共有持分は親族間売買できる?売買価格の決め方や手順など徹底解説

相続によって取得した共有持分について、「できれば親族間で解決したい」「不動産業者に売るのではなく、家族の中で完結させたい」と考える方は少なくありません。

しかし実際には「共有持分は親族間売買しても問題ないのか」「税金や登記の扱いはどうなるのか」といった不安から、手続きをためらっているケースも多く見受けられます。

結論から述べると、共有持分を親族間で売買することは原則として法律上問題はありません。むしろ、第三者である業者へ売却するよりも心理的な抵抗が少なく、不動産という資産を家族間で維持しながら単独所有にできるため、実務上は合理的な手段ともいえます。

不動産の専門家の視点では、共有持分を親族間で売買するメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
・単独名義にすることで不動産を売却・活用しやすくなる
・売却価格などの取引条件を柔軟に決められる
・共有状態から抜け出すことで維持管理費の支払いや管理義務がなくなる
・売却時に仲介手数料がかからない
・相続トラブルが起こるリスクを軽減できる
・安い価格で売買するとみなし贈与と判断されることがある
・共有持分の売買では税制優遇措置が受けられないケースが多い
・共有持分の場合は住宅ローンの審査が通りにくい

親族間売買によって共有状態を解消し、単独名義にすることで、不動産の活用や将来の売却が円滑になる点は大きなメリットです。共有持分の買取を専門とする弊社としても、共有状態はリスクが高いことから、早い段階での名義整理を推奨しております。

ただし、親族間だからといって相場よりも安い価格で売買すると、みなし贈与と判断され、贈与税が課されるリスクがあります。そのため、共有持分を親族間売買する際には税理士に相談のうえ、適正価格で取引することが非常に重要になります。

本記事では、共有持分を親族間で売買する際のメリット・デメリット、適正価格の考え方、親族間売買のトラブル事例まで、不動産買取の専門家としての知見に基づき詳しく解説します。

親族間で円滑に共有状態を解消したいとお考えの方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。

目次

共有持分は親族間売買できるのか?

共有持分の親族間売買とは、共有名義となっている不動産について、親や子、兄弟姉妹などの親族間で売買することをいいます。たとえば、相続によって兄弟で共有になった不動産を、1人が他の兄弟の持分を買い取って単独名義にするケースなどが代表例です。

結論から述べると、共有持分を親族間で売買することは法律上まったく問題ありません。共有持分は共有者それぞれが持つ個別の所有権であり、自分の持分については自由に譲渡・処分することができるとされています。

(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
引用元:民法|e-Gov 法令検索

親族間売買を制限する規定はありませんので、共有持分を家族に売買しても、売買契約は有効になります。

実務上、親族間売買が選ばれやすいのは「共有状態を解消して単独所有にしたい場合」「将来的な相続トラブルを未然に防ぎたい場合」「第三者に持分を売却せず、不動産を家族間で残したい場合」などです。相続の際には共有名義で取得したものの、あとから共有状態が不便になり、単独名義に変更するために持分を売却するといった事例は、弊社でも非常に多くみられます。

詳細は後述しますが、親族間売買でとくに注意すべきなのは税金面です。

親族間売買では、不動産の市場価格という客観的な指標があまり重視されず、家族だからといって低額での譲渡が行われがちです。そうなると税務署に「みなし贈与」と判断され、あとから高額な贈与税が請求されるというリスクが高まります。

そのため、共有持分を親族間で売買する際には適正価格を設定し、みなし贈与と判断されないための工夫が必要です。詳細については「共有持分の親族間売買における適正価格の考え方」の項目で詳しく解説しているので、あわせて確認してみてください。

ポイント

ここまで親族間売買に着目して解説してきましたが、法律上、自分の持分は他の共有者の同意を得ることなく、親族ではない知人や不動産業者などの第三者へ自由に売却することが可能です。「親族間でなければならない」という制限はなく、誰に売却するのかは所有者の自由である点も押さえておきましょう。

共有持分の親族間売買のメリット

共有持分の親族間売買は、単に家族間で不動産をやり取りするだけでなく、共有状態という不安定な権利関係を整理し、将来の紛争リスクを回避するという側面もあります。

不動産実務の観点から見ると、共有持分を親族間売買するメリットは以下のとおりです。

  • 単独名義にすることで不動産を売却・活用しやすくなる
  • 売却価格などの取引条件を柔軟に決められる
  • 共有状態から抜け出すことで維持管理費の支払いや管理義務がなくなる
  • 売却時に仲介手数料がかからない
  • 相続トラブルが起こるリスクを軽減できる

単独名義にすることで不動産を売却・活用しやすくなる

不動産買取の現場でもっとも多く目にするのは、「共有名義にしているために身動きが取れなくなった」という事例です。

共有状態の場合、不動産全体を売却する場合はもちろん、建物の解体や大規模修繕、第三者への賃貸、抵当権の設定といった重要な行為には、原則として共有者全員の同意が必要になります。共有者のうち1人でも反対すれば、不動産の活用計画が前に進みません。

実際のご相談でも、「売却したいが兄弟の1人が応じない」「空き家を活用したいが共有者と連絡が取れない」といったケースは多いものです。

このような状態を根本的に解消する方法の1つが、親族間売買によって持分を1人に集約し、単独名義にすることです。単独名義にすれば、売却や賃貸、建て替え、担保設定などの判断を所有者自身の意思で行えるようになります。

資産としての流動性が高まり、金融機関との交渉も進めやすくなるため、不動産の価値を最大限に活用できる環境が整います。親族間売買は、将来的に不動産を活用するための現実的な選択肢といえるでしょう。

売却価格などの取引条件を柔軟に決められる

親族間売買の大きな特徴は、取引条件を家族間で柔軟に決められる点にあります。

第三者への売却であれば、市場動向や買主の資金計画に合わせて条件を調整する必要がありますが、親族間であれば事情を考慮したうえで条件を設定することが可能です。売買価格については実勢価格を基準としつつも、支払い時期の調整や割払いの対応、相続を見越した段階的な持分集約などは柔軟に決められます。

たとえば、兄弟間で売買するのであれば「兄弟の1人が将来的に居住を希望しているため、資金計画にあわせて1年以内に単独名義に変更する」といった対応ができます。

このように、親族間売買では柔軟に取引条件を設定できるため、計画的に持分を移して単独名義にすることが可能です。家族間の事情を前提にスケジュールを組んでいける点は、親族間売買ならではのメリットといえるでしょう。

共有状態から抜け出すことで維持管理費の支払いや管理義務がなくなる

共有持分を売却し、共有関係が解消されれば、売主はその不動産に関する維持管理費の支払いや管理義務の負担から解放されるというメリットがあります。

共有者である限り、固定資産税や都市計画税、建物の修繕費、清掃費、管理費などを負担する義務があります。実際に不動産を使っていなくても、持分を有している以上、共有者全員で協力して維持管理費を負担しなくてはなりません。また、雑草や倒壊などで近隣に迷惑をかけないよう、適切に管理していく必要があります。

実務上、維持管理費の負担や管理義務は、よくある紛争原因のひとつです。「使っていないから維持管理費を負担したくない」「遠方に住んでおり管理が困難」などの主張がぶつかり、感情的な対立に発展するケースも少なくありません。

親族間売買によって持分を手放せば、売主の家族は維持管理費や管理義務から完全に解放され、実際の所有者のみが不動産を管理していくことになります。家族間で生じがちなトラブルの火種がなくなる点は、親族間売買のメリットといえます。

売却時に仲介手数料がかからない

親族間売買では、不動産会社に仲介を依頼せず、当事者間で売買契約を締結するケースが多いです。そのため、通常の売却で発生する仲介手数料を抑えられる点は、親族間売買の大きなメリットといえます。

仲介手数料とは、不動産の売買などが成立した際、仲介契約を進めた不動産会社に支払う報酬のことです。

不動産会社を介して持分を売却する場合、仲介手数料は「売買価格×3%+6万円(税別)」を上限として発生します。たとえば、1,000万円の共有持分を売却した場合は、約40万円の仲介手数料が発生する計算になります。

親族間売買であれば、仲介手数料は原則として発生しません。売買代金をそのまま家族間でやり取りできるため、取引コストを抑えながら単独名義にすることができます。

とくに、持分の集約を目的とした売買の場合、仲介手数料などのコストはできるだけ抑えたいと希望する方が多いものです。実際、仲介手数料の負担を回避するために親族間売買や、買取業者への持分売却を選択する方も存在します。

相続トラブルが起こるリスクを軽減できる

不動産実務の現場において、共有不動産に関する紛争は、相続をきっかけに顕在化するケースが非常に多いです。そのため、親族間売買を通じて名義を整理しておくことは、将来的な紛争を防止する手段としても効果的です。

共有名義のまま相続が発生した結果、活用方針や維持管理費の負担などをめぐってトラブルが発生したという事例を、弊社はこれまで数多くみてきました。さらに、共有者の1人と連絡が取れなくなり、意思決定が事実上できなくなるといった事態も現実に起こっています。

また、共有者の一人が亡くなると、その持分はさらに複数の相続人へと引き継がれます。これを繰り返すことで、当初は兄弟数人だった共有者が、数年後には面識のない従兄弟やその配偶者などにまで細分化されることもあり得ます。

親族間売買によってあらかじめ持分を1人に集約し、単独名義にしておけば、このようなトラブルが起こるリスクを軽減できるうえ、計画的に相続を進めていくことが可能です。

たとえば、親子間での持分売買であれば「相続開始前に名義を整理しておくことで、遺産分割の対象から外す」といった活用も現実に行われています。不動産の相続は揉めやすい部分であり、実務の現場でもトラブルが生じることが非常に多いため、生前に名義を整理しておくのは得策といえます。

共有持分の親族間売買のデメリット

共有持分の親族間売買は、共有状態を整理する有効な手段である一方、実務上はいくつかの注意点があるのも事実です。ここでは、共有持分を親族間売買でやり取りする際のデメリットについて、プロの視点で詳しく解説します。

  • 安い価格で売買するとみなし贈与と判断されることがある
  • 共有持分の売買では税制優遇措置が受けられないケースが多い
  • 共有持分の場合は住宅ローンの審査が通りにくい

安い価格で売買するとみなし贈与と判断されることがある

親族間売買において、実務上もっとも警戒すべきなのが「みなし贈与」のリスクです。

みなし贈与とは、形式上は「売買」であっても、市場価格より著しく低い価格で取引が行われた場合に、その差額分を実質的な「贈与」とみなして課税する仕組みのことです。

とくに親族間売買では「身内だから安く譲りたい」「困っているから高く買い取ってあげたい」という心理が働きがちですが、税務署にそのような事情は通用しません。あくまでも「実際の取引価格が市場価格と乖離していないか」をもとに判断されるのが実情です。

たとえば、本来の価値が1,000万円相当である持分を、親族だからという理由で600万円で兄から弟に譲渡したとします。この場合、差額の400万円分は「贈与をしたもの」とみなされ、買主に対して贈与税が課される可能性があります。

反対に売買価格を高く設定しすぎた場合も同様で、市場価格を超えて支払った金額分は、売主側への贈与とみなされるリスクがあります。そのため、家族間で事情があったとしても、市場価格から乖離した金額で売買することは、専門家として推奨できません。

税務署は不動産の所有権移転情報を把握しており、親族間の移転については売買価格の妥当性を入念にチェックされることも考えられます。みなし贈与と判断されると、高額な贈与税が発生し、資金計画が崩れてしまうことになりかねません。

このような事態を避けるためには、取引前に不動産鑑定士や専門業者による査定を実施し、売買価格の根拠を明確にしておく必要があります。

共有持分の売買では税制優遇措置が受けられないケースが多い

親族間売買を検討する際、意外と見落とされがちなのが「本来利用できるはずの税制優遇措置が制限される」という点です。とくに「生計を一にする親族」との取引については、多くの税制優遇措置で適用除外とされているため、想定していた税負担軽減が受けられない可能性があります。

生計を一にする親族とは、単に同居している夫婦や親子だけでなく、別居していても常に生活費や学資金の仕送りが行われているような関係も含みます。住所が別であっても、実質的に生活を共にしていると判断されれば、特例の対象外となることがあります。

不動産売買の現場において、とくに利用が検討されることが多いのは、以下の特例です。

特例 概要
居住用財産の譲渡所得の特別控除 マイホームを売却した際の利益から最大3,000万円を差し引ける制度
長期譲渡所得の軽減税率の特例 所有期間が10年を超える居住用不動産を売却した際に税率が下がる制度
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) 住宅ローンを利用している間、一定額の所得税を控除できる制度

上記の特例は、生計を一にする親族間の売買では原則適用外とされています。そのため、第三者への売却であれば支払わずに済んだはずの譲渡所得税が発生したり、所得税控除が受けられなかったりと、実質的なコストが膨らんでしまいます。

親族間売買を進める際には、売主・買主それぞれの税負担がどの程度になるのか、特例の適用可否も含めて精査しておく必要があります。

共有持分の場合は住宅ローンの審査が通りにくい

共有持分の親族間売買では、住宅ローンの審査が通常より厳しくなる傾向があります。

金融機関は、親族間取引において価格操作や実質的な贈与、資金の循環といったリスクがないかを慎重に確認するためです。形式上は売買であっても、実態が税負担の軽減や資金移動のための名義変更に過ぎないと判断されれば、融資を受けるのは困難になります。

また、共有持分のみを取得する場合、不動産全体に対する担保価値の評価が複雑になります。金融機関としては「万が一返済が滞った際に、持分を回収してローン返済に充てられるか」を検討する必要がありますが、共有持分は流動性が低いことから、高い評価にはならないのが基本です。

その結果、通常の単独名義不動産に比べて融資条件が厳しくなったり、そもそも住宅ローンの対象外とされたりすることもあります。

親族間売買でも住宅ローンが組めないわけではありませんが、共有持分の親族間売買となると、金融機関の審査に通る可能性は極めて低くなると考えておきましょう。

共有持分の親族間売買が向いているケース・向いていないケース

共有持分の親族間売買は、共有状態を整理する有効な手段ではありますが、すべてのケースに適しているわけではありません。家族関係や不動産の利用状況、資金計画、将来の相続方針によっては、負担やリスクが大きくなることもあります。

これまで解説してきた内容をもとに、共有持分の親族間売買が向いているケース・向いていないケースを以下にまとめました。

向いているケース 向いていないケース
・親族間の関係が良好で、価格や条件の合意形成が可能な場合
・将来的に単独で売却・活用したい明確な方針がある場合
・特定の1人がその不動産を利用・管理している場合
・買主となる親族に十分な資金があり、住宅ローンが不要な場合
・相続前に持分を集約し、将来の権利関係を整理しておきたい場合
・親族間で対立があり、協議がまとまらない場合
・適正価格について合意できない場合
・住宅ローン利用が前提で、資金調達の見通しが立っていない場合
・持分の売主が早期の現金化を希望している場合

共有持分の親族間売買が向いているケース

親族間売買は、当事者間の信頼関係をベースにした取引となります。そのため、不動産実務の観点においては、以下のように感情面や資金面、将来の承継方針が整っているかどうかが重要な判断基準です。

  • 親族間の関係が良好で、価格や条件の合意形成が可能な場合
  • 将来的に単独で売却・活用したい明確な方針がある場合
  • 特定の1人がその不動産を利用・管理している場合
  • 買主となる親族に十分な資金があり、住宅ローンが不要な場合
  • 相続前に持分を集約し、将来の権利関係を整理しておきたい場合

まず大前提として、親族間の関係が良好であり、取引条件について協議できる状態にあることが求められます。

弊社の事例においては、共有名義がきっかけでトラブルに発展し、親族間の話し合いが困難になったというケースも実際にありました。まずは親族間で売買の方針を明確にし、トラブルが生じないよう、認識をすり合わせておくことが大切です。

また、すでにその物件に居住している親族がいる場合や、将来的にその親族が相続する予定がある場合は、親族間売買で早めに単独名義に整理しておくのが望ましいといえます。

さらに、買主となる親族に自己資金があり、融資が必要ないのであれば、住宅ローン審査のハードルを気にする必要もありません。加えて、相続発生前に名義を整理しておくことは、将来の相続トラブルや権利関係の複雑化を防ぐという意味でも有効な手段となります。

共有持分の親族間売買が向いていないケース

親族間売買は、当事者間が同じ方向を向いていることが前提条件となるため、必ずしもすべてのケースで適しているわけではありません。実務上、以下のようなケースに当てはまる場合、共有持分の親族間売買が向いていない可能性があります。

  • 親族間で対立があり、協議がまとまらない場合
  • 適正価格について合意できない場合
  • 住宅ローン利用が前提で、資金調達の見通しが立っていない場合
  • 持分の売主が早期の現金化を希望している場合

共有者同士の関係が悪化している場合、価格など売買条件をめぐる交渉が長期化し、感情的対立に発展することがあります。適正価格の認識に大きな違いがある場合には、みなし贈与のリスクや不公平感が生じやすく、合意形成が困難になります。

また、買主が住宅ローンを利用する前提でありながら、金融機関の承認が得られるか不透明な状態では、取引を進めることができません。さらに、売主側が速やかな現金化を強く求めている場合には、親族間での協議を待つよりも、買取業者など第三者への売却のほうが合理的となる可能性もあります。

このように、状況によっては親族間売買が向いていないケースもあるため、親族との関係性や目的、資金状況などを整理したうえで検討しましょう。

共有持分の親族間売買における適正価格の考え方

共有持分の親族間売買において、もっとも慎重に検討すべきポイントが価格設定です。

前述したとおり、適正価格とかけ離れた金額で取引を行った場合、税務上「みなし贈与」と判断される可能性があります。当事者全員が売買価格に合意していても、税務上の問題が回避できるわけではありません。

また、「不動産全体の市場価格を持分割合で単純に割ればよい」という考え方も、必ずしも実務に即したものとはいえません。共有持分は単独所有の不動産とは異なり、自由に処分できるわけではなく、流動性が低いという特徴があります。

そのため、市場においては共有持分の価格は全体価格を単純に按分した金額よりも、低く評価されるのが基本です。

持分専門の買取業者である弊社としても、共有持分は権利行使に制約があり、買主側にとっても活用ハードルが高いため、価格が低くなるのが自然と考えています。

あくまでも弊社の実務経験上であり、税務上の適正価格とは必ずしも一致するわけではありませんが、「持分割合で按分した金額から10〜30%程度減額した金額」が目安となることが多いです。

もっとも、みなし贈与に該当するかどうかは個々の事情によって判断されるため、「この金額であれば絶対に問題ない」と断言することはできません。適正価格の判断に迷う場合は、不動産査定を参考にしつつ、税理士などの専門家に相談することが大切です。

以下では、具体的な数値を用いたシミュレーションを通じて、適正価格の考え方を解説していきます。

共有持分の親族間売買をする場合の適正価格シミュレーション:評価額2,000万円の建物の場合

ここでは、評価額2,000万円の建物を兄と妹が2分の1ずつ共有しているケースを想定します。現在は兄がその建物に居住しており、将来的にも兄が単独で所有・管理していく方針が固まっているため、妹の持分を兄が買い取るという状況です。

不動産全体の評価額が2,000万円であれば、単純に持分割合で計算すると、妹の持分相当額は1,000万円となります。しかし、前述したとおり、共有持分は単独所有の不動産と異なり、自由に処分できるわけではなく、流動性が低いという特徴があります。

市場での取引においても、持分のみの価格は全体価格の単純按分より低く評価されるのが基本であり、実務の現場では、持分割合で按分した金額から10〜30%程度減額した水準で買取をすることが多いです。

そのため、今回の事例であれば、1,000万円の持分に対して、おおよそ700万円〜900万円程度がひとつの目安になります。兄が妹の持分を700万円〜900万円の価格で買い取れば、みなし贈与と判断されるリスクを低減できる可能性があります。

なお、上記はあくまでもシミュレーションであり、実際の適正価格は立地や築年数、親族間の関係性などによっても異なります。最終的には税理士などの専門家に相談し、税務上の見解を確認したうえで価格を決定するのが確実です。

共有持分の親族間売買をする場合の適正価格シミュレーション:評価額5,000万円の土地の場合

次に、評価額5,000万円の土地を父と長男・次男の3名で共有しているケースを想定します。

持分割合は、父が2分の1、長男と次男がそれぞれ4分の1ずつとします。将来的に長男がその土地に自宅を建てる予定があり、父と次男の持分を順次買い取って単独名義にしたいという状況です。

まず、単純に持分割合で按分すると、4分の1の持分は1,250万円、2分の1の持分は2,500万円となります。そのため、長男以外が所有する持分の合計金額は3,750万円という計算になります。

実務上の目安として、持分割合で算出した3,750万円を基準に10〜30%程度の減額を考慮すると、約2,625万円〜3,375万円程度が適正価格となります。

共有持分の売買であれば減額が適正価格に織り込まれる可能性は高いものの、土地の評価額が高いほど多額の資金が必要になる点には注意が必要です。

もっとも、土地の立地や利用状況、当事者の関係性などによって適正価格は変動します。みなし贈与に該当するかどうかも個々の事情で判断されるため、最終的な価格設定にあたっては税理士などの専門家に相談してみてください。

共有持分の親族間売買ではトラブルが起こりやすいため注意!実際のトラブル事例を紹介

共有持分の親族間売買は、共有状態を円滑に解消できる一方、進め方を誤ると新たな紛争の火種になることがあります。

不動産買取の現場でも、他の共有者への説明不足や価格設定の見誤り、手続きの不備が原因で、親族間の信頼関係が大きく損なわれた事例を数多く経験してきました。

以下では、弊社で実際にあったトラブル事例をもとに、親族間売買の注意点について詳しく解説します。

  • 他の共有者に伝えずに親族間売買をしたケース
  • 実質的に贈与と言えるような価格で親族間売買をしたケース
  • 妥当な売買価格を調べずに親族間売買をしたケース

他の共有者に伝えずに親族間売買をしたケース

共有持分は、法律上は他の共有者の同意がなくても単独で譲渡することが可能です。

しかし、実際の親族間売買においては「法的に可能であること」と「円満に名義を整理できること」は必ずしも一致しないのが実情です。実際、他の共有者に伝えず親族間売買をしたことで、兄弟姉妹の関係性が悪化した事例がありました。

弊社にご相談いただいた事例の中に、兄・弟・妹の3人で共有していた実家の土地について、兄が自身の持分を妹に売却したケースがありました。
この取引自体は、兄と妹の間では十分に話し合いが行われ、「円満に合意できた」とのことでした。しかし、もう一人の共有者である弟には、売買の事実を事前に伝えていなかったといいます。
持分の売却は法的には単独で行うことが可能ですが、弟は後から登記簿を確認して売買を知り、「なぜ自分には相談がなかったのか」「今後どうするつもりなのか」と強い不信感を抱くようになりました。
妹は「法律上は問題ないと聞いていた」「兄の持分を引き取るだけだから大丈夫だと思っていた」「弟とは関係が悪くなるとは想像していなかった」と考えていたようです。
実際には、共有関係はその後も続くため、第三者である弟との関係性も重要になります。妹は「このままでは将来の売却や建替えの話し合いができないのではないか」と不安になり、共有持分の整理方法について弊社に相談に来られました。

共有持分の売却は単独で実行できても、他の共有者が存在する場合、今後も共有関係が続いていくことになります。そのため、売買の取引とは直接関係がなかったとしても、不信感を生まないよう、他の共有者には事前に情報を共有しておくのが得策といえます。

実質的に贈与と言えるような価格で親族間売買をしたケース

親族間売買では、当事者同士が金額に納得しており、かつ売買の形式を取っていれば問題ないと考える方も少なくありません。

しかし、税務上は契約の形式よりも、実際にどれだけの経済的利益が移転したのかが重視されます。つまり、実際の価値よりも著しく低い金額で持分を移転した場合、売買という形式を取っていても、実質的には贈与とみなされる可能性があるのです。

実際、実質的に贈与と言えるような価格で親族間売買をしてしまい、あとから後悔したという事例がありました。

父と長男が共有していた土地について、父の持分を長男が買い取ったケースがありました。
土地全体の実勢価格はおよそ3,000万円程度と見込まれていましたが、親子間の話し合いで「身内だから」という理由から、父の1/2持分を500万円で売買したとのことです。
当事者間では、「相続税対策にもなるだろう」「家族間だから問題ない」「税理士に細かく相談するほどでもない」という認識だったといいます。
しかし後日、知人から「それは贈与とみなされる可能性があるのでは」と指摘を受け、不安になって弊社へ相談がありました。
ご相談者様は、「本当に売買として扱われるのか」「将来、弟から不公平だと言われないか」「税務署に否認されたらどうなるのか」と、取引後になって強い不安を抱えておられました。

今回の事例のように、明らかに市場価格よりも低い価格で持分を移転すると、本来受け取るべき金額との差額について、税務上は「親から子への贈与があった」と判断されるリスクがあります。

家族だからといって安易に価格を決めず、不動産会社の査定を基準として、税理士にも相談しながら売買価格を決めることが大切です。

妥当な売買価格を調べずに親族間売買をしたケース

親族間売買では価格設定を簡略化しがちですが、客観的な根拠を持たずに決めた金額は、あとから紛争の火種になりやすい傾向があります。とくに、共有持分の売買においては、他の共有者に対して「なぜその金額なのか」を説明できるかどうかが大切です。

兄弟3人で共有していた空き家について、次男が長男の持分を買い取ったケースがありました。
この事例では「固定資産税評価額を基準にすればいいだろう」との認識で価格を決めたとのことです。しかし、実際の市場価格や共有状態による評価減については、とくに検討していませんでした。
後になって三男から、「なぜその価格なのか根拠を示してほしい」「相場より安すぎるのではないか」「自分の持分を売るときはどうなるのか」と疑問を投げかけられ、兄弟間で価格の妥当性を巡る議論が生じました。
相談に来られた次男は、「当時は揉めるとは思っていなかった」「専門家に一度見てもらえばよかった」「このままでは将来、さらに話がこじれそうだ」と不安を口にしていました。
価格の根拠を整理しないまま進めたことが、後から関係性に影響を及ぼすことを懸念し、弊社へご相談に至ったようです。

固定資産税評価額はひとつの参考資料にはなりますが、市場価格とは一致するとは限りません。また、共有持分には流動性の制約があるため、単純に評価額を基準にするだけでは不十分な場合もあります。

実際、不動産買取の実務においては、市場価格や立地条件、共有者との関係性、不動産鑑定士の評価など、複数の要素を加味して判断しています。

親族間売買では、家族だからこそ市場価格をしっかりと調査し、適正価格で取引をする必要があると認識しておきましょう。

共有持分の親族間売買をする流れ

共有持分の親族間売買は「家族だから大丈夫」と手順を省略してしまいがちですが、第三者間の売買と同様に、契約や代金決済、登記などを進めていく必要があります。

共有持分の親族間売買をする際の流れは、以下が基本となります。

  1. 売買する持分の実勢価格を把握しておく
  2. 売買の相手となる親族と話し合う
  3. 売買の条件を決めてから契約書を作成する
  4. 代金の支払いを行う
  5. 持分移転登記をする

1. 売買する持分の実勢価格を把握しておく

親族間売買を検討する際、まずは「共有持分が市場でいくらで売れているのか」という実勢価格を把握するところから始めましょう。

親族間だからといって、感情や固定資産税評価額だけで話し合いを進めると、あとから「安すぎるのではないか」「高すぎるのではないか」といった不信感を招く可能性があるためです。

なお、共有持分は単独所有の不動産とは評価の考え方が異なります。全体価格を持分割合で単純に割った金額が妥当とは限らず、流動性の低さや利用制限といった事情も考慮する必要があります。

そのため、不動産買取の専門家としては、複数の買取業者に査定を依頼して現在の実勢価格を把握することを推奨します。プロの査定結果が手元にあれば、親族間で持分の価格を決めるときの指標にもなります。

2. 売買の相手となる親族と話し合う

実勢価格の目安を把握できたら、次に売買の相手となる親族との話し合いを進めていきます。

話し合いでは、売買価格だけでなく、支払方法や決済のタイミング、引き渡しの方法、今後の利用方針なども含めて確認しておくことが大切です。親族間売買では「とりあえず価格だけ決める」という進め方になりがちですが、あとから条件の認識違いが生じないよう、細かく条件を取り決めておくことを推奨します。

また、他にも共有者がいる場合には、取引には直接的に関係がなかったとしても事前に情報を共有しておきましょう。

持分の譲渡自体は単独でも可能ですが、共有関係は今後も継続します。事前に情報を共有し、説明の機会を設けておくことで、将来的な不信感やトラブルの予防につながります。

3. 売買の条件を決めてから契約書を作成する

売買条件について合意できたら、必ず書面で売買契約書を作成します。

親族間であっても、口約束のまま取引を進めるのは、不動産の専門家として推奨はできません。売買価格や支払方法、支払期日、対象となる持分の範囲などを明確にしておかなければ、あとから認識の食い違いが生じる可能性があるためです。

契約書の作成は当事者間でも可能ですが、不安がある場合は司法書士に依頼するのが実務上多いです。登記とあわせて依頼することもできるため、手続きの負担を避けたい方は司法書士の利用を検討しましょう。

4. 代金の支払いを行う

売買契約を締結したら、合意した条件に従って代金の支払いを行います。親族間売買であっても、実際に対価が支払われたことを客観的に証明できる形で支払うのが得策です。

現金の手渡しでは対価の支払いがあったかどうかを証明しづらいため、専門家の立場としては銀行振込を推奨しております。なお、分割払いとする場合は、支払期日ごとに確実に振込を行い、返済の状況を記録として残しておくことが大切です。

代金の支払いは売買が成立していることを示す証拠にもなるため、一括払いでも分割払いでも、確実に支払いを行いましょう。

5. 持分移転登記をする

売買契約に基づいて代金の支払いが完了したら、最後に持分移転登記を行います。持分移転登記とは、法務局に申請して共有持分の名義を売主から買主へ変更する手続きのことです。

売買契約と代金の支払いが済んでいても、登記をしなければ実際の所有者が変わったことにはなりません。登記簿上の名義が元の所有者のままだと、将来の売却や担保設定、相続手続きの際に支障が生じるリスクがあります。

持分移転登記は、売買契約書や登記原因証明情報、固定資産評価証明書などの書類を添付して提出します。なお、実際には本人が登記申請をするケースは多くなく、司法書士に依頼するのが実務上の基本となります。

持分移転登記まで完了すれば、共有持分の所有者が他の親族に移転します。以上で共有持分の親族間売買は完了です。

共有持分の親族間売買で発生する税金と費用

共有持分の親族間売買では、売買代金のやり取りだけで手続きが完了するわけではありません。通常の不動産売買と同様に、買主・売主それぞれに税金や費用が発生します。

親族間売買であっても、税務上は第三者間の取引と同様に取り扱われるため、事前に負担内容を把握しておくことが大切です。以下では、買主側と売主側に分けて、共有持分の親族間売買で発生し得る主な税金・費用を解説します。

親族間売買の買主にかかる費用・税金

親族間売買において、共有持分を購入した買主には以下のような費用・税金が発生します。

費用・税金 概要 相場・税率
不動産取得税 不動産を取得してから6ヶ月~1年程度で納税通知書が届く 固定資産税評価額×原則4%(軽減措置により3%の場合あり)
印紙税 売買契約書に貼り付けて納付する 200円〜60万円
(売買金額によって異なる)
登録免許税 持分の移転登記や抵当権を設定する際に納める 所有権移転登記:固定資産税評価額×2%
抵当権設定登記:債権額×0.4%
住宅ローン事務手数料・保証料 住宅ローンを組んだとき金融機関に支払う 借入額の0.5〜2%程度+保証料
各種書類の発行手数料 印鑑証明書や住民票など 1通300円〜500円程度
司法書士報酬 司法書士に書類作成や登記を依頼した場合 5万〜15万円程度
仲介手数料 不動産仲介業者を利用した場合 売買価格×3%+6万円(税別)が上限

このように、持分を購入すると多くの税金や費用がかかります。

とくに、不動産取得税は納付時期が持分取得から6ヶ月〜1年が経過したあとなので、忘れてしまっていたという方も多いものです。納税通知書が届いたときに慌てないよう、納税資金をしっかりと確保しておきましょう。

親族間売買の売主にかかる費用・税金

親族間売買において、共有持分を購入した売主には以下のような費用・税金が発生します。

費用・税金 概要 相場・税率
印紙税 売買契約書に貼り付けて納付する 200円〜60万円
(売買金額によって異なる)
登録免許税 抵当権抹消登記をする際に必要 不動産1つにつき1,000円
譲渡所得税 持分を売却して利益が出た場合は確定申告をして納付する 短期譲渡(5年以下):39.63%
長期譲渡(5年超):20.315%
住宅ローン一括返済手数料 住宅ローン残債を一括で返済する際に金融機関に支払う 1万〜3万円程度
各種書類の発行手数料 印鑑証明書や住民票など 1通300円〜500円程度
司法書士報酬 司法書士に書類作成や登記を依頼した場合 1万円~3万円程度
仲介手数料 不動産仲介業者を利用した場合 売買価格×3%+6万円(税別)が上限

売主にかかる負担の大きい税金は譲渡所得税です。利益が出た場合に限って発生するものですが、持分の評価額が高ければ税金も高額になる点には注意が必要です。

司法書士費用に関しては、親族間売買の場合、1人の司法書士に依頼して費用を折半するか、買主側が支払いをするケースが大半を占めています。買主・売主それぞれが個別に司法書士へ依頼するといったことはほぼありません。

共有持分の親族間売買以外に共有状態を整理する方法

共有持分の親族間売買以外で、共有状態を整理する方法を以下にまとめました。

方法 概要
共有不動産全体を第三者に売却 共有者全員で協力して、共有不動産全体を売却する方法
共有名義の土地を分筆 土地を切り分けて単独名義で登記する方法
自分の持分を第三者に売却 買取業者などの第三者に自分の持分のみを売却する方法
自分の持分を放棄 持分を放棄して他の共有者へ帰属させる方法
共有物分割請求訴訟の提起 裁判所に申し立てて強制的に共有状態を解消する方法

共有不動産が不要なのであれば、不動産全体を売却する方法が合理的な選択肢となります。持分だけでは流動性が低く、どうしても価値が下がってしまいますが、不動産全体であれば市場価格に近い水準での売却が期待できます。

もしも共有者の同意が得られないということであれば、自分の持分のみの売却を検討しましょう。とくに、親族間でトラブルが生じており、売却の話が進まない場合には、自分の持分を売却して共有状態から抜け出す方法が有効です。

なお、共有名義の解消方法については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

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まとめ

共有持分は、親族間であっても法的には問題なく売買することが可能です。

身内同士で取引を行うことで、柔軟に取引条件を設定できるだけでなく、複雑な共有関係を解消して単独名義に一本化できれば、将来的な不動産の売却や活用がスムーズになるというメリットがあります。

しかし、専門家の視点から改めて強調したいのは、価格設定を誤ったことによる「みなし贈与」のリスクです。とくに、親族間売買は税務署から「不当な取引がないか」が疑われやすく、贈与があったと判断されれば、多額の贈与税が課されます。

親族間で円満に共有状態を解消するためには、まず不動産会社で持分の査定を受け、適正価格を調べましょう。そのうえで税理士にも相談し、みなし贈与と判断されない価格で売買することが大切です。

よくある質問

贈与と売買ではどちらの方が得ですか?

実務上は売買の方が税負担を抑えられるケースが多いですが、持分の評価額にもよるため、一概に「どちらが得」とは言えません。
贈与は購入代金が不要な反面、贈与税の税率が最大55%と非常に高いため、評価額が高い持分ほど納税額が跳ね上がるリスクがあります。一方、売買であれば贈与税を回避できますが、市場価格よりも安すぎると「みなし贈与」として課税されるため、適正価格での売買がもっともコストとリスクのバランスが良いといえます。

親族間売買でも不動産会社に仲介を依頼するべきですか?

親族間売買は仲介会社を入れず、司法書士に相談しながら進めるケースが多いです。そのため、不動産会社への仲介依頼は必須ではありません。ただし、不動産会社に依頼すれば価格の妥当性を客観的に証明してもらえるため、みなし贈与を回避できるというメリットがあります。

遠方に住んでいる親族と対面せず持分売買はできますか?

親族が遠方に住んでいる場合でも、売買契約書や登記申請に必要な書類などを郵送でやり取りすれば対面せずとも売買を進めることは可能です。ただし、郵送には紛失や誤送のリスクが伴うため、司法書士などの専門家に依頼のうえ、厳密に管理してもらいながらやり取りするのが確実です。

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