共有不動産を独占されたら不当利得返還請求を!請求の流れや注意点、共有関係の解消方法

共有不動産の賃料収入を独り占めされた場合の対処法について徹底解説!

「他の共有者が共有不動産に居住している」「他の共有者が共有不動産の家賃収入を独り占めしている」など、自分以外の共有者が共有不動産を独占しており、納得がいかない方もいるでしょう。

他の共有者に共有不動産を独占された場合は「不当利得返還請求」が可能です。居住している共有者に対しては「周辺の家賃相場×持分割合」を、家賃収入を得ている共有者に対しては「家賃収入×持分割合」を請求できます。仮に他の共有者が勝手に賃貸借契約を結び、契約書に自分の名前がないとしても、不動産の共有者であれば賃料を請求可能です。

不当利得返還請求を起こす場合は、下記のような流れで進めます。

  1. 共有不動産を独占している共有者と話し合う
  2. 信頼できる弁護士に相談する
  3. 内容証明郵便で賃料請求の旨を知らせる
  4. 不当利得返還請求訴訟を提起する
  5. 判決をもとに賃料の支払いを受ける
  6. 今後の賃料を回収するために賃貸借契約書を作成する
  7. 賃料が年間20万円以上になる場合は確定申告を行う

ただし、不当利得返還請求訴訟を提起する場合、次のような注意点もあります。

  • 共有者との関係悪化は避けられない
  • 家賃収入の独り占めが長期間続いていると黙認しているとみなされる
  • 賃料を回収するまでに膨大な時間がかかる
  • 弁護士費用の割に受け取れる家賃収入は大きくない
  • 原則、明け渡しの請求はできない
  • 請求の権利を知ってから5年経過すると時効で請求できなくなる
  • 受け取る金額によって所得税や住民税が上がる可能性がある

「不当利得返還請求訴訟を行うのは難しそう」「別の方法で対処したい」といった場合は、不動産の共有関係を解消することも検討してみてください。

例えば、自己持分の売却は他の共有者の同意が必要ないため、売却によって共有状態が解消されます。他の共有者や共有持分買取専門業者に売却すれば、共有不動産による悩みから解放されるかもしれません。

本記事では、共有不動産を独占された場合に行う「不当利得返還請求」で請求できる内容、請求を起こす場合の流れや注意点を解説します。併せて、共有不動産の共有関係を解消する方法にも触れていきます。

目次

共有不動産を独占されたら不当利得返還請求が可能

他の共有者が共有不動産に居住している場合や、共有者が第三者に共有不動産を貸して家賃収入を得ている場合は、共有不動産を独占されている状態であるため、不公平だと感じることもあるでしょう。

共有不動産の各共有者には「使用収益権」と呼ばれる、物件を使用し利益を得られる権利があります。そのため上記のようなケースでは、物件を独占している共有者に対し、自己持分に応じた賃料を請求できます。

この請求を「不当利得返還請求」と呼び、過去に遡って請求することも可能です。2020年4月1日以降に発生した不当利益返還請求権には、「不当利得返還請求をできることを知ってから5年(主観的起算点)」「不当利得返還請求をできる時から10年(客観的起算点)」の消滅時効があるため、少なくとも5年前、最長で10年前までの家賃請求ができます。

なお、共有者が話し合いに応じてくれない場合は、不当利得返還請求訴訟を起こし、裁判の判決にて賃料を得る方法もあります。

不当利得返還請求で請求できる内容は下記のとおりです。

共有者が居住している場合 共有者が家賃収入を独占している場合
周辺の家賃相場×持分割合 家賃収入×持分割合

それぞれのケースについて詳しく解説していきます。

共有者が居住している場合は「周辺の家賃相場×持分割合」を請求できる

他の共有者が共有不動産に居住し、不動産を独占している場合は「周辺の家賃相場×持分割合」で算出した賃料の請求が可能です。

具体的には、下記のようなイメージです。

・不動産をAが「3分の2」、Bが「3分の1」の持分で共有している
・周辺の家賃相場は12万円
・Aが共有不動産に2年間住んでおり、物件を独占している

このような状況であれば、BはAに対して持分割合に応じた賃料の請求が可能です。

12万円(周辺の家賃相場)×1/3(持分割合)×24ヵ月(独占期間)=96万円

周辺の家賃相場の確認については、不動産サイトを利用すると良いでしょう。立地や築年数、床面積、間取りなどで絞り込み、共有不動産と条件の近い物件の賃料を確認すれば、家賃相場を把握できるでしょう。

共有者が家賃収入を独占している場合は「家賃収入×持分割合」を請求できる

他の共有者が共有不動産を第三者に貸し、家賃収入を得ている場合は「家賃収入×持分割合」で算出した金額を請求できます。

具体的には、下記のようなイメージです。

・不動産をAが「3分の2」、Bが「3分の1」の持分で共有している
・Aが第三者Cに不動産を貸し、家賃収入として毎月6万円を得ている
・Aは家賃収入を3年間得ている

このような状況であれば、BはAに対して、Aが得た家賃収入にBの持分割合を乗じた額を請求可能です。

6万円(周辺の家賃相場)×1/3(持分割合)×36ヵ月(独占期間)=72万円

家賃収入は各共有者の持分割合に応じて振り分けられるべきですが、共有不動産に住んでいる第三者に対し、直接請求するのはトラブルを招くため、おすすめしません。

不動産管理会社が賃料管理を行っていたとしても、持分割合に応じた額をそれぞれの共有者に振り込むといった対応はしてくれないでしょう。

そのため、共有者同士で話し合いを行って家賃収入を配分していくか、弁護士への相談のもと交渉することが必要となります。

賃借人に直接請求する方法はおすすめしない

賃借人に、賃料を直接振り込んでもらうようにお願いすることも法律的には可能です。しかし、賃貸人以外から賃料を請求されると、相手は不審に感じてトラブルの原因になる可能性があります

また、仮に賃借人が直接振り込むことを受け入れてくれた場合、賃借人が複数の口座に毎月家賃を支払う手間をかけさせてしまうことになるでしょう。

このような点から、賃借人との直接交渉はおすすめしません。どうしても直接交渉したい場合は、自分で交渉するのではなく、弁護士に相談することをおすすめします。

共有不動産を独占する共有者に不当利得返還請求を起こす場合の流れ

共有不動産を独占する共有者に不当利得返還請求を起こす流れは、次のとおりです。

  • 共有不動産を独占している共有者と話し合う
  • 信頼できる弁護士に相談する
  • 内容証明郵便で賃料請求の旨を知らせる
  • 不当利得返還請求訴訟を提起する
  • 判決をもとに賃料の支払いを受ける
  • 今後の賃料を回収するために賃貸借契約書を作成する
  • 賃料が年間20万円以上になる場合は確定申告を行う

それぞれの項目について詳しく解説していきます。

共有不動産を独占している共有者と話し合う

まずは、共有不動産を独占している共有者と話し合うことをおすすめします。内容証明郵便を使って通知をしたり訴訟を提起したりせず、話し合いで解決できれば、共有不動産を独占している共有者との関係悪化も最小限で食い止められるでしょう。

共有者が共有不動産を第三者に貸し、家賃収入を得ている場合は、賃貸契約書を提示してもらって賃料金額を把握しましょう。正確な賃料金額が分からなければ、受け取れる賃料収入の額が分からないためです。

また、いきなり内容証明郵便を使って通知をすると、相手が驚いてしまい、交渉の席についてくれなくなる可能性もあります。話し合えば解決できる可能性があるのであれば、まずは話し合いから始めるようにしましょう。

ただ、共有不動産を独占している共有者と直接関わりたくない場合は、必ずしも話し合う必要はありません。その場合は、弁護士に依頼して内容証明郵便を使って通知をすることから始めるのも選択肢の1つに入れておくと良いでしょう。

信頼できる弁護士に相談する

話し合いがまとまらない場合やそもそも話し合いの席についてくれない場合、信頼できる弁護士に相談します。弁護士に相談することで、内容証明郵便を使用して通知したり不当利得返還請求訴訟を提起したりする際に、心強い味方になるでしょう。

信頼できる弁護士を探す場合は、弁護士の実績だけでなく、自分との相性が良いかを確認しておくことも大切です。自分との相性が良い弁護士に依頼することで、ストレスが溜まりやすい状況であってもスムーズにやりとりを続けられるでしょう。

内容証明郵便で賃料請求の旨を知らせる

依頼する弁護士を選定したら、相手方に対して内容証明郵便で賃料請求の旨を知らせます。相手方に口頭で賃料請求をしても、その証拠が残りません。

しかし、文書を送った日時や内容を郵便局で証明できる内容証明郵便を使えば、賃料請求の旨を知らせた事実が証拠として残せます

後述する不当利得返還請求訴訟では、すでに賃料請求をしているという証拠があることが判断材料の1つになるため、訴訟を提起する場合は内容証明郵便を使って相手方に賃料請求の旨を知らせると良いでしょう。

もちろん、内容証明郵便での通知により、相手方が賃料請求に応じる場合があります。その場合は、その時点で相手方と交渉をし、適切な賃料を請求すると良いでしょう。しかし、内容証明郵便での通知を無視された場合には、次のステップに進むことが必要です。

不当利得返還請求訴訟を提起する

相手方が内容証明郵便での通知に応じない場合は、不当利得返還請求訴訟を提起することになります。不当利得返還請求訴訟の手続きの大半は弁護士が対応してくれるため、あなた自身がしなければならないことは多くありません。

ただし、証拠収集のための証人尋問が実施される場合は、弁護士とともに裁判所に出廷する必要がある点に注意してください。

判決をもとに賃料の支払いを受ける

裁判で勝訴した場合は、相手方に賃料を支払ってもらいます。判決が下されたのにもかかわらず、相手が支払いを拒み続ける場合は、裁判所に強制執行の申し立てが可能です。

強制執行では、相手方の給料や預金口座、自動車、貴金属類などを差し押さえ、強制的に賃料を支払わせることができます。なお、強制執行で差し押さえる財産は、裁判所が調査してくれるわけではありません。事前に自分で調査を行い、どの財産を差し押さえるのかを決める必要があるため、弁護士と協力して財産の調査を行うようにしましょう。

今後の賃料を回収するために賃貸借契約書を作成する

賃料の支払いを受けられても、これで終わりではありません。不当利得返還請求訴訟では過去分の賃料しか回収できません。そのため、今後も賃料の支払いを受け続けるためには、新たに賃貸借契約書を作成する必要があります。

もし賃貸借契約書を作成しない場合、賃料の不払いが発生したら、再び不当利得返還請求訴訟を提起しなければなりません。一方、あなたが賃料の支払いを受けられる旨の賃貸借契約書を作成する場合、賃料の不払いが発生したら、債務不履行として賃料を請求できるようになります。

賃料が年間20万円以上になる場合は確定申告を行う

共有者から受け取る賃料は、不動産所得として扱われます。受け取る賃料が年間20万円以上になる場合は確定申告を行い、所得税の支払が必要です。

確定申告が必要にも関わらず、申告をしなかった場合はペナルティとして追徴課税が課される可能性もあります。例えば、納付期限に間に合わなかった場合は「延滞税(2.4~14.6%)」、正当な理由なく相続税の申告を行わなかった場合は「無申告加算税(5~20%)」などを課されるおそれがあります。

追徴課税を支払わずに済むように、「不動産所得が年間20万円以上」に該当する場合は確定申告を行いましょう。

不当利得返還請求を行う際の注意点

他の共有者が共有不動産を独占している場合には、不当利得返還請求を行えますが、以下の点に注意する必要があります。

  • 共有者との関係悪化は避けられない
  • 共有不動産の独占が長期間続いていると黙認しているとみなされる
  • 賃料を回収するまでに膨大な時間がかかる
  • 弁護士費用の割に受け取れる家賃収入は大きくない
  • 原則、明け渡しの請求はできない
  • 請求の権利を知ってから5年経過すると時効で請求できなくなる
  • 受け取る金額によって所得税や住民税が上がる可能性がある

それぞれの注意点の詳細を確認し、不当利得返還請求を行うのが適しているのかどうかを確認してみてください。

共有者との関係悪化は避けられない

共有者を相手取り裁判を提起しようと考えている時点で、すでに共有者との関係が悪化していることが明らかです。

さらに、裁判で勝訴し強制的に賃料回収することになると、より関係が悪化することは避けられません。

しかし、不当利得返還請求訴訟で勝訴しただけなら、関係が悪化していたとしても共有関係にある状態は継続されます。共有関係にある場合、不動産の管理や運用、処分方法を話し合ったり税金の支払いに関するやりとりをしたりする必要があるため、精神的なストレスを抱えてしまう可能性があります。

もし、「共有状態を継続させたくない」「精神的なストレスを抱えたくない」という場合は、共有状態を解消することも検討してみると良いでしょう。詳しくは、共有不動産の共有関係を解消する方法で説明します。

共有不動産の独占が長期間続いていると黙認しているとみなされる

他の共有者の居住や家賃収入の独り占めが長期間続いていると、共有不動産の独占を黙認しているとみなされる可能性がある点にも注意してください。

共有不動産の独占を知っていたのに状況を放置していたとみなされると、裁判所からは黙認していたと判断される可能性があります

もちろん、「共有不動産を独占されていることを知らなかった」と主張すれば、黙認していたと判断される可能性は低くなるでしょう。しかし、それを証明するのは簡単ではありません。

共有不動産の独占を黙認しているとみなされてしまうと、賃料を回収することができません。裁判費用や弁護士への着手金を無駄に支払うことになってしまうため、訴訟を提起する場合は早めに行うことをおすすめします。

賃料を回収するまでに膨大な時間がかかる

賃料を回収するまでに膨大な時間がかかることも注意しておきましょう。不当利得返還請求訴訟は、1年以上にわたって行われることもあります

また、裁判で勝訴が確定したとしても、相手方が支払いにすんなり応じるとは限りません。相手方に差し押さえられる財産があれば強制執行により賃料回収が可能ですが、差し押さえられる財産がなければすぐに賃料を回収することはできず、回収できるまでにさらに数年間かかる可能性もあります

そのため、不当利得返還請求訴訟を提起する場合は長期戦になることも視野に入れておくと良いでしょう。

弁護士費用の割に受け取れる家賃収入は大きくない

高額な弁護士費用がかかる割に、受け取れる家賃収入は大きくない点にも注意が必要です。訴訟手続きを弁護士に依頼して勝訴した場合、着手金と成功報酬を合わせて50〜100万円程度の弁護士費用がかかります

しかし、共有不動産を独占されている期間が短い場合や、あなたの共有不動産に対する持分割合が小さい場合、相手方から回収できる家賃収入の額は大きくありません。場合によっては、弁護士費用の方が高くなってしまい、裁判で勝訴をしても損失が発生してしまう可能性もあるのです。

そのため、弁護士に依頼する場合は、受け取れる家賃収入の額と弁護士費用を計算してからにすることをおすすめします。

原則、明け渡しの請求はできない

他の共有者が居住により、共有不動産を独占している場合、物件から追い出したいと考える場合もあるでしょう。しかし、原則、明け渡し請求を行うことはできません。

不当利得返還請求によって賃料請求することはできても、居住する共有者を無理やり追い出したり、物件の鍵を替えて立ち入りできないようにしたりといったことは行えません。原則、裁判所に申し立てを行ったとしても、請求は認められないでしょう。

ただし、例外的に明け渡し請求を認められるケースも存在します。

明け渡しが認められるケース

明け渡し請求が認められるのは、下記のようなケースです。

認められるケース 具体例
共有者の間で決めた使用方法を無視している 共有者間の話し合いで共有不動産を賃貸物件として使用することを決めたにも関わらず、一人の共有者が居住によって不動産を独占している。
実力行使で共有不動産を独占している 他の共有者が反対しているのに勝手に入居したり、同居していた他の共有者を追い出したりといった実力行使で共有不動産を独占している。
使用方法の協議を拒否している 他の共有者が共有不動産の使用方法を話し合おうとしているにも関わらず、協議を拒否して共有不動産を独占している。
他の共有者の合意を得ずに建物を建築している 他の共有者の合意を必要とする「建物の建築」を、独断で行おうとしている。

共有不動産は原則、明け渡し請求を行えませんが、上記のような場合は、例外的に明け渡し請求が認められる場合もあります。

請求の権利を知ってから5年経過すると時効で請求できなくなる

先述しましたが、2020年4月1日以降に発生した不当利益返還請求権については「不当利得返還請求をできることを知ってから5年(主観的起算点)」「不当利得返還請求をできる時から10年(客観的起算点)」の消滅時効が存在します。

例えば下記のような条件であれば、不当利得返還請求をできることを知ってから5年5年以内であるため、賃料の請求を行うことが可能です。ただし、不当利得返還請求をできる時から10年以上経過しているため、10年前よりも過去の1年分の賃料については時効となり、請求できません。

・不当利得返還請求をできることを知ってから3年
・他の共有者の不動産の独占開始から11年

下記のような条件の場合は、不当利益返還請ができることを知ってから5年以上経過しているため、5年前よりも過去の2年分の賃料は請求できなくなります。

・不当利得返還請求をできることを知ってから7年
・他の共有者の不動産の独占開始から10年

受け取る金額によって所得税や住民税が上がる可能性がある

過去に遡って不当利得返還請求を行う場合、請求額が高額になる場合があります。一括で受け取った場合は、年間の所得が増えて所得税や住民税が上がるおそれもあります。

また、先述したとおり、賃料が年間20万円以上になる場合は確定申告を行う必要があります。

税金への影響や確定申告の手間などを考慮し、一括ではなく分割で支払ってもらうなどの対策を行うのも良いでしょう。

共有不動産の共有関係を解消する方法

共有不動産の家賃収入を独り占めされるなどのトラブルが起きるのは、不動産が共有関係にあるからです。共有名義を解消することで、不動産の所有者は一人になるため、「他の共有者に共有不動産の家賃収入を独り占めされた」というトラブルは起きなくなります。

また、共有関係を解消しておけば、共有状態が引き起こす家賃収入の独り占め以外のトラブルを未然に防げます。その上、自身の配偶者や子どもが共有状態が引き起こすトラブルに巻き込まれることを防ぐことも可能です。このような理由から、共有不動産の共有関係は早い段階で解消しておくことがおすすめです。

共有不動産の共有関係を解消するには、次の6つの方法があります。

  • 他の共有者全員と合意して共有不動産全体を売却する
  • 他の共有者に自己持分を売却する
  • 他の共有者の共有持分を買い取る
  • 共有物分割請求をする
  • 自己持分を放棄する
  • 自己持分を共有持分買取専門業者に売却する

それぞれの方法の詳細について以下で見ていきましょう。

以下の記事でも、共有関係を解消する方法について詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

他の共有者全員と合意して共有不動産全体を売却する

1つ目の方法は、他の共有者全員と合意して共有不動産全体を売却する方法です。共有不動産全体を売却し、得られた売却益を持分割合に応じて各共有者が受け取ります。

ただ、なお、共有不動産全体を売却するには他の共有者全員が合意する必要があります。一人でも売却に反対する共有者がいなければ、共有不動産全体を売却することはできません。家賃収入を独り占めにしている共有者が共有不動産の売却に賛成するとは考えにくいでしょう。そのため、家賃収入を独り占めにされている状況では、共有不動産全体を売却することによる共有状態の解消は難しいと言えます。

他の共有者に自己持分を売却する

2つ目の方法は、他の共有者に自己持分を売却する方法です。共有持分の所有権を失う一方、共有関係が解消できるだけでなく、売却による利益を得られます。相手も、不動産の共有関係が解消することで、他の共有者のことを気にせず不動産の管理や運用、処分が自由にできるため、お互いにメリットが大きいと言えます。

ただし、売却価格をいくらにするかでトラブルになってしまう可能性がある点に注意が必要です。相場通りに売却できるのが望ましいのですが、相手方は必ずしも相場での買取に応じてくれない場合があります。家賃収入の独り占めに加え、新たなトラブルに発展する可能性もあるため、交渉する際には注意が必要です。

共有持分の売却相場は以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。

他の共有者の共有持分を買い取る

3つ目の方法は、他の共有者の共有持分を買い取る方法です。先述した「他の共有者に自己持分を売却する方法」の逆パターンだと考えてください。しかし、この方法は1つ目の方法と同じく、家賃収入を独り占めにしている共有者が共有不動産を手放すとは考えにくいため、実現する可能性が低いと言えるでしょう。

共有物分割請求をする

4つ目の方法は、共有物分割請求をする方法です。共有物分割請求とは、共有状態の解消に向けた話し合いが共有者同士でまとまらない場合、裁判により共有状態の解消を目指す方法です。共有物分割請求で勝訴すれば、相手方の共有持分を「強制的」に取得できます。

しかし、共有物分割請求を起こしても、必ずあなたの主張が認められるわけではありません。裁判所は、以下の3つの方法から共有物の分割方法を決めます。

分割方法 概要
現物分割 不動産自体を分割する方法
代償分割 共有物を売却して売却益を分割する方法
価格賠償 分割の際の差額を金銭などで補償する

共有物の分割方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてお読みください。

自己持分を放棄する

5つ目の方法は、自己持分を放棄する方法です。自己持分を放棄すれば、放棄した持分は持分割合に応じて他の共有者に帰属します。自己持分を手放すことで共有状態を解消できますが、売却益を得られるわけではないため、金銭的なメリットは大きくありません。

自己持分の放棄は他の共有者の合意を得ずにすることが可能です。ただし、持分放棄により他の共有者に持分が移転する際の登記手続きでは、他の共有者にも協力してもらう必要があります。そのため、他の共有者との関係が悪化しており、持分放棄を認めてもらえない場合は持分放棄を行うことが難しい場合もあるでしょう。

自己持分を共有持分買取専門業者に売却する

6つ目の方法は、自己持分を共有持分買取専門業者に売却する方法です。自己持分だけを売却する場合、他の共有者の同意を得る必要がないため、自由に売却できます。しかし、自己持分だけを売却する場合、知らない誰かと共有状態になる不動産を買いたい人は一般的に少なく、通常の不動産業者では取り扱ってくれないことが多いのです。

一方、共有持分買取専門業者では、個人が購入を避けがちな共有持分だけの買取にも応じてくれます。買取価格で業者と一致すればすぐに売却できる場合が多いため、他の共有者とのトラブルから早く抜け出したいという方は、ぜひ自己持分を共有持分買取専門業者に売却する方法を検討してみてください。

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まとめ

他の共有者に共有不動産を独占されている場合、不当利得返還請求により賃料を回収できる可能性があります。話し合いで解決できれば良いのですが、必ずしも話し合いでは解決できない場合があります。その場合は、弁護士に依頼して内容証明郵便を使って賃料請求の旨を通知した後に、不当利得返還請求訴訟を提起する方法が考えられます。

ただし、相手方との関係が悪化したり賃料回収できるまでに時間がかかったりする注意点があります。また、家賃収入の独り占めが長期間続いていると、黙認しているとみなされてしまい不当利得返還請求が認められない場合もあるので注意してください。

「不当利得返還請求ではない方法で対処したい」といった場合は、自己持分の売却などで、不動産の共有関係を解消するのも検討しましょう。

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