共有名義の不動産は賃貸に出せる?必要な同意・家賃の分け方・トラブル対策

共有名義の不動産でも、第三者へ賃貸することは可能です。
ただし、共有者の1人が「自分も所有者だから」と自由に貸せるわけではありません。共有名義不動産を賃貸に出す場合には、共有者からの同意が原則必要になります。
必要な同意は、共有者の人数ではなく持分割合や賃貸借契約の種類によって変わります。
※「過半数」は共有者の人数ではなく持分割合で判断し、50%ちょうどでは足りません。
また、賃貸を始めた後も、家賃の分配、修繕費や固定資産税の負担、契約更新、共有者の1人による無償使用などをめぐってトラブルになることがあります。
実際にクランピーリアルエステートには、他共有者が家賃を受け取っていて分配されない、親族が無償で住み続けている、自分は利用していないのに固定資産税だけ負担しているといった相談が寄せられています。
この記事では、共有名義不動産を賃貸に出すための同意要件から、賃貸前に決めておくこと、起こりやすいトラブル、その解消方法まで順番に解説します。
共有名義不動産を賃貸に出すときの要件
共有名義の建物を普通借家契約で第三者へ貸す場合は、原則として共有者全員の同意を得ておく必要があります。
ただし、すべての賃貸借で全員同意が必要なわけではありません。
民法252条4項では、一定期間を超えない賃借権などについて、持分価格の過半数による決定で設定できると定めています。建物なら3年、山林以外の土地なら5年などが上限です。
つまり、共有名義不動産を賃貸に出す際には、「契約期間が何年か」だけを見るのではなく、普通借家なのか定期借家なのか、借地借家法によって契約が長期化する可能性があるのかまで確認して、必要な同意を得なければなりません。
参考:e-Gov法令検索「民法」
普通借家契約で貸す場合は原則として共有者全員の同意が必要

共有名義の建物を普通借家契約で第三者へ貸す場合は、原則として共有者全員の同意が必要です。持分価格の過半数を持つ共有者が賛成していても、普通借家契約ではそれだけで足りないのが基本です。
そのため、共有者の1人でも賃貸に反対している場合は、原則として普通借家契約を進めることはできません。まずは共有者全員で、賃貸すること自体や賃料、契約条件などについて合意を得る必要があります。
普通借家契約で全員同意が必要と考えられる背景には、借地借家法による借主保護があります。契約書に「2年間」と記載していても、一定の条件を満たせば法定更新されるほか、貸主が更新を拒絶したり解約を申し入れたりするには原則として正当事由が必要です。
法務省も、借地借家法が適用され、約定した期間内に終了することが確保されていない賃貸借については、基本的に共有者全員の同意が必要と整理しています。
ここで重要なのは、契約書上の期間だけでは同意要件を判断できないことです。「建物の賃貸借は3年以下なら過半数で決められる」からといって、「2年の普通借家契約なら過半数で貸せる」とはなりません。
なお、もともと賃貸物件として建てられ、従前から共有者が賃料収入を得る目的で運用していた建物などについて、個別事情から賃貸を「管理行為」として持分の過半数で決定できると判断された裁判例もあります。
参考:法務省「共有制度の見直しに関する資料」
3年以下の定期建物賃貸借は持分価格の過半数で決められる場合がある

契約期間が3年以下の定期建物賃貸借であれば、持分価格の過半数によって設定できる場合があります。
定期建物賃貸借は、普通借家契約と異なり、原則として期間満了によって契約が終了し、自動的な更新はありません。
そのため、「3年以内」という民法252条4項の期間内に確実に終了する契約であれば、共有者全員の同意ではなく、持分価格の過半数による決定で賃貸できる余地があります。
ただし、定期建物賃貸借として有効にするには、書面または電磁的記録で契約を締結するだけでなく、契約前に「更新がなく、期間満了によって終了する契約であること」を借主へ書面等で説明する必要があります。
この説明を行わない場合、更新がない旨の特約は無効になります。また、契約期間が1年以上の場合は、期間満了による終了を借主へ通知するルールもあるため、契約締結時だけでなく終了時の手続にも注意が必要です。
建物について、民法252条4項上の期間は3年以内です。
土地の賃貸借では同項上5年以内が基準ですが、建物所有を目的とする土地賃貸借など、借地借家法によって長期間の存続が保護される契約では別途注意が必要です。「5年以内なら土地も必ず過半数でよい」とは判断しないでください。
参考:e-Gov法令検索「借地借家法」
民法252条の「過半数」は、共有者の人数の半分を超えるという意味ではありません。各共有者が持っている持分の割合を合計して50%を超えているかで判断します。
たとえば、A・B・Cの3人で共有しており、「A:50%」「B:30%」「C:20%」の持分割合を想定します。
Aだけが賃貸に出すことを賛成しても持分は50%ちょうどなので、「過半数」にはなりません。AとBが賛成すれば合計80%となり、持分価格の過半数を満たします。
一方、A・B・Cがそれぞれ3分の1ずつ持っているなら、3人のうち2人が賛成すれば持分の3分の2となるため過半数です。
共有者の同意が得られない場合は勝手に賃貸に出さない
必要な同意を得られないまま、共有者の1人だけで第三者との賃貸借契約を進めるのは避けてください。
「自分も所有者なのだから、自分の判断で貸してもよい」と考えるかもしれませんが、共有持分を所有していることと、不動産全体を第三者へ自由に貸せることは別問題です。
必要な同意なしで賃貸すると共有者とのトラブルになる可能性がある
普通借家契約など、本来共有者全員の同意が必要な賃貸借を一部の共有者だけで締結すると、契約の効力を他の共有者から争われる可能性があります。
法務省の資料でも、借地借家法が適用される建物賃貸借を持分過半数だけで設定した場合、契約は基本的に無効になると整理されています。
問題は、共有者同士が揉めるだけではありません。すでに借主が入居していれば、「誰が正しい貸主なのか」「このまま住み続けられるのか」といった問題に借主まで巻き込む可能性があります。
さらに、共有者の1人が反対しているにもかかわらず、その共有者の名前を無断で賃貸借契約書の貸主欄に記載することも避ける必要があります。賃貸するための多数決と、他人の名義を使って契約を締結する権限は別だからです。
賃貸するか意見がまとまらない場合の選択肢
共有者間で賃貸の方針がまとまらない場合は、無理に契約を進めるのではなく、次の順番で解決策を検討します。
たとえば「普通借家で長期間貸すことには反対だが、3年間だけなら構わない」という共有者がいるのであれば、3年以内の定期建物賃貸借へ条件を見直すことで合意できる可能性があります。
一方、賃貸するかどうかだけでなく、管理・修繕・家賃分配などあらゆる場面で対立が続いているのであれば、賃貸方法だけを変えても根本的な解決にならないことがあります。その場合は、共有関係そのものを解消する方法まで含めて検討した方がよいでしょう。
共有名義不動産を賃貸する前に共有者間で決めておくこと
法律上必要な同意を得られたとしても、それだけで共有名義不動産の賃貸準備が終わるわけではありません。
賃貸開始後の運営ルールが曖昧なことは、共有者間のトラブルを招いたり、もともとの対立を深刻化させたりする原因の一つです。
- 家賃を誰が受け取るのか決めていなかった
- 修繕費を誰が払うのか決めていなかった
- 代表者がどこまで単独で判断してよいのか決めていなかった
少なくとも、家賃・費用・修繕・管理窓口・契約更新については事前に決めておきましょう。
家賃収入をどのように分配するか
共有者全員が賃貸人となる一般的なケースでは、特別な取り決めがなければ、持分割合を基準として家賃収入を分けるのが基本です。
たとえば、Aが2分の1、BとCが4分の1ずつ所有しており、必要経費控除前の家賃が月20万円なら、持分を基準とした配分はAが10万円、BとCが5万円ずつとなります。
ただし、実際には管理費や修繕費などの必要経費を誰が支払っているかも考慮する必要があります。
代表者の口座へ家賃をまとめて入金するのであれば、次の項目まで決めておくとよいでしょう。
- 家賃を受け取る口座
- 必要経費として控除する費用
- 分配割合
- 分配日
- 収支報告の方法
なお、持分過半数で設定した短期賃貸借で、一部の共有者が賃貸人になっていない場合などは、家賃債権の帰属も単純に「全共有者へ持分割合で配ればよい」とは限りません。契約上誰が賃貸人になるのかを含めて確認する必要があります。
修繕費・管理費・税金を誰が負担するか
民法253条1項では、各共有者は持分に応じて管理費用など共有物に関する負担を負うとされています。そのため、管理費や通常必要となる修繕費などについては、共有者間で別の取り決めをしていなければ持分割合を基準として負担するのが基本です。
ただし、固定資産税や都市計画税については少し注意が必要です。
地方税法10条の2では、共有物に対する地方税について共有者が連帯して納付義務を負うとされています。
「自分の持分は3分の1だから、自治体から請求されても3分の1だけ払えばよい」という関係ではありません。自治体に対する納税義務と、共有者間で最終的に誰がいくら負担するかは分けて考える必要があります。
賃貸開始前に、固定資産税・管理費・火災保険料・修繕費などを誰がいったん支払い、いつ精算するのか決めておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「地方税法」
賃貸管理の代表者とその権限を決める
共有者全員が毎回借主や管理会社とやり取りすると、意思決定が遅くなり、回答内容が食い違う原因にもなります。そのため、実務上は共有者の中から代表者を決めて、賃貸管理の窓口を一本化する方法が考えられます。
ただし、代表者を決めるだけでは不十分です。たとえば、以下のような権限まで具体的に決めてください。
民法では、持分価格の過半数によって「共有物の管理者」を選任する制度も設けられています。ただし、管理者であっても、不動産全体の売却や著しい変更など、共有者全員の同意が必要な行為まで自由に行えるわけではありません。
共有者間の取り決めを書面に残す
共有者が親子や兄弟など近しい関係でも、賃貸に関する取り決めは書面に残しておくことをおすすめします。
口頭だけで決めてしまうと、数年後に「そんな話は聞いていない」「修繕費まで自分が負担するとは言っていない」「家賃は均等に分ける約束だった」と認識が食い違う可能性があるためです。
少なくとも、次の内容は書面化しておくとよいでしょう。
- 家賃の受取方法と分配割合
- 管理費・修繕費・税金などの負担方法
- 修繕を行う際の意思決定方法
- 管理代表者とその権限
- 賃貸借契約を更新・終了するときのルール
- 不動産全体や共有持分を売却する場合の連絡方法
- 収支報告の頻度と方法
契約の内容が複雑な場合や、一部の共有者とすでに意見が対立している場合は、弁護士へ書面の内容を確認してもらうと安全です。
共有名義不動産の賃貸・管理で起こりやすい4つのトラブル
共有名義不動産では、借主との問題だけでなく、共有者同士の管理・収益・費用負担をめぐるトラブルが起こります。
代表的なのは次の4つです。
賃貸や修繕などの運営方針について意見が割れる

「もっと高い家賃で募集したい」「空室を埋めるため値下げしたい」「古くなった設備を交換したい」「大規模なリフォームをして収益性を上げたい」など、共有者同士で賃貸経営の考え方が違うことは珍しくありません。
重要なのは、すべての工事や管理行為で同じ同意が必要なわけではないことです。
たとえば、雨漏りを防ぐための応急修繕と、建物の用途まで変える大規模な改造では必要な同意が異なります。「修繕だから全員の同意が必要」「過半数があればどんな工事でもできる」と決めつけないことが重要です。
それでも管理方針について継続的に対立する場合は、賃貸経営だけの問題ではなく、共有状態そのものが原因になっている可能性があります。
代表者が家賃収入を他の共有者に分配しない

共有者の1人が代表して家賃を受け取っていると、「家賃がいくら入ったのか教えてくれない」「数か月分の家賃が振り込まれていない」「勝手に経費を引いている」といったトラブルが起きることがあります。
この場合、まず行うべきなのは訴訟ではなく、実際の収支を明確にすることです。
賃貸借契約書、管理会社からの送金明細、通帳、修繕費や管理費の領収書などを確認し、「家賃収入-必要経費-すでに分配された金額」を整理します。
共有者間の合意や契約関係に応じて、未分配分の精算請求や不当利得返還請求などを検討できます。話し合いで支払われない場合は、内容証明郵便などで請求記録を残し、それでも解決しない場合に弁護士への相談や訴訟を検討する流れが現実的です。
クランピーリアルエステートには、「他の共有者が家賃を受け取っているが自分には分配されない」「以前は分配されていたが途中から止まった」「収益物件の持分だけを手放したい」といった相談が実際に寄せられています。
このような相談では、すぐに持分売却だけを考えるのではなく、まず賃貸借契約の内容、誰が家賃を受け取っているか、管理会社が入っているか、共有者間で分配方法を決めていたかを確認することが重要です。
税金や管理費の負担が一部の共有者に偏る

共有不動産では、「固定資産税をずっと自分だけが払っている」「修繕費を立て替えたまま返してもらえない」という問題も起こります。
民法253条では、共有者が持分に応じて共有物の費用・負担を負うことが定められているため、他共有者の負担分を立て替えた場合には、精算を求めることが考えられます。
また、同条2項では、共有者が共有物に関する負担義務を1年以内に履行しない場合、他の共有者が相当の償金を支払ってその持分を取得できる制度が定められています。
ただし、1年間支払わなければ持分が自動的に移るわけではありません。対象となる負担や手続には個別判断が必要なため、利用を検討する場合は弁護士へ相談してください。
クランピーリアルエステートには、「自分は物件を利用していないのに固定資産税だけ負担している」「税金や維持費の負担から離れたい」といった相談が実際に寄せられています。こうしたケースでは、誰が納付してきたかだけでなく、現在の持分割合、滞納・差押えの有無、共有者間で費用負担の取り決めがあるかを確認します。
共有者の1人が無償で住み続けている

共有者の1人が共有不動産に住んでいるからといって、それだけで不法占拠になるわけではありません。
民法249条1項では、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用をすることができるとされています。
一方、別段の合意がないにもかかわらず、自己の持分を超えて共有物を使用している場合は、他の共有者に対してその使用の対価を支払う義務があります。
たとえば兄弟2人が2分の1ずつ持つ実家に兄だけが居住している場合、事情によっては弟が兄へ家賃相当の使用対価を請求できることがあります。
ただし、「以前から無償で住むことを共有者全員が認めていた」「誰が住むかについて過去に合意していた」といった事情があれば結論は変わります。
また、相手も共有者として不動産を使用する権利を持っているため、「家賃を払わないなら今すぐ出ていけ」と単純に明渡しを求められるわけでもありません。使用対価を請求するのか、共有物分割などによって共有状態自体を解消するのかを検討する必要があります。
クランピーリアルエステートには、他共有者・元配偶者・親族が対象不動産に住んでおり、「家賃を受け取れていない」「退去予定がない」「自分の持分だけ売りたい」といった相談が実際に寄せられています。
このようなケースでは、誰が住んでいるかだけでなく、賃貸借・使用貸借など居住の根拠、誰が費用を負担しているか、売却後も居住が続く可能性まで確認することが重要です。賃貸方法だけを変えても対立が解消しない場合は、今後も共有関係を続けるのかまで検討します。
共有名義不動産を賃貸に出すまでの流れ
共有名義不動産を貸す場合でも、入居者募集や賃料査定など基本的な流れは通常の賃貸と大きく変わりません。異なるのは、募集を始める前に共有者間の権限関係を整理する必要があることです。
- 共有者から必要な同意を得る
- 家賃・管理方法・費用負担などを共有者間で決める
- 管理会社・仲介会社を選び、賃料を決める
- 入居者を募集して賃貸借契約を締結する
共有者から必要な同意を得る
最初に登記事項証明書などで、次の点を確認します。
- 誰が共有者なのか
- 各共有者の持分はいくらか
- すでに共有者の誰かが使用していないか
- 既存の賃貸借契約がないか
そのうえで、普通借家・定期借家など予定している契約形態から、必要な同意を判断してください。普通借家契約であれば原則として共有者全員、3年以下の定期建物賃貸借などであれば持分価格の過半数で決められる可能性があります。
家賃・管理方法・費用負担などを共有者間で決める
必要な同意を得たら、実際の運営ルールを決めます。
- 希望家賃
- 家賃の分配
- 管理会社へ支払う費用
- 修繕費の負担
- 管理代表者
- 更新・解約時の決定方法
ここを飛ばして入居者募集を始めると、契約締結の直前や入居後に共有者間で意見が変わり、借主や不動産会社まで巻き込む可能性があります。
管理会社・仲介会社を選び、賃料を決める
共有者間の条件がまとまったら、賃貸仲介会社や管理会社へ相談して賃料を決めます。
賃料は、周辺の募集事例だけでなく、物件の築年数、広さ、設備、駅からの距離、現在の賃貸需要などを踏まえて査定してもらいます。
共有者が遠方に住んでいる、共有者同士で日常的に連絡を取りにくいといった場合は、入居者対応や家賃回収を管理会社へ委託する方が管理しやすいでしょう。
ただし、管理会社へ委託しても、共有者間の法律上の意思決定まで代わりに行ってもらえるわけではありません。
入居者を募集して賃貸借契約を締結する
条件が決まったら、入居者募集・審査を行い、賃貸借契約を締結します。
普通借家契約を共有者全員の同意で締結するのであれば、基本的には共有者全員を賃貸人として整理する方法が分かりやすいでしょう。代表者が他共有者に代わって契約するのであれば、誰からどの範囲の代理権を与えられているのかを明確にしておきます。
一方、持分過半数で設定する短期賃貸借では、反対した共有者を当然に賃貸人として契約書へ記載できるわけではありません。共有者間の「賃貸するという意思決定」と、「誰が賃貸人として契約書へ署名するのか」は別の問題なので注意してください。
賃貸を続けるのが難しい場合は共有状態の解消も検討する
共有名義不動産でトラブルが起きたからといって、必ず売却する必要はありません。
家賃分配や管理ルールを整理すれば今後も賃貸経営を続けられるのであれば、まず共有者間の取り決めを見直す方が合理的です。
一方、「何を決めるにも話し合いがまとまらない」「家賃や費用をめぐるトラブルが何度も起きる」「もう他共有者と関わりたくない」という状態であれば、共有関係そのものの解消も検討します。
他の共有者に自分の持分を売却する
自分は共有関係から離れたいものの、他の共有者が不動産を残したい場合は、自分の共有持分を他共有者へ売却する方法があります。
自己の共有持分だけであれば、原則として他の共有者全員の同意を得ずに売却できます。
他共有者としても持分を買い増すことで、不動産を単独所有できたり、自分の持分割合を増やせたりするため、購入に応じる可能性があります。
ただし、売買価格は必ずしも「不動産全体の市場価格×持分割合」になるとは限りません。共有持分のみでは不動産全体を自由に処分できないため、物件の賃貸状況や共有者間の関係、持分割合なども踏まえて価格を決めます。
自分の共有持分だけを第三者・買取業者へ売却する
他共有者が買い取ってくれない場合でも、自分の共有持分だけを第三者へ売却することは可能です。ただし、一般の個人が共有持分だけを購入するケースは多くありません。
そのため、早く共有状態から離れたい場合は、共有持分を扱う専門の買取業者へ売却する方法があります。自己持分だけの売却であれば、原則として他共有者の同意は不要です。
一方、共有持分だけを取得する買主は、購入後も他共有者との権利調整や賃貸借関係への対応が必要になります。そのため、不動産全体を通常売却する場合と比較すると、持分単独の買取価格は低くなる傾向があります。
賃貸中の物件を査定してもらう場合は、次の資料を用意しておくと現状を正確に伝えやすくなります。
- 登記事項証明書
- 賃貸借契約書
- 現在の賃料
- 入居状況
- 管理費・修繕費の状況
- 共有者間の取り決め
共有物分割請求で共有状態を解消する
共有者間の話し合いで共有状態を解消できない場合は、共有物分割請求を行う方法もあります。
民法256条では、原則として各共有者はいつでも共有物の分割を請求できるとされています。まずは共有者同士で、「誰か1人が他の共有持分を買い取る」「不動産を売却して代金を分ける」などの方法を協議します。
協議でまとまらなければ、共有物分割訴訟によって裁判所へ分割を求めることができます。裁判では、物理的に分ける現物分割、共有者の1人が取得して他共有者へ金銭を支払う価格賠償、競売などが検討されます。
賃貸マンションや戸建ては物理的に分けにくいため、実際にどの方法が適するかは物件ごとに異なります。
共有者全員で不動産全体を売却する
共有者全員が「今後は賃貸を続けない」という結論になったのであれば、不動産全体を売却する方法があります。
不動産全体の売却には、原則として共有者全員の同意が必要です。
全員が合意できれば、共有持分だけではなく不動産全体を通常の物件として市場へ売却できるため、一般的には持分だけを個別売却するより買主を見つけやすくなります。
「賃貸を続けるか」「誰かが単独所有するか」「全員で売却するか」を共有者全員で比較したうえで決めるとよいでしょう。
共有名義不動産の賃貸についてよくある質問
共有名義不動産を1人の判断だけで貸すことはできますか?
「共有者が1人だけで判断した」という理由だけで、賃貸できる・できないは決まりません。必要な同意は、共有者の人数ではなく持分割合と賃貸借契約の内容で判断します。
普通借家契約では原則として共有者全員の同意が必要です。一方、3年以下の定期建物賃貸借など、持分価格の過半数で決められる賃貸借であれば、1人の共有者だけで50%を超える持分を持っているケースでは、その共有者の賛成だけで要件を満たす場合があります。
共有者の1人が賃貸に反対している場合はどうすればよいですか?
必要な同意によって結論が異なります。
普通借家契約など共有者全員の同意が必要な賃貸借であれば、1人でも反対している状態で原則として契約を進めることはできません。
一方、3年以下の定期建物賃貸借など持分価格の過半数で決められる契約なら、反対者がいても賛成する共有者の持分が50%を超えていれば設定できる場合があります。
ただし、現在その不動産を使用している共有者に特別な影響を与える場合などは、その共有者の承諾が別途必要になることがあります。
共有名義不動産の家賃収入は誰のものになりますか?
共有者全員が賃貸人となっている一般的なケースでは、共有者間で別の取り決めがなければ、持分割合を基準として家賃収入を分けるのが基本です。
代表者が一括して受け取る場合でも、代表者1人の収入になるわけではありません。ただし、一部の共有者のみが賃貸人となる短期賃貸借などでは扱いが異なることがあるため、賃貸借契約上の賃貸人と共有者間の分配ルールを確認してください。
共有名義不動産の家賃収入は確定申告が必要ですか?
共有名義だからといって、代表者1人だけが全額を申告するわけではありません。各共有者は、自分に帰属する家賃収入と必要経費を基に不動産所得を計算し、確定申告が必要かを判断するのが基本です。
たとえば、給与を1か所から受けて年末調整されている一定の給与所得者は、給与・退職所得以外の所得金額が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合があります。ただし、20万円基準はすべての人に適用されるわけではありません。所得状況によって申告要否が変わるため、税務署や税理士へ確認してください。
なお、20万円基準は所得税の確定申告に関するルールです。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。自治体の案内も確認してください。
共有者の1人が所在不明の場合でも賃貸できますか?
一定の条件を満たし、裁判所の手続を利用することで賃貸を進められる場合があります。ただし、所在不明の共有者がいるからといって、他の共有者だけで自由に貸せるわけではありません。
管理事項については、共有者が所在不明の場合や、一定期間を定めて回答を求めても賛否を明らかにしない場合、裁判所の決定を得たうえで、その共有者を除いた持分価格の過半数によって決定できる制度があります。
一方、共有者全員の同意を要する変更行為については、共有者が単に反対している・返答しないというだけではなく、「共有者を知ることができない、または所在を知ることができない」場合に利用できる別の裁判手続があります。
「反対」「無回答」「所在不明」では利用できる制度が異なるため、個別に確認してください。
まとめ
共有名義不動産を賃貸に出すことはできますが、必要な同意は契約の種類によって異なります。
特に押さえておきたいのは、普通借家契約なら原則として共有者全員の同意が必要であり、3年以内だから自動的に過半数でよいわけではないという点です。
3年以下の定期建物賃貸借など、期間内に終了することが確保された契約であれば、持分価格の過半数で決められる場合があります。
賃貸することが決まった後は、家賃の分配、管理費や修繕費、代表者の権限、契約更新なども共有者間で書面化しておきましょう。
すでに共有者間でトラブルが起きている場合も、すぐに持分を売却する必要はありません。ルールを整理すれば今後も賃貸を続けられるのであれば、まずは共有者間での調整を優先するべきです。
一方、賃貸・修繕・家賃分配などをめぐって対立が続き、「今後は共有者との関係から離れたい」という場合は、他共有者への持分売却、共有持分専門の買取業者への売却、共有物分割なども選択肢になります。
クランピーリアルエステートでも、賃貸中の共有不動産をめぐる共有者トラブルから、最終的に自己持分の売却をご相談いただくケースがあります。
賃貸を続けるべきか、共有状態を解消するべきか迷っている場合は、まず現在の持分割合・賃貸状況・共有者との関係を整理したうえで、最も負担の少ない方法を検討しましょう。
