共有持分を相続放棄したいときの完全マニュアル!共有持分は「相続後に売却」がおすすめ

相続財産に共有持分がある場合、「預貯金や株式は相続したいけれど、共有持分は相続放棄したい」と考える人もいるでしょう。
相続放棄は「共有持分だけ」のように一部の財産を選んで行うことはできません。共有持分を相続放棄したい場合は、預貯金や不動産といった遺産全体を丸ごと放棄する必要があります。
そのため、共有持分を含めた遺産を相続するか放棄するかは、「プラスの財産が多いか」「マイナスの財産が多いか」で判断するのが大切です。
例えば、預貯金や株式などのプラスの財産が多ければ、相続を承認して共有持分のみ売却するという選択も有効です。共有持分の売却には他の共有者の同意は不要なため、専門の買取業者に依頼すればスムーズに手放せます。
一方、借金や滞納税金などマイナスの財産が多い場合は、相続放棄することも検討すべきでしょう。ただし、相続放棄には期限(相続を知った日から3ヵ月以内)があるため、早めの判断と行動が大切です。
本記事では、共有持分の相続放棄のメリット・デメリットや注意点、相続放棄が向いているケース、相続放棄の手順などを解説していきます。さらに、共有持分を所有し続けるリスクや、買取業者に依頼した場合のメリットなどにも触れていきます。
なお、相続によって共有持分を取得し、その後の売却を検討されている方は「株式会社クランピーリアルエステート」までご相談ください。
弊社は、年間3,000件以上の相談実績を持つ、共有持分や訳あり物件の買取を専門とする不動産会社です。弁護士をはじめとする1,200以上の士業と連携しており、法律問題や登記、税務面のサポートにも対応できます。共有持分のように複雑な事情を抱える不動産でも、安心してご相談いただけます。
目次
共有持分は相続放棄できる?
共有持分を相続したくない場合は、相続放棄することも可能です。
ただし、相続放棄は遺産全体を対象とした手続きとなるため、「共有持分だけ放棄して、預貯金などは相続する」といった部分的な放棄はできません。 つまり、共有持分だけを選んで放棄することは認められていません。
相続放棄をする場合は、他の財産も含めて一切の相続権を失うことになります。相続放棄を希望する場合は、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出することで手続きできます。
相続放棄の詳しい手続きについてはこちらの記事を参照ください。
相続放棄の手続きは自分でできる? 必要書類や費用相場を紹介
「共有持分の相続放棄」と「共有持分の放棄」は、どちらも共有持分を放棄する方法ですが、別の手続きです。
「共有持分の相続放棄」とは、相続発生時に共有持分を含むすべての遺産を放棄する手続きです。遺産を一切受け取らない意思を示すために、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
一方、「共有持分の放棄」とは、すでに取得した持分を他の共有者に無償で譲渡する手続きです。相続や夫婦でのマイホーム購入などで共有持分を取得したあと、その持分を手放したい場合に行います。
共有持分を相続放棄したらどうなる?ケースごとのシミュレーション
共有持分を相続放棄すると、「次の相続順位の相続人に権利が移る」「特別縁故者に引き継がれる」など、状況によってさまざまな影響が出ます。
ここでは、共有持分の相続放棄によって実際に何が起こるのかを、下記の3パターンに分けて解説します。家族構成や相続人の状況に応じたケース別でわかりやすくシミュレーションしていきます。
- 他に相続人がいる場合:他の相続人に相続権が移る
- 相続人の1人が死亡した場合:代襲相続が発生する可能性がある
- 相続人が誰もいない場合:相続財産清算人による手続き完了後、共有者に共有持分が移る
共有持分を相続放棄して他に相続人がいる場合
共有持分を相続放棄した場合でも、他に法定相続人がいれば、その人たちに相続権が移ります。ここでは、具体的なケースを挙げながら、相続放棄が共有持分の帰属にどう影響するのかを見ていきましょう。
■状況
・夫と妻、長男、長女の4人家族
・夫と妻の共有名義で不動産を所有(持分は各1/2)
・夫が死亡し、相続が発生
・長女が相続放棄を選択
■相続人
長女が相続放棄をすると、相続人は妻と長男の2名。
それぞれの法定相続分は1/2ずつとなります。
■持分の割合
妻:1/2(夫の持分) × 1/2(法定相続分) =1/4、1/2(もともとの持分) + 1/4(相続分) = 3/4
長男:1/2(夫の持分) × 1/2(法定相続分) = 1/4(相続分)
→夫の持分1/2を2人で分け合い、妻と長男がそれぞれ1/4ずつ相続します。妻はもともとの持分もあるため、最終的には3/4の持分となります。
もう1つ例を挙げてみましょう。
■状況
・夫と妻、長女の3人家族
・夫と妻の共有名義で不動産を所有(持分は各1/2)
・夫が死亡し、相続が発生
・長女が相続放棄を選択
・夫の父が存命
■相続人
長女が相続放棄をすると、相続人は妻と夫の父の2名。
それぞれの法定相続分は、 妻が2/3、夫の父が1/3。
■持分の割合
妻:1/2(夫の持分) × 2/3(法定相続分) = 1/3、1/2(もともとの持分) + 1/3(相続分) = 5/6
夫の父:1/2(夫の持分) × 1/3(法定相続分) = 1/6
→夫の持分1/2を法定相続分で分け合います。妻はもともとの持分もあるため最終的な持分は5/6、夫の父は1/6となります。
このように、相続放棄をすると相続人の構成が変わり、面識の薄い親族や代襲相続人が共有者として加わる可能性もあります。相続のたびに共有者が増えると、不動産の管理や売却が複雑になり、トラブルの火種になるおそれもあります。
片方が死亡した場合
共有持分を相続放棄した後に、他の相続人が死亡すると、その人の相続人が「代襲相続人」として持分を引き継ぐことになります。代襲相続によって、次の世代が不動産の共有者となる可能性があるため、状況を想定しておくことが重要です。
■状況
・夫と妻、長男、長女の4人家族
・夫と妻の共有名義で不動産を所有(持分は各1/2)
・夫が死亡し、相続が発生
・長女が相続放棄を選択
・相続手続き開始前に、長男が死亡(長男には子どもが2人いる)
■相続人
夫の死亡時に長女が相続放棄したため、相続人は妻と長男の2名であったが、長男の死亡により代襲相続が発生。相続人は、妻と長男の子どもAとBの合計3名。
法定相続分は妻が1/2、長男の子どもAとBが1/4ずつ。
■持分の割合
妻:1/2(夫の持分) × 1/2(法定相続分) = 1/4、1/2(もともとの持分) + 1/4(相続分) = 3/4
長男の子どもA:1/2(夫の持分) × 1/4(法定相続分) = 1/8
長男の子どもB:1/2(夫の持分) × 1/4(法定相続分) = 1/8
→最終的に、妻が3/4、長男の子ども2人がそれぞれ1/8の共有持分を持つ状態になります。
このように、代襲相続が発生すると不動産の共有者が増え、世代をまたいで細分化される可能性があります。家族関係が複雑になるにつれて、売却・管理に関する調整も難しくなるため、将来的なリスクも踏まえたうえで対応を検討することが大切です。
相続人がいない場合
相続人全員が相続放棄したり、そもそも相続人がいなかったりする場合は、遺産として遺された共有持分はどうなるのでしょうか。
この状況について、民法第255条には以下のように明記されています。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
引用元 e-GOV 法令検索
ただし、すぐに他の共有者に帰属するわけではありません。相続人不在の場合は、相続財産清算人の選任と清算手続きが必要になります。
相続財産清算人とは、被相続人が存在しない場合に、被相続人の財産を管理・清算する人を指します。被相続人の利害関係者(共有者・債権者など)や検察官の申立てにより、選任されます。
相続財産清算人は、債権者への弁済や残余財産の処理などを行い、最終的には国庫へ引き渡すか、特別縁故者に分与する役割を担います。特別縁故者とは、被相続人と生前に生計を共にしていた人、看病をしていた人、内縁の配偶者などです。
共有者に持分が移るまでの流れは以下のとおりです。
【ケース4.相続人がいない場合】
1.相続人がいない、または全員が相続放棄する
「配偶者や子、親、兄弟姉妹などすべての相続人が相続放棄した」もしくは「被相続人に法定相続人がいない」といった状態です。
2.相続財産清算人の選任を申し立てる
利害関係人(共有者や債権者など)が、家庭裁判所に「相続財産清算人の選任」を申し立てます。清算人が選ばれるまで、被相続人の財産は保留状態になります
3.債務の支払いと特別縁故者への分与する
相続財産清算人が、被相続人の債務や未払い金を清算します。特別縁故者(生前に生活を共にしていた人など)がいれば、遺産の一部または全部が分与されることもあります。
4.最終的に共有者へ帰属する
清算後も持分が残っており、特別縁故者もいない場合は、民法第255条により、残された持分は他の共有者に帰属します。
先述したとおり、「相続人がいない=即、共有者に持分が移る」わけではありません。複雑な清算手続きや期間を経て、ようやく共有者に帰属する仕組みになっています。場合によっては、遺産が国庫に帰属してしまうケースもあるため、事前に法的な準備を行うことが重要です。
共有持分を相続放棄することのメリット
共有名義の不動産は、相続後も複数人の意思や状況が関係し続けるため、売却や利用、管理のたびに調整や合意が必要になります。そのため、「相続したはいいが、結局何もできない」「他の共有者とトラブルに発展した」など、ご相談をいただくことも多いです。
こうした将来的な煩雑さやリスクを避けるために有効なのが、「共有持分の相続放棄」です。相続放棄には、以下のようなメリットがあります。
- 不動産の共有によるトラブルを避けられる
- 共有名義不動産における税金を支払う必要がなくなる
不動産の共有によるトラブルを避けられる
相続放棄をすれば、共有名義不動産に関する権利や義務を持たなくなり、共有者間の意見の食い違いによるトラブルを回避できます。
具体的には、以下のようなトラブルを避けられます。
- 不動産の活用方法(居住や賃貸など)が決まらない
- 売却したい人と、住み続けたい人の間で話がまとまらない
- 固定資産税や管理費、修繕費の負担で揉める
- 相続を経るごとに共有者が増え、権利関係が複雑になる
共有名義不動産は、売却や活用方法などを行う際に、共有者から合意を得るなどの調整が必要となります。意見の違いによって、深刻な対立に発展するおそれもあります。
相続放棄を選べば、こうした管理や処分に関する面倒ごとに関わる必要がなくなり、精神的・時間的な負担から解放されます。
共有名義不動産における税金を支払う必要がなくなる
共有持分を相続放棄すれば、共有名義不動産によって発生する固定資産税や都市計画税を負担せずに済みます。法的に相続人でなくなるため、相続税も課税されません。
具体的には、以下のような負担から解放されます。
- 毎年の固定資産税・都市計画税の支払い
- 修繕・維持管理費(マンションの管理費や修繕積立金など)
- 土地・建物の管理にかかる費用や労力
- 他の共有者との連絡・調整にかかる時間とストレス
ただし、相続放棄していてもその不動産を占有・使用している場合には、課税対象とみなされる可能性があります。
共有持分を相続放棄することのデメリット
共有持分の相続放棄は、不動産の管理や売却をめぐる煩雑な手続き、他の共有者とのトラブルを回避できます。しかし、相続放棄による、以下のデメリットも無視できません。
- 共有持分以外の財産も手放さなければならない
- 手続きに手間や費用がかかる
相続放棄によるメリット・デメリットを十分に理解したうえで、相続すべきか放棄すべきかを慎重に判断することが大切です。
共有持分以外の財産も手放さなければならない
相続放棄は「遺産の全部を放棄する」という手続きのため、共有持分だけを放棄して、預金や現金だけ相続するといった選択はできません。
具体的には、以下のような財産すべてを相続放棄することになります。
プラスの財産 | マイナスの財産 |
---|---|
・現金 ・預貯金 ・有価証券(株式、債券、投資信託など) ・不動産(土地、建物、共有持分など) ・動産(自動車、家財、貴金属、美術品など) |
・借金 ・ローン残債 ・未払いの税金や医療費 ・保証人としての債務 ・損害賠償金など法的債務 |
相続放棄すると現金や預金、土地建物などに対しても権利を失うため、プラスの財産が多い相続の場合は、大きな損失につながります。
手続きに手間や費用がかかる
相続放棄をするには、被相続人の死亡を知った日から「原則3ヵ月以内」に、家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出する必要があります。提出先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
自分で相続放棄の手続きをすれば、費用は数千円程度に抑えられます。しかし、戸籍の取り寄せや申述期限の管理など、正確な準備が求められるため、自分で行うには手間や労力がかかります。
弁護士や司法書士といった専門家に手続きを依頼する場合は、別途3〜10万円の費用が必要です。
相続放棄にかかる費用の内訳は、以下のとおりです。
内容 | 費用目安 |
---|---|
収入印紙代 | 800円 |
郵便切手代 | 約400〜500円 |
被相続人の住民票除票、もしくは戸籍附票 | 300円 |
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 | 約450~750円 |
相続放棄する人の戸籍謄本 | 450円 |
弁護士・司法書士への依頼費用 |
司法書士:3~5万円程度 弁護士:5万円〜10万円程度 |
共有持分を相続放棄する場合の3つの注意点
相続放棄の手続きには期限や条件があり、状況によっては放棄自体が認められなくなる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
相続放棄する際は、以下の3つに注意しましょう。
- 相続放棄には期限がある
- 相続財産に手を付けていたら相続放棄ができない
- 一度相続放棄すると撤回できない
それぞれ詳しく解説します。
相続放棄には期限がある
民法915条にも定められているとおり、相続放棄は「被相続人が死亡した事実を知り、自分が相続人であることを知った日」から原則3ヵ月以内に行わなければなりません。この期間を熟慮期間といい、その間に相続するか放棄するかを判断します。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
引用元 e-GOV 法令検索
3ヵ月以内に何の手続きも取らなかった場合は、「法定単純承認」が成立してしまい、プラスの財産もマイナスの財産もすべて無条件で相続することになります。つまり、借金や住宅ローン、税金の未納などがある場合でも、それらをすべて引き継ぐことになります。
相続開始後は、預貯金や不動産だけでなく、負債の有無や金額についてもすぐに調査を始めましょう。3ヵ月は意外と短く、財産調査に時間を要するケースも多いため、必要に応じて弁護士や司法書士に早めに相談するのも一つの手です。
相続財産に手を付けていたら相続放棄ができない
相続放棄を検討している場合は、被相続人の財産に手を付けてはいけません。民法第921条では、一定の行為を行うと「法定単純承認」とみなされ、自動的に相続を受け入れたと判断されます。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
引用元 e-GOV 法令検索
以下のような行為は「相続する意思がある」とみなされ、単純承認になる可能性があります。
- 故人の不動産や車を売却・処分する
- 故人の不動産の名義変更手続きをする
- 故人の預貯金を引き出して使う
- 故人の家具や宝飾品などの財産を譲渡・使用する
これらの行為をしてしまうと、相続放棄できず、たとえ借金や負債があってもすべて相続することになります。また、相続放棄後でも、財産を故意に隠したり、使ったりした場合は、放棄が無効になるおそれがあります。
相続放棄を検討している場合は、財産には一切手を付けず、慎重に判断を進めましょう。
一度相続放棄すると撤回できない
相続放棄は、一度選択すると原則として撤回できません。これは、民法でも明確に規定されています。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
引用元 e-GOV 法令検索
例えば、相続放棄をしてから後になって高額な財産(不動産や預貯金など)が見つかった場合でも、放棄した以上、それを相続することはできません。相続放棄の期限内(相続開始から3ヵ月以内)であっても、一度放棄したら撤回できません。
そのため、相続財産に関する調査を入念に行い、そのうえで相続放棄を選択するかを慎重に判断する必要があります。
なお、以下のような特別な事情がある場合は、家庭裁判所に申し立てることで、例外的に取り消しが認められることがあります。
- 詐欺や強迫によって、相続放棄させられた場合
- 精神疾患や認知症などにより判断能力が著しく低下していた場合
ただし、相続放棄の取り消しは、家庭裁判所が厳格に審査するため、相続に詳しい弁護士のサポートが必要となるでしょう。
共有持分を相続放棄した方が良いケース
共有名義不動産は管理や処分の際に複数人の合意が必要になるなど、相続後にトラブルの火種になることも少なくありません。そのため、状況によっては、あえて共有持分を相続放棄するという選択肢が有効な場合もあります。
以下のようなケースに該当する場合は、共有持分の相続放棄を検討してみましょう。
- プラスの財産よりマイナスの財産が上回っている場合
- 相続トラブルを避けたい場合
それぞれ詳しく解説します。
借金などのマイナスの財産のほうが多い場合
遺産のうち、マイナスの財産が多い場合は、相続放棄を選択する人が多い傾向にあります。相続放棄することで、債務や税金などの負担を引き継がずに済み、家計への悪影響を回避できます。
マイナスの財産が多い状況(債務超過)ですべての遺産を相続した場合、不足分を相続人が自己資金で補う必要があり、大きな経済的損失を被る可能性があります。
また、税金や健康保険料など一部の公的債務は、仮に相続人が自己破産をしても支払い義務が免除されません。そのため、リスクを考慮すると、安易に相続を引き受けるべきではありません。
相続の場面では、プラスの財産に目が向きがちですが、実務上、借金や滞納によるトラブルは非常に多く、想定外の負担を背負ってしまうケースも少なくありません。こうした背景から、債務超過の可能性がある場合には、相続放棄の検討をおすすめします。
なお、債務超過かどうかが不明な場合は「限定承認」も検討しましょう。限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を引き継ぐ相続方法です。 つまり、相続してプラスなら得をし、マイナスであれば追加の負担が発生しません。
相続放棄や限定承認の判断を行うためには、財産の内訳を正確に把握する必要があります。以下のステップで調査を進めましょう。
- 相続財産の負債額を調査する
借入状況、ローンの残高、税金・保険料の滞納など、マイナスの財産を洗い出します。 - プラスの財産を調査する
預貯金、不動産、有価証券、車両などの価値を確認し、資産額を見積もります。 -
プラスの財産とマイナスの財産を比較する
相続することで損になるか得になるかを判断し、相続・放棄・限定承認のいずれかを選びます。
相続財産の負債額を調査する
相続放棄をするかどうかを判断するためには、まず被相続人が遺した「負債額」を正確に把握することが重要です。
借金やローン、クレジットカードの未払い、保証債務など、マイナスの財産が多い場合は、相続放棄を選択したほうが後のトラブルを避けられます。
法定相続人は、被相続人の個人信用情報を調査する権限を持っています。 そのため、信用情報機関に開示請求を行えば、債務残高やローンなどの返済状況を調べられます。
個人信用情報を扱う機関は、以下の3つです。
- CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- JICC(株式会社日本信用情報機構)
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
開示請求は、各機関の公式サイトを通じて、インターネットまたは郵送で行えます。必要書類や費用、手順は機関ごとに異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。
実際の現場では、「あとから多額の借金が判明した」「保証人になっていたことに気づかなかった」といったトラブルも少なくありません。こうしたリスクを避けるためにも、財産のプラス・マイナスを丁寧に調査したうえで、相続放棄や限定承認などの選択肢を慎重に検討することが大切です。
プラスの財産を調査する
相続放棄の判断のためには、マイナスの財産だけではなく、プラスの財産の調査も必要です。
被相続人の遺産のうち、プラスの財産が多い場合は、相続放棄によってかえって損をしてしまう可能性があるためです。
プラスの財産の調査は以下のように行います。
- 金融機関の預貯金を調査する
- 株式などの有価証券を調査する
- 仮想通貨、保険積立金、ゴルフ会員権などを調査する
- 不動産の有無を調査する
- 貴金属や自動車、美術品などを調査する
プラスの財産が明らかに多い場合は、相続放棄ではなく相続承認を選択し、共有持分を取得したうえで売却するという選択肢もあります。
なお、共有持分の売却を視野に入れる場合は、事前に持分の価値を知っておくことが重要です。
ただし、共有持分の評価は単純に「不動産全体 × 持分割合」で決まるものではありません。評価額は、不動産の立地や利用状況、共有者の人数や関係性、土地・建物の名義バランスなど、さまざまな要因で左右されます。
さらに、買取業者によって提示される金額にも差があるため、複数の専門業者に査定を依頼して、比較検討するのが賢明です。
プラスの財産とマイナスの財産を比較する
プラスの財産とマイナスの財産を調査できれば、それぞれの総額を比較して、最終的な判断を下しましょう。
- プラスの財産の方が多い場合
相続を承認するのがおすすめです。相続登記をしたうえで共有持分の売却すれば、手元に残る金額を増やせます。 - マイナスの財産の方が多い場合
相続放棄を検討しましょう。借金や滞納税金といった負債の引き継ぎを避けることが可能です。
それぞれのケースで適切な判断は異なります。相続には金銭面だけでなく、将来的な共有不動産の管理トラブルなども影響します。判断が難しい場合は、相続に詳しい弁護士にも相談しながら、慎重に検討しましょう。
相続トラブルを避けたい場合
相続トラブルを避けたい場合には、共有持分を相続放棄するのも1つの手です。
相続が発生した際に遺言書がなく、かつ相続人が複数いる場合は、遺産分割協議によって遺産の分け方を決定する必要があります。しかし、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であり、1人でも反対すれば協議は成立しません。実務上、相続人の意見が食い違い、遺産分割調停や審判に発展することは珍しくなく、解決までに数年を要するケースもみられます。
相続放棄を選択すると、最初から相続人として扱われず。遺産分割協議への参加義務がなくなります。また、調停や審判に発展しても、放棄した人は関与しないため、煩わしい争いから離れられるメリットがあります。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、状況によっては相続放棄を検討することをおすすめします。
共有持分を相続放棄するための必要な手順
マイナスの財産が多い、あるいは相続トラブルを避けたいといった理由から、共有持分を含む財産を相続放棄したい場合は、家庭裁判所を通じて正式な手続きを行う必要があります。
以下の手順に沿って、速やかに申請を進めましょう。
- 家庭裁判所に申述書を提出する
- 回答書を返送する
- 「相続放棄申述受理通知書」が送付される
なお、申請手続きに不安がある場合や、相続関係が複雑な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
1. 家庭裁判所に申述書を提出する
相続放棄をするには、まず被相続人の「最後の住所地を管轄する家庭裁判所」へ、相続放棄の申述書を提出する必要があります。
申述書には以下の情報を記載します。
- 申述人(あなた)の氏名・住所
- 被相続人の氏名・住所
- 相続開始日(被相続人の死亡日)
- 相続財産の概要
申述書の提出は、「被相続人が亡くなったこと」と「自分が相続人であること」の両方を知った日から3ヵ月以内に行う必要があります。期限を過ぎると、原則として放棄は認められず、相続を承認したとみなされてしまいます。
相続放棄の申述書は、裁判所の「相続の放棄の申述書(成人)」からダウンロード可能です。
提出時には、以下の書類も併せて準備しましょう。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
- 収入印紙800円分
- 郵便切手
- 戸籍謄本
なお、戸籍謄本については、以下のように相続放棄する人によって準備する書類が異なります。
相続放棄する人 | 必要な戸籍謄本 |
---|---|
配偶者・子ども | ・被相続人の死亡事項記載の戸籍謄本 |
子どもの代襲者(孫・ひ孫など) |
・被相続人の死亡事項記載の戸籍謄本 ・被代襲者(本来の相続人)の死亡事項記載の戸籍謄本 |
父母・祖父母 |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の子ども(+その代襲者)が死亡している場合は、その出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の父母死亡で祖父母が相続人になる場合は、父母の死亡事項記載の戸籍謄本 |
兄弟姉妹・甥姪 |
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の父母・祖父母の死亡事項記載の戸籍謄本 ・被相続人の子ども(+その代襲者)が死亡している場合は、その出生から死亡までの戸籍謄本 ・甥姪が代襲相続する場合は、被代襲者(本来の相続人)の死亡事項記載の戸籍謄本 |
準備不足による差し戻しや期限超過を避けるためにも、早めの準備と正確な情報記載を心がけることが重要です。必要に応じて、司法書士や弁護士などの専門家への相談も検討してみてください。
2. 回答書を返送する
相続放棄の申述書と必要書類を提出すると、家庭裁判所から約1~3週間ほどで「照会書」と「回答書」が郵送されます。回答書については、家庭裁判所に返送する必要があります。
- 照会書:相続放棄の意思が本人の自由な判断によるものであるかどうかを確認するための文書
- 回答書: 照会書に対して、自分自身の言葉で相続放棄の意思を回答する文書
回答書には、以下の項目について、事実に基づいて丁寧に記入します。
- 被相続人の死亡を知った日付
- 把握している相続財産の内容(借金・預金・不動産など)
- 被相続人との関係(続柄)
- 相続放棄の意思が自分の判断によるものであること
記入内容に不明点がある場合は自己判断せず、家庭裁判所に問い合わせて確認しましょう。不備があると差し戻しになり、手続きが遅れる可能性があります。返送後、再び1~3週間程度で審査が行われ、問題がなければ手続きが完了となります。
3. 「相続放棄申述受理通知書」が送付される
家庭裁判所による審査が無事に完了すると、「相続放棄申述受理通知書」が申述人の元に送付されます。この通知書を受け取った時点で、法的に相続放棄の手続きは完了です。
なお、追加で戸籍謄本などの書類提出を求められることもあるため、その場合は速やかに対応しましょう。
また、被相続人に借金などの負債がある場合、金融機関や貸金業者などの債権者から相続放棄の証明書類を求められることがあります。その際に必要になるのが「相続放棄申述受理証明書」です。
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄申述受理通知書とは異なり、自分で請求しない限り、交付されません。そのため、証明書が必要な場合は、相続放棄を申し立てた家庭裁判所に別途請求しましょう。
共有持分を相続放棄せずに所有し続けることのリスク
不動産の共有状態は、トラブルの火種になりやすいのが実情です。
弊社でも、共有者間の意見の対立や管理の負担などから、共有持分の買取相談を受けることもあります。「売却したい人」「売却したくない人」の意見が対立し、不動産の処分が進まずに固定資産税や管理費だけが発生し、関係悪化に至るといったトラブルも少なくありません。
なお、不動産を共有する場合、以下に挙げる5つのリスクが伴います。
- 他共有者の利用を防げない
- 自由に不動産全体を売却できない
- 自由に不動産全体を賃貸できない
- リフォームしたい場合も他共有者の許可が必要
- さらなる相続によって共有者が際限なく増えてしまう
このようなリスクが発生するのは、共有不動産に対する行為に対して、以下のような制限が設定されているためです。
行為 | 行為の内容 | 行為の具体例 | 行為の制限 |
---|---|---|---|
変更行為 |
・共有物の形に変更を加える ・共有物の性質に変更を加える |
・共有不動産の売却 ・共有不動産の増改築など |
共有者全員の同意が必要 |
管理行為 | 共有物を利用する行為 | 共有不動産の賃貸借契約 | 共有者の持分価格における過半数の同意が必要 |
保存行為 | 共有物の現状を維持する行為 |
・共有不動産の修繕 ・共有不動産の不法占拠者への明け渡し請求など |
共有者が独断で対応可能 |
不動産を共有で相続する場合のリスクについて詳しく解説します。
他共有者の利用を防げない
共有名義不動産において、すべての共有者は不動産を利用する権利が法的に認められています。
共有名義不動産では、各共有者が不動産全体に対して、使用収益権(用益権)を持っているためです。使用収益権とは、不動産を利用して収益を得られる法的権利を指します。持分割合が少なくても、共有者は物件全体を利用することが可能です。
つまり、1/10しか持分がなくても、不動産の全体を使用することができます。実務ではこの点が大きなトラブルになりやすく、「相続で不動産を共有したが、他の共有者が勝手に使っていて困っている」といったケースも多くみられます。
具体的には、以下のようなトラブルが挙げられます。
- 兄弟で共有した実家を、どちらか一方が単独で使用している
- 使用していない側が不公平だと感じて賃料相当の金銭を請求したい
- 第三者への売却や賃貸をめぐって話がまとまらない
また、共有者同士で利用に関する協議を行わなかった場合、「使用できない側」から「使用している側」へ対価(使用料や賃料)を請求するケースもあります。
共有者間で利用に関するルールを事前に取り決めておくか、共有状態の解消を早期に検討することが、トラブル回避のカギになります。
自由に不動産全体を売却できない
共有名義不動産は、特定の共有者の判断だけで、自由に売却できません。不動産全体の売却は「変更行為」に該当し、民法第251条により共有者全員の同意が必要となるためです。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用元 e-GOV 法令検索
例えば、4人で相続して共有状態になっている不動産を売却したい場合、4人全員の同意がないと売却はできません。1人でも反対する共有者がいれば、売却の手続きは進められず、結果として不動産の処分ができないまま、管理・維持だけが継続してしまいます。
実務でも、「相続で不動産を取得したけれど、他の共有者が売却に応じてくれない」「話し合いが進まず、固定資産税や維持費だけが発生して困っている」といった相談は多くみられます。また、共有者の数が多いほど意見が割れたり、連絡がつかなくなったりするケースが多く、売却の合意形成が難航します。
そのため、売却の予定がある場合や将来的なトラブルを避けたい場合には、持分を他の共有者に譲渡したり、第三者に売却したりして、早めに共有関係を解消する方法も検討しましょう、相続後に共有状態のまま放置すると、年数が経つほど売却も調整も困難になりやすいため、早めの対応が重要です。
自由に不動産全体を賃貸できない
共有名義不動産は、特定の共有者が「賃貸にして収益化したい」と考えても、自由に第三者へ貸すことはできません。
賃貸は法律上の「共有物の管理行為」に該当し、民法第252条に基づき「持分の過半数の同意」が必要となるためです。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
引用元 e-GOV 法令検索
実務では「親から相続した空き家を有効活用したいが、共有者が音信不通」「兄弟間で意見が食い違って貸し出しに進めない」といった相談が少なくありません。特に、相続をきっかけに不動産を兄弟姉妹で共有するケースでは、「収益を得たい派」と「特に使うつもりのない派」で意見が対立し、話し合いが進まないまま、物件が空き家として放置されてしまうことも多いのが実情です。
賃貸で収益化するつもりで相続したにもかかわらず、共有状態が足かせになってしまい、結局管理費や固定資産税だけがかかってしまうケースもあります。
共有者間での協議が難航しそうな場合は、相続の段階で共有状態を避ける、または持分の整理・売却を検討するのが望ましいと言えます。
リフォームしたい場合も他共有者の許可が必要
不動産を共有名義で相続した場合、リフォームをするにも他の共有者の同意が必要になる場合があります。
現状を維持するための修繕や軽微な補修であれば、どの共有者でも単独で進められます。しかし、資産価値を高めるための大規模なリフォームや、建物の構造に関わるような改修は「管理行為」または「変更行為」に該当し、先述した民法252条の規定により、共有者の持分割合に応じた過半数または全員の同意が必要です。
実務では「相続後、空き家をリフォームして賃貸に出したい」「老朽化した家を住めるように改修したい」という相談がありますが、そのたびに問題となるのが、他の共有者の同意が得られないという点です。
特に共有者のうちの一人が遠方に住んでいたり、音信不通だったりすると、同意の取り付けすら難航し、結果としてリフォームが進まず、不動産が荒れたまま放置されるケースもあります。そのまま放置してしまえば、不動産の資産価値はどんどん下がってしまい、最終的には売却も困難になるリスクがあります。
このように、リフォームだけであっても、共有名義ではスムーズに進められないことが多いため、相続時に共有にするかどうかは慎重に判断すべきです。また、すでに共有になっている場合でも、持分整理や共有解消を視野に入れて対策を講じることが重要です。
さらなる相続によって共有者が際限なく増えてしまう
不動産が共有名義のまま放置されていると、時間の経過とともに共有者がどんどん増えてしまうリスクがあります。
例えば、現共有者の1人が亡くなれば、その人の持分は法定相続人に引き継がれます。法定相続人が配偶者と子ども2人であれば、その持分はさらに3人に分かれ、共有者の数が増えることになります。同様に、自分自身が亡くなった場合も、子どもや孫などの相続人に持分が引き継がれ、世代を超えて共有者が増え続けるのです。
実際の相談でも「相続した不動産の売却を検討しているが、共有者が多すぎて誰がどこにいるかすら分からない」といったケースが多く見受けられます。なかには、海外に居住している共有者や、音信不通となっている親族も含まれており、話し合いがまったく進まない状況に陥ることもあります。
このように、共有者が増えるほど権利関係は複雑化し、売却や賃貸、建て替えといった「変更行為」や「管理行為」を進めるために必要な同意を得ることが極めて困難になります。共有者の1人でも反対すれば、何も進まないという状況に陥りかねません。
相続不動産における共有名義は、一見すると「平等」で良さそうに思えますが、相続が重なることでかえって資産の活用を難しくする大きな要因となります。そのため、こうした将来のリスクを踏まえて、単独名義への変更や売却などによって共有状態を解消することをおすすめします。
相続後に共有持分を売却するなら専門の買取業者に依頼するのが得策
「相続放棄はしたくないけれど、共有持分は手放したい」といった場合は、相続登記後に共有持分のみ売却することも検討してみてください。自分が持つ「共有持分」のみであれば、他の共有者の同意を得ずに単独で売却できます。
ただし、共有持分は一般市場では流通性が非常に低く、買い手がなかなか見つからないというのが実情です。実務でも 「相続で共有名義になったが、自分の持分を早く処分したい」「話がこじれてしまい活用も売却もできない」といった相談が数多く寄せられます。そうしたケースでは、共有持分を専門に扱う買取業者へ相談するのがおすすめです。
買取業者であれば、以下のようなメリットを得られます。
- 売却した後は他の共有者への対応を買取業者がしてくれる
- 仲介では売れづらい共有持分も積極的に買い取ってもらえる
- 数日から1週間程度で現金化できる
- 契約不適合責任を問われない
- 仲介手数料がかからない
- 周囲の人に知られずに売却しやすい
共有持分の売却をご検討中の方は、ぜひ「株式会社クランピーリアルエステート」へご相談ください。
弊社は、共有持分や訳あり不動産の買取を専門に扱う不動産会社として、豊富な実績を有しています。また、全国の弁護士や税理士などの専門家とも連携しているため、既にトラブルが発生している共有持分についても、法的・税務的な面からサポート可能です。
売却した後は他の共有者への対応を買取業者がしてくれる
共有持分を買取業者に売却すれば、その時点で所有権は業者に移るため、以降は他の共有者とのやりとりに一切関与する必要がなくなります。
実務でも「共有持分を相続したが、他の共有者との関係が悪くて困っている」「売却後に揉めたらどうしよう」といった相談がよく寄せられます。
こうしたケースでも共有持分を売却することで、「不動産を他人と一緒に持っているというややこしい状況」から抜け出せるため、精神的な負担からも解放されます。また、買取業者によっては弁護士や司法書士などの士業と連携しており、売却後に発生しうるトラブルや調整も専門家のサポートを受けながら適切に対応してくれます。
「もう他の共有者と関わりたくない」「すぐに縁を切りたい」といった場合には、買取業者への売却は非常に有効な選択肢といえるでしょう。
弊社では、査定から売却までを迅速に進められるのはもちろん、全国の弁護士・税理士とのネットワークにより、法的・税務的な課題が伴う複雑な案件でも、トラブルを未然に防ぎながら安心して手続きを進められます。売却後に共有者とのトラブルが発生した場合は弊社が対応するため、安心してお取引可能です。
仲介では売れづらい共有持分も積極的に買い取ってもらえる
共有名義不動産は、そのままでは自由に利用・処分できないため、一般市場での需要が低く、不動産仲介会社から「買い手がつかない」と断られてしまうケースも少なくありません。
これは、共有持分が他の共有者との調整やトラブルを伴うことが多く、管理や取引に手間がかかる物件として敬遠されがちだからです。仲介業者としても、売れる見込みが薄い物件には労力をかけづらく、結果的に取り扱いを断る傾向があります。
一方、共有持分の取り扱いに特化した買取業者は、こうした事情を十分に理解したうえで対応してくれます。他の共有者との関係性や今後の収益化の可能性、法的リスクを総合的に判断し、複雑な背景を抱えた物件でも適正価格での買取が期待できます。
買取業者であれば、一般の仲介では売れなかった持分でもスムーズに売却できる可能性が高く、「どうせ売れない」とあきらめていた方にも有効な選択肢となるでしょう。
<span class="line"弊社では、他社で断られたような複雑な共有持分についても、積極的に買い取りを行っています。共有持分に特化した専門業者だからこそ、買取後の活用方法をしっかりと確立しており、適正な価格での買取が可能です。
数日から1週間程度で現金化できる
買取業者は不動産を直接買い取るため、現金化が早いです。仲介の場合は、買主探しや価格交渉、契約手続きなどで数ヵ月かかることもありますが、買取業者であれば買い手探しが不要なため、手続きがスピーディーに進みます。
対応の早い専門業者であれば、査定から契約、入金までが最短で数日〜1週間程度で完了することも珍しくありません。
「共有持分を早く手放したい」「できるだけ早く現金化したい」といった場合に適した選択肢といえるでしょう。
弊社では、お問い合わせ・ご依頼から最短12時間で金額査定、最短48時間で現金化が可能です。共有持分の売却を急いでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
契約不適合責任を問われない
買取業者との取引では、「契約不適合責任」を免責とする契約が一般的です。これは、売却後に不動産の不具合が見つかったとしても、売主が責任を負わないという取り決めです。
例えば、売却後の不動産に雨漏りやシロアリ被害などの問題があった場合でも、免責条項が設けられていれば、売却後に損害賠償や契約解除を求められるリスクはありません。そのため、物件の状態に不安がある場合でも、安心して売却を進められます。
なお、すべての買取業者が「契約不適合責任」を免責としているわけではないため、契約前に契約書の内容をよく確認することが重要です。
弊社では、共有持分の買取時に「契約不適合責任を免責とした契約」を結びます。そのため、「売却後にトラブルになるのが不安」「契約解除や損害賠償の心配をせず、安心して手放したい」とお考えの方にも、安心してご利用いただけます。お気軽にご相談ください。
仲介手数料がかからない
買取業者を利用する場合、仲介業者のように仲介手数料が発生しません。売却にかかる手間や費用を最小限にしながら、スピーディーな現金化が可能です。
また、共有持分の買取実績が豊富な業者であれば、過去の取引データをもとに、適正な価格での査定が期待できます。コストパフォーマンスを重視したい方にとって、買取業者は有力な選択肢といえるでしょう。
周囲の人に知られずに売却しやすい
買取業者に相談した場合、業者が物件を直接買い取るため、仲介のように広告を出して買い手を探す必要がありません。広告や内覧がない分、近隣住民や関係者に売却が知られにくいといえます。
売却することを周囲に知られたくない場合や、プライバシーを重視したい場合に適した売却方法と言えるでしょう。
弊社では、ご依頼主様のプライバシーに配慮したお取引を行っています。実際に「近所の人に知られずに売却したい」といったご相談も多く、そうしたご希望に沿った対応を心がけています。ご近所や関係者に知られたくない場合は、どうぞお気軽にその旨をお申し付けください。
まとめ
共有持分の相続放棄をしたい場合は、故人のすべての財産を放棄する必要があります。そのため、まずは遺産全体を調査し、プラスの財産とマイナスの財産のバランスを見極めたうえで、相続するか放棄するかを慎重に判断しましょう。
相続を承認する場合は、共有持分の相続登記を行ったうえで、自分の持分のみを売却することも可能です。この方法であれば、プラスの財産はしっかり受け取りつつ、共有名義不動産によるトラブルや煩雑な手間を避けられます。
一方、相続放棄を選ぶ場合は、「自分が相続人であることを知った日か3ヵ月以内」に手続きする必要があるため、早めの対応が必要です。手続きや書類の準備に不安がある場合は、相続に強い司法書士や弁護士など専門家への相談も検討しましょう。
よくある質問
共有持分を相続放棄すれば不動産の管理責任はなくなりますか?
相続放棄をしても、不動産に対するすべての責任がなくなるとは限りません。 相続放棄時に不動産を「現に占有している(事実上管理している)」状態にある場合は、保存義務(管理義務)を負うと民法940条に定められています。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元 e-Gov「民法」
例えば、土地に物置を置いていたり、草木の手入れをしていたりする場合は、「現に占有している」とみなされ、相続放棄後もその財産について保存義務(管理義務)を負う可能性があります。
ただし、「現に占有している」という内容は、2023年4月の法改正で明文化されたばかりであり、実務上の解釈が定まっていない部分もあります。状況によって判断が分かれることもあるため、不安がある場合は相続問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
共有持分を相続放棄すると固定資産税などの支払い義務はなくなりますか?
相続放棄が家庭裁判所に受理されれば、はじめから相続人ではなかったものとみなされるため、共有持分に対する固定資産税の支払い義務もなくなります。
ただし、注意が必要なのは「相続放棄が正式に受理されるまでは相続人として扱われる」という点です。受理される前に納税通知書が届いた場合などは、一時的に納税義務を負う可能性もあるため、速やかに相続放棄の手続きを進めましょう。
また、先述したとおり、不動産を「現に占有している」状態にある場合は、相続放棄後でも一定の管理責任を問われるケースもあります。不安な点がある場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続放棄をした後は不動産を利用することはできないのでしょうか?
相続放棄をした人は、その不動産を利用できません。相続放棄が家庭裁判所に受理されると、相続財産である不動産についても、一切の権利を持たなくなります。そのため、居住・使用・貸し出し・売却といった利用行為は認められず、行えば不法占有とみなされる可能性があります。
ただし、相続放棄後もその不動産を「現に占有している」状態(例えば、居住を続けていたり、荷物を置いたままになっていたり)であれば、民法第940条により、その不動産を適切に保存する義務が発生します。この場合、利用ではなく「管理責任」が問われることになるため注意が必要です。
不動産の扱いについて不明な点がある場合は、早めに弁護士などの専門家に相談するのが安心です。
共有持分の相続放棄は自分でも行えますか?
共有持分の相続放棄は自分で行うことも可能です。ただし、相続放棄には「相続開始を知った日から3ヵ月以内」という厳格な期限があるほか、書類に不備があると受理されないこともあります。また、財産の全体像が不明なまま相続放棄を行うと、想定外の不利益を被るおそれもあります。
そのため、不動産や借金が絡む複雑なケースでは、弁護士や司法書士といった専門家に相談のうえで進めるのが安心です。確実な手続きと適切な判断を行うためにも、専門家のサポートを活用することをおすすめします。
相続する共有名義不動産に住宅ローンが残っていたらどうすれば良いですか?
相続予定の不動産に住宅ローンが残っている場合、原則としてそのローンも相続の対象となります。つまり、不動産とともに債務(借金)も相続人が引き継ぐことになります。
ただし、被相続人が「団体信用生命保険」に加入していた場合は、話が変わります。団体信用生命保険とは、債務者が死亡または高度障害状態になった際に、保険金によってローン残債が完済される仕組みです。被相続人が団体信用生命保険に加入していた場合、住宅ローンの支払い義務は基本的に免除されます。
団体信用生命保険への加入有無や、適用条件などはローンを組んでいた金融機関に直接問い合わせて確認することが大切です。
なお、団体信用生命保険が適用されず、ローンがそのまま残っている場合には、他の遺産の状況を含めて、相続放棄や限定承認などの対応も検討すべきケースがあります。迷ったときは、相続や不動産に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。