録された土地の価格を基に、移転を受ける持分割合に応じて算定します。

なお、共有物分割によって、分筆前に持っていた持分の価値を超える土地を取得した場合は、その超えた部分に0.4%とは異なる税率が適用されることがあります。具体的な金額は、登記を依頼する司法書士に確認しましょう。

自分が所有している共有名義の土地は分筆すべき?分筆の判断ポイント

冒頭で紹介した条件は、共有名義の土地を分筆し、各土地を単独名義にするために確認すべき条件です。

これらの条件を満たしていても、分筆によって土地の価値が下がったり、手続きに費用や時間がかかったりする場合は、分筆が適しているとは限りません。

そのため、分筆と共有物分割による単独名義化が適した方法なのか判断する際は、次のポイントも考慮しましょう。

  • 土地の形状や面積、法令上の制限はどうか
  • 分筆するコストと手間に見合うか
  • 他の共有者との関係や利用目的はどうか
  • 相続によって権利関係が複雑になりそうか

土地の形状や面積、法令上の制限はどうか

前述した通り、分筆後の土地は、形状や面積、法令上の制限によって価値が下がる可能性があります。そのため、分筆後の各土地を予定する用途に利用できるかは必ず確認しましょう。

分筆後の各土地をそれぞれ建築物の敷地として利用する予定がある場合は、建築基準法上の接道義務や最低敷地面積などの制限を満たすかも重要です。

分筆するコストと手間に見合うか

前述の通り、分筆には測量や登記手続きが必要なため、状況によっては大きなコストや手間が発生します。とくに、隣地との筆界がはっきりしていない場合は、土地家屋調査士への測量依頼の費用に加え、隣地所有者などに立ち会いを依頼し、日程などを調整する手間がかかることがあります。

境界確定測量にかかる費用は40万円〜50万円程度、期間は3カ月から4カ月程度が目安です。実際の費用や期間は、土地の面積や隣接地の数、官民境界の確認が必要かどうか、境界を巡る争いの有無などによって大きく異なります。

このほか、分筆登記や各土地を単独名義にするための持分移転登記にも費用と手間がかかります。分筆と共有物分割によって各土地を単独名義にするメリットが、これらのコストを上回るか検討しましょう。

他の共有者との関係や利用目的はどうか

共有者同士の意見が合わなかったり、土地の利用方法や管理を巡って争いがあったりする場合は、分筆後の各土地をそれぞれの単独所有にすることで、今後のトラブルを防げる可能性があります。

とくに、一方は住宅を建てたいが、もう一方は駐車場として利用したいなど、共有者ごとに希望する用途が異なる場合は、それぞれの利用目的に合った形で土地を分筆し、共有物分割によって各土地を単独所有にする方法が適していることがあります。

また、共有名義の土地全体を売却・譲渡するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一方、各共有者は、自己の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに売却・譲渡できます。

各共有者がそれぞれの土地を自分の判断で利用・売却したい場合は、分筆と共有物分割によって各土地を単独名義にする方法が選択肢の1つになるでしょう。

一方、共有者間の関係が良好で、とくに問題なく土地を管理・利用できている場合は分筆しない方向で検討できます。分筆や共有物分割には費用も手間もかかるため、現状のままでも不都合がなければ、無理に行う必要はありません。

相続によって権利関係が複雑になりそうか

共有者の1人が亡くなり、その持分を複数の相続人が取得すると、共有者が増えて管理や処分の調整が難しくなることがあります。こうした共有関係の複雑化を抑えるには、生前に土地を分筆したうえで共有物分割を行い、分筆後の各土地を単独所有にしておくことが有効な場合があります。

分筆すべきかどうかは、共有者間の関係、利用目的の違い、将来の売却や相続の見通し、費用対効果などを総合的に検討する必要があります。

専門家へ相談する場合は、測量・分筆登記は土地家屋調査士、持分移転登記や相続登記は司法書士、共有者間の紛争は弁護士、税務は税理士というように、相談内容に応じて依頼先を選びましょう。

共有名義の土地の分筆や単独名義化が難しい場合の対処法

ここまで、共有名義の土地を分筆するための条件や手続きについて解説しました。しかし、共有者間で合意できず、分筆後の各土地を単独名義にすることが難しい場合や、土地の形状などから分筆が適さない場合もあります。

その場合、どのような対処法が考えられるのでしょうか。

  • 共有者全員の同意を得て土地全体を売却する
  • 自分の共有持分を他の共有者に売却する
  • 他の共有者の持分をすべて買い取る
  • 話し合いがまとまらないなら共有物分割請求で共有関係の解消を求める
  • 自分が所有する共有持分を買取業者に売却する

共有者全員の同意を得て土地全体を売却する

土地の分筆や単独名義化について合意できなくても、交渉次第では、土地全体の売却について共有者全員の同意を得られる可能性があります。

分筆にかかる費用も不要ですし、分筆による資産価値の低下も避けられるでしょう。

自分の共有持分を他の共有者に売却する

他の共有者であれば、共有持分に関して直接の利害関係人であるため、知らない第三者と共有するより自分が買い取ったほうがよいと考える場合もあります。

すべての持分を取得して単独名義になれば、共有関係による制約を受けずに土地を活用・処分しやすくなるため、買主側にも大きなメリットがあります。

とくに、自分以外の共有者が1人しかいない場合は、その共有者へ自分の持分全部を売却することで単独名義になるため、話はスムーズに進みやすいといえます。

ただし、他の共有者に売却する場合は、次の点に注意しましょう。

  • 個人間売買の契約条件や手続きを専門家に確認する
  • 売却先を巡って他の共有者と揉める
  • 購入者の資金計画

共有名義不動産は親族関係で共有していることも多く、他の共有者への売却を不動産会社を通じて行わずに個人間売買で進めるケースもあります。ただし、不動産会社を介さずに売買することによるリスクは少なくありません。

客観的な査定を取らずに売買価格を決めると、後から一方が不公平だと感じ、トラブルになる可能性があります。売買契約から引渡しまでの手続きについても、売主・買主双方の義務を契約書にしっかり記載しないとトラブルになるリスクも高いです。

また、他の共有者に持分を売却すると、共有者間の持分割合も変わります。共有物の管理に関する事項は、原則として持分の価格の過半数で決めるため、他の共有者から「なぜ自分に売却しなかったのか」と不満を持たれる可能性があります。

そのため、事前に他の共有者全員に、自分の共有持分の売却を検討している旨を伝えるなどの配慮が必要な場合もあるでしょう。さらに、共有持分を購入する場合、一般的な住宅ローンを利用するのは難しく、利用できる金融機関も限られる傾向があります。現金で購入できる場合でも、購入する共有者の資金計画を確認しておく必要があります。

他の共有者の持分をすべて買い取る

もし資金に余裕があれば、他のすべての共有者と交渉し、持分を買い取ることで単独所有にするのも方法の1つです。単独名義であれば、他の共有者の同意を得ずに土地を売却できるほか、法令上の制限の範囲内で駐車場や事業用地などとして活用できます。

他の共有者が共有持分の処分に困っている可能性もあるので、他の共有者に打診してみるのもよいでしょう。

話し合いがまとまらないなら共有物分割請求で共有関係の解消を求める

共有物分割請求とは他の共有者に対して共有物を分割して所有するように請求すること

分筆や単独名義化について話し合いがまとまらない場合は、共有物分割請求によって共有関係の解消を求める方法があります。共有物分割請求とは、民法第256条に基づく共有物の分割を他の共有者に請求できる権利であり、共有者であれば原則としていつでも請求できます。

ただし、遺産分割前の相続財産については、原則として家庭裁判所の遺産分割手続きを利用します。

基本的には共有者同士の話し合いから始めますが、当事者間で合意できない場合は、共有物分割請求訴訟を提起する方法があります。

共有物分割請求訴訟とは、裁判所に共有状態の解消方法を決めてもらう裁判手続きです。共有物分割請求には、訴訟を提起する前に必ず調停を行わなければならない「調停前置主義」が採用されていないため、調停を経ずに訴訟を提起できます。

共有物分割請求訴訟を起こす際の注意点

共有物分割請求訴訟を提起しても、必ずしも自分の希望どおりに分割できるとは限りません。裁判所は、土地の形状や利用状況、共有者の希望などを踏まえて分割方法を判断します。

共有物分割請求訴訟による不動産の3つの分割方法

現物分割 共有物を分筆などで物理的に分割する
賠償分割(代償分割) 一部の共有者が土地を取得し、他の共有者へ持分に応じた金銭を支払う
競売による換価分割 土地を競売で売却し、売却代金を持分割合に応じて分ける

裁判所は、まず現物分割、または一部の共有者に他の共有者の持分を取得させて金銭を支払わせる方法を検討します。これらが難しい場合や、分割によって共有物の価格が著しく低下するおそれがある場合には、競売を命じることがあります。

土地が競売にかけられると、一般的な売却よりも低い価格で落札され、各共有者が受け取れる金額が少なくなる可能性があります。

また、下記のようなデメリットも多いため、なるべく避けたい方法です。

  • 訴訟手続きには時間と手間がかかる
  • 弁護士費用などの金銭的負担がある
  • 他の共有者との関係が悪化する可能性がある

自分が所有する共有持分を買取業者に売却する

分筆や単独名義化について合意できず、他の共有者への持分売却も成立しない場合は、共有持分専門の買取業者へ自分の持分だけを売却する方法があります。

自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに売買を進めることが可能です。買取業者と価格などの条件で合意できれば、早期に売却できる可能性があります。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

実際に弊社では、売主様が姉と共有していた土地について、他の共有者による持分の取得が難しく、土地の分筆も困難だったため、売主様が所有する2分の1の共有持分を買い取った事例があります。

このように、分筆や共有者間での持分売買が難しい場合でも、自分の共有持分だけを売却できる可能性があります。


まとめ

共有名義の土地も分筆できます。ただし、分筆登記をしただけでは共有関係は解消されず、分筆後の各土地も同じ共有名義のままです。

土地の分筆登記は土地家屋調査士へ依頼するのが一般的です。資料が整っていれば数週間で終わる場合もありますが、筆界確認などに時間がかかると数カ月程度、複雑なケースでは半年以上を要することもあります。費用も土地の状況によって異なり、数十万円程度で済む場合もあれば、100万円を超える場合もあります。

分筆後に共有物分割による持分移転登記を行い、各土地をそれぞれの単独名義にすれば、共有関係を解消できます。自分の判断で土地を活用・売却しやすくなり、共有持分だけを売却する場合よりも、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。

一方、分筆方法によっては土地の価値が下がったり、分筆後の利用状況によって固定資産税の負担が増えたりする可能性があります。分筆前後の土地の価値や、必要な費用を比較して判断することが大切です。

形状や効用を大きく変えない分筆登記は、原則として、登記上の持分割合の合計が2分の1を超える共有者が申請できます。ただし、話し合いによって分筆後の各土地をそれぞれの単独名義にするには、原則として共有者全員の合意が必要です。

全員の合意が得られない場合や、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらうことが難しい場合は、共有持分専門の買取業者へ自分の持分のみを売却する方法もあります。自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに売却でき、買取業者と価格などの条件で合意できれば、早期に売却できる可能性があります。

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