共有名義不動産の売却で3000万円特別控除は使える?適用要件や計算例、注意点を解説

共有名義不動産の売却を検討している方のなかには、「3,000万円特別控除」を利用できるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
3,000万円特別控除とは、不動産の売却で発生した利益から最大3,000万円を控除できる制度です。資産価値が上がった不動産を売却する場合には、大きな節税効果が期待できます。
共有名義不動産でも要件を満たせば利用でき、利益は持分割合に応じて分けられ、それぞれが控除を受けられます。共有者ごとに最大3,000万円の控除が適用されるため、たとえば夫婦2人の共有名義であれば、最大6,000万円まで控除できるケースもあります。
ただし、適用には一定の条件があります。主な要件は次のとおりです。
- 自分が現在住んでいる不動産であること
- 以前自分が住んでいた不動産の場合は「住まなくなってから3年目の12月31日まで」に売却すること
- 以前住んでいた家を解体した場合は「解体から1年以内」に売買契約を結んでいること
- 売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと
- 売却した年の前年・前々年にこの特例や、特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと
なお、この特例は居住用不動産に限られるため、投資用不動産や別荘などには適用されません。また、適用を受けるには、各共有者が売却した翌年に確定申告を行う必要があります。
さらに、原則として「居住していた家屋の所有者」または「その家屋の敷地を共有している者」が対象となります。そのため、建物と関係のない土地のみを共有している場合は、3,000万円特別控除を利用できない可能性があります。
本記事では、共有名義不動産の売却における3,000万円特別控除の基本ルールや計算例、注意点をわかりやすく解説します。あわせて、利用できるその他の特例や、売却時に押さえておきたいポイント、発生する費用・税金についても紹介します。
目次
共有名義不動産の売却で「3000万円特別控除」は利用できる?
「3,000万円特別控除」とは、正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を指します。不動産の売却で発生した利益から最大3,000万円を控除できるため、譲渡所得税の負担を軽減できます。
たとえば、再開発によって人気が高まったエリアの土地や、駅近・商業施設の整備などで資産価値が上がった不動産は、購入時よりも高値で売却できることがあります。
仮に、1,000万円の利益が出た場合、その利益に対して所有期間に応じた税率(14.21%~39.63%)をかけて譲渡所得税が計算されます。しかし、この特例を利用すれば利益から最大3,000万円を控除できるため課税されません。
共有名義の不動産であっても、要件を満たせばこの特例を利用でき、共有者1人につき最大3,000万円まで適用されます。売却時の利益は共有者の持分割合に応じて計算され、それぞれが控除を受けられる仕組みです。
たとえば、夫婦2人で自宅を共有している場合、両者が要件を満たしていれば最大6,000万円まで控除できる可能性があります。
ただし、適用には「実際に住んでいた不動産」であることに加え、一定の要件が設けられています。具体的な要件については、次の章で詳しく解説します。
共有名義不動産の売却における「3000万円特別控除」の基本ルール
共有名義不動産を売却する場合でも一定の要件を満たせば、3,000万円特別控除を利用できます。
ただし、この特例を適用するためには、居住用財産であることや売却相手の条件、確定申告の手続きなど、いくつかのルールを満たす必要があります。
ここでは、共有名義不動産の売却で3,000万円特別控除を利用する際の主な適用要件、必要書類、確定申告の方法について解説します。
適用要件
3,000万円特別控除は、マイホームなどの「居住用財産」を売却した場合に利用できる特例です。家屋だけでなく、家と一緒に売却する土地(敷地や借地権)も控除の対象になります。
ただし、この特例を利用できるのは、原則として居住していた家屋の所有者、またはその家屋の敷地を共有している人です。そのため、建物と関係のない土地のみを共有している場合などは、3,000万円特別控除を利用できない可能性があります。
ケース別の主な適用要件は次のとおりです。
| ケース | 適用条件 |
|---|---|
| 現在住んでいる不動産を売却する場合 |
・自分が現在住んでいる不動産であること ・売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと ・売却した年の前年・前々年にこの特例や、特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと |
| 以前住んでいた不動産を売却する場合 |
・以前自分が住んでいた不動産であること ・「住まなくなってから3年目の12月31日まで」に売却すること ・売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと ・売却した年の前年・前々年にこの特例や、特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと |
| 以前住んでいた家を解体し、更地として売却する場合 |
・自宅として使用していた建物を取り壊していること ・解体から1年以内に売買契約を結んでいること ・「住まなくなってから3年目の12月31日まで」に売却すること ・解体後、土地を駐車場など別用途で利用していないこと ・売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと ・売却した年の前年・前々年にこの特例や、特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと |
共有名義不動産の場合でも、これらの要件を満たしていれば共有者それぞれが3,000万円特別控除を利用できます。
適用できないケース
次のようなケースでは、3,000万円特別控除を利用できない可能性があります。
- 投資用不動産や賃貸物件など、居住用ではない不動産を売却した場合
- 別荘など、主に趣味や娯楽、保養のために所有している家屋を売却した場合
- 特例の適用を目的として一時的に入居したと判断される場合
- 新築や建替えの間の仮住まいとして使用していただけの家屋を売却した場合
- 配偶者や親子などの親族に売却した場合
- 売却した年の前年・前々年に同じ特例を利用している場合
- 売却した年の前年・前々年に特定の居住用財産の買換え特例などを利用している場合
簡単にいえば、実際に住んでいたマイホームではない場合や、特別な関係者への売却などは特例の対象外となります。
また、「夫が土地1/2・建物単独所有、妻が土地1/2の場合」で解説しますが、土地のみを共有している場合でも、その土地が自宅の敷地であれば3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
ただし、建物と関係のない土地のみを共有している場合などは、控除の対象にならない可能性があります。
そのため、共有名義不動産を売却する際は、土地と建物の所有関係もあわせて確認しておくことが重要です。
必要書類
3,000万円特別控除を利用するためには、不動産を売却した翌年に確定申告を行い、必要書類を提出する必要があります。
主な書類は次のとおりです。
| 書類 | 概要 |
|---|---|
| 確定申告書 |
譲渡所得や控除額を申告するための書類。 取得方法: 税務署または国税庁サイト(e-Taxで作成) |
| 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 |
不動産の売却価格・取得費・譲渡費用などを記載し、譲渡所得を計算するための書類。 取得方法:税務署または国税庁サイト(e-Taxで作成) |
| 売買契約書の写し |
売却価格や契約日などを確認するための書類。売却時の契約書をコピーして提出する。 取得方法:売買契約時に受領した書類を使用 |
| 戸籍の附票の写しなど住所履歴が確認できる書類 |
売却した不動産に実際に住んでいたことを証明する書類。売却した不動産の住所と、住民票の住所が異なる場合などに提出が求められる。 取得方法:本籍地の市区町村役場で取得 費用:300〜400円程度 |
| 登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本) |
売却した不動産の所在地や所有者を確認するための書類。確定申告で提出を求められる場合がある。 取得方法:法務局またはオンライン申請で取得 費用:480〜600円程度 |
| 仲介手数料などの領収書 |
不動産会社へ支払った仲介手数料など、譲渡費用として計上するための書類。 取得方法:不動産会社から受領 |
なお、会社員の場合でも給与所得の内容を申告書に記載する必要があるため、源泉徴収票の内容を確認しながら申告を進めます。
確定申告の方法
3,000万円特別控除を利用するためには、不動産を売却した翌年に確定申告を行う必要があります。たとえば、2025年に不動産を売却した場合は、2026年2月16日から3月15日までの確定申告期間に申告します。
確定申告では、売却価格や取得費、譲渡費用などをもとに譲渡所得を計算し、そのうえで3,000万円特別控除を適用します。
なお、3,000万円特別控除によって税額が0円になる場合でも、特例を利用するためには確定申告が必要です。また、会社員など給与所得者であっても、この特例を利用する場合は確定申告が必要になります。
共有名義不動産の場合は、共有者それぞれが確定申告を行う必要があります。不動産が1つでも、所有者の人数分だけ申告が必要になるため、共有者全員が忘れずに申告するよう注意しましょう。
確定申告は、次のいずれかの方法で行うことができます。
- 税務署へ書類を持参して提出する
- 税務署へ郵送して提出する
- e-Tax(電子申告)でオンライン申告する
e-Taxを利用する場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に従って売却価格や取得費などを入力することで、譲渡所得の計算や申告書の作成ができます。マイナンバーカードがあれば、自宅から申告を完結することも可能です。
共有名義不動産の売却で「3000万円特別控除」を利用した際の計算例
共有名義不動産を売却した場合、売却によって生じた利益は、共有者の持分割合に応じてそれぞれ計算します。
また、3,000万円特別控除は共有者全体で3,000万円ではなく、共有者1人につき最大3,000万円まで適用されます。そのため、単独名義で売却する場合よりも税負担を抑えられるケースもあります。
ここでは、次のケースを例に3,000万円特別控除の計算例を紹介します。
- 夫が土地1/2・建物1/2、妻が土地1/2・建物1/2の場合
- 夫が土地1/2・建物単独所有、妻が土地1/2の場合
夫が土地1/2・建物1/2、妻が土地1/2・建物1/2の場合
次のようなケースを想定します。
・売却によって得た利益は4,000万円
このケースでは、夫婦が土地と建物をそれぞれ1/2ずつ所有しているため、売却によって生じた利益も2人で半分ずつに分けて計算します。
妻:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
次に、3,000万円特別控除を適用すると、次のような計算になります。
妻:2,000万円 − 3,000万円 = 0円
このケースでは、夫婦それぞれが3,000万円特別控除を利用することで譲渡所得が0円となり、譲渡所得税は課税されません。
夫が土地1/2・建物単独所有、妻が土地1/2の場合
次のようなケースを想定します。
・建物は夫が単独所有
・保有期間は10年
・売却によって得た利益は4,000万円(土地2,000万円、建物2,000万円)
このケースでは、土地と建物で利益の配分方法が異なります。土地は共有名義のため、持分割合に応じて配分されます。一方、建物は夫が単独所有しているため、建物の利益は夫にのみ帰属します。
夫:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
妻:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
【建物の利益】
夫:2,000万円
妻:0円
【合計】
夫:3,000万円
妻:1,000万円
次に、3,000万円特別控除を適用して計算しますただし、3,000万円特別控除は、原則として居住していた家屋の所有者、またはその家屋の敷地を共有している人が対象となります。そのため、このケースでは夫のみが特別控除を適用できます。
妻:1,000万円(控除適用なし)
このように、土地のみを共有し、建物を所有していない共有者は、原則として3,000万円特別控除を利用できません。
そのため、妻の持分に対応する利益には譲渡所得税が課税されます。今回のケースでは不動産の保有期間が10年のため、長期譲渡所得として税率20.315%が適用されます。
計算すると、次のようになります。
つまり、妻には203万1,500円の譲渡所得税が発生します。
このように、共有名義不動産では土地と建物の所有関係によって3,000万円特別控除の適用可否が変わるため、売却前に所有関係を確認しておくことが重要です。
共有名義不動産の売却で「3000万円特別控除」を利用する際の注意点
共有名義不動産の売却で3,000万円特別控除を利用する際は、適用要件だけでなく、他の特例との関係や利用回数にも注意が必要です。
主な注意点は次のとおりです。
- 住宅ローン控除などは併用できない
- 同じ特例は3年以内に繰り返し利用できない
住宅ローン控除などは併用できない
3,000万円特別控除は節税効果が大きい一方で、他の税制優遇との併用が制限されています。
次の特例とは原則として併用できません。
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
- 特定の居住用財産の買換え特例
- 譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
それぞれの特例の詳細については「共有名義不動産の売却で利用できるその他の特例」で解説しますが、特に注意したいのが住宅ローン控除との関係です。
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築した場合に、年末のローン残高に応じて所得税などが控除される制度です。
一方、3,000万円特別控除は不動産の売却時に適用される特例であり、両者は同時に利用できません。
3,000万円特別控除を利用した場合は、売却した年の前年・前々年および翌年・翌々年の計5年間は住宅ローン控除を利用できません。そのため、住み替えのタイミングによってはどちらか一方を選択する必要があります。
売却益が大きい場合は譲渡所得税の負担を直接軽減できる「3,000万円特別控除」、売却益が小さい場合は長期間にわたって控除を受けられる「住宅ローン控除」が有利になることがあります。
売却益の有無や金額、住み替えの有無によって最適な特例は異なるため、事前にシミュレーションしたうえで判断することが重要です。
同じ特例は3年以内に繰り返し利用できない
3,000万円特別控除には、利用回数や期間に制限があるため、短期間で複数の不動産を売却する場合には注意が必要です。
具体的には、売却した年の前年および前々年に、この特例や関連する特例を利用している場合は、今回の売却では適用できません。
実質的に3年に1回しか利用できない制度であるため、短期間で複数の不動産を売却する可能性がある場合は、どの物件で特例を利用するかを事前に検討しておくことが重要です。
なお、共有名義不動産の場合は、共有者ごとに適用可否が判断されるため、それぞれの利用状況も確認しておく必要があります。
共有名義不動産の売却で利用できるその他の特例
不動産売却では、3,000万円特別控除以外にも利用できる特例があります。どの特例を選ぶかによって、最終的な税負担は大きく変わるため、自分の状況に合った制度を選ぶことが重要です。
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
- 譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
- 空き家特例(被相続人居住用財産の3,000万円特別控除)
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、譲渡所得税の税率が軽減される制度です。所有期間が10年を超えているマイホームを売却した場合に利用できます。
譲渡所得税の税率は、通常は所有期間によって次のように区分されます。
- 不動産の所有期間が5年以下:39.63%
- 不動産の所有期間が5年超:20.315%
これに対し、所有期間が10年を超える場合は、次の軽減税率が適用されます。
- 6,000万円以下の部分:14.21%
- 6,000万円超の部分:20.315%
たとえば、売却により1,000万円の利益が出た場合、税額は次のように変わります。
所有期間が5年超:203.15万円
不動産の所有期間が10年超:142.1万円
このように、同じ利益でも所有期間によって税額が大きく異なるため、売却時期の判断は重要です。あと1年で所有期間が10年を超えるようなケースでは、売却時期を調整することで税負担を抑えられる可能性があります。
なお、この特例は3,000万円特別控除と併用できます。まず控除で利益を減らし、残った部分に軽減税率を適用することで、税負担をさらに抑えることが可能です。
参考:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
特定の居住用財産の買換え特例
特定の居住用財産の買換え特例とは、マイホームを売却して新しい住宅に住み替える場合に、売却で出た利益にかかる譲渡所得税の支払いを先送りできる制度です。
売却時点では課税されず、その利益は新しく購入した住宅の取得費に引き継がれます。そのため、新しい住宅を将来売却する際に、その分も含めて課税される仕組みです。
また、この特例は3,000万円特別控除と併用できません。売却した年、その前年および前々年にこの特例を利用している場合も、3,000万円特別控除は適用できないため、どちらか一方を選ぶ必要があります。選び方の目安は次のとおりです。
- 売却益が大きい場合は「3,000万円特別控除」で譲渡所得税を減らす
- 住み替えで手元資金を残したい場合は「買換え特例」で譲渡所得税の支払いを先送りにする
なお、買換え特例は税金が免除される制度ではなく、あくまで支払いを先送りする制度です。将来の売却時に課税される点も踏まえて検討する必要があります。
参考:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例とは、マイホームを売却して損失が出た場合に、その損失を給与所得などと相殺したり、翌年以降に繰り越して控除したりできる制度です。
この特例も、3,000万円特別控除と併用できません。また、売却した年およびその前年・前々年にこの特例を利用している場合も、3,000万円特別控除の適用不可となるため、どちらかを選ぶ必要があります。
選択のポイントは次のとおりです。
- 売却時に利益が出る場合は「3,000万円特別控除」を選ぶ
- 売却時に損失が出る場合は「 譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を選ぶ
特に、住宅ローン残債よりも売却価格が低い場合は、この特例による節税効果が大きくなることがあります。
参考:国税庁|No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
空き家特例(被相続人居住用財産の3,000万円特別控除)
相続した空き家を売却した際に発生した利益から、最大3,000万円を控除できる制度です。これまで解説してきた3,000万円特別控除との違いは、「自分が住んでいた家」ではなく「相続した空き家」が対象になる点です。
主な適用要件は以下のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された住宅であること
- 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 売却が2027年12月31日までに完了していること
相続した実家などを売却する場合は、この特例の適用可否をまず確認するとよいでしょう。特に、兄弟で共有名義となっているケースでは利用されることが多い制度です。
参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
共有名義不動産を売却する際に押さえておきたいポイント
共有名義不動産を売却する際は、節税のための特例に加え、次のようなポイントも押さえておきましょう。
- 不動産全体の売却には「共有者全員の同意」が必要となる
- 売却時に発生する費用・税金を事前に把握しておく
- 売却代金の分配方法を事前に決めておく
- 住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消が必要となる
不動産全体の売却には「共有者全員の同意」が必要となる
共有名義不動産は、複数人で1つの不動産を所有している状態です。単独名義のように、1人の意思で売却の手続きを進めることはできません。不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
1人でも反対する共有者がいる場合、不動産全体の売却はできません。実務でも、売却の方向で話がまとまっていたにもかかわらず、契約直前で共有者の意見が変わり、売却が進まなくなるケースは少なくありません。
このような事態を避けるためにも、売却を検討している場合は、まず共有者間で十分に話し合い、売却条件やスケジュールについて合意をとることが重要です。
共有名義不動産の売却については、次の記事も参考にしてみてください。
同意を得られない場合は「共有持分のみの売却」も検討する
他の共有者の同意が得られず、不動産全体の売却が難しい場合は、自分の共有持分のみを売却する方法もあります。
共有持分は各共有者の単独の財産であるため、他の共有者の同意がなくても売却が可能です。
ただし、共有持分は不動産の権利の一部でしかないため、一般の個人が購入するケースはほとんどありません。現実的には、共有持分を専門に扱う買取業者への売却が中心となります。
買取業者であれば共有持分を直接買い取ってくれるため、業者によっては数日から1週間程度で現金化できる可能性もあります。弊社でも共有持分の買取査定・相談を無料で行っているため、お気軽にご相談ください。
共有持分の売却や買取業者に売るメリットについては、次の記事でも詳しく解説しています。
売却時に発生する費用・税金を事前に把握しておく
ここまで解説してきた3,000万円特別控除は、売却時に発生する税金の負担を軽減する制度です。しかし、不動産売却ではそれ以外にもさまざまな費用が発生します。
たとえば、売買契約時の印紙税、仲介業者を利用した場合の仲介手数料、登記手続きを依頼する場合の司法書士報酬などが挙げられます。
これらの費用を把握せずに売却を進めると、「思ったより手元に残らない」といった事態になりかねません。売却を検討している段階で、必要な費用と税金を整理し、最終的にいくら手元に残るのかをシミュレーションしておくことが重要です。
売却時の費用については、「共有名義不動産の売却で発生する可能性のある費用・税金」で詳しく解説します。
売却代金の分配方法を事前に決めておく
共有名義不動産では、売却後の代金をどのように分配するかも重要なポイントです。原則としては持分割合に応じて分配しますが、実務では次のような調整が行われるケースもあります。
- 売却手続きを主導した共有者に一定の配慮をする
- これまで管理や維持費を負担していた共有者に多めに配分する
- 固定資産税や修繕費などの立替分を精算する
不動産の現場では、売却代金の分配方法を事前に話し合わずに売却を進めたことで、トラブルや売却の長期化につながるケースも少なくありません。共有者間で事前に合意内容を整理しておくことが重要です。
住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消が必要となる
不動産を売却する際は、抵当権を抹消する必要があります。抵当権とは、住宅ローンを借りる際に購入する土地や建物を担保にするために、金融機関が設定する権利です。
抵当権は、ローンを完済しても自動的に消えるものではなく、金融機関での手続きと登記が必要です。そのため、売却時には金融機関との調整も含めて進める必要があります。
また、住宅ローンが残っている場合は、売却代金でローンを完済できるかどうかも事前に確認しておくことが重要です。問題がない場合は、売却代金で住宅ローンを完済し、同時に抵当権を抹消する流れになります。
売却価格がローン残債を下回る場合は、自己資金で不足分を補うほか、任意売却を検討するなどの対応が必要になります。
共有名義不動産の売却で発生する可能性のある費用・税金
共有名義不動産の売却では、税金だけでなくさまざまな費用が発生します。どの費用が必要になるかはケースによって異なりますが、手元に残る金額を正確に把握するためにも、事前に全体像を押さえておくことが重要です。
主な費用・税金は次のとおりです。
- 印紙税
- 登録免許税(抵当権抹消登記)
- 譲渡所得税
- 固定資産税・都市計画税の清算
- 仲介手数料
- 司法書士報酬
- 解体・測量・清掃・リフォームなどの費用
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書を作成する際に発生する税金です。契約金額に応じた収入印紙を貼付して納めます。
令和9年3月31日までは軽減措置が適用され、主な税額は次のとおりです。
| 売却金額 | 税額 |
|---|---|
| 100万円超500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
たとえば、売却価格が3,000万円の場合は、1万円の印紙税が必要となります。
参照:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
登録免許税(抵当権抹消登記)
登録免許税とは、登記手続きの際に納める税金です。不動産を売却する際には、登記簿に記載されている抵当権を削除する「抵当権抹消登記」を行う必要があり、このときに登録免許税が発生します。
抵当権抹消登記の登録免許税は、1棟・1筆につき1,000円です。土地と建物それぞれに抵当権が設定されている場合は、合計2,000円となります。
なお、不動産の名義を買主に変更する「所有権移転登記」にも登録免許税がかかり、原則として「不動産の評価額 × 2%」で計算されます。たとえば、評価額が3,000万円の場合は、60万円の登録免許税が発生します。
ただし、売買の場合はこの登録免許税を買主が負担するのが一般的であるため、売主側で負担するケースはほとんどありません。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却して利益が出た場合に課される税金です。これまで解説してきた3,000万円特別控除は、この譲渡所得税の負担を軽減します。
税率は所有期間によって異なり、長期間保有しているほど低くなります。また、所有期間が10年を超えているマイホームであれば、軽減税率の特例を利用でき、税率を大きく下げられます。
- 不動産の所有期間が5年以下:39.63%
- 不動産の所有期間が5年超:20.315%
- 不動産の所有期間が10年超(6,000万円以下の部分):14.21%
- 不動産の所有期間が10年超(6,000万円超の部分):20.315%
譲渡所得税が発生するかは、次の式で確認できます。
取得費には購入代金や建築費、改良費などが含まれ、相続の場合は被相続人の取得費を引き継ぎます。譲渡費用には仲介手数料や測量費などが含まれます。
この計算で譲渡所得がゼロもしくはマイナスであれば税金はかかりません。また、プラスになった場合も、3,000万円特別控除を利用することで税負担を軽減できます。
また、共有名義不動産に関しては、譲渡所得を持分割合で分け、それぞれが控除を適用できるため、結果として非課税となるケースも多くみられます。
共有名義不動産の売却でかかる税金については、次の記事も参考にしてみてください。
固定資産税・都市計画税の清算
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に課される税金です。
自治体によって異なりますが、通常は次のような税率が適用されます。
- 固定資産税:原則1.4%
- 都市計画税:上限0.3%
固定資産税や都市計画税については、売却後もその年の納税義務は売主にあります。ただし、実務では引渡日を基準に日割り計算し、買主と清算するのが一般的です。
共有名義不動産の場合は、共有者間での負担方法も整理しておく必要があります。共有者のうちの1人が代表者として納税通知書を受け取りますが、代表者だけでなく共有者全員に納税義務があります。一般的には、持分割合に応じて負担します。
共有名義不動産の固定資産税の負担については、次の記事も参考にしてみてください。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に仲介を依頼し、売買契約が成立した際に支払う費用です。一般的には、売買契約の締結時に半額、物件の引き渡し時に残りの半額を支払います。
仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、次の計算式で求められます。
たとえば、2,000万円で売却した場合、仲介手数料の上限額は72万6,000円となります。
なお、2024年7月1日以降は、800万円以下の低廉な空家等について、あらかじめ合意がある場合には、原則の上限を超えて税込33万円まで仲介手数料を受領できる特例があります。そのため、売却価格が低い場合でも、必ずしも仲介手数料を抑えられるとは限りません。
また、買取業者に売却する際は、買取業者と直接売買契約を結ぶため、仲介手数料は発生しません。
仲介業者と買取業者の違いについては、次の記事も参考にしてみてください。
司法書士報酬
登記に関する手続きは自分で行うことも可能ですが、司法書士に依頼することでスムーズに進められます。
先述した抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合は、1件あたり2万〜4万円程度が目安です。所有権移転登記については買主が負担するのが一般的ですが、5万〜10万円程度が相場とされています。
ただし、費用は司法書士事務所によって異なります。依頼する際は事前に見積もりを取得し、内容や費用に納得したうえで依頼することが重要です。
解体・測量・清掃・リフォームなどの費用
不動産の売却にあたり、建物の解体や測量、清掃、リフォームなどを行う場合は、それぞれに応じた費用が発生します。
主な費用の目安は次のとおりです。
- 建物の解体費用:木造住宅で1坪あたり約4万~7万円程度が目安
- 測量費用:確定測量で40万~90万円程度
- 清掃費用:3LDKで5万~10万円程度
- リフォーム費用:水回り全体100万~300万円程度、内装全体50万~200万程度、外壁や屋根の補修・塗装100万~200万円程度
これらの費用は物件の状態や立地、工事内容によって大きく変動します。そのため、あくまで目安として捉え、実際には複数の業者から見積もりを取得して比較検討することが重要です。
まとめ
共有名義不動産の売却でも、要件を満たせば3,000万円特別控除は利用でき、譲渡所得税の負担を抑えられます。単独名義とは異なる点は、譲渡所得を持分割合で分け、控除が共有者ごとに適用される点です。
ただし、適用要件が定められており、住宅ローン控除など他の特例との併用が制限される点には注意が必要です。
また、共有名義不動産の売却では、共有者全員の同意や売却代金の分配方法、各種費用の把握など、事前に整理しておくべきポイントが多くあります。これらを十分に検討せずに進めると売却の手続きが進まず、トラブルにつながる可能性もあります。
そのため、売却を検討する際は、特例の適用可否だけでなく、最終的に手元に残る金額や共有者間の合意状況まで含めて、全体を見据えて判断することが重要です。
共有者間での調整が難しい場合や、どの特例を選ぶべきか迷う場合は、早めに不動産会社や専門家へ相談することで、スムーズな売却につながります。
よくある質問
共有名義不動産の売却で贈与税がかかることはありますか?
共有名義不動産の売却では、通常の不動産売却であれば贈与税がかかることはほとんどありません。一般的な売却では「譲渡所得税」が課税対象となり、贈与税の問題は生じないためです。
ただし、親族間で不動産を売買する場合などは注意が必要です。次のようなケースでは、税務上「みなし贈与」と判断される可能性があります。
- 親族間の不動産売買で、時価よりも著しく低い価格で売却した場合
- 売買という形式でも、実質的に財産を移転していると判断される場合
このような場合、時価との差額が贈与とみなされ、その部分に贈与税が課税されることがあります。
贈与税は、贈与を受けた金額から基礎控除110万円を差し引いた金額に対して課税されます。税率は10%〜55%の累進課税です。
たとえば、時価3,000万円の不動産を1,000万円で売却した場合、差額の2,000万円が贈与とみなされる可能性があります。この場合、2,000万円から基礎控除110万円を差し引いた金額が贈与税の課税対象となります。
課税額:2,000万円 - 110万円 = 1890万円
贈与税:1890万円 × 45% -265万円 = 585.5万円
⇒贈与税は585万5,000円
不動産の実務では、親族間売買では税務上のトラブルを避けるため、不動産会社の査定や不動産鑑定などを参考に、時価に近い価格で売却するケースが多いです。
共有名義不動産の売却を親族間で行う場合は、売買価格の設定に注意し、必要に応じて税理士などの専門家へ相談することも検討するとよいでしょう。
住んでいない家は「3,000万円特別控除」が使えませんか?
現在は住んでいない家であっても、一定の条件を満たせば「3,000万円特別控除」を利用できます。
具体的には、「住まなくなった日から3年目の12月31日まで」に売却した場合は、居住用財産として3,000万円特別控除の対象になる可能性があります。
たとえば、2024年6月に転居した場合は、2027年12月31日までに売却すれば、控除の適用を受けられる可能性があります。
ただし、賃貸に出している場合や投資用不動産として利用している場合などは適用できないこともあるため、個別の状況によって判断される点には注意が必要です。
建物を壊して土地のみの場合は「3,000万円特別控除」が使えませんか?
建物を解体して土地のみを売却する場合でも、一定の条件を満たせば3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
この特例は「居住用財産」を売却した場合に適用されるため、もともと自宅として利用していた土地であれば、建物を取り壊した後でも対象になることがあります。
一般的には、次のような条件を満たす必要があります。
- 自宅として使用していた建物を取り壊している
- 建物を取り壊してから1年以内に売買契約を結んでいる
- 住まなくなってから3年目の12月31日までに売却している
- 取り壊し後、土地を駐車場など別用途で利用していない
ただし、解体後の利用状況や売却時期によって適用可否が変わるため、売却前に税理士や不動産会社へ確認しておくと安心です。

