共有持分の時効取得の要件は5つ!時効取得できない場合の対処法も解説

共有持分の時効取得の要件は5つ!時効取得できない場合の対処法も解説

共有不動産に長年住んでいる場合、「どれだけ住んでも完全に自分のものにならないのか」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。中には、「自分の建物だと思って住んでいたら実は共有不動産だった」というケースもあるかも知れません。

要件を満たせば、共有持分の「時効取得」が可能です。要件は以下の5つです。

  • 所有の意思をもって占有している
  • 平穏かつ公然に占有している
  • 一定期間継続して占有している
  • 他人のものを占有している
  • 善意無過失で占有し始めた(短期取得時効の場合)

共有不動産の場合、「所有の意思をもって占有している」「善意無過失で占有し始めた」といった要件を満たせず、時効取得が成立しないケースが多いです。通常は、持分を取得した時点で「共有物である」という認識があると考えられるためです。

ただし以下のようなケースであれば、時効取得が認められる可能性があります。

「相続時に親から単独所有と説明されており、居住しながら不動産の管理や固定資産税の支払いを1人で行っていた」かつ「登記が前所有者の単独名義になっている」

とはいえ、上記は特殊な例です。共有持分の時効取得を認めてもらいたいなら、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

なお、時効取得できないからといって共有状態のままにしておくと、共有者全員から同意を得られず改修や売却ができなかったり他の共有者から家賃を請求されたりといったトラブルに見舞われるおそれがあります。共有持分の売却を考えるなら、「共有持分専門の買取業者」に依頼しましょう。

この記事では、共有持分を時効取得するための要件や、時効取得できなかったときの対処法を解説します。ぜひ参考にしてください。

目次

時効取得は他人のものを一定期間占有した人が所有権を取得できる制度

時効取得」とは、一定期間他人のものを占有した場合に、占有している人が所有権を取得できる制度です。

時効取得は民法第162条に定められています。

(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
引用元:e-Gov法令検索「民法第百六十二条」

たとえばAの所有している建物をBが一定期間占有し時効取得が成立すれば、その建物はBのものとなりAは所有権を失います。また、時効取得は共有持分についても対象となるため、要件を満たせば不動産の共有持分を取得可能です。

要件については次章で詳しく解説します。

共有持分を時効取得する際の5つの要件

時効取得によって共有持分を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 所有の意思をもって占有している
  2. 平穏かつ公然に占有している
  3. 一定期間継続して占有している
  4. 他人のものを占有している
  5. 善意無過失で占有し始めた(短期取得時効の場合)

10年の占有で時効取得を主張する場合は5つの要件全て、20年なら「善意無過失で占有し始めた」以外の要件を満たさなければなりません。ここでは、それぞれの要件を詳しく解説します。

1.所有の意思をもって占有している

時効取得が認められるためには、所有の意思をもってその不動産を占有していなければなりません。

所有の意思をもって占有している(自主占有)」とは、占有者が不動産を「自分のもの」と認識している状態をいいます。

たとえば賃貸物件に住んでいる場合は、その建物が他人の所有物であり自分が「借りている」ことを認識したうえで住んでいます。そのため自主占有ではなく「他主占有」にあたり、時効取得の対象にはなりません。

「所有の意思をもって占有している」と認められるためには、占有者の意思の面だけでなく客観的な判断が必要です。不動産の固定資産税を払っていたり、移転登記を行っていたりといった判断材料があれば認められやすくなります。

2.平穏かつ公然と占有している

占有者がその物を「平穏かつ公然と」占有していることも必要です。つまり、占有が暴行や脅迫、高圧的な態度などによって行われず、「平穏」になされていなければなりません。

たとえば本来の所有者を脅して追い出し不法占拠している場合は、たとえ20年以上住んでいても時効取得の対象外です。

また、自分が占有していることを周囲に隠すことなく、「公然」と占有している必要があります。

周囲から「その家に昔から住んでいる人」と認識されていたり、占有している土地に自分の家を建てていたりなど、第三者から見てわかりやすく不動産を占有していなくてはなりません。

3.一定期間継続して占有している

一定期間継続してその不動産を占有していることも要件の1つです。前述のとおり、時効取得の成立には10年または20年の間、途切れることなく占有している必要があります。

時効取得の成立に10年かかるか20年かかるかは、対象の不動産を「過失なく自分のものと思い込んでいたかどうか」によって異なります。

10年 自分のものであるとの認識で不動産を占有しており、他人のものであるという事実を知らなかったことに過失がない
20年 ・ただの勘違いや不注意で他人のものであることに気づかなかった
・自分のものでないことに途中で気づいた

10年の占有で時効取得が適用されるのは、「不動産が他人のものであると知らず、そのことに過失がなかった場合」です。他人のものとわかっていて占有しているときは、20年占有し続ければ時効取得を主張できます。

4.他人のものを占有している

対象の不動産が自分のものではなく「他人のもの」でなければなりません。

前述した民法第162条では時効取得の対象を「他人の物」と定めているためです。そもそも、自分の物は占有する・しないにかかわらずすでに所有権を取得しているため、時効取得の対象外です。

ただし、自分の持分でなく「他の共有者の持分」なら時効取得の対象になります。

5.善意無過失で占有し始めた(短期取得時効の場合)

10年の占有で時効取得が認められる「短期取得時効」を主張したいなら、「善意無過失で不動産を占有し始めた」という経緯が必要です。

【善意無過失とは】
「自分に所有権がある」と信じており、信じたことに過失がなかったといえる状況のこと。

たとえば登記簿を確認していなかった場合、「信じたことに過失があった」と判断される可能性があります。また、占有を始めた当初は自分のものであると信じていたとしても、途中で他人の物だとわかったときは10年の時効取得は適用されません。

なお、10年の時効取得を主張するためには、善意無過失であることの証明が必要です。証明できなければ短期取得時効を主張できず、20年の占有期間が必要になります。

共有持分の時効取得が難しい2つの理由

共有不動産の時効取得は、法律上不可能ではありません。しかし共有不動産の場合、以下の理由から時効取得の成立が難しくなります。

  • 通常は誰かと共有している事実を認識しているため
  • 「善意無過失」が認められる可能性が低いため

とはいえ、中には共有不動産でも時効取得が成立するケースもあります。ここでは、時効取得が難しい理由と共に、どのような場合に時効取得が成立するのかについて解説します。

通常は誰かと共有している事実を認識しているため

共有持分の時効取得が難しい理由の1つは、占有時から「この不動産は共有である」と認識しているのが通常であるという点です。

不動産が共有であると認識しているということは、所有の意思をもっているのは「自分の持分のみ」に対してであり、「所有の意思が不動産全体におよぶ」とはいえません。

相続で取得したときも、普通ならば共有不動産と知ったうえで相続し、他の共有者とともに登記申請を行うでしょう。

共有不動産であると認識しているのであれば、「所有の意思」の要件を満たせません。

共有不動産で時効取得が認められるのは、「自分1人で所有していると信じて住み続けており、不動産の手入れや固定資産税の支払いなども行っているケース」です。

さらに、単独所有と信じて住んでいることについて前所有者や他の共有者などから指摘を受けていない場合と、かなり特殊なケースに限られるでしょう。

「善意無過失」が認められる可能性が低いため

共有持分の時効取得が難しいもう1つの理由は、「善意無過失」が認められる可能性が低いことです。

善意無過失とは、前述したとおり「自分に所有権があると信じ、そのことに過失がない」状態です。共有不動産では、通常はその物件が共有状態であると認識しているため善意無過失の要件を満たすことは難しいでしょう。

ただし以下の条件に該当する場合は、善意無過失の要件が認められる可能性があります。

相続時に親から「単独所有である」との説明を受けており、居住後も不動産の管理や固定資産税の支払いを1人で行っていた

かつ

登記上の所有者が前所有者の単独名義になっている

特殊な例ですが、上記のようなケースであれば、時効取得が認められる可能性があります。

共有持分を時効取得する際の流れ

共有持分を時効取得する際の流れは以下のとおりです。

  1. 要件を満たしているか確認する
  2. 他共有者に対し時効の援用を行う
  3. 同意した場合は持分移転登記を行う

順番に解説します。

1.要件を満たしているか確認する

まずは、「共有持分を時効取得する際の5つの要件」で解説した要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。要件を満たしていなければ、時効取得を認めてもらえません。

これまでに解説したとおり、共有不動産の時効取得でネックとなるのが「所有の意思をもって占有しているか」という部分です。

所有の意思があるといえず要件をクリアできないなら、「時効取得の同意が取れなかった場合の5つの対処法」で後述する方法を検討しましょう。要件をクリアできているかわからない場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。

2.他共有者に対し時効の援用を行う

時効取得を主張するには、「時効の援用」を行う必要があります。

【時効の援用とは】
時効の期間が経過し、時効の効果が発生したことを相手に伝える手続き。時効の援用を行わない限り、時効の効果は発生しない。

共有持分の時効取得要件を満たしたら、まずは他の共有者に対して時効の援用を行いましょう。

時効の援用は口頭で行っても構いませんが、口頭では証拠が残りません。時効を援用した証拠を残すためには書面を作成し、「いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の文書を送ったのか」を日本郵便株式会社が証明してくれる制度「内容証明郵便」を利用するのがおすすめです。

参照:内容証明|日本郵便株式会社

3.同意した場合は持分移転登記を行う

時効の援用を行い、共有者が時効取得に同意すれば「持分移転登記」を行います。

【持分移転登記とは】
共有持分を所有者を現所有者から新しい所有者に変更する登記のこと。時効取得によって不動産を取得し持分移転登記を行うと、共有状態にあった不動産が単独所有になる。

登記手続きは、共有者全員が共同で行わなければなりません。そのため、時効取得で持分を失う共有者に協力してもらう必要があります。

共有者が登記に協力してくれないときは、「共有持分の移転登記請求訴訟」を申し立てて解決を目指します。請求が認められて判決が下された場合、「時効取得者単独での移転登記」が可能です。

なお、持分移転登記には、登録免許税や不動産取得税などの税金のほか、司法書士への報酬などさまざまな費用がかかります。

費用については、「時効取得の手続きにかかる税金・費用」で紹介しています。以下の時期でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

時効取得によって得られる効果

時効取得によって得られる効果は以下の2つです。

  • 不動産の所有権を原始取得する
  • 時効完成時ではなく占有時に遡って効果が生じる
【原始取得とは】
誰かから引き継ぐのではなく、「新たに取得した」権利のこと。前所有者の権利に影響されずに取得するため、その不動産に抵当権や地役権などの権利が設定されていたとしても引き継がない。

時効取得は原始取得にあたると考えられるため、相続のように前所有者から承継するのではなく「新たに取得した」という扱いになります。

それとともに、前所有者の所有権や抵当権といった権利が消滅します。所有権は1つの不動産に2つ存在できず、抵当権や地役権などの権利は前所有者の所有権が前提となっているためです。

また、時効によって不動産を取得した場合、時効の効果は時効が完成したときではなく「占有時」まで遡ります。つまり、「占有を始めたときから自分のものだった」ことになるということです。

このことを「時効の遡及効(そきゅうこう)」といいます。遡及効によって、時効完成時以前に発生した収益も自分のものであるとみなされます。

時効取得の手続きにかかる税金・費用

時効取得の手続きにはさまざまな税金・費用がかかります。

ここでは、時効取得の手続きにかかる税金・費用をそれぞれ紹介します。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 一時所得税+住民税
  • 持分移転登記の申請費用
  • 移転登記請求訴訟の申立て費用

それぞれ解説します。

 

不動産取得税

時効によって不動産を取得すると「不動産取得税」がかかります。

不動産取得税とは、その名のとおり不動産を取得した際に課税される税金です。

計算方法は以下のとおりです。

固定資産税評価額×3%(本則は4%)

本来の税率は4%ですが、土地・住宅に関しては、令和9年3月31日まで軽減税率が適用されます。たとえば固定資産税評価額が1,000万円なら、30万円の不動産取得税がかかります。

固定資産税評価額は、市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」か市区町村役場で取得する「固定資産税評価証明書」で確認が可能です。

なお、都道府県から納付書が届くタイミングは、不動産を取得してから数カ月〜1年半後です。忘れたころに送られてくるため、納付を忘れないようにしましょう。

登録免許税

時効取得した不動産の「持分移転登記」を申請する際に「登録免許税」がかかります。

登録免許税とは、登記申請の際にかかる国税です。

計算方法は以下のとおりです。

固定資産税評価額×2%

たとえば固定資産税評価額が1,000万円の場合、課税される登録免許税は20万円です。

登録免許税は原則現金納付です。上記の計算式で算出した額を銀行や郵便局で納付し、その領収書を登記申請書に貼り付けて申請します。

ただし、オンラインで申請するなら電子納付が可能であるのに加え、登録免許税額が3万円以下の場合は登録免許税相当額の収入印紙を登記申請書に貼り付けることでも納付できます。

参照:No.7190 登録免許税のあらまし|国税庁

所得税(一時所得)+住民税

時効によって土地を取得すると、経済的利益を得たとして所得税(一時所得)と住民税がかかります。

一時所得は、以下の計算方法で算出します。

時効取得した不動産の時価ー時効取得に直接かかった費用ー特別控除額(最高50万円)

上記の計算式で算出した金額すべてが課税対象になるのではなく、算出した金額の2分の1に対して課税されます。

なお、時効取得に直接かかった費用には、登記費用や裁判費用が挙げられます。弁護士費用や司法書士費用は該当しません。

住民税については納付書が届きます。納付額が記載されているため、計算する必要はありません。

参照:No.1490 一時所得|国税庁

持分移転登記の申請費用

持分移転登記の申請には、以下の費用がかかります。

不動産取得税 固定資産税評価額×3%(本則は4%)
※詳細は「不動産取得税」へ
登録免許税 固定資産税評価額×2%
※詳細は「登録免許税」へ
証明書取得費用 ・住民票:200〜300円
・印鑑証明書:200〜300円
・固定資産税評価証明書:0〜400円
※市区町村の中には「登記用」を無料で発行できるところもある
司法書士への報酬 1人の持分につき3〜5万円程度

自分で申請するなら税金と証明書取得費用だけで済みますが、司法書士に対応を依頼した場合は司法書士への報酬が発生します。相場は1人の持分につき3〜5万円、高くても10万円程度には収まる傾向にあり、それほど高額にならないケースが多いです。

しかし、共有者の人数が多ければその分費用が増えるため、念のため相談の時点で費用を確認しておくことをおすすめします。

移転登記請求訴訟の申立て費用

移転登記請求訴訟を提起する際は、裁判所に対して手数料を支払う必要があります。

手数料額は、時効取得する不動産の評価額で決まります。

時効取得する不動産の評価額 手数料
100万円 1万円
200万円 1万5,000円
300万円 2万円
500万円 3万円
1,000万円 5万円
2,000万円 8万円
3,000万円 11万円
5,000万円 17万円

参照:手数料額早見表|裁判所

そのほか、裁判所から各当事者へ郵便物を送付するための郵便切手代もかかります。5,000〜7,000円程度かかることが多いですが、管轄の裁判所や当事者の人数によって異なるため、裁判所に確認しておきましょう。

また、弁護士に対応を依頼すると弁護士への報酬が発生します。訴訟の手続きは複雑で専門知識を要するため、弁護士に依頼するのが一般的です。

弁護士費用の目安は以下のとおりです。

相談料 法律相談を受けた際にかかる費用

30分につき5,000〜1万円程度
※無料の場合もあり
着手金 弁護士が仕事に取り掛かるための費用

・不動産の評価額が300万円以下:評価額の8%
・300万円超3,000万円以下:評価額の5%+9万円
・3,000万円超3億円以下:評価額の3%+69万円

【例】
不動産の評価額が1,000万円の場合:59万円
報酬金 事件が解決した場合にかかる費用

・不動産の評価額が300万円以下:評価額の16%
・300万円超3,000万円以下:評価額の10%+18万円
・3,000万円超3億円以下:評価額の6%+138万円

【例】
不動産の評価額が1,000万円の場合:118万円
日当 弁護士が事務所以外で仕事をしたときにかかる費用

・半日:3〜5万円程度
・1日:5〜10万円程度
実費 事件に対応するうえで実際にかかった費用

・交通費
・宿泊費
・コピー代など

着手金・報酬金については、(旧)弁護士報酬基準を参照しています。現在は廃止されているためあくまでも目安であり、料金設定は事務所によって異なります。

時効取得の同意が取れなかった場合の5つの対処法

​​時効の援用を行ったものの、他の共有者から時効取得の同意が得られなかった場合は、そのまま住み続けるにあたって賃料を請求されたり、自由に不動産を管理できなくなったりといったトラブルが発生する可能性があります。

トラブルを回避するためには、以下の方法を用いて不動産の共有状態を解消しましょう。

  • 他共有者の持分を自分が買い取る
  • 他共有者に自分の持分を買い取ってもらう
  • 他共有者の同意を得て不動産全体を売却する
  • 共有物分割訴訟を起こす
  • 自分の持分を第三者に売却する

そのまま住み続けたいときや不動産を手放したい場合など、ケースによって取るべき対策は異なります。状況に合った解消方法を選びましょう。

解消方法と共有状態を解消しないリスクについては、以下の記事でも解説しています。あわせてチェックしてみてください。

他共有者の持分を自分が買い取る

今後も共有不動産に住み続けたい場合は、他の共有者の持分をすべて買い取れば単独所有にできます。

共有状態のまま占有していると、他の共有者から利用料を請求される可能性があるため、買い取ってしまうほうが面倒ごとが少なくて済みます。大規模な修繕や売却をする際も、共有状態では共有者全員の同意が必要ですが、単独所有なら自分の一存で決められます。

ただし、共有者の持分を買い取るには相応の資金が必要です。価格は共有者間で自由に決められますが、不動産の相場価格よりも著しく低い価格で売買すると贈与税の対象になる可能性があるため注意しましょう。

費用はかかりますが、「不動産鑑定士」に査定してもらうと適正な金額を算定してもらえます。

他共有者に自分の持分を買い取ってもらう

他の共有者に持分を買い取ってもらうのも、共有状態を解消する方法の1つです。不動産の取得を諦め自分の持分も手放すことになりますが、売却代金が手に入り共有関係から抜け出せるといったメリットがあります。

ただし、持分を買い取って貰うには、当然ながら他の共有者に買い取る意思がなければなりません。他の共有者が持分の買い取りを望んでいなければ、売却は難しいでしょう。

また、売却には税金や諸費用がかかります。

  • 譲渡所得税
  • 契約印紙代金
  • 仲介手数料

持分の売却で利益が生じた場合、持分を5年以上所有していれば売却利益に対して20.315%、5年未満なら39.63%の譲渡所得税がかかります。印紙代金は5,000〜3万円程度、仲介手数料は売却金額に応じて上限額が決まっていますが、数十万円必要です。

売却利益から仲介手数料等を差し引くこともできるため、税理士や不動産会社へ相談すると良いでしょう。

他共有者の同意を得て不動産全体を売却する

不動産全体を売却して、共有状態を解消することも可能です。

自分の持分だけであれば、他の共有者の意思に関係なく自由に売却できますが、共有不動産全体を売却する際は共有者全員の同意が必要です。

ただ、共有者のうちの1人が長年共有不動産を占有している状態で、他の共有者が不動産の管理に関わっていないケースなら、売却に関して同意してくれる可能性が高いでしょう。

なお、共有不動産の売却だけでなく建て替えや大規模な改修にも、共有者全員の同意が必要です。誰か1人でも反対する人がいれば、売却や建て替えはできません。

共有物分割請求訴訟を起こす

共有物分割請求訴訟を行うことで共有状態を解消できます。

【共有物分割請求訴訟とは】
共有不動産が共有状態にある場合に、家庭裁判所に対して解消を求める訴訟。共有者間の持分売買・共有不動産全体の売却について他の共有者から同意を得られないときや、共有不動産の活用方法について意見がまとまらない場合などに利用し、不動産の分割方法を裁判所に決めてもらう。

裁判所が決定する解消方法は、以下のうちいずれかです。

分割方法 内容
現物分割 共有物そのものを物理的に分割する
代償分割 不動産を取得した人物が、持分を失った人物へ相応の金銭などで賠償する
換価分割 不動産を競売にかけ、落札代金を持分割合に応じて分割する

裁判所は完全に公平な立場から判断するため、必ずしも自分の望む分割方法になるとは限りません。ただし、どのようなかたちであれ共有状態を解消できる点はメリットでしょう。

なお、訴訟を提起するには、共有者全員で協議を終えていることが条件です。共有物分割協議で意見がまとまらないときにはじめて訴訟を提起できます。

共有物分割請求訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

自分の持分を第三者に売却する

他の共有者ではなく、第三者に自分の持分を売却することもできます。

ただし、持分のみを買い取っても不動産を自由に活用できない、他の共有者とトラブルになりたくないなどの理由から、買い取りに応じてくれる人は少ないでしょう。

共有持分の売却は、「共有持分専門の買取業者」へ依頼するのが一般的です。専門の買取業者なら持分の売買に関するノウハウを持っているうえ、他の共有者と話し合いをする必要もないためスムーズに売却できるでしょう。

注意点は、持分の売却価格は相場よりも低くなる傾向にある点です。複数社から見積を取り、比較検討することが重要です。

共有持分の買取事例を詳しくみたい方はこちら

共有持分を買取業者に売却した場合に起こるトラブルやトラブル回避のための業者選びについては、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。

時効取得の手続きは状況に合わせて弁護士・司法書士に相談しよう

時効取得の手続きは、状況に合わせて弁護士・司法書士のどちらかに相談することをおすすめします。「どちらに相談するか」は、共有者ともめているかどうかで判断するとよいでしょう。

  • 共有者ともめていなければ司法書士
  • 共有者ともめているなら弁護士

それぞれ解説します。

共有者ともめていなければ司法書士

共有者同士でもめておらず、関係が良好な場合は司法書士に依頼することをおすすめします。

司法書士は、法務大臣の認定を受ければ訴訟に関わる業務を行えるものの、簡易裁判所での取り扱いが可能な「140万円以下の民事事件」に限られているためです。時効取得する不動産の評価額が140万円を超える場合、司法書士では訴訟に対応できません。

しかし、共有者同士でもめる要素がなく、訴訟を行ずに時効取得の手続きを終えられるなら、登記の専門家である司法書士に依頼したほうがスムーズです。

なお、司法書士に依頼したあとで訴訟に発展したときでも、弁護士と提携している司法書士であれば、司法書士経由で弁護士を紹介してもらえる可能性があります。

参照:司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務の認定|法務省

共有者ともめているなら弁護士

共有者ともめているケースや、関係が良好でなくもめる可能性があるときは、はじめから弁護士に依頼したほうがよいでしょう。前述のとおり、司法書士では訴訟に発展した場合、できることに限界があるためです。

弁護士なら、時効取得に関する手続きを一任できます。

ただし登記に関しては、事務所によっては対応していないこともあるため注意が必要です。事前に「どこまで対応してもらえるか」を確認することをおすすめします。

まとめ

共有持分の時効取得の要件や、時効取得できないときの対処法について解説しました。

自分の所有物だと信じている状態で10年または20年不動産を占有していると、「時効取得」できる可能性があります。

しかし、共有不動産の場合は取得時に共有物だと認識していると考えられるため、時効取得の要件をクリアすることは難しいでしょう。

不動産を共有している状態は、さまざまなデメリットがあります。そのため、時効取得ができない場合は共有状態を解消するのがおすすめです。

共有状態を解消するには「共有物分割請求訴訟」のほか、相手の持分を買い取ったり、自分の持分を売却したりといった方法があります。自分の持分を売却するなら、一般の買い手はつきにくいため共有持分専門の買取業者へ依頼するとよいでしょう。

株式会社クランピーリアルエステート」なら、共有持分の高価買取が可能です。持分の売却を検討している人は、ぜひ一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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