土地建物の名義変更を徹底解説!手続きの流れ・費用・必要書類をケース別に紹介

土地建物の名義変更は、相続や贈与、売買、離婚による財産分与などの場面で必要になる手続きです。しかし、いざ手続きを進めようとすると「名義変更は自分でできる?」「どれくらい費用がかかる?」「どのような書類が必要?」といった疑問を抱く方も多いでしょう。

結論から述べると、土地建物の名義変更は「所有権移転登記」と呼ばれる登記手続きによって行われ、法務局へ申請する必要があります。

登記原因が相続・贈与・売買・財産分与など、どのケースに該当するかによって手続きの流れや必要書類、かかる費用が異なるため、事前に正しい手順を把握しておくことが大切です。

土地建物の名義変更において、どの登記原因でも共通する手続きは「登記申請書の作成」と「法務局での所有権移転登記の申請」です。法務局で正式に名義変更をしなければ、第三者に対して所有権を主張できず、不動産の売却や活用に支障が生じる可能性があります。

専門家の立場から見ると、名義変更を後回しにしてしまった結果、相続人が増えて権利関係が複雑になったり、不動産の売却や活用ができなくなったりするケースも多くみられます。

実際、買取のご相談でも「相続後に名義変更をしていなかったため、共有者が増えてしまい、不動産の売却手続きが進められなくなった」といったケースは多いです。そのため、不動産を取得した際は速やかに名義変更の手続きを進めることが大切です。

本記事では、土地建物の名義変更で必要となる所有権移転登記の概要や、相続・贈与・売買・離婚による財産分与などケース別の手続きの流れについて詳しく解説します。土地建物の名義変更でお困りの方は、ぜひ参考にしてください。

目次

土地建物の名義変更は「所有権移転登記」によって行う

土地や建物の名義変更とは、不動産の所有者が変わった際に、登記簿上の名義人を変更する手続きです。正式には「所有権移転登記」と呼ばれ、法務局に申請することで登記簿に記載されている所有者の情報を変更します。

不動産の登記簿には、土地建物の所在地や面積、所有者の氏名・住所などが記録されています。相続や売買、贈与、離婚による財産分与などによって所有者が変わった場合には、登記簿の名義も変更しなければなりません。

というのも、法務局で土地建物の名義を正式に変更しなければ、第三者に対して「自分の土地建物である」という権利を主張できないためです。これについては、民法第177条で以下のように定められています。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
引用元:

名義変更(所有権移転登記)は、不動産の所在地を管轄する法務局で手続きを行います。申請は窓口への持参だけでなく、郵送やオンライン申請でも行うことが可能です。

名義変更を行うことで、不動産の所有者が公的に証明され、売却や担保設定などの土地建物の活用が自由にできるようになります。反対に、名義変更を行わないまま放置すると、将来的に相続人が増えて権利関係が複雑になるなど、さまざまなトラブルにつながるおそれがあります。

土地建物の名義変更は不動産の権利関係を正しく管理するための重要な手続きであるため、所有者が変わったときは速やかに所有権移転登記を行うことが大切です。

土地建物の名義変更が必要になる主なケース

土地や建物の名義変更は、不動産の所有者が変わった場合に必要となる手続きです。

実務上もっとも多いのが、相続によって不動産を取得するケースです。親や配偶者が亡くなった後に不動産を引き継いだものの、名義変更を行わないまま放置されている不動産は少なくありません。

実際、不動産の買取相談でも「相続した家の名義が亡くなった親のままになっている」「相続人が複数いて名義変更の手続きが進んでいない」といったケースは非常に多く見られます。

ここでは、土地建物の名義変更が必要になる主なケースについて、以下4つに分けて具体的に解説します。

  • 土地建物を相続したケース
  • 土地建物の贈与があったケース
  • 土地建物を売買したケース
  • 離婚による財産分与で土地建物の名義変更が行われるケース

土地建物を相続したケース

土地建物の所有者が亡くなった場合、その不動産は相続人に引き継がれることになります。このとき、登記簿上の名義人を被相続人から相続人へ変更する手続きが必要です。

相続による名義変更は「相続登記」といい、原則として不動産を取得したことを知った日から3年以内(遺産分割の場合は分割成立日から3年以内)に申請する必要があります。また、遺産分割協議によって不動産を取得する相続人が決まった場合には、遺産分割が成立した日から3年以内に登記申請を行う必要があります。

相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく手続きを行わない場合には10万円以下の過料が適用される可能性があります。

実際の現場においても、相続後に名義変更を行わないまま長期間放置してしまい、トラブルが発生してからご相談いただくということが非常に多いです。たとえば「祖父名義のまま何十年も放置されていた土地建物を買い取ってほしい」「相続人が複数に増えてしまい、売却が進められない」といったご相談です。

相続登記を放置すると過料が課せられるおそれがあるうえ、権利関係が複雑になるリスクもあるため、専門家としては早めに名義変更の手続きを進めることを推奨しております。

参照:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)|東京法務局

土地建物の贈与があったケース

土地建物を無償で譲り渡す「贈与」が行われた場合には、贈与者から受贈者へ名義変更を行う必要があります。基本的には、贈与時に取り交わした贈与契約に基づいて、登記簿上の所有者を変更します。

土地建物の贈与は、親から子へ財産を引き継ぐ場合や、将来の相続を見据えて不動産を移転しておきたい場合などに行われることが多いです。また、相続税対策の一環として、生前贈与によって土地建物の名義を変更するケースも見られます。

不動産実務の現場においては、親から子へ土地建物を贈与したものの、名義変更を行わずに親が亡くなってしまい、相続で揉めてしまうという事例がありました。

贈与による土地建物の名義変更に法的な期限はありませんが、トラブルを避けるためにも、不動産の贈与があったときは速やかに名義変更の手続きを行うことが重要です。

土地建物を売買したケース

土地建物を売買した場合には、売主から買主へ名義変更を行う必要があります。売買契約を締結して契約書を取り交わし、その内容に基づいて所有権移転登記を行い、登記簿上の名義人を買主へ変更します。

土地建物の売買は、不動産会社の仲介によって一般の買主へ売却するケースのほか、買取業者へ売却するケース、親族間で不動産を売買するケースなど、さまざまな形で行われます。いずれの場合も、売買契約が成立しただけでは登記簿の名義は変わらないため、法務局で名義変更の手続きが必要です。

非常にまれなケースではありますが、売買契約自体は成立しているものの、何らかの事情で名義変更の手続きが完了していないままになっている土地建物について相談を受けることもあります。

売買後も名義変更しないまま放置すると、固定資産税の請求が売主のもとへ届いたり、住宅ローンの融資が受けられなかったりなどのトラブルが生じるおそれがあります。

そのため、土地建物の売買をする場合は決済と引き渡しが完了すると同時に、法務局で所有権移転登記の申請をする流れが基本となります。

離婚による財産分与で土地建物の名義変更が行われるケース

離婚による財産分与で土地建物の所有者が変わる場合にも、名義変更の手続きが必要になります。この場合は、財産分与によって土地建物を取得する側へ名義変更をする形で、所有権移転登記を行います。

たとえば、夫婦共有名義で購入したマイホームに住んでいたものの、離婚を機にどちらか一方がそのまま住み続けることになり、土地建物の名義を単独名義へ変更するケースが挙げられます。また、もともと夫名義だった土地建物を財産分与として妻へ移転するような場合にも、名義変更が必要です。

ただし、住宅ローンが残っている不動産については注意が必要です。基本的に、不動産には金融機関の抵当権が設定されているため、住宅ローンが残っている状態で名義を変更するには、ローンの完済や金融機関の承諾が必要になる場合があります。

そのため、離婚による財産分与で土地建物の名義変更を行う際には、事前に金融機関へ相談して手続きの方法を確認しておきましょう。

土地建物の名義変更の手続きは登記原因によって異なる

土地建物の名義変更は、相続・贈与・売買・離婚による財産分与など、どのような登記原因で所有権が移転したかによって手続きの内容が異なります。

ただし、実務上の大まかな流れ自体は、どの登記原因でも共通しています。基本的には、名義変更の原因となる事情を整理し、必要書類を準備したうえで登記申請書を作成し、法務局へ所有権移転登記を申請するという流れになります。

流れ 概要
登記原因を確認する 相続・贈与・売買・離婚による財産分与など、不動産の所有者が変わった理由(登記原因)に応じて必要な手続きをする
必要書類を準備する 登記原因に応じて必要となる書類を収集・作成する
登記申請書を作成する 法務局へ提出する登記申請書を作成し、不動産の情報や登記原因、申請人などを記載する
法務局へ申請する 不動産を管轄する法務局へ登記申請を行う(窓口申請・郵送・オンライン申請)
登記完了後に内容を確認する 登記が完了したら、登記事項証明書を取得し、名義が正しく変更されているか確認する

基本的な流れは似ていますが、登記原因を確認する手続きや、必要書類などには違いが生じます。ここからは、相続・贈与・売買・離婚による財産分与について、土地建物の名義変更の具体的な流れをそれぞれ解説します。

相続による土地建物の名義変更の流れ

相続による土地建物の名義変更の流れは以下が基本となります。

  1. 相続人を確定する
  2. 遺産分割協議を行う
  3. 必要書類(戸籍・遺産分割協議書など)を準備する
  4. 登記申請書を作成する
  5. 法務局へ相続登記を申請する

① 相続人を確定する

相続による名義変更を進める際は、まず相続の対象となる土地や建物を確認したうえで、誰が相続人になるのかを確定する必要があります。そのためには、被相続人の戸籍をたどり、法定相続人を調査する作業から始めます。

法定相続人とは、民法で定められた遺産を相続する権利を持つ人のことです。配偶者は常に相続人となり、配偶者とともに相続する人は「子ども」「両親などの直系尊属」「兄弟姉妹」の順で優先されます。

たとえば、被相続人に子ども(または孫)がいる場合は子どもが相続人となり、子どもがいない場合には両親(または祖父母)、両親もいない場合には兄弟姉妹が相続人になります。

なお、実務では「把握していなかった相続人が後から判明する」といったケースも少なくありません。被相続人に前婚の子どもがいた場合や、長年連絡を取っていない親族がいる場合などです。

そのため、相続人調査の際には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人が誰になるのかをしっかり確認しましょう。

参照:相続人の範囲と法定相続分|国税庁

② 遺産分割協議を行う

相続人が確定したら、次に遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するのかを決めます。被相続人が遺言書を残している場合は、その内容に従って遺産を分けるのが原則です。

一方、遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決める必要があります。遺産分割協議では、土地建物を含めて「誰がどの遺産を相続するのか」を決定していきます。

話し合いの結果、相続人全員の合意が得られたら、その内容を「遺産分割協議書」として書面にまとめ、全員が署名押印します。

③ 必要書類(戸籍・遺産分割協議書など)を準備する

遺産分割の内容が決まったら、相続登記に必要となる書類を準備します。相続による土地建物の名義変更では、主に以下のような書類が必要になります。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人の住民票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(または遺言書)
  • 固定資産評価証明書
  • 相続関係説明図

なお、必要書類の内容は、相続の方法によって異なります。たとえば、遺産分割協議によって相続する場合は遺産分割協議書や印鑑証明書などが必要になりますが、遺言で相続する場合は遺言書が必要です。

相続登記は状況によって必要書類が変わるため、専門家としては、手続きを進める際には司法書士などの専門家に相談することを推奨しております。

④ 登記申請書を作成する

必要書類がそろったら、法務局へ提出する「登記申請書」を作成します。登記申請書とは、土地建物の名義変更を申請するための書類であり、不動産の所在地や登記原因、相続人の情報などを記載するものです。

相続による名義変更の場合、登記原因は「相続」となり、被相続人や相続人の情報、相続した不動産の内容などを記載する必要があります。

登記申請書の基本的な書式は以下のとおりです。

登記申請書

登記の目的  所有権移転

登記原因   令和◯年◯月◯日 遺産分割

権利者    【取得相続人の住所】
       【氏名】

義務者    【他の相続人の住所】
       【氏名】

       (相続人全員)

不動産の表示
 【登記事項証明書どおり】

添付情報
 遺産分割協議書
 戸籍一式 または 法定相続情報一覧図
 登記識別情報(※原則不要)
 固定資産評価証明書
 代理権限証明情報

登録免許税  金【◯◯◯◯◯円】

申請日    令和◯年◯月◯日

申請人    【権利者の住所】
       【氏名】

※こちらはあくまでもテンプレートなので、実際に作成する際は司法書士に相談してください。

記載内容に誤りがあると、法務局から補正を求められたり、手続きが遅れてしまったりする可能性があります。不動産の表示や登記原因の日付など、登記簿や添付書類の内容と一致しているかを確認しながら作成しましょう。

⑤ 法務局へ相続登記を申請する

必要書類と登記申請書がそろったら、法務局へ土地建物の名義変更(相続登記)を申請します。相続登記の手続きは、自宅から近い場所ではなく、土地建物の所在地を管轄する法務局で行います。

申請方法は、法務局の窓口へ直接提出する方法のほか、郵送による申請やオンライン申請にも対応しています。なお、実際の現場において相続登記は司法書士に依頼して進めるケースが多く、代行して申請してもらう形になります。

申請後は法務局で書類の審査が行われ、内容に問題がなければ通常は1〜2週間程度で登記が完了します。

贈与による土地建物の名義変更の流れ

贈与による土地建物の名義変更の流れは以下が基本となります。

  1. 贈与契約を締結する
  2. 固定資産評価額を確認する
  3. 必要書類(贈与契約書・印鑑証明書など)を準備する
  4. 登記申請書を作成する
  5. 法務局へ所有権移転登記を申請する

① 贈与契約を締結する

まずは、贈与の対象となる土地建物の内容を確認します。法務局で登記事項証明書を取得し、不動産の所在地や名義人、権利関係に問題がないかを確認したうえで、贈与者と受贈者の間で贈与契約を締結します。

法律上、贈与は当事者の合意があれば口頭でも成立します。しかし、不動産のように高額な財産を贈与する場合には、後のトラブルを防ぐためにも贈与契約書を作成しておくことが重要です。

贈与は無償での譲渡となるため、契約書がなければ「本当に贈与する意思があったのか」といった点で後から揉める可能性があります。そのため、不動産の専門家としては、土地建物の贈与を行う際には贈与の内容や当事者の意思を明確にした贈与契約書を作成しておくことを推奨しております。

② 固定資産評価額を確認する

贈与によって土地や建物の名義変更を行う場合、受贈者には登録免許税や不動産取得税、贈与税などの税金が発生する可能性があります。そのため、事前に不動産の固定資産税評価額を確認し、どの程度の税金がかかるのかを把握しておきましょう。

固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税の納税通知書で確認することができます。納税通知書を紛失している場合でも、市区町村役場で「固定資産評価証明書」を取得することで確認が可能です。

なお、贈与税が発生する場合は税金が高額になる可能性もあるため、税理士に相談のうえ節税対策を取りながら贈与を進めることを推奨します。

③ 必要書類(贈与契約書・印鑑証明書など)を準備する

贈与契約を締結し、不動産の評価額を確認したら、土地建物の名義変更に必要な書類を準備します。贈与による土地建物の名義変更では、主に以下のような書類が必要になります。

  • 登記識別情報(または登記済権利証)
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票(または戸籍抄本)
  • 固定資産評価証明書
  • 贈与契約書

なお、贈与の状況によって必要書類は異なる可能性があるため、事前に司法書士などの専門家に確認したうえで準備を進めましょう。

④ 登記申請書を作成する

必要書類がそろったら、法務局へ提出する登記申請書を作成しましょう。

登記申請書には、不動産の所在地や登記原因、申請人(贈与者・受贈者)の情報などを記載し、所有権移転登記を申請するための内容をまとめます。贈与による名義変更の場合、登記原因は「贈与」となり、贈与契約が成立した日付を登記原因の日付として記載します。

贈与による登記申請書の基本的な書式は以下のとおりです。

登記申請書

登記の目的  所有権移転

登記原因   令和◯年◯月◯日 贈与

権利者    【受贈者の住所】
       【受贈者の氏名】

義務者    【共有者Aの住所】
       【共有者Aの氏名】

       【共有者Bの住所】
       【共有者Bの氏名】

不動産の表示
 【登記事項証明書どおり】

添付情報
 登記原因証明情報(贈与契約書等)
 登記識別情報
 印鑑証明書
 固定資産評価証明書
 代理権限証明情報

登録免許税  金【◯◯◯◯◯円】

申請日    令和◯年◯月◯日

申請人    【権利者の住所】
       【権利者の氏名】

※こちらはあくまでもテンプレートなので、実際に作成する際は司法書士に相談してください。

記載内容に不備があると法務局から補正を求められることもあるため、添付書類との整合性を確認しながら慎重に作成しましょう。

⑤ 法務局へ所有権移転登記を申請する

必要書類と登記申請書がそろったら、法務局へ土地建物の名義変更を申請します。贈与の場合は、贈与者から受贈者へ名義を変更する形で所有権移転登記を行います。

申請後は法務局で書類の審査が行われ、問題がなければ通常1〜2週間ほどで登記が完了します。登記が完了したら、登記事項証明書を取得し、名義が受贈者に変更されているか確認しておきましょう。

売買による土地建物の名義変更の流れ

売買による土地建物の名義変更の流れは以下が基本となります。

  1. 売買契約を締結する
  2. 必要書類(売買契約書・印鑑証明書など)を準備する
  3. 登記申請書を作成する
  4. 代金決済と引き渡しを行う
  5. 法務局へ所有権移転登記を申請する

① 売買契約を締結する

まずは、売主と買主の間で土地建物の売買契約を締結します。売買の方法には、不動産会社の仲介によって第三者へ売却するケースのほか、買取業者への売却、親族間で不動産を売買するケースなどがあります。

いずれの場合でも、売主と買主の間で売却価格や引き渡し時期、契約条件などについて協議を行い、双方が合意した内容をもとに売買契約書を作成します。売買契約書は、後の所有権移転登記を行う際にも重要な書類となります。

なお、実務上、土地建物を売買する際には不動産会社が仲介に入り、売買契約の締結手続きを主導するのが基本です。不動産会社が契約内容の確認や書類の準備を行い、売主と買主の双方が契約書に署名・押印することで売買契約が成立します。

② 必要書類(売買契約書・印鑑証明書など)を準備する

売買契約の内容が決まったら、土地建物の名義変更に必要となる書類を準備します。

  • 登記識別情報(または登記済権利証)
  • 売主の印鑑証明書
  • 買主の住民票(または戸籍抄本)
  • 固定資産評価証明書
  • 売買契約書

実務では、司法書士や不動産会社が事前に必要書類を案内するため、漏れがないよう確実に用意しましょう。

③ 登記申請書を作成する

必要書類がそろったら、法務局へ提出する登記申請書を作成します。売買による名義変更の場合、登記原因は「売買」となり、売買契約を締結した日付を登記原因の日付として記載します。

売買による登記申請書の基本的な書式は以下のとおりです。

登記申請書

登記の目的  所有権移転

登記原因   令和◯年◯月◯日 売買

権利者    【買主の住所】
       【買主の氏名】

義務者    【共有者Aの住所】
       【共有者Aの氏名】

       【共有者Bの住所】
       【共有者Bの氏名】

       (以下共有者全員)

不動産の表示
 【登記事項証明書どおり】

添付情報
 登記原因証明情報
 登記識別情報
 印鑑証明書
 固定資産評価証明書
 代理権限証明情報(代理申請の場合)

登録免許税  金【◯◯◯◯◯円】

申請日    令和◯年◯月◯日

申請人    【権利者の住所】
       【権利者の氏名】

※こちらはあくまでもテンプレートなので、実際に作成する際は司法書士に相談してください。

登記申請書の内容は売買契約書や添付書類と一致している必要があるため、不動産の表示や当事者の氏名・住所などに誤りがないか確認しながら作成しましょう。

④ 代金決済と引き渡しを行う

次は、契約時に取り決めた日時に代金の決済と土地建物の引き渡しを行います。通常は、金融機関などで売主と買主、仲介会社、司法書士が集まり、決済と引き渡しの手続きを同時に進める形になります。

まず、買主から売主へ売買代金が支払われ、入金が確認されます。決済が完了したことを確認したうえで、売主から買主へ物件の鍵や関係書類などを引き渡し、土地建物の引き渡しが完了します。

⑤ 法務局へ所有権移転登記を申請する

必要書類と登記申請書がそろったら、法務局で土地建物の名義変更を申請します。売買の場合は、売主から買主へ名義を変更する形で所有権移転登記を行います。

所有権移転登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行うのが原則です。実務では、売買代金の決済と物件の引き渡しが完了した後、そのまま司法書士が代行して登記申請を行う流れになります。

申請後は法務局で書類の審査が行われ、通常1〜2週間ほどで登記が完了します。登記が完了したら、登記事項証明書を取得し、名義が売主から買主へ正しく変更されているかを確認してみてください。

離婚による財産分与の土地建物の名義変更の流れ

離婚による財産分与で土地建物の名義変更を行う場合の流れは以下が基本となります。

  1. 財産分与の内容を決める
  2. 離婚協議書または財産分与契約書を作成する
  3. 必要書類(戸籍・印鑑証明書など)を準備する
  4. 登記申請書を作成する
  5. 法務局へ所有権移転登記を申請する

① 財産分与の内容を決める

離婚に伴って土地や建物の名義変更を行う場合、まずは夫婦で話し合いを行い、財産分与の内容を決めます。財産分与では、不動産だけでなく、預貯金や株式、自動車など、婚姻期間中に形成された共有財産をどのように分配するのかを決めます。

話し合いの中で、土地建物をどちらが取得するのかを決めることで、名義変更の方向性が定まります。たとえば、夫婦共有名義のマイホームをどちらか一方が引き続き所有する場合には、その人の単独名義に変更する手続きが必要になります。

なお、住宅ローンが残っている不動産については注意が必要です。共有財産からローンを完済できる場合は問題ありませんが、完済が難しい場合には、名義変更が可能かどうかを金融機関に事前に相談する必要があります。

とくに、夫婦でペアローンを組んでいる場合や、夫名義ローンの土地建物を妻が取得する場合には金融機関からの承諾が必要になることもあるため、早めに相談しましょう。

② 離婚協議書または財産分与契約書を作成する

財産分与の内容が決まったら、離婚協議書または財産分与契約書を作成します。具体的には、土地建物などの不動産を含めた財産の分配内容や名義変更を行う時期、手続きにかかる費用をどちらが負担するのかといった事項を記載します。

土地建物の名義変更は、原則として現在の所有者と新たに取得する人が共同で申請する必要があります。そのため、後から「約束していた内容と違う」といったトラブルが起きないよう、合意内容を書面として残しておくことが大切です。

また、離婚に伴う財産分与では、離婚協議書を「公正証書」として作成しておく方法もあります。

公正証書とは、公証役場で公証人が立ち会いのもと、当事者の意思を確認したうえで作成する公的な文書のことです。公正証書に「強制執行認諾約款」を含めておけば、相手方が登記に非協力的な場合でも強制執行によって手続きを進めることができます。

財産分与における不動産の名義変更はトラブルを招くことも多いため、専門家としては公正証書の作成を推奨します。

③ 必要書類(戸籍・印鑑証明書など)を準備する

離婚協議がまとまったら役所に離婚届を提出し、離婚が正式に成立した後に、土地建物の名義変更に必要となる書類を準備していきます。

  • 登記識別情報(または登記済権利証)
  • 名義人の印鑑証明書
  • 取得者の住民票(または戸籍抄本)
  • 固定資産評価証明書
  • 離婚協議書(または財産分与契約書)
  • 戸籍謄本(離婚後のもの)

戸籍謄本に関しては離婚の旨の記載があるものが必要です。離婚届を提出しなければ名義変更を進められないため、協議がまとまった段階で速やかに役所に提出し、離婚が反映されたタイミングで戸籍謄本を取得しましょう。

④ 登記申請書を作成する

必要書類がそろったら、法務局へ提出する登記申請書を作成します。離婚による財産分与の場合、登記原因は「財産分与」となり、離婚が成立した日を登記原因の日付として記載するのが基本です。

離婚に伴う財産分与による登記申請書の基本的な書式は以下のとおりです。

登記申請書

登記の目的  所有権移転

登記原因   令和◯年◯月◯日 財産分与

権利者    【取得する配偶者の住所】
       【氏名】

義務者    【元配偶者の住所】
       【氏名】

       (※共有者が他にもいれば全員記載)

不動産の表示
 【登記事項証明書どおり】

添付情報
 登記原因証明情報(離婚協議書・調停調書等)
 登記識別情報
 印鑑証明書
 固定資産評価証明書
 代理権限証明情報

登録免許税  金【◯◯◯◯◯円】

申請日    令和◯年◯月◯日

申請人    【権利者の住所】
       【氏名】

※こちらはあくまでもテンプレートなので、実際に作成する際は司法書士に相談してください。

申請内容は離婚協議書や財産分与契約書の内容と一致している必要があるため、不動産の表示や当事者の氏名・住所などに誤りがないか確認しながら作成しましょう。

⑤ 法務局へ所有権移転登記を申請する

必要書類と登記申請書の準備ができたら、法務局で土地建物の名義変更を申請します。

離婚による財産分与の場合は、現在の所有者から財産分与によって取得する人へ名義変更をする形で所有権移転登記を行います。

書類の内容に問題がなければ、通常1~2週間程度で登記が完了します。

土地建物の名義変更で必要な書類一覧

土地建物の名義変更を行う際には複数の書類提出を求められるのですが、登記原因によって必要書類が異なります。登記原因別に、必要な書類の一覧は以下のとおりです。

登記原因 必要書類
共通 ・登記申請書
・固定資産税評価証明書
相続 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の住民票除票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人の住民票
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書(または遺言書)
・相続関係説明図
贈与 ・登記識別情報(または登記済権利証)
・贈与者の印鑑証明書
・受贈者の住民票(または戸籍抄本)
・贈与契約書
売買 ・登記識別情報(または登記済権利証)
・売主の印鑑証明書
・買主の住民票(または戸籍抄本)
・売買契約書
離婚 ・登記識別情報(または登記済権利証)
・名義人の印鑑証明書
・取得者の住民票(または戸籍抄本)
・離婚協議書(または財産分与契約書)
・戸籍謄本(離婚後のもの)

名義変更で共通して必要になる書類

土地建物の名義変更において、どの登記原因でも共通して必要になる書類は以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 固定資産税評価証明書

登記申請書は、法務局に対して名義変更を申請するための書類であり、不動産の所在地や登記原因、申請人の情報などを記載します。相続・贈与・売買・財産分与など、名義変更の理由によって記載内容は異なります。

自分で作成することもできますが、実務上は司法書士に名義変更を依頼して登記申請書の作成も代行してもらうのが基本となります。

固定資産税評価証明書は、市区町村が発行する書類で、土地建物の固定資産税評価額を証明するものです。固定資産税評価額は、名義変更の際に課される登録免許税を計算する基準となるため、登記申請の際に提出する必要があります。

固定資産税評価証明書は、市区町村役場の窓口で取得できるほか、自治体によっては郵送請求やオンライン申請にも対応しています。

相続によって土地建物の名義変更をする場合

土地建物の名義変更において、相続で必要になる書類は「遺産分割協議」「遺言書」「法定相続分」のどの方法で相続するかによって違いがあります。相続方法別に、主な必要書類を以下にまとめました。

書類 遺産分割協議 遺言書 法定相続分
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
被相続人の住民票除票
相続人全員の戸籍謄本
相続人の住民票
(取得者のみ)

(取得者のみ)

(法定相続人全員)
相続人全員の印鑑証明書 × ×
遺産分割協議書 × ×
遺言書 × ×
相続関係説明図

相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を図式化した書類であり、相続関係をわかりやすく示すために作成します。提出は必須ではありませんが、戸籍謄本の原本を返却してもらいたい場合は、作成して提出しましょう。

参照:相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等|国税庁

贈与によって土地建物の名義変更をする場合

贈与によって土地建物の名義変更をする場合の主な必要書類は以下のとおりです。

  • 登記識別情報(または登記済権利証)
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票(または戸籍抄本)
  • 固定資産評価証明書
  • 贈与契約書

登記識別情報(登記済権利証)は、現在の所有者がその土地建物の権利を持っていることを証明するための書類です。再発行はできないため、紛失した場合は司法書士による「本人確認情報の提供」や「事前通知制度」など、別の方法を利用する必要があります。

印鑑証明書は、登記手続きにおいて押印された実印が本人のものであることを証明するための書類であり、3ヶ月以内に発行されたものが必要です。住民票については、新しく不動産の名義人となる受贈者の住所や氏名を登記簿に反映させるための書類として提出します。

贈与契約書は、不動産を無償で譲り渡すことについて当事者が合意した内容を記載した書面であり「登記原因証明情報」として提出することになります。

売買によって土地建物の名義変更をする場合

売買によって土地建物の名義変更をする場合の主な必要書類は以下のとおりです。

  • 登記識別情報(または登記済権利証)
  • 売主の印鑑証明書
  • 買主の住民票(または戸籍抄本)
  • 固定資産評価証明書
  • 売買契約書

売買の際には、登記原因証明情報として売買契約書を提出するのが基本となります。売買契約書は、基本的に不動産会社や司法書士などの専門家などが代行して作成します。

離婚による財産分与で土地建物の名義変更をする場合

離婚による財産分与で土地建物の名義変更をする場合の主な必要書類は以下のとおりです。

  • 登記識別情報(または登記済権利証)
  • 名義人の印鑑証明書
  • 取得者の住民票(または戸籍抄本)
  • 固定資産評価証明書
  • 離婚協議書(または財産分与契約書)
  • 戸籍謄本(離婚後のもの)

離婚による財産分与で名義変更をする場合、離婚協議書または財産分与契約書を作成のうえ、登記原因証明情報として提出します。

戸籍謄本については離婚した事実を確認するために必要となる書類であるため、離婚届を提出し、情報が反映された後に取得するようにしましょう。

土地建物の名義変更をスムーズに進めるポイント

土地建物の名義変更をするためには専門知識が必要となり、さらに書類の準備もあるため、手続きが滞ってしまうことがあります。とくに、相続や共有名義の不動産は関係者が複数いることから、確認不足が原因で手続きが進まなくなるケースも少なくありません。

ここでは、土地建物の名義変更をスムーズに進めるために押さえておきたいポイントについて解説します。

  • 登記原因を正確に整理しておく
  • 必要書類を事前に確認してまとめて準備する
  • 登記簿の住所・氏名が現在の情報と一致しているか確認する
  • 抵当権などの担保権が付いていないか確認する
  • 共有名義の場合は共有者全員の同意を整理しておく

登記原因を正確に整理しておく

登記原因とは、相続や贈与、売買、財産分与など、土地建物の名義変更を行う理由のことです。土地建物の名義変更をする際には、登記原因に応じて必要書類や申請内容が変わるため、まずは自分のケースがどれに該当するのかを正確に整理しておく必要があります。

というのも、法務局へ名義変更を申請する際には、所有権がどのような理由で移転したのかを示す「登記原因証明情報」を提出することが不動産登記法によって定められているためです。

(登記原因証明情報の提供)
第六十一条 権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
引用元:不動産登記法|e-Gov 法令検索

たとえば、相続であれば遺産分割協議書や戸籍謄本、売買であれば売買契約書、贈与であれば贈与契約書などがこれにあたります。手続きをスムーズに進めるためには、名義変更を進める前に登記原因を正確に整理し、それに対応した書類を準備することが大切です。

必要書類を事前に確認してまとめて準備する

名義変更の手続きでは、必要書類をそろえること自体はそれほど難しくないように思われがちですが、実務では書類の取得や内容の確認でつまずくケースも少なくありません。必要書類のなかでも、とくにつまずきやすいものをピックアップしてまとめました。

書類 概要 つまずきやすいポイント
戸籍謄本
(主に相続)
相続人と被相続人の相続関係を証明するための書類 ・転籍により複数の役所から取得が必要になることがある
・除籍や改製原戸籍など古い戸籍が必要になることがある
・本籍地が遠方の場合は郵送取得になる場合がある
・戸籍収集だけで数週間かかるケースもある
印鑑証明書 所有者の実印が本人のものであることを証明するための書類 ・3ヶ月以内に取得したものが必要
・登記簿の住所と現在住所が一致しないケースがある
・海外在住の場合は取得方法が異なる
・住所変更登記が必要になる場合がある
固定資産評価証明書 登録免許税の計算に使用する土地建物の評価額を証明するための書類 ・毎年1月1日時点で評価額が更新される
・市区町村ごとに取得方法が異なる
・不動産が複数ある場合はすべて取得が必要
・年度を誤ると税額計算がやり直しになる
登記識別情報(権利証) 現在の所有者が土地建物の権利を持っていることを証明するための書類 ・紛失しているケースが多い
・相続では保管場所が分からないことがある
・古い不動産では紙の権利証の場合がある
・紛失時は事前通知制度や司法書士の本人確認情報が必要

実務の現場では「印鑑証明書の有効期限が切れていた」「固定資産税評価証明書の年度を間違えた」「権利証が見つからない」といった理由で、登記申請直前になって手続きが止まってしまうケースも多くみられます。

とくに、相続登記では戸籍の収集に時間がかかるケースも多いため、早めに準備を始めることがスムーズな手続きにつながります。

登記簿の住所・氏名が現在の情報と一致しているか確認する

土地建物の名義変更手続きを始める前に、法務局で登記簿(全部事項証明書)を取得し、記載されている住所や氏名が現在の情報と一致しているかを確認しておくことも重要です。

もしも、登記簿上の住所や氏名が現在の情報と一致していない場合、そのままでは名義変更の手続きを進めることができません。この場合は、登記簿の情報を現在のものと一致させたうえで、土地建物の名義変更に進む流れになります。

実務の現場でも、「不動産の名義が祖父のままになっていた」「結婚前の旧姓のまま登記されていた」といったケースは少なくありません。

トラブルを防ぐためにも、土地建物の名義変更を検討している場合は、まず登記簿の住所や氏名が現在の情報と一致しているかを確認しておきましょう。

抵当権などの担保権が付いていないか確認する

土地建物の名義変更を行う際には、その不動産に抵当権などの担保権が設定されていないかを事前に確認しておくことが重要です。抵当権とは、住宅ローンなどの借入金を担保するために金融機関が設定する権利のことです。

とくに注意が必要なのが、離婚による財産分与でマイホームの名義を変更するケースです。住宅ローンが残っている場合、金融機関の抵当権が設定されている可能性が高く、名義変更を行うには金融機関の承諾が必要になる場合があります。

もしも金融機関に相談せず名義変更を行ってしまうと、契約内容によっては契約違反とみなされ、一括返済を求められるリスクもあります。

共有名義の場合は共有者全員の同意を整理しておく

土地建物が共有名義になっている場合は、名義変更を進める前に共有者全員の同意を整理しておくことが重要です。共有不動産は所有者が複数人いるため、不動産全体の処分や権利の移転に関わる手続きでは、原則として共有者全員の同意が必要になります。

たとえば、共有名義の土地建物を第三者へ売却する場合や、親族間で不動産を贈与する場合などには、共有者全員が同意していることが前提となります。誰か1人でも同意していない場合、手続きを進めることができません。

共有持分の買取を専門とする弊社では「共有者の同意が取れず売却ができない」「共有者同士でトラブルになってしまった」といったご相談を受けることが非常に多いです。

そのため、名義変更を進める際には、事前に共有者全員と話し合いを行い、手続きの内容や今後の方針について認識をすり合わせておくことが大切です。あらかじめ同意を整理しておくことで、手続きの途中でトラブルが発生するリスクを減らすことができます。

土地建物の名義変更をしないとどうなる?

土地建物の名義変更は、不動産の所有者が変わった際に必ず行うべき重要な手続きです。しかし、相続や贈与の後に名義変更の手続きを行わないまま、放置されている不動産は少なくありません。

名義変更を行わない場合に起こり得るリスクは、以下のとおりです。

リスク 概要
不動産を売却できない 登記簿の名義人と実際の所有者が一致していないと、売買契約を締結できない
相続人が増えて権利関係が複雑になる 名義変更をしないまま次の相続が発生すると、相続人が増えて共有関係が複雑化し話し合いがまとまりにくくなる
不動産の活用や担保設定ができない 名義が現在の所有者になっていない場合は、賃貸や担保設定などの不動産活用が進められない
空き家のまま放置される 土地建物が空き家のまま放置された結果、倒壊などで被害が発生し、損害賠償が発生する

実務の現場でも「相続人が増えて全員の同意が取れなくなった」「名義変更せず空き家のまま放置してしまい、どうすれば良いかわからない」といった相談を受けることがあります。このようなトラブルを防ぐためにも、不動産の所有者が変わった場合には、早い段階で名義変更の手続きを行いましょう。

土地建物の名義変更は自分でできる?

土地建物の名義変更は、法務局に必要書類を提出すれば個人でも手続きを行うことは可能です。実際、贈与や財産分与など身内間でのやり取りについては、自分で名義変更を行う方も一定数います。

しかし、不動産の登記手続きは専門知識が求められるうえ、登記原因によって必要書類や申請方法も変わるため、一般の方にとってはハードルが高い手続きといえます。とくに、相続の場合は戸籍収集や相続人調査が必要になるほか、書類の記載ミスや不足があると法務局から補正を求められ、手続きが長引くケースも少なくありません。

実際、「自分で手続きを進めようとしたが途中でわからなくなった」「書類の不備で何度も法務局へ行くことになった」といった相談は多くあります。そのため、スムーズに名義変更を進めたい場合は、司法書士や不動産会社などの専門家に相談するのが基本となります。

もしも、諸事情によりどうしても自分で申請したいという場合は、以下のチェックリストを活用してみてください。

チェック項目 自分で手続きできる可能性が高いケース 専門家に依頼した方がよいケース
登記原因 売買・贈与など当事者が少ないケース 相続や複雑な財産分与など関係者が多いケース
関係者の人数 当事者が2人程度 相続人や共有者が複数いる
不動産の数 土地・建物が1件のみ 複数の不動産がある
登記簿の住所・氏名 現在の住所・氏名と一致している 住所変更登記や氏名変更登記が必要
必要書類の取得 印鑑証明書など比較的取得しやすい書類のみ 戸籍収集など時間がかかる書類が多い
登記識別情報(または登記済証)の有無 手元にある 紛失している
抵当権(住宅ローン)の有無 住宅ローンなどの抵当権が設定されていない 住宅ローンが完済できていない

土地建物の名義変更に関する状況が複雑な場合は、無理せず司法書士などの専門家に相談しましょう。

土地建物の名義変更でよくあるトラブル

土地建物の名義変更を進める中で、トラブルが生じることがあります。弊社の実務経験上、とくによく見られるトラブルは以下のとおりです。

  • 登記簿の住所や氏名が現在の情報と一致していない
  • 相続人同士で遺産分割の合意ができない
  • 登記識別情報(権利証)を紛失している
  • 共有名義の不動産で共有者の同意が得られない

登記簿の住所や氏名が現在の情報と一致していない

登記簿に記載されている住所や氏名が現在の情報と一致していない場合、土地建物の名義変更手続きがスムーズに進まないことがあります。

たとえば、引っ越しによって住所が変わっている場合や、結婚などで姓が変わっている場合には、登記簿の情報と現在の本人情報が一致しなくなります。このような状態のままでは所有者の同一性を確認できないため、名義変更の手続きが滞ってしまうのです。

実務では、土地建物の名義変更をするよりも先に住所変更登記や氏名変更登記を行う必要があり、その分だけ手続きが増えてしまいます。

相続人同士で遺産分割の合意ができない

相続によって土地建物を承継する場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が不動産を取得するのかについて合意する必要があります。

しかし、不動産は預貯金のように簡単に分けられる財産ではないため、「誰が土地建物を取得するのか」「売却して分けるのか」といった点で相続人同士の意見がまとまらないケースは少なくありません。

遺産分割の合意ができない場合、名義変更の手続きを進めることができず、不動産が長期間共有状態のまま放置されてしまうことがあります。

話し合いが難航している場合は、弁護士に同席してもらい、客観的なアドバイスを受けながら協議を進める方法も検討するとよいでしょう。

登記識別情報(権利証)を紛失している

土地建物の名義変更では、現在の所有者であることを証明するために、登記識別情報(権利証)が必要になる場合があります。具体的には、相続以外の理由で土地建物の名義変更をする場合に提出が求められます。

もしも登記識別情報を紛失している場合は、事前通知制度や、司法書士などによる本人確認情報の作成といった方法を利用して手続きを進めることになります。

登記識別情報を紛失していても土地建物の所有権が失われるわけではありませんが、通常よりも手続きが増えるため、名義変更に時間や手間がかかってしまいます。そのため、名義変更をする際には、登記識別情報が手元にあるかどうかを事前に確認しておきましょう。

共有名義の不動産で共有者の同意が得られない

共有名義の不動産の場合、土地建物の名義変更を行うためには共有者全員の同意を得る必要があります。

たとえば、不動産全体を売却したり、親族間で贈与をしたりする場合には、共有者の誰か一人だけの判断で手続きを進めることはできません。共有者全員が内容に同意して、はじめて名義変更の手続きを進めることができます。

しかし、共有者同士で意見が合わない場合には、手続きが進まないまま不動産が共有状態で放置されてしまうこともあります。場合によっては、共有者同士の関係が悪化し、感情的な争いに発展してしまうケースもあるため注意が必要です。

まとめ

土地建物の名義変更は、所有権移転登記という手続きによって行います。

登記の原因には、相続、売買、贈与、離婚による財産分与などさまざまなケースがあり、それぞれで手続きの流れや必要書類などに違いがあります。ただし、登記原因を整理して必要書類を準備したうえで登記申請書を作成し、法務局へ申請するという流れは共通しています。

名義変更の手続きは自分で進めることもできますが、不動産登記には専門的な知識が求められるため、実務では司法書士などの専門家に相談しながら進めるのが基本です。

とくに、共有不動産で関係者が多い場合や、不動産が複数ある場合など、権利関係が複雑なケースでは手続きの難易度が高くなります。

トラブルを防ぎながらスムーズに名義変更を進めるためにも、必要に応じて司法書士や不動産会社などの専門家に相談することを検討しましょう。

よくある質問

土地建物の名義変更にはどれくらいの費用がかかりますか?

土地建物の名義変更には、登録免許税や不動産取得税、必要書類の取得費用、司法書士報酬などがかかります。
登録免許税や不動産取得税は、固定資産税評価額に基づいて計算されます。具体的には、登録免許税は「固定資産税評価額×2%(相続は0.4%)」、不動産取得税は「固定資産税評価額×3%(軽減税率)」で税金額を計算します。
必要書類の取得費用は数千円以内、司法書士報酬は3万円〜10万円程度が目安です。

法務局で土地建物の名義変更の相談をすることはできますか?

法務局では、土地建物の名義変更に関する相談を受け付けており、登記手続きの進め方や必要書類について説明を受けられる「登記手続案内」を利用することが可能です。
登記相談は無料で利用できますが、完全予約制となっているため、事前に法務局のホームページや電話などで予約を取る必要があります。また、相談対応は平日の開庁時間内に限られる点にも注意が必要です。

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