共有持分の買取請求とは?買取請求の方法や価格の決まり方など徹底解説

共有名義の不動産は、不動産の活用や処分、管理費用の負担などをめぐってトラブルになることが多いです。実際に、共有持分の買取業務を行う弊社にも「早く共有状態を解消するために売却したい」というご相談は非常に多く寄せられています。
確かに持分の売却も1つの手ですが、「共有持分の買取請求」という方法でも共有状態を解消できます。
共有持分の買取請求とは、共有者が他の共有者に持分の取得を求めることです。実務上では、さまざまな手段の総称を「共有持分の買取請求」としており、主には下記3種類の方法が挙げられます。
| 方法 | 概要 |
|---|---|
| 任意交渉 | 他の共有者に対して「持分を買い取ってほしい」「持分を譲ってほしい」と話し合いで求める方法。合意が前提であり、価格や条件は当事者間で決める。 |
| 買取請求権の行使 | 管理費や固定資産税などの負担を1年以上履行していない共有者がいる場合に、民法に基づき相当の対価を支払ってその持分を取得する法的制度。一定の要件を満たせば強制力がある。 |
| 共有物分割請求 | 話し合いで解決できない場合に、裁判所に共有状態の解消を求める手続き。結果として一方が取得することもあれば、不動産全体の売却になることもある。 |
共有名義の不動産を整理したいと考えたとき、実務ではいきなり裁判や強制的な手続きに進むことはほとんどありません。まずは、共有者同士で話し合いである「任意交渉」によって解決できないかが検討されやすいです。
しかし、話し合いがまとまらない場合や、費用負担の未払いが長期間続いている場合には、買取請求権の行使や共有物分割請求といった法的手段が検討されることになります。
つまり、共有持分の買取請求をする場合、まずは「任意交渉で解決を試みる」ことを検討し、それが難しい場合には「要件を満たしているなら買取請求権の行使」「他に手段がない場合は共有物分割請求に進む」という順番で検討するのが実務上の基本です。
当記事では、共有持分の買取請求の方法から要件、具体的な手続き方法などを詳しく解説していきます。
目次
共有持分の買取請求とは共有者が他の共有者に持分の取得を求めること
共有持分の買取請求とは、共有名義となっている不動産について、ある共有者が他の共有者に対し「あなたの持分を取得したい」「あるいは自分の持分を買い取ってほしい」と求めることをいいます。
共有持分とは、一つの土地や建物を複数人で所有している場合の「所有割合」のことです。
たとえば、相続によって兄弟3人がそれぞれ3分の1ずつ取得した場合、それぞれが3分の1の共有持分を持ちます。この持分は単なる割合ではなく、売却や賃貸、建替え、担保設定などの意思決定に直接影響する権利です。
実務の現場では、共有名義の状態が続くことで下記のような問題が頻繁に起こります。
- 固定資産税や管理費を一部の共有者だけが負担している
- 空き家の活用方法で意見が対立している
- 一人だけ現金化したいと考えている
- 相続を繰り返して共有者が増え、話し合いが困難になっている
共有持分の買取を行う弊社でも、共有名義のままにしていることで「共有のままでは不動産を売却・活用できずに、固定資産税などの負担だけが続いている」というケースは非常に多いです。
このような状況になると、共有者の誰かが「この共有状態を整理したい」と考え始めることがあります。そのときに選択肢の1つになるのが、共有持分の買取請求です。
たとえば、「自分が単独所有にしたいから他の共有者の持分を取得したい場合」「共有関係から抜けたいから自分の持分を買い取ってほしい場合」など、立場はさまざまです。
このように共有持分の買取請求は、共有名義状態を整理するために、持分の取得を求める行為そのものを指す広いものです。
共有持分の買取請求は「強制できる方法」と「交渉にとどまる方法」がある
共有持分の買取請求の方法には大まかに下記があります。
| 方法 | 特徴 | 法的な強制力 |
|---|---|---|
| ①他の共有者への任意交渉をする方法 | 当事者同士の話し合いで持分を売買しようとする方法 | なし |
| ②買取請求権を行使する方法(民法253条2項に基づく持分取得) | 管理費などを長期間支払わない共有者がいる場合に、代金を払ってその持分を取得する方法 | あり |
| ③ 共有物分割請求 | 話し合いがまとまらない場合に裁判所に共有解消を求める手続き。結果として一方が買い取る形になることがある | あり(裁判所の判断による) |
共有持分の買取請求の方法は、すべてが法的な強制力を持つわけではありません。相手が自由に拒否できるケースと、一定の要件を満たせば相手の同意がなくても進むケースがあります。
そのため、買取請求を検討している場合は「どの方法なら実現できるのか」が重要になり、請求を受ける場合は「どこまでが法的に応じる義務があるのか」を正しく理解することが大切です。
ここからは、共有持分の買取請求の方法について、それぞれ解説していきます。
他の共有者への任意交渉をする方法
任意交渉による方法は、当事者同士の話し合いによって持分の売買を目指すものです。
具体的には、「あなたの持分をいくらで買いたい」「自分は共有から抜けたいので持分を買い取ってほしい」といった形で打診し、価格や条件を協議していきます。簡単に言えば、共有者に「その持分を買ってくれないか」「あなたの持分を買わせてほしい」とお願いをして進める方法です。
そのため、他の共有者への任意交渉をする方法には法的な強制力がなく、相手が納得しなければ成立しません。
とはいえ、共有持分の買取請求では最も一般的かつ、実務でも多く取られている方法です。多くの場合、まずは話し合いからがスタートになり、交渉が成立しない場合には法的効力がある方法を視野に入れるのが実務の基本だからです。
もっとも、共有持分の買取請求で重要なのは価格の出し方です。市場価格の感覚で提示すると、「そんな安いはずがない」「そんなに払えない」と認識のズレが生まれやすいです。
実際の現場では、最初の価格提示で関係が悪化し、そのまま法的手続きに進んでしまうケースも少なくありません。
私たちの経験上、任意交渉がうまくいくかどうかは「価格」と「伝え方」でほぼ決まります。「共有者と揉めている」などの感情対立が強い場合は、第三者を介さずに直接交渉すると、むしろこじれることも多いのが現実です。
買取請求権を行使する方法
共有持分の買取請求のうち、法律上はっきりと認められている方法が、いわゆる買取請求権の行使です。これは「民法第253条第2項」で定められています。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
e-Gov法令検索 民法
たとえば固定資産税や共益費などを、特定の共有者が1年以上支払っていない場合、他の共有者はその持分を金銭を支払って取得できるとされています。
わかりやすく言えば、「負担を全くしない共有者がいるなら、その人の持分をお金を払って法的に買い取ることができる」という制度です。
ただし、買取請求権は滞納があれば自動的に持分を取得できるというものではありません。実務では、「未払いの内容が本当に共有物の管理費にあたるのか」「1年以上履行していない事実があるのか」「支払う償金が相当といえるか」が主な問題になります。
特に争いになりやすいのが償金の金額です。滞納があるからといって無条件に安く取得できるわけではなく、持分自体の価値は別途評価されます。この点を誤ると、かえって共有者間の紛争が激化することもあります。
私たちの実務経験でも、買取請求権がそのまま円滑に進むケースは多くありません。証拠の整理や金額算定を慎重に行わなければならず、実際には交渉や共有物分割請求とあわせて検討されることが多い方法です。
このように、民法253条2項に基づく買取請求権は、一定の条件下で強制力を持つ制度ではあるものの、行使には慎重な準備が必要な手段といえます。
共有物分割請求をする方法
共有物分割請求は、共有持分の買取を直接求める制度ではありません。あくまで共有関係そのものを解消するための手続きであり、民法第256条が根拠になります。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
e-Gov法令検索 民法
条文上は「共有者はいつでも分割を請求できる」とされていますが、実務上の意味はもっと重いものです。これは、共有を続けたくない共有者が、他の共有者の同意がなくても裁判所を通じて整理に進めるという強い権利だからです。
共有物分割請求自体は「持分を買い取れ」のような買取を強制できるものではなく、あくまで共有関係を解消するための手続きです。
裁判所は、当事者の一方に持分の取得を命じるのではなく、共有状態をどのような方法で整理するのが相当かを判断します。その結果として、一方の共有者が不動産全体を取得し、他の共有者に代金を支払う形になることもありますが、判断によっては不動産全体を売却し、その売却代金を共有者間で分ける形になることもあります。
つまり、厳密に言えば共有物分割請求は「必ず共有持分を買い取れる制度」ではないのです。
実務では、「共有者間の対立が強い」「取得を希望する側に十分な資金がない」といった場合には不動産売却が選ばれるケースも少なくありません。
そのため、共有物分割請求は共有持分の買取を実現するための有力な手段である一方、結果を完全にコントロールできる制度ではないという点を理解しておく必要があります。
共有持分の買取請求が実務上で起こりやすいケース
共有持分の買取請求は、共有者同士で意見が対立するなどの利害が一致しなくなったときに起こりやすいです。
共有状態は、一見すると平等に見えます。しかし実務では、費用負担、意思決定、資金需要がズレ始めると、そのまま共有状態を維持することが難しくなります。
弊社が相談を受ける案件でも、きっかけは決して大きな対立ではなく、下記のようなケースが多いです。
- 固定資産税を一人だけが払い続けている
- 空き家のまま放置することに不満が出ている
- 売却したいが他の共有者が応じない
- 相続で共有者が増え、連絡調整が困難になっている
こうした状況が続くと、「このまま共有を続けるより、持分を整理したほうが早い」という判断に至るのも頷けます。
ここからは、共有持分の買取請求が実務上で起こりやすいケースについて、これまで解説した3つの方法ごとに紹介していきます。
他の共有者への任意交渉による買取請求が起こるケース
共有持分の買取請求のうち、実務で最も多いのが任意交渉です。理由は明確で、裁判に進む前に整理できれば、時間・費用・関係悪化のすべてを抑えられるからです。
実務上、任意交渉が選ばれるのは次のような状況です。
- 共有者間で最低限の連絡が取れる
- 一部に不満はあるが、完全な対立状態ではない
- 滞納など法的要件は満たしていない
- 不動産に一定の価値があり、金額で解決できる
- 裁判費用や時間をかけたくない
とくに多いのは、「自分は家や土地を売りたいが、他の共有者が応じずに売却できない」というケースです。この場合、いきなり共有物分割請求に進むのではなく、まずは持分を買い取ってもらえないか、あるいは相手の持分を買い取れないかという話し合いから始まります。
任意交渉は強制力がない一方で、条件がまとまれば迅速に共有状態を整理できる方法でもあります。そのため、関係が完全に悪化する前の段階では、この方法が選ばれる傾向があります。
なお、弊社には持分売却を検討していた人に対して、共有者に対する任意交渉をご提案させていただいたケースもあります。
ご相談者は、共有持分を弊社に売却することを検討していました。しかし、不動産全体の利用状況や兄弟関係を踏まえると、いきなり弊社のような第三者へ売却するよりも、まずは弟に対して持分の買取交渉を行う方が合理的と判断しました。
そのため、持分の売買価格の目安を算定し、「この金額であれば引き取れないか」という形で弟へ提案するよう助言させていただきました。結果として、裁判や分割請求に進むことなく、兄弟間で持分整理が成立しました。
このように、任意交渉による買取請求は、「まだ話し合いの余地がある段階」で起こるのが特徴です。共有状態を解消したいという意思はあるものの、法的強制力に頼るほど関係が悪化していない場合に、最初の選択肢として検討されることが多い方法です。
買取請求権の行使により買取請求が起こるケース
買取請求権の行使による共有持分の買取請求は、任意交渉が成立しない段階、かつ費用負担の偏りが明確になっている場合に検討されやすい方法です。実務上、この方法が検討されやすいのは次のような状況です。
- 固定資産税や管理費の立替が長期間続いている
- 他の共有者に対して支払請求をしても応じない
- 負担割合についての合意が取れないまま時間が経過している
- 話し合いでは解決の見込みが立たない
買取請求権の行使と任意交渉の違いは、意見が合うかどうかではなく、「お金を払っていない」という事実が続いているかどうかにあります。
弊社に寄せられた相談でも、下記のように買取請求権の行使をご提案させていただいた事例があります。
ご相談者は当初、「もう自分の持分を売却したい」とお考えでした。しかし事情を詳しく伺うと、未払いの立替額が相当額にのぼっており、すぐに第三者へ持分売却するよりも、まずは立替状況を整理し、法的に取り得る手段を検討した方が合理的な状況でした。
そこで弊社では、提携している弁護士と連携し、未払い状況が法的要件を満たすかどうかを確認したうえで、買取請求権の行使を視野に入れた方法をご提案させていただきました。
共有持分の買取を行っている立場としては、依頼者にとってより合理的に共有状態を整理する方法がないかを見極めることも重要だと考えています。とくに、立替や未払いが長期間続いている場合には、民法上の買取請求権を行使できる状況にあるのかを検討することが重要になります。
士業と連携し、未払いの内容や期間、証拠関係を整理したうえで買取請求権の行使が可能と判断できれば、第三者に持分を売却するよりも有利な条件で持分を取得できるケースも珍しくありません。
共有物分割請求により買取請求が起こるケース
共有物分割請求により共有持分の買取が現実化するのは、任意交渉が決裂し、かつ買取請求権の要件も満たさない場合に検討されることが多い方法です。
弊社は共有物分割請求について「他に取れる手段がない場合の最終手段」と位置付けており、実務上この方法が検討されるのは下記のような状況です。
- 売却か保有かで意見が真っ向から対立している
- 持分の価格について合意の見込みがない
- 費用負担の滞納はなく、買取請求権は使えない
- 共有状態をこのまま維持する合理性がない
- 一部の共有者が「共有をやめたい」と明確に意思表示している
共有物分割請求は「持分を買い取れ」と直接求める手続きではありません。あくまで共有関係そのものを解消するための手続きです。
しかし、不動産が物理的に分けられない場合には、一方が取得し他方に代金を支払う形になることがあり、結果として持分の買取と同じ状態になります。
弊社に寄せられた相談でも、次のようなケースがありました。
売却を希望していましたが、もう一方の共有者は「売るつもりはない」と強く反対しており、話し合いは平行線の状態でした。滞納はなく、買取請求権の要件も満たしていませんでした。
この状況で単純に第三者へ持分売却を進めると、関係がさらに悪化し、結果として分割請求や全面対立に発展する可能性がありました。
そこで弊社では、共有物分割請求に進んだ場合の流れや想定される着地を整理したうえで、まずはその可能性を踏まえた交渉を提案しました。
分割請求に進めば不動産全体が売却になるリスクがあることを前提に話し合いを行った結果、最終的には当事者間で持分整理が成立しました。
このように、共有物分割請求は「交渉が完全に行き詰まった段階」で現実的な選択肢になります。
重要なのは、分割請求をすれば必ず自分が持分を取得できるとは限らないという点です。不動産全体の売却になる可能性もあるため、どのような結果になるかを検討せずに進めるのは危険です。
共有持分の買取を行っている立場としては、単に持分を取得するかどうかだけでなく、分割請求に進んだ場合の着地まで見据えて判断することが重要だと考えています。
士業と連携し、想定される分割方法や価格の見通しを整理したうえで動くことで、結果的により有利な条件で持分整理ができるケースもあります。
共有持分の買取請求ができないケース
共有持分の買取請求は、いつでもどんな状況でも使えるわけではありません。方法ごとに前提条件があり、それを満たしていなければ成立しないためです。
実務では、「もし買取以外に方法があるなら検討したい」とご相談を受けることがあります。しかし、事実関係を整理した結果、要件を満たさず買取以外にご提案できないケースも多々あります。
共有持分の買取を扱う立場として重要なのは、使える制度と使えない制度を冷静に切り分けることです。ここでは、共有持分の買取請求ができないケースについて、買取請求の方法ごとに紹介していきます。
任意交渉では共有持分の買取請求が成立しないケース
任意交渉は、「あなたの持分を買い取らせてもらえませんか」とお願いする方法です。そのため、相手が合意すれば成立しますが、「嫌です」と拒否されてしまえばそこで交渉は終わりです。
実務上では主に次のようなケースでは、任意交渉だけでは買取請求が成立しないことが多いです。
- 共有者が話し合いを拒否している
- 連絡が取れない共有者がいる
- 金額提示をしても一切回答がない
- 感情的対立が強く、価格交渉に入れない
実際に弊社へ「自分の持分を買い取ってほしい」と相談に来られた方の中にも、できるなら兄に打診したいという方がいました。そこで状況を詳しく伺ったところ、数年前の相続をきっかけに兄弟関係が悪化し、連絡は取れているものの、持分の話を出すと一方的に電話を切られる状態でした。
ご相談者は「できれば兄に買い取ってもらいたい」と考えていましたが、兄は「売る気はない」と強く拒否していました。価格の提示すらできない状況で、話し合いは成り立ちませんでした。
そこで弊社では、任意交渉が現実的でないことを説明したうえで、第三者への持分売却という選択肢を整理しました。不動産の評価額、共有関係の状態、将来的な分割リスクを踏まえると、早期に持分を整理する方が合理的と判断し、最終的に弊社が持分を買い取る形に落ち着きました。
任意交渉は有効な方法ですが、相手が応じない場合は前に進みません。その場合は、他の法的手段や第三者売却を含めて整理する必要があります。
共有持分の買取を扱う立場としては、まず交渉の可能性を見極め、そのうえで依頼者にとって最も早く整理できる方法を提示することが重要だと考えています。
買取請求権を行使できないケース
買取請求権は、共有物に関する負担を他の共有者が長期間履行していない場合に行使できるものです。具体的には、共有物の管理費や固定資産税などを1年以上支払っていない場合に、相当の対価を支払ってその持分を取得できます。
つまり、次の条件がそろっていなければ行使できません。
- 立替えているのが共有物の管理費や税金であること
- 他の共有者が1年以上その負担を履行していないこと
- 未払いの事実を客観的に示せること
実務では、次のような理由で行使できないケースがあります。
- 未払いが1年未満
- そもそも正式な請求をしていない
- 支出が私的な修繕費などで共有物の管理費に当たらない
- 金額がわずかで争点として成立しにくい
実際に弊社へ「相手が税金を払っていないので持分を取得できないか」と相談に来られた方がいらっしゃいました。
長男が固定資産税を立て替えていましたが、他の兄弟の未払いは1年に達していませんでした。また、請求の記録も残っていませんでした。
この状態では法的要件を満たしていないため、買取請求権は行使できません。そのことを説明したうえで、今後の費用負担の整理方法や、第三者への持分売却の選択肢を提示し、最終的には弊社が持分を買い取る形で共有状態を整理しました。
買取請求権は条件が明確な制度です。感情的な不公平があっても、条件を満たしていなければ行使することはできません。
買取請求権の行使で共有持分の買取請求をする場合、まずは事実関係を整理し、要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
共有物分割請求が制限されるケース
共有物分割請求は、共有関係そのものを解消するための手続きです。話し合いで共有持分の買取請求がまとまらない場合に最終的な手段として検討されることが多い方法ですが、全てのケースに適しているとは限りません。
まず理解しておくべきなのは、前述の通り共有物分割請求は「相手に持分を買い取らせる制度」ではないという点です。裁判所は共有状態を解消する方法を決めますが、その結果が必ずしも持分の買取になるとは限りません。不動産全体の売却になる可能性もあります。
実務で共有物分割請求が制限される、あるいは慎重に判断すべきケースは次のとおりです。
- 自分が取得できる前提で分割請求を考えている
- 持分を取得する資金が足りない
- 他の共有者が持分の売却を検討していない
- 売買価格で大きな争いが想定される
実際に弊社へ「自分の持分を買い取ってほしい」と来られた方の中には、下記のように共有物分割請求を提案しづらいケースがありました。
ご相談者は自分が土地を取得できると考えていましたが、取得資金の確保はできていませんでした。また、相手も「自分が取得したい」と主張していました。
この場合、共有物分割請求に進んでも、自分が取得できる保証はありません。不動産全体の売却になる可能性もありました。
そのリスクを説明したうえで、第三者への共有持分売却という選択肢をご提案し、最終的には弊社が持分を買い取る形で共有状態を解消しました。
共有持分の買取請求を検討している場合でも、分割請求に進めば必ず取得できるわけではありません。着地を自分で選べないという点が、最大の注意点です。
共有持分の買取請求をした場合の価格の決まり方
共有持分の買取請求をした場合の価格には、一律の決め方があるわけではありません。どの方法かによって、価格の決まり方は変わります。
| 方法 | 価格の決まり方 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 任意交渉 | 当事者間の合意 | 合意できれば自由に決められる |
| 買取請求権の行使 | 相当の対価 | 裁判になれば評価額が基準になる |
| 共有物分割請求 | 裁判所の判断 | 全面売却になる可能性あり |
ここからは、共有持分の買取請求の方法ごとに価格の決まり方を解説していきます。
任意交渉で共有持分の買取請求をする場合の価格の決まり方
共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合、価格は当事者同士の合意で決まります。実務では「根拠はないけど○円でどう?」のように決めることはなく、最低限の根拠をそろえてから交渉するのが基本です。
細かく言えば、物件の状況、共有者の関係、占有の有無などで価格の調整が入るため、実際は複雑になりやすいです。価格を決める実務上の流れをより簡単にまとめると、次のようになります。
- 不動産全体の時価を出す
- 持分割合を掛けて「持分の基準額」を出す
- 共有状態特有の事情を踏まえて最終金額を調整する
・不動産全体の時価:3,000万円
・持分割合:2分の1
このとき、まず基準となる金額は「3,000万円 × 1/2 = 1,500万円」です。
次に、任意交渉ではここから「この共有状態をどう整理するか」によって、金額が動きます。実務では下記などを考慮して価格を決めます。
・相手がすぐに現金化したいのか(早期売却希望か)
・共有不動産を誰が使っているのか(居住・占有の有無)
・不動産全体を売りたくても、他の共有者が反対して売却できない状況か
・固定資産税や管理費の負担が偏っているか
たとえば、「相手は早く現金化したい」「共有者間で対立が強く、交渉を長引かせたくない」という状況だと、基準額から一定の調整を入れて早期合意を狙うことがあります。
仮に、交渉上の調整として2割下げて合意した場合は、「1,500万円 × 80% = 1,200万円」が目安になります。
なお、親族間で円満にまとめたいケースでは、基準額に近い水準でまとまることもあります。任意交渉は自由度が高い反面、条件次第で金額の幅が出やすいのが特徴です。
共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合は、「まず基準額を作り、次に共有状態の事情を整理してどこで折り合いがつくかを決める」という順序で考えるのが良いでしょう。
買取請求権を行使して共有持分の買取請求をする場合の価格の決まり方
共有持分の買取請求のうち、買取請求権を行使する場合は「相当の対価」を支払う必要があります。任意交渉のように当事者の話し合いで自由に決めるのではなく、客観的に見て妥当な価格が基準になります。
実際の手続きでは、未払い費用の確認や証拠の整理など、もう少し複雑な工程がありますが、あくまで目安程度であれば次の順序になります。
- 不動産全体の時価を出す
- 相手の持分割合を確認する
- 時価に持分割合を掛けて金額を出す
・不動産全体の時価:3,000万円
・相手の持分:2分の1
この場合、「3,000万円 × 1/2 = 1,500万円」が基本となる金額です。
ここで重要なのは、共有持分だからといって大きく値引きする前提ではないという点です。買取請求権は民法に基づく制度であり、裁判になれば不動産鑑定評価などの客観的な価格が基準になります。
仮に鑑定評価額が2,900万円とされた場合は、「2,900万円 × 1/2 = 1,450万円」が目安になります。
つまり、買取請求権を行使する場合の共有持分の価格は、「不動産全体の客観的な時価 × 持分割合」という考え方で決まるのが基本です。任意交渉よりも価格の幅は小さく、より客観的な水準に近づきます。
共有物分割請求で共有持分の買取請求をする場合の価格の決まり方
共有物分割請求は、裁判所に共有状態の解消を求める手続きです。そのため、価格は当事者の話し合いではなく、裁判所の判断に基づいて決まります。
実務上の流れを簡単にすると、次のようになります。
- 不動産全体の評価額を確定させる
- 裁判所が「誰が取得するか」または「売却するか」を判断する
- 判断に応じて支払額や分配額が決まる
裁判所が「一方が取得する」と判断すれば、その金額を支払って単独所有になります。一方で、不動産全体を売却する判断になった場合は話が変わります。
仮に、「実際の売却価格:2,800万円」「仲介手数料などの費用:200万円」という場合は手元に残るのは2,600万円です。持分が2分の1であれば、最終的に受け取る金額は1,300万円になります。
共有物分割請求の場合は、自分が取得できるとは限りません。不動産全体の売却になる可能性もあるため、最終的な受取額は売却価格や費用によって左右されます。
共有持分の買取請求をする流れ
共有持分の買取請求をする流れは、どの方法を選ぶかによって変わります。ここからは、共有持分の買取請求をする流れについて、各方法ごとに紹介していきます。
他の共有者への任意交渉で共有持分の買取請求をする流れ
共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合、基本は「価格の根拠を作り、順番に話を進める」ことです。感情的に切り出すと失敗しやすいので注意が必要です。
| 手順 | 内容 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| ① 不動産の時価を把握 | 実勢価格を調査する | 査定を複数取得することもある |
| ② 持分割合の確認 | 登記簿で持分を確認 | 相続未登記だと先に整理が必要 |
| ③ 基準額を算定 | 全体価格×持分割合 | 交渉の土台を作る |
| ④ 条件を整理 | 支払方法・時期を決める | 一括か分割かで合意難度が変わる |
| ⑤ 相手へ提案 | 金額と条件を提示 | 書面で残すと後の紛争予防になる |
| ⑥ 売買契約・登記 | 合意後に契約・移転登記 | 司法書士が関与するのが通常 |
共有持分の買取請求を任意交渉で進める場合、最大のポイントは「いきなり金額だけを提示しないこと」です。価格の根拠を示せるかどうかで、交渉の成否が大きく変わります。
買取請求権を行使して共有持分の買取請求をする流れ
買取請求権を行使する共有持分の買取請求は、未払いなどの法的要件を満たしていることが前提になります。感情の問題ではなく、事実の積み上げが必要です。
| 手順 | 内容 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| ① 未払いの確認 | 固定資産税・管理費などを整理 | 本当に共有物に関する費用か確認 |
| ② 1年以上の未履行確認 | 支払記録を精査 | 証拠が曖昧だと争いになる |
| ③ 内容証明などで通知 | 行使の意思表示 | 書面で明確にする |
| ④ 価格算定 | 全体時価×持分割合 | 鑑定評価を使うこともある |
| ⑤ 合意または訴訟 | 相手が応じなければ裁判 | 弁護士関与が通常 |
| ⑥ 支払・登記移転 | 対価支払後に移転 | 登記で完了する |
共有持分の買取請求の中でも、この方法は準備段階が最も重要です。証拠が弱いと、行使そのものが否定される可能性があります。
共有物分割請求で共有持分の買取請求をする流れ
共有物分割請求で共有持分の買取請求をする流れをまとめました。
| 手順 | 内容 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| ① 協議の試み | まず話し合いを行う | 記録を残しておくと有利 |
| ② 調停申立て | 家庭裁判所に申立て | 共有不動産の所在地が基準 |
| ③ 不成立の場合訴訟 | 地方裁判所へ移行 | 本格的な訴訟手続き |
| ④ 不動産評価 | 鑑定人による評価 | ここで価格が決まる |
| ⑤ 裁判所の判断 | 取得か売却か決定 | 全体売却になることもある |
| ⑥ 判決確定後処理 | 支払または売却 | 強制執行に進むこともある |
共有持分の買取請求を共有物分割請求で進める場合は、時間と費用がかかるのが通常です。また、最終的に不動産全体の売却になる可能性もあるため、「必ず共有持分を買取できる手段」ではありません。
自分が共有持分の買取請求を起こされた場合の対処法
もし自分が共有持分の買取請求を受けた場合、その対応方法は請求の性質によって異なります。
相手が裁判所を通じて法的に買取請求を行使している場合は拒否できませんが、単に持分の買取をお願いされているだけなら拒否することも可能です。
以下では、それぞれの状況に応じた具体的な対処法について解説します。
裁判を起こされている場合
共有者が民法253条第2項に基づき「共有持分買取請求」を行使し、裁判を通じて持分買取を求めている場合は、買取を拒否することはできません。このような状況では、提示された対価について話し合い、合意に達したら大人しく登記手続きに協力するのが最も現実的な対応です。裁判所の決定に従うことで、トラブルの拡大を防ぐことができます。
ただお願いされている場合
他の共有者から単に持分の買取をお願いされている場合、その請求には強制力がありません。この場合は、自分の利益や相手との関係性を考慮して対応を決めることが重要です。以下の選択肢を検討しましょう。
金額に納得できるなら応じよう
提示された金額に納得できるのであれば、持分を売却するのも一つの手です。持分だけを所有していても、不動産全体を自由に活用することは難しく、処分する場合も他の共有者の同意が必要です。また、売却する際も安値で買い叩かれることが多いため、現金化して自由に使える資産を得る方がメリットが大きくなることもあるでしょう。
さらに、不動産管理の手間や納税の負担から解放されるという利点もあります。特に相続で共有持分を手に入れ、他の相続人との関係を解消したいと考えている場合は、売却を検討する価値はあるでしょう。
不動産を手放したくないなら相手の持ち分を買い取ろう
不動産を手放したくない場合、相手に対して持分の買取を提案することも選択肢の一つです。相続をきっかけに共有持分が引き継がれ、権利関係が複雑になるのを防ぐために「とにかく共有状態を解消したい」といった理由で持分の買取をお願いされている場合などには有効な対処法になります。
自分に支払い能力があり、不動産全体を活用する意図がある場合は、この方法を検討してみてもよいでしょう。
手放してもいいが、相手に売りたくないなら第三者に売却しよう
共有者との関係が悪い、または相手の提示価格に納得できない場合は、第三者に持分を売却することも可能です。
ただし、共有持分を所有していても、共有不動産全体を自由に活用することはできないため、通常の個人や不動産業者には売りづらいことがあります。そのため、共有持分の買取を専門とする業者に依頼するのが一般的です。
話がまとまらないなら弁護士提携の買取業者に相談しよう
話し合いで売買が成立しない場合、共有物分割請求が行われることもあります。しかし、裁判に持ち込むと望むような結果が得られないことも少なくありません。たとえば、裁判で不動産が競売にかけられると、相場よりも低い金額で売却されることがあり、損失を被るリスクもあります。
そのような場合、弁護士提携の買取業者にあらかじめ相談しておくのも有効な方法の一つです。こうした業者は、共有持分を引き継いで共有者間の協議も代行してくれるため、面倒な話し合いから解放され、負担を減らすことができます。また、売却が共有者に知られることもありません。
ただし、買取価格は相場よりも低くなる傾向があるため、複数の業者で見積もりを取り、最良の条件で売却することを目指しましょう。
共有状態を抜け出したいなら共有持分の売却も視野に入れる
共有名義を解消したい場合は、自分の共有持分を売却することも検討してみましょう。
共有している不動産全体を売却する際は、共有者全員の同意が必要になりますが、自己の共有持分については、他の共有者と協議することなく、売買可能です。共有者とのトラブルからいち早く抜け出したい場合は、有効な手段になるでしょう。
ただし、共有持分を売却する場合は、買取価格が相場より安くなることも多く、買い手が見つかりにくいケースもあります。早急に共有名義を解消したい場合は専門の買取業者に売却するのがおすすめです。
まとめ
共有持分の買取請求とは、共有状態を整理するために、他の共有者に持分の取得を求める行為を指します。ただし、この言葉は一つの制度を指す専門用語ではなく、任意交渉・買取請求権の行使・共有物分割請求といった複数の方法を含む広い言葉です。
重要なのは、どの方法にも前提条件があるという点です。
任意交渉は合意が前提です。買取請求権の行使は、未払いなどの法的要件を満たしている必要があります。共有物分割請求は裁判所の判断に委ねられ、自分が必ず取得できるとは限りません。
また、共有持分の買取請求を検討する際は、「いくらで決まるのか」「自分はどの段階にいるのか」「どの方法が現実的か」を整理することが不可欠です。価格は方法によって決まり方が異なり、任意交渉と法的手続きでは前提がまったく違います。
実務では、いきなり強い手段を選ぶよりも、まず事実関係を整理し、使える制度と使えない制度を見極めることが重要です。共有持分の買取請求は感情の問題に見えがちですが、実際は「証拠」「価格」「要件」という客観的な要素で結果が決まります。
共有状態を解消したいのであれば、まずは不動産の時価、持分割合、未払いの有無、登記状況を確認することから始めるべきです。そのうえで、任意交渉で解決できるのか、買取請求権を行使できるのか、共有物分割請求まで進むべきなのかを判断していくことになります。
共有持分の買取請求は、正しく整理すれば現実的な解決手段になります。逆に、制度を誤解したまま進めると、時間と費用だけがかかることもあります。まずは、自分の状況を客観的に把握することが出発点です。
共有持分の買取請求に関するよくある質問
共有持分の買取請求をされたら、必ず応じなければなりませんか?
共有持分の買取請求をされた場合、必ず応じなければならないかどうかは、その方法によって異なります。
任意交渉による共有持分の買取請求であれば、あくまで話し合いですので、応じる義務はありません。価格や条件に納得できなければ断ることができます。
一方で、民法に基づく買取請求権の行使や、共有物分割請求として裁判手続きに進んでいる場合は状況が変わります。法的要件を満たしている場合には、最終的に裁判所の判断によって持分の取得や不動産の売却が決まる可能性があります。
まずは、「どの方法による共有持分の買取請求なのか」を確認することが重要です。
共有持分の買取請求を無視するとどうなりますか?
任意交渉による共有持分の買取請求であれば、無視しても直ちに違法になることはありません。ただし、無視を続けることで関係が悪化し、共有物分割請求などの法的手続きに進む可能性はあります。
特に注意が必要なのは、裁判所からの書類が届いている場合です。共有物分割請求の訴状や調停申立書を放置すると、相手方の主張を前提に手続きが進むこともあります。
共有持分の買取請求を受けた場合は、無視するのではなく、任意交渉で解決できるのか、それとも法的手続きに進んでいるのかを見極めたうえで対応することが大切です。
共有持分の買取請求の価格に納得できない場合はどうすればいいですか?
共有持分の買取請求の価格に納得できない場合は、まず価格の根拠を確認することが重要です。
任意交渉であれば、再度話し合いを行い、不動産の時価や持分割合を基準に再提示することが可能です。複数の査定を取得することで、価格の妥当性を比較する方法もあります。
一方、買取請求権の行使や共有物分割請求の場面では、不動産鑑定評価など客観的な評価が基準になります。この場合は、評価方法そのものが争点になることがあります。
共有持分の買取請求では、感情ではなく「評価の根拠」で整理することが、納得できる解決に近づくためのポイントです。


