共有持分の一部移転登記とは?全部移転との違い・手続き・申請書の書き方・費用を解説

共有持分の一部移転登記は注意が必要!方法や注意点、代わりの方法を解説

共有持分の一部移転登記とは、共有者が所有する持分の一部だけを他の人へ移し、その内容を登記簿へ反映する手続きです。移転後も自分の持分が残るため、持分を残したまま一部だけを売買・贈与などで移したい場合に行います。

共有持分の一部移転登記のポイントを整理すると、次のようになります。

一部移転登記に該当するケース ・共有持分の一部を売買する場合
・共有持分の一部を贈与する場合
・財産分与で共有持分の一部だけを移す場合
持分全部移転との違い 持分全部移転では所有する持分をすべて移しますが、一部移転では自分の持分を残したまま、その一部だけを移転します。
手続きの流れ 1.必要書類を用意する
2.登記申請書を作成する
3.法務局へ登記を申請する
4.登記完了後に書類を確認する
費用・税金 ・登録免許税:原則「固定資産税評価額 × 移転する持分割合 × 1.5〜2%」で計算
・司法書士報酬:1件3〜6万円程度が目安
・必要書類の取得費用:1,000〜5,000円程度が目安
・不動産取得税:売買・贈与などの場合、原則「固定資産税評価額 × 取得する持分割合 × 3〜4%」で計算
※その他に、印紙税や譲渡所得税、贈与税などが発生する場合がある

一部移転登記の手続きでは、現在の持分と今回移転する持分を正しく確認したうえで、登記原因に応じた必要書類や申請内容を確認することが重要です。

また、移転後も共有関係が続くため、誰がどの持分を所有することになるのかまで考えておく必要があります。共有持分を残す必要がない場合や共有関係から抜けたい場合は、一部移転ではなく、自己持分の全部を移転する方法が適している場合もあります。

本記事では、共有持分の一部移転登記となる具体的なケースや手続き、費用・税金、注意点について詳しく解説します。

共有持分の一部移転登記とは

共有持分の一部移転登記とは、共有者が自分の持分の一部だけを、他の共有者や第三者へ移すときに行う登記です。持分のすべてを手放すのではなく、一部を移転したあとも自分の持分が残る点が特徴です。

たとえば、AとBが不動産をそれぞれ1/2ずつ所有しており、Aが自分の持分1/2のうち、不動産全体の1/4にあたる部分をBへ移すとします。この場合、移転後の持分はAが1/4、Bが3/4となり、Aの持分が一部残るため「A持分一部移転」の登記を行います。

一方、Aが所有する1/2の持分をすべてBへ移す場合は「A持分全部移転」となります。持分一部移転になるかどうかは、移転後も移転する側に持分が残るかどうかが基本的な判断基準です。
共有持分の一部移転と混同しやすい登記との違いは、次のとおりです。

登記の種類 移転する範囲 移転後の状態
持分一部移転 共有者1人が所有する持分の一部 移転した人にも持分が残る
持分全部移転 共有者1人が所有する持分の全部 移転した人の持分は残らない
共有者全員持分全部移転 共有者全員が所有する持分の全部 元の共有者全員の持分が残らない
所有権一部移転 単独名義の不動産の所有権の一部 元の所有者にも持分が残り、共有名義になる
所有権全部移転 単独名義の不動産の所有権全部 元の所有者の権利は残らない
株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

一部移転か全部移転かは目的に応じて判断する

共有持分の一部移転は、持分の一部を残しておきたい事情がある場合に選ばれる方法です。たとえば、賃貸不動産の持分の一部を子どもに贈与しながら、自分も持分を残し、引き続き持分に応じた賃料収入を得たい場合などがあります。
一方、共有関係から抜けることが目的であれば、一部移転では目的を達成できないため、所有する持分すべての移転や売却など、別の方法を検討することになります。
実務では、まず「なぜ持分の一部だけを移したいのか」を整理したうえで、移転する範囲や方法を決めることが重要です。


持分移転登記の種類やそれぞれの違いについては、次の記事でも詳しく紹介しています。

共有持分の一部移転登記を行う主なケース

共有持分の一部移転登記を行うのは、共有者が現在所有している持分の一部だけを他の人へ移し、移転後も自分の持分を残す場合です。

主なケースは、次のとおりです。

  • 共有持分の一部を売買する場合
  • 共有持分の一部を贈与する場合
  • 財産分与で共有持分の一部だけを移す場合

実務では、共有持分の一部移転登記が行われるのは、持分の一部を売買・贈与するケースが中心です。一方で、財産分与でも一部移転登記となる場合があるため、実際の持分割合や合意内容を確認したうえで手続きを進めることが重要です。

ポイント

【相続・持分放棄・共有物分割と持分一部移転の考え方】

相続では、被相続人が所有していた共有持分そのものを相続人が承継するため、原則として「持分全部移転」として扱います。複数の相続人が持分を分けて相続する場合でも、被相続人が所有していた持分全体が承継される点は同じです。

また、共有持分は一部だけを放棄することができないため、「自分の持分の半分だけを放棄する」といった形で持分一部移転を行うことはできません。

共有物分割は共有関係の解消を目的とするため、持分の一部を残すケースは一般的ではありませんが、例外的に持分一部移転となることもあります。

共有持分の一部を売買する場合

共有持分の一部を売買し、売主の持分が移転後も残る場合は、持分一部移転登記を行います。

たとえば、兄と弟が不動産をそれぞれ1/2ずつ共有しており、兄が自分の持分1/2のうち、不動産全体の1/4にあたる部分を弟へ売却するケースです。売却後の持分は兄が1/4、弟が3/4となるため、「持分一部移転」の登記を行います。

共有持分の一部売買は、不動産に対する権利をすべて手放さず、必要な分だけ現金化したい場合に利用できます。

たとえば、まとまった資金が必要になったものの、不動産の持分をすべて売却したくない場合は、一部だけを売却することで、自分の持分を残しながら資金を得られます。

また、兄弟で相続した不動産について、一方が持分を増やしたい場合に、もう一方の持分の一部だけを買い取るケースもあります。

共有持分の一部を贈与する場合

共有持分の一部を無償で家族などへ贈与し、贈与後も贈与者に持分が残る場合は、持分一部移転登記を行います。

たとえば、夫婦が不動産をそれぞれ1/2ずつ共有しており、夫が自分の持分1/2のうち、不動産全体の1/10にあたる部分を子へ贈与するケースです。贈与後は、夫が4/10、妻が5/10、子が1/10の割合で共有することになります。

共有持分の一部贈与は、自分にも持分を残しながら、家族へ不動産の権利の一部を移したい場合に利用できます。

たとえば、将来の資産承継を見据えて親から子へ持分の一部を移しつつ、親も引き続き共有者として持分を残しておきたい場合などです。

なお、持分を無償で贈与すると贈与税がかかる場合があり、生前贈与をすれば必ず相続税の負担を抑えられるわけではありません。贈与税や相続税への影響については、「贈与しても必ず相続税対策になるとは限らない」で詳しく解説します。

財産分与で共有持分の一部だけを移す場合

離婚に伴う財産分与で、夫婦の一方が所有する共有持分の一部だけを相手へ移し、移転後も双方に持分が残る場合は、持分一部移転登記を行います。

たとえば、夫が3/4、妻が1/4の持分を所有している不動産について、財産分与によって夫の持分から不動産全体の1/4を妻へ移すケースです。移転後は夫と妻がそれぞれ1/2ずつ所有することになります。
財産分与では、不動産だけでなく預貯金や有価証券なども含めて分け方を調整するため、その結果として不動産の持分割合だけを変更することがあります。このように、一方の持分をすべて相手へ移すのではなく、双方に持分を残す内容で合意した場合は、持分一部移転登記となります。

ただし、住宅ローンが残っている不動産は、夫婦間の合意だけで自由に名義を変更できるとは限りません。金融機関との契約内容も確認したうえで、財産分与後の名義や住宅ローンをどう整理するか検討する必要があります。

離婚時の共有名義不動産の財産分与や、共同名義の住宅ローンが残っている場合の整理方法については、次の記事でも詳しく紹介しています。

共有持分の一部移転登記の手続きの流れ

共有持分の一部移転登記の主な流れは、次のとおりです。

  1. 必要書類を用意する
  2. 登記申請書を作成する
  3. 法務局へ登記を申請する
  4. 登記完了後に書類を確認する

一部移転登記では、現在の持分と実際に移転する持分割合を正確に確認することが重要です。売買・贈与・財産分与など、登記原因によって必要書類や申請内容も異なるため、それぞれ確認しながら手続きを進めましょう。

なお、共有持分の一部移転登記は自分で申請することもできます。共有者1人の持分の一部を他の共有者1人へ売買・贈与するなど、移転する持分や当事者が明確で、住所変更など別の登記を伴わないケースであれば、本人申請も比較的進めやすいです。

一方、持分割合が複雑なケースや複数の不動産をまとめて移転するケース、住所変更など他の登記も必要なケースでは、司法書士への依頼も検討しましょう。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

一部移転の前に登記簿の名義を確認

持分一部移転登記を進める前に、まず登記簿上の名義を確認しておきましょう。実務では、住所や氏名の変更が登記に反映されていないケースも少なくありません。
とくに相続登記は手続きが後回しにされていることが多く、相続登記が義務化された現在でも、そのことを知らずに亡くなった人の名義のままになっているケースがあります。
その場合は、持分一部移転登記の前に相続登記などを済ませる必要があります。複数の登記が必要になる場合は、司法書士へ相談しながら整理するのがおすすめです。

1.必要書類を用意する

まず、登記申請に必要な書類をそろえます。基本的な必要書類に加え、売買・贈与・財産分与など、登記原因によって準備する書類があります。

本人申請する場合に主に必要となる書類は、次のとおりです。

書類 主に用意する人 用途
登記申請書 申請人 移転する持分や登記原因などを記載して法務局へ提出する
登記識別情報または登記済証 持分を移す人 現在の登記名義人であることを確認する
印鑑登録証明書 持分を移す人 登記申請に使用する実印を確認する
住民票などの住所証明情報 持分を取得する人 新たに登記名義人となる人の住所を確認する
固定資産評価額が確認できる資料 申請人 固定資産評価証明書や固定資産税の課税明細書などを用いて、登録免許税の課税価格を確認・計算する
登記原因証明情報 当事者 持分が移転した原因と内容を証明する書類を用意する。

  • 売買:売買契約書など
  • 贈与:贈与契約書など
  • 財産分与:離婚協議書、財産分与契約書、調停調書など

一部移転では、書類上でも「誰の持分を、どの割合だけ移すのか」が一致していることが重要です。「自分の持分の半分」といった考え方だけでなく、不動産全体に対して何分の何の持分を移転するのかを確認しておきましょう。

贈与契約書の記載事項や作成については、次の記事で詳しく解説しています。

2.登記申請書を作成する

必要書類をそろえたら、登記申請書を作成します。

ここでは、佐藤太郎と佐藤次郎が不動産をそれぞれ1/2ずつ共有しており、佐藤太郎が自分の持分1/2の半分(不動産全体の1/4)を佐藤次郎へ売却するケースを例にします。また、移転する持分に相当する課税価格を1,000万円、登録免許税率は2%が適用されるものとします。

持分一部移転登記の申請書の記載例は、次のとおりです。

登記申請書

登記の目的 佐藤太郎持分一部移転

原因 令和○年○月○日 売買

権利者
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
持分 4分の1
佐藤 次郎 ㊞

氏名ふりがな さとう じろう
生年月日 昭和・平成○年○月○日
メールアドレス 〇〇〇〇
国籍等 日本(2026年10月5日以降)

義務者
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
佐藤 太郎 ㊞

添付情報
登記識別情報
登記原因証明情報
住所証明情報
印鑑証明書
代理権限証明情報(代理申請の場合)

申請日 令和○年○月○日

〇〇法務局 御中

連絡先の電話番号 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

課税価格 金1,000万円

登録免許税 金20万円

不動産の表示 (以下略:対象不動産を記載)

共有者が所有する持分の一部だけを移転する場合、登記の目的には「持分を移す人の氏名 + 持分一部移転」と記載します。上記の例では、佐藤太郎の持分1/2のうち一部だけを移転するため、「佐藤太郎持分一部移転」となります。

原因欄には、登記原因と持分の所有権が移転した日を記載します。売買の場合は「売買」、贈与の場合は「贈与」と、それぞれ実際に所有権が移転した日を記載します。

財産分与の場合は「財産分与」と記載します。離婚後に財産分与の協議が成立した場合は協議成立日、離婚前に協議が成立していた場合は離婚日が原因日となります。売買契約書や贈与契約書、財産分与協議書などの登記原因証明情報と、申請書に記載する原因・日付が一致しているか確認しましょう。
一部移転では、権利者欄に移転後の持分ではなく、今回実際に移転する持分を記載します。上記の例では、佐藤次郎の持分は移転後に3/4となりますが、申請書には今回取得する「持分1/4」と記載します。

申請書には、課税価格と登録免許税も記載します。上記は登録免許税率2%が適用されるケースとしているため、課税価格1,000万円に対する登録免許税は20万円です。

なお、土地の売買には軽減税率が適用されるほか、登記原因によって税率も異なります。詳しくは「共有持分の一部移転登記にかかる費用・税金」で解説します。

参考:不動産登記の申請書様式について|法務局

3.法務局へ登記を申請する

登記申請書と必要書類をそろえたら、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。申請方法は、法務局の窓口へ持参するほか、郵送やオンライン申請も可能です。

売買や贈与による持分一部移転登記は、原則として持分を取得する登記権利者と、持分を移す登記義務者が共同で申請します。司法書士へ依頼する場合は、当事者から委任を受けた司法書士が代理で申請します。

申請後、書類の不足や記載内容に誤りがあると、法務局から補正を求められることがあります。とくに一部移転では、申請書に記載した移転持分と売買契約書・贈与契約書などの内容が一致しているか、提出前に確認しておきましょう。

4.登記完了後に書類を確認する

登記申請後は法務局で審査が行われ、一般的には1〜2週間程度で登記が完了します。ただし、法務局の混雑状況や申請内容によって完了までの期間は異なります。

登記が完了すると登記完了証が交付され、持分を取得した人には、原則として新たに取得した持分について登記識別情報が通知されます。
登記完了後は、登記事項証明書を取得し、移転した持分が申請どおり登記されているか確認しておきましょう。前述の例では、佐藤太郎の持分が1/4、佐藤次郎の持分が3/4となっていることを確認します。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

登記識別情報の保管に注意

登記識別情報は、将来その持分を売却・贈与する際などに必要となる重要な情報です。紛失しても所有権を失うわけではありませんが、原則として再発行されません。

実務でも、売却手続きを進める段階になって「登記識別情報が見つからない」というケースはあります。紛失している場合は事前通知など別の本人確認手続きが必要になるため、売却予定がなくても登記完了後は大切に保管しておきましょう。

共有持分の一部移転登記にかかる費用・税金

共有持分の一部移転登記では、登録免許税や必要書類の取得費用がかかり、司法書士へ依頼する場合は報酬も必要です。また、売買・贈与・財産分与のどの方法で持分を移転するかによって、別途税金が発生する場合があります。

主な費用・税金は、以下のとおりです。

項目 費用・税金の目安 かかるケース
登録免許税 「固定資産税評価額 × 移転する持分割合 × 税率」で計算
売買:建物2%/土地1.5%(2029年3月31日まで)
贈与・財産分与:原則2%
・共有持分の一部移転登記を行う場合
必要書類の取得費用 1,000〜5,000円程度が目安 ・住民票や印鑑登録証明書などの必要書類を取得する場合
司法書士への報酬 1件3〜6万円程度が目安 ・登記手続きを司法書士へ依頼する場合
不動産取得税 「固定資産税評価額 × 移転する持分割合 × 税率」で計算
※宅地等は「固定資産税評価額 × 1/2」(2027年3月31日まで)
土地・住宅用家屋:3%
非住宅用家屋:4%
・共有持分の一部を売買・贈与で取得する場合
・清算的財産分与では原則としてかからないが、分与の内容によって課税される場合がある
印紙税 契約金額に応じて原則200円〜60万円程度
※2027年3月31日までに作成する一定の不動産売買契約書は、軽減措置により200円〜48万円
・共有持分の売買契約書など、課税対象となる契約書を紙で作成する場合
譲渡所得税・住民税 「譲渡所得 × 税率」で計算
所有期間が5年を超える場合:原則20.315%
所有期間が5年以下の場合:原則39.63%
※売却した年の1月1日時点で所有期間を判定
・共有持分の一部を売却して譲渡益が出た場合
・財産分与で共有持分を渡し、譲渡益が生じた場合
贈与税 「(1年間に贈与を受けた財産の合計額 - 基礎控除額110万円) × 税率 - 控除額」で計算
※暦年課税の場合
・贈与によって共有持分の一部を取得した場合
・財産分与でも分与額が過大な場合など

登録免許税や不動産取得税は、原則として今回移転・取得する持分に相当する固定資産税評価額をもとに計算します。そのため、同じ不動産について持分の全部を移転する場合と比べると、一部だけを移転する場合は課税対象となる金額が小さくなり、税額も低くなります。
たとえば、固定資産税評価額4,000万円の不動産について1/2の持分を所有している場合を考えます。税率2%が適用されるケースでは、持分1/2の全部を移転すると課税価格は2,000万円となり、登録免許税は40万円です。

一方、所有する持分1/2の半分(不動産全体の1/4)を一部移転する場合は、課税価格が1,000万円となり、登録免許税は20万円です。

共有持分の移転登記にかかる費用・税金の詳しい計算方法やシミュレーションについては、次の記事で解説しています。

共有持分の一部移転登記をする際の注意点

共有持分の一部移転登記では、自分の持分を残したまま、その一部だけを他の人へ移すことができます。一方で、一部移転ならではの注意点もあります。

とくに確認しておきたいのは、次の2点です。

  • 一部移転後も共有関係が残り、共有者が増える場合もある
  • 共有持分の一部を贈与しても必ず相続税対策になるとは限らない

一部移転後も共有関係が残り、共有者が増える場合もある

共有持分の一部を移転しても、移転する人の持分が残るため、共有関係そのものは解消されません。

また、持分の一部を既存の共有者以外の人へ移転すると、新たな共有者が加わります。共有者が増えるほど、不動産の管理や売却などについて話し合う相手も増え、権利関係が複雑になりやすくなります。
たとえば、兄弟2人で共有している不動産について、兄が自分の持分の一部を子どもへ贈与すると、兄・弟・子どもの3人で共有する状態になります。さらに将来相続が発生すれば、持分が細分化され、共有者が増える可能性もあります。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

共有関係の出口まで考えておくことが大切

共有名義不動産は、共有状態のまま相続が繰り返されると、共有者が増えていきます。実務でも、相続をきっかけに複数人の共有となり、そのままにしていた結果、さらに相続が重なって共有者が10人以上になっていたケースもあります。ここまで共有者が増えると、誰が共有者なのかを把握できていないこともあります。
一部移転自体が問題というわけではありませんが、共有名義不動産を扱う宅建士の立場からは、最終的に誰か1人へ持分を集めるのか、不動産全体を売却するのかなど、共有関係の出口まで考えておくことをおすすめします。


共有者が増えることで起こりやすいトラブルや、共有状態を続けるリスクについては、次の記事でも詳しく解説しています。

共有持分の一部を贈与しても必ず相続税対策になるとは限らない

共有持分の一部を子どもなどへ生前贈与することで将来の相続財産を減らせる場合がありますが、必ずしも相続税の負担を抑えられるとは限りません。
贈与を受けた人には贈与税がかかる場合があり、暦年課税では1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いて贈与税を計算します。また、相続開始前の一定期間内に行われた暦年課税による贈与は、相続税の課税価格に加算される場合があります。

さらに、共有持分を複数回に分けて贈与すると、その都度、登録免許税がかかり、司法書士へ依頼する場合は報酬も必要です。

一方、相続の登録免許税率は0.4%と贈与の2%よりも低く、不動産取得税も原則としてかかりません。登記・取得時の税負担だけを比較すると、生前贈与より相続で引き継ぐ方が負担を抑えられるケースもあります。
ただし、相続では遺産総額によって相続税が発生する可能性があります。相続税対策として共有持分の一部を贈与する場合は、贈与税だけでなく、登録免許税や不動産取得税、将来の相続税まで含めて比較し、税理士などの専門家へ相談したうえで検討しましょう。

参考:贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
共有持分の生前贈与による相続税対策や、贈与する際のメリット・デメリットについては、次の記事でも詳しく解説しています。

共有持分の扱いについて困っているなら売却も検討する

共有持分を残しておきたい事情がなければ、一部だけを移転するのではなく、持分全部を売却して手放したほうがよいケースもあります。

たとえば、共有持分を現金化して資金を確保したい場合は、持分の一部だけを売却するよりも、全部を売却したほうが得られる資金は多くなります。さらに、自己持分をすべて手放せば、その不動産の共有関係から抜けることも可能です。

ただし、共有持分は第三者からすると、不動産の権利の一部でしかなく、一般市場では買主が限られます。立地条件がよく、収益を継続的に得られている賃貸物件の持分などであれば例外的に投資家の目に留まるケースもありますが、宅地などの持分の売却は簡単ではありません。

そのため、現実的な売却先となるのは「他の共有者」「共有持分を専門とする買取業者」の2つです。まず検討したいのは、他の共有者への売却です。新たな共有者が加わることがなく、トラブルも起こりにくいため、理想的な売却先といえます。第三者へ持分だけを売却する場合と比べて、高い価格で交渉しやすい点もメリットです。

一方で、他の共有者に購入する意思や資金がない場合や、価格や条件の折り合いがつかない場合には売却が成立しません。こういったケースでは、共有持分を取り扱う買取業者が選択肢となります。

他の共有者へ売却する場合より価格が低くなる傾向がありますが、業者が直接買主となるため、早期に持分を手放せます。また、売買契約や登記についても、必要に応じて司法書士などと連携しながら進めてもらえるため、売主の手間を抑えやすい点もメリットです。

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持分の一部より全部のほうが高く評価されやすい

買取業者へ売却する場合、持分割合が大きいほど査定ではプラスに評価されやすくなります。弊社の査定実務でも、持分割合は査定価格を左右する要素の1つです。
もちろん、共有者の人数や関係性、不動産の使用状況、立地条件など、査定を左右する要素はほかにもあります。ただ、共有名義では持分割合が大きいほど、不動産の管理や活用に与える影響も大きくなるため、評価が高くなりやすい傾向があります。
実務上、共有持分を現金化することが目的であれば、一部だけを売却するよりも、自己持分をすべて売却したほうが査定価格や手取り額の面で有利になりやすいといえます。


共有持分の売却先や売却方法については、次の記事でも詳しく紹介しています。

まとめ

共有持分の一部移転登記を行う際は、現在の持分と実際に移転する割合を整理したうえで、売買・贈与・財産分与などの登記原因に応じた書類や税金を確認することが大切です。とくに、一部移転では移転後も共有関係が続くため、手続きだけでなく、その後の持分割合や共有者の構成まで考えておく必要があります。

また、生前贈与などで持分を少しずつ移す場合は、贈与税だけでなく、移転のたびに発生する登録免許税や司法書士報酬も含めて負担を比較しましょう。「持分を残す必要があるか」「将来的に共有関係をどう整理するか」まで考えたうえで、一部移転が適しているか判断することが重要です。
共有持分を残しておく事情がなく、現金化や共有関係の解消を目的としている場合は、一部移転にこだわらず、他の共有者や共有持分専門の買取業者へ自己持分をまとめて売却する方法も検討するとよいでしょう。

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