共有持分の評価額の算定方法とは?買取価格に影響を与えるポイントも解説

共有持分の評価額の算定方法とは?買取価格に影響を与えるポイントも解説

「共有持分の不動産を売りたい」と考えている場合は、まずは評価額を算出しましょう。

共有持分の評価額は「不動産全体の評価額×持分割合」で求められます。

土地の場合は、評価額を求める方法はさまざまあり、公示地価や固定資産税評価額、実勢価格などから求められます。土地を売る場合は、実勢価格を参考にすると良いでしょう。

建物の場合は、固定資産税の課税明細書から確認できる「固定資産税評価額」が指標となります。

ただし、共有持分の不動産は制約が多いため、売る場合は評価額が下がってしまいます。共有者の人数や関係性によって異なるため一概には言えないものの「不動産全体の評価額×持分割合」で導き出した額から、さらに1~4割程度は引かれてしまうと考えましょう。

また、買い手目線で考えると、共有持分の不動産は共有者がいる分、活用することができず避けられがちです。そのため、一般的な不動産仲介業者に依頼しても、買い手を見つけるのは困難です。「少しでも高値で共有持分を売りたい」「手間をかけずにすぐに売りたい」と考えているなら、共有持分に特化した買取業者に相談することをおすすめします。

本記事では、そんな共有持分の評価額について詳しく解説します。

共有持分の評価額の算出方法は「不動産全体の評価額×持分割合」

共有持分の評価額は「不動産全体の評価額×持分割合」で算出されます。

つまり、共有持分の評価額を調べるには、不動産の評価額と持分割合を正しく知る必要があります。

持分割合や計算方法など、まずは基本的なことを確認しておきましょう。

持分価格とは各共有者が持つ持分の価額

共有持分を売却する際に重要になる評価額は、すなわち持分価格のことを指します。

さらに前提の部分を解説すると、不動産を共有して購入・相続した共有者は一定の割合に応じて不動産の「所有権」を得ます。この所有権の割合が「持分」です。

つまり、共有持分とは共有して所有している不動産の所有権の割合のことです。

持分の割合は、特に指定がない限りは共有者間で同じとなります。たとえば、3人で不動産を共有している場合、指定・理由などがない限りはそれぞれ1/3ずつ所有しているということです。

ただし、持分の割合は、不動産を共有して相続した場合は法定相続分に応じた割合になったり、共有して購入した場合は出資額に応じた割合になったりもします。あくまで指定がない限りは等分されるというだけで、必ずしも共有者が全員同じ割合になるとは限らないことは理解しておきましょう。

共有持分の評価額は所有する持分の割合によって決まる

前述したように、共有持分の評価額は「不動産全体の評価額×持分割合」で算出します。つまり、ご自身が所有している持分の割合によって決まります。

不動産を共有で購入した場合は、出資した額に応じて持分割合が決まります。

たとえば、夫が4,000万円、妻が1,000万円出資して5,000万円の不動産を購入した場合は、基本的に持分割合は夫が4/5、妻が1/5となります。

夫の持分割合:4,000万円÷5,000万円=4/5
妻の持分割合:1,000万円÷5,000万円=1/5

そして数年後に不動産評価額が2,000万円になったと仮定したとき、共有持分の評価額を計算すると、夫の共有持分の評価額は1,600万円、妻の共有持分の評価額は400万円です。

夫の共有持分の評価額:2000万円×4/5=1,600万円
妻の共有持分の評価額:2000万円×1/5=400万円

ただし、必ずしも持分割合が購入したときに負担した額になるとは限りません。たとえば、本来は夫が4,000万円、妻が1,000万円ずつ負担したものの、共同名義は面倒ごとが増えると考えて、妻の1,000万円を夫に渡して(譲渡して)単独名義で契約するケースもあります。この場合では、妻は1,000万円負担していても妻の持分はありません。

また、共有持分だけを売っても、共有の不動産は扱いが難しいため、実際の評価額よりも低い金額になります。

たとえば、共有持分の評価額が400万円だったとしても、共有持分を売った場合は400万円で売れることは基本的にはないということです。さまざまな条件によって売却価格は変化するため一概には言えないものの、共有持分の評価額が400万円なら実際の売却価格は200万円以下になってもなんらおかしいことではありません。

【土地】共有持分の評価額の基準は「公的な評価」と「過去の取引価格」

共有持分の評価額を計算するには「不動産全体の評価額」を調べなければいけません。

当然、不動産の価値というのは変動するため、購入したときの額が不動産全体の評価額にはならず、その時の状況によって評価額は大きく変化します。

また、土地の評価額は、目的によって調べ方が異なり、以下の基準があります。

  • 公示地価
  • 基準地価
  • 相続税評価額
  • 固定資産税評価額
  • 実勢価格

たとえば相続のために土地の評価額を調べる場合は、公的な評価である「相続税評価額」が使われますし、これから土地を売る場合は過去の取引価格である「実勢価格」を調べて、どれくらいの価格になるのか把握します。

調べ方によって金額は変化するため、目的に合わせて土地の評価額を確認しましょう。

公示地価

公示地価は国土交通省が示している土地価格の指標です。国土交通省が表立って根拠に基づいて土地の価格の指標を決めることで、土地の価格に混乱が起きないようにしているということです。

地域ごとに標準地となる場所を決めて、毎年1月1日時点の価格を調べており、その年の3月に公示されます。

たとえば令和6年の中野駅の周辺住宅地(中野区新井2丁目)の公示価格は、1平方メートルあたり774,000円です。

令和6年ではそのほか全国26,000地点で実施されており、さまざまな地域の公示地価を確認できます。

国土交通省の「地価・不動産鑑定:地価公示」から確認できるため、土地自体が持っている価値を調べたいときに活用しましょう。

基準地価

基準地価は都道府県が示している土地価格の指標です。公示地価と同じように算出しており、土地の価値を調べることができます。

公示地価とは異なり、毎年7月1日時点の標準価格を判定し、おおむね9月以降に発表がされます。

時期によっては公示地価よりも最新の情報を確認できるため、公示地価と合わせて活用すると良いでしょう。「基準地価+都道府県」で検索することで該当ページから確認できます。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、その名の通り固定資産税を計算するときに用いられます。

基本的に自治体で3年に1度更新がされ、毎年土地の所有者に通知がされます。

ご自身で計算する必要はなく、課税明細書や固定資産課税台帳から固定資産税評価額は確認可能です。

なお、一概にはいえないものの、固定資産税評価額は公示地価の70%程度になる傾向にあるため、固定資産税評価額のおおむねの値は公示地価から導き出せます。

相続税評価額

相続税評価額は、土地の相続・贈与をする際の計算に使います。相続税評価額を基準として、控除などを行い相続・贈与税の計算を行います。

相続税評価額の計算は「路線価方式による評価」「倍率方式による評価」のどちらかを用います。

具体的には、路線価が定められている地域は「路線価方式による評価」を使って計算し、そのほかの地域は「倍率方式による評価」を使って計算します。

計算方法は以下で紹介しますが、多少難易度が高いため、場合によっては税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

路線価方式による評価

前述したように、路線価が定められている地域は「路線価方式による評価」を使って計算します。路線価とは、道都に面する住宅の価格の指標となるものです。

道路ごとに指標となる価格があり、その道路に面する土地の広さ、土地の奥行(奥行価格補正率表)などを用いて計算をします。

たとえば、路線価が60万円、奥行価格補正率が0.95、土地の面積が50立方メートルだった場合は、以下のように相続税評価額を求められます。

600,000円×0.95×50立方メートル=2,850万円

路線価は国税庁の「財産評価基準書」から確認でき、奥行価格補正率表は「奥行価格補正率表」から確認できます。

倍率方式による評価

一部の地域では路線価が定められていないこともあります。そんなときは倍率方式による評価を用います。

倍率方式による評価は非常にシンプルで、土地の固定資産税評価額に一定の倍率をかけることで導きます。

倍率は地域によって定められており「財産評価基準書」にて都道府県を選択し「評価倍率表」から該当する土地の種類・場所を選択することで確認できます。固定資産税評価額は前述したように、課税明細書や固定資産課税台帳などから確認できます。

たとえば固定資産税評価額が3,000万円、倍率が1.2なら、以下のように相続税評価額を求められます。

3,000万円×1.2=3,600万円

実勢価格

実勢価格とは過去の取引価格のことです。売り手と買い手が納得して取引をした、つまり需要と供給が釣り合った価格でもあるため、土地を売る場合に重要になります。

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」から調べられます。

たとえ国が公示地価で土地の価値を算出していたとしても、実際に土地を売る場合は、その価値を感じている相手がいなければ取引は成立しません。

そのため、土地を売る場合は、過去の取引価格である実勢価格を調べ、実際に売りたい土地に似た取引情報を確認し、おおむねどれくらいの価格で売れるのかを把握しましょう。

ただし、あくまで実勢価格は過去の取引額なので、現在の相場がその通りであるとは限りません。そのため、土地を売る場合でも、前述した公示地価や固定資産税評価額などを把握しておくことは大事です。

【建物】共有持分の評価額の基準は「固定資産税評価額」が原則

土地はさまざまな方法で不動産の評価額を調べられますが、建物に関しては「固定資産税評価額」を使って評価をするのが一般的です。

土地と同じように、建物もどのように不動産の評価額を導き出すのか確認しておきましょう。

共有持分の評価額は「固定資産税評価額」で評価されるのが一般的

土地の固定資産税評価額は3年に1度更新されることは前述しましたが、建物に関しても同様で3年に1度更新がされます。

ただし建物は土地とは違って経年劣化をしますし、その建物自体が持つ価値も考慮しなければいけません。

そのため、建物の評価額は経年劣化をする分、前年の評価額を上回りませんし、建築費用が高ければその分建物の価値も高くなります。築年数が長いなら建物の価値は下がりますし、一軒家より建築費用の高いマンションなら建物の価値は上がるというイメージです。

固定資産税評価額を調べる主な方法は3つ

建物の固定資産税評価額は以下の方法で調べられます。

  • 固定資産税の課税明細書
  • 固定資産課税台帳
  • 固定資産評価証明書

固定資産税の課税明細書は、毎年送られてくる納税通知書と一緒に同封されています。固定資産課税台帳や固定資産評価証明書は、建物がある自治体の役場にて交付してもらえます。

建物の固定資産税評価額の計算方法

固定資産税評価額は固定資産税の課税明細書などからすぐに確認できるため、計算方法については深く考える必要はありませんが、具体的には以下の方法で評価額を算出しています。

再建築費×経年劣化による減点補正率×評点1点当たりの価額=固定資産税評価額

「再建築費」は再度同じ建物を建てたと想定したときにかかる費用で「経年劣化による減点補正率」は経年劣化による価格の減少を数値化したものです。評点1点当たりの価額は「物価水準による補正率×設計管理費による補正率」に1円をかけたものです。

一概にはいえないものの、建物の固定資産税評価額は新築時の価格の約50〜60%と考えるのが一般的です。もちろん、建物の構造や築年数など、さまざまな要因によって変化するため、あくまで目安として考えておきましょう。

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共有持分の評価額に影響を与えるポイント

共有持分のみを売る場合、評価額は以下のようなさまざまな影響を受けて変動します。

  • 不動産の資産価値
  • 共有者の人数と持分割合
  • 共有者との関係性
  • 居住者の有無

言い換えるなら、これらの内容を良い状態にできれば、共有持分を高く売ることも可能です。

それぞれのポイントを確認しておきましょう。

不動産の資産価値

不動産の資産価値は評価額に直結します。基本的には「資産価値が高い=評価額が高い」と言えるでしょう。

不動産の資産価値は主に以下のような要因によって決まります。

  • 土地や建物の広さ・形状
  • 築年数
  • 周辺環境の利便性・将来性
  • 景観・デザイン
  • 日当たりの良さ

土地や建物が広ければ当然資産価値はあがります。ただし、形状も大事で、極端に幅が狭い土地・建物だったり、いびつな形状をしていたりすると価値は下がってしまいます。

築年数は短いほど価値は上がるものの、メンテナンスの状況によっても変化します。そのため、築年数が長くても、メンテナンスやリノベーションなどによって美しく保たれている建物なら価値は高くなるでしょう。

共有者の人数と持分割合

共有者の人数や持分割合も評価額に影響します。

共有者が多いほど、その後の交渉は難航しやすくなるためです。共有持分を買取業者に売ると、その後買取業者は共有者と「不動産を売るのか」「家賃収入を得るのか」などの話し合いをします。

売却のような共有物に大きな変更をするケースでは、すべての共有者に交渉をしなければいけません。共有者が多いほど交渉の手間が大きくなり結果として買取額は低くなります。

また、共有持分の評価額は「不動産全体の評価額×持分割合」で計算するため、当然持分割合が多い方が評価額も高くなります。

共有不動産は相続によって共有者が増えることも少なくありません。不要な共有不動産を所有しているなら共有者が増えてしまう前に、できるだけ早く査定に出すと良いでしょう。

共有者との関係性

前述したように、共有持分を売ると、買取業者は共有者と交渉をしなければいけないため、共有者との関係性は良好である方が望ましいです。

たとえ共有者が1人だとしても、その共有者との関係性が悪く、交渉が難しい状態なら買取額は低くなります。

共有持分を高く売りたい場合は、事前に共有者との関係性は良好にしておきましょう。

居住者の有無

居住者の有無も買取額に大きな影響を及ぼします。建物の共有持分を買取業者に売る場合、その建物に居住者がいると、買取業者としては建物を活用するのに大きな制限がかかってしまいます。

居住者がいるなら建物は簡単には売れませんし、活用方法を見出すのも非常に難しいです。共有者が建物を独占しているという状態なら、持分割合に応じて賃料を請求できるものの、支払ってもらえない可能性も考えられるでしょう。

共有持分の建物に居住者がいる場合は、買取業者に出す前に相談しておき、今後の建物の活用方法についてある程度決めておけば、買取をスムーズに進められるでしょう。

共有持分を高く売りたいならば専門の買取業者への売却がおすすめ

共有持分を高く売りたいなら、専門の買取業者へ相談してみましょう。

これまで紹介したように、共有持分というのはさまざまな要因によって評価額を減額されてしまい、高値で売るのは困難です。

共有持分を売ることに特化した専門業者なら、評価額を減額されやすい共有持分でも高値で買い取ってもらえるでしょう。

共有持分の評価額は減額されやすい(共有減価)

共有持分の不動産は非常に制約が多く不便です。単独名義の不動産なら、賃貸として活用したり、売りに出したりとさまざまな活用方法がありますが、共有名義だとほかの共有者の同意が必要になります。

このような事情から、共有持分の評価額は減額される、すなわち共有減価される傾向にあります。

共有持分の評価額は「不動産全体の評価額×持分割合」で求められるものの、共有減価によって実際の評価額はそこから1割から4割程度引かれてしまいます。共有者の人数や関係性などによっては5割以上引かれてしまう可能性もあるでしょう。

つまり、評価額3,000万円の不動産を1/2所有している場合、本来の共有持分の評価額は1,500万ではありますが、共有減価によって750万円以下になってしまう可能性もあるということです。

買取実績が豊富な信頼できる買取業者に売却しよう

共有持分は、一般的な不動産仲介業者に相談して売却することも可能ですが、活用が難しいという理由で売れないケースもあります。そのため、共有持分は専門の買取業者に売りましょう。

買取業者を決める際は、以下のポイントを確認することでより高値で売りやすくなります。

  • 買取実績が豊富か
  • 相談がしやすいか
  • 弁護士と提携しているか
  • 査定額について正しく説明をしてくれるか

買取実績が豊富なら、それだけ経験が豊富ともいえるため、高値で売りやすくなります。

また、相談のしやすさも非常に重要です。相談しやすいと感じるということは、それだけコミュニケーション能力に長けており、買取後の共有者との交渉も上手くいきやすいということです。つまり「共有持分を活用する能力がある=高値で買い取ってくれる」とも読み取れます。

ホームページをチェックして、どれだけの弁護士と提携しているのかも確認しておくと良いでしょう。

まとめ

共有持分の評価額は「不動産全体の評価額×持分割合」で求められます。そして、不動産全体の評価額は、固定資産税評価額や実勢価格などから求められます。

ただし、不動産を売る場合は、買い手が不動産に対してどれくらいの価値を見出してくれるかが大事なので、あくまで参考程度に考えましょう。

また、不動産の共有持分を売る場合は扱いが難しいこともあり、評価額が減額されてしまいます。共有持分を売る場合は「不動産全体の評価額×持分割合」で求めた評価額よりも、1~4割程度低くなると考えましょう。

共有持分の不動産を高値で売りたい場合は、買取実績が豊富な業者に査定を依頼してください。特に共有持分の買取に特化した業者であれば、共有者との交渉に長けているため、評価額を減額されやすい共有持分でも高値で買い取ってもらえるでしょう。

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