マンションの共有持分割合の決め方をケースごとに徹底解説!
マンションを購入、あるいは相続する場合に、共有関係が生じるケースがあります。
マンションの共有持分は原則として、購入の場合はそれぞれの出資割合に応じて、相続の場合は、それぞれの相続割合に応じて決まります。
ただし、住宅ローンを利用して購入した場合は、以下のようにローンの種類によって持分割合の決め方が異なるため注意が必要です。
ローン種類 | 共有持分割合の決め方 |
---|---|
連帯保証型ローン | ・夫婦の一方が債務者、一方が連帯保証人になってローンを組む ・基本的に債務者の単独名義となるため、持分割合は決めなくてよい |
連帯債務型ローン | ・夫婦の一方が主債務者、一方が連帯債務者になってローンを組む ・夫婦の収入割合に応じて共有持分割合を決める |
ペアローン | ・夫婦のそれぞれが独立した2本のローンを組む ・出資割合に応じて共有持分割合を決める |
なお、親から資金援助を受けた場合は、援助の方法に応じて共有持分割合を検討する必要があります。
相続においては、遺言書があればそれに従い、なければ遺産分割協議でマンションの持分割合を決めます。
また、購入でも相続でも持分割合は適当に決めてはいけません。
なぜなら、共有者間で贈与があったとして贈与税がかかったり、援助してくれた親にも税金がかかったり、維持費の負担割合でトラブルになるリスクがあるためです。
持分割合の決め方や売却するかどうかで迷ったときは税理士や司法書士、買取業者などの専門家に相談しましょう。
この記事では、購入時、相続時の共有持分の決め方やリスクについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
マンションの共有持分割合とは?
ひとつの不動産を複数人で所有することを共有といい、それぞれが有する所有権割合のことを共有持分割合といいます。
つまりマンションの共有持分割合とは、共有者それぞれが持つマンションの所有権の割合のことです。
夫婦や親子など複数人で資金を出し合ってマンションを購入した場合、それぞれの共有持分割合を決めることになります。
次の項目から、一般的な共有持分割合の決め方を紹介します。
一般的には出資金額に応じて割合を計算する
マンションの共有持分は、一般的に出資割合に応じて計算するものです。
たとえば4,000万円のマンションを購入するとします。このとき妻が頭金500万円を現金で準備し、残り3,500万円を夫が住宅ローンで返済する場合、持分は夫:7/8(3,500万円÷4,000万円)、妻:1/8(500万円÷4,000万円)となります。
ただし、出資割合に応じて決めるとしても金額によってキリが悪くなる場合もあります。
たとえば4,000万円のマンション購入資金に対し、夫が2,050万円、妻が1,950万円出資する場合などです。
このような場合、それぞれの持分をキリのよい1/2ずつに調整することも可能です。
その場合、妻の出資割合1,950万円に対して、持分が1/2(2,000万円)となるため、実際の出資額と差が出ます。その差は夫から妻への贈与となり、贈与税の対象です。
ただし、贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの贈与財産に対して課税されますが、110万円の基礎控除額があります。そのため、基礎控除額の範囲内で調整できれば実質贈与税はかかりません。
このように共有持分割合は一般的に出資金額に応じて決めるのですが、住宅ローンの種類や親からの資金援助の有無などにより、決め方が異なる場合があります。次の項目では、住宅ローンや資金援助の方法に応じた共有持分割合の決め方を具体的に解説します。
参照:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
マンション購入時の共有持分割合の決め方
住宅ローンを複数で組む場合の方法として、「収入合算」と「ペアローン」があります。
収入合算は夫婦など2人の収入を合算して1本の住宅ローンを組む方法で、ペアローンはそれぞれの収入で2本のローンを組む方法です。
そして、収入合算のなかには「連帯保証型」と「連帯債務型」があり、それぞれで共有持分割合の決め方が異なります。
- 連帯保証型ローンの場合:基本的には持分割合を決めなくてよい
- 連帯債務型ローンの場合:収入割合に応じて持分割合を決める
- ペアローンの場合:出資割合に応じて持分割合を決める
- 親からの資金援助がある場合:援助の方法によって対応が異なる
ここでは、住宅ローンの種類別の共有持分割合の決め方や、親から資金援助を受けた際の対応方法について詳しく解説します。
連帯保証型ローンの場合:基本的には持分割合を決めなくてよい
連帯保証型は、住宅ローン契約者となる債務者の収入に配偶者などが連帯保証人となって収入を合算する方法です。連帯保証人は、債務者が返済できなくなった場合に返済義務を負います。
合算できる収入は金融機関によって異なりますが、2人の収入を合わせることでより多くの借り入れがしやすくなることが特徴です。
連帯保証型の場合、住宅ローン契約者が主債務者となり、収入合算者が連帯保証人となるため、ローンの名義は単独名義となります。
そのため、連帯保証型ローンの場合は基本的に共有持分割合を決めなくても良いとされています。
ただし、連帯保証人が頭金などを出資した場合は共有名義となるため、共有持分割合を決めなくてはなりません。
たとえば住宅購入資金として、マンション価格が4,600万円、諸費用が400万円、合計5,000万円が必要だとします。
住宅ローン契約者は夫で、配偶者を連帯保証人として収入合算する場合、妻が諸費用や頭金として1,000万円を自分の貯蓄から出資したとします。
この場合、住宅ローンは夫の単独名義ですが、マンションは夫と妻の共有名義となり、それぞれの持分は夫が4/5(4,000万円÷5,000万円)、妻が1/5(1,000万円÷5,000万円)となります。
住宅ローンを組む本人以外が頭金などを出資する場合に限り、共有持分割合を決める必要があると認識しておきましょう。
連帯債務型ローンの場合:収入割合に応じて持分割合を決める
連帯債務型ローンは、1つのローンを主債務者と連帯債務者で借りる方法です。
連帯債務者も主債務者とともにローン全額について同じ返済義務を負います。たとえば住宅金融支援機構のフラット35では、連帯債務者の条件として次の条件が設けられています。
- 住宅ローン申込者の親、子、配偶者等
- 申込者と同居している
- 申込時の年齢が70歳未満
- 連帯債務者となるのは1名のみ
連帯債務型の場合、それぞれがローンの返済義務があるため、住宅についてもそれぞれの持分があります。
実際に支払う金額で持分を設定することが原則ですが、夫婦共通の家計から返済する場合は明確に区別が難しい場合もあります。
そのため、それぞれの収入割合に応じて持分を設定するのが一般的です。
たとえば年収600万円の夫と年収400万円の妻であれば、夫:3/5(600万÷1000万円)、妻:2/5(400万÷1000万)となります。
ペアローンの場合:出資割合に応じて持分割合を決める
ペアローンは、1つの住宅の借り入れについて、それぞれが独立した2本のローンを組む方法です。
それぞれが単独名義で住宅ローンを組むと同時に、一般的にはお互いにもう一方の連帯保証人となります。
それぞれの年収に応じて借入可能金額は変わりますが、2人の収入を合算して住宅を購入できるため、1人で組むよりも借入金額を増やすことが可能です。
ペアローンの場合も、原則として出資割合に応じて共有持分を決めます。
たとえば住宅購入資金5,000万円に対して、夫が諸費用分300万円を出資したうえで2,700万円の住宅ローンを組み、妻が2,000万円の住宅ローンを組んだ場合の持分は次のとおりです。
- 夫:3/5((300万円+2,700万円)÷5,000万円))
- 妻:2/5(2,000万円÷5,000万円)
頭金と借入金額の割合に応じて、共有持分割合も決めると認識しておきましょう。
親からの資金援助がある場合:援助の方法によって対応が異なる
夫婦2人の収入だけでなく、それぞれの親から資金援助を受けて住宅を購入する場合は、援助の方法によって対応が異なります。
援助の方法として、「贈与」「借入」「出資」があります。
- 贈与してもらう場合は自己負担額として計上する
- 親からお金を借り入れて購入する場合
- 両方の親から出資してもらう場合
次の項目から、援助方法ごとの共有持分割合の決め方について解説します。
贈与してもらう場合は自己負担額として計上する
親から住宅資金の一部の贈与を受ける場合、その資金は、贈与を受けた人(受贈者)の出資となります。
たとえば住宅購入資金4,000万円に対して、親の贈与を含めて次のように資金を準備するとします。
- 夫の親からの贈与:500万円
- 夫の出資割合:2,500万円
- 妻の出資割合:1,000万円
この場合、親からの500万円の贈与は夫の出資分となるため、夫の出資分は3,000万円です。
夫婦それぞれの共有持分は、夫:3/4(3,000万円÷4,000万円)、妻:1/4(1,000万円÷4,000万円)となります。
注意しなければならないのは、親子間の住宅購入資金も贈与税の対象となる点です。ただし、両親や祖父母など直系尊属から住宅購入資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすことで非課税の特例を適用できます。
一定の省エネ性能を満たす住宅を購入する場合は1,000万円まで、それ以外の住宅を購入する場合は500万円まで親からの住宅資金の贈与は非課税となります。
贈与税には110万円の基礎控除額があるため、1,100万円もしくは610万円まで非課税にすることが可能です。
参照:国税庁「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
親からお金を借り入れて購入する場合
贈与ではなく親から住宅資金を借り入れして購入する場合、借入資金についても出資額に含まれます。
たとえば夫の親から1,000万円を借り入れ、夫自身が2,500万円の住宅ローンを組む場合、夫の出資額は3,500万円となります。
この場合は夫の単独名義でマンションを購入するため、共有持分割合を決めなくても問題ありません。
ただし、親子間の借り入れを贈与と判断されないためには注意すべきポイントがいくつかあります。
具体的には、以下のようなことをしてしまうと借入であっても実質的に贈与とみなされる恐れがあるため注意が必要です。
- 収入に対して返済不能と思われる金額を借りる
- 無利子あるいは利率が著しく低い
- 返済期限がないあるいは返済期間が長すぎる
- 借用書がない
金利については、借入時点の金融機関の住宅ローン金利を目安に設定すれば問題ありません。
また、作成する借用書(金銭消費貸借契約書)には、次のことをしっかりと記載しておくとよいでしょう。
- 契約書の作成日
- 貸主、借主の氏名・住所
- 借入金額
- 返済方法
- 返済期日
- 利率
- 期限の利益喪失の定め
- 貸主、借主の押印
期限の利益喪失とは、返済を一定期間怠った場合などに「返済期限までにお金を返せばよい」という債務者の権利が失われることです。
つまり、返済を一定期間怠ると債権者は債務者に対し、残債を一括返済するように請求できるということになります。
記載が必要なものではありませんが、のちのちのトラブルを防止するためにも、期限の利益喪失に関する条項を入れておくと安心です。
両方の親から出資してもらう場合
住宅購入資金を親から出資してもらって共同で購入する場合、出資した額に応じて親も共有持分を取得します。つまり、夫婦以外にもマンションの共有者が増えることになります。
この場合、贈与にはあたらないため贈与税の問題は生じませんし、借用書を作成する必要もありません。
ただし、共有者が増えることは、のちのちマンションを売却あるいは賃貸などで活用する場合に支障が出る可能性が高まります。
たとえば転勤などでマンションに住まなくなった場合に、マンションを売却すべきか賃貸すべきかで意見が分かれると揉める可能性があります。
共有不動産については、売却などの処分行為をするには他の共有者全員の同意が必要です。また、賃貸などの管理行為をするには、持分の過半数以上の同意が必要です。
つまり、共有者が増えるほど、マンションを自由に売却したり、賃貸することができない可能性が高くなるということです。
また、出資してもらった親が亡くなった場合、その配偶者や子どもに相続権があるため、さらに共有者が増える可能性もあります。
そうなれば、ますます権利関係は複雑となり、トラブルにつながりやすくなるでしょう。
そのため、購入時に親から資金援助を受ける場合、できるだけ共有者を増やさないことも考えることが大切です。
マンションを相続する際の共有持分割合の決め方
購入ではなくマンションを相続する場合、共有持分割合の決め方は遺言の有無によって異なります。
- 遺言がある場合は遺言の内容に従って割合を決める
- 遺言がない場合の割合の決め方
遺言がある場合とない場合、それぞれのケースについて解説します。
遺言がある場合は遺言の内容に従って割合を決める
亡くなった人(以下「被相続人」)が遺言を遺している場合、その内容に従って遺産分割を進めます。遺留分は、法律上、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた最低限の相続分です(民法1042条以下)。この権利は遺言書でも侵害することはできません。
たとえば相続財産のほとんどが実家のマンションのみで、相続人が配偶者と2人の子どもだとします。マンションを配偶者である妻1人に相続させるという遺言があった場合、他の相続人である子どもの遺留分を侵害している可能性があります。
この場合、遺留分を侵害された法定相続人は、相続を受けた人に対して遺留分の額に相当する金銭の支払いを請求することが可能です(遺留分侵害請求:民法1046条第1項)。
遺言書を作成する場合は、相続人の遺留分を考慮して作成することが必要です。
遺留分についての詳細情報は、こちらの記事を参照してください。
相続で遺留分がもらえない場合はどうする?遺産相続の基礎知識や対処法
遺言がない場合の割合の決め方
遺言書がない場合は、遺産分割協議もしくは法定相続分に従ってそれぞれの持分を決めます。
- 遺産分割協議で話し合って決める
- 法定相続分に従って決める
遺産分割協議で話し合って決める
遺言書が残されていないときには、相続人全員で遺産分割協議をおこない、話し合いによって「誰が」「どの財産を相続するのか」を決定します。
遺産分割協議で相続人全員の合意さえ得られれば、どのような割合で共有持分を分けても問題はないとされています。
また、必ずしも共有持分で相続しなければならないという決まりもありません。不動産を1人の相続人が取得して、その代わりに他の相続人が預貯金や有価証券などの財産を多めに取得する、という分け方もあります。
なお、遺言書がある場合でも、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる分け方も可能です。
遺産分割協議の内容がまとまったら遺産分割協議書を作成し、すべての相続人が署名・捺印することでのちのちのトラブルを防止します。
マンションの共有持分割合については、遺産分割協議で合意した内容に従って分割し、登記手続きをおこないましょう。
法定相続分に従って決める
相続が発生した際には、法定相続分に従って遺産の相続割合を決めることが一般的です。また、遺産分割協議がまとまらず、法定相続分に従って分割することもあります。
法定相続分は、民法で定められた法定相続人の遺産分割分です(民法900条以下)。
配偶者は常に相続人となり、その他の法定相続人の相続順位と法定相続分は次のように定められています。
相続順位 | 法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|---|
第1順位 | 子どももしくは代襲相続人 | 配偶者:1/2 子ども:1/2 |
第2順位 | 両親もしくは祖父母(直系尊属) | 配偶者:2/3 直系尊属:1/3 |
第3順位 | 兄弟姉妹もしくは代襲相続人 | 配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4 |
第1順位の相続人がいない場合、第2順位が相続人となり、第1、第2順位がいなければ第3順位が相続人となります。
また、子どもや兄弟姉妹が複数いる場合、それぞれの持分は均等に分割されます。
たとえば配偶者と子ども3人が相続人の場合、法定相続分は配偶者1/2、子どもはそれぞれ1/2×1/3=1/6ずつです。
なお、子どもと兄弟姉妹については代襲相続が認められています。相続発生時点で、相続人となる子どもや兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子ども(被相続人の孫や甥など)が代わりに代襲相続人になります。
法定相続分について詳しい情報が知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
法定相続分とは?ケース別で見る相続の割合や計算方法をわかりやすく解説
共有持分の所有者に認められている法律行為
共有持分の所有者に認められている法律行為は、持分割合によって異なります。
- 共有持分をすべて所有:マンションの売却
- 共有持分の過半数を所有:リフォームや賃貸借契約
- 共有持分の半数以下を所有:持分売却や保存行為
次の項目から、共有持分割合ごとに認められている法律行為について見ていきましょう。
共有持分をすべて所有:マンションの売却
共有持分をすべて所有していれば、マンションの売却などの「変更行為」が可能です。
変更行為とは、不動産の性質や用途そのものを変更する行為のことであり、売却や解体、抵当権の設定などが該当します。
たとえば連帯保証型の住宅ローンを夫の単独名義で組み、妻が連帯保証人になっているとします。この場合、共有持分はすべて夫が持つことになるため、夫が「マンションを売却したい」と希望すれば妻の合意なく手続きを進めることが可能です。
一方、妻が頭金などを出資して共有持分を少しでも所有していれば、両者の合意なしに売却をすることはできません。
共有持分をすべて所有していると、マンションの売却などすべての権利を持つことになると認識しておきましょう。
共有持分の過半数を所有:リフォームや賃貸借契約
共有持分の過半数を所有していると、リフォームや賃貸借契約などの「軽微な変更行為」や「管理行為」などが可能です。
リフォームは不動産の著しい性質変化を伴わない軽微な変更行為、賃貸借契約は管理行為に該当します。
たとえば3,000万円のマンションを購入する際に、夫が2,000万円、妻が1,000万円でペアローンを組んだとします。
この場合、共有持分割合は夫が2/3、妻が1/3であるため、夫が過半数の共有持分を所有することになり、リフォームや賃貸借契約を妻の合意なく進めることができます。
なお、共有持分割合が夫婦で1/2ずつの場合は過半数に満たないため、リフォームや賃貸借契約をする際には両者の合意が必要です。
共有持分の半数以下を所有:持分売却や保存行為
共有持分割合が半数以下の場合、変更行為や管理行為を自分の意思だけでおこなうことはできません。
他の共有者の合意なしで認められている法律行為は、自分の持分売却や不動産の現状維持を目的とした「保存行為」です。
自分が所有している共有持分に関しては、他の共有者に合意を得なくても第三者に売却することが可能です。
保存行為は、壊れたり古くなっていたりする部分を修繕する行為や、不法占拠者に対する明け渡し請求などが該当します。
ただし、大規模な修繕になると変更行為とみなされる恐れがあるため、あくまでも現状維持をするための小規模な修繕のみ可能と認識しておきましょう。
マンションの共有持分割合を適当に決めてしまう3つのリスク
マンションの共有持分は、将来の財産の活用なども含めて慎重に決める必要があります。ここでは共有持分を適当に決めることで生じるリスクについて解説します。
- 贈与税が発生する可能性がある
- マンションの売却に合意を得られない可能性がある
- 持分割合が多い共有者が勝手に賃貸に出すことができる
贈与税が発生する可能性がある
マンションの購入時に出資割合と異なる共有持分を設定すると贈与税の問題が生じるリスクがあります。
たとえば住宅購入資金4,000万円のうち、夫が3,000万円、妻が1,000万円を出資したとします。
この場合、本来の共有持分割合は夫が3/4、妻が1/4となりますが、共有持分をそれぞれ1/2ずつに設定すると贈与税が発生する恐れがあります。妻の共有持分に相当する2,000万円と出資金1,000万円に差があり、夫から妻へ贈与をしたとみなされるためです。
相続の遺産分割協議でマンションの共有持分を決める場合は、このような問題は生じませんが、夫婦2人で購入する場合は、出資割合に応じた共有持分に設定することが大切です。
マンションの売却に合意を得られない可能性がある
共有持分の所有者が増えると、マンションを売却したくなったときに全員から合意を得られない可能性があります。
たとえば夫婦2人が引っ越しなどの理由により、マンションを売却して手放すことを希望しているとします。
マンションを売却する際には共有者全員の合意が必要なので、共有持分の所有者が夫婦2人のみなら問題ありません。しかし、親も共有者になっている場合は「住まないなら譲ってほしい」などの理由で売却に反対される恐れがあります。
共有者のうち1人でも反対する人がいれば、マンションの売却はできません。
購入や相続の際には「売却には共有者全員の合意が必要」ということを踏まえたうえで、共有持分割合を決めましょう。
持分割合が多い共有者が勝手に賃貸に出すことができる
共有持分が多い共有者は、他の共有者の同意なく賃貸することも可能です。
たとえば3,000万円のマンションを購入するときに、それぞれ2,000万円と1,000万円を出資した場合、2,000万円を出資した共有者はマンションの過半数の共有持分を有することになります。
共有持分の過半数を有する共有者は、マンションを自らの意思だけで賃貸することも可能です。
共有物は、共有者それぞれが持分に応じて使用する権利が認められますが、賃貸することで実質的に使用することは難しくなるでしょう。
共有持分の設定の仕方によってマンションに関する権利が異なる点を踏まえて、持分を設定することが大切です。
現在所有しているマンションの共有持分割合を調べる3つの方法
ここでは、所有しているマンションの共有持分を調べる方法について解説します。
- 登記事項証明書を取得して調べる
- 固定資産評価証明書を取得して調べる
- 固定資産税納税通知書を確認する
登記事項証明書を取得して調べる
1つめは、登記事項証明書を取得して調べる方法です。
法務局に備え付けられている登記簿には、不動産の所在地や床面積、構造などの基本情報のほか権利関係が記載されています。
共有持分についても、所有者の住所、氏名とともに、持分割合について「持分2分の1」などで記載されており確認できます。
登記簿の情報は、誰でも登記事項証明書を取得して見ることができ、方法としては主に次の3つがあります。
- 法務局の窓口で申請して取得
- オンラインで請求し、郵送もしくは窓口で取得
- オンラインで登記事項証明書を確認
最寄りの法務局に行き、交付申請書に必要事項を記載して申請する際には、申請手数料(600円)を収入印紙を購入して支払います。
平日の8時30分から17時15分の取扱時間中に行く必要がありますが、10~15分程度で取得できるため、近くに法務局や申請可能な出張所がある場合におすすめの方法です。
法務局に行く時間がないときは、オンラインで請求して郵送または窓口で書類を取得するか、オンライン上で書類内容を確認する方法が向いています。
オンライン請求の場合、「登記・供託オンライン申請システム」サイトから手続きをおこないましょう。手数料は、郵送で受け取る場合500円、最寄りの法務局で受け取る場合480円です。
オンライン上で登記事項証明書を確認する場合、「登記情報提供サービス」サイトから、請求した時点の登記情報をパソコン等に表示し、PDFで保存ができます。
ただし、書面で取得する場合と異なり、証明文や公印等はないため、ダウンロードした書類は証明書として活用できません。
確認するのみなら問題ありませんが、証明書として使用する場合は、窓口かオンライン請求で書類を取得しましょう。
参照:登記情報提供サービス
固定資産評価証明書を取得して調べる
共有持分は、各市区町村(東京都は都)に備え付けられている「固定資産税評価証明書」を取得することでも確認できます。
固定資産証明書は、土地や建物などの固定資産評価額を証明する書類です。所有者の情報として、共有持分の割合についても記載されるため確認できます。
ただし、固定資産評価証明書を取得できるのは、原則、所有者本人の関係者に限られます。関係者とは、所有者と同居する家族や相続人などです。
発行手数料は自治体によって異なる場合もありますが、200円〜400円程度になります。
固定資産税納税通知書を確認する
共有持分を確認するもっとも手軽な方法は、固定資産税納税通知書を確認することです。
固定資産税納税通知書は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に4〜6月頃に各自治体から郵送されます。
その年度分の固定資産税額や固定資産税評価額のほか、所有者の情報が記載されているため、共有持分を確認することが可能です。
ただし、固定資産税納税通知書は、共有者の代表1人に送付されることが一般的です。確認が難しい場合は、登記事項証明書を取得するなど他の方法で確認しましょう。
マンションを共有名義にする場合によくある質問
マンションを共有名義にするときによくある質問について解説します。
- あとから持分割合は変更可能?<
- 共有持分だけ売却することは可能?
- マンションの専有部分と共用部分は別で売却できる?
あとから持分割合は変更可能?
共有持分割合を誤って登記してしまった場合、持分の更正登記を申請すれば、あとから割合を変更することも可能です。
所有権の持分更正登記は、一定の条件のもと、現在登記されている所有者の持分のみを更正する場合に認められる手続きです。
たとえば住宅購入資金4,000万円のうち、夫が住宅ローンを組み3,200万円を出資し、妻が800万円を自己資金から出資した場合、出資割合から共有持分を設定すると本来夫:4/5、妻:1/5となるはずです。
しかし、夫婦それぞれの持分を同じにするため共有持分を1/2ずつで登記していると、贈与税の問題が生じるほか、住宅ローン控除の対象となる借入金額が少なくなる可能性があります。
このような場合は誤りがあったと認められ、持分の更正登記による持分割合の変更が可能です。
共有持分だけ売却することは可能?
共有持分だけを売却することは可能です。
不動産全体を売却するには、共有者すべての同意が必要ですが、共有持分は他の共有者の同意や連絡も必要ありません。
ただし、共有持分の売却は、不動産全部を売却する場合より売却は難しくなります。マンションの権利の一部だけを購入することになるため、利用したり売却したりなどが自由に行えないため、購入する人が少なくなるためです。
また、他の共有者への連絡も必要ありませんが、売却すると他の共有者は自分が知らない第三者と共有関係になることからトラブルとなる可能性もあります。
そのため、共有持分については、共有持分専門の買取業者に売却する方法がおすすめです。専門の業者であれば、共有持分の取扱い実績も豊富でさまざまなノウハウをもっていますので、トラブルになりにくいといえるでしょう。
また、買取の場合は仲介で売却する場合と比べ、買取金額で合意できれば現金化までのスピードが早いというメリットがあります。
マンションの専有部分と共用部分は別で売却できる?
マンションの専有部分と共用部分を別々に売却することはできません。
マンションの場合、自分が単独で所有し専用で使用する専有部分と他の区分所有者と共有する共用部分があります。
一般的に、専有部分は自分の住居部分を指し、共用部分は、それ以外のエントランスや駐車場、エレベーター、バルコニーなどを指します。
マンションの場合、専有部分の所有権のほか、共用部分については、管理規約で別段の定めをしない限り、各区分所有者が有する専有部分の床面積の割合に応じて所有します。
専有部分と共有部分について、区分所有法15条1項、2項には以下のように定められています。
2項 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。
共有部分は、専有部分を利用するために不可欠の権利であり、専有部分を売却し権利が移転すればそれに伴って共用部分の持分も移転します。
まとめ
夫婦2人の収入や親の資金援助を受けてマンションを購入する場合、共有持分の設定に注意しなければなりません。
出資割合と異なる共有持分を設定すると贈与税の負担が生じる可能性があるため、基本的に持分割合と出資割合は同じになるようにしましょう。
また共有持分の設定の仕方により、他の共有者の同意なく賃貸されたり売却の同意を得られなかったり、マンションの活用方法に影響する可能性があります。
マンションを相続する場合、遺言があればそれに従って分割しますが、相続人の遺産分割協議で全員が合意すれば他の分割方法とすることも可能です。
ただし、共有不動産は処分・活用する際に他の共有者の同意が必要となるため、単独所有の不動産と比べて扱いづらい点に注意が必要です。
そのため、共有持分を持ち続けることは、固定資産税などの負担がある一方、所有する財産を有効活用できないこともあります。
その場合、共有持分だけを売却することも1つの方法です。マンション全体の売却には、他の相続人全員の同意が必要ですが、共有持分だけであれば、自由に売却することが可能です。
ただし、共有持分は一般の不動産売却と比べ需要が少なく買主が見つかりにくいため、共有持分専門の買取業者を活用してみてください。