共有物分割請求のデメリット5つ!費用・競売リスクと請求すべきかの判断ポイント

共有物分割請求は、共有者間の協議で解決できることもありますが、調停や訴訟に進むと費用や時間がかかり、結果的に費用対効果が悪くなるリスクもあります。
共有物分割請求の主なデメリットと、とくに注意したいケースは以下のとおりです。
デメリットを把握せずに進めると、共有状態を解消できても「他の方法を選べばよかった」と後悔するおそれがあるため、調停や訴訟に進む前に他の解消方法と比較することが重要です。実務では訴訟を最終手段と考え、他の共有者との持分売買や自分の持分のみの売却など、裁判所の手続きを使わずに解決できないか確認するのが先です。
一方で、「誰が不動産を取得するか」「いくらで持分を買い取るか」などで意見が対立し、話し合いが膠着状態に陥っている場合は、調停や訴訟が打開策になることもあります。調停では第三者を交えた話し合いによって合意を目指せるほか、訴訟では不動産の評価資料などを踏まえて裁判所が分割方法を判断するため、共有者同士では解決できなかった問題を前に進められる可能性があります。
本記事では、共有物分割請求のデメリットとメリット、請求すべきかの判断ポイントを中心に、具体的な解決事例や手続きの流れ、費用の目安について詳しく解説します。
共有物分割請求のデメリット5つ
共有物分割請求とは、複数人で所有する不動産の共有状態を解消するために、他の共有者へ分割を求めることです。民法第256条に基づき、原則として他の共有者の同意がなくても請求でき、話し合いで解決できない場合は裁判所に分割方法の判断を求めることもできます。
共有物分割請求は、共有状態を解消するための有効な手段ですが、必ずしも最善の解決方法とは限りません。実務でも、早期の解決を望んで手続きを進めたものの、想定外の負担や問題に直面するケースがあります。
共有物分割請求を検討する際は、以下の5つのデメリットを把握しておきましょう。
- 希望どおりの方法で共有状態を解消できるとは限らない
- 競売になると不動産が相場より安く売却されるおそれがある
- 共有状態が解消されるまでに手間と時間がかかる
- 弁護士費用や裁判費用がかさみ、費用対効果が悪くなることがある
- 共有者との関係が悪化する原因になる
共有物分割請求の詳しい仕組みや訴訟の手続きについては、次の記事で解説しています。
希望通りの方法で共有状態を解消できるとは限らない
共有物分割請求では、必ずしも自分が希望する方法で共有状態を解消できるとは限りません。共有者間で合意できず、訴訟でも和解に至らなかった場合は、不動産の状況や共有者それぞれの事情などを踏まえて裁判所が分割方法を判断します。
裁判所が命じる共有物の分割方法には、主に以下の3つがあります。
- 現物分割:土地などを物理的に分割し、それぞれの共有者が取得する方法
- 代償分割(価格賠償):共有者の1人が不動産を取得し、他の共有者に持分相当の代償金を支払う方法
- 換価分割(競売):不動産を競売で売却し、売却代金を共有者の持分割合に応じて分配する方法
たとえば、「他の共有者の持分を取得して、不動産を単独所有したい」と希望していても、代償金を支払う資金が不足していれば、その方法が認められるのは難しくなります。実際に、最高裁平成8年10月31日判決でも、代償金の支払能力が全面的価格賠償(代償分割)を認めるための重要な条件とされています。
現物分割や代償分割などができない場合には、裁判所が競売を命じ、不動産を手放す結果になることもあります。とくに、自分が住んでいる家など、どうしても手放したくない不動産の場合は注意が必要です。
株式会社クランピーリアルエステート
大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
競売になると不動産が相場より安く売却されるおそれがある
共有物分割請求が訴訟に発展すると、裁判所の判断によって不動産が競売にかけられることがあります。
競売では、通常の仲介売却と比べて物件の内覧や状態確認に制約があるため、買主が購入後のリスクを考慮し、相場より低い金額で入札することがあります。物件の条件や入札状況によって異なるものの、市場価格の60〜70%程度で落札されるケースもあります。
たとえば、仲介なら3,000万円で売却できる不動産が、競売では2,100万円で落札されたと仮定します。共有者2人がそれぞれ2分の1の持分を所有している場合、売却代金の取り分は以下のようになります。
- 仲介による売却:3,000万円 × 1/2 = 1,500万円
- 競売による売却:2,100万円 × 1/2 = 1,050万円
※比較のための仮定であり、売却費用や税金などは考慮していません。
この例では、競売によって共有者1人あたりの取り分が450万円少なくなる計算です。さらに、訴訟に至るまでの弁護士費用や競売手続きの費用なども考慮すると、最終的な手取り額はより少なくなります。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
持分の現金化が目的なら、訴訟以外の方法も検討
「自分の持分を現金化したい」というだけなら、必ずしも共有物分割訴訟まで進める必要はありません。まずは他の共有者に買い取ってもらえないか相談し、難しければ共有持分専門の買取業者に売却する方法もあります。
とくにもったいないのは、共有者全員が不動産の売却に賛成しているのに、価格や時期で折り合えず、訴訟にまで発展してしまうケースです。時間も費用もかけたのに、結局は競売で安く売れてしまったとなれば、双方にとって不本意な結果でしょう。
売却条件で折り合わないなら、複数の不動産会社に査定を依頼してみるのも手です。現実的にいくらで売れそうなのか、どのタイミングで値下げするのかなど、具体的な条件をすり合わせることで話がまとまることもあります。
共有状態が解消されるまでに手間と時間がかかる
共有物分割請求は、共有者間の協議で解決できれば比較的スムーズですが、意見が対立している場合は解決までに長い時間がかかることがあります。
協議で合意できず、調停や訴訟に進むと、必要書類の準備や裁判所での期日への対応など、手続きの負担も大きくなります。とくに、不動産の評価額や分割方法をめぐって争いがある場合は、さらに長期化することもあります。
実際に、裁判所の「裁判所データブック2026」によると、2025年の地方裁判所における民事第一審通常訴訟の平均審理期間は8.9ヵ月、当事者双方が争い、判決で終了した事件では12.9ヵ月でした。共有物分割請求訴訟だけを対象とした統計ではありませんが、訴訟による解決には相応の時間がかかることがわかります。
問題なのは、手続きが長引く間も共有状態が続き、固定資産税や維持管理の負担が発生することです。とくに空き家の場合は、解決を待つ間に建物の老朽化が進み、修繕費や売却条件にも影響するおそれがあります。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
早く現金化したいなら、買取業者への売却もあり
「共有者と話がつかないから裁判しかない」と考える方もいるかもしれません。ただ、早く現金化したいなら、訴訟での解決を待つのが得策とは限りません。
共有持分専門の買取業者なら、他の共有者の同意を得ずに自分の持分だけを売却できます。買主を探す必要もないため、比較的短期間で現金化しやすいのがメリットです。ただし、持分のみの売却は価格が低くなりやすいので、いくらで売れるのか、いつ現金化できるのかを確認してから判断するのがよいでしょう。
弁護士費用や裁判費用がかさみ、費用対効果が悪くなることがある
共有物分割請求では、協議から調停・訴訟へと進むにつれて、費用負担が大きくなる傾向があります。訴訟になった場合、裁判所に納める申立手数料や郵便料のほか、弁護士に依頼すれば着手金・報酬金などが必要です。不動産の評価が争点となれば、鑑定費用が追加で発生することもあります。
とくに注意したいのは、費用をかけて共有状態を解消できても、得られる経済的利益が小さければ、費用対効果が悪くなることです。
たとえば、共有持分の価値が低い場合、訴訟で分割が実現しても、弁護士費用などを差し引くと手元に残る金額が少なくなることがあります。また、弁護士費用は原則として依頼者自身が負担するため、希望する結果が得られても費用を回収できるとは限りません。
共有物分割請求を検討する際は、解決によって得られる利益と必要な費用を比較しておくことが大切です。具体的な金額については、「共有物分割請求にかかる費用」で詳しく解説しています。
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代表取締役
宅地建物取引士
訴訟費用に見合うだけの利益があるか確認を
共有物分割請求を考えるなら、まず自分の持分にどれくらいの価値があるのか、確認しておきたいところです。不動産全体の評価額が高くても、自分の持分が小さければ、受け取れる金額も限られます。時間もお金もかけて裁判をしたのに、思ったほど手元に残らなかった、というのは避けたいはずです。
まずは査定でおおよその価値を把握し、弁護士にも費用の見積もりを取って、最終的にいくら残りそうか比較してみることをおすすめします。
共有者との関係が悪化する原因になる
共有物分割請求は、共有者同士の関係をさらに悪化させる原因になることがあります。とくに、親族間で不動産を共有している場合は、単なる財産の問題ではなく、感情的な対立に発展しやすい点に注意が必要です。
たとえば、共有者の1人が実家に住み続けたいと考えている一方で、別の共有者が売却して現金化したいと考えているケースです。住んでいる側からすれば、共有物分割請求を突然求められることで、「家を追い出されるのではないか」と受け止め、強く反発することもあるでしょう。
実務上厄介なのは、関係が悪化した結果、共有者が話し合いを拒むようになり、持分の売買や不動産全体の任意売却など、交渉による解決も難しくなることです。
また、裁判所の判断によって共有状態を解消できたとしても、共有者同士の関係まで修復されるわけではありません。親族間の場合は、不動産の問題が解決した後も、感情的なしこりが残ることがあります。
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大江 剛
代表取締役
宅地建物取引士
まずは相手が何に反対しているのか見極める
「売却したくない」という共有者でも、実家を残したいのか、今の家に住み続けたいのか、単に売却価格に納得していないのかで、話は変わってきます。ここを確認せずに共有物分割請求を進めると、相手が態度を硬化させてしまうこともあります。
たとえば、住み続けたいのであれば持分を買い取れないか、引っ越しに時間が必要なら売却時期を調整できないかなど、交渉の余地はあります。もちろん、どうしても話し合いができない場合は訴訟も選択肢ですが、まずは相手が何を望んでいるのか、確認してみることをおすすめします。
共有名義不動産の売却に反対する共有者との交渉方法や、同意を得るためのポイントについては、次の記事で詳しく解説しています。
共有物分割請求のメリット
共有物分割請求には、費用や時間がかかるなどのデメリットがある一方で、次のようなメリットもあります。
- 相手の同意がなくても裁判所の判断で共有状態を解消できる
- 不動産の客観的な評価をもとに分割方法を判断してもらえる
とくに、共有者間での話し合いが難航しており、どうしても共有状態を法的に解消したい場合には、有効な選択肢となります。メリットとデメリットの両方を踏まえて検討することが大切です。
相手の同意がなくても裁判所の判断で共有状態を解消できる
共有物分割請求の大きなメリットは、他の共有者が分割に反対していても、最終的には裁判所の判断によって共有状態を解消できることです。
通常、共有名義の不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。しかし、共有物分割請求では、協議がまとまらない場合や協議自体ができない場合でも、訴訟によって裁判所に分割方法の判断を求められます。
たとえば、共有者の1人が「今は売りたくない」「このままで困っていない」と話し合いを先延ばしにしているケースです。このような場合でも、共有物分割請求によって、相手の同意がないまま共有状態が続く状況を解消できる可能性があります。
また、必ずしも訴訟まで進む必要はありません。それまで話し合いに消極的だった共有者も、正式に分割を求められたことで今後の対応を考えるようになり、持分の買取や不動産全体の売却など、協議による解決に応じるケースもあります。
このように、相手が協議に応じない場合でも、話し合いによる解決を促し、それでも合意できなければ裁判所の判断を求められる点は、共有物分割請求の大きなメリットです。
不動産の客観的な評価をもとに分割方法を判断してもらえる
共有物分割請求訴訟では、共有者間で不動産の価値について意見が対立している場合でも、客観的な資料をもとに裁判所に判断してもらえるメリットがあります。
たとえば、他の共有者の持分を買い取りたい側は「できるだけ安く取得したい」、持分を手放す側は「相場に近い金額で売却したい」と考えるため、買取価格をめぐって話し合いがまとまらないことがあります。
訴訟では、不動産会社の査定書や鑑定評価書などをもとに不動産の価値が判断され、必要に応じて裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定が行われることもあります。こうした評価は、特定の共有者が不動産を取得する代償分割(価格賠償)において、他の共有者へ支払う代償金の額を決める際にも重要な判断材料となります。
ただし、訴訟で必ず不動産鑑定が行われるわけではなく、自分が希望する評価額が認められるとも限りません。鑑定には別途費用もかかるため、訴訟に進む前に、複数の不動産会社の査定をもとに共有者間で価格をすり合わせられないか検討するのもよいでしょう。
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共有者間での持分売買、いくらが妥当?
共有者間で持分を売買するなら、まずは不動産全体の市場価格を把握しましょう。不動産ポータルサイトで近隣の類似物件を調べたり、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で過去の成約価格を確認したりする方法があります。
共有者間の売買では、「不動産全体の市場価格×持分割合」が交渉の出発点になります。たとえば、市場価格3,000万円で持分が1/2なら、1,500万円がひとつの目安です。もちろん、必ずその金額で売買する必要はありません。不動産の利用状況や過去の費用負担なども踏まえて、双方が納得できる価格を探っていくとよいでしょう。
共有持分の売却相場や売却先による価格の違いについては、次の記事で詳しく解説しています。
共有物分割請求を検討する際の判断ポイント
共有物分割請求は、共有者間で話し合いがまとまらず、共有状態を法的に解消したい場合に有効な手段です。ただし、共有名義のトラブルを抱えているからといって、必ずしも共有物分割請求が最適とは限りません。
共有物分割請求を行うべきかは、不動産を単独所有したいのか、現金化したいのかといった目的や、他の共有者との交渉状況によって判断することが大切です。
状況別の判断ポイントを以下にまとめました。
共有者が行方不明の場合の対処法や、共有者間での固定資産税・使用対価のトラブルについては、次の記事でも詳しく解説しています。
共有物分割請求をめぐるトラブルの解決実例
共有物分割請求と聞くと、「裁判で争う手続き」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、実際には必ずしも訴訟まで進むとは限らず、協議や調停の段階で共有状態が解消されるケースもあります。
ここでは、弊社提携弁護士が関与した共有物分割協議の事例と、共有物分割調停で売却に合意した事例を紹介します。
※プライバシー保護のため、個人が特定されないよう事例の一部を変更しています。
共有物分割協議に弁護士が介入し、円満に買取が成立したケース
兄弟間の話し合いが難航したものの、弁護士の介入によって裁判に進まず解決した事例を紹介します。
ご相談者様は、ご兄弟で実家をそれぞれ2分の1ずつの持分で相続していました。しかし、弟が一人で住み続けているにもかかわらず、兄に賃料相当額を支払うこともなく、不動産の売却にも応じない状況が続いていました。兄は当初、兄弟間で話し合いを試みましたが、弟は「自分の家だ」と感情的になり、冷静な話し合いができない状態でした。そこで兄が弁護士に相談し、代理人として交渉に入ってもらうことになります。
弁護士は弟に対して「共有状態が解消されない場合には共有物分割訴訟に発展する可能性があり、最終的には不動産が競売にかけられるリスクもある」と説明しました。そのうえで、弟が住み続ける意思があるのであれば、兄の持分を買い取り、不動産を単独所有する方法を提案しました。
【結果】
弟は住宅ローンを利用して資金を準備し、兄の持分を買い取ることで合意が成立しました。
裁判に進むことなく共有状態が解消され、兄は持分を現金化し、弟は不動産を単独所有して住み続けられるようになりました。また、兄弟間の関係も大きく悪化することなく解決できました。
共有物分割調停で売却に合意し、共有状態を解消したケース
共有者間の話し合いが難航したものの、共有物分割調停によって売却に合意し、共有状態を解消した事例を紹介します。
今回のケースでは、ご相談者様が持分3分の1を所有する空き家が長年放置された状態になっていました。ご相談者様は不動産の売却を希望していましたが、他の共有者2名は「先祖代々の土地だから残したい」と売却に反対する一方、今後の管理や活用についても方針が決まらず、話し合いが進まない状況でした。
そこで、提携弁護士による交渉が行われましたが、相手方の回答が曖昧で協議による解決は難しいと判断されました。ご相談者様は次の段階として、裁判所に共有物分割調停を申し立てることになります。調停では、裁判所の調停委員が第三者として間に入り、不動産を維持し続けた場合の管理費や固定資産税の負担、将来相続が発生して権利関係が複雑になるリスクなどについて、客観的な視点から説明が行われました。
【結果】
調停を経て、当初売却に反対していた共有者も「将来の世代に負担を残さないために、今のうちに整理するべき」という考えに理解を示すようになっていきます。
最終的には共有者全員が売却に同意し、不動産を売却して代金を持分割合に応じて分配する内容で調停が成立しました。その後、市場価格に近い金額で売却でき、諸費用を差し引いた売却代金を3名で分け合うことで、共有状態を円満に解消できました。
共有物分割請求の流れ
共有物分割請求では、まず共有者間で分割方法について話し合い、合意できない場合は調停や訴訟による解決を検討します。
主な流れは、以下のとおりです。
- 共有者との話し合いを行う(共有物分割協議)
- 調停委員を介して話し合いを行う(共有物分割調停)
- 共有物分割請求訴訟を提起する
- 裁判上の和解または判決で共有物の分割方法が確定する
なお、共有物分割調停は必須の手続きではなく、協議がまとまらない場合などは、調停を経ずに訴訟を提起することも可能です。
1. 共有者との話し合いを行う(共有物分割協議)
共有物分割請求は、まず共有者同士の話し合いから始まります。共有者の1人が他の共有者に対して「共有状態を解消したい」という意思を示し、分割方法について協議を行うという流れです。
共有物の分割を求める意思は口頭でも伝えられますが、「言った・言わない」のトラブルを避けるため、メールや書面などでやり取りを残しておくとよいでしょう。相手が話し合いに応じない場合などは、内容証明郵便で通知する方法もあります。
売却や持分の買取などの解決方法について共有者間で合意できれば、訴訟に進まず、協議の段階で共有状態を解消できます。
一方、共有者同士で意見が対立している場合や、一方的な提案と受け取られてしまった場合には、話し合いがまとまらず交渉が決裂することもあります。トラブルが予想される場合には、事前に弁護士へ相談し、交渉の進め方や解決方法について方針をまとめておくことが重要です。
2. 調停委員を介して話し合いを行う(共有物分割調停)
共有者同士の協議で解決できない場合は、裁判所に「共有物分割調停」を申し立てる方法があります。調停では、裁判所の調停委員が第三者として間に入り、各共有者の意見を聞きながら解決を目指します。
当事者が直接交渉するのとは異なり、調停委員を介して話し合いを進められるのが特徴です。ただし、調停はあくまでも当事者間の合意による解決を目指す手続きなので、合意に至らなければ調停は成立しません。
共有物分割調停を申し立てる際には、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書を提出します。その後、裁判所が指定した調停期日に、調停委員を介して話し合いを進めます。当事者間で合意が成立すると、その内容が調停調書に記載されます。
なお、共有物分割請求には、訴訟前に調停を行うことを義務づける「調停前置主義」は適用されません。共有者間の話し合いが平行線となり、調停でも合意が見込めない場合は、調停を経ずに訴訟を提起し、裁判所に分割方法を判断してもらうことも可能です。調停を省くことで、結果的に早く解決できるケースもあります。
3. 共有物分割請求訴訟を提起する
共有者同士の協議がまとまらない場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起できます。調停を行ったものの、合意に至らなかった場合も同様です。訴訟では、裁判所が共有者の主張や証拠をもとに審理を行い、和解が成立しなければ、判決によって共有物の分割方法を決定します。
訴訟が提起されると、まず被告となる共有者に対して訴状が送達され、裁判所から第1回口頭弁論期日の呼出状が送付されます。その後、口頭弁論や弁論準備手続などが行われ、双方の主張や証拠をもとに審理が進められていきます。
なお、訴訟の期日は1ヵ月程度の間隔で開かれることもありますが、審理の進み方は事案によって異なります。弊社の実務経験上、共有物分割請求訴訟の解決までかかる期間は、6ヵ月~1年程度が目安です。
ただし、共有者間の対立が激しい場合や不動産の鑑定が必要になる場合などは、さらに長期化する可能性もあります。
4. 裁判上の和解または判決で共有物の分割方法が確定する
共有物分割請求訴訟では、審理の途中で当事者同士が合意に至り、裁判上の和解によって解決する場合もあります。裁判を進める中で条件を調整することで、双方が納得できる分割方法を決められることもあります。
一方、和解に至らない場合には、最終的に裁判所が判決を下し、共有物の分割方法を決定します。判決では、不動産をどのような方法で分割するのかが具体的に示され、その内容に基づいて共有状態の解消が進められます。
裁判所の判決には法的な効力があるため、すべての共有者がその内容に従う必要があります。そのため、共有者の一部が分割に反対していたとしても、判決に基づいて共有物の分割を実行することが可能です。
なお、共有物の分割方法には主に以下の3つがあります。
現物分割

現物分割とは、土地そのものを物理的に分けて、それぞれの共有者が単独名義で登記する分割方法です。これにより、共有状態を解消して各共有者が単独で土地を活用できるようになります。
現物分割は、分筆後も十分な面積を確保でき、土地の形状や道路への接し方に問題がない場合などに適しています。共有者それぞれが土地を個別に利用できるため、不動産を引き続き活用したい場合に有効な分割方法といえます。
ただし、土地を分筆することで一つ一つの区画が小さくなり、形状が悪くなったり、道路に接する幅が不足したりすると、分割前より不動産の価値が下がるおそれがあります。分割後の土地が建築基準法上の接道義務を満たせず、原則として建物を建てられなくなるケースもあるため、注意が必要です。
現物分割ができる土地の条件や、分筆の手続き・費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
代償分割(価格賠償)

代償分割(価格賠償)とは、共有者のうち1人が不動産の所有権を取得し、代わりに他の共有者へ代償金を支払うことで共有状態を解消する方法です。
たとえば、建物が建っている不動産は物理的に分割することが難しく、現物分割が適さないケースがあります。また、不動産を引き続き利用したい共有者がいる場合にも、代償分割が選ばれることがあります。
代償分割は、特定の共有者が不動産を所有し続けたい場合に有効な方法ですが、取得する側には他の共有者へ代償金を支払えるだけの資金力が必要です。
代償分割では、代償金を支払う側と受け取る側で希望する金額が異なり、対立するケースがあります。訴訟中に和解を目指す場合は、複数の不動産会社の査定をもとに市場価格を確認し、代償金の額を調整することが重要です。
一方、判決では、裁判所が不動産の価値や代償金の支払能力などを踏まえて判断します。代償金を支払える見込みがなければ、希望しても代償分割が認められず、競売になる可能性もあります。
換価分割

換価分割とは、不動産を売却して現金化し、売却代金を共有者の持分割合に応じて分配する方法です。現物分割が難しい場合や、他の共有者の持分を取得して代償金を支払える人がいない場合などに選択されることがあります。
訴訟中に裁判上の和解が成立し、共有者全員が売却に合意した場合は、不動産会社の仲介による売却も可能です。協議や調停で売却に合意した場合も同様です。
一方、訴訟で和解に至らず、判決によって換価分割が命じられた場合は、競売によって不動産を売却します。この場合、通常の仲介売却より安く売却され、共有者が受け取れる金額も少なくなるおそれがあります。
共有物分割請求にかかる費用
共有物分割請求にかかる費用は、共有者同士の協議で解決するか、調停・訴訟まで進むかによって大きく異なります。また、弁護士に依頼するかどうかや、不動産鑑定などの追加手続きが必要になるかによっても変わります。
一般的に、協議だけで解決できれば費用は抑えやすく、調停・訴訟へと進むほど費用負担が大きくなる傾向があります。
各手続きにかかる費用の目安は、以下のとおりです。
※上記は参考額であり、実際の費用は弁護士への依頼内容や報酬体系、不動産の状況などによって異なります。不動産鑑定・測量・登記・競売に関する費用などが別途発生し、目安を上回る場合もあります。
共有物分割協議にかかる費用
共有物分割協議では、弁護士への依頼は必須ではありません。自分で他の共有者と交渉する場合は、比較的少ない費用で進められます。
弊社の実務経験をもとにした目安では、自分で協議する場合は数千円程度、弁護士に交渉を依頼する場合は10万円~30万円程度の費用がかかります。
主な費用の内訳は以下のとおりです。
弁護士に交渉を依頼する場合は、事務所や事案の内容によって費用が異なります。着手金とは別に成功報酬が発生することもあるため、依頼前に費用の総額や支払条件を確認しておきましょう。
共有物分割調停にかかる費用
共有者同士の協議で解決できない場合は、裁判所に共有物分割調停を申し立てる方法があります。調停では、申立手数料や郵便料などが必要となり、弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金なども発生します。
弊社の実務経験をもとにすると、弁護士に依頼して共有物分割調停を進める場合、30万円~80万円程度が費用の目安です。
主な費用の内訳は以下のとおりです。
参考:裁判所「手数料・手数料額早見表」横浜地方裁判所管内の簡易裁判所「郵便切手及び予納金一覧」
弁護士費用は、事案の内容や不動産の価値、交渉の難易度などによって異なります。依頼前には着手金・報酬金の金額だけでなく、調停が不成立となり、訴訟へ進む場合に追加費用がかかるかも確認しておきましょう。
共有物分割訴訟にかかる費用
共有物分割訴訟では、裁判所に納める手数料のほか、弁護士費用や不動産鑑定費用などが発生する場合があります。そのため、協議や調停で解決する場合よりも費用負担が大きくなる傾向があります。
弊社の実務経験上、共有物分割訴訟にかかる費用は50万円~150万円程度が目安です。ただし、弁護士の報酬金や不動産鑑定などの費用によっては、この金額を上回る場合もあります。
主な費用の内訳は以下のとおりです。
訴訟では、不動産の評価額が争点になった場合などに、鑑定費用が追加で発生することがあります。また、現物分割では土地の測量・分筆が必要になる場合があり、共有状態の解消に伴う所有権の登記にも費用がかかります。
さらに、判決で競売が命じられた場合は、別途競売の申立てが必要となり、予納金などの費用を準備しなければなりません。訴訟費用だけでなく、判決後の手続きまで含めて確認しておくことが大切です。
共有物分割請求を弁護士に依頼すべきか迷っている方は、相談が必要になりやすいケースや弁護士費用の目安について、以下の記事も参考にしてください。
共有物分割請求以外に共有状態を整理する方法
共有物分割請求は、共有者間の協議で解決できることもありますが、調停や訴訟へ進むと費用や時間がかかり、訴訟では競売による価格低下のリスクもあります。そのため、最初から調停や訴訟を前提にするのではなく、他の解消方法と比較したうえで判断することが大切です。
まだ他の共有者との持分売買や自分の持分の売却などを検討していない場合は、まずこれらの方法で解決できないか確認してみましょう。
各解消方法と、共有物分割請求と比べたメリット・デメリットは以下のとおりです。
各方法の具体的な手続きや費用については、以下の記事も参考にしてください。
共有物分割請求に関するよくある質問
共有物分割請求に時効はありますか?
共有物分割請求には、原則として時効はありません。民法256条では、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。
ただし、共有者間で「一定期間は分割しない」という不分割特約を結んでいる場合、期間中は原則として分割を請求できません。不分割特約の期間は最長5年で、共有者全員の合意があれば更新も可能です。更新しなければ、期間満了後は再び共有物分割請求ができます。
共有物分割請求を拒否することはできますか?
共有物分割請求そのものを拒否することは、原則としてできません。ただし、相手が希望する分割方法や条件に同意する必要はなく、協議や訴訟で自分の意見を主張することは可能です。
共有者間で合意できない場合は、調停や訴訟による解決を目指すことになります。訴訟で和解に至らなければ、裁判所が分割方法を判断するため、反対しているだけでは共有状態を維持できない可能性があります。
まとめ
共有物分割請求は、協議や調停で解決できることもありますが、訴訟に進んだ場合は、必ずしも希望どおりの分割方法になるとは限りません。訴訟を検討する際は、費用や時間だけでなく、不動産を所有し続けられるか、現金化する場合はいくら手元に残るかまで考えて判断することが大切です。
まずは不動産の価値や自分の持分割合を確認し、他の共有者との持分売買や自分の持分のみの売却など、訴訟以外の方法でも目的を達成できないか比較してみましょう。
それでも共有者間での解決が難しい場合は、弁護士に相談し、訴訟によって想定される結果や費用の見通しを確認したうえで、共有物分割請求を進めるか判断することが大切です。

不動産を取得したいなら、まずは共有者間での買取交渉
不動産を自分のものにしたいなら、共有者間で持分を売買できるのが理想です。とはいえ、関係がこじれていて、そもそも話し合いができないこともあるでしょう。
そうした場合は、共有物分割協議の段階から弁護士に入ってもらうのも一つの方法です。実際に、提携弁護士が間に入って兄弟間の買取交渉がまとまり、持分を買い取れた事例もあります。訴訟まで進むと競売になるリスクもあるため、まずは交渉で解決できないか探ってみることをおすすめします。