共有持分にかかる税金を徹底解説!税金の計算方法や納付方法も紹介

共有持分にかかる税金を徹底解説!税金の計算方法や納付方法を確認しよう

不動産の共有持分にかかる税金にはさまざまな種類があるため、どのような税金がかかるのか把握したいと考えている方も多いでしょう。

共有持分にかかる税金の種類とタイミングは、以下のとおりです。

税金の種類 タイミング 連帯納税義務
固定資産税・都市計画税 不動産の共有持分を所有しているとき あり
所得税・住民税 賃貸不動産の共有持分を所有しているとき なし
不動産取得税 不動産の共有持分を取得したとき あり
贈与税 不動産の共有持分の贈与を受けたとき なし
相続税 不動産の共有持分を相続したとき あり
譲渡所得税 不動産の共有持分を売却したとき なし

連帯納付義務とは、共有者が税金を支払わなかった際に、ほかの共有者が連帯責任として代わりに税金を納めなければならないという制度です。

固定資産税・都市計画税、不動産取得税、相続税には連帯納付義務が課せられているため、ほかの共有者と連携して税金を全額納められるよう、注意しなければなりません。

また、それぞれ納税の対象となる場面や納税者が異なるため、各税金の概要をきちんと理解しておくことが大切です。

本記事では、不動産の共有持分にかかる税金の納税対象者、計算方法、納付方法、軽減措置について解説します。記事の後半では、税金を滞納した場合や連帯納税義務についても解説するので、ぜひ最後までお読みください。

目次

不動産の共有持分を所有するとかかる税金:固定資産税・都市計画税

不動産の共有持分を所有すると、固定資産税・都市計画税がかかります。

固定資産税とは、土地や建物などの不動産や償却資産の所有者に課せられる税金です。都市計画税とは市街化区域内にある土地や建物の所有者に課せられる税金です。

固定資産税・都市計画税ともに地方税であり、不動産や償却資産のある市町村(東京23区は東京都)に対して納めます。

以下では、共有持分を所有した際の固定資産税・都市計画税に関する次の項目について詳しく解説します。

  • 共有持分の固定資産税・都市計画税の計算方法
  • 共有持分の固定資産税・都市計画税の納付方法
  • 共有持分の固定資産税が免除・減免されるケース

共有持分を所有した方は参考にしてみてください。

共有持分の固定資産税・都市計画税の計算方法

固定資産税・都市計画税の税額は「固定資産税納税通知書」に記載されているため、毎年送付される書類の内容を参照すれば詳しい金額を把握できます。

事前に税額を把握しておきたい場合は、以下の計算方法で税金額を計算してみてください。

税金の種類 計算方法
固定資産税額 固定資産の評価額(課税標準額)×標準税率(基本的には1.4%だが、自治体により異なる)
都市計画税額 固定資産税評価額×税率0.3%以下(税率は自治体により異なるが、最も高い場合でも0.3%に制限されている)

自身が所有する共有持分に対する税額は、求めた固定資産税・都市計画税の税額に持分割合を掛け合わせることで算出できます。

共有持分の固定資産税・都市計画税の納付方法

固定資産税・都市計画税は、不動産の所有者に対して課せられる税金です。2人以上で不動産を共有している場合、共有者全員が固定資産税・都市計画税を納める必要があります。

各共有者は、持分割合に応じた分の固定資産税・都市計画税を支払いますが、実際に納付するのは代表者1名です。代表者が他の共有者から納める分の税金を預かり、一括して支払うことになっています。

誰が代表者になるのかは、自分たちが話し合いで決めることが可能です。話し合いで代表者を決めた場合は「共有資産代表者選定届」を役所の窓口に提出します。

一方、自分たちで代表者を決めない場合は自治体が代表者を決定します。代表者を決める基準は自治体ごとに異なりますが、以下のような基準を用いて代表者を選定していることが一般的です。

  • 課税対象の不動産や償却資産のある自治体に住んでいる人
  • 共有持分が多い人
  • 登記の記載が上位にある人

代表者が決定すると、毎年4月~5月頃に代表者に固定資産税納税通知書が送られるため、期日までに代表者がまとめて納付を行います。

なお、固定資産税・都市計画税の納付には連帯納付義務が課せられている点に注意が必要です。もしも固定資産税・都市計画税を支払えない共有者がいれば、他の共有者が肩代わりしなければなりません。

肩代わりせず、固定資産税・都市計画税の支払いを行わない場合、延滞税がかかったり資産が差し押さえられたりする可能性があるため、十分注意してください。

共有持分の固定資産税が免除・減免されるケース

共有持分の固定資産税が免除・減免されるケースとして、以下の7つが挙げられます。

  • 固定資産税の課税標準額が免税点に届かない
  • 共有持分が公園・私道になっている
  • 災害により修復できなくなった/破損した
  • 小規模住宅用地の特例の適用範囲である
  • 一定の条件を満たす新築戸建て・マンションを購入した
  • 土地を農地に転用した
  • 省エネ改修工事を行った

以下では、それぞれのケースで免除・減免される理由や仕組みについて見ていきましょう。

固定資産税の課税標準額が免税点に届かない

固定資産税の課税標準額が免税点に届かない場合、固定資産税の課税対象にはなりません。

免税点とは、固定資産税の課税標準額が課税対象であるかそうでないかの基準となる金額のことです。

たとえば免税点が30万円だとすると、固定資産税の課税標準額が30万円以上であれば固定資産税の課税対象ですが、30万円に達しない場合は課税対象にはなりません。

具体的には、同じ市町村の中で、同一人物が所有する固定資産税の課税標準額がそれぞれ次の額に満たない場合、固定資産税の支払いが免除されます。

  • 土地:30万円
  • 家屋:20万円
  • 償却資産:150万円

共有持分が公園・私道になっている

所有している共有持分が公園や私道など、公益性の高い用途に使用されている場合、固定資産税が非課税になるケースがあります。

そもそも、地方公共団体や学校法人などが所有している不動産は、本来の目的通りに運用されていれば固定資産税が非課税です。

その基準を私人が所有する不動産にも当てはめることで、所有している共有持分が公園や私道などに使用されている場合に、固定資産税が非課税になるケースがあるのです。

ただし、私道として認められるためには申告が必要です。私道と認められる土地を所有している場合、自治体ごとに定められている要件を確認したうえで、申告するようにしてください。

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災害により修復できなくなった/破損した

災害により固定資産が修復できなくなったり一部が破損したりした場合には、災害発生日以降の固定資産税が免除・減免される制度があります。

たとえば地震や台風、水害、火災などの被害を受けた場合などが該当します。

災害による減免制度を適用するためには、各自治体に対する申請が必要です。自動的に減免が適用されるわけでないため、注意しておきましょう。

制度の詳細は自治体によって異なるため、固定資産のある自治体のホームページを確認してみてください。

小規模住宅用地の特例の適用範囲である

小規模住宅用地の特例とは、住宅用地に対して課税される固定資産税や都市計画税が減税される制度のことです。

軽減割合は、以下のように住宅用地の面積によって異なります。

税金 住宅の範囲 軽減割合
固定資産税 200㎡以下の部分 課税標準の1/6
200㎡超の部分 課税標準の1/3
都市計画税 200㎡以下の部分 課税標準の1/3
200㎡超の部分 課税標準の2/3

たとえば住宅用地が300㎡の場合、200㎡の部分は1/6、残り100㎡の部分は1/3の軽減割合が適用されます。

小規模住宅用地の特例には期限が定められていないため、住宅用地として使用し続ける限り、税金の軽減を適用し続けることが可能です。

土地を農地に転用した

農地にかかる固定資産税の計算方法には、大きく分けて「農地課税」と「宅地並み課税」の2種類があります。

農地の税金の種類 概要
農地課税 その土地が今後も農地として活用されることを見越した課税方法
宅地並み課税 その土地が将来農地から宅地に転用されることを見越した課税方法

宅地並み課税に該当するのは、市街化区域内に所在する農地で、生産緑地をしなかった場合です。それ以外の場合は農地課税に該当します。

農地課税における固定資産税評価額は、その農地が農作物を収穫することで得られる利益を基準に決められるため、通常の土地と比べて固定資産税評価額が低くなるのです。

そのため、使用していない土地を農地に転用することで、大幅に固定資産税額を減らせる可能性があります。

省エネ改修工事を行った

省エネ改修工事を行うことで、その住宅にかかる固定資産税が減額されます。

具体的には、改修工事が完了した年の翌年度分の固定資産税に限って、その住宅の一戸につき120㎡の床面積相当分までの固定資産税額が1/3減額されます。

固定資産税の減額措置が適用されるためには、以下の6つの要件を全て満たす必要があります。

  1. 平成26年4月1日以前からある住宅であること。
  2. 居住部分の割合が当該家屋の1/2以上あること(ただし、家屋の賃貸部分は減額になりません)。
  3. 令和4年4月1日から令和8年3月31 日までの間に、次の①から④までの工事のうち、①を含む工事を行うこと。(①の工事は必須です)。
    ① 窓の断熱改修工事(二重サッシ化、複層ガラス化など)
    ② 床の断熱改修工事
    ③ 天井の断熱改修工事
    ④ 壁の断熱改修工事
    注)①から④までの改修工事により、それぞれの部位が現行の省エネ基準に新たに適合することが必要になります。
  4. 当該家屋の床面積が50㎡以上280㎡以下であること。
  5. 改修工事に要した費用の額が次のいずれかに当てはまること。
    ① 断熱改修に係る工事費が60万円超
    ② 断熱改修に係る工事費が50万円超であって、太陽光発電装置、高効率空調機、高効率給湯器、太陽熱利用システムの設置に係る工事費と合わせて60万円超
    ※ 国又は地方公共団体からの補助金等の交付等がある場合には、当該改修工事に要した費用の額から補助金等の額を控除した額が、一戸あたり60万円を超えていることが必要です。
  6. 耐震基準適合住宅に係る減額等の適用中でないこと(この減額と重複して適用することができないため。)。
    (引用:省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額|東京都主税局

減額されるためには、納税者本人が改修工事の完了から3ヶ月以内に申告することが必要であるため、早めに申告するようにしてください。

賃貸不動産の共有持分を所有するとかかる税金:所得税・住民税

賃貸不動産の共有持分を所有すると賃貸収入として不動産所得が入ってくるため、確定申告をしたうえで所得税と住民税を納付する必要があります。

所得税・住民税は賃貸収入で得た金額に応じて、各共有者が負担します。固定資産税とは異なり、各共有者が毎年確定申告を行ったうえで個別に納付しなければなりません。

ここでは、賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税に関する以下の項目について解説します。

  • 賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税の計算方法
  • 賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税の納付方法
  • 賃貸不動産の共有持分における所得税の軽減措置

賃貸不動産の共有持分を所有している方は、ぜひ参考にしてみてください。

賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税の計算方法

賃貸不動産の共有持分における所得税は、持分割合に応じて受け取った賃貸収入と以下の表をもとに計算を行います。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円 5% 0円
1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円〜6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円〜8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円〜17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

たとえば持分割合に応じて受け取った賃貸収入が200万円の場合、所得税は以下のとおりに計算します。

200万円×10%(税率)- 97,500円 = 102,500

住民税の計算方法は以下のとおりです。

課税所得×税率(区市町村民税6%+道府県民税・都民税4%=10%)

たとえば持分割合に応じて受け取った賃貸収入が200万円の場合、住民税は以下のとおりに計算します。

200万円×10%(税率)= 20万円

賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税の納付方法

賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税の納付方法について解説します。所得税と住民税で納付方法が異なるため、それぞれの納付方法に分けて見ていきましょう。

所得税の納付方法

所得税は、持分割合に応じて受け取った賃貸収入をもとに共有者がそれぞれ計算し、確定申告も各共有者が個別で行います

確定申告は、毎年2/16から3/15までに行う必要があるため、期限に遅れないように注意してください。

確定申告後の所得税には、複数の納付方法があります。それぞれの納付方法のメリットとデメリットを以下の表にまとめました。

納付方法 メリット デメリット
金融機関の口座からの振替納税 ・手数料不要
・一度手続きをすれば、翌年以降の手続き不要
・他の方法は3/15が納付期限だが、口座振替は4月頃の引き落とし
・納付期限までに預貯金口座振替依頼書の提出が必要
・残高不足により延滞税が課せられる可能性がある
e-Taxによるダイレクト納付 ・手数料不要
・どこでも納付手続きができる
・納付が可能になるまで1週間~1ヶ月ほどの時間がかかる
・e-Taxの操作に慣れる必要がある
・領収書が発行されない
インターネットバンキング・ATM納付 ・手数料不要
・金融機関の時間外でも手続きが可能
・e-Taxの利用開始手続が必要
・領収書が発行されない
クレジットカードを利用した納付 ・どこでも納付手続きができる
・分割払い・リボ払い等が選択可能
・事前の準備が必要ない
・決済手数料がかかる
・領収書が発行されない
QRコード(※)を利用した
コンビニエンスストアでの納付
・手数料不要
・事前の準備が必要ない
・買い物と同時に済ませられる
・利用できるコンビニが限られる
・30万円以上の納付は一度で済ませられない
スマホアプリを使った納付 ・どこでも納付手続きができる
・分割払い・リボ払い等が選択可能
・事前の準備が必要ない
・残高の事前チャージが必要
・領収書が発行されない
・30万円以上の納付は一度で済ませられない
金融機関・税務署の窓口での現金納付 ・手数料不要 ・窓口の開いている時間に、窓口まで出向く必要がある

(※)QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

住民税の納付方法

住民税は、提出した確定申告書に基づいて市区町村が計算を行うため、申告は不要です。

住民税の納付方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。

特別徴収は給与所得者に適用される納付方法で、6月から翌年5月まで毎月の給料から住民税が天引きされます。

一方、普通徴収は個人事業主などに適用される納付方法で、自治体から送付される納税通知書に基づいて、4回にわたって支払いを行います。

賃貸不動産の共有持分における所得税の軽減措置

賃貸不動産の共有持分における所得税の軽減措置には、以下のようなものがあります。

  • 認定長期優良住宅に関する特例措置
  • 住宅借入金等特別税額控除
  • 住宅借入金等特別控除

それぞれの軽減措置の内容や適用される条件などについて、以下で詳しく見ていきましょう。

認定長期優良住宅に関する特例措置

認定長期優良住宅に関する特例措置とは、以下のような場合に所得税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税が軽減される制度です。

  • 一定の要件を満たした認定長期優良住宅を新築する
  • 建築後未使用の認定長期優良住宅を購入する
  • 認定低炭素住宅を新築・購入する

所得税に対する措置は、住宅の性能強化に必要となる費用の10%を最大65万円の範囲で所得税額から控除するという内容です。

特例措置の適用を受けるためには、確定申告の際に次の書類を税務署に提出する必要があります。

  • 認定住宅等新築等特別税額控除額の計算明細書
  • 登記事項証明書
  • 請負契約書又は売買契約書の写し
  • 長期優良住宅認定通知書の写し
  • 住宅用家屋証明書又は認定長期優良住宅建築証明書

参考:認定長期優良住宅に対する税の特例(所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税)|国土交通省

このうち、住宅用家屋証明書は後ほど説明する登録免許税の軽減措置を適用する場合にも必要な書類であるため、写しを司法書士などから手に入れておくと良いでしょう。

また、認定長期優良住宅建築証明書は、建築士事務所所属の建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関に発行を依頼できます。

ただし、認定長期優良住宅に関する特例措置は、後述する住宅借入金等特別税額控除とは併用できないため、注意してください。

住宅借入金等特別税額控除

住宅借入金等特別税額控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得したり、増改築したりした場合に、各年末の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間にわたり所得税額等から控除できる制度です。

住宅の区分や住み始めた年による控除期間や控除限度額の違いを以下の表にまとめていますので、参考にしてみてください。

住宅の区分 居住の用に供した年 控除期間 控除限度額
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 令和4・5年 13年 35万円
令和6・7年 13年 31.5万円
特定エネルギー消費性能向上住宅 令和4・5年 13年 31.5万円
令和6・7年 13年 24.5万円
エネルギー消費性能向上住宅 令和4・5年 13年 28万円
令和6・7年 13年 21万円
一般の新築住宅 令和4・5年 13年 21万円
令和6・7年 10年 14万円

参考:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

住宅借入金等特別控除

住宅借入金等特別控除とは、中古住宅を取得して令和4年以降に住み始めた場合に、各年末の住宅ローン残高の0.7%を最大10年間にわたり所得税額等から控除できる制度です。

住宅の区分や住み始めた年による控除期間や控除限度額の違いを以下の表にまとめていますので、参考にしてみてください。

住宅の区分 居住の用に供した年 控除期間 控除限度額
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
特定エネルギー消費性能向上住宅
エネルギー消費性能向上住宅
令和4〜7年 10年 21万円
一般の新築住宅 令和4〜7年 10年 14万円

(参考:No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

不動産の共有持分を取得した時にかかる税金:不動産取得税

不動産の共有持分を取得した時には、不動産取得税がかかります。共有不動産の場合は、共有持分を取得した人全員が課税対象です。

売買や新増改築のみならず、贈与、交換などにより不動産を取得した人も不動産取得税を支払う必要があります。不動産取得税には連帯納税義務があるため、支払いを拒否する共有者がいた場合、ほかの共有者が代わりに税金を納めなければなりません。

固定資産税・都市計画税や所得税・住民税とは異なり、不動産を取得した際に一度だけ課税される点が特徴です。

以下では、共有持分の不動産取得税に関する以下の項目について詳細に解説します。

  • 共有持分の不動産取得税の計算方法
  • 共有持分の不動産取得税の納付方法
  • 共有持分の不動産取得税の軽減措置:認定長期優良住宅に関する特例措置

それぞれの内容について見ていきましょう。

共有持分の不動産取得税の計算方法

共有持分の不動産取得税は、次の式で計算できます。

不動産取得税額=不動産の課税標準額×税率

課税標準額とは不動産の価格のことであり、売買時の価格ではなく固定資産税評価額を用いて計算します。

なお、宅地及び宅地評価された土地を令和9年3月31日までに取得した場合、その土地の課税標準額は、土地価格の1/2となります。

加えて、住宅は建築経過年数に応じて固定資産税評価額から一定の控除を受けられます(新築は1,200万円)。

不動産取得税の税率は以下のとおりです。

  • 土地・家屋(住宅):3%
  • 家屋(非住宅):4%

税率は原則として4%なのですが、令和9年3月31日までに取得した土地・家屋(住宅)は、3%の軽減措置が受けられます。

共有持分の不動産取得税の納付方法

共有持分の不動産取得税は、自治体ごとに決められた期限内に申告をする必要があります。申告内容に基づいて自治体から納税通知書と納付書が送付されるため、それをもとに支払を行いましょう。

納税通知書は共有者全員に送られますが、納付書は代表者一人に送られるため、各共有者から不動産取得税の負担額を集めて支払うようにしてください。

なお、不動産取得税は、共有者全員での連帯納付が義務付けられています。もしも不動産取得税を負担しない共有者がいる場合、他の共有者が肩代わりしなければなりません。

自分の負担分でなくても未払いの不動産取得税がある場合、最悪のケースでは財産を差し押さえられてしまうため、まずは不動産取得税の支払いを済ませるようにしてください。

共有持分の不動産取得税の軽減措置

共有持分の不動産取得税の軽減措置として、以下の3つの制度が挙げられます。

  • 新築住宅の取得に適用される軽減措置
  • 中古住宅の取得に適用される軽減措置
  • 認定長期優良住宅に関する特例措置

それぞれの制度について、以下で見ていきましょう。

新築住宅の取得に適用される軽減措置

新築住宅を取得する際、住宅の課税標準額から1,200万円の控除を受けられます

控除を受けるには、床面積に関する以下の要件を満たす必要があります。

一戸建 一戸建以外
貸家以外 50㎡以上240㎡以下 50㎡以上240㎡以下
貸家 50㎡以上240㎡以下 40㎡以上240㎡以下

中古住宅の取得に適用される軽減措置

中古住宅を取得する際も、以下の要件を満たすことで一定額の控除を受けられます。

  • 取得時の現況が住宅であること
  • 個人が自己の居住用に取得したものであること
  • 床面積が50㎡以上240㎡以下であること
  • 新耐震基準を満たしていること

控除額は新築された日によって以下のように異なります。

新築された日 控除額
昭和51年1月1日〜昭和56年6月30日 350万円
昭和56年7月1日〜昭和60年6月30日 420万円
昭和60年7月1日〜平成元年3月31日 450万円
平成元年4月1日〜平成9年3月31日 1,000万円
平成9年4月1日以後 1,200万円

認定長期優良住宅に関する特例措置

認定長期優良住宅に関する特例措置とは、一定の要件を満たす住宅(認定長期優良住宅)を新築した場合、住宅の課税標準額から受けられる控除が1,200万円から1,300万円に増額される特例です。

不動産取得税において、認定長期優良住宅に関する特例措置を適用するための要件は以下のとおりです。

  • 令和8年3月31日までに新築した住宅であること(または新築未使用の住宅を購入すること)
  • 長期優良住宅の普及の促進に関する法律で定められている認定長期優良住宅であること
  • 床面積が50㎡以上240㎡以下であること

不動産の共有持分の贈与を受けた時にかかる税金:贈与税

贈与税とは個人から贈与を受けて財産を取得した際に課される税金であり、不動産の共有持分の贈与を受けた際には贈与税が発生します。贈与税は、贈与を受けた本人が支払います。

なお、共有者の1人が共有持分の放棄を行い、他の共有者が共有持分を取得したときにも贈与税の支払いが必要です。放棄した持分は、持分割合に応じて他の共有者で分け合うことになるのですが、所有権の移転は贈与とみなされるため、共有持分の放棄でも贈与税が発生します。

ここでは、共有持分の贈与を受けた時にかかる贈与税について、以下の項目に沿って解説します。

  • 共有持分の贈与税の計算方法
  • 共有持分の贈与税の納付方法
  • 共有持分の贈与税の軽減措置:配偶者控除

共有持分の贈与税の計算方法

共有持分の贈与税は、以下の計算式で算出します。

課税価格(不動産の価格(固定資産税評価額×受け取る共有持分)ー基礎控除110万円)×税率ー控除額

基礎控除とは、課税標準額から無条件で差し引くことができる控除制度のことです。贈与税の場合、贈与によって取得した共有持分が110万円以下なら課税されず、申告も必要ありません。

税率と控除額は、課税価格の金額により以下のように定められています。

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

共有持分の贈与税の納付方法

共有持分の贈与税の納付は、贈与を受けた翌年の2/1から3/15までに申告・納税を行う必要があります。

申告は、e-Taxを利用する方法のほか、郵便や信書便での送付、税務署の時間外収受箱への投函などの方法があります。

納付方法は所得税の納付方法と同じく、次のような方法があります。

  • 金融機関の口座からの振替納税
  • e-Taxを利用した電子納税
  • インターネットバンキング・ATM納付
  • クレジットカードを利用した納付
  • QRコード(※)を利用したコンビニエンスストアでの納付
  • スマホアプリを使った納付
  • 金融機関・税務署の窓口での現金納付
    (※)QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

詳しくは「所得税の納付方法」を参考にしてみてください。

共有持分の贈与税の軽減措置:配偶者控除

共有持分の贈与税には、夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除が適用できます。

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除とは、以下の要件を満たした場合に、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで控除できる特例です。

  • 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に行われた贈与である
  • 配偶者から贈与された財産が居住用不動産である、または居住用不動産を取得するための金銭である
  • 贈与を受けた年の翌年3/15までに、贈与により取得した居住用不動産、または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に贈与を受けた者が住み、今後も引き続き住む見込みである

特例を受けるためには、贈与税の申告書に以下の書類の添付が必要です。

  • 戸籍の謄本または抄本(贈与を受けた日から10日後以降に作成されたもの)
  • 戸籍の附票の写し(贈与を受けた日から10日後以降に作成されたもの)
  • 居住用不動産の登記事項証明書(贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証する書類)
  • 居住用不動産を評価した評価明細書などの書類

参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

不動産の共有持分を相続した時にかかる税金:相続税

不動産の共有持分を相続したときには、相続税がかかります。

相続税は共有持分を相続した人が支払います。共有持分を相続した人が複数人いる場合は、それぞれの相続人が相続税を納めます。

ここでは、共有持分にかかる相続税について、以下の項目に沿って解説します。

  • 共有持分の相続税の計算方法
  • 共有持分の相続税の納付方法
  • 共有持分の相続税の軽減措置

各項目について以下で見ていきましょう。

共有持分の相続税の計算方法

共有持分の相続税は、建物や土地の固定資産税評価額に共有持分を乗じて計算します。

たとえば固定資産税評価額が3,000万円の共有不動産を2人の相続人で1/2ずつ相続する場合、1人あたりの相続財産額は1,500万円となります。

ただし、相続税は共有不動産のみでなく、ほかに相続する遺産もまとめて計算を行います。相続税の計算をする手順は以下のとおりです。

  1. 共有不動産を含め、課税対象となる遺産総額を調査する
  2. 法定相続分で各相続人の相続税を計算して合算する
  3. 実際の相続割合を元に各相続人の相続税額を算出する

共有持分の相続税の計算方法は非常に複雑であるため、誤りがないように進めるためにも税理士に相談するのがおすすめです。

詳しい計算方法が知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

共有持分の相続税の納付方法

共有持分の相続税の申告と納付は、基本的に相続人が個別で行うのですが、代表者が全員の分をまとめて支払っても問題ありません。

なお、相続税には連帯納付義務があるため、一緒の相続人が相続税を支払わなかったときは、ほかの相続人が肩代わりする必要があります。

相続税の申告と納付の流れは、次のとおりです。

  1. 相続税の申告対象であるかどうかを確認する
  2. 相続税の計算をして税務署に申告する
  3. 相続開始の日の翌日から10ヶ月以内に納付を行う

詳しい納付方法は、以下の記事を参考にしてください。

共有持分の相続税の軽減措置

共有持分の相続税に適用できる軽減措置は、以下の表のとおりです。

軽減措置 概要 軽減額/軽減割合
配偶者の税額の軽減 配偶者が相続人になった際に、相続税の負担を減らせる制度 法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までの相続分については、相続税がかからない
未成年者の税額控除 相続人が未成年者の場合に、相続税の負担を減らせる制度 相続開始時に未成年である相続人が18歳になるまでの年数に応じて、1年につき10万円(特別障害者である場合は1年につき20万円)が相続税額から控除される
障害者の税額控除 相続人が障害者の場合に、相続税の負担を減らせる制度 相続開始時に障害者である相続人が85歳になるまでの年数に応じて、1年につき10万円(特別障害者である場合は1年につき20万円)が相続税額から控除される
相次相続控除 短期間で連続して相続が発生した場合に相続税の負担を減らせる制度 前回の相続から10年以内に再度相続が発生した場合、前回の相続で支払った相続税の一部を今回の相続税額から控除される
小規模宅地等の特例 被相続人の居住用または事業用の土地について、相続税評価額を減額される制度 一定の要件を満たす場合に、居住用宅地は330平方メートルまで80%減額、事業用宅地は400平方メートルまで80%または200平方メートルまで50%減額される
地積規模の大きな宅地の評価 広大な宅地についての相続税評価額を減額される制度 500平方メートル以上の宅地で、一定の要件を満たす場合に相続税評価額が減額される
外国税額控除 国外の財産を相続した場合に、その財産に対して支払った外国の相続税を日本の相続税から控除される制度 外国で支払った相続税額を日本の相続税額から差し引くことが可能

軽減措置の詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。

不動産の共有持分を売却した時にかかる税金:譲渡所得税

不動産の共有持分を売却した時には、譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税は、共有持分の譲渡によって所得を得た人が支払います。連帯納付義務はないため、所得を得た本人が支払わなかったとしても、ほかの共有者に影響が及ぶことはありません。

ここでは、共有持分にかかる譲渡所得税について、以下の項目に沿って解説します。

  • 共有持分の譲渡所得税の計算方法
  • 共有持分の譲渡所得税の納付方法
  • 共有持分の譲渡所得税の軽減措置

各項目について以下で見ていきましょう。

共有持分の譲渡所得税の計算方法

共有持分の譲渡所得税の計算は、以下の流れで行います。

  1. 譲渡所得を持分割合で分け、課税譲渡所得を算出する
  2. 共有持分の保有期間に応じて決められた税率をかける

以下で、詳細な計算方法を解説します。

1.譲渡所得を持分割合で分け、課税譲渡所得を算出する

まずは、以下の式を用いて譲渡所得を算出します。

課税譲渡所得=(売却価格ー取得費ー譲渡費用)×共有持分割合

それぞれの費用の項目について、以下で簡単に説明します。

項目 概要
売却価格 共有持分の売却により得た金額
取得費 売却した共有持分を取得したときにかかった金額
譲渡費用 共有持分の売却時にかかった金額

取得費は共有持分の購入価格のほか、購入時の仲介手数料や印紙代、司法書士への報酬、登録免許税、不動産取得税などが該当します。

譲渡費用は、売却時の仲介手数料や印紙税、建物の取り壊しにかかった解体費用、建物の損失額などです。

共有不動産全体の譲渡所得が計算できたら、共有持分割合を乗算します。たとえば夫婦で50%ずつ所有していた不動産を売却した際の譲渡所得が3,000万円だった場合、夫婦の譲渡所得はそれぞれ1,500万円ずつになります。

算出した各共有者の譲渡所得から、軽減措置により控除される分を差し引いた金額が課税譲渡所得です。

2.共有持分の保有期間に応じて決められた税率をかける

譲渡所得税は、課税譲渡所得に税率をかけることで計算できます。譲渡所得税の税率は、共有持分の保有期間に応じて次のように定められています。

売却した年の1月1日時点での保有期間 所得税 住民税
5年以下(短期譲渡所得) 30% 9%
5年超(長期譲渡所得) 15% 5%

また、2037年までの間には復興特別所得税として「課税所得税×2.1%」が付加されます。

たとえば長期譲渡所得が3,000万円の場合、譲渡所得税は次のように計算できます。

  • 所得税:3,000万円×15%=450万円
  • 復興特別所得税:450万円×2.1%=9万4,500円
  • 住民税:3,000万円×5%=150万円

共有持分の譲渡所得税の納付方法

譲渡所得がある場合には、確定申告が必要です。確定申告は、共有者それぞれが譲渡のあった翌年2/16〜3/15の間に行う必要があります。

詳しい納税方法は、「賃貸不動産の共有持分における所得税・住民税の納付方法」を参考にしてみてください。

共有持分の譲渡所得税の軽減措置

共有持分の譲渡所得税の軽減措置として、以下の4つの制度が挙げられます。

  • 譲渡所得税の特別控除
  • 10年超所有軽減税率特例
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
  • 固定資産の交換の特例

それぞれの軽減措置の内容について、以下で見ていきましょう。

譲渡所得税の特別控除

譲渡所得税には、以下の表に示したように7つの特別控除が設けられており、最大で合計5,000万円まで控除を受けられます

特別控除の種類 概要
公共事業などのために土地や建物を売ったときの特例 土地収用法などの法律で収容が認められている公共事業のために土地や建物を売った場合に譲渡所得から5,000万円を控除できる特例
マイホームを売ったときの特例 居住用財産を売ったときに、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例
特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除 特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合、譲渡所得から2,000万円を控除できる制度
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除 特定住宅地造成事業などのために土地を売却した場合、譲渡所得から1,500万円を控除できる制度
平成21年および平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除 平成21年及び平成22年に取得した土地を売却した場合、譲渡所得から1,000万円を控除できる制度
農地保有合理化等のために農地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除 農地保有合理化などのために農地を売却した場合、譲渡所得から800万円を控除できる制度
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除 都市計画区域内にある低未利用土地などを500万円以下(800万円以下の場合あり)売却した場合、譲渡所得から100万円を控除できる制度

参考:No.3223 譲渡所得の特別控除の種類|国税庁

それぞれの特別控除の適用を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。国税庁のホームページを確認したり専門家に相談したりして、特別控除を受けられるかどうかを確認してみてください。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

上記に記した「譲渡所得税の特別控除」のうち、利用される頻度の多い特例が「マイホームを売ったときの特例(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)」です。

「マイホームを売ったときの特例」が適用されるためには、次の要件を満たすことが必要です。

  1. 居住用の土地や建物であること、または住まなくなってから3年が経過した年の12/31までに売ること
  2. 売った年の前年と前々年に、この特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
  3. 売った年とその前年、前々年に、買い換え特例の適用を受けていないこと
  4. 売った建物や敷地などについて、他の特例の適用を受けていないこと
  5. 災害により建物を取り壊した場合、その敷地に住まなくなった日から3年が経過する日の属する12/31までに売ること
  6. 売り手が親子や夫婦などの特別な関係でないこと

参考:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

なお、この特例を受けるためだけに入居したとされる家屋や、一時的な入居を目的とした家屋、別荘など趣味を目的としている家屋は適用外となります。

10年超所有軽減税率特例

10年超所有軽減税率特例とは、マイホームを売却した際に、以下の要件を満たすことで、譲渡所得税について軽減税率が適用される特例です。

  1. 居住用の土地や建物であること、または住まなくなってから3年が経過した年の12/31までに売ること
  2. 売った年の1/1時点で、所有期間が10年を超えていること
  3. 売った年の前年と前々年にこの特例の適用を受けていない。
  4. 売った建物や敷地などについて、他の特例の適用を受けていない。
  5. 売り手が親子や夫婦などの特別な関係でない

適用される軽減税率は、次の表のとおりです。

課税譲渡所得金額 税率
6,000万円以下 課税譲渡所得金額×10%
6,000万円超 (課税譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円

特例の適用を受けるためには、確定申告書に以下の2つの書類を添付して提出する必要があります。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 売った居住用家屋やその敷地の登記事項証明書

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは、被相続人が住んでいた建物やその敷地を売却し、以下の要件に当てはまる場合は、譲渡所得から最高3,000万円の控除を受けられる制度です。

項目 内容
建物の要件 ・昭和56年5月31日以前に建築された
・区分所有建物登記がされている建物でない
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかった
土地の要件 相続の開始の直前に被相続人が住む建物の敷地として使われていた土地
売却時の要件 1.売った人が相続や遺贈により被相続人が住んでいた建物やその敷地を得たこと
2.次の(1)(2)または(3)で売却すること
(1)相続や遺贈により取得した被相続人が住んでいた建物を売却するか、被相続人が住んでいた建物とその敷地を売却する
(2)相続や遺贈により取得した被相続人が住んでいた建物を取り壊した後に、その敷地を売却する
(3)相続や遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売却する
3.相続開始があった日から3年が経過した年の12/31までに売ること
4.売却代金が1億円以下であること
5.売った建物や敷地について、他の特例の適用を受けていないこと
6.同じ被相続人から相続や遺贈で取得した被相続人の住んでいた建物やその敷地について、この特例の適用を受けていないこと
7.買い手が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと

参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

固定資産の交換の特例

固定資産の交換の特例とは、土地と土地、建物と建物のように、同じ種類の固定資産同士を交換した際には譲渡がなかったものとする特例です。

譲渡がなかったものとされることで、譲渡所得税の課税を避けることができます。

ただし、交換する固定資産に金銭的差額が生じるなどして交換差金を受け取った場合は譲渡所得に該当するため、所得税が課税される点に注意してください。

まとめ

共有持分にかかる税金には、以下のように多くの種類があります。

  • 固定資産税・都市計画税:不動産の共有持分を所有するのみで発生
  • 所得税・住民税:賃貸不動産の共有持分を所有して賃貸収入を得ると発生
  • 不動産取得税:不動産の共有持分を取得すると発生
  • 贈与税:不動産の共有持分の贈与を受けると発生
  • 譲渡所得税:不動産の共有持分を売却して売却益を得ると発生

税金の種類によって発生するタイミングや納税対象者が異なるため、共有持分を所有する場合はあらかじめ把握しておきましょう。

しかし、各税金の計算方法や納付方法、軽減措置などの細かい情報まですべてを把握するのは難しいため、本記事をブックマークし、いつでも見返せる状態にしておくことをおすすめします。

適用できる軽減措置には細かなルールが多く設けられているため、税金を支払う際にその都度チェックするようにしてみてください。

また税金によっては連帯納付義務が課せられている場合があります。連帯納付義務があるとほかの共有者が税金を支払わなかったときに、別の共有者が肩代わりしなければなりません。

そのため、共有持分を所有するメリットがとくに感じられない場合、売却を検討するのも一つの手段です。

株式会社クランピーリアルエステートでは、共有持分の高価買取が可能です。買取実績も豊富で、多くのお客様からご相談いただいています。また、弁護士とも連携しており、共有者間でのトラブルにもしっかり対応できます。
共有持分の買取に関してはこちら

不動産の共有持分に関するよくある質問

不動産の共有持分に関して、よくある質問は以下のとおりです。

  • 確定申告に必要な書類は何ですか?
  • 共有持分の税金を滞納したらどうなりますか?
  • 共有者が税金の支払を拒否したときはどのように対処すれば良いですか?

確定申告に必要な書類は何ですか?

所得税の確定申告をする際に必要な書類は以下のとおりです。

  • 確定申告書B様式(第一表)
  • 確定申告書第三表(分離課税用)
  • 本人確認書類
  • 源泉徴収票

譲渡所得の確定申告をする場合、追加で以下の書類を提出する必要があります。

  • 不動産購入時・売却時の売買契約書の写し
  • 譲渡所得の内訳書
  • 譲渡費用(仲介手数料など)や取得費用が分かる領収証の写し
  • 登記事項証明書

書類の提出漏れがあると再提出を求められるため、間違いなく提出するようにしましょう。

共有持分の税金を滞納したらどうなりますか?

共有持分にかかる税金を滞納したら、延滞税が加算される恐れがあります。

延滞税率は、以下の表のとおり、納付期限の翌日から1ヶ月をすぎると延滞税の税率が高くなるため注意が必要です。

納付の遅れた期間 延滞税率
納付期限から2ヶ月以内 年7.3%、または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合
納付期限から2ヶ月超 年14.6%、または延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合

(参考:No.9205 延滞税について|国税庁

また、税金を滞納すると納付期限の20日後までに納税を求める督促状が送られます

督促状が送られても納税されない場合、電話や文書、訪問による督促がされるほか、差し押さえをするための財産・人物の調査が行われます。

そして、数度にわたる督促でも納税をしなければ、差し押さえになります。

滞納者が所有している土地や建物などの不動産や金融資産などが差し押さえの対象です。差し押さえられた財産は公売にかけられて未払い分の納税に充てられます。

共有者が税金の支払を拒否したときはどのように対処すれば良いですか?

連帯納税義務がある税金の支払いを共有者が拒否している場合、ほかの共有者が税金を肩代わりしなければなりません

もしも税金を滞納している状態が続くと、最終的にほかの共有者の財産までも差し押さえの対象となってしまいます。

連帯納税義務とは、他の共有者が税金を納めていない場合、他の共有者にも連帯責任として納税の義務が課せられる制度のことです。

具体的には、共有持分の固定資産税・都市計画税、不動産取得税、相続税に連帯納税義務が課せられています。

なお、肩代わりした税金の分は、あとから求償権を行使して支払わせることが可能です。

詳しい対処法は以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。

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