共有持分の土地を分筆するには?流れや費用、分筆できない時の対処法
土地を複数人で共有している場合、共有持分の割合に応じて分筆することも可能です。分筆は、登記簿上1つの土地を複数に分けて登記し直すことで、通常は土地家屋調査士に依頼します。
土地上に建物があっても分筆は可能です。ただし、最低敷地面積などの規制によって分筆できないケースもあります。
分筆登記は、土地の境界や隣地所有者の数などによって長い期間を要することもあります。また、分筆登記にかかる費用は、土地家屋調査士の報酬が25~100万円程度、所有権移転登記費用が5~10万円が目安です。
土地を分筆することで、単独所有となった土地を自由に活用できるほか、共有持分と比べ高値で売れやすくなる可能性があります。
その一方で、分筆には共有者全員の同意が必要なうえ、分筆の仕方によっては反対に資産価値が低下する可能性もあるため注意しなければなりません。
分筆登記するにあたって他の共有者の同意が得られない場合、家庭裁判所に共有物分割請求を申し立てる方法などもありますが、時間と手間、費用がかかるうえ、希望通りの分割方法になるとは限りません。
このような場合、自分の共有持分のみを共有持分専門の買取業者へ売却する方法があります。
自分の共有持分の売却には他の共有者の同意は必要ありません。買取業者と価格面で合意できれば、早期に売却できることもあります。
この記事では、共有持分を有する土地を分筆する方法やメリット、デメリットなどについて解説します。
目次
共有の土地は共有持分に応じて分筆可能
土地の所有形態として、1人が所有する「単有(単独所有)」と複数人で所有する「共有」があります。
共有は、それぞれが一定の割合で土地を所有する形態です。3人で均等に所有する場合はそれぞれ3分の1ずつ土地の権利を有し、それぞれの持ち分を「共有持分」といいます。登記簿上は「持分3分の1」という形で表記されるのが一般的です。
共有する土地は、それぞれの持ち分の割合に応じて分筆できます。
分筆とは、登記簿上1つの土地を複数の土地に分けて登記しなおすことです。一般的には、依頼を受けた土地家屋調査士が手続きします。
分筆された土地それぞれについて登記簿が作成されるため、1つ1つの土地ごとに地目(宅地や田、畑、山林など土地の種類を表す)や権利関係を登記することが可能です。
以下、分筆できるケースとできないケース、分割との違いについて解説します
- 土地上に建造物があっても分筆できる
- 市街化調整区域など分筆が不可能な土地もある
- 分筆と分割の違いは「登記簿上でも土地が分かれることになるかどうか」
土地上に建造物があっても分筆できる
更地でなく土地上に建物がある場合でも分筆できます。
このとき、一般的には、分筆後に建物が含まれる土地と建物がない土地に分かれるように分筆案が考えられますが、建物が2つの土地にまたがる場合でも分筆は可能です。
また、土地を分筆すると分筆前と地番が変わります。通常、土地を分筆した場合、分筆前の地番に枝番をつけて新しい地番とします。例えば、「〇〇町一丁目5番」の土地を2つに分筆した場合「〇〇町一丁目5番1」と「〇〇町一丁目5番2」といった形です。
そして、建物がある土地を分筆する場合、分筆後の土地の地番に合わせて建物の所在地を変更しなければなりません。これは建物の登記簿には、土地の所在地(地番)も記載されているからです。
建物が複数の土地(地番)にまたがる場合は、出入口の位置、面積の割合などを勘案して、どちらか1つの地番を選択します。
市街化調整区域など分筆が不可能な土地もある
市街化調整区域などでは、自由に分筆できない場合もあります。
都市計画法では、市街化地域と市街化調整区域を定めています。
市街化地域が「すでに市街地を形成している、もしくはおおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図る地域」であるのに対し、市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき地域」です。
そのため、市街化調整区域内の土地については、過度な開発行為を防止するために、各自治体において最低敷地面積などが定められている場合があります。
また、市街化調整区域以外でも、街の景観や良好な居住環境を維持するために最低敷地面積などの規制が設けられている場合があります。
例えば、横浜市では、市街化区域では原則100㎡以上、市街化調整区域では原則125㎡以上の最低敷地面積の制限を設けています。各自治体で制限内容は異なるため、役所の宅地開発課などで確認しましょう。
なお、分筆できない場合でも、共有持分専門の買取業者であればそのまま買い取ってもらえる場合があります。共有持分を処分したい、分筆して単独所有にすることが難しい場合、共有持分専門の買取業者に売却するのもおすすめです。
分筆と分割の違いは「登記簿上でも土地が分かれることになるかどうか」
土地を「分割」することと「分筆」することは、1つの土地を分ける意味では同じですが異なるものです。
分割は、登記簿上は1つの土地のまま任意のラインで土地を分割したと仮定するものです。
例えば、すでに建物が建っている土地を分割するとします。建物が建っている土地と建っていない土地に分け、建物が建っていないほうの土地に新たに建物を新築する場合、登記していなくても、それぞれの土地が接道義務など建築基準法に適合していれば新築することが可能です。
一方、分筆は、登記簿上も2つの土地に分けます。分割と異なり、分割後の土地は、それまでとは地番を含めて異なる土地になります。
分割と分筆の違いは、例えば、土地に抵当権を設定する場合、分割は土地全体に対して抵当権を設定する必要がありますが、分筆の場合、それぞれの土地に抵当権を設定することが可能です。
共有持分に応じて土地を分筆する流れ
ここでは、共有持分に応じて土地を分割する流れを解説します。
分筆にかかる期間は、土地の形状や境界ポイントの数、隣接する土地所有者の数などで変わります。早ければ10日程度で終わることもありますが、土地の状況によっては、2~3カ月以上の期間を要します。
- 土地家屋調査士に分筆手続きを依頼する
- 土地家屋調査士が登記簿上の境界や現地の状態を調査する
- 分筆案を作成する
- 役所の担当者に現地で確認してもらう
- 隣接する土地所有者に立ち会ってもらい、分筆案の確認を行う
- 境界の目印となる「境界標」を現地に設置する
- 土地分筆登記を実施する
- 所有権移転登記を実施する
土地家屋調査士に分筆手続きを依頼する
土地家屋調査士に分筆手続きを依頼します。
このとき、共有土地の地図や図面、売買契約書など取得するに至った経緯を記した書類など、土地の状況が分かりやすくなるよう参考になる資料を準備しましょう。
土地家屋調査士の業務内容について、土地家屋調査士法第3条では次のように規定されています。
- (1)不動産の表示に関する登記について必要な土地または家屋に関する調査または測量
- (2)不動産の表示に関する登記の申請手続きまたはこれに関する審査請求の手続きについての代理
このように土地分筆登記は、土地家屋調査士の専門分野といえます。法律上は、土地所有者自ら行うことも可能ですが、専門的な知識や測量技術、図面作成が必要なことを考えると難しいでしょう。
なお、土地家屋調査士は、日本土地家屋調査士会連合会のホームページで地域ごとに検索することができます。自分で探す場合、相見積もりをとって、登録免許税や公図の取得など誰が行っても同じ費用にごまかしがない、報酬部分が適正な司法書士を選びましょう。
不動産会社や住宅会社から紹介してもらうこともできますが、紹介料などが見積もりに反映される場合がある点に注意が必要です。
日本土地家屋調査士会連合会
土地家屋調査士が登記簿上の境界や現地の状態を調査する
土地家屋調査士が土地の現況を調査します。法務局に登記されている内容と一致しているか確認する必要があるため、法務局で次のような必要書類を取得します。
- 公図:土地の位置や形状を確定させるための法的な地図
- 地積測量図:土地の地積(面積)の測量結果を示す法的な図面
- 登記事項証明書:不動産の所在地や面積、所有者などの権利関係を記した資料
これらをもとに現地の境界や状況が一致しているかを確認します。
土地分筆登記をするためには、土地の境界が確定していることが必要です。そのため、隣地との境界が明確でない場合や現地の境界が地積測量図と一致しない場合、境界確定測量を行います。
境界確定測量は、すべての隣地所有者との同意を含めて、境界を特定する測量です。
境界確定測量は、道路との境界も含めて、自分と隣地所有者、役所の担当者立ち合いのもと境界を確定させ同意書を得る作業が必要なため、時間がかかります。
共有名義の場合、共有者全員で立ち会うのが原則ですが、代表者のみの立ち合いで行うケースもあります。
公道に面している境界を確定する場合、役所に境界確認申請書を提出し、境界確認の指示を待つなどの時間が必要です。
分筆案を作成する
分筆する土地に隣接する土地や道路など、すべての境界が確定できてはじめて分筆案を作成します。
分筆案とはいえ、役所や隣地所有者に対する説明資料として使うものであるため、正確に作成してもらうことが必要です。
また、分筆案を作成する際には、土地の面積だけでなく、分筆後の形状や道路との関係に注意する必要があります。
土地の資産価値はいろいろな要素で決まり、不整形の土地や間口が狭く奥行きが長い土地などは、活用しづらく価値は低くなる傾向があります。
また、前面道路との接道状況が悪ければ、日当たりが悪い、車の出し入れがしづらいなどで土地の評価は下がりやすくなります。
なお、土地上に建物を建てるには、原則として4m以上の幅員の建築基準法上の道路に2m以上接道していることが必要です。接道義務を満たさない土地は再建築できないなど、活用方法が大きく制限され資産価値も下がります。
このように、共有者に公平な分筆案を作成するうえでは、土地面積だけで一概に判断できず、道路や分筆後の土地の活用しやすさによって、土地の価値が変わる点には注意しましょう。
役所の担当者に現地で確認してもらう
分筆案の作成後、役所の担当者に現地を確認してもらいます。
事前に準備した資料と分筆案をもとに、境界や分筆案に問題がないかを確認します。
隣接する土地所有者に立ち会ってもらい、分筆案の確認を行う
役所担当者との確認作業が終わると、隣地所有者の確認が必要です。隣接する土地所有者全員の立ち合いのもと分筆案を確認してもらいます。
このとき、通常、隣地所有者との間で、境界を確認したことを証する「筆界(境界)確認書」という書類を取り交わします。
筆界確認書は、(1)土地の境界について両当事者に認識が一致していること、(2)土地の境界について争いがないことを確認する書類で、両方が署名・捺印し、それぞれ1通ずつ保管します。
境界の目印となる「境界標」を現地に設置する
役所、隣地所有者との確認が終わり境界が確定すれば、境界標を設置します。
境界標は土地の境界を点や線の位置で表すための標識です。コンクリート杭や石杭、プラスティック杭、金属標、金属鋲などの種類があります。
境界標は、道路工事や電柱工事、車などに踏まれ移動、破損する場合もありますので、金属鋲やコンクリート杭など破損しにくいものを使うとよいでしょう。
境界標を設置する際には、分筆案に問題がないかどうかを役所や隣地所有者に改めて確認をしてもらいます。
土地分筆登記を実施する
境界標の設置が終われば、法務局で分筆登記を申請します。分筆登記に必要な資料は次のとおりです。
- 登記申請書
- 筆界確認書(境界の同意書、境界の協定書など)
- 地積測量図
- 現地案内図
- 委任状
土地分筆登記の申請は自分でもできますが、委任状を作成し、測量を依頼した土地家屋調査士にそのまま代行してもらうのが一般的です。
所有権移転登記を実施する
土地分筆登記が完了しても土地の名義を変えない間は、分筆した土地それぞれを共有している状態です。
単独名義にするためには、分筆後の土地それぞれの共有持分を共有者間で交換する所有権移転登記が必要です。
ここまでの手続きをすべて終了すると、土地分筆登記が完了したことになります。
確定測量が終えている場合、分筆登記の申請から完了まで2週間程度で終了します。確定測量が終わっていない場合は、確定測量にかかる期間によって変わり、2~3カ月以上の期間を要することもあります。
なお、所有権移転登記についても、自分でも手続きはできますが、土地家屋調査士や司法書士の専門家にそのまま依頼したほうがスムーズに進められるでしょう。
土地の分筆に必要な費用
土地分筆登記にかかる費用は、土地家屋調査士への報酬と所有権移転登記費用があります。
- 土地家屋調査士の報酬|25万円から100万円程度
- 所有権移転登記費用|5万円から10万円程度
土地家屋調査士の報酬|25万円から100万円程度
分筆登記の多くを占めるのが土地家屋調査士の報酬です。25~100万円程度が1つの目安となります。
ただし、報酬については、隣地の動向や面積、境界点数などに左右されるため、定額で〇〇万円などと提示できないことがほとんどです。
確定測量が未了であれば、依頼内容により費用は数十万~100万、面積が広いと100万~数百万かかる現場もあります。
反対に、境界が確定している土地であれば、10万~20万程度で完了できる場合もあります。
土地家屋調査士の一般的な報酬の内訳は次のとおりです。
- 調査費用:10万円~
- 測量費用:10万円~
- 資料作成費用(境界確認書など):10万円程度
- 官民境界確定図の作成費:10万円程度
- 境界標の設置費(材料費込):10万円~
- 土地分筆登記費用:5万円~
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このほか、登録免許税がかかります。
登録免許税は不動産などを登記するときに課税されるお金です。分筆後の土地の個数×1,000円を収入印紙で法務局へ支払います。
所有権移転登記費用|5万円から10万円程度
分筆後の土地を共有名義から単独名義にするため、所有権移転登記が必要です。費用はおおむね5万円~10万円が目安で内訳は以下の通りです。
- 登録免許税:土地の課税標準価格の4/1,000
- 司法書士報酬:5万円程度
- 必要書類(境界確認書、地積測量図、現地案内図)の取得費用:2,000円程度
登録免許税の計算のもとになる課税標準価格は、原則として、市区町村の固定資産課税台帳で登録された価格(固定資産税評価額)になります。
共有持分を分筆するメリット
共有する土地を分筆して単独名義とするメリットはいくつかあります。
- 土地の共有状態を解消可能
- 分筆した土地は違った用途で使用可能
- 高値で売れやすくなる
土地の共有状態を解消できる
1つ目のメリットは、土地の共有状態を解消できる点です。
1つの資産を共有している時点で、単独所有と比べて権利関係は複雑です。もし、共有者の1人が亡くなり相続が発生した場合、その相続人が共有者となりますます権利関係が複雑になる可能性があります。
権利関係が複雑であればあるほど土地の利用や処分についても意見が分かれ、トラブルになりやすいでしょう。
また、土地を第三者へ売却したり、抵当権を設定したりなど、共有物に「変更」を加える場合、他の共有者全員の同意が必要です(民法251条)。
土地を整地したり、第三者へ賃貸したりする共有物の「管理行為」にも、共有者の持ち分の過半数で決定しなければなりません(民法252条)。
つまり、土地を処分したり活用したりするとしても、他の共有者の同意が必要な分、土地の価値は制限されているといえるでしょう。
土地を分筆することで共有状態を解消し、自分の土地について自由に活用できる点は大きなメリットといえます。
分筆した土地は違った用途で使用できる
分筆することで、土地を違う用途で活用することが可能になります。
共有する一筆の土地の中で地目を分けることはできません。しかし、分筆後の土地はそれぞれが独立した土地のため、違う地目ごとの登記も可能です。
地目とは、土地の登記における「宅地」「山林」「田」「畑」など、土地の用途による区分のことです。用途に応じた地目に変更できるため、土地の利用価値が広がります。また、地目によって土地の評価方法が変わります。
高値で売れやすくなる
分筆によって共有状態を解消し単独名義をすることで、高値で売れやすくなります。
共有状態の土地を売却する方法として、土地全体を売却する、もしくは自分の持ち分だけを売却する方法があります。
土地全体を売却するには他の共有者の同意が必要であり、1人でも同意が得られなければ売却できません。
一方、自分の共有持分については、他の共有者の同意に関係なく自由に売却が可能です。
ただし、共有持分だけの売却は、売却自体が難しいうえ、売却できたとしても本来の土地の価値と比べるとかなり低くなります。
なぜなら、共有持分だけを購入しても土地を自由に活用、処分することができないため、需要が少なく購入する人は限られるからです。
この点、単独名義の土地であれば、購入者は見つけやすく高値で売却しやすくなります。
共有持分を分筆するデメリット
一方、共有する土地を分割するうえでデメリットが生じる可能性もあります。
- 分筆には共有者全員の同意が必要
- 形状や面積によっては土地の価値が低下する可能性もある
- 住居のない更地が共有持分になると固定資産税が高くなる
分筆には共有者全員の同意が必要になる
土地を分筆する行為は、共有物の「変更」にあたり、他の共有者全員の同意が必要です(民法251条)。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
土地の分筆には、時間も費用もかかるため反対する共有者が出ることもあり、交渉が必要です。
共有者から反対がある時は「共有物分割請求」で土地の分割を交渉できる
他の共有者から同意を得られない場合、「共有物分割請求」で土地の分割を交渉することができます。
まず、調停委員の立ち合いのもと、裁判所で共有物分割へ向けた話合いをする「共有物分割請求調停」を申し立てることが考えられます。
第三者である調停委員が立ち会うことで、冷静に話合いがしやすく、話合いの結果として記録された調書は法的な効力を持つため、一旦合意した内容を後から蒸し返されるリスクを減らせます。
ただし、調停委員が立ち会うとはいえ、あくまでも当事者同士での話合いがベースです。話し合いがまとまらない場合もあります。
当事者同士で話合いがまとまらない場合、共有物分割請求訴訟へと駒を進めます。
共有物分割請求訴訟とは、裁判所に共有状態の解消方法を決めてもらう裁判手続きです。
ただし、共有物分割請求で訴えても、必ずしも自分の希望どおりに分割できるとは限りません。
土地を分筆する「現物分割」以外にも、土地を売却して売却収入を持分の割合に応じてわける「換価分割」、共有者の1人が土地を取得し、他の共有者へ持ち分に応じた金銭を支払う「代償分割」になる場合もあります。
なお、共有物分割請求では、訴訟提起の前に必ず調停を行わなければならない調停前置主義は取られていません。
そのため、解決を急ぐ場合、調停しても話合いがまとまる見込みが薄い場合などは、調停を経ずに訴訟を提起することも可能です。
形状や面積によっては土地の価値が低下する可能性もある
土地を分筆することで、本来の土地の価値が下がる可能性もあります。
もともと土地面積がそれほど広くなく、分筆することでさらに土地面積が小さくなると、土地そのものの利用価値が下がり資産価値が下がる場合もあるでしょう。
また、分筆すると土地の形状がいびつになってしまったり、道路との接道状況が悪くなったりすることで価値が下がる可能性があります。
もし、分筆することで共有している状態より資産価値が下がる場合は避けたほうがよいでしょう。
ただ、土地を有効活用できず、共有持分の維持費だけを負担し続けるという状況でもあると思います。この場合、共有持分専門の買取業者に売却する方法があります。
共有持分専門の買取業者であれば、売却しにくい共有持分でも一定の価格で買い取ってもらうことも可能です。
住居のない更地が共有持分になると固定資産税が高くなる
土地上に建物がある土地を分筆する場合、分筆後に建物のない土地を所有することになると固定資産税の負担が増える可能性があります。
固定資産税・都市計画税は、住宅用地には税負担が軽減される特例があります。
具体的には、土地面積200㎡までの部分の固定資産税が1/6、都市計画税が1/3になりますが、更地になった場合この特例は適用されません。
そのため、分筆後、建物がない土地を取得した人が固定資産税の金額に驚くケースも少なくありません。
ただし、固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課税される税金です。
そのため、分筆後、単独所有となった土地に建物を建てる場合、あるいは、分筆した土地を売却する場合でも、同年中に行うことで固定資産税が上がることはありません。
共有名義の土地を分筆できない場合の対処法
ここまで共有名義の土地を分筆した場合について解説しましたが、分筆の同意が得られない場合もあります。その場合どのような対処法が考えられるのでしょうか。
- 共有者全員の同意を得て土地全体を売却する
- 自分の共有持分を他の共有者に売却する
- 自分が土地全部を買い取る
- 自分が所有する共有持分を買取業者に売却する
共有者全員の同意を得て土地全体を売却する
共有者全員の同意のもと土地全体を売却することが考えられます。
土地を分割する同意が得られなくても、交渉次第では土地全体の売却の同意が得られる可能性があります。
分筆にかかる費用も不要ですし、分筆による資産価値の低下も避けられるでしょう。
自分の共有持分を他の共有者に売却する
他の共有者に自分の共有持分を売却する方法です。
共有持分を売却する場合、単独所有の場合と比べて資産価値が低い、あるいは購入しても活用しにくい点から買主が見つかりにくくなります。
この点、他の共有者は、共有持分に関して直接の利害関係人であり、知らない第三者と共有するより自分が買い取った方が良いと考える場合もあります。
また、他の共有持分を取得することで、土地面積だけでなく接道状況や間口が広くなるなど土地が活用しやすくなり、資産価値が上がることも期待できるでしょう。
特に、共有者が1人しかいない場合は、売却することで単独名義になりますので、話はスムーズに進みやすいといえます。
ただし、他の共有者に売却する場合次の点に注意しましょう。
- 個人間売買は避ける
- 他の共有者の持分割合て揉める可能性がある
- 購入者の資金計画
共有不動産は親族関係で共有していることも多く、他の共有者への売却を、不動産会社を通じて行わずに個人間売買で進めるケースもあります。
ただし、不動産会社を介さずに売買することによるリスクは少なくありません。
双方が納得できる公平な売買価格を決めることは簡単ではありません。また、売買契約から引渡しまでの手続きについて、売主・買主双方の義務を契約書にしっかり記載しないとトラブルになる可能性があります。
また、他の共有者に持分を売却すると、共有者間の持ち分割合は変わります。共有不動産の管理行為は持分の過半数以上で決められますので、他の共有者から「なぜ自分に売却しなかったのか」と責められる可能性があります。
そのため事前に他の共有者全員に持分割合の売却を検討している旨を伝えるなどの配慮が必要な場合もあるでしょう。
さらに、共有持分を購入する場合、購入者は住宅ローンのような低金利の融資を活用できません。現金で購入できるだけの資力があればいいですが、購入する共有者の資金計画にも配慮が必要です。
自分が土地全部を買い取る
もし資金に余裕があれば、他のすべての共有者と交渉し、持分を買い取ることで単独所有にすることが考えられます。
単独名義であれば、土地を駐車場やさまざまな事業で活用できますし。登記簿上の地目を自由に設定できます。
他の共有者が共有持分の処分に困っている可能性もありますので、他の共有者に打診してみるのもよいでしょう。
自分が所有する共有持分を買取業者に売却する
共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう方法です。
共有者の1人でも同意できなければ土地全体の売却も分筆もできません。また、自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらえない場合、家庭裁判所へ「共有物分割請求」を申立て、法的強制力のもと分割後に売却を進めることが考えられます。
ただし、共有物分割請求には次のようなデメリットあるいは注意点があります。
- 訴訟手続きには時間と手間がかかる
- 弁護士費用などの金銭的負担がある
- 他の共有者との関係が悪化する可能性がある
- 換価分割の判決が出て競売によって売却価格が下がる可能性がある
現物分割や代償分割が難しく、換価分割の判決が出た場合、競売の落札代金を分割することで売却収入が減る可能性があります。
このような事態を避けるために考えられる方法が、共有持分だけを共有持分専門の買取業者に買い取ってもらう方法です。
持分の売却は他の共有者の同意が不要なため、買取業者と価格面で合意できれば早期の売却も可能です。
クランピーリアルエステートでは、売却が難しい共有持分の買取を全国で行っております。訳あり、トラブルを抱えた物件でも士業専門家と連携しながら対応できますので、お気軽にご相談ください。売却査定のご依頼も承っております。
分筆して相続する際は相続税の申告期限に注意
土地を複数の相続人で相続する場合、遺産分割協議で分割方法を決めます。
このとき、共有状態のまま相続するのではなく分筆して相続する場合、相続税の申告期限に注意しなければなりません。
相続税は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告しなければなりません。申告期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税といったペナルティのほか、本来適用できるはずであった相続税の負担を軽減する特例が活用できない可能性があります。
相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、法定相続分に応じて申告、納付することになります。
その後、法定相続分と異なる遺産分割が行われた場合は、相続税の修正申告が必要です。
このような手続きは時間も手間もかかるため、申告期限が過ぎる前に分筆し、相続税を納付することがおすすめです。
まとめ
共有する土地は、共有持分に応じて分筆できます。土地の分筆登記は土地家屋調査士に依頼することが一般的であり、長ければ2~3カ月以上の期間を要し、土地の状況に応じて、数十万円から百万円を超える費用が必要です。
ただ、土地を分筆することで共有関係を解消し、自由に土地活用、売却できるうえ、単独名義になることで資産価値が高くなることもあります。
その一方、分筆方法によっては逆に資産価値が下がるケースや固定資産税の負担が増える可能性などありますので注意が必要です。
共有する土地を分筆するには、共有者全員の同意が必要です。同意が得られない場合もありますし、資金面を含めて他の共有者に自分の持ち分を買い取ってもらうことが難しいこともあるでしょう。
そのような場合、共有持分専門の買取業者に売却する方法があります。共有持分のみの売却であれば、他の共有者の同意なくできますし、買取価格で合意できれば、早期の売却も可能です。
ぜひ参考にしてください。