共有名義不動産を売却したときにかかる税金は?確定申告の方法も解説

共有名義不動産を売却したときにかかる税金は?確定申告の方法も解説

共有名義不動産を売却するにあたって、「どのような税金がいくらかかるのか」「確定申告は必要なのか」といったことが気になる人は多いのではないでしょうか。

共有名義不動産の売却で発生する税金には以下のものがあります。

税金名 発生する場面 税率・税額
印紙税 契約時 200円〜48万円まで、売買金額に応じて変動する。
※軽減税率適用時
登録免許税 登記申請時 【抵当権抹消登記】
不動産1個につき1,000円

【所有権移転登記】
不動産の価額×税率

・土地の税率:1.5%
・住宅用家屋の税率:0.3%
※軽減税率適用時

譲渡所得税・
住民税
共有不動産の売却で利益が出たとき 【不動産の所有期間が5年超】
1人あたりの譲渡所得×20.315%

【不動産の所有期間が5年以下】
1人あたりの譲渡所得×39.63%

「印紙税」は売買契約書に対してかかる税金です。税率は不動産の売買金額によって異なり、売買金額が高額になればその分印紙税もかかります。

「登録免許税」は、登記申請の際にかかる国税です。「抵当権抹消登記」を行う場合であれば不動産1つにつき1,000円と決まっていますが、売主から買主に名義を変える「所有権移転登記」を行う際は「不動産の価額」をもとに計算します。

不動産売却に関係する税金の中でとくに計算が複雑なのは、「譲渡所得税・住民税」です。「不動産を5年を超えて所有していたかどうか」で税率が異なるうえ、共有名義不動産の場合は共有者の持分割合に応じて譲渡所得を按分する必要があります。

なお、共有名義不動産の売却で確定申告が必要になるのは、「譲渡所得が発生した場合」です。譲渡損失が発生するときは原則確定申告が不要です。

ただし譲渡所得が発生しないケースでも、特例の適用を受けるなら確定申告が必要になります。

税金の計算や確定申告でわからないことが発生したら、国税庁の「確定申告電話相談センター」や税務署に相談しましょう。

この記事では、共有名義不動産を売却したときにかかる税金や確定申告の方法について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

共有名義不動産の売却で発生する税金

共有名義不動産を売却する際には、以下のような税金がかかります。

  • 印紙税:契約書に対して課せられる税金
  • 登録免許税:登記申請の際にかかる税金
  • 譲渡所得税:不動産の売却で利益が出た場合にかかる税金

それぞれ解説します。

印紙税

共有名義不動産に限らず、不動産を売却する際は「印紙税」がかかります。

【印紙税とは】
契約書や領収書といった、金銭が絡む取引のために作成された書類に課税される税金のこと。課税対象の書類(契約書であれば契約書)に「収入印紙」を貼りつけ、消印を押すことで印紙税を納めたことになる。

印紙税は、共有名義不動産の売買金額によって異なります。売買金額が高額になれば、その分税率も上がります。

税率は以下のとおりです。

売買金額 軽減税率 本則税率
10万円超50万円以下 200円 400円
50万円超100万円以下 500円 1,000円
100万円超500万円以下 1,000円 2,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円 1万円
1,000万円超5,000万円以下 1万円 2万円
5,000万円超1億円以下 3万円 6万円
1億円超5億円以下 6万円 10万円
5億円超10億円以下 16万円 20万円
10億円超50億円以下 32万円 40万円
50億円超 48万円 60万円

参照:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

たとえば、軽減税率が適用されるケースで売買価格が3,000万円なら、1万円の印紙税がかかります。軽減税率が適用されなければ本来の税率である「本則税率」が適用されるため2万円です。

なお、軽減税率の適用条件は以下のとおりです。

  • 不動産の譲渡に関する契約書であること
  • 売買金額が10万円を超えるものであること
  • 平成26年4月1日〜令和9年3月31日に作成されたものであること

上記の条件を満たしている場合は、上表のとおり令和9年3月31日まで軽減税率が適用されます。

印紙税は売主・買主のうちどちらが負担しても構いません。たとえばどちらかが全額負担しても、折半でも問題ありません。

とはいえ、売買契約書は売主・買主が1部ずつ保管するために2部作成するのが一般的です。そのため多くの場合は折半します。

登録免許税

通常の不動産を売却するときと同様に、共有名義不動産の売却時にも「登録免許税」がかかります。不動産を売却するなら、申請の際に登録免許税がかかる「所有権移転登記」や「抵当権抹消登記」が必要であるためです。

【登録免許税とは】
登記申請の際に、法務局を通じて国に納める税金。原則現金納付だが、申請時に収入印紙で支払うことも可能。
【所有権移転登記とは】
登記上の所有者を売主から買主に変更するための登記。登録免許税は買主が負担するのが一般的。
【抵当権抹消登記とは】
不動産に設定された「抵当権」を消すための登記。登録免許税は売主が負担する。

抵当権とは、金融機関から融資を受けて不動産を購入する場合に、金融機関が土地や建物に設定する権利のことをいう。債務者が返済できなくなったとき、債権者である金融機関は不動産を競売にかけ、残債を回収する。

抵当権抹消登記の登録免許税は、「不動産1筆(棟)につき1,000円」です。

たとえば土地1筆と建物1棟の計2つを申請するなら、それぞれに課税されるため2,000円かかります。一見1つの土地に見えても、3筆に分かれているなら土地3筆+建物1棟で4,000円です。

登録免許税とは別に、抵当権抹消登記の申請を司法書士に依頼すると司法書士への報酬が発生します。自分で申請する人もいますが、司法書士に依頼するケースが多いです。

費用相場は1万3,000円〜1万8,000円程度とそれほど高額ではないため、依頼するのもよいでしょう。

なお、所有権移転登記の登録免許税は、抵当権抹消登記のように一律ではありません。以下の計算式で求めます。

不動産の価額×税率

「不動産の価額」とは、市区町村役場の「固定資産課税台帳」に登載されている「税金を計算する際の基準となる金額」です。台帳に登載されているなら原則その価額で計算します。

売買の対象 軽減税率 本則税率
土地 1.5%
※令和8年3月31日まで
2%
建物(住宅用家屋) 0.3%
※令和9年3月31日まで
2%

参照:登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ|税務署

たとえば1,000万円の土地なら15万円、2,000万円の建物なら6万円です。

共有持分にかかる税金については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

譲渡所得税・住民税

共有名義不動産の売却で利益が生じた場合は「譲渡所得税・住民税」が課税されます。

譲渡所得税を求める際の税率は、不動産を所有していた期間が5年を超える「長期」か5年以下の「短期」かによって異なります。

以下のとおりです。

所得の区分 不動産の所有期間 税率
長期譲渡所得 5年超 20.315%

【内訳】
・所得税:15.315%
※復興特別所得税2.1%を含む
・住民税:5%

短期譲渡所得 5年以下 39.63%

【内訳】
・所得税:30.63%
※復興特別所得税2.1%を含む
・住民税:9%

このように、「不動産の所有期間が5年を超えるかどうか」で税率が大きく変わります。損をしたくないなら、売却のタイミングは慎重に検討すべきでしょう。

「長期」と「短期」どちらに該当するかは、「不動産を売却した年の1月1日時点で何年所有していたか」で判断します。たとえば、2019年(令和元年)3月1日に購入した不動産を売却するケースで考えてみましょう。

不動産を2024年(令和6年)7月1日に売却した場合、その時点では「満5年」を超えていますが、売却した年の1月1日時点では5年を超えていません。そのため長期譲渡所得の条件にはあてはまらず、「短期譲渡所得」の税率で計算する必要があります。

このケースで長期譲渡所得に該当するには、「2025年(令和7年)1月1日以降に売却する必要がある」ことに注意しましょう。

なお、不動産の取得原因が売買ではなく相続だった場合は、現在の所有者が相続によって取得した日ではなく、「被相続人(もともとの所有者)が不動産を取得した日」を起算点とします。

また、給与所得や事業所得にかかる住民税とは税率が異なる点にも注意しましょう。

上記のとおり、譲渡所得にかかる住民税の税率は5%または9%です。しかし、給与所得や事業所得にかかる住民税は、前年の所得に対して課税される「所得(税額10%)」と定額で課税される「均等割(負担額は2024年から5,000円)で構成されています。

不動産売却によって住民税が課税される場合、住民税については申告する必要がありません。確定申告をすれば、税務署から市区町村にデータが共有されるためです。

住民税を納めるタイミングは「不動産売却の翌年」です。たとえば売却したのが2024年7月1日であれば、2025年2月16日〜3月15日に確定申告をし、2025年6月以降に納めます。

譲渡所得税の計算方法については、次章で詳しく解説します。

参照:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁
参照:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁

共有名義不動産を売却したときにかかる譲渡所得税の計算方法

共有名義不動産の売却で課税される税金の中でも、「譲渡所得税」はとくに計算が複雑です。

ここでは譲渡所得税の計算方法について、計算例を紹介しながらわかりやすく解説します。譲渡所得税を計算する際の手順は以下の4ステップです。

  1. 譲渡所得を計算し、「不動産売却によっていくら利益を得られたか」を確認する
  2. 特例を利用する前に共有者それぞれの持分割合で譲渡所得を按分する
  3. 要件を満たしているなら、共有者それぞれが控除・特例を利用する
  4. 譲渡所得に所有期間に応じた税率をかけ、譲渡所得税を算出する

順番に解説します。

1.譲渡所得を計算する

まずは「譲渡所得」を計算し、「不動産の売却で結果的にいくら利益を得られたか」を確認します。

計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得=売買価格ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額

取得費・譲渡費用・特別控除とは、たとえば以下のようなものを指します。

取得費 売却した不動産を取得したときにかかった費用のこと。
(購入費・仲介手数料など)
取得費が売買価格の5%未満・取得費が不明な場合は、売買価格の5%を取得費にできる。
譲渡費用 ・仲介手数料
・測量費用など、不動産売却のためにかかった費用
・立退料
・建物の取壊し費用

など

特別控除 ・公共事業のために不動産を売却したとき(最大5,000万円)
・マイホームを売却したとき(最大3,000万円)

など

ただし共有名義不動産の場合、「特例の利用は共有者それぞれの持分割合で譲渡所得を按分してから」です。譲渡所得を按分し、要件を満たせばそれぞれが特例を利用できます。

例を1つ見てみましょう。

【条件】
・売買価格:3,000万円
・取得費:500万円
・譲渡費用:100万円

上記の条件で譲渡所得を計算します。

譲渡所得=3,000万円ー(500万円+100万円)=2,400万円

ここから、持分割合に合わせて按分します。按分の方法については次項で解説します。

参照:土地や建物を売ったとき|国税庁
参照:No.3258 取得費がわからないとき|国税庁
参照:No.3223 譲渡所得の特別控除の種類|国税庁

2.譲渡所得を各人の持分割合で按分する

譲渡所得を計算したら、共有者それぞれの持分割合で按分します。前項と同じ条件で計算してみましょう。

【条件】
・売買価格:3,000万円
・取得費:500万円
・譲渡費用:100万円

【譲渡所得】
3,000万円ー(500万円+100万円)=2,400万円

たとえば、共有者が3人でそれぞれ同じ持分割合なら、以下のように計算します。

2,400万円÷3=800万円

上記の例でいくと、「1人あたり800万円の譲渡所得」になります。

共有者が3人で、そのうち1人(A)の持分割合が4分の2、あとの2人(B・C)が4分の1ずつの場合は以下のとおりです。

・A:2,400万円×4分の2=1,200万円
・B・C:2,400万円×4分の1=600万円ずつ

ここから、それぞれが控除・特例を利用します。控除・特例の利用については次項で解説します。

3.控除・特例を利用する

譲渡所得を按分したら、控除・特例を利用します。不動産売買の際に利用できる控除・特例はいくつかありますが、売却した不動産が「共有のマイホーム」であれば、以下の特例を利用できる可能性があります。

【居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除とは】
共有のマイホームを売却したときに、マイホームの所有期間にかかわらず「譲渡所得」から最大で3,000万円まで控除できる特例。適用を受けられるかどうかは、共有者ごとに判定される。

注目すべきは、「共有者全員で3,000万円」ではなく「適用を受けられる共有者1人につき3,000万円まで控除できる」点です。

たとえば以下のケースなら、譲渡所得税はかかりません。

【条件】
・按分前の譲渡所得が2,400万円
・共有者は3人で持分割合は同じ

【1人あたりの譲渡所得】
2,400万円÷3=800万円

【特別控除後の譲渡所得】
800万円ー3,000万円=△2,400万円

特別控除後の譲渡所得がマイナスになるため、共有者全員「譲渡所得税がかからない」という結果になります。

なお、不動産売却によって利益が出たケースで利用可能な特例には、ほかにも以下のようなものがあります。

10年超所有軽減税率の特例 10年を超えて所有していたマイホームを売却した場合に、長期譲渡所得よりも低い税率で譲渡所得を計算できる特例
特例居住用財産の買換え特例 マイホームを買い換えた際、不動産売却の利益にかかる譲渡所得税を先送りできる特例

特例の適用を受けるには、それぞれ要件を満たす必要があります。自分のケースがどの特例に該当するかは、国税庁のホームページで確認することをおすすめします。

参照:No.3308 共有のマイホームを売ったとき|国税庁
参照:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
参照:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

4.所有期間に応じた税率をかける

譲渡所得を算出したら、不動産の所有期間に応じた税率をかけて「譲渡所得税」を計算します。前述のとおり、譲渡所得税の計算で重要なのは「不動産を5年を超えて所有していたかどうか」です。

所得の区分 不動産の所有期間 税率
長期譲渡所得 5年超 20.315%
短期譲渡所得 5年以下 39.63%

例を1つ見てみましょう。

【条件】
・1人あたりの譲渡所得:800万円
・不動産の所有期間:7年(長期譲渡所得)
・特例は利用できない

【譲渡所得税】
800万円×20.315%=162万5,200円

上記のケースでは、共有者それぞれに162万5,200円の譲渡所得税がかかります。

共有持分の譲渡方法や費用、注意点について知りたいなら、以下の記事がおすすめです。ぜひ参考にしてください。

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共有名義不動産の売却で確定申告が必要なときとは?

単独所有でも共有でも、不動産の売却で利益が出たら確定申告が必要です。

ここでは、共有名義不動産の売却で確定申告が必要・不要なケースについて解説します。

  • 利益がなければ確定申告は必要ないが、譲渡所得が発生したら確定申告をしなければならない
  • 譲渡損失が発生する場合、原則確定申告は不要だが、「繰越控除」や「損益通算」による節税効果が期待できる
  • 確定申告と納税は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までにする必要がある

譲渡所得が発生したら確定申告が必要

利益がなければ確定申告は不要ですが、共有不動産売却によって譲渡所得が発生したら、基本的に確定申告が必要です。

たとえば不動産売却によって1,000万円の利益が出た場合、その1,000万円に譲渡所得税がかかるため確定申告をしなければなりません。「譲渡所得を計算した結果、プラスになったら確定申告が必要」と思っておくとよいでしょう。

注意点は、確定申告が必要なケースで申告を行わなかったり遅れて申告したりすると、状況に応じて以下のようなペナルティを受けることです。

無申告加算税 期限までに確定申告をしなかったときに受けるペナルティ。

・納付額50万円まで:15%
・50万円を超える部分:20%

本来の納付額に加え、上記の金額が上乗せされる。
ただし、期限後1カ月以内に自主申告すれば免除される。

過少申告加算税 確定申告したものの、本来の納付額より少なかったときに受けるペナルティ。

本来の納付額との差額×10%〜15%

ただし、自主的に修正申告すれば課税されない。

重加算税 税金を意図的に隠したり、帳簿を改ざんしたりしたときに受けるペナルティ。

・少なく申告したとき:過少申告加算税+本来の納付額の35%
・申告しなかったとき:無申告加算税+本来の納付額の40%

延滞税 確定申告は期限内に行ったものの、期限より遅れて納付したときに受けるペナルティ。

・期限翌日から2カ月以内:期限翌日から納付までの日数×2.4%
・期限翌日から2カ月以降:期限翌日から納付までの日数×8.7%

※令和4年1月1日〜令和6年12月31日の税率

確定申告の期限は、「不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日」です。上記のペナルティを受けずに済むよう、忘れず正確に行いましょう。

譲渡損失が発生する場合は原則不要

共有名義不動産の売却で「譲渡損失」が発生するなら、原則として確定申告は不要です。

【譲渡損失とは】
不動産などの資産を売却した際に損失が生じること。取得時に支払った金額よりも売却で得た金額のほうが少ない場合や、売却にかかる仲介手数料、印紙税といった諸経費が売買価格を上回ったときが該当する。

しかし譲渡損失が発生した場合に確定申告をすると、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」や、給与所得や事業所得と相殺できる「損益通算」が利用できます。

繰越控除や損益通算によって所得税や住民税が減税できるため、確定申告が不要でも「確定申告をしたほうがお得」なケースがあることを念頭に置いておきましょう。譲渡損失の金額や、確定申告をすることでどの程度減税できるかを考慮したうえで確定申告すべきかどうかを判断することをおすすめします。

なお、譲渡所得税が非課税になる場合でも、特例を利用するなら確定申告が必要です。「特例を利用する=確定申告が必要」と覚えておきましょう。

売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに申告する

譲渡所得の申告期限は、「不動産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日〜3月15日」です。納付期限も同様です。納税も必要なら、期間内に税務署か金融機関で納付しましょう。

なお、「譲渡した日」とは、売買であれば売買契約に基づいて買主に不動産を引き渡した日を指します。ただし、「売買契約日に譲渡があった」として確定申告することも可能です。

参照:No.3102 譲渡所得の申告期限|国税庁

共有名義不動産を売却したときの確定申告の流れ

共有名義不動産を売却したときの確定申告の流れは以下のとおりです。

  1. 必要書類を用意する
  2. 譲渡所得の内訳書を記入する
  3. 確定申告書を作成する
  4. 確定申告書を提出する
  5. 納税もしくは還付を受ける

流れに沿って解説します。

1.必要書類を用意する

まずは、確定申告に必要な書類を用意します。

必要書類と入手場所は以下のとおりです。

書類名 入手場所・備考
確定申告書第一・第二表 税務署・市役所の窓口
国税庁のホームページ
確定申告書第三表(分離課税用) 税務署・市役所の窓口
国税庁のホームページ
譲渡所得の内訳書
(確定申告書付表兼計算明細書)
税務署・市役所の窓口
国税庁のホームページ
※不動産売却後に送付される
売買契約書のコピー(不動産取得時) なければ売主や不動産会社にもらう
※なくても申告できるが、税金計算時に不利になる可能性あり
不動産の取得費がわかるもの
(領収書などのコピー)
なくても申告できるが、税金計算時に不利になる可能性あり
売買契約書のコピー(不動産売却時) 手元にあるものをコピーする(必須)
不動産の譲渡費用がわかるもの
(領収書などのコピー)
手元にあるものをコピーする(必須)
登記事項証明書 法務局の証明書発行窓口・オンライン
本人確認書類
(運転免許証・マイナンバーカードなど)
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から申告するなら不要
源泉徴収票 勤務先に請求
その不動産に住んでいたことがわかるもの
(住民票や戸籍附票など)
市区町村役場・地区センター・コンビニ

確定申告書、内訳書などの様式は税務署や市役所の窓口、国税庁のホームページで取得できます。そのほかの書類は自分で揃えましょう。

不動産取得時の売買契約書が見当たらないときは、購入代金の5%を「取得費」として申告します。それ以外の方法で申告するためには、以下のような「購入代金の裏づけがとれるもの」を提出する必要があります。

  • 住宅ローンの金銭消費貸借契約書
  • 抵当権の設定額が記載された登記事項証明書
  • 不動産の購入代金を支払ったことがわかる通帳のコピー

不動産売却時の売買契約書のコピーや譲渡費用(仲介手数料・測量費用など)は必須です。紛失してしまった場合は、売主・仲介を依頼した不動産会社にコピーをもらうか、新たに押印をもらい再発行してもらいましょう。

参照:A1-1 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)|国税庁

2.譲渡所得の内訳書を記入する

確定申告の必要書類を用意したら、「譲渡所得の内訳書」を記入しましょう。事業所得や給与所得の確定申告では不要ですが、不動産売却後の確定申告では内訳書が必要です。

【譲渡所得の内訳書とは】
譲渡所得の収支の内訳を記載する書類。譲渡所得税の納税額の算定基準になる。

内訳書には、以下の内容を記載します。

  1. 売却した不動産の情報(所在地・売買契約日など)
  2. 売却した不動産の購入(建築)代金
  3. 売却するために支払った費用
  4. 譲渡所得金額の計算
  5. 交換・買換え(代替)で取得した資産の情報※交換・買換え(代替)の特例を利用する場合

このように、内訳書には細かい内容を記載する必要があります。売買契約書や領収書などを参考に、順番に記入していきましょう。

事実と大きく異なる内容を記載した場合、ペナルティとして「過少申告加算税」や「重加算税」を課せられることがあります。情報は正確に記入するようにしましょう。

なお、過少申告加算税や重加算税については、「譲渡所得が発生したら確定申告が必要」で解説しています。ぜひチェックしておいてください。

参照:譲渡所得の内訳書|国税庁

3.確定申告書を作成する

内訳書を記載したら確定申告書を作成します。

確定申告書の作成方法は、主に以下の3つです。

  • 手書きで記入する
  • 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から申告する
  • 確定申告ソフトを使用する
【確定申告書等作成コーナーとは】
国税庁の確定申告書が手軽に作成できるサービスのこと。画面の案内どおり金額などを入力していくだけで確定申告書が作成できる。自動で計算してくれるため、計算ミスの心配がない。

確定申告書の記載手順は以下のとおりです。

  1. 第一表の「収入金額等」「所得金額等」を記載する
  2. 第二表を作成する
  3. 第一表の「所得から差し引かれる金額」を記載する
  4. 第三表の「分離課税」の「収入金額」「所得金額」を記載する
  5. 第三表の「税金の計算」を記載する
  6. 第一表の「税金の計算」「その他」を記載する

どのように書けばよいかわからない場合は、国税庁の「確定申告電話相談センター」や税務署に相談することをおすすめします。

また、税務署が主催する確定申告相談会に参加したり、国税庁の税務相談チャットボットを利用したりといった選択肢もあります。わからないことはそのままにせず、何らかの方法で確認するようにしましょう。

ただし税務署に直接出向いて相談するときは、予約が必要なことがあるため注意が必要です。とくに、確定申告の期限間近は混み合っている可能性が高いです。まずは電話で問い合わせてみましょう。

参照:「税務相談チャットぼっと(ふたば)」、「タックスアンサー」、「国税相談専用ダイヤル」の利用案内|国税庁
参照:確定申告書の記載手順(手書きの場合)|国税庁

4.確定申告書を提出する

確定申告書を作成したら、管轄の税務署に提出します。

提出方法は以下の3つです。

提出方法 メリット デメリット
窓口に持参する ・不備がないか見てもらえる
・受付印をその場で控えに押してもらえる
・混雑が予想される
・税務署に出向く必要がある
郵送する ・消印有効
・税務署に行く手間を省ける
・不備がないかチェックしてもらえない
・郵送料が必要
e-Taxを利用する ・青色申告特別控除が受けられる
・自宅で24時間提出が可能
・費用がかからない
・「利用者識別番号」が必要
・マイナンバーカードやカードリーダーが必要

上記のうち、好きな方法で提出できます。メリットとデメリットを考慮し、方法を決定するとよいでしょう。

ネット環境が整っているなら、e-Taxでの電子申告がおすすめです。ただし、事前準備として「利用者識別番号」を取得する必要があります。

また、ID・パスワード方式を用いればマイナンバーカードがなくても利用できますが、一時的な方式であるため、今後も利用する予定があるならマイナンバーカードやICカードリーダーライタの準備も考えておく必要があります。

5.納税もしくは還付を受ける

確定申告書を提出したら、納税もしくは還付を受けます。特例の適用によって非課税になる場合は、申告書を提出したら完了です。

納税が必要なケースでは「譲渡所得税」と「住民税」が課税されますが、納税のタイミングは以下のように異なります。

  • 譲渡所得税:確定申告の期間内
  • 住民税:売却の翌年6月以降

さらに住民税には、2つの徴収方法があります。

  • 普通徴収:クレジットカードや送られてくる「納付通知書」で納税者自ら納付する
  • 特別徴収:毎月の給料から12回にわたって天引きされる

共有名義不動産の売却で確定申告するときの注意点

共有名義不動産の売却で確定申告するときの注意点は以下のとおりです。

  • 共有名義不動産全体を売却したときは「各共有者」が確定申告を行う必要がある
  • 居住用財産の3,000万円控除は「建物の所有者に適用される」ため、原則「土地のみの売却」では利用できない
  • 不動産を売却した際にかかる譲渡所得は「分離課税」に該当するため、ほかの所得と区分して計算しなければならない

それぞれ解説します。

確定申告は各共有者が行う

確定申告は、各共有者が行う必要がある点に注意しましょう。共有者のうち1人が代表で行えばよいというものではなく、確定申告が必要な共有者がそれぞれ自分で行わなければなりません。

なお、各共有者が確定申告を行う必要があるのは、「共有名義不動産全体」を売却したときです。不動産全体ではなく「自分の共有持分のみ」を売却したときは、売却した本人だけが確定申告を行います。

居住用財産の3,000万円控除は原則「土地のみの売却」では利用できない

土地のみを売却した人は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けられない点にも注意しましょう。居住用財産の3,000万円控除の対象は、あくまでも「共有のマイホームを売った人」であるためです。

たとえば「夫が建物、妻が土地を所有している」「父親の土地に息子が建物を建築した」というように、土地と建物とで所有者を分けているケースでは、建物の所有者にしか控除が適用されないことを覚えておきましょう。

ただし現在土地が更地になっている場合でも、その土地に「居住用財産」が存在した事実があるなら特例は利用可能です。「居住用財産の3,000万円控除」の適用を受けるための要件には、「家屋を取り壊した場合」や「家屋が滅失した場合」も含まれているためです。

適用を受けるための要件には、たとえば以下のものがあります。

  • 自分が居住している家屋や家屋・敷地・借地権を売ること
  • 家屋の取壊しから1年以内に譲渡契約した敷地を、居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売ること
  • 家屋の取壊しから譲渡契約締結まで、その敷地をほかの用途に使用していないこと
  • 家屋を売った年の前年、前々年にこの特例やマイホームの買換え、交換の特例などを適用していないこと
  • 災害で家屋が滅失したときは、居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売ること

ほかにも、細かい要件が定められています。適用要件については、国税庁のホームページを確認しましょう。

参照:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

税額は他の所得と区分して計算する

不動産を売却した際にかかる譲渡所得税は、給与所得や事業所得といったほかの所得と区分して計算する必要があります。不動産売却にかかる譲渡所得は、「分離課税」に該当するためです。

【分離課税とは】
ある所得を、ほかの所得と分けて課税すること。ほかの所得と異なる税率で計算し、税負担を軽くするために設けられている。

ただし、確定申告の手続き自体はほかの所得と一緒に行います。

まとめ

共有名義不動産を売却したときに発生する税金について解説しました。

共有名義不動産を売却で発生する税金には、「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税・住民税」などがあります。

印紙税は売買金額に応じて税率が異なり、登録免許税は「抵当権抹消登記であれば1つの不動産につき1,000円」と手数料額が決まっています。

計算方法が複雑なのは譲渡所得税・住民税です。

とくに共有名義不動産は、共有者の持分割合に応じて譲渡所得を按分する必要があるため、難しいと感じる人もいるかもしれません。記事の中で解説したとおりに計算してみて、わからなければ「確定申告電話相談センター」や税務署にご相談ください。

譲渡所得税を計算した結果、確定申告が必要になったときは申告期限に注意しましょう。申告しなかったり申告が遅れたりすると、「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティを受ける可能性があります。

必ず、「不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日」の期限内に手続きするようにしましょう。

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