私道持分がない土地の売却方法とは?売却しにくい理由についても解説

売却しにくい理由についても解説

「私道持分がない土地は売却できるの?」

私道持分がない土地を持っている方は、このような疑問や希望を持っているかもしれません。

結論から言えば、私道持分がない土地は通常の土地に比べると売却しにくいのですが、売れにくいと言われている私道持分なしの土地も適切な方法を選択すれば売却することが可能です。

そもそも、私道持分がない土地は、以下の理由から通常の土地に比べると売却しにくい傾向にあります。

  • 私道の通行に他の共有者の許諾や通行料が必要
  • 工事をする際には他の共有者の許諾や承諾料が必要
  • 資産価値が低いので住宅ローンを組めない可能性がある
  • 私道の維持費負担をめぐるトラブルが起きる可能性がある

特に、私道の通行や工事が自由にできない点が大きなデメリットになるため、私道持分がない土地は購入を避けられる傾向にあるのです。

そこで、以下の方法を選択すれば相場に近い価格で売却できる可能性があります。

  • 私道持分の取得後に売却する
  • 通行・工事に関する許諾を得てから売却する
  • 訳あり物件専門買取業者に売却する

特に、訳あり物件専門買取業者に売却する方法は、他の2つの方法に比べて手間や費用が少なく済むため、簡単にすぐに売却したい方におすすめの方法です。私道持分がない土地を持っている方は、ぜひ訳あり物件専門買取業者への売却を検討してみてください。

本記事では、私道持分がない土地の売却方法について、私道持分がない土地が売れにくい理由に触れながら解説します。そもそも、私道持分がない土地とはどういう土地なのかも解説していますので、あわせて確認してみてください。

私道とは

道路には、大きく分けて、公道と私道の2種類があります。公道とは国・自治体により所有・管理が行われる道路のことで、原則として誰でも通行可能です。一方、私道とは個人や団体などの民間により所有・管理が行われる道路のことで、所有者に許可された人でないと通行できない場合が多くあります。

建築基準法上、私道には次の3種類があります。

  • 法42条1項3号道路
  • 法42条1項5号道路
  • 法42条2項道路

それぞれの私道の定義について、以下で確認してみましょう。

法42条1項3号道路

法42条1項3号道路とは、建築基準法の基準が作られる前に存在していた道のうち、4m以上の幅員がある道路のことです。「既存道路」と呼ばれることもあります。

(道路の定義)
第四十二条
三 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道

法42条1項5号道路

法42条1項5号道路とは、都道府県知事や市町村長などの特定行政庁から指定を受けた道路のことであり、位置指定道路と呼ばれます。幅員4m以上、アスファルト舗装などの条件を満たすことで認められます。

第四十二条
五 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの

法42条2項道路

法42条2項道路とは、幅員が4m未満で、特定行政庁による指定を受けた道路を指します。原則として、建築基準法において「道路」と認められるためには、4m以上の幅員が必要です。しかし、幅員が4m未満の道路を特定行政庁が例外的に「道路」とみなすことで、その道路に接した土地にも建物が建てられるようになるのです。

法42条2項道路では、道路の中心線から2mまでの範囲が道路としてみなされます。そのため、私有地であっても道路の中心線から2mまでの範囲には建物が建築できず、セットバックを行う必要があるのです。

第四十二条
2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。

私道持分とは

私道持分とは、土地の所有者が自身の土地に接している私道に対して持っている所有権の割合のことです。私道持分には、私道を複数人で所有する共同所有型と、分筆した私道を各々の所有者が単独所有する相互持合い型の2種類があります。共同所有型では土地を活用したり売却したりするのに他の共有者の合意を得る必要があり、共有者同士で良好な関係を築くことが求められます。一方、相互持合い型は自分が所有権を持っている部分は管理しやすくなりますが、自分が所有権を持たない部分を通行する場合には他の所有者の許可が必要になるのです。

私道持分に関する詳細は以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてみてください。

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私道持分の調査は役所か公図で確認する

自身の土地に私道持分が付いているかどうかを確認するには、以下の2つの方法があります。

  • 役所の道路管理課に相談する
  • 公図で確認する

それぞれの方法について以下で見ていきましょう。

役所の道路管理課に相談する

1つ目の方法は、役所の道路管理課(具体的な名称は自治体により異なります)に相談する方法です。自分で調査する必要がないため、手間をかけずに確認したい際におすすめです。

公図で確認する

2つ目の方法は、公図で確認する方法です。公図とは、土地の位置や形状などが大まかに把握できる地図のことです。

公図には地番も記載されているため、それぞれの私道に割り振られた地番が確認できます。確認した地番の登記簿謄本を取得すれば、誰が私道の所有者なのか、私道持分はどうなっているのかが確認できるのです。

公図の取得方法は以下の5種類があるため、オンライン/オフラインの違いや利便性などの観点からお好きな方法を選んでみてください。

私道持分がない土地や建物が売却しにくいといわれる理由

私道持分がない土地や建物は売却しにくいと言われます。その理由として、以下の4つが挙げられます。

  • 私道の通行に許諾や通行料が必要
  • 工事をする際には許諾や承諾料が必要
  • 住宅ローンを組めない可能性がある
  • 私道の維持費負担をめぐるトラブルが起きる可能性がある

それぞれの理由について、以下で見ていきましょう。

私道の通行に許諾や通行料が必要

私道持分がない土地や建物が売却しにくい理由の1つに、私道の通行に許諾や通行料が必要なことが挙げられます。

私道持分がない土地や建物から外部に出るためには、第三者の所有物である私道を通行する必要があります。第三者が所有する私道は私有地であるため、所有者と所有者が許諾した人だけが通行できます。

つまり、私道持分がない土地や建物と外部とを行き来するには、私道の所有者に通行の許諾を得なければなりません。許諾を得たら必ず自由に通行させてもらえるわけではなく、車での通行が禁止されたり通行料を請求されたりする場合もある点に注意が必要です。

なお、私道持分がない土地が袋地(周囲を他の土地に囲まれており、直接公道に接していない土地)である場合、民法210条により私道を通行できる権利が与えられます。

(公道に至るための他の土地の通行権)
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

ただし、211条を見ると、与えられる通行権は必要なものかつ、土地への損害が最も少ないものに限られているため、自由な通行が全面的に認められるわけではありません。場合によっては、通れる道幅が決められたり徒歩・自転車のみの通行に制限されたりする場合があります。

このように、私道持分がない土地や建物への通行が自由にできない可能性があることから、買い手が現れず売却しにくいのです。

工事をするには許諾や承諾料が必要

私道持分がない土地や建物の工事をするにも、許諾や承諾料が必要になります。というのも、私道の通行と同じように私道を工事車両が通ったり私道を掘ったりするなど他人が所有する私道を使うことがあるからです。

万が一、工事の許諾を得られない場合は裁判に発展することもあり得ます。以下の判例のように、許諾を得られなかったとしても工事を妨害されることは裁判上認められていないため、工事自体ができないことはないでしょう。

建物の汚水を公共下水道に流入させるため隣接地に下水管を敷設する必要がある場合において、建物が建築基準法に違反して建築されたものであるため除却命令の対象となることが明らかであるときは、建物の所有者において右の違法状態を解消させ、確定的に建物が除却命令の対象とならなくなったなど、建物が今後も存続し得る事情を明らかにしない限り、建物の所有者が隣接地の所有者に対し右下水管の敷設工事の承諾及び右工事の妨害禁止を求めることは、権利の濫用に当たる。
引用:裁判例結果詳細「最高裁判所第二小法廷判決 平成5年9月24日」裁判要旨|裁判所

しかし、裁判に発展すると時間や費用がかかるほか、私道の所有者との関係が悪化する可能性もあるため、買い手が現れず売却しにくいのです。

住宅ローンを組めない可能性がある

これまで述べたように、私道持分がない土地や建物を所有することには、通行や工事に許諾や通行料・承諾料が必要になるデメリットがあります。そのため、私道持分がある土地や建物と比較すると所有するリスクが高いため、資産価値が低くなってしまうのです。資産価値が低い不動産は金融機関から担保として認められにくく、住宅ローンを組めない可能性があります。

住宅ローンが組めない土地や建物の場合、購入者が一括で購入資金を用意する必要がありますが、購入資金を用意できない場合には、売却できなくなる可能性が高いのです。

私道の維持費負担をめぐるトラブルが起きる可能性がある

私道持分がない土地や建物を所有すると、私道の維持費負担をめぐってトラブルが起きる可能性があります。法律上は、私道持分がない人は私道の維持費を支払う必要はありません。しかし、私道持分がない人は私道を通行させてもらう代わりに、私道の維持費を一部負担することが慣習となっている場合が多くあります。

維持費の負担自体は問題ないと考えていた場合でも、維持費の負担割合を決める際にトラブルが起きる可能性があります。というのも、私道持分がない人が負担する維持費の割合には明確な基準がなく、維持費をいくら負担するのかで折り合いがつかないケースも少なくありません。また、私道の所有者は固定資産税や都市計画税を支払っているため、私道の維持費はすべて私道持分がない人が負担することを求められる場合もあり、多額の負担を負わなければいけないケースもあります。

私道を通らせてもらっている立場からすれば、維持費の負担を断りにくいかもしれませんが、多額の維持費を請求されたら弁護士などに相談する必要があるでしょう。

私道持分がない土地や建物を売却する方法

これまで、私道持分がない土地や建物が売却しにくい理由について解説してきましたが、もちろん買い手がつけば私道持分がない土地や建物をそのまま売却することは可能です。私道持分がない土地であっても、建物を再建築できる上、条件が整えば住宅ローンを組める可能性もあります。しかし、私道持分がない土地や建物のデメリットを理由に、なかなか買い手が現れない可能性があるのです。

そこで、以下の3つの方法を使えば、私道持分がない土地や建物でも買い手がつく可能性が高まります。

  • 私道持分の取得後に売却する
  • 通行・工事に関する許諾を得てから売却する
  • 訳あり物件専門買取業者に売却する

それぞれの売却方法について、以下で見ていきましょう。

私道持分の取得後に売却する

1つ目の売却方法は、私道持分の取得後に売却する方法です。土地が接している私道の持分を私道の所有者から購入できれば、私道を使う権利が得られます。わずかでも私道持分を持っていれば私道を使う権利が得られるため、私道の所有者の1人から1%の持分を購入することでも理論上は問題ありません。

しかし、私道の所有者との関係が良好でなければ、わずかな私道持分の買取に合意してくれない場合が多くあるでしょう。まとまった私道持分を購入する場合には多額の現金が必要となるため、簡単に私道持分を取得できません。また、そもそも私道持分の買取に合意してくれない場合や相場よりもかなり高い買取額を提示してくる場合もあります。そのため、私道の所有者と良好な関係を築いていなければ、私道持分の取得後に売却する方法を取り入れられない可能性が高いと言えます。

通行・工事に関する許諾を得てから売却する

2つ目の売却方法は、通行・工事に関する許諾を得てから売却する方法です。私道持分を取得するには高いハードルを越えなければなりませんが、通行・工事に関する許諾を得るだけであれば、できるという場合があるかもしれません。

通行・工事に関する許諾を得ていれば、私道持分がないことによるデメリットがないため、私道持分がない土地や建物であっても、私道持分がある土地や建物と同様に売却できる可能性が高まります。交渉する手間や承諾料の支払いが必要になる場合もありますが、買い手がつきやすくなるため、私道持分がある土地や建物を売却するには、通行・工事に関する許諾を得てから売却すると良いでしょう。

訳あり物件専門買取業者に売却する

3つ目の方法は、訳あり物件専門買取業者に売却する方法です。これまでに紹介した2つの方法は、私道の所有者との交渉や私道持分の購入・承諾料の支払いなどが必要になるため、手間や費用が大きくかかってしまうデメリットがあります。

一方、訳あり物件専門買取業者に売却する場合には、私道持分がない土地や建物であっても、買取価格さえ合意すればすぐに売却できます。私道持分がない土地や建物の取り扱いに精通している上、弁護士との提携により私道の所有者との交渉も代理で行ってもらえます。手間や費用をほとんどかけずに売却できるため、面倒なことを避けて私道持分がない土地や建物を手放したい方は、訳あり物件専門買取業者への売却を検討してみてください。

弊社クランピーリアルエステートでも、私道持分がない土地や建物の買取を積極的に行っています。弊社の強みとして、全国どの物件でも対応していること、最短12時間で終わるスピード査定をしていること、弁護士や税理士と連携し法的な問題の解決がスムーズにできることが挙げられます。私道持分がない土地や建物を「すぐに売却したい」「手間をかけずに売却したい」「相場に近い価格で売却したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

まとめ

私道持分がない土地は、通行や工事を行う際に大きな制限がかかってしまうため、購入が避けられる傾向にあります。しかし、私道持分を取得したり通行・工事に関する許諾を得たりした後に売却すれば、相場に近い価格で売却できる可能性が高まります。さらに、訳あり物件専門買取業者に売却すれば、手間や費用をかけずに、すぐに私道持分がない土地を売却することが可能です。面倒なことを避けたい方やすぐに私道持分がない土地を売却したい方は、ぜひ訳あり物件専門買取業者への売却を検討してみてください。

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