共有名義の底地の売却方法は?売る際のポイント、所有し続けるリスクも解説

共有名義の底地とは、借地権が設定された土地を複数の所有者で共有している状態を指します。持分割合に応じた地代や更新料などの収益は得られるものの、土地の活用に制限があり、共有者間でトラブルが発生しやすいといった課題もあります。そのため、「底地を売却して、共有状態を解消したい」と考える人もいるでしょう。
共有名義の底地を売却する方法は、主に以下の5つです。
- 共有者全員の合意のもと、底地全体を売却する
- 自分の共有持分のみを売却する
- 共有者全員で借地権を買い取り、完全所有権の土地として売却する
- 共有者全員と借地人で協力して同時売却する
- 共有者全員と借地人で底地と借地権を等価交換して売却する
共有者全員の協力が得られる場合は、底地全体の売却を検討できます。売却先は「借地人」、底地を直接買い取ってくれる「不動産買取業者」などが挙げられます。
一方で、共有者のなかに売却に反対する人がいる場合には、自分の持分だけを他の共有者や買取業者に売却するという選択肢もあります。
さらに、借地人の合意が得られるようであれば、借地権の買い取りや同時売却、等価交換といった方法も視野に入るでしょう。
本記事では、共有名義の底地の売却方法や売却する際のポイントを解説します。加えて、売却せずに所有し続けることによるリスクについても触れていきます。共有名義の底地に悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
共有名義の底地の売却方法
共有名義の底地とは、借地権が設定された土地を複数人で共有している状態を指します。もともと底地は市場での流動性が低く買い手がつきにくい不動産ですが、さらに共有名義であることにより権利関係が複雑化し、売却手続きが一層困難になる傾向があります。
共有名義の底地の売却方法は、主に次の5つの方法です。
売却方法 | 概要 |
---|---|
共有者全員の合意のもと、底地全体を売却する |
底地全体を第三者へ売却する方法。 共有者全員の同意が必要です。 売却先は、借地人や不動産買取業者。 |
自分の共有持分のみを売却する |
自分の共有持分のみを第三者に売却する方法。 共有者の同意は不要で、単独で売却できます。 売却先は、共有者や不動産買取業者。 |
共有者全員で借地権を買い取り、完全所有権の土地として売却する |
借地人から借地権を買い取り、土地の所有権をすべて共有者側にまとめたうえで売却する方法。 共有者全員、借地人の同意が必要です。 |
共有者全員と借地人で協力して同時売却する |
底地と借地権を同時に市場に出し、買い手にまとめて売却する方法。 共有者全員、借地人の同意が必要です。 |
共有者全員と借地人で底地と借地権を等価交換して売却する |
地主と借地人が権利を交換し、各自が単独所有権を得たうえでそれぞれ売却する方法。 共有者全員、借地人の同意が必要です。 |
売却方法によっては、共有者や借地人との協力が必要となります。一方、自分の共有持分のみを売却する場合は、他の共有者の同意は必要なく、単独で進められます。底地を取り巻く状況に応じて、最適な方法で売却しましょう。
共有者全員の合意のもと、底地全体を売却する
共有者全員が底地の売却に前向きで、合意を得られるのなら、底地全体の売却を検討できます。売却先として考えられるのは次の2つです。
- 借地人に売却する
- 不動産買取業者に売却する
借地人に売却する
底地は、一般のエンドユーザーにとっては活用しづらいことが多く、買い手が見つかりにくい不動産です。しかし、借地人にとっては事情が異なり、売却に応じてもらえる可能性が高まります。
借地人が底地を取得すれば、これまで分かれていた「建物の所有権」と「土地の使用権(借地権)」を自らが一元的に保有することができるようになります。これにより、地代や更新料などの支払い義務がなくなるうえ、権利関係が整理されることで今後の管理や活用がしやすくなります。また、土地と建物の名義が一本化されることで、不動産全体を売却したり、相続したりする際の手続きも簡素化されます。
このように、借地人にとっては実務上のメリットが大きいため、第三者よりも前向きに購入を検討してもらえるケースが多く見受けられます。結果として、一般市場よりも高い価格で売却できる可能性もあり、地主・借地人双方にとって合理的な選択となり得ます。
借地人への売却が現実的な選択肢となるのは、以下のようなケースです。
- 借地人との関係性が良好で、交渉が比較的スムーズに進められる見込みがある場合
- 市場よりも高値での売却を目指したい場合
不動産買取業者に売却する
借地人への売却が難しい場合には、不動産買取業者に底地を直接買い取ってもらう方法もあります。買取業者は仲介業者とは異なり、自らが買主となるため、買い手を探す手間が不要で、契約から現金化までのスピードが格段に早いというメリットがあります。内覧対応や価格交渉などの手間もかからず、売却にかかる心理的・時間的負担を大幅に軽減できます。
買取業者が迅速に対応できる背景には、明確なビジネスモデルがあります。買取業者は、底地を自社で長期間保有するのではなく、価値を高めたうえで第三者に転売することで利益を得ることを目的としています。
具体的には、以下のような方法で底地の資産価値を高めています。
借地人と交渉して借地権を買い取り、土地全体の所有権を一本化することで、活用しやすい「完全所有」の不動産にします。
隣接底地の集約による土地の整形・大規模化
単独では狭小で利用価値が低い底地を、隣接する複数の底地とまとめて取得することで、整形された土地としてバリューアップを図ります。
このようにして不動産としての市場価値を高めた後、第三者(個人投資家やデベロッパーなど)に転売することで、安く仕入れて高く売るというモデルで利益を確保しているのです。
ただし、転売までには一定の時間やリスクを伴うため、買取価格は仲介でじっくり売却する場合に比べて、相場よりもやや低めに設定される傾向があります。その分、スムーズな手続きと早期の資金化が可能であり、「価格よりスピードや確実性を重視したい」という方にとっては、合理的な選択肢となり得ます。
なお、買取を依頼する際は、底地や共有名義不動産の取り扱いに慣れた専門業者を選ぶことが重要です。経験の浅い業者では、共有者間の調整や借地人との関係など、実務上の複雑な要素に対応しきれないこともあります。
不動産買取業者への売却が向いているのは、以下のようなケースです
- できるだけ早く底地を現金化したい場合
- 交渉や手続きの手間を極力抑えたい場合
- 借地人との交渉が進まず、通常の売却が難しい場合
当サイトを運営する株式会社クランピーリアルエステートでは、共有名義の底地をはじめとする権利関係が複雑な不動産の買取実績を豊富に有しております。現状に合わせた最適なご提案を行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
自分の共有持分のみを売却する
共有者全員の同意が得られず、底地全体を売却できない場合は、自分の共有持分のみを単独で売却する方法があります。この方法では、他の共有者の承諾を得る必要がなく、自分の判断だけで売却することが可能です。
ただし、共有持分だけを購入する一般の買い手は少ないため、売却先は限られます。主な売却先としては、次の2つが挙げられます。
- 底地の共有者に売却する
- 不動産買取業者に売却する
底地の共有者に売却する
底地を共有する他の共有者に、自分の共有持分を売却する方法です。共有者間での売買であれば、第三者への売却に比べて話がスムーズに進みやすく、売却価格も期待できます。
特に、共有者が自分を含めて2人の場合、売却によって相手が単独所有者となれるため、買い手側にも大きなメリットがあります。共有者に買い取りの意思や資金がありそうな場合は、交渉してみると良いでしょう。
一方で、共有者が3人以上いる場合は、売買に関わらなかった共有者との間でトラブルが生じることもあります。持分割合の変動は、地代収入や共有物の管理権限に影響を与えるためです。
民法上、共有物の管理は原則として持分多数決で決定されるため、売却により持分比率が変わると、管理や処分に関する意思決定の影響力も変化します。
トラブルを避けるためにも、事前に共有者全員に売買する意向を伝えるなど、慎重に動く必要があるでしょう。
また、共有者が親族など親しい間柄であっても、売却価格を安くしないように注意が必要です。相場よりも安い価格で売却すると贈与とみなされ、購入した共有者に贈与税が課されるおそれがあります。相場価格を確認し、適正な金額で売却することが重要です。
底地の共有持分価格は、以下の手順でおおよそ算出できます。
1.借地権割合を調べる
借地権割合は、「国税庁の路線価図サイト」から確認できます。
2.土地の評価額を調べる
固定資産税の納税通知書に記載されています。
3.底地全体の評価額を計算する
底地全体の評価額 = 土地の評価額 ×(1 - 借地権割合)
4.自分の共有持分価格を計算する
底地の共有持分価格 = 底地全体の評価額 × 自分の持分割合
<計算例>
土地の評価額:2,000万円
借地権割合:60%
自分の持分割合:1/2
■底地全体の評価額
2,000万円 ×(1 - 0.6)= 800万円
■自分の持分価格:
800万円 × 1/2 = 400万円
おおよその底地の持分価格を把握しておけば、共有者との交渉や価格の妥当性判断にも役立ちます。なお、実際の売買交渉では、地価や需給の影響を受けるため、固定資産税評価額ベースだけでなく、実勢価格を参考に価格感を把握しておくことも重要です。
実勢価格は市場の状況によって変わるため、一般の方が正確に把握するのは難しいものです。無理に自分だけで判断せず、不動産会社や不動産鑑定士など専門家に相談して、適正な価格感を確認することをおすすめします。そうすることで、売却時の価格交渉や税務リスクをより安心して進めることができます。
底地の共有者への売却が向いているのは、次のようなケースです。
- 共有者が自分を含めて2人の場合
- 共有持分を少しでも高く売却したい場合
共有持分の評価額や売却相場については、下記の記事も参考にしてみてください。
不動産買取業者に売却する
共有者への売却が難しい場合は、第三者への売却も検討しましょう。とはいえ、底地の共有持分は、一般の買い手からの需要が低いため、売却先は不動産買取業者となるでしょう。
共有者への売却よりも、売却価格はやや下がる可能性がありますが、プロによる査定で早期売却が可能で、売却の手間も大きく省けます。
底地や共有持分などの訳あり物件に詳しい買取業者に相談すれば、適正な価格での査定が期待でき、安心して取引を進められるでしょう。
買取業者への売却が向いているのは、次のようなケースです。
- 底地の共有持分を早く現金化したい場合
- 売却の交渉に時間や労力をかけたくない場合
株式会社クランピーリアルエステートでは、底地全体はもちろん、共有持分の買い取りも行っています。共有持分の売却先を探している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
共有者全員で借地権を買い取り、完全所有権の土地として売却する
借地人から借地権を買い取り、土地の所有権をすべて共有者側にまとめたうえで売却する方法です。完全所有権の土地として売却できるため、利用用途の制限がなくなり、買い手が見つかりやすくなります。また、借地権付き土地よりも資産価値が高くなるため、市場価格に近い金額での売却が期待できます。
ただし、共有者全員と借地人の合意が必要となるため、同意しない人がいる場合は実行できません。
また、借地権の買い取りと土地の売却がうまくいった場合に備え、売却代金の分配方法や割合について決めておくことが重要です。通常、持分割合に応じて分配しますが、事前に話し合うことでトラブル防止につながります。
借地権の買い取り後の売却が向いているのは、次のようなケースです。
- 共有者全員が時間や労力をおしまない場合
- 借地権の更新が近く、借地人と交渉しやすい場合
共有者全員と借地人で協力して同時売却する
共有者全員の同意と、借地人の協力が得られれば、底地と借地権を一体で売却する「同時売却」が可能です。完全所有権の土地となるため、買い手が見つかりやすく、市場価格に近い金額での売却が期待できます。
ただし、共有者全員および借地人との調整や交渉が必要なため、時間と手間がかかります。また、交渉の過程でスケジュールや売却条件にずれが生じると、全体の取引が遅延するリスクもあるため、段取りを丁寧に進める必要があります。
同時売却が向いているのは、次のようなケースです。
- 共有者全員と借地人が協力的で、売却に前向きな場合
- 借地人側も建物の老朽化などを理由に土地ごと手放す意向がある場合
- できるだけ高値で売却したい場合
共有者全員と借地人で底地と借地権を等価交換して売却する
底地と借地権を等価交換し、互いに完全所有権を持つ土地に分けたうえで売却を行う方法です。複雑な権利関係が整理されるため、売却する際に買い手が見つかりやすくなります。また、市場価格に近い金額での売却も期待できるでしょう。
ただし、共有者全員と借地人の合意が必要であることに加え、土地を分割しても問題がない広さや形状が求められます。
また、適正な評価額の算出や分筆登記などが必要になるため、土地家屋調査士や司法書士などの専門家との連携が必要となるでしょう。
等価交換後の売却が向いているのは、次のようなケースです。
- 底地の面積が広く、分筆可能な形状である場合
- 共有者全員が円満に協議できる関係にある場合
- 借地人側も等価交換に前向きな場合
共有名義の底地を仲介で売却するのは、ほぼ不可能に近い
不動産仲介業者を通じて、共有名義の底地を一般市場で売却することは、理論上は可能です。買い手として想定されるのは、底地を収益物件として活用したいと考える一部の不動産投資家です。
しかし、共有名義の底地は権利関係が複雑で、購入後の管理・運用にリスクが伴うため、一般の市場では敬遠されがちです。実務上は、買い手が見つかる可能性は極めて低く、現実的な売却手段とは言い難いのが実情です。
都心部や駅近など、立地条件が非常に良い底地であれば、ごくまれに投資家の関心を引くこともありますが、成約に至るケースはまれです。地方や交通の便が悪いエリアに至っては、仲介での売却はほぼ不可能といえるでしょう。
共有名義の底地を確実に売却したい場合は、共有者や借地人との協議、あるいは買取業者への売却といった現実的な選択肢を検討するのが良いでしょう。
仲介業者と買取業者の違いについては、下記の記事を参考にしてみてください。
共有名義の底地を売却する際のポイント
共有名義の底地をスムーズに売却するには事前の準備が重要です。具体的には、下記のようなポイントを押さえておきましょう。
- 共有者同士で売却について話し合っておく
- 底地の取り扱い実績のある不動産会社に相談する
- 共有者の権利関係・借地契約の内容を明確にしておく
- 地代・更新料を値上げして、底地の資産価値を上げておく
共有者同士で売却について話し合っておく
自分の共有持分のみ売却は単独で進められますが、底地全体の売却や借地人との等価交換、同時売却などは、共有者全員の合意が必要です。
そのため、まずは自分の売却の意向を共有者に伝えましょう。共有者からの合意が得られた場合は、どのような売却方法を選ぶかについての話し合いに進みます。
なお、自分の共有持分だけを売却する場合も、その意向を共有者に伝えることをおすすめします。後から共有持分の売却を知った場合、トラブルになるおそれがあるためです。
底地の取り扱い実績のある不動産会社に相談する
底地を売却する際は、底地の取り扱い実績のある不動産会社に相談することがポイントです。不動産買取業者でも、不動産仲介業者でも、底地の事情に詳しい会社であれば、適切な査定やアドバイスが期待できます。
一方、底地の取り扱い実績のない不動産会社に依頼すると、対応を断られたり、相場よりも安く売却してしまったりするリスクがあります。
また、買取業者と仲介業者のどちらに相談するかは、底地の条件や売却方法に応じて判断しましょう。
例えば、立地などの条件が悪い底地全体の売却、共有持分のみの売却の場合は、買い手が見つかりにくいため、スピーディーに売却できる買取業者の利用が向いています。
一方で、同時売却や等価交換によって完全所有権の土地にできる場合は、市場での需要が見込めるため、仲介業者に相談するのがおすすめです。また、立地条件が良い底地全体の売却であれば、投資家の目に留まる可能性があるため、仲介業者の利用で買い手が見つかる可能性もあるでしょう。
まずは、底地の取り扱い実績がある業者を探し、相談してみましょう。株式会社クランピーリアルエステートは、底地や共有名義といった訳あり物件を専門とする不動産買取業者です。共有名義の底地についての相談や査定依頼があれば、ぜひご相談ください。
共有者の権利関係・借地契約の内容を明確にしておく
底地を売却する前に、共有者それぞれの持分割合や、借地契約の内容を明確にしておくことが重要です。
共有者それぞれの持分割合を把握しておくと、売却代金の分配の話し合いがしやすくなります。持分割合については、法務局で取得する「登記事項証明書」で確認可能です。相続などで共有者が増え、「誰が共有者なのかわからない」といった場合も、登記事項証明書で共有者の確認ができます。
借地契約の内容については、契約期間、地代、更新料、建て替えや譲渡時の承諾料などの取り決めを明確にしておきましょう。借地人と契約書を交わしていない場合は、売却前に契約内容を書面化しておくと安心です。借地契約の情報を整理することで、底地の買い手に対して正確な説明ができ、スムーズな売却につながります。
地代・更新料を値上げして、底地の資産価値を上げておく
底地の地代や更新料を値上げし、底地の資産価値を上げておくと売却しやすくなります。投資家などの第三者が底地を購入する場合は、将来的な収益性を重視します。そのため、底地の収益性が高ければ高いほど、高値での売却が期待できます。
ただし、地代や更新料の値上げには、借地人の合意が必要です。「地価の上昇」「固定資産税の増加」「周辺相場との乖離」など、客観的かつ正当な理由のもと交渉していく必要があります。
共有名義の底地を所有し続けるリスク
共有名義の底地は、複数人で所有しているため、意思決定や対応に時間がかかり、トラブルが発生しやすい傾向があります。底地を所有し続けることで、次のようなリスクが生じます。
- 底地の売却・契約変更が自由にできない
- 底地の管理・維持費について共有者間で揉める
- 借地人への対応について共有者間で意見が合わない
- 共有者の持分売却で、他人と共有状態になる可能性がある
- 相続によって権利関係が複雑になる
リスクを回避するためにも、なるべく早く共有状態を解消することをおすすめします。
底地全体の売却・契約変更が自由にできない
共有名義の底地は、共有者の同意がなければできない行為が複数あります。例えば、底地全体の売却や、地代の値上げといった契約変更は共有者の同意が必要です。
なお、共有名義不動産に関わる行為は、主に「保存行為」「管理行為」「変更行為」の3つに分類され、それぞれ求められる同意の割合が異なります。
種類 | 必要な同意の割合 | 内容 |
---|---|---|
保存行為 |
同意は不要 | 修繕、相続登記、不法占拠者への明け渡し請求など、財産を維持・保全する行為。 |
管理行為 | 持分の過半数の同意が必要 | 賃貸契約の締結・解除、地代の変更など、日常的な管理に関する行為。 |
変更行為 | 共有者全員の同意が必要 | 底地全体の売却、借地契約の更新、分筆や合筆など、共有物の現状を大きく変更する行為。 |
このように共有名義の底地は、単独で行えない行為が多く、共有者間での調整が必要となることが多々あります。意見のすり合わせや調整を手間に感じる場合は、早めに共有状態を解消することをおすすめします。
底地の管理・維持費について共有者間で揉める
共有名義の底地では、管理や修繕、固定資産税、都市計画税などの費用について、共有者間で意見がわかれ、トラブルになることがあります。通常、これらの費用は共有持分の割合に応じて負担しますが、なかには支払いを拒否する共有者も存在します。
また、納税代表者が支払いを滞納した場合、他の共有者に対して納税通知が届くこともあり、結局は全員が納税義務から逃れられません。立て替え払いを余儀なくされた共有者の不満が蓄積し、共有者同士の関係が悪化するおそれもあります。
底地の管理・維持費を巡ってトラブルが発生している場合や、共有者の関係性が悪く、合意形成が難しい場合は、自分の共有持分のみを買取業者に買い取ってもらうなど、共有状態を解消することも検討すると良いでしょう。
共有名義不動産の固定資産税の滞納については、下記の記事も参考にしてみてください。
借地人への対応について共有者間で意見が合わない
共有名義の底地では、借地人との契約更新、建て替えや増改築の承諾、借地権の譲渡・売却への承諾といった対応において、共有者全員の合意が必要です。しかし、共有者の意見が一致せず、対応がスムーズに進まないケースもあります。
例えば、共有者Aは契約更新に同意しているのに、共有者Bが「地代を増額すべき」と主張して譲らないといった対立が起きることがあります。共有者間の意見のすり合わせが難航すれば、借地人への返答が遅れ、借地人との信頼関係の悪化を招くおそれがあります。
また、共有者の合意がないまま、共有者の1人が勝手に契約更新をしたり、建て替えの承諾料を受け取ってしまったりといったトラブルが起こることもあります。後から他の共有者が知って不信感が高まり、共有者同士の関係が悪化することもあります。
共有者間の意見の対立が多々あったり、調整の手間が大きいと感じたりする場合は、早めに共有状態を解消することをおすすめします。
共有者が持分を売却すると、他人と共有状態になる可能性がある
共有名義の不動産では、自分の共有持分に限っては、他の共有者の同意を得ずに第三者へ売却することが可能です。
そのため、共有者の1人が底地の共有持分を第三者に売却した場合、知らない他人と突然、不動産を共有することになるリスクがあります。新たな共有者との間で利害調整が難航し、意思決定がさらに難しくなることも考えられます。
また、悪質な不動産業者が共有者となった場合、不当に安い価格で共有持分の買い取りを迫られるおそれもあります。
トラブルを回避するためには、共有者同士で定期的にコミュニケーションを図ることが重要です。日頃から情報共有を行い、各共有者の売却意向や今後の方針を把握しておくことで、突然のトラブルを未然に防げます。あらかじめ売却の希望がわかっていれば、底地全体の売却や、共有者間での持分の売買といった選択もできるでしょう。
相続によって権利関係が複雑になる
共有者の死亡によって相続が発生すると、持分が相続人に分割され、結果として共有者の数が増えることがあります。現在の共有者同士の関係性が良好であっても、相続によって新たな共有者が加わることで、意見の対立や意思決定の遅れが生じることもあります。
さらに、共有者が多くなると「誰がどの程度の持分を持っているのか」が把握しにくくなり、底地の管理や売却の合意形成が一層困難になります。権利関係が複雑化することで、地代の分配や修繕の負担割合など、日常的な対応も煩雑になり、トラブルのリスクが高まります。
相続で権利関係が複雑になる前に、共有状態の解消や売却を検討することをおすすめします。
共有名義のリスクについては、下記の記事も参考にしてみてください。
まとめ
共有名義の底地の売却方法は複数あるため、自身の希望や共有者との関係性など、さまざまな要素を考慮しながら選択する必要があります。
「手間をかけずに、できるだけ早く底地を手放したい」といった場合には、不動産買取業者の利用が適しています。底地全体の売却のほか、共有持分のみの売却もできます。そのため、共有者から売却の同意を得られない場合にも相談可能です。
一方で、一定の収益性が見込める底地かつ、共有者全員で協力して売却を進められそうな場合は、不動産仲介業者に相談することで、買い手が見つかる可能性があります。底地の条件や状況に応じて、最適な売却方法を見極めましょう。
共有名義の底地でよくある質問
共有名義の底地とは?
底地とは、借地権が設定されている土地、つまり借地人に貸している土地を指します。共有名義とは、1つの不動産を複数人で共同所有している状態です。
したがって、共有名義の底地とは「借地権が設定されている土地を、複数人で所有している状態」を意味します。
例えば、親が所有していた底地を相続により複数の子どもが引き継いだ場合などに、このような共有状態になることがあります。
共有名義の底地は、権利関係が複雑になりやすく、管理や売却の際に共有者間で意見がわかれやすいです。そのため、相続する際は共有名義にせず、単独名義にしたり、共有名義を早い段階で解消したりすることをおすすめします。
共有名義の解消方法については、下記の記事を参考にしてみてください。
共有名義の底地の売却は難しい?
底地は借地権が設定されているため、自由な利用が難しく、そもそも市場での需要が限られています。さらに、共有名義の底地の場合は、底地全体を売却するのに共有者全員の合意が必要となるため、売却のハードルは一層高くなります。
共有者全員が売却に前向きであれば、底地全体をまとめて売却するのが望ましい方法です。共有者から売却の合意を得るのが難しく、自分の共有持分だけを手放したいのであれば、不動産買取業者に相談することをおすすめします。共有持分のみの売却であれば、他の共有者の同意は必要なく、単独で売却が可能です。
共有者の関係性や底地の状況に応じて、適切な売却方法を選ぶことが重要です。
売却よりも「共有物分割請求」で単独所有を目指した方が良い?
共有物分割請求は、共有状態を解消するための最終手段として、考えるのが良いでしょう。
共有物分割請求とは、不動産などの共有物の共有状態を解消し、単独所有にするための請求です。請求を受けた共有者は「共有物分割協議」に応じる必要がありますが、協議でまとまらない場合は「共有物分割調停」、さらに調停も不成立となる場合は「共有物分割訴訟」に発展します。
共有状態の解消はできますが、時間・費用・精神的負担がかかります。また、訴訟の場合は、現物分割や代償分割(価格賠償)、競売などの方法で解決が図られることもあり、分割方法によっては不動産の価値が下がります。
共有者間での話し合いが難航している場合でも、不動産買取業者に相談すれば、共有持分を買い取ってもらえる可能性があります。共有物分割請求よりも手間なく、共有状態を解消できるでしょう。
共有物分割請求については、下記の記事も参考にしてみてください。