共有名義不動産を賃貸に出すとトラブルになりやすい?解決方法もあわせて解説

共有名義不動産を賃貸に出すとトラブルになりやすい?解決方法もあわせて解説

複数人が同じ不動産を所有する「共有名義不動産(共有不動産)」にてアパートなどを経営すると、入居者とのトラブルだけではなく、共有者同士のトラブルにも注意が必要です。ただでさえ入居者や建物の管理が大変であるにもかかわらず、同じ管理者であるはずの共有者とのいさかいに対し、頭を抱える賃貸経営者は後を絶ちません。

共有名義不動産の賃貸経営で、共有者を発端とするトラブルとしては次のことが起こり得ます。

共有名義不動産の賃貸におけるトラブル事例 解決法
建物の修繕などの管理や運営方針について意見が割れる ・共有状態を解消して自分が単独で運営するか、自分が管理から離れる
・共有持分買取請求権を行使して不当に管理負担から逃れる人の共有持分を買い取る
管理の代表者が他共有者に家賃収入を分配しない ・話し合いで解決しないなら、不当利得返還請求や訴訟にて家賃収入を取り戻す
税金や管理費の支払いなどの支払いが誰かに偏る ・共有持分買取請求をして、税金や管理費の支払いを渋る共有者の共有持分を買い取る
共有者が賃料を払わずないまま住んでいる ・不当利得返還請求で未払いの家賃を請求する

上記のうち、よく聞くトラブルは家賃関係です。共有者同士で賃貸経営や管理をしていると、会社経営などと同じくお金関係で揉めるケースは珍しくありません。しかし、話し合いで解決できずとも、民法に基づいた請求や訴訟で問題に対応できます。

また、トラブルの解消や回避には、共有状態自体を解消する方法も有効です。共有状態の解消方法は、共有物分割請求をする、自分の共有持分を他共有者や買取業者へ売却する、共有名義不動産全体を売却するの4つが挙げられます。

弊社「クランピーリアルエステート」なら、共有持分や共有名義不動産の買取を積極的に実施しています。相続がかかわったり老朽化が進んでいたりなどの訳あり事情がある場合でも、問題なく買い取りいたします。トラブルなくスピーディーに売却したいときは、ぜひクランピーリアルエステートへご相談ください。

本記事では、共有名義不動産の賃貸に関するよくあるトラブルと解消法、共有名義不動産における共有状態の解消方法、共有名義不動産の賃貸借契約で必要な共有者の同意、共有名義不動産を賃貸に出す流れ、共有名義不動産を賃貸に出す場合の注意点について解説します。

目次

共有名義不動産を賃貸する場合によくあるトラブルと解消法

共有名義不動産は、複数人で所有しているという関係上、共有名義ならではの賃貸関係のトラブルが想定されます。共有名義不動産を賃貸する場合によくあるトラブルおよび解決方法は、主に次の通りです。

共有名義不動産の賃貸におけるトラブル事例 解決法
建物の修繕などの管理や運営方針について意見が割れる 共有状態を解消する
共有持分買取請求権や持分買取請求訴訟をおこなう
管理の代表者が他共有者に家賃収入を分配しない 不当利得返還請求や訴訟をおこなう
税金や管理費の支払いなどの支払いが誰かに偏る 共有持分買取請求権や持分買取請求訴訟をおこなう
共有者が賃料を払わずないまま住んでいる 不当利得返還請求や訴訟をおこなう

以下では解決方法を含めて、それぞれの詳細を解説します。

本記事で登場する「共有者」とは、共有名義不動産の所有者のうちの1人を表します。「共有持分」とは、共有者の所有権の割合です。たとえば共有者Aの共有持分割合が50%なら、共有者Aは共有名義不動産の所有権を半分有していることになります。

建物の修繕などの管理や運営方針について意見が割れる

共有者は、共有名義不動産のあり方について全員が同じ意見を持っているとは限りません。建物の修繕などの管理や共有名義不動産の運営方針について、共有者同士で意見が割れるトラブルはよくあることです。

共有名義不動産について意見が対立しやすい背景には、共有者の同意の必要性が関係しています。共有名義不動産にまつわる行為をするには、民法上で定められた他共有者の同意が一定に満たなければ当該行為を履行できません。同意が必要なものとして、共有名義不動産の売却やリフォーム、一定規模以上の修繕などの一定の行為が該当します。

たとえば、共有名義不動産における賃貸借契約を第三者と結ぶ場合も、他共有者の同意が必要です。民法に定められた、他共有者の同意が必要な行為は次の通りです。

賃貸借契約の内容 締結のために必要な同意数
短期賃貸借 共有持分の過半数
長期賃貸借 共有者全員の同意

賃貸にまつわる共有者の同意については、共有名義不動産を賃貸に出すには共有者の同意が必要の見出しで詳細を解説しています。

建物の修繕や運営方針についての意見が割れた場合、反対意見や不同意を表明するだけなら違法にはなりません。話し合いで解決を目指すのが原則です。

話し合いを重ねても共有者同士で意見が分かれてまとまらないときは、共有名義状態の解消を検討してみてください。「自分だけの単独名義にして自由に運営できるようにする」または「自分の所有権を放棄して他の共有者に運営を任せる」のいずれかの方法なら、少なくとも自分がトラブルに巻き込まれることはなくなります。

共有状態を解消する方法については、共有名義不動産の賃貸トラブルに悩むなら共有状態の解消も検討をの見出しにて詳しく解説しています。

また、共有名義不動産の経営方針や運営にかかるコストについても、共有者同士で意見が分かれる原因です。たとえば共有名義不動産に関するランニングコストは、民法第253条に基づき、共有持分に応じて共有者全員が支払うべきとされています。

しかし、それでも「共有者のうち1人が支払わない」「代表者がすべて負担している」といったトラブルに発展するリスクが存在します。

仮に共有者が支払うべき負担分の支払いがなされないときは、民法第253条に基づく「共有持分買取請求権」の行使を検討しましょう。共有持分買取請求権とは、民法上の強制力をもって他共有者の共有持分を買い取る権利です。

負担分の偏りトラブルや共有持分買取請求権については、税金や管理費の支払いなどの支払いが誰かに偏るの見出しで詳しく解説しています。

また他の解決法として、賃貸アパートなどに関する管理負担がトラブルの原因なら、アパート経営や管理を外部業者に業務委託する方法があります。外部業者に経営・管理を任せれば、共有者同士で経営・管理方針で揉めるトラブルの発生確率を低くできるメリットがあります。またプロが経営・管理に対応してくれるため、入居者の家賃関係やメンテナンス関係の問題にも適切に解消してくれるでしょう。

ただし経営・管理を一括で任せるとなると、委託料が高くなる分だけ収益が減るので注意が必要です。

参考:e-Gov法令検索「民法第251条
参考:e-Gov法令検索「民法第252条

管理の代表者が他共有者に家賃収入を分配しない

共有名義不動産にて賃貸を経営する場合、入居者の家賃は一旦代表者へ一括入金されるのが一般的です。そこから代表者が共有持分割合などに基づいて、各共有者へ家賃を分配します。共有持分に応じて物件から発生した収益(家賃)を得られる使用収益権を、共有者それぞれが有していると考えられるからです。

しかし、代表者が他共有者へ家賃を分配せずにそのまま独占するトラブルが存在します。共有名義不動産を特定の人物が占有しているケースと同じく、共有名義不動産の独占に該当するトラブルの一種です。

もし管理の代表者が家賃分配を拒否しているときは、他共有者は自分が得られるはずの利益に対して「不当利得返還請求」を起こせる権利を行使できます。

不当利得返還請求とは、法律上の原因なく他人の財産や労務によって利益を得た人に対し、損失を被った人が当該利益の返還を求める請求です。民法第703条や704条にて定められています。不当利得返還請求をできる権利を、不当利得返還請求権と呼びます。

不当利得返還請求にて請求できるのは、家賃収入✕共有持分割合で算出した金額までです。内容証明郵便を利用して相手に通知すれば、話し合いに応じない相手に対しても賃料を請求したという事実を残せます。それでも相手が家賃の返還に応じないときは、裁判所にて不当利得返還請求訴訟を提起し、裁判の判決をもって賃料を取り返すことも検討します。

とはいえ不当利得返還請求訴訟まで進むと弁護士への依頼料や裁判の準備に必要な労力などが発生するため、可能な限り共有者同士の話し合いの段階での解決を目指すのがよいでしょう。

参考:e-Gov法令検索「民法第703条
参考:e-Gov法令検索「民法第704条

税金や管理費の支払いなどの支払いが誰かに偏る

民法第253条によれば、共有名義不動産において発生する固定資産税などの税金や管理に関するランニングコストなどは、共有者の共有持分割合に応じて負担を分け合うのが原則です。

とくに固定資産税や都市計画税に関しては、地方税法第10条2項でも「共有物や共有使用物などによって生じた物件に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を追う」と定められています。

しかし、共有名義不動産では、税金や管理費の支払いが特定の共有者に偏ってしまうというトラブルも見られます。

共有名義不動産に発生する固定資産税の場合、固定資産税の納付書は一旦代表者の下に届きます。その後、代表者が他共有者に共有持分割合に応じて負担分を請求する流れが一般的です。しかし代表者が負担分を請求しても、他共有者の一部が連帯納付義務を無視して請求を無視する可能性があります。固定資産税を未納のままにするわけにはいかないので、代表者が泣く泣く立て替えることになります。

もし他の共有者が固定資産税の負担を拒否しているときは、民法第253条に基づく「共有持分買取請求権」を行使し、税金や管理費を支払わない共有者の共有持分を買い取ることを検討しましょう。「どうせ相手分まで自分が負担するなら、お金を払わない共有者の所有権を自分がもらえばよい」というイメージです。

共有持分買取請求権を行使すれば、立替分の支払いや管理費を1年を超えて拒否を続ける共有者の共有持分を、相当の対価を支払って取得できます。共有持分買取請求権は拒否できないうえに、他共有者の同意なく行使可能です。

参考:e-Gov法令検索「民法第253条
参考:e-Gov法令検索「地方税法第10条2項

共有者が賃料を払わずないまま住んでいる

賃貸運営している共有名義不動産の一室に、他共有者が賃料を支払わずにタダで住み着くトラブルも存在します。状態としては「共有者が共有名義不動産における、自分の共有持分割合分を利用している」とも言えるため、無償で住んでいるからといってそれだけで違法な占有・使用には該当しません。

しかし、民法第249条では「他共有者の合意がないと、自分の共有持分割合を超える使用をするときに、超えた分の使用対価を他共有者へ償還する必要がある」と定められています。

つまり共有者が無償で共有名義不動産の一室に住んでいる場合は、その共有者の共有持分割合を超える範囲において賃料の請求が可能です。賃料を請求するときは、管理の代表者が他共有者に家賃収入を分配しないで解説した不当利得返還請求で支払いを求めます。

なお共有者が居住すること自体は自己持分割合に応じた権利の行使と言えるため、第三者の入居者のように「明け渡し請求」で明け渡しを要求することができません。

参考:e-Gov法令検索「民法第249条

共有名義不動産の賃貸トラブルに悩むなら共有状態の解消も検討を

共有名義不動産の賃貸トラブルが発生したときは、共有名義を維持したままで問題を解決するよりも、そもそも共有状態を解消したほうが抜本的な対策になるケースがあります。「自分1人で運営したい」「経営・管理は他に任せて自分だけ所有権を手放したい」という場合は、共有名義状態の解消を検討してみましょう。

不動産の共有状態を解消する方法は、主に次の4つです。

  • 共有物分割請求をする
  • 他共有者に自分の持分を売却する
  • 専門の買取業者に自分の持分を売却する
  • 共有者全員の合意のもと不動産全体を売却する

それぞれの詳細を見ていきましょう。

共有物分割請求をする

共有物分割請求とは、共有状態となっている不動産について、共有者の1人が共有状態の解消を求める手続きです。民法第256条にて、「各共有者はいつでも共有物の分割を請求できる(5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をあらかじめしておくのは可能)」と定められています。

共有物分割請求を起こされると、他共有者はその請求を原則として拒否できません。そのため、合法的に共有状態の解消に向けて手続きを進められます。

まずおこなうのが、「共有物分割請求協議」による話し合いです。協議でも決まらないときは家庭裁判所にて話し合う「共有物分割請求調停」や、裁判所にて裁判官に判決を下してもらう「共有物分割請求訴訟」を提起します。

共有物分割請求訴訟は「調停前置主義」ではないため、調停を経なくてもそのまま訴訟の提起が可能です(離婚裁判などは先に離婚調停が必要になる)。また民法第258条にて「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、または協議できないときは、その分割を裁判所に請求できる」と定められています。

賃貸経営している共有名義不動産の場合だと、主に「代償分割」か「換価分割」になると考えられます。他には「現物分割」が考えられますが、現物分割は賃貸アパートといった建物に適用するのが難しい方法です。現物分割なら、「賃貸アパート+土地」と「残りの土地すべて」といった分け方になると思われます。

共有物分割請求の種類 概要
代償分割 共有者の1人が他の共有持分を買い取りその分の代償金を支払う方法
換価分割 共有名義不動産をすべて売却し共有持分割合に応じて売却代金を分配する方法
現物分割 土地を分筆で分けるなど不動産を物理的に区分してそれぞれを単独名義で登記する方法

参考:e-Gov法令検索「民法第256条
参考:e-Gov法令検索「民法第258条

他共有者に自分の持分を売却する

自分の共有持分を他共有者に売却すれば、自分だけ共有名義不動産の所有権を手放せます。自己の共有持分だけの売却なら、他共有者の同意を得る必要がありません。

とはいえ、共有持分だけを欲しがる一般の人はほとんどいないため、一般の不動産市場だと共有持分を売却するのは難しいでしょう。しかし、共有名義不動産における他共有者になら売却できるかもしれません。他共有者は自己持分割合が増えると、共有名義不動産における影響力が増すメリットが大きいからです。

売却相場は、「共有名義不動産全体の市場価値✕共有持分割合」です。

専門の買取業者に自分の持分を売却する

自分の共有持分を、専門の買取業者に売却することで共有状態を解消する方法があります。

不動産の買取業者とは、不動産を直接買い取るサービスを提供する事業者です。買い取った不動産を、リフォームや修繕してから賃貸・転売などに活用して利益を得ます。そして専門の買取業者とは、「共有持分専門の買取業者」や「訳あり物件専門の買取業者」などを意味します。

共有名義不動産の共有持分は、権利関係が複雑になるため、一般的な不動産会社や買取業者では対応を断られるケースも珍しくありません。一方で専門の買取業者なら買い取った後でも共有持分を活用できるノウハウを持っているため、適切な査定と買取に対応してくれます。直接買い取りで他に買手を探す必要もないことから、数日~1か月と非常に早い期間で売却できます。

ただし買取業者は買取対応後におこなうリフォームや修繕分の費用も査定額に含めるため、他共有者に売却するときよりも売却相場は低くなる傾向があります。とはいえ、確実かつスピーディーに売却して共有状態を解消したいときは、専門の買取業者への共有持分売却を推奨します。

共有者全員の合意のもと不動産全体を売却する

共有名義不動産における共有者全員の同意が得られれば、共有名義不動産全体を売却できます。

共有名義不動産全体を売却するメリットは、共有状態ではない、普通の不動産と同等の価格で売りやすい点です。共有者全員が売却するなら買手は単独名義の不動産を購入するのと同じであるため、通常の不動産と同じ売却価格で売っても需要が見込まれるからです。共有者全員の同意を得るのは大変ですが、共有者全員に売却の意志があるなら不動産全体の売却を検討してみてください。

共有者うち連絡が取れない人がいる場合は、民法第251条における共有者の請求と不明者以外の他共有者全員の同意をもって、売却が可能かについての裁判を提起できます。また民法第262条の2に基づいて不明者の共有持分を取得についての裁判を提起する方法もあります。

参考:e-Gov法令検索「民法第251条
参考:e-Gov法令検索「民法第262条第2項

共有名義不動産を賃貸に出すには共有者の同意が必要

これから共有名義不動産を賃貸に出そうと考えている場合、賃貸借契約の期間に応じた共有者の同意が必要です。2023年4月1日の民法改正後における、共有名義不動産を賃貸する際の要件は次の通りです。

共有名義不動産の賃貸借期間 契約の長さ 必要な同意数
短期賃貸借 概ね3年以内 共有者の共有持分割合の過半数
長期賃貸借 概ね3年超 共有者全員

それぞれの詳細を見ていきましょう。

共有名義不動産を短期的に賃貸に出す場合は半数の同意が必要

共有名義不動産を短期的に賃貸に出す場合は、共有者の共有持分の過半数の同意が必要です。たとえば共有持分割合がA40%、B20%、C20%、D20%なら、AとBの同意があれば短期的な短期賃貸借を成立させられます。

短期賃貸借か否かは、3年が基準となっています。民法第602条にて定められている建物の賃貸借期間が、3年となっているからです。ただし土地に関しては5年となっており、実務的にはケースバイケースで判断されることが多いようです。

とはいえ一般的な賃貸借契約は2年程度が多いため、大体は短期賃貸借となると想定されます

参考:e-Gov法令検索「民法第602条

共有名義不動産を長期的に賃貸に出したい場合は全員の同意が必要

前述した建物における短期賃貸借の期間を超える賃貸借契約(3年超)を結ぶときは、原則として長期賃貸借に該当します。長期賃貸借は売却と同じく変更行為に該当するため、共有名義不動産の共有者全員の同意がなければ成立しません。

長期賃貸借が管理行為ではなく変更行為に該当する理由は、長期的契約による拘束で不動産の利用処分が困難になるからだと解されています。

共有名義不動産を賃貸に出す際の流れ

共有名義不動産を実際に賃貸に出す際の流れは、主に次の通りです。

  1. 他共有者の合意を取る
  2. 賃貸の方法を選択する
  3. 管理を委託する不動産会社に賃料査定を依頼して契約する
  4. 入居者募集&賃貸借契約の締結

それぞれの詳細を見ていきましょう。

他共有者の合意を取る

共有名義不動産を貸し出すために、必要な分だけ共有者の同意を得ます。短期賃貸借なら、共有持分の過半数が必要です。共有者の半数ではなく、共有持分割合の過半数なので注意しましょう。

法律上は必要な同意を得られれば貸し出せる一方、実際には共有者全員に何かしらの報告をするべきです。同意した共有者以外に報告せず無断で進めると、共有者同士の関係が悪化したりトラブルが発生したりするリスクがあります。それだけではなく、共有者同士の揉め事が原因で入居者に迷惑がかかって定着しない可能性があります。

入居者と賃貸借契約を結ぶときは、原則として共有者全員に連絡し、民法上の同意に加えて気持ちの面での合意を形成するのが無難でしょう。

賃貸の方法を選択する

共有者から必要な同意を得たときは、どのような方法で賃貸するかを決定します。主な賃貸の方法は次の3つです。

  1. 自主管理
  2. 管理委託
  3. サブリース

自主管理|自分たちでアパート経営全般を行う方法

自主管理とは、他の業者に依頼せずすべて自分たちでアパート経営全般をおこなう方法です。一般的には、入居者の募集、家賃の徴収、不動産の維持管理などを自分たちで対応します。専門知識や経験がある人は、自分で契約書の作成や図面作成まで対応することも可能です。

自主管理のメリットは、外部委託料がかからず売上が減らない、家賃や管理方法を自分たちで決められる、入居者の意見を直接聞けるなどが挙げられます。一方で、経営にかかる労力・時間が増える、不動産に関する専門知識が必要になるといった点が自主管理のデメリットとして挙げられます。

なお自主管理を選ぶ場合でも、入居者の募集と契約業務は不動産会社に依頼し、入居者の対応は自分たちでおこなう方法が効率的かつスムーズです。不動産会社に募集や契約業務を任せるときは、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介のいずれかの契約を選んで締結します。

売主への縛りが多い代わりにもっとも積極的な販売活動が期待できる

媒介契約の種類 概要
一般媒介 1社だけでなく複数の不動産会社と重複して依頼できる
募集が入居したい人の目に留まる可能性が上がる
専任媒介 契約を結んだ1社と貸主のみが募集行為をおこなえる
一般媒介よりも不動産会社の積極的な販売活動を期待しつつ自分でも募集できる
専属専任媒介 契約を結んだ1社のみが募集行為をおこなえる

管理委託|アパート経営全般を不動産会社に委託する方法

管理委託とは、アパート経営全般を不動産会社や管理会社に依頼する方法です。

管理委託をした場合、共有名義不動産の所有者たちがおこなうのは「本当に入居させるかの最終判断」「設備のメンテナンスや修理などに関する最終判断」などの承認行為です。募集、契約、維持管理に加えて、入居者との直接やり取りや家賃請求などもすべて委託先に一任できます。

管理委託のメリットは、専門家の経営・管理によるトラブルの低減や回避につながる、入居者の満足度が向上する、遠方にある不動産を管理・運用できるなどが挙げられます。一方で、管理委託手数料や仲介手数料などが発生する分だけ売上が減少するのがデメリットです。

サブリース|サブリース会社に賃貸して入居者を転貸する方法

サブリースとは、貸主がサブリース会社に貸し出した後、サブリース会社が入居者に貸し出す「転貸」をおこなう方法です。家賃・敷金礼金の設定・預かりから入居審査、契約行為、維持管理費用の支出(経年劣化は所有者の負担となるケースが多い)などをすべてサブリース会社が代行します。回収した家賃はサブリース会社が受け取り、貸主はサブリース会社からサブリース賃料を得ます。

サブリース会社のメリットは、経営・管理関係全般を任せられることに加えて、入居者がいなくても収入を得られる点です。貸主はサブリース会社に貸し出しており、貸主にお金を支払うのは入居者ではなくサブリース会社だからです。サブリース会社は、貸主に対して空室や家賃滞納に関する保証を含めてサブリース賃料として貸主に支払います。

ただし管理委託と比較すると、サブリースのほうが費用が高額になるのが一般的です。サブリース会社は「貸主から相場より安く借り、さらにそれを相場として転貸して利益を得る」というビジネスモデルであり、貸主側の手元に入る家賃は満室時の相場の80〜90%となります。

管理を委託する不動産会社に賃料査定を依頼して契約する

不動産会社に管理を委託する場合は、委託先に賃料査定を依頼します。賃料査定とは、賃貸物件とする予定の不動産において、適切な賃料を算出してもらうことです。

不動産会社の賃料査定は担当者の専門知識・実務経験、不動産の間取りや設備、周辺環境、取引情報などを基に算出するため、一般の人が設定する賃料よりも実態に合った金額に設定しやすくなります。より正確性の向上や偏りの防止につなげるには、賃料査定を複数の不動産会社に依頼するのがよいでしょう。

加えて、自分でも家賃相場を調べて比較すれば、相場から外れた査定をしている不動産会社を判断しやすくなります。

入居者募集&賃貸借契約の締結

不動産会社や管理会社を決めたら、入居条件を決めて実際に入居者を募集します。

管理委託の場合、広告掲載などの販売活動、入居希望者への説明や内覧などは、原則として不動産会社や管理会社が対応してくれます。自主管理のときは、自分で対応する範囲を確認しておきましょう。

募集を見た入居希望者が入居意思を固めて応募してきたときは、入居者に関する情報が記載された入居申込書を確認します。入居者の確認は管理委託でも貸主自身がおこなうのが一般的です。入居者の勤務先、年収、保証人の有無などを確認し、最終的に入居希望者と賃貸借契約を結ぶのかを決定します。

共有名義不動産を賃貸に出す場合の2つの注意点

共有名義不動産を賃貸に出す場合、共有名義不動産ならではの注意点が存在します。以下では、共有名義不動産を賃貸に出す場合の注意点である「共有者間でも契約書を締結しておく」「賃貸借契約の解除には過半数の同意が必要」の2点を解説します。

共有者間でも契約書を締結しておく

賃貸借契約を締結するときは、入居者だけでなく共有者間でも契約書を取り交わしておくことをおすすめします。賃貸借契約に関して共通の決まりごとを明確にしておき、後からトラブルに発展するのを防ぐ意味があります。

契約書には、「賃料をどのように分配するのか」「修繕が発生したときの負担割合はどのくらいか」「賃貸借契約における代表者は誰か」などを記載しましょう。契約書を作成する際には、弁護士や行政書士などの専門家の監修の下で、法的効力や実効性に問題のないものを作成してください。

また共有者同士が家族や友人などの親しい間柄でも、なあなあにせず契約書は作成しておきます。取り決めなかったことでトラブルとなり、親しかった人間関係が悪化するリスクがあります。

賃貸借契約の解除には過半数の同意が必要

共有名義不動産における借主との賃貸借契約は、契約解除をする場合でも、共有持分割合の過半数の同意が必要です。ここで言う解除とは「契約満了にともなう貸主・借主の同意の下でおこなわれた解除」ではなく、「借主側になんらかの瑕疵があって貸主側から借主に解除を申し出るケース」です。

ただし、共有持分の過半数の同意を得て解除を申し出たとしても、借主との賃貸借契約を一方的に解除できるわけではありません。途中解除が認められる正当な理由がない限り、原則として解除はできないとされています。

解除に至る正当な理由として、「借主が重大な契約違反をしている」「借主が家賃滞納を繰り返している」「借主が騒音、異臭、嫌がらせなどの迷惑行為をしている」などが挙げられます。

まとめ

共有名義不動産を賃貸物件として経営・管理する場合、共有者同士で経営方針を合わせたり収支・利用方法について特定の誰かに偏らないようにしたりなど、共有名義不動産ならではのトラブルに対応する必要があります。

トラブルリスクの低減・回避を第一に考えるなら、共有状態の解消を優先するのがよいでしょう。共有状態の解消は、共有物分割請求、自己の共有持分の売却、共有名義不動産全体の売却などの方法が挙げられます。単独名義で賃貸を経営・運用するなら、自分がすべての共有持分を買い取る、共有物分割請求にて代償分割をおこなうなどの方法が考えられます。

共有名義不動産を賃貸に出すときは、賃貸借契約を結ぶ前に共有者同士で話し合う、不動産会社や管理会社を選ぶ、入居者を募集して賃貸借契約を締結するという流れで進めていきます。賃貸に出すときは、共有者間での契約書作成や賃貸借契約解除時の共有者の同意についても確認しておいてください。

もし共有持分や共有名義不動産の売却を検討しているときは、共有持分や共有名義不動産の買取実績が豊富な買取業者である、弊社「クランピーリアルエステート」へぜひご相談ください。

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