共有名義人の持分が差し押さえられた場合の対処法とは?他の共有者への影響も解説

債務の返済や税金・社会保険料などの支払いを滞納すると、本人が所有する不動産や共有持分が差し押さえられる可能性があります。差し押さえ対象の不動産が共有名義の場合、「自分の持分まで差し押さえられるのか」と不安になるでしょう。
共有者の1人だけが負う借金などを原因とする差し押さえでは、原則として対象になるのは、債務者本人の共有持分だけです。債務を負っていない他の共有者の持分や、不動産全体まで一緒に差し押さえられるわけではありません。
ただし、自分も連帯債務者・連帯保証人になっている場合、共有不動産の固定資産税などについて連帯納税義務を負っている場合、自分の持分を債務の担保にしている場合などは、自己持分も差し押さえや競売・公売の対象になる可能性があります。
また、他の共有者の持分だけが差し押さえられた場合でも、その持分を第三者が競売・公売で買い受けると、その第三者が新たな共有者になります。
その後、以下のような調整や請求が生じ、トラブルに発展するかもしれません。
- 不動産を単独で使用している場合などに、使用対価を請求される
- 新しい共有者から相場を下回る価格で持分の売却を持ちかけられる
- 新しい共有者との間で、不動産への立入りや利用方法をめぐるトラブルが生じる
- 新しい共有者から共有物分割請求を受け、話し合いがまとまらなければ訴訟を起こされる
こうしたリスクへの主な対処法として、次の5つが挙げられます。
弊社にご相談いただいた方のなかには、他の共有者ではなく「自分の共有持分が差し押さえられそう」と悩まれているケースもありました。
自分の共有持分が差し押さえられそうな場合は、「他の共有者に相談し、持分の買取や債務の支払いに協力してもらえないか確認する」「差し押さえ前に自分の持分を売却し、返済原資を確保する」といった対応が考えられます。
返済や納付自体が難しい場合は、債権者・徴収機関や弁護士など、状況に合った相手へ早めに相談することも大切です。
とはいえ、差し押さえや競売・公売が迫っている状況で、自分たちだけで解決策を見つけたり、適切な売却方法を判断したりするのは難しい場合もあるでしょう。
弊社クランピーリアルエステートでは、全国1,600超の弁護士・税理士・司法書士などの士業事務所と連携しています。士業と連携し、複雑な権利関係にも対応できる体制を整えているため、「競売・公売になる前に共有持分を売却したい」「見知らぬ第三者との共有を避けるため、自分の持分を買い取ってほしい」といったご相談にも、状況に応じて査定・買取を検討できます。
本記事では、共有持分が差し押さえられる仕組みや競売の流れ、他の共有者に及ぶ影響、状況別の対処法について解説します。他の共有者の持分が差し押さえられた方や、自分の持分が差し押さえられそうな方は、今後の対応を判断する際の参考にしてください。
共有名義不動産では原則として債務者本人の共有持分のみが差し押さえの対象となる
ある不動産の共有者Aが個人的な借金の返済などを滞納し、債権者が必要な法的手続きを進めた場合、原則として差し押さえの対象になるのはAの共有持分だけです。債務を負っていない他の共有者の持分まで、一緒に差し押さえられるわけではありません。
共有持分は、それぞれの共有者が所有する財産です。同じ不動産を共有しているだけで、他の共有者の個人的な借金を返す義務まで負うわけではありません。もし、債務者本人の借金が原因で他の共有者の共有持分が差し押さえられると、「連帯保証人でもないのに、他人の借金の支払いをさせられた」というおかしな話になってしまいます。
民事執行法43条2項では、金銭の支払いを目的とする強制執行について、不動産の共有持分を不動産とみなすと定めています。そのため、不動産全体ではなく、借金を滞納した共有者の持分だけを差し押さえて競売にかけることが可能です。
とはいえ、「自分に影響がないならよかった」と安心するのは早計でしょう。なぜなら、差し押さえられた共有持分が第三者に売却されてしまうと、その第三者が新たな共有者として、同じ不動産を一緒に所有する権利を得ることになるからです。
過去には弊社にも、「競売で知らない人が落札したせいで、その落札者とトラブルになっている」と相談いただくことがありました。自分の持分が差し押さえられなくても、新しい共有者との管理や売却の話し合いなどに影響が出る可能性があります。
なお、「原則として」他の共有者の持分は処分されないと表現したのは、例外があるからです。自分も連帯債務者や連帯保証人として支払義務を負っている場合、自分の共有持分を債務の担保に提供している場合、固定資産税などについて連帯納税義務を負っている場合には、自分の持分も差し押さえの対象になる可能性があります。
共有持分が差し押さえられる原因
共有持分が差し押さえられる原因は、他の財産が差し押さえられるケースとほとんど同じです。借金や損害賠償金、税金・社会保険料などの支払いが滞ると、未払い分を回収するために、共有持分が差し押さえの対象になる可能性があります。
その中でも、共有持分が差し押さえられる原因として実務上見られるのは、主に以下の3ケースです。
- 借金や損害賠償金などの未払いにより債務名義に基づく強制競売を申し立てられる
- 住宅ローンなどの返済を滞納し抵当権を実行される
- 税金や社会保険料を滞納し、滞納処分を受ける
借金や損害賠償金などの未払いにより債務名義に基づく強制競売を申し立てられる
消費者金融・クレジットカード会社関係の債務や個人間の借金、サービスの支払い代金、損害賠償金などの滞納が続いた場合、それらの債務が原因で共有持分が差し押さえられる可能性があります。
これらの債務は担保がないことも多く、支払いが遅れただけで直ちに共有持分を競売にかけられるわけではありません。お金を請求する側は、判決や裁判上の和解などの「債務名義」を取得するなど、必要な準備をしたうえで裁判所へ「強制競売」を申し立てます。
債務名義に該当するものは、主に次の通りです。
以下では、弊社がこれまで扱ってきた事例のなかから、実際に共有持分の差し押さえの原因となった債務をいくつか紹介します。
- 夫名義のクレジットカード利用代金を滞納し、債権回収会社が裁判所の手続きを進めた結果、夫の共有持分50%が差し押さえられた
- 共有者である長男が株式投資の損失を補うためにカードローンを利用し、返済できなくなった結果、実家の共有持分25%が差し押さえられた
- 交通事故の民事訴訟で損害賠償金500万円の支払いを命じられたものの、支払いに応じなかったため、債務者の共有持分30%が差し押さえられた
なお、強制執行では預貯金や給与などが差し押さえられる場合もあります。債務名義を取得されたからといって、必ず共有持分が差し押さえられるとは限りません。
住宅ローンなどの返済を滞納し抵当権を実行される
他の共有者が、自身の共有持分に抵当権を設定している場合、その抵当権が実行されて差し押さえられるケースがあります。抵当権の実行による差し押さえを経て競売にかけられる手続きを、「担保不動産競売」と呼びます。
共有名義不動産全体への抵当権設定は、共有物全体を担保にする処分・変更行為に当たるため、共有者全員の同意が必要です。
一方、各共有者は、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意を得ずに抵当権を設定できます。共有持分のみを担保にできるローンも存在するため、他の共有者に内緒で抵当権を設定している可能性はゼロではありません。
とはいえ、共有持分だけでは不動産全体を自由に利用・売却できないため、不動産全体に比べて担保として評価されにくく、持分だけに抵当権を設定するケースは多くないと思われます。
税金や社会保険料を滞納し、滞納処分を受ける
所得税・住民税・固定資産税などの税金や、国民年金・国民健康保険などの保険料を滞納した場合も、共有持分が差し押さえられることがあります。
税金や社会保険料の滞納について、差し押さえを行うのは裁判所ではなく、税務署や自治体、日本年金機構などです。
これらの機関は、裁判所で判決を得たり、競売を申し立てたりしなくても、法律に基づいて滞納者の財産を差し押さえることができます。
第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
e-Gov法令検索 国税徴収法第47条
(市町村民税に係る滞納処分)
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
e-Gov法令検索 地方税法第331条
差し押さえた後も未納が解消されない場合、共有持分は「公売」にかけられる場合があります。
公売とは、税務署や自治体などが差し押さえた財産を入札などで売却し、その代金を未納分の支払いに回す手続きです。実施主体や根拠となる法律、具体的な進め方が異なるため、競売とは別の手続きです。
一方で、財産を差し押さえた後、入札などによって売却する点は裁判所の競売と似ています。
なお、こちらも強制競売のケースと同じく、税金や社会保険料を滞納したからといって共有持分が直ちに差し押さえられるとは限りません。預貯金や給与などが対象になる場合もあり、どの財産がいつ差し押さえられるかは個別の状況によって異なります。
複数回の催告や差し押さえ予告が必ず行われるわけではないため、督促状が届いたら放置せず、早めに徴収機関へ相談しましょう。
共有持分が差し押さえられ、競売・公売で落札されたらどうなる?
差し押さえられた共有持分が落札され、落札者が代金を全額納付すると、原則として、その落札者が共有持分を取得し、新たな共有者になります。競売や公売を経て、親族などに代わって面識のない第三者が共有者になると、次のような影響が生じる可能性があります。
- 不動産全体の処分や管理が困難になる可能性がある
- 不動産の使用方法や使用対価をめぐって協議が必要になる
- 共有持分の売買を持ちかけられる
- 共有物分割を請求され、不動産全体の売却に発展する可能性がある
なお、共有持分の競売や公売では、不動産業者や投資家が落札するケースが多くみられます。こうした事業者や投資家の多くは、取得した共有持分の再売却や権利関係の調整などによる収益化を目的としています。
不動産全体の処分や管理が困難になる可能性がある
第三者が共有者になると、不動産の利用方法や修繕、将来の売却などについて、新しい共有者との調整が必要になります。実務面や感情面の整理はもちろんのこと、共有名義不動産の売却や管理ルールの設定などの一定の行為には、民法で定められた共有者の同意が求められるからです。
例えば、落札者が取得した持分が過半数を占める場合、原則として、その落札者だけで管理に関する事項を決められます。
親族同士の共有では、書面を作らず、これまでの関係性を前提に利用方法や費用負担を決めているケースも少なくありません。しかし、第三者が共有者になると、それまでの暗黙の了解だけでは新しい共有者と認識が一致しないこともあり、リフォーム・増改築や将来の売却方針などを改めて話し合う必要が生じる可能性があります。
不動産の使用対価をめぐって協議が必要になる
自分や家族だけで共有不動産全体を使用している場合は、家賃に相当する金銭である「使用対価」の支払いを、第三者から求められることがあります。
各共有者には、民法第249条に基づき、持分に応じて共有不動産全体を使用する権利があります。そのため、自分や家族だけで不動産全体を使用している場合、新しい共有者から持分割合などに応じた使用対価を請求される可能性があります。
以前の共有者との間で無償使用の合意があった場合も、その内容や新しい共有者に対する効力を確認しなければなりません。使用対価の請求が認められるかは、共有者間の合意内容や利用実態などによって変わるため、請求内容を確認したうえで、必要な対応を検討しましょう。
新しい共有者から金銭を請求された場合は、その場で支払いを約束したり、安易に合意したりせず、請求の根拠と金額の計算方法を確認します。必要に応じて、使用する場所や時間、鍵の管理、維持費の負担などを話し合い、合意した内容を書面に残しておくことも大切です。
共有持分の売買を持ちかけられる
新しい共有者から、共有関係を解消するために持分の売買を持ちかけられることもあります。具体的には、次のような提案が考えられます。
- 新しい共有者が取得した持分を買い取ってほしいと提案される
- 自分が所有する持分を売ってほしいと提案される
- 共有者全員で不動産全体を売却しようと提案される
「相手から提示された条件に納得できる」「もともと共有持分を手放したいと思っていた」という場合は、売買を検討するのも1つの選択肢です。注意したいのは、相手が取得した持分を高値で買い取るよう求められたり、自分の持分を安値で売るよう迫られたりするケースです。
いずれも当事者同士の合意によって行う売買であり、相手から提案された価格で持分を売買する義務はありません。提示額が必ず不当に安いとは限りませんが、適正な価格とも限らないため、すぐに判断しないことが大切です。
共有物分割を請求され、不動産全体の売却に発展する可能性がある
売買の話し合いがまとまらない場合、新しい共有者から「共有物分割」を請求される可能性があります。
共有物分割請求とは、共有者が他の共有者に対して、共有状態の解消を求めることです。新しい共有者にも、原則として共有物分割を請求する権利があります。
共有者同士の話し合いで分け方が決まらない場合や、話し合い自体ができない場合は、共有物分割請求訴訟を起こされることがあります。
共有物分割請求訴訟では、主に次のような方法から、不動産の性質や利用状況などに応じた分け方が判断されます。
- 土地などを実際に分け、それぞれが取得する
- 一部の共有者が不動産を取得し、他の共有者へ持分に応じた金銭を支払う
- 不動産全体を競売で売却し、その代金を持分に応じて分ける
どの方法を行うかは裁判所が判断するため、原告・被告のどちらも結果をコントロールすることはできません。
裁判で選ばれる分割方法や詳しい手続きについては、以下の記事で解説しています。
他の共有者の滞納に関連して自己持分も差し押さえられるケース
他の共有者の滞納に関連して、自分の共有持分も差し押さえられるケースが実は存在します。その支払いについて自分も法律上の義務を負っている場合や、自己持分が債務の担保になっている場合です。頻繁に起こる事例ではないものの、当てはまる可能性がないかどうかを一度確認しておくことをおすすめします。
共有名義不動産の固定資産税などが滞納されている
共有名義不動産でとくに注意したいのが、その不動産に課される固定資産税や都市計画税の滞納です。
これらの税金については、その年度の納税義務者となる共有者全員が、税額全体について連帯して納付する「連帯納税義務」を負います。
(連帯納税義務)
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
e-Gov法令検索 地方税法第10条の2
要するに、共有者間で「自分は持分割合に応じた金額だけを負担する」と決めていても、自治体との関係では、各共有者が未納額全体の納付を求められる可能性があるという法律上の決まりです。
例えば、共有者の代表者に、共有者間で決めた自分の負担分を渡していても、そのお金が自治体へ納付されていなければ未納は解消されません。一部しか納付されていない場合は、その残額について共有者全員が連帯して納付する義務を負います。
そのまま未納が続き、自治体が代表者以外の共有者から徴収する場合は、原則として、その共有者にも納税の告知・督促が行われます。督促後も完納されなければ、財産調査の結果などを踏まえ、その共有者の預貯金や給与、共有持分などが差し押さえられるかもしれません。
「代表者が悪いのに巻き添えだ」と思われるかもしれません。しかし、自分も法律上の納付義務者であるため、代表者に自分の負担分を渡したという事情だけでは、自治体に対する納付義務を免れません。
ただし、共有者全員の持分が自動的かつ一斉に差し押さえられるわけではありません。どの共有者のどの財産を差し押さえるかは、財産の状況などを踏まえて自治体が判断します。
自分は払ったつもりなのに役所から督促状が届いたら、「手違いだろう」と放置してはいけません。すぐに代表者と自治体の双方へ納付状況を確認してください。
連帯債務・連帯保証や抵当権の設定がある
固定資産税・都市計画税の連帯納税義務以外にも、自分が連帯債務者・連帯保証人として支払義務を負っている場合や、自分の共有持分を他人の債務の担保にしている場合は、自己持分に影響が及ぶ可能性があります。
自分の共有持分まで差し押さえ・競売の対象となる主なケースは、次の通りです。
- 連帯債務者や連帯保証人として、自分も債権者に対する支払義務を負っている
- 他人の債務を担保するため、自分の共有持分に抵当権を設定している
連帯債務者や連帯保証人は、自分自身も債権者に対する支払義務を負います。債務の支払いが行われず、自分も支払わない場合、債権者が必要な法的手続きを取れば、共有持分を含む本人の財産が差し押さえられる可能性があります。
一方、他人の債務を担保するため、自分の共有持分だけに抵当権を設定している場合は、本人にその借金の返済義務がなくても担保にした持分が競売対象です。この場合、その債務について個人的な支払義務も負っている場合を除き、預貯金や給与などの他の財産まで差し押さえられるわけではありません。
他の共有者の持分が差し押さえられる場合の5つの対処法
他の共有者の持分が差し押さえられる場合、「所有を続けるか」「手放すか」によって対処法が異なります。そのため、まずは共有名義の不動産を所有し続けるのか手放すのかを決めましょう。
対処法を選ぶ前に登記事項証明書や届いた通知から、「誰のどの持分が対象か」「差し押さえの原因は何か」「手続きがどこまで進んでいるか」を確認するのがよいでしょう。
【所有を続けたい場合】差し押さえ前に債務者の持分を購入する
共有名義の不動産が自宅となる場合、共有持分の差し押さえにより不便が生じる可能性があるでしょう。そうした場合の対処法として、共有者の持分が差し押さえられる前に買い取る方法があります。
差し押さえ前であれば、債務者は原則として自己持分を売却できるため、他の共有者が直接買い取ることも可能です。
ただし、差し押さえが迫っている場合は、「詐害行為取消請求」の対象とならないように注意が必要です。債務者が債権者を害すると知りながら相場より著しく安い価格で売却し、買主もその事情を知っていた場合などは、持分の返還などを求められる可能性があります。
もし第三者へ適正な価格で売却しても、売却代金を隠す意図があり、買主もその事情を知っていた場合などは問題となる可能性があります。
そのため、共有者間で持分を売買する場合は、滞納が分かった段階で早めに検討を始め、適正な価格・手続きで進めることが重要です。差し押さえが迫っている場合は、実行前に弁護士へ相談しましょう。
「いくらで売却するのが適正なのかわからない」という場合は、弊社のような共有持分を専門とする不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。
【所有を続けたい場合】差し押さえ前に共有者の債務を代わりに支払う
債務者や債権者と事前に話し合い、差し押さえの原因となっている債務の全額を代わりに支払えば、その債務を理由とする差し押さえを回避できる可能性があります。
支払った金額を後から債務者へ請求できるかどうかは、事前の合意や支払いに至った経緯などによって異なります。肩代わりする場合は、返還の有無や金額、期限をあらかじめ書面で決め、債権者や徴収機関にも支払方法を確認しましょう。
【所有を続けたい場合】差し押さえ後に競売・公売で買い受ける
差し押さえが行われた後も、買受資格を満たす他の共有者は、原則として競売・公売に参加できます。競売では売却許可決定、公売では売却決定などの必要な手続きを経て代金を納付すれば、対象となった持分を取得できます。
ただし、共有者だからといって優先的に買い受けられるわけではなく、一般の参加者と同じ条件で入札する必要があります。
また、必ずしも一般の市場価格より安く取得できるとは限りません。入札が競合すれば落札価格が高くなるため、十分な資金を準備しておく必要があります。
共有持分の競売については、以下の記事で詳しく解説しています。
【手放す場合】差し押さえ前に共有者全員で協力して不動産を売却する
差し押さえ前であれば、共有者同士で協力して不動産全体を売却する手もあります。不動産全体として売り出せれば、通常の市場価格で売却される可能性が高いでしょう。
この場合、仲介業者に依頼して売却することも可能です。基本的には買取業者に売却するよりも高く売れますが、買い手を見つけるまでに時間がかかってしまいます。そのため、差し押さえ前に早く売却したい場合には、専門の買取業者に依頼するのが得策です。
売却代金などでローンを完済できない場合は、「任意売却」も手段の一つです。
任意売却とは、売却代金から諸費用を除いた金額などを返済に充ててもローンを完済できず、そのままでは抵当権を抹消できない場合に、金融機関などの抵当権者の同意を得て不動産を売却する方法です。
任意売却では、抵当権者の同意のもとで抵当権を抹消するため、売却後もローンが残る場合でも不動産を売却できます。
ただし、任意売却であっても、著しく安い価格で売却した場合や、売却代金を隠すなどして債権者を害する意図があり、買主もそれを知っていた場合などは、詐害行為取消請求の対象となる可能性があります。差し押さえが迫っている場合は、債権者や専門家に相談しながら慎重に進めましょう。
【手放す場合】差し押さえ前でも後でも自分の持分を売却する
他の共有者の持分が差し押さえられる前でも後でも、差し押さえの対象となっていない自分の持分は、原則として他の共有者の同意なく売却できます。そのため、すでに他の共有者の持分が差し押さえられ、不動産を所有し続ける意思がない場合は、自分の持分を専門の買取業者へ売却する方法もあります。
持分をすべて売却して所有権移転登記まで完了すれば、自分は共有関係から離れることが可能です。その後、競売・公売の対象となった持分を第三者が取得しても、その第三者と共有関係になることはありません。
売却後に必要となる他の共有者との話し合いや、共有関係の解消に向けた手続きは、買い取った業者が新たな共有者として行います。
ただし、所有権移転登記への協力や売却後の税務申告など、売主として必要な手続きまでなくなるわけではありません。
共有持分の売却については、以下の記事で詳しく解説しています。
自己持分が差し押さえられる場合の3つの対処法
過去に弊社がお受けしたご相談のなかには、他の共有者ではなく「自分が持つ共有持分が将来差し押さえの対象になるかもしれない」とお悩みの方もおられました。
自己持分が差し押さえられそうな場合は、債権者や徴収機関への返済・納付の相談と並行して、他の共有者にも早めに状況を伝えることが大切です。早い段階で相談すれば、持分の買取や不動産全体の売却などに協力してくれる可能性があります。
もし共有持分を売却するあてがあるなら、差し押さえ前に売却して返済原資に充てるのも1つの方法です。場合によっては抵当権者との調整や詐害行為取消しのリスクを検討する必要がありますが、競売に出されるよりも多くの返済原資を確保できる可能性があります。
「そもそも借金や未納分がどうにもならない」とお悩みなら、共有者や不動産会社だけで解決しようとせず、弁護士などの専門家や、税務署・自治体・年金事務所などの徴収機関へ相談しましょう。
他の共有者に早めに相談する
「借金があるなんて言えない」という気持ちは分かるものの、差し押さえの可能性がある段階では、債権者や徴収機関への相談と並行して、他の共有者にも早めに状況を伝えることが大切です。
他の共有者に相談すれば、以下の協力を得られる可能性があります。
- 他の共有者が共有持分の買取を提案してくれる
- 他の共有者が返済資金を一時的に貸し、滞納の解消に協力してくれる
- 他の共有者全員と協力して不動産全体を売却し、自分が受け取る売却代金を返済に充てる
弊社のこれまでの経験上、他の共有者も「知らない第三者と共有状態になるのは避けたい」と考えるケースが多くみられます。共有者が親族の場合、差し押さえ後に初めて事情を知られると、親族関係まで悪化するおそれがあります。
相談できそうな関係性なら、関係修復が難しくなる前に勇気を出して相談しましょう。
他の共有者や買取業者に売却して返済原資を作る
自己持分が差し押さえられる前に、他の共有者や買取業者へ自己持分を売却し、返済原資を作るのも1つの手です。
一般に、競売よりも自分で売却するほうが、売却先や条件を調整でき、より多くの返済原資を確保できる可能性があります。その理由は、次の通りです。
- 他の共有者、とくに購入によって単独名義にできる共有者であれば、持分を集約できるため、「不動産全体の市場価格×共有持分の割合」を目安に価格を交渉できる可能性がある
- 共有持分専門の買取業者なら、権利関係なども踏まえて査定できる。弊社では、条件が整えば最短数日での現金化にも対応している
なお、売買契約を締結しただけでは、買主は共有持分を取得したことを、その後に差し押さえをした債権者へ主張できない可能性があります。差し押さえ前の売却を対策として実効性のあるものにするには、少なくとも差し押さえの効力が生じる前に、買主への所有権移転登記を済ませる必要があります。
売却する共有持分が住宅ローンの担保になっていても、売却代金や自己資金でローンを完済できる場合は、通常どおり売却可能です。その際、売却と同時に抵当権を抹消します。
一方、売却代金や自己資金を充ててもローンを完済できない場合は、任意売却が選択肢となるでしょう。任意売却で抵当権を抹消するには、金融機関などの抵当権者の承諾が必要です。
抵当権者にとって、任意売却のほうが競売よりも多く債権を回収できると見込まれる場合は、抵当権の抹消に応じてもらえる可能性があります。
ただし、売却価格や売却代金の配分、他の権利者との調整状況なども踏まえて判断されるため、必ずしも承諾を得られるわけではありません。
親族である共有者への売却も、売却価格や代金の使い道によっては、前述した詐害行為に当たる可能性があるため注意しましょう。
親族間では、つい「なあなあ」で相場より安い金額で売買するケースが実務上少なくありません。税金の滞納がある場合は、税務署などの徴収機関もこうした親族間取引を警戒しています。差し押さえが迫っている場合は、売却前に価格の妥当性や代金の使い道を弁護士へ確認しましょう。
債務整理について弁護士などの専門家に相談する
「売却しても借金が完済できない」「そもそも売るあてがない」など、債務の返済自体が難しい場合は、相談内容に応じて、弁護士や司法書士、不動産会社、税務署・自治体・年金事務所などの相談先を使い分けましょう。
相談先ごとの主な特徴は、次の通りです。
自己持分の売却と債務整理を同時に検討している場合は、売却前に弁護士へ相談したうえで、共有持分を取り扱う不動産会社にも査定や売却方法を相談しましょう。
なお、自己破産で免責許可決定が確定しても、税金や社会保険料などの支払義務は原則として残ります。これらを滞納している場合は、税務署・自治体・年金事務所など、納付先の担当窓口へ納付方法を相談しましょう。
債務整理を行った場合は、手続きの種類やそれまでの返済状況に応じて、延滞や保証履行、債務整理、破産などに関する情報が信用情報機関へ一定期間登録されることがあります。
登録される内容や期間は、手続き・信用情報機関によって異なります。登録期間中は、クレジットカードやローン、信用情報を利用する保証会社の審査に影響する可能性があります。
共有持分の差し押さえ・競売の流れ
共有持分を対象とする債権回収のための競売には、抵当権などの担保権に基づく「担保不動産競売」と、判決などの債務名義に基づく「強制競売」があります。
競売を申し立てるまでの手続きは異なりますが、裁判所が競売開始決定を出した後の大まかな流れはほぼ同じです。
- 返済の滞納・督促
- 訴訟・支払督促などによる債務名義の取得
- 競売の申立て
- 競売開始決定
- 物件の調査・評価
- 入札
- 売却許可
- 代金納付・共有持分の移転
- 売却代金の配当・剰余金の交付
具体的な期間は、債務の内容や裁判所、物件の状況などによって異なります。通知を受け取った場合は、記載されている期限や競売の進み具合を早めに確認しましょう。
以下では、判決などの債務名義に基づく「強制競売」を例に、返済の滞納から共有持分が売却されるまでの流れを解説します。
返済を滞納すると督促や支払いの請求を受ける
カードローンやクレジットカード利用代金、個人間の借金などの返済が遅れると、債権者や債権回収会社などから、電話や書面で支払いを求められます。返済が一度遅れただけで、直ちに共有持分が差し押さえられるわけではありません。
督促を受けても滞納が解消されない場合、残額の一括返済を求められたり、債務名義を取得されて競売に向けた手続きを進められたりする可能性があります。
この段階であれば、返済方法の見直しや共有持分の売却など、競売以外の方法を検討できる場合があります。通知を放置せず、債権者へ今後の対応を確認することが大切です。
その後も滞納が続くと、「法的措置(訴訟や支払督促)の予告」や「差し押さえ予告」が届くことがあります。ただし、債権者が事前の予告をせず、訴訟や支払督促を申し立てる場合もあります。
抵当権や債務名義を持たない一般の債権者が共有持分の強制競売を申し立てるには、訴訟や支払督促などによって、あらかじめ債務名義を取得する必要があります。
支払督促が届いた場合、債務者は受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てることができます。異議が申し立てられると、通常訴訟へ移行します。
異議がなければ、債権者は仮執行宣言を申し立てることが可能です。仮執行宣言付支払督促が債務者へ送達されると、債権者は強制執行を申し立てられるようになります。
競売を申し立てられ、共有持分が差し押さえられる
債権者が判決や和解調書などの債務名義を取得している場合、借金や未払金の滞納が続くと、共有持分の強制競売を申し立てることがあります。
裁判所が債権者の申立てを認めると競売開始決定を出し、登記簿に差し押さえの情報が記録されます。
競売の対象が債務者の共有持分だけであれば、原則として差し押さえられるのもその持分だけです。
物件の調査や入札を経て、代金納付時に買受人へ共有持分が移る
競売開始決定後は、裁判所から命じられた執行官や評価人が、不動産の状態や利用状況、権利関係などを調査・評価し、裁判所がその結果をもとに売却基準価額を定めます。その後、三点セットなどの競売物件情報が裁判所の閲覧室や「不動産競売物件情報サイト(BIT)」で公開され、購入を希望する人による入札が行われます。
期間入札の場合、原則としてもっとも高い金額で適法に入札した人について裁判所が売却を許可すると、その人が買受人となります。買受人が代金を納付した時点で共有持分を取得し、その後、裁判所が所有権移転の登記手続きを行います。
他の共有者は、以後、新たな共有者となった買受人と、不動産の利用や管理、将来の売却などについて調整することになるでしょう。
売却代金で完済できなければ競売後も債務が残る
競売によって得られた売却代金は、競売にかかった費用や、抵当権を持つ金融機関などへの支払いに充てられます。複数の債権者がいる場合は、法律上の優先順位に従って支払われます。
ただし、債務者本人の共有持分が競売になり、売却代金だけで債務を完済できなければ、共有持分を失った後も残った債務の支払義務は続きます。競売が終わったからといって、借金がすべてなくなるわけではありません。
一方、売却代金が執行費用や配当の対象となる債権の額を上回った場合は、原則として剰余金が元の所有者へ交付されます。
まとめ
共有者の1人だけが負う債務を原因とする差し押さえでは、原則として対象になるのは債務者本人の共有持分だけです。差し押さえを受けていない共有者の持分まで失われるわけではありません。ただし、不動産全体に抵当権が設定され、他の共有者の持分も担保になっている場合などは、この限りではありません。
しかし、差し押さえられた持分が競売・公売にかけられ、買受人が代金を全額納付すると、その買受人が新たな共有者になります。親族以外の第三者との共有になることで、不動産の使用や管理、将来の売却について調整が必要になる可能性があります。
共有関係から離れたい場合は、差し押さえ前に共有者全員で不動産全体を売却するほか、差し押さえの対象となっていない自分の持分だけを売却する方法があります。
一方、差し押さえを受けていない共有者が不動産の所有を続けたい場合は、「差し押さえ前に債務者の持分を買い取る」「債務者の債務を代わりに支払うなどして滞納の解消に協力する」「差し押さえ後に競売・公売へ参加して持分を買い受ける」といった方法を検討できます。
利用できる対処法は、誰のどの持分が差し押さえられるのか、差し押さえの原因は何か、競売・公売の手続きがどこまで進んでいるかによって異なります。持分の査定や売却については共有持分を扱う不動産会社へ、債権者との交渉や債務整理については弁護士へ、税金や社会保険料の納付については税務署・自治体・年金事務所などの担当窓口へ早めに相談しましょう。
共有持分の差し押さえについてよくある質問
共有持分は競売で売れにくいと聞いたのですが本当でしょうか?
共有持分を取得しても、不動産全体を単独で処分できず、利用方法についても他の共有者との調整が必要になることがあります。そのため、購入希望者が限られ、価格も低くなりやすい傾向があります。ただし、共有持分を扱う不動産会社や投資家、他の共有者が入札することもあるため、必ず売れ残るわけではありません。
共有持分が差し押さえられた後も共有名義不動産に住み続けられますか?
共有持分が差し押さえられただけで所有者が変わるわけではないため、直ちに退去する必要はなく、原則としてそれまでどおり住み続けられます。
ただし、買受人が代金を納付して新たな共有者になると、使用方法や使用対価について協議を求められたり、共有物分割を請求されたりする可能性があり、将来にわたって同じ状態で住み続けられるとは限りません。
差し押さえられた共有持分が競売・公売で売れなかった場合はどうなりますか?
一度売れなかっただけで、差し押さえや債務が自動的に消えるわけではありません。競売では特別売却や再度の入札、公売では再公売や、徴収機関が買受人を選んで売却する「随意契約」へ進む場合があります。売却の見込みがないと判断され、手続きの終了や差し押さえの解除に至ることもありますが、未払いの債務そのものは残ります。
