共有持分の時効取得が認められるケースは?要件・判例やできない場合の対処法

共有持分の時効取得の要件は5つ!時効取得できない場合の対処法も解説

取得時効とは、他人のものを一定期間占有した人が、法律上の要件を満たした場合にその所有権を取得できる制度です。

共有持分も、他の不動産と同じく要件を満たせば時効取得できる可能性があります。必要な占有期間は原則20年ですが、占有開始時に自分に所有権があると信じ、そう信じたことに過失がなければ10年です。

共有持分の時効取得の主な要件は、次の5つです。

  • 所有の意思をもって占有している
  • 平穏かつ公然に占有している
  • 一定期間継続して占有している
  • 他人のものを占有している
  • 短期取得時効の場合、占有開始時に善意無過失である

ただし、共有不動産の共有持分を持つ人は、もともとその不動産を使用できる立場にあります。そのため、長年住み続けたり管理したりしているだけでは、他の共有者の持分についてまで所有の意思があるとは原則として認められません。

また、占有開始時に他の共有者にも持分があると知っていた場合は、善意の要件を満たさず、10年の取得時効は認められません。不動産の購入や相続などを経たうえで、他の共有者について善意無過失のまま占有を続けるハードルは高いことから、少なくとも共有持分を10年で時効取得をするのは難しいと言われています。

その一方で、唯一の法定相続人が、他の人にも遺産を分ける遺言の存在を知らず、不動産を自分だけが相続したと信じて占有を続け、他の人の共有持分の時効取得が認められた最高裁令和6年3月19日判決もあります。

このように、時効取得が認められるかは、占有を始めた経緯やその後の行動などによって異なります。

占有の開始時期や善意無過失の有無は、本人の認識だけでは判断できません。当時の状況や裏付けとなる資料などを踏まえて確認する必要があります。

共有持分の時効取得を主張したい場合は、要件を満たすかの検討から、他の共有者との交渉や訴訟まで対応できる弁護士に相談することをおすすめします。

もし時効取得の要件を満たすのが難しい場合も、共有状態をそのままにしておく必要はありません。共有者と話し合って不動産全体を売却する方法や、共有物分割請求によって共有関係の解消を目指す方法のほか、自分の共有持分だけを売却する方法もあります。

弊社クランピーリアルエステートでは、共有状態の解消を目的とした共有持分の売却相談も承っております。「時効取得は難しそうだが、共有状態から抜け出したい」「他の共有者と話し合いが進まず、自分の持分だけ手放したい」という場合は、お気軽にご相談ください。

本記事では、共有持分を時効取得するための要件や手続きの流れ、税金・費用、時効取得が難しい場合の共有状態の解消方法を詳しく解説します。

時効取得は他人のものを一定期間占有した人が所有権を取得できる制度

時効取得とは、不動産や動産などのものを、自分のものとして10年または20年間占有し、法律上の要件を満たした場合にその所有権を取得できる制度です。

民法第162条にて、以下のように定められています。

(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
引用元:e-Gov法令検索「民法第百六十二条」

例えば、Aが所有している建物をBが一定期間、自己の所有物として占有し、平穏かつ公然であることなどの要件を満たした場合に取得時効が成立します。

その後、BがAに対して時効の援用(時効によって所有権を取得する旨の意思表示)をすれば、その建物はBのものとなり、Aは所有権を失います。

「不動産の時効取得は本当にあり得るの?」と思われるかもしれませんが、実際に認められた事例や、裁判所の判例・裁判例がいくつもあります。不動産実務においては、隣地との境界付近の土地の所有権や、登記名義をめぐる問題を解決する方法として、時効取得が検討されることもあります。

共有持分も時効取得の対象になる

共有持分も、他の不動産などと同じく時効取得の対象です。要件を満たせば、他の共有者の持分を取得できる可能性があります。

共有持分関係の時効取得で考えられるのが、相続が絡むケースです。

例えば、登記が何代にもわたって放置された土地を相続した場合、共有者が数十人以上になる事案が不動産実務でも実際に存在します。

共有者が数十人に上ると、連絡が取れない人や海外に住む人がいるなどの事情から、相続関係を確認するための書類収集や、遺産分割の話し合いに多くの手間がかかることが想定されるでしょう。

こうした土地でも、相続人の1人が土地全体を自分だけのものとして一定期間占有したうえで所定の要件を満たしていれば、他の相続人の共有持分を時効取得して共有状態を解消できる可能性があります。

相続に関連する別の事案として、最高裁令和6年3月19日判決でも、共有持分の時効取得が認められた例があります。

この事案では、唯一の法定相続人が、他の人にも遺産を分ける内容の遺言の存在を知らず、不動産を自分だけが相続したと信じて占有を続けていました。また、占有を始めた時点で、自分だけが所有者だと信じたことについて過失がなかったと認定されています。

最高裁は、他の人が遺言によって取得した共有持分について、時効取得を認めた原審の判断を支持しました。

参考:裁判所「最高裁令和6年3月19日判決(令和4年〔受〕第2332号)」

ただし、共有名義不動産を長年1人で使用しているだけで、時効取得が認められるわけではありません。具体的な要件は、後述する「共有持分を時効取得する際の5つの要件」で詳しく解説します。

成立すると「占有を始めたときから自分の所有だった」ことになる

時効取得による所有権の取得は、「原始取得」に当たります。

【原始取得とは】
前の所有者から権利を引き継ぐのではなく、新たに権利を取得することです。時効取得もこれに当たり、抵当権などの負担が消滅する場合があります。ただし、抵当権や地役権が必ず消滅するわけではありません。

具体的には、権利関係が以下のように整理されます。

  • 時効取得した範囲について、前の所有者は所有権を失う
  • 時効の効果が時効期間を数え始める日まで遡り、「その時点から自分のものだった」という扱いになる(時効の遡及効)

時効期間を数え始めた日から時効完成までの間に得た賃料などの収益も、時効取得した持分に対応する範囲では、原則として時効取得した人に帰属します。

また、債務者でも抵当権設定者でもない人が、抵当権の付いた不動産について取得時効の要件を満たす占有をした場合には、民法第397条により抵当権が消滅します。

(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)
第三百九十七条 債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
e-Gov法令検索 民法第397条

ただし、時効完成前ではなく、完成後に設定された抵当権などはまた別の話です。例えば、時効取得による移転登記をしないうちに抵当権の設定登記がされると、時効取得を抵当権者に主張できない場合があります。

共有持分を時効取得する際の5つの要件

共有持分の時効取得について、民法第162条に沿って確認する要件は次の5つです。

  1. 所有の意思をもって占有している
  2. 平穏かつ公然に占有している
  3. 一定期間継続して占有している
  4. 他人のものを占有している
  5. 善意無過失で占有し始めた(短期取得時効の場合)

10年間の占有による短期取得時効では、占有開始時に善意無過失であることも必要です。一方、20年間の占有による取得時効では、占有開始時の善意無過失は求められません。

これらは、共有持分に限らず不動産や動産の所有権の取得時効について、民法第162条の規定に沿って確認する基本事項です。

なお、「他人のもの」という条文の表現については、自分の所有物でも取得時効を主張できるとする判例があります。この点も含め、それぞれの要件を詳しく解説します。

1.所有の意思をもって占有している

「所有の意思をもって占有する」とは、その不動産を所有者として支配する意思で占有することです。このような状態を、自主占有と呼びます。

自分に所有権があると信じているかどうかとは区別されるため、「この共有名義不動産は兄弟と一緒に相続したけど、使っているのは自分だけだから自分のものだ」と思うだけでは足りません。

例えば、賃貸借契約を結んで建物に住んでいる場合、賃貸借自体が「契約終了時に貸主に返還すること」を前提とした契約であるため、原則として所有の意思がある占有には当たりません。

賃貸借のように、所有の意思を伴わない占有を「他主占有」と呼びます。他主占有のままでは、何年占有を続けても時効取得は認められません。

また、共有者の1人が自分の持分に基づいて共有不動産を使用しているだけでは、通常、他の共有者の持分についてまで所有の意思をもって占有しているとは認められません。民法第249条第1項により「共有者は共有物の全部について持分に応じた使用ができる」ため、不動産を使っている事実だけでは、他の共有者の持分まで自分のものとして占有しているとはいえないからです。

所有の意思の有無は、本人がどう思っているかだけで決まるものではなく、占有を始めた経緯やその後の行動などから客観的に判断されます。

具体的には、次のような事情が判断材料になります。

  • 「不動産全体を自分だけが取得した」と考える具体的な経緯の有無
  • 所有者として使用・管理を行い、収益を取得していたか
  • 他の共有者の分まで固定資産税や維持管理費などを自分で負担していたか
  • 「登記済証を持っていた」「自分への所有権移転登記を求めていた」など、所有者として行動していたか

2.平穏かつ公然に占有している

その不動産を「平穏かつ公然に」占有していることも必要です。

「平穏」とは、占有を始めたり続けたりするために、暴行や脅迫などの行為を用いていないことを表します。例えば、「他の共有者を脅して追い出す」「共有者を暴行して無理やり占有を認めさせている」などの場合は、平穏の要件を満たしません。

次に「公然」とは、占有している事実を隠していないことです。

周囲から「その家に昔から住んでいる人」と認識されていたり、占有している土地に自分の家を建てていたりする状況は、公然の一例として挙げられます。

周囲の人全員に占有の事実を知らせる必要はありませんが、第三者に占有していることを隠さずに使用・管理していることが必要です。

3.一定期間継続して占有している

時効取得には、10年または20年間、継続して不動産を占有していることが必要です。

必要な期間は、占有開始時に自分に所有権があると信じていたか、そう信じたことに過失がなかったかによって異なります。

占有期間 占有開始時の状態
10年 自分に所有権があると信じており、そう信じたことに過失がなかった
20年 占有開始時に善意無過失であることは不要
他人のものだと知っていた場合や、自分のものだと信じたことに過失があった場合も含む

時効取得における過失の例としては、「登記情報を調べれば他人の土地だと分かったのに、確認しなかった」「登記情報や現地の状況を調べれば、相続した土地の範囲外だと分かったのに、確認しなかった」などが挙げられます。実際に過失と認められるかは、占有を始めた経緯や当時の状況によって異なります。

いずれの場合も、所有の意思や平穏・公然など、他の要件を満たしていることが前提です。

ポイント

■占有期間はいつから始まるの?

最高裁の判決では、取得時効の期間は「時効の要件を満たす占有を始めたとき」から数え始めるものであり、時効を主張する人が自分の都合で開始日を決めることはできないとされています。
単純に、その不動産に住み始めた日から数えればよいわけではありません。相続前後の事情や、占有の性質が変わったといえる事情の有無によって判断が異なります。

居住開始日や相続開始日だけで判断せず、占有を始めた経緯も調査しましょう。

4.他人のものを占有している

民法第162条は、取得時効の対象を「他人の物」と定めています。

共有名義不動産では、自分の共有持分ではなく、他の共有者の持分を時効取得できるかが主な問題となります。

例えば、兄弟が持分2分の1ずつで所有する家に、兄だけが住んで家全体を使用・管理している場合、兄が時効取得できるか問題になるのは弟が所有する持分2分の1です。

ポイント

なお、自分の所有物が一律に時効取得の対象外になるわけではありません。

最高裁昭和42年7月21日判決は、所有権に基づいて不動産を占有している人にも、民法第162条が適用されると判断しています。例えば、登記がされていないなどの事情から所有権を取得したことの証明が難しい場合には、自分の所有物についても取得時効を主張できることがあります。

参考:裁判所「最高裁昭和42年7月21日判決」

5.善意無過失で占有し始めた(短期取得時効の場合)

10年間の占有による短期取得時効を主張するには、占有開始時に善意無過失であることが必要です。

【善意無過失とは】
占有開始時に「自分に所有権がある」と信じており、そう信じたことに過失がなかったといえる状況のこと。

占有開始時点で善意無過失であれば、途中で他人のものだとわかっても、他の要件を満たして10年間占有を続ければ短期取得時効が認められます。

なお、善意は民法第186条によって推定されますが、無過失は推定されません。そのため、10年の取得時効を主張する人が、占有開始時に無過失であったことを証明する必要があります。

もし無過失であることを証明できなければ、10年の取得時効は認められません。その場合は、他の要件を満たしたうえで、20年の取得時効が成立するかを検討します。

共有持分の時効取得が難しい2つの理由

共有持分の時効取得は、法律上不可能ではありません。しかし、他の共有者の持分についても取得時効の要件を満たす必要があり、長年使用しているというだけでは認められません。

共有持分の時効取得が難しい理由は、主に次の2つです。

  • 共有者として使用しているだけでは所有の意思が認められないため
  • 10年の時効取得に必要な「善意無過失」が認められにくいため

占有を始めた経緯や管理状況などによっては、共有持分の時効取得が認められるケースもあります。ここでは、時効取得が難しい理由と、判断の際に確認される事情について解説します。

共有者として使用しているだけでは所有の意思が認められないため

共有持分の時効取得が難しい理由の1つは、前述の通り、共有者の1人が自分の持分に基づいて不動産を使用しているだけでは、他の共有持分について所有の意思をもって占有しているとは認められないためです。

例えば、大阪高裁平成29年12月21日判決では、「共同相続した土地に建物を建てた」「建物の賃料を全額取得していた」「土地の固定資産税等を負担していた」という共有者についても、他の共有者の持分に対する自主占有が否定されました。

この事案では、自分だけが土地を相続したと信じて疑わなかったともいえず、他の共同相続人に所有の意思を表示した事実も認められなかったとされています。このように、建物の建築や賃料の取得、納税といった事情があっても、それだけで所有の意思があるとは必ずしもいえないのです。

一方、共有持分の時効取得が認められた裁判例もあります。所有の意思が認められるかどうかは個別の事情によって異なるため、弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。

10年の時効取得に必要な「善意無過失」が認められにくいため

占有開始から10年で時効取得するには、占有開始時に善意無過失であることが必要です。しかし、共有名義不動産においては「占有を始めた時点で他の共有者にも持分があると知っているケース」が多く、この要件を満たすことが難しくなります。

夫婦で持分を決めて共同購入した場合や、兄弟で共同相続したと理解している場合は、多くの場合で「他の共有者にも持分がある」と認識しています。このように、占有開始時から他の共有者の持分があると知っていた場合、その持分については善意とはいえず、10年の取得時効は認められません。

また、自分だけの所有物だと信じていた場合も、そう信じたことに過失がなかったと証明する必要があります。

例えば、「他の養子はすでに離縁しており、自分だけが相続したと思っていた」という場合でも、そう信じた経緯や戸籍などで、本当に相続関係を確認したかが問題になります。必要な確認をせずに思い込んでいた場合には、過失があると判断される可能性があります。

「他の人にも権利があるとは知らなかった」という説明だけでは、無過失まで認められるとは限りません。

善意無過失の要件を満たせず、10年の取得時効が認められない場合は、他の要件も満たしたうえで20年間の占有が必要になります。

現時点で必要な期間の占有が続いている場合は別として、これから20年間にわたって要件を満たす占有を続ける必要があるとすれば、時効取得を目指す現実的なハードルは高いといえるでしょう。

共有持分を時効取得する際の流れ

共有持分を時効取得する際の流れは以下の通りです。

  1. 要件を満たしているか確認する
  2. 他の共有者に対し時効の援用を行う
  3. 持分移転登記を行う

なお、手続きにかかる期間は、「占有の経緯を裏付ける資料がそろっているか」「相続人の調査が必要か」「相手から登記への協力を得られるか」などによって変わります。訴訟になる場合は、審理に要する期間も見込んでおきましょう。

1.要件を満たしているか確認する

まずは、「共有持分を時効取得する際の5つの要件」で解説した要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。要件を満たしていなければ、時効取得は認められません。

これまでに解説したとおり、共有持分の時効取得でネックとなるのが「他の共有者の持分についても、所有の意思をもって占有しているか」という部分です。

共有名義不動産における、所有の意思や占有期間などを確認するために、次に挙げた資料やその内容を確認してみてください。

  • 登記事項証明書で、登記上の所有者や持分割合、過去の権利移転の経緯を確認する
  • 売買契約書や遺産分割協議書、関係者との手紙・メールなどから、占有を始めた経緯や権利関係についての説明・合意内容を確認する
  • 住民票の除票・戸籍の附票、当時の写真、公共料金の支払記録などから、居住・使用していた時期を確認する
  • 固定資産税の納付資料、修繕工事の契約書・領収書などから、税金や管理費用を誰が負担していたかを確認する
  • 第三者に貸していた場合は、賃貸借契約書や賃料の入金記録などから、誰が貸主として管理し、収益を受け取っていたかを確認する
  • 他の共有者とのやり取りから、使用・管理についての承諾や役割分担、権利の主張や異議の有無を確認する

所有の意思があるといえず要件を満たせない場合は、「時効取得が難しい場合の5つの対処法」で後述する方法を検討しましょう。

要件を満たしているかわからない場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。

2.他の共有者に対し時効の援用を行う

時効取得を主張するには、「時効の援用」を行う必要があります。

【時効の援用とは】
時効による利益を受ける旨を相手に伝える意思表示のこと。取得時効の要件を満たした場合でも、その効果を確定させるには時効を援用する必要がある。

共有持分の時効取得の要件を満たしている場合は、取得対象となる持分を有する他の共有者に対して時効の援用を行いましょう。

援用を行う際に、他の共有者の同意は必要ありません。

時効の援用は口頭で行っても構いませんが、後から援用の内容や相手に伝えた事実を証明することが難しくなるおそれがあります。

証拠を残すためには書面を作成し、「いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の文書を差し出したのか」を日本郵便株式会社が証明する「内容証明郵便」に「配達証明」を付けて送るのがおすすめです。

なお、内容証明だけでは配達の事実までは証明できないため、配達証明も付けることで文書の内容と配達した事実の両方を証拠として残せます。

参照:内容証明|日本郵便株式会社

3.持分移転登記を行う

時効を援用しても、登記上の名義は自動的には変更されません。取得した持分を登記記録に反映するためには、持分移転登記を行う必要があります。

【持分移転登記とは】
共有持分の所有者が変わったことを登記記録に反映する手続きのこと。

自分の持分と時効取得した持分を合わせて不動産全体を所有することになった場合は、単独所有となります。一方、他の共有者の持分が残る場合は、持分移転登記をしても共有状態が続きます。

時効取得による持分移転登記は、原則として、時効取得者と、取得対象となる持分の登記名義人が共同で申請します。そのため、時効取得で持分を失う共有者に登記手続きへ協力してもらう必要があります。

取得対象ではない持分を有する共有者については、申請に参加する必要はありません。

もし共有者が移転登記に協力してくれない場合は、「時効取得を原因とする持分移転登記を求める訴訟(不動産登記請求訴訟)」などを検討します。この訴訟で相手に登記手続きを命じる判決が確定すれば、時効取得者が単独で持分移転登記を申請できます。

なお、時効取得とその登記には、登録免許税や不動産取得税などの税金がかかります。また、登記手続きを司法書士に依頼する場合や、訴訟対応を弁護士に依頼する場合には、別途報酬なども必要です。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

BがAの持分を時効取得したものの、持分移転登記をしていない間に、Aがその持分をCへ売却した場合はどうなるのでしょうか。

時効完成後に持分を買い受けたCとの関係では、原則として、先に登記を備えた側が相手に自分の権利を主張できます。Cが先に登記を済ませた場合、Bは特段の事情がない限り、時効取得したことをCに主張できません。

これは、登記によって初めて所有権を取得するという意味ではありません。時効取得した権利を第三者にも主張するために、登記が重要になるということです。時効取得後の不動産活用や売却などを考慮すると、登記を放置せずに持分移転登記まで進めることが大切です。


時効取得の手続きにかかる税金・費用

共有持分の時効取得には、取得や登記に伴う税金のほか、専門家に依頼する場合の報酬などがかかります。

ここでは、時効取得の手続きにかかる主な税金・費用を紹介します。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 所得税(一時所得)+住民税
  • 持分移転登記の申請費用
  • 移転登記請求訴訟の申立て費用

不動産取得税

時効によって不動産の共有持分を取得すると、原則として「不動産取得税」がかかります。

不動産取得税とは、不動産を取得した際に課税される税金です。共有持分のみを取得した場合は、不動産全体ではなく、取得した持分に対応する価格を基に計算します。

基本的な計算方法は以下のとおりです。

不動産全体の固定資産税評価額×取得した持分割合×税率

※宅地等の特例や住宅に関する軽減措置などを適用する前の計算式

税率は原則4%ですが、土地・住宅には、令和9年3月31日までの取得について3%の軽減税率が適用されます。住宅以外の家屋の税率は4%です。

また、同日までに取得した宅地や宅地に比準して評価される土地については、課税標準となる価格を2分の1にする特例があります。

例えば、固定資産税評価額1,000万円の宅地について、持分2分の1を取得した場合の税額は、次のとおりです。

1,000万円×1/2(取得した持分)×1/2(宅地等の特例)×3%=7万5,000円

※住宅用土地の軽減措置などは考慮なし

他にも、住宅・住宅用土地の軽減措置や免税点によって、税額が減額されたり、課税されなかったりする場合もあります。適用条件は、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所などで確認してください。

固定資産税評価額は、市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書に添付された課税明細書」や、市区町村役場などで取得する「固定資産税評価証明書」で確認できます。

なお、不動産取得税の納税通知書は、登記後数カ月から1年程度で届くことがありますが、都道府県や調査の状況によって時期が異なります。届いたら納期限を確認し、忘れずに納付してください。

登録免許税

時効取得した共有持分の「持分移転登記」を申請する際には、「登録免許税」がかかります。

登録免許税とは、登記申請などの際にかかる国税です。時効取得による持分移転登記では、原則として以下の計算式で算出します。

不動産全体の固定資産税評価額×移転する持分割合×2%

例えば、固定資産税評価額1,000万円の不動産について、持分2分の1を時効取得して移転登記する場合、登録免許税は「1,000万円×1/2×2%=10万円」です。

登録免許税は、金融機関などで納付した領収証書や収入印紙を申請書に貼り付ける方法などで納付します。オンライン申請では電子納付も可能です。

参照:No.7190 登録免許税のあらまし|国税庁
参照:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

所得税(一時所得)+住民税

個人が時効によって不動産の共有持分を取得すると、その持分の時価に相当する経済的利益が、原則として時効を援用した年の一時所得となり、所得税・住民税の課税対象になります。

一時所得の計算方法は以下のとおりです。

時効取得した共有持分の時価-その収入を得るために直接要した費用-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
※同じ年に他の一時所得がある場合、特別控除はそれらを合わせて最高50万円

上記で算出した金額すべてが課税対象になるのではなく、一時所得の金額の2分の1を給与所得などの他の所得と合算して、税額を計算します。

なお、計算で差し引けるのは、時効取得による収入を得るために直接要した費用です。登記費用や裁判費用、弁護士・司法書士への報酬を、すべて差し引けるわけではありません。

所得税については、他の所得や控除なども踏まえて確定申告の要否を確認する必要があります。確定申告をした場合、原則として住民税の申告を別途行う必要はありませんが、確定申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があります。

住民税は市区町村が税額を計算し、納付書による納付や給与からの天引きなどの方法で納めます。

参照:No.1493 土地等の財産を時効の援用により取得したとき|国税庁
参照:No.1490 一時所得|国税庁

持分移転登記の申請費用

持分移転登記の申請にかかる主な費用は、以下のとおりです。

登録免許税 不動産全体の固定資産税評価額×移転する持分割合×2%
※詳細は「登録免許税」へ
証明書取得費用 ・住民票:200〜300円程度
・印鑑登録証明書:200〜300円程度
・固定資産税評価証明書など:0〜400円程度
※1通・1件当たりの目安。自治体、取得方法、物件数などによって異なります。
※無料となるのは、登記用の「評価通知書」などの場合があります。
司法書士への報酬 数万円から10万円程度が目安
※依頼内容によっては10万円を超える場合もあります。

自分で登記申請する場合は司法書士への報酬は発生しませんが、登録免許税や証明書取得費用、郵送費などの実費がかかります。

司法書士への報酬は、登記申請を中心とする依頼で数万円から10万円程度が一つの目安です。ただし、物件数や当事者数、必要な調査・書類作成の内容によっては、10万円を超える場合もあります。

時効の援用や関係者の調査まで依頼するのかによっても費用が変わるため、相談の時点で依頼範囲と見積額を確認しましょう。

移転登記請求訴訟の申立て費用

移転登記請求訴訟を提起する際は、裁判所に対して申立手数料を支払う必要があります。

手数料額は、請求によって得ようとする利益を金額に換算した「訴額」や、申立方法、被告の人数によって決まります。

共有持分の移転登記を求める場合、固定資産税評価額のある不動産では、原則として次の計算を基に訴額を算定します。

土地:不動産全体の固定資産税評価額×1/2×請求対象の持分割合
建物:不動産全体の固定資産税評価額×請求対象の持分割合

土地と建物の両方を対象とする場合は、それぞれ算定した金額を合計しましょう。評価額がない場合などは扱いが異なるため、具体的な訴額と手数料は、申立先の裁判所や依頼する弁護士に確認してください。

2026年5月21日以降に提起する民事訴訟の申立手数料は、以下の通りです。

訴額 書面申立て 電子申立て
100万円 1万2,500円 1万1,400円
200万円 1万7,500円 1万6,400円
300万円 2万2,500円 2万1,400円
500万円 3万2,500円 3万1,400円
1,000万円 5万2,500円 5万1,400円
2,000万円 8万2,500円 8万1,400円
3,000万円 11万2,500円 11万1,400円
5,000万円 17万2,500円 17万1,400円

※被告が1人の場合の金額です。被告が2人以上の場合は、1人増えるごとに2,000円が加算されます。

参照:手数料額早見表|裁判所

上記の申立手数料には郵便費用相当額が含まれるため、原則として、従来のように送達用の郵便切手代を別途予納する必要はありません。

また、弁護士に対応を依頼すると、弁護士への報酬などが発生します。訴訟では時効取得の要件を満たすことを主張し、必要な証拠を提出するため、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
弁護士費用の目安は以下の通りです。

着手金・報酬金は、旧弁護士報酬基準を参考にした税別の目安です。計算の基準となる「経済的利益」は、事件で取得を求める持分や、実際に確保した利益の価額などを指し、固定資産税評価額や裁判所の手数料算定に用いる訴額とは区別されます。

相談料 法律相談を受けた際にかかる費用
30分につき5,000〜1万円程度
※無料の場合もあります。
着手金 弁護士が仕事に取り掛かるための費用
事件の対象となる経済的利益の額を基に計算します。
・300万円以下:経済的利益の額の8%
・300万円超3,000万円以下:経済的利益の額の5%+9万円
・3,000万円超3億円以下:経済的利益の額の3%+69万円
【例】
経済的利益の額が1,000万円の場合:59万円(税別)
報酬金 事件の成功の程度や契約内容に応じて発生する費用
事件処理によって確保した経済的利益の額を基に計算します。
・300万円以下:経済的利益の額の16%
・300万円超3,000万円以下:経済的利益の額の10%+18万円
・3,000万円超3億円以下:経済的利益の額の6%+138万円
【例】
確保した経済的利益の額が1,000万円の場合:118万円(税別)
日当 遠方への出張など、事務所以外での業務に伴う拘束時間に応じてかかる費用
・半日:3〜5万円程度
・1日:5〜10万円程度
実費 事件に対応するうえで実際にかかった費用
・交通費
・宿泊費
・コピー代など

着手金・報酬金の計算で参照した旧弁護士報酬基準は、現在は廃止されています。上記はあくまでも目安であり、料金設定は事務所によって異なります。依頼前に、経済的利益の算定方法や報酬金の発生条件、消費税・実費を含めた見積額を確認しましょう。

時効取得が難しい場合の5つの対処法

時効取得は必ずしも要件を満たせるとは限らないうえに、時効取得を争う協議・訴訟などにまで発展すると費用・時間がかかってしまいます。

また、時効取得できる持分の範囲は、占有の経緯や状況、要件を満たしているかによって決まります。「自分以外の持分をすべて取得したい」「兄の持分だけを取得したい」と希望しても、その通りに取得できるとは限りません。

もし「共有状態を解消したい」「他の人の共有持分を取得して自由に活用したい」といった明確な方針がある場合は、時効取得以外の方法も検討してみましょう。

時効取得では目的を達成するのが難しい場合の対処法は、次の5つです。

  • 他の共有者の持分を自分が買い取る
  • 他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう
  • 他の共有者の同意を得て不動産全体を売却する
  • 共有物分割請求訴訟を起こす
  • 自分の持分を第三者に売却する

そのまま住み続けたいときや不動産を手放したい場合など、ケースによって取るべき対策は異なります。状況に合った解消方法を選びましょう。

他の共有者の持分を自分が買い取る

共有持分は、時効取得を待たずとも他の共有者から直接買い取ることができます。例えば、今後も共有不動産に住み続けたい場合は、他の共有者の持分をすべて買い取れば単独所有にできます。

時効取得と異なり購入代金は必要ですが、共有者間で売買に合意できれば、過去の占有が時効取得の要件を満たすかを争う必要はありません。

ただし、共有持分を買い取るには、相手に売却の意思があり、なおかつ自分にも購入資金が必要です。価格は話し合って決められますが、個人間で持分の時価よりも著しく低い価格で売買すると、買主に贈与税がかかる可能性があるので注意しましょう。

価格の妥当性を確認したい場合は、不動産会社に査定を依頼する方法があります。費用はかかりますが、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼することも可能です。

他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう

共有状態を抜け出すことを優先したい場合は、自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらうのもよいでしょう。

時効取得によって不動産を直接取得する場合と異なり、自分の持分を手放す代わりに売却代金を受け取れます。相手にとっても、持分を増やして単独所有に近づける利点があるため、不動産を今後も使いたい共有者がいる場合は、購入の意向を確認してみてください。

ただし、持分を買い取ってもらうには、相手に購入の意思と資金が必要です。

また、共有持分を売却して譲渡所得(売却益)を得た場合は、その分だけ譲渡所得税や住民税がかかる可能性があります。

共有持分の売却で課税対象となる譲渡所得が生じた場合、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば原則20.315%、5年以下なら原則39.63%の税率が適用されます。

共有持分の売却や、共有持分の税金について、以下の記事で詳しく解説しています。

他の共有者の同意を得て不動産全体を売却する

誰も不動産を取得して使い続ける予定がなければ、不動産全体を売却して共有状態を解消する方法もあります。

不動産全体の売却には、共有者全員の同意が必要です。一方、共有持分だけの売却と異なり、買主が不動産全体を取得できるため、自宅として購入したい一般の買主などにも売却先を広げられます。

時効取得と異なり、不動産を手放さずに活用することはできなくなります。しかし、不動産全体を売却すれば共有状態を解消でき、自分が受け取る代金も、持分だけを第三者に売る場合より多くなることが期待できます。

現在その不動産に住んでいる場合は、売却価格だけでなく、引き渡しまでに転居できるかも確認が必要です。時効取得で住み続ける案から全体売却へ切り替える際は、転居先や引っ越し費用も含めて検討しましょう。

共有物分割請求訴訟を起こす

共有物分割請求訴訟とは、共有物の分割について協議がまとまらない場合や、協議できない場合に、地方裁判所または簡易裁判所へ分割方法の判断を求める民事訴訟です。裁判官の判決や裁判上の和解などを基に、法的に分割方法を決定します。

主な分割方法は、以下の通りです。

分割方法 内容
現物分割 土地を分筆して各共有者がそれぞれ単独所有するなど、共有物そのものを分ける
価格賠償 共有者の1人または数人が他の共有者の持分を取得し、その対価として金銭を支払う
競売による分割 不動産を競売にかけ、売却代金を持分割合に応じて分配する

競売による分割は、現物分割や価格賠償ができない場合、または分割によって不動産の価格が著しく下がるおそれがある場合に命じられます。

裁判所は当事者の希望や不動産の状況などを踏まえて判断するため、必ずしも自分が希望する分割方法になるとは限りません。一部の共有者だけが共有関係から抜け、残りの共有者による共有が続く場合もありますが、協議だけでは解決できない共有関係を整理するための選択肢となります。

ただし、遺産分割が済んでいない相続財産は、原則として家庭裁判所の遺産分割手続きで扱います。

共有物分割請求訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

自分の持分を第三者に売却する

他の共有者との売買や全体売却の話し合いが難しい場合は、自分が所有する持分を第三者に売却する方法があります。第三者に自分の持分を売却する場合も、原則として他の共有者の同意は不要です。

ただし、持分だけを取得しても不動産全体を自由に活用できないため、一般の個人向けに買主を探すのは難しい傾向があります。そのため、「共有持分専門の買取業者」が有力な売却先となります。

専門の買取業者は持分の売買に関するノウハウを持っているため、スムーズな売却が期待できます。また、他の共有者と売買について交渉する必要もありません。

直接買い取ってくれることから、時効取得に必要な占有期間を満たすのが難しい場合や、立証・訴訟に時間をかけたくない場合でも、売買条件がまとまれば持分を手放して現金化できるのもメリットです。

注意点は、持分の売却価格が、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた金額よりも低くなる傾向にある点です。複数社から見積を取り、比較検討することが重要といえます。

→共有持分の買取事例を詳しくみたい方はこちら

時効取得の手続きは状況に合わせて弁護士・司法書士に相談しよう

時効取得の手続きは、状況に合わせて弁護士・司法書士に相談するとよいでしょう。相談先を選ぶ際は、他の共有者から登記への協力を得られるか、交渉や訴訟が必要かを目安にしてください。

  • 共有者ともめていなければ司法書士
  • 交渉・訴訟が必要なら弁護士

共有者ともめていなければ司法書士

他の共有者が時効取得を争っておらず、持分移転登記への協力を得られる場合は、登記の専門家である司法書士に相談するとよいでしょう。

司法書士には、登記に必要な書類の確認・作成や、登記申請の代理を依頼できます。

また、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事訴訟などで代理人となれます。訴額とは、訴訟で請求する権利の経済的な価値を金額で示したもので、共有持分の移転登記を求める場合は、対象となる持分などを踏まえて算定します。

訴額が140万円を超える場合や、地方裁判所での訴訟では、司法書士は訴訟代理人にはなれません。ただし、その場合でも、訴状などの裁判所提出書類の作成を依頼することは可能です。

なお、司法書士に依頼したあとで訴訟に発展したときでも、弁護士と提携している司法書士であれば、弁護士を紹介してもらえる可能性があります。

参照:司法書士の簡裁訴訟代理等関係業務の認定|法務省

交渉・訴訟が必要なら弁護士

他の共有者が時効取得を認めない場合や、交渉・訴訟が必要になると見込まれる場合は、はじめから弁護士に相談するとよいでしょう。

弁護士には、時効取得の見通しについての相談に加え、他の共有者との交渉や、持分移転登記を求める訴訟の代理を依頼できます。占有を始めた経緯や手元の証拠を整理し、時効取得を主張できるか判断してもらうことも可能です。

ただし、登記申請まで対応するか、司法書士と連携して進めるかは事務所によって異なります。事前に「どこまで対応してもらえるか」を確認しておきましょう。

共有持分の時効取得に関するよくある質問

他の共有者から「時効取得した」と言われたらどうすればよいですか?

相手がどの持分について、いつから、どのような根拠で占有していたと主張しているのかを確認しましょう。

使用・管理に関する合意や、固定資産税・修繕費の負担記録などを整理すると、占有の経緯を確認する材料になります。ただし、一つの資料だけで結論が決まるものではありません。

内容証明郵便や訴状が届いた場合は放置せず、主張の内容や回答期限・期日を確認し、関係資料とともに弁護士へ相談してください。

行方不明者の共有持分は、時効取得できますか?

取得時効の要件を満たせば、行方不明者の共有持分も時効取得できる場合があります。ただし、行方不明になってから一定期間が過ぎるだけでは足りず、相手の持分についても所有の意思をもって平穏・公然に占有していることなどが必要です。

時効の援用は、原則として取得対象の持分を有する共有者本人に対して行います。所在を調査しても分からない場合は、裁判所に「公示による意思表示」を申し立て、本人に援用の意思表示が到達したものと扱う方法があります。

持分移転登記のために訴訟が必要になることもあるため、援用から登記までの進め方を弁護士や司法書士に相談しましょう。

時効取得しようとしている持分の所有者が途中で亡くなった場合はどうなりますか?

共有持分の所有者が亡くなったとしても、それまでの占有期間がリセットされるわけではありません。引き続き占有し、取得時効の要件を満たせば、時効取得できる場合があります。

亡くなった方の持分は、原則として相続人に引き継がれます。そのため、時効が完成した後は、その持分を引き継いだ相続人に対して時効を援用します。複数の相続人が持分を引き継いでいる場合、亡くなった方の持分全体を取得するには、原則としてその全員に対する援用が必要です。

登記名義が亡くなった方のままでも、戸籍や遺言書、遺産分割協議書などから、誰が持分を引き継いだかを確認しましょう。

相続人が確定していない場合などには、時効の完成が猶予されることがあります。完成時期や援用の相手方、持分移転登記の進め方は、弁護士や司法書士に相談してください。

なお、占有者が亡くなった場合、その占有を引き継いだ相続人は、亡くなった方の占有期間と自分の占有期間を合算して主張できます。例えば、亡くなった方が8年間占有していた場合、その8年間を自分の占有期間に加えて主張することが可能です。

ただし、合算する場合は、前の占有者の悪意・過失なども引き継ぎます。亡くなった方が所有の意思なく使用していた場合は、その期間を足すだけで時効取得できるわけではありません。

まとめ

所有の意思をもって平穏かつ公然に20年間占有を続けるなど、要件を満たせば、共有持分を時効取得できる可能性があります。占有を始めた時点で、自分に所有権があると信じ、そう信じたことに過失がなければ、必要な期間は10年です。

ただし、共有者はもともと共有不動産を使用できる立場にあるため、長年住み続けたり管理したりしているだけでは、他の共有者の持分についてまで所有の意思をもって占有しているとはいえません。時効取得が認められるかは、占有を始めた経緯や、その後の行動などを踏まえて判断されます。

時効取得が難しく、不動産の使用・管理や費用負担をめぐる悩みを解消したい場合は、ほかの方法も検討しましょう。共有物分割請求訴訟のほか、住み続けたいなら他の共有者の持分を買い取る、手放してよいなら自分の持分を売却するといった選択肢があります。

自分の持分を売却する場合は、一般の買主を見つけにくいため、共有持分専門の買取業者に相談する方法があります。

「株式会社クランピーリアルエステート」では、共有持分の買取・無料査定に対応しています。時効取得以外の方法として持分の売却を検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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