自殺物件の売却完全マニュアル!告知義務から相場・最適な売却方法まで徹底解説

訳あり物件を専門とする弊社では、「自殺が起きた物件でも売却できますか?」というご相談を受けることがあります。

結論からいうと、自殺物件だからといって売却できないわけではありません。

ただし、自殺をはじめとした事故物件は心理的に敬遠されやすいため、仲介での売却は難航しやすいです。特に自殺物件は、事故物件の中でも一般的な市場では抵抗感を抱かれやすいことから、仲介ではなく専門の買取業者への売却が得策です。

なお、自殺のような人の死があった物件を売却する場合、その事実を告知する「告知義務」を履行しなければならないのが原則です。自殺の場合は不動産売買における告知義務は無期限で続くため、過去に自殺が起きた場合でも売却する際には必ず買主にその事実を告げる必要があります。

この記事では、自殺物件の売却方法について、告知義務から売却しやすくする方法まで詳しくお伝えします。

クランピーリアルエステートでは、自殺物件を含む事故物件全般にも買取対応しており、スピーディーかつ安心して売却できるサポートを提供しています。ぜひ無料査定や相談を通じて、売却の第一歩を踏み出してください。

目次

自殺物件は売却できる?

結論からいえば、自殺者が出た物件でも売却することは可能です。しかし、事故物件は買主に心理的な抵抗を与えやすく、なかでも自殺があった物件は特に敬遠されやすいため、売却の難易度が高いのが実情です。

実際に、弊社が全国969人の男女を対象にしたアンケートでは、下記の通り男女ともに7割以上が「抵抗がある」と答える結果となりました。

さらに、死因別に住むことへの抵抗感を調査した結果、下記のような結果となりました。

調査結果を見ると、自然災害死と孤独死(いずれも特殊清掃済み)のような、事件性のない死因についてはそれぞれ20%以上の人が許容できると答えました。一方で、自殺があった事故物件を許せると答えた人は4.2%と、殺人に次いで低い割合に留まりました。

なお、事故物件を許せない理由としては、「祟りがありそうで怖い」「縁起が悪そう」などが代表的です。やはり、自然災害死や孤独死などに比べると、自殺が出た部屋は心理的抵抗感が大きいと感じる人が多いようです。

つまり自殺物件は自殺があった事実が心理的な抵抗を与えやすいことから、「売却したくてもなかなか購入希望者が現れない」という状況になりやすいのです。

自殺物件を売却する場合には告知義務が生じる

前述のとおり、自殺物件の売却について法的な制限はないため、売却自体は可能です。なかには「心霊現象を気にしない」「価格が安い方が良い」といった理由で、事故物件をあえて購入する買主もいます。

しかし自殺物件を売却する際には、必ず自殺があった旨を買主側へ告知しなければなりません。不動産取引では、買主が「その事実を知っていれば契約しなかった」可能性が高い情報を伝える義務を告知義務と呼びます。

自殺は、国土交通省のガイドラインにおいても心理的瑕疵に該当するため、告知義務の対象です。心理的瑕疵とは、「その事実を知っていれば取引をしなかった」と考えられる事柄のうち、買主が心理的な抵抗や嫌悪感を抱く可能性が高いものを指します。

このため、自殺があった物件は心理的瑕疵物件とみなされ、売却時には必ず買主に事実を告げなければなりません。

<一般的に心理的瑕疵に該当するもの>

  • 自殺・他殺が発生した
  • 自然死や不慮の死のうち特殊清掃が必要なレベルで遺体の発見が遅れたもの
  • 近くに墓地、火葬場、刑務所、下水処理場など嫌悪施設が存在している

前提として、自殺物件を含む「人死があった物件」に関する告知の基準が曖昧でした。しかし、告知義務を曖昧なまま強制すると、貸主側は「すべてを告知すると物件を借りたくない人が増えるのではないか」といった懸念を抱きます。その結果、孤独死や病死の可能性がある高齢者への貸し渋りといった社会的な問題が生じる恐れもありました。

そこで国土交通省は2021年10月に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にて、人死にまつわる告知義務の範囲を策定しています。現在の不動産取引では、ガイドラインの判断基準を基に告知義務の有無を判断するのが一般的です。

自殺物件の売却自体は禁止されていませんが、売り方にはルールがあることを理解しておくことが重要です。特に、自殺物件の告知義務は下記のように、他の事故物件とは異なる点があります。

  • 自殺後に入居者が入った場合でも告知義務は消えない
  • 自殺物件を売却する場合には告知義務の時効はない
  • 告知義務を違反することの法的リスク

ここからは、それぞれの異なる点について紹介していきます。なお、自殺について告知する際には、故人や遺族のプライバシーへの配慮も忘れないようにしてください。

参考:国土交通省「「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました

自殺後に入居者が入った場合でも告知義務は消えない

弊社に寄せられた事故物件にまつわる相談のなかには、「自殺物件の賃貸でも一度人が入居すれば、その入居者以降に告知する必要はないのか」というものもあります。
このような情報はインターネットでもよくみられますが、入居者が入った場合でも告知義務が消えるかはケースバイケースであり、告知義務は消えないという話は事実とは異なります。

確かに2007年8月10日の東京地方裁判所の判決だと、「自殺事件後の最初の賃借人には告知する義務がはあるが、その次の賃借人には特段の事情がない限り告知する義務はない」と判断されました。しかし、本判決は「首都圏のワンルームで近所付き合いが希薄だった」「事件後の最初の賃借人は2年ほど住んでいた」という、個別の事情が考慮されています。

ほかの判例でも、「自殺の事実は心理的瑕疵ではあるが、自殺事件後に新しい入居者が一定期間生活すれば嫌悪感は薄れる」と判決が出たケースもあります。しかし、新しい入居者が入った後の一定期間の日数や心理的瑕疵が消える日数などは、法律やガイドラインのいずれにも明記されていません。

そのため、下記のような状況によっては、自殺後に入居者が入った部屋でも告知義務が消えず、入居者から貸主側への損害賠償請求に発展する可能性があります。

  • 自殺の状況が広く知られており、周囲に強い印象を与えている場合
  • 報道や近隣住民の噂などで社会的に周知されている場合
  • 事件性が強く、単なる自死ではなく警察沙汰になった場合
  • 事件後に入居者がほとんどいない場合
  • 事件後の入居期間が短く、心理的瑕疵が解消されたと認めにくい場合

また、告知義務の必要がないと判断されるケースであっても、買主側から人死についての事実確認があったときは、隠さずに告知しなければなりません。買主側の要請を無視したときも、告知義務違反に該当します。

告知義務が必要か否かの判断は、自己判断ではなく、不動産に強い弁護士や不動産会社の専門家などへ一度相談することを推奨します。

自殺物件を売却する場合には告知義務の時効はない

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、賃貸借契約に限り「自殺や他殺が発生しても、その事案から概ね3年経過すれば原則として告知義務はなくなる」と制定されました。

しかし、売却する場合は告知義務に時効はありません。ガイドラインでは、自殺物件の売却については事件発生後の経過期間に関係なく告知しなければならない旨が記されています。

調査を通じて判明した範囲で、経過期間によらず、事案の発生時期及び死因を告知
引用:ガイドラインの骨子について|国土交通省

これは、不動産の売却は賃貸と異なり取引金額が大きいほか、すぐの転居が難しいことが影響しています。また、自殺物件は市場価値が大幅に下がるのが基本なため、その所有権を取得する買主の損失を回避するためにも、売主には半永久的な告知義務が設けられているのです。

例えば、30年前に自殺があった物件を売却する場合でも、売主は買主に対してその事実を伝えなければなりません。

告知義務を違反することの法的リスク

自殺物件の売却において告知義務を怠ると、民法第562条などに基づく契約不適合責任が発生し、さまざまな法的リスクを負うことになります。契約不適合責任とは、売主が契約内容に適合しない物件を引き渡すことにより、買主に損害が生じた場合に、売主がその責任を負うものです。

契約不適合責任に基づく具体的な法的リスクとしては、以下のようなものがあります。

リスク 概要 該当法令 売主が負担する損害
契約解除 買主が告知義務違反を理由に契約解除を申し出ることができる。
契約解除となると、取引は白紙に戻り、再度新しい相手を探さなければならない。
民法第564条
「買主の損害賠償請求および解除権の行使」
・新たな買主の確保にかかる時間とコスト
・取引が白紙となることによる損失。
損害賠償 告知義務違反により買主に損害が発生した場合、売主はその損害を賠償する責任を負う。 民法第564条
「買主の損害賠償請求および解除権の行使」
・精神的苦痛に対する慰謝料
・引っ越し代
・登記費用などの実際の損害金額
減額請求 買主が契約の継続を希望する場合、売却代金や家賃に対して減額請求をされる可能性がある。
減額される金額は交渉次第で、過大な金額を請求すると契約解除や損害賠償に発展する恐れがある。
民法第563条
「買主の代金減額請求権」
・売却代金の減額
・交渉による時間的コスト

上記のリスクを避けるためにも、告知義務は遵守することが重要です。買主との信頼関係を築くためにも、事前に十分な説明と情報提供を行いましょう。

自殺物件で告知義務が生じるケース

とくにアパートやマンションといった集団住宅の場合、どこで自殺があった場合に告知が必要なのかが判断しづらいこともあるでしょう。まず前提として、自殺物件で告知義務が生じるのは、次の2ケースに該当する場合です。

  • 部屋の中で自殺があった物件
  • アパートやマンションの共用部分で自殺があった物件

部屋の中で自殺があった場合、原則的には告知義務が生じてしまいます。また、仮に部屋の中ではなく共用部で自殺があった場合でも、告知義務が生じるケースもあります。

このように、どこで自殺があったのかによって、売却時の告知義務が生じるかは異なります。また、誰に対して告知義務が生じるのかも変わるため、自殺物件を売却する際にはこの辺りの情報を把握しておくことも大切です。

それぞれの内容をみていきましょう。

部屋の中で自殺があった物件

部屋の中で自殺があった物件を売却する際は、購入希望者に対してその事実を告知しなければなりません。なお、告知義務が生じる相手は、原則としてその部屋の入居希望者のみです。

例えば集合住宅の場合、自殺があった部屋の隣室や上下階への入居を希望している人に対して、自殺があった旨を必ずしも伝える必要はありません。

ただし、マンション内で自殺があったことに心理的抵抗を抱く人も一定数いるため、状況に応じて告知をした方がよいこともあります。特に、以下のような状況においては、隣室や上下階への入居希望者にも告知をしておいた方が良いでしょう。

  • 自殺があった部屋と同じフロアの部屋に入居を希望している場合
  • 住環境に敏感なエリアにある場合
  • 近隣住民や周辺のコミュニティ内で情報が広がる恐れがある場合

自殺があった部屋と同じフロアへの入居を希望している場合、心理的な抵抗を感じる人がいる可能性が高いため、告知をすることで後々のトラブルを防げます。また、高級マンションのように住環境に関心が高いエリアにある場合、自殺などの心理的瑕疵に敏感な入居者が集まる傾向です。

その場合、部屋やフロアが異なっても「自殺があった」という事実に抵抗を感じる可能性があるため、事前に告知しておくことでトラブルを未然に防げます。

また、住民同士のコミュニティが活発なエリアでは、自殺の事実が噂として広まり、物件の評判に大きく影響を与える可能性があります。このような地域でも、買主が後から不安を抱えることを避けるために、告知を先に行うことが重要です。

アパートやマンションの共用部分で自殺があった物件

アパートやマンションといった集合住宅では、屋外での自殺も告知義務の対象になります。具体的には、住人全員の利用頻度が高い共用部分で自殺があった場合は、その事実を告知なければなりません。

例えば、次のような共用部分は利用頻度が高い場所といえるため、告知の義務が生じます。

  • エレベーター内・エレベーターホール
  • エントランス
  • 唯一の階段
  • 駐車場・駐輪場

このほかにも、マンションの通路で自殺があった場合は、原則としてその通路を日常的に使う住人に対してのみ、告知義務が発生します。例えば、204号室の前の廊下で自殺があった場合は、その前を日常的に通過することになる、203号室・202号室の購入希望者に対して告知が必要です。

基本的に他階の住人への告知義務は不要ですが、前項と同じく状況を見て告知した方がよいこともあるでしょう。一方で、下記のように買主が日常生活で通常使用しないような共用部分で自殺があった場合は、原則として告知義務は不要とされています。

  • 普段は使わない屋上
  • 使われていない裏階段
  • 敷地の隅にある物置

ただし、こちらも事件性や周知性、社会的影響が大きいケースでは、利用頻度の低い場所であっても告知義務が生じる可能性があります。基本的に他階の住人への告知義務は不要ですが、前項と同じく状況を見て告知した方がよいこともあるでしょう。

自殺物件の売却方法は「仲介」「買取」

自殺物件にかかわらず、不動産を売却する方法には、大きく分けて「仲介」「買取」の2つがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、物件の状態や売主の希望に応じて、どちらが適しているかを判断することが重要です。

基本的には、以下の2つのパターンでどちらが向いているかを判断します。

  • 立地などの条件がよく需要が高い物件なら仲介を検討する
  • 買い手がつきそうにない物件なら買取を検討する

以下では、仲介と買取の特徴について比較していきます。

立地などの条件がよく需要が高い物件なら仲介を検討する

仲介とは、不動産会社が売主と買主をつなぎ、売買契約までのサポートを行う方法です。買主を募るための販売活動や内覧対応、契約書作成などは不動産会社が代行してくれるほか、売却価格が市場相場に近く、交渉によって高く売れる可能性があるのがメリットとして挙げられます。

依頼する際は、自殺物件である旨を上手く伝え、買主の心理的な抵抗を取り除いてくれる不動産会社を選ぶことで、減額をなるべく少なく抑えて売却できる可能性があります。

ただし、仲介は買主が見つからない限り売却は成立しません。特に自殺物件の場合、一般の人からの需要は低いため、売却までに時間がかかってしまうどころか、買主が現れず売却できないケースも少なくありません。そのため、仲介で売却依頼をする前に、立地条件や価格設定を慎重に見極めることが重要です。

基本的に、下記のような物件であれば仲介での売却を検討する価値があるでしょう。

  • 需要の高いエリアにある
  • 駅から近いなど立地条件が良い
  • 需要が高いエリアにあり、かつ相場よりも価格が安い
  • 築年数が浅いなど物件の状態が良好

買い手がつきそうにない物件なら買取を検討する

買取とは、不動産買取業者が物件を直接購入する方法です。仲介のように買主を探す必要がないため、売主が業者の査定額に納得すれば、数日から数週間ほどとスピーディーに現金化できます。

たとえば、下記のように仲介で買主を見つけるのが難しい物件でも、買取ならすぐに売却できます。

  • 築年数が経過しており老朽化が進んでいる
  • 遺体による室内の損傷が激しい
  • 駅や市街地まで遠い

売却額は仲介よりも安くなりますが、その分、買取には契約不適合責任が免責になるという大きなメリットがあります。契約不適合責任とは、売却後に物件の不具合や欠陥が見つかった場合に売主が修繕や損害賠償を負う責任のことです。

弊社をはじめ、買取業者では基本的に、契約不適合責任は免責としているケースがほとんどなため、修繕やリフォーム、特殊清掃をせずにそのままの状態で買取が可能です。そのため、後々のトラブルや追加費用の発生を避けられます。

できるだけ早く現金化したい人や、修繕やリフォームの費用をかけたくない人、売却後のトラブルを避けたい人には買取がおすすめです。

売れない自殺物件は事故物件専門の買取業者に依頼するのが得策

前述の通り、自殺物件は買い手が付きにくいことから、一般的な不動産会社や買取業者では買取を断られてしまうことも多いです。弊社でも「仲介では売れなかった」という方から事故物件の売却相談を受けることが多々ありますが、その場合には訳あり物件専門の買取業者への売却を提案させていただいております。

事故物件専門の買取業者に自殺物件の買取を依頼すると、次のようなメリットに期待できます。

  • 買い手がつきづらい自殺物件も買取に期待できる
  • 数日〜1週間程度で現金化できる
  • 契約不適合責任が免除される
  • そのままの状態でも買い取ってもらえる

それぞれの内容をみていきましょう。

買い手がつきづらい自殺物件も買取に期待できる

前述のように、自殺物件は自然災害死や孤独死による事故物件と比べても、買い手は付きにくいです。そのため、一般的な不動産会社や買取業者でも買取を躊躇するケースは少なくありません。

たとえ買取に応じたとしても、相場よりもはるかに安い価格で買い叩かれるリスクもあります。その点、事故物件専門の買取業者であれば、特に売却が難しいとされる自殺物件であってもスムーズな買い取りが可能です。

実際に弊社でも、自殺があった物件の買取事例は数多くあります。また、専門の買取業者なら事故物件の査定・活用ノウハウが豊富であるため、一般的な不動産会社・買取業者よりも高値で売却できる可能性があります。

数日〜1週間程度で現金化できる

前述の通り、買取の場合は業者が直接物件を買い取ります。仲介のように買主をイチから探す手間がないため、数日〜1週間程度で現金化できるのも大きなメリットです。

実際に弊社では、自殺物件をはじめとした訳あり物件であっても、最短48時間で現金化が可能です。そのため、自殺物件の売却益を新しい自宅への転居・入居費用に充てたいなど、すぐに現金化したい人にもおすすめな方法といえます。

契約不適合責任が免除される

前述の通り、契約不適合責任が免除されるのも、事故物件専門の買取業者に買取を依頼するメリットです。不動産の仲介買取を依頼する場合、原則として売主には契約不適合責任が生じます。

例えば、不動産の引き渡し後に自殺の事実が明らかになった場合、買主は売主に対して損害賠償などを求められます。たとえ告知していても、場所や時期、状況などの詳細を十分に伝えなかったことが原因で買主が不信感を抱き、トラブルに発展するケースも少なくありません。

一方、不動産の買取の場合は、売買契約書に契約不適合責任を免責する条項を盛り込むことが一般的なため、売主は引き渡した不動産に瑕疵があっても責任を負う必要はありません。

実際に弊社でも、自殺物件をはじめとした訳あり物件を買い取る際は、契約不適合責任を免責したうえで買取しています。そのため、事故物件専門の買取業者に依頼すれば、「売却後に訴えられるかもしれない」という精神的負担から完全に解放される大きなメリットがあります。

そのままの状態でも買い取ってもらえる

仲介の場合、自殺物件はそのまま売りに出すことはできず、売却前に特殊清掃やリフォームなどが必要です。これは、遺体の臭いや体液が床・壁などに多少なりとも染みこむためです。

たとえ部屋に物理的な影響がない場合でも、心理的な抵抗感を無くすために特殊清掃を入れるケースがほとんどです。一方で事故物件専門の買取業者の場合、基本的には何も施工しなくても、そのままの状態で買取りしています。

遺品整理もまとめて請け負っているケースもあるため、売主自身で清掃をしたり、清掃業者を手配したりする手間は不要です。

特に、自殺があった部屋はすぐに手放したいと考える人も多いでしょう。その点、不動産をそのまま買い取ってくれる専門業者であれば、このような心理的な負担を軽減できます。また、特殊清掃やリフォームにかかる費用を節約しつつ現金化できる点も大きなメリットです。

自殺物件の売却相場は市場価格から10%〜30%ほど下がる

弊社に寄せられる事故物件に関わる相談で多いのは、「事故物件はいくらほどで売れるのか」というものです。

前提として、自殺があった物件だからといって、絶対に値下げしなければならないわけではありません。詳しくは後述しますが、自殺があった物件でも条件次第では高値売却に期待できるケースもあります。

とはいえ、自殺のような人の死があった物件は、売却価格が安くなると考えておくのが無難です。これには、人の死があった物件は心理的な抵抗を与えやすいために、市場価格よりも安価で売らざるを得ない状況になりやすいことが関わります。

仲介でも買取でも、売却価格はその不動産の市場価格をもとに算出されるのが基本です。あくまで簡単なイメージですが、「このエリアにあって、広さはこれくらいで、築年数はこれくらいなら、大体これくらいの価格なら買主がつくだろう」のように市場価格が決まります。

そして、自殺物件の場合、「自殺が起きた」という事実から買主がつきづらく、その分需要も低くなってしまうのが基本です。近年はインターネット上から事故物件を探すことも可能なうえに、「事故物件なら通常物件よりも安値になりやすい」という考え方も拡まっていることから、市場価格で売りに出したとしても買主がつくケースの方が稀といえます。

つまり、自殺物件は市場価格よりも安価にしなければ、買主がつきづらくなってしまうのが実情なのです。事故物件についての弊社の買取実績をもとにしても、自殺物件の売却相場は、市場価格から10%~30%ほど下がります。

自殺物件の売却価格は、自殺の状況や物件の条件によって変動する

事故物件の売却相場は、その原因によって下がり幅が異なります。

死因 減額の幅
孤独死や病死 10%~20%程度
自殺 10%~30%程度
他殺 30~50%程度

基本的に、心理的瑕疵が大きい事故物件ほど、売却相場は大きく下落する傾向です。同様の理由で、自殺物件の中でもどのような事件が起きたかによって下落幅に変動がみられます。

下落幅 自殺方法
大きい


小さい
首つり自殺
リストカット
飛び降り

一般的に、首つり自殺は後の居住者の心理的抵抗感が大きいことから、売却相場も大きく下がる傾向です。一方、リストカットは首つり自殺よりも心理的抵抗を持たれにくく、物件の汚損リスクも低い傾向にあるため、市場価格からの下落幅も小さくなります。

また、飛び降り自殺は、部屋内部にはほとんど影響がないことから、市場価格から10%程度の下落に留まるのが基本です。とはいえ、いずれも実際の売却相場は個別のケースによって異なるため、一概にはいえません。

好条件な物件なら自殺があっても大幅に減額されないケースもある

好条件の不動産であれば、自殺物件であっても小程度の減額に留まるケースもあります。例えば次のようなケースが代表的です。

  • 都心・駅から徒歩数分
  • 行政機関・商業施設・学校・病院の近く
  • 日当たりが良い
  • 道路に面している
  • 築年数が浅い
  • デザイナーズマンション
  • システムキッチンなど最新設備がある
  • 災害による損壊のリスクが低い

また、物件の条件以外にも、次のような場合にはさほど売却相場が下がらないこともあります。

  • 社会的影響が小さい
  • 物件の損傷が少ない

例えば、自殺の事実が全国的に報道されたような物件は、買主に与える精神的影響が大きいことから、売却相場が大幅に下がるのが基本です。一方、ひっそりと処理されて近隣にも自殺の事実があまり広まっていない場合などは、下落率がゆるやかになる可能性があります。

また、リストカットのように汚損・損傷の範囲が小さい自殺物件は、買主の心理的瑕疵が比較的小さいことから、小幅な下落に留まるケースもみられます。ただし、前項と同様に実際の売却相場は物件の状態や買取業者によって異なるため、上記が一概に当てはまるわけではありません。

実際に自殺があった物件を買い取った事例

東京都足立区にある分譲マンションで、共用部分において飛び降り自殺が発生した事故物件を、当社が1,300万円で買い取った事例です。

買い取った物件種類 マンション
物件があるエリア 東京都足立区
事故・事件の内容 マンションの共用部分で飛び降り自殺があった物件
買取金額 1,300万円

この物件は、マンションの共用部分で飛び降り自殺が起きた事故物件です。依頼者は早めの取引がご希望とのことでしたので、スピード感を持って物件調査を行い、1,300万円で買い取らせていただきました。

本事例はマンションの共有部分での人死で告知義務がないことを考慮し、高額査定にて買取いたしました。クランピーリアルエステートなら、事故物件であっても事案や状態をしっかりと調査したうえで査定額を提示いたします。

自殺物件の買主をつきやすくするための対策

買い手が見つかりにくいとされる自殺物件ですが、次のような対策をすることで購入希望者が現われる確率を高めることができます。

  • リフォームや清掃を行って物件の状態を改善する
  • 心理的な抵抗感を薄めるためにも特殊清掃を行っておく
  • ニュースになるような自殺があった物件ならある程度期間を空けて売却する

それぞれの内容をみていきましょう。

リフォームや清掃を行って物件の状態を改善する

自殺物件はシミ・臭いといった汚損が発生しやすく、そのままの状態では当然ながら買い手は見つかりません。また、遺品が残ったままの状態でも売却できないため、売却前に、特殊清掃やリフォームをして、できる限りきれいな状態にしましょう。

先にも触れたように、自殺物件は市場価格よりも安い相場で売りに出されます。不動産購入希望者の中には、「安ければいい」という層も一定数存在するため、不動産をきれいにしておけば、買い手が見つかる可能性が高まります。

なお、特殊清掃には30~50万円程かかり、売主の金銭的負担は避けられません。また、買主が現れなければ、これらの費用が赤字になる点も留意しておくべきでしょう。

事故物件専門の買取業者の中には、清掃・遺品整理なしで自殺物件を買い取ってくれるケースもあるため、コスト負担を抑えたい場合はそちらを検討してみましょう。

心理的な抵抗感を薄めるためにも特殊清掃を行っておく

自殺後すぐに発見された場合などは、シミや臭いといった影響がほとんどないこともあります。とはいえ、自殺という事実は買主の心理的な抵抗を呼び起こすため、これを薄めるためにも特殊清掃を行うことが望ましいです。

特殊清掃では、床・壁紙・天井など広範囲を清掃し、特に脱臭や臭い戻り対策は徹底的に行われます。たとえ物件に影響がなかった場合でも、丁寧に清掃したという事実があれば、購入希望者に安心感を与えられるので、早期の売却につながる可能性もあります。

ニュースになるような自殺があった物件ならある程度期間を空けて売却する

ニュースになるなど、自殺が多くの人の知るところになった物件は、ある程度期間を空けての売却が望ましいです。これは、社会的影響が高い自殺物件ほど、買い手が見つかりにくい傾向があり、売却活動にかかる費用が無駄になる恐れが高いためです。

基本的に、心理的抵抗感は時間の経過とともに薄らぐため、時間を空けることで買い手が見つかる可能性があります。なお、事故物件の売却に関しては告知義務の時効がないため、何年経過していても、買主に対して自殺の事実を伝えなければなりません。

自殺物件を売却する際に注意したいポイント

自殺物件をスムーズかつできる限り高額で売却したいときは、以下のポイントを意識しましょう。

  • リフォーム・解体は慎重に判断する
  • 一社で決めず、複数の買取業者で比較する
  • 不動産会社によっては事故物件・訳あり物件に対応していない場合がある

以下では、自殺物件を売却する際に注意したいポイントをまとめました。

リフォーム・解体は慎重に判断する

所有する不動産が自殺物件になってしまったときや、自殺物件を売却したくても買主が付かないときは、自殺物件のリフォームや解体をしてから売却するのも選択肢の一つです。

特殊清掃とは別に、大規模なリフォームやハウスクリーニングなどで物件をきれいにしておくと、同じ自殺物件でも買主からの印象はよくなります。自殺の内容によっては、お祓いをすることで印象をより回復可能です。

また、自殺物件を完全に解体して更地にしてしまえば、事故物件としてのマイナスイメージを大きく払拭できます。しかし、下記のようなリスクもあるため、安易にリフォーム・解体するのはおすすめできません。

  • リフォームや解体にかけた費用を売却時に回収できるとは限らない
  • 更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍になり、売却できるまでのランニングコストが高額になる
  • リフォームや更地で対応しても告知義務自体はなくならない

そのため、リフォームや解体にかけた費用以上に利益を回収できるのか、損をしてしまう恐れはないかなど、慎重に考えたうえで検討することをおすすめします。

一社で決めず、複数の買取業者で比較する

自殺物件を買取業者へ売却するときは、1社だけを確認するのではなく、複数の買取業者への査定や相談を依頼してそれぞれを比較しましょう。複数の買取業者を比較するメリットは次の通りです。

  • 一番よい条件の買取業者を選び高値で売れる可能性が高まる
  • サービス内容や実績、行政処分の有無を比較して信頼できる業者を見つけやすくなる
  • 極端に低く提示したりサービス内容が不透明だったりする怪しい買取業者を避けやすくなる

一社のみに相談して決めてしまうと、相場がわからないまま売却することになります。高値で売却できるチャンスを逃すことになる可能性もあるため、より良い条件や信頼できる業者を選択するためにも、必ず複数の買取業者で比較しましょう。

不動産会社によっては事故物件・訳あり物件に対応していない場合がある

自殺物件は基本的には需要が低い不動産であるため、不動産会社によっては自殺物件を含めた事故物件・訳あり物件に対応していない場合があります。

一方で事故物件・訳あり物件に強い不動産会社に依頼できれば、自殺物件でもスムーズかつ高額で売却しやすい傾向です。自殺物件を売却する際は、不動産会社が自殺物件の取り扱いや売却実績を持っているかをしっかりとチェックしましょう。

弊社「クランピーリアルエステート」は、自殺物件やそのほか人死が発生した物件でも、積極的に買取対応しています。オンラインによる全国対応や現状有姿での売却可能など、トラブルなく売却できるサポートにて買取が可能です。ぜひ無料査定や無料相談から気軽にお問い合わせください。

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まとめ

自殺物件の売却は可能ではあるものの、自殺があった旨の告知義務は消えることなく無期限で存在します。違反すると契約解除、損害賠償、減額請求などを買主側から求められる可能性が高いため、自殺物件の売却時には告知義務を遵守しましょう。

自殺物件の売却の売却相場は、自殺の状況や物件の条件によって30~50%程度減額されるのが一般的です。高額かつスムーズに売却したいときは、自殺物件の取引実績のある不動産会社の仲介または買取サービスを利用することをおすすめします。

不動産会社を利用した売却を検討する際も、「リフォーム・解体をすべきか慎重に考える」「複数の業者を比較検討して決める」「事故物件・訳あり物件に対応しているかを見る」の3つの注意点を意識することが大切です。

自殺物件の売却に関するよくある質問

マンションの他の部屋で自殺があった場合も告知義務がある?

自殺に関する告知義務は原則として自殺が発生した部屋にのみ生じるため、マンションのほかの部屋で自殺があった場合だと告知する必要はありません。ただし自殺の事案によっては、部屋で自殺がなくても告知義務が発生する可能性があります。たとえば「買主が日常生活で使用するところでの自殺」「上下左右の部屋での飛び降り自殺」「事件性、周知性、社会的影響が大きい自殺」「落下地点が買主のベランダや庭」などは、告知義務が発生するケースです。

マンションの屋上や共用部のベランダから飛び降り自殺があった場合も告知義務がある?

買主が日常生活において通常使用する必要のある場所や、住心地のよさに影響を与えると判断される場合は、マンションの屋上や共有部のベランダからの飛び降り自殺でも告知義務が発生すると考えられています。マンションならほかにも買主が日常生活で使うエレベーター、階段、廊下、そのほか共用部分などが該当すると思われます。

自殺物件の告知義務は、口頭で伝えるだけで済ませられる?

自殺物件の告知義務は、書面に遺さず口頭で伝えるだけでも一応は履行したとみなされます。とはいえ、後から言った・言わないのトラブルに発展するケースが想定されるので、口頭で伝えたうえで書面にも告知すべき事項を残し、その書面についてサインや捺印をしてもらうと、告知義務を確実に履行した証拠になります。

自殺物件の告知義務は、更地にしたら消える?

自殺物件の告知義務は売買契約においては無期限であるため、当該自殺物件を更地にしたり新しく建て替えたりしても、告知義務は消えません。

自殺物件で特殊清掃やリフォームはしなくても良い?

自殺物件を特殊清掃やリフォームなしで売却することに、法的な問題はありません。しかし、そのままの状態の不動産に住むことは心理的抵抗感が強いことから、買い手が見つからない可能性があります。できる限り好条件で売るためには、最低限でも特殊清掃をすることが望ましいです。

売却から賃貸に切り替えた場合の告知義務は?

自殺物件を賃貸契約する場合は、死亡事件が発生してから3年以内は告知義務があります。3年以上を経過した場合は、原則として告知は必要ありません。ただし、借主から自殺の有無などを尋ねられた場合は、正しい情報を開示する必要があります。

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