親子の共有名義で名義変更が必要なケースとは?費用や必要書類も解説

親子の共有名義で名義変更が必要なケースとは?費用や必要書類も解説

親子名義の共有不動産は、以下のケースに該当する場合、名義変更が必要になります。

  • 親の共有持分を購入した場合
  • 親の共有持分を生前贈与してもらった場合
  • 親が亡くなって共有持分を相続した場合

名義変更には、所有権移転の登記のために、書類を揃えて不動産を管轄する法務局に提出します。登記完了証が法務局で発行されれば、名義変更は完了します。

また、名義変更を行う場合、以下の税金が発生します。

  • 登録免許税
  • 贈与税
  • 譲渡所得税

さらに、司法書士に手続きを依頼する場合には、数万円から10万円程度の報酬と、約2万円の実費が必要です。

今回は、親子の共有名義不動産を譲渡や相続で名義変更する方法を紹介します。必要な書類や費用も具体的に解説するので、親の持分を取得した人、または取得する予定のある人は参考にしてください。

目次

親子共有名義の不動産を名義変更すべきケース

親子で共有名義となっている不動産は名義変更した方がいいケースがあります。具体的には以下のようなケースです。

  • 親の共有持分を購入した
  • 親の共有持分を生前贈与してもらった
  • 親が亡くなって共有持分を相続した

それぞれ詳しく解説します。

親の共有持分を購入した

子どもが親から共有持分を購入した場合は、名義変更が必要です。

不動産の売買取引によって名義変更を行う場合は、売買の経緯を登記原因証明情報に記載しなければなりません。

親子間で金銭の授受なしに贈与する場合は契約書が存在しないケースが多く、契約は口約束でも成立可能です。しかし、名義変更では、贈与の事実を登記原因証明情報に記載しなければなりません。

なお、不動産の名義変更に必要な書類が知りたい場合は「不動産の名義変更に必要な書類一覧」をご覧ください。

なお、親から子どもに共有持分を売却する(金銭のやりとりが発生する)場合の名義変更では、売買契約書が必要です。

ただし、契約書の不備があった場合、後からトラブルになる恐れがあるため、契約書は慎重に作成しなければなりません。

なお、共有持分の譲渡方法や相場について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

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親の共有持分を生前贈与してもらった

親の共有持分を生前贈与によって受け取った場合も、名義変更が必要です。

親子間での生前贈与が発生する場合、当事者間での合意によって権利は移転します。また、移転に関する登記も義務ではないため、名義変更はしなくてもいいことになります。

ただし、生前贈与によって実質的な名義人が変更になったまま名義変更を行わなかった場合、トラブルになるケースもあるため、名義変更をした方が無難であると考えておいた方がいいでしょう。

親から子どもに名義変更する場合、贈与契約書と収入印紙が必要です。贈与契約書に収入印紙を添付してから印鑑の捺印と署名を行い、契約書を取り交わせば、不動産の納品は完了します。

また、受贈者の子どもには贈与税や不動産取得税も発生すると考えておきましょう。

なお、共有持分の生前贈与で名義変更を行う場合に必要な書類を知りたい場合は、「不動産の名義変更に必要な書類一覧」をご覧ください。

親が亡くなって共有持分を相続した

親が死亡して共有持分を相続した場合も、名義変更が必要です。

相続が発生した際に名義変更することを、相続登記といいます。

2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、不動産の所有者が死亡してから3年以内を期限に登記しなければなりません。

正当な理由なく相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料となります。

なお、相続人が複数人いるケースで、遺言書がなく、かつ法定相続分での継承を望まない場合は、遺産分割協議と協議書の作成が求められます。

遺産分割協議書がなければ相続登記ができないため、必ず作成しましょう。

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親子で共有名義にしている不動産の名義変更の流れ

親子で共有名義となっている不動産の名義変更は、以下の手順で行います。

  1. 所有権移転登記を行う
  2. 登記に必要な書類を準備する
  3. 書類を法務局に提出して審査開始
  4. 登記事項証明書を取得すれば終了

それぞれ詳しく解説します。

所有権移転登記を行う

親子で共有状態になっている不動産の名義変更には、所有権移転登記を行います。

登記手続きは個人でも行えるものの、申請内容に不備や誤りがあった場合は再申請が求められるほか、税金を余計に支払わなければなりません。

申請書類の作成も複雑であるため、できれば司法書士に依頼することをおすすめします。

なお、不動産業者に共有不動産の全体もしくは共有持分を売却するケースでは、業者と提携している司法書士が必要な手続きを代わりに行ってくれるケースがほとんどです。

登記に必要な書類を準備する

登記のために、提出書類を揃えます。

具体的には登記申請書と添付書類が必要になります。

自分で登記する場合は、事前に提出書類を確認することをおすすめします。司法書士に依頼する場合は、書類の準備について打ち合わせしておきましょう。

必要書類に関して詳しくは次章で解説しますが、主な提出書類は以下のとおりです。

  • 登記原因証明情報
  • 権利証もしくは登記識別情報通知
  • 固定資産税評価証明書

書類を法務局に提出して審査開始

必要な書類の準備が完了したら、共有状態にある不動産を管轄する法務局に提出して登記申請を行います。

管轄となる法務局は、法務局のホームページで確認可能です。また、書類の提出方法は、法務局に直接出向いて提出するか、郵送・オンラインで提出できます。

法務局が提出書類を受け取ったら、所有権移転登記の審査が開始されます。書類がチェックされ、不備があった場合は書類の訂正もしくは再提出が求められます。

登記事項証明書を取得すれば終了

提出書類に不備がなく審査が終了すれば登記完了証が交付され、登記は完了します。

登記完了証とは、登記が終わった際に申請人に対して交付される書面です。

登記官の押印があり、不動産の建築年を確認できますが、それ以外に使い道はありません。紛失した場合でも再交付されませんが、登記事項証明書を取得すれば、完了証に記載されている内容を証明可能です。

なお、所有権移転登記は申請を行ってから終了するまでに、早ければ1週間、長くて2週間ほどかかります。

登記完了証を受け取ったら、登記事項証明書を取得します。登記事項証明書は、法務局窓口や法務局証明サービスセンターの窓口、もしくは郵送にて取得できます。

不動産の名義変更に必要な書類一覧

不動産の名義変更(所有権移転登記)を行うには、さまざまな書類が必要です。また、名義変更を行う場合に共通して必要な書類と、状況によって提出が求められる書類があります。

ここでは、不動産の名義変更に必要な書類を詳しく解説します。

すべての人に必要な書類

所有権移転登記を行うすべてのケースで必要になる書類は以下のとおりです。

書類 提出理由 入手場所(注意事項)
登記事項証明書 所有権移転登記をする物件の登記状況が記載されている
(土地や建物の所有者の氏名・住所・抵当権設定登記の有無・構造・大きさなど)
・法務局
・登記・供託オンライン申請システム

贈与・売買において必要となる書類

共有不動産の贈与や売買の登記を行う場合、以下の状況によって準備する書類は異なります。

  • 不動産を手放す方に必要な書類
  • 不動産を入手する方に必要な書類

それぞれ詳しく解説します。

手放す方に必要な書類

まず、贈与や売買によって、不動産を手放す方に必要な書類は以下のとおりです。

書類 提出理由 入手場所(注意事項)
不動産登記申請書 所有権移転登記のあらましを伝えるため(登記申請の目的・原因・登記権利者・義務者・添付書類・申請者など) ・法務局
・法務局Webサイトにフォーマットあり
・自分でも作成可能
※実印での要認印の割印が必要
※実印は印鑑証明書と同じもの
委任状 所有権移転登記を行う人が申請の代行を表明するため(自身で申請する場合は不要) ・法務局
・法務局Webサイトにフォーマットあり
・自分でも作成可能
(※売主の実印、買主の認印が必要)
登記原因証明情報
(売買契約書、贈与契約書、離婚日記載の戸籍謄本など)
所有権移転登記に至った原因、移転する人・される人、登記上の不動産を示すため 登記した法務局
(※売買契約書の場合は領収書の発行と売主の実印の押印が必須)
登記済権利証または登記識別情報 不動産登記上の所有者を示すため 不動産所有者が保管
印鑑証明書 押印された実印を証明するため
(登記簿の住所と現住所が同じである必要あり、不一致の場合は住民票が必要)
・各市区町村役所
・証明サービスコーナー
(※発行から3ヶ月以内の印鑑証明書が必要)
固定資産評価証明書 不動産の資産評価額の証明、登録免許税算出の根拠を示すため 各市区町村役所
身分証明書
(運転免許証、健康保険証など)
所有権移転登記者の本人確認のため

入手する方に必要な書類

次に、贈与や売買によって、不動産を入手する方に必要な書類は以下のとおりです。

書類 提出理由 入手場所(注意事項)
不動産登記申請書 所有権移転登記のあらましを伝えるため(登記申請の目的・原因・登記権利者・義務者・添付書類・申請者など) ・法務局
・法務局Webサイトにフォーマットあり
・自分でも作成可能
※実印での要認印の割印が必要
※実印は印鑑証明書と同じもの
委任状 所有権移転登記を行う人が申請の代行を表明するため(自身で申請する場合は不要) ・法務局
・法務局Webサイトにフォーマットあり
・自分でも作成可能
(※売主の実印、買主の認印が必要)
登記原因証明情報
(売買契約書、贈与契約書、離婚日記載の戸籍謄本など)
所有権移転登記に至った原因、移転する人・される人、登記上の不動産を示すため 登記した法務局
(※売買契約書の場合は領収書の発行と売主の実印の押印が必須)
住民票 相続人の所在を明らかにするため 市区町村役所
(※有効期限の限りなし、戸籍の附票で代用可能)
身分証明書
(運転免許証、健康保険証など)
所有権移転登記者の本人確認のため

相続する場合に必要な書類

次に、遺産相続に必要な書類を紹介します。

遺産相続において、相続人全員が用意する書類は以下のとおりです。

書類 提出理由 入手場所(注意事項)
委任状 所有権移転登記を行う人が申請の代行を表明するため(自身で申請する場合は不要) ・法務局
・法務局Webサイトにフォーマットあり
・自分でも作成可能
(※売主の実印、買主の認印が必要)
戸籍謄本 相続人当人であることを証明するため 市区町村役所
住民票 相続人の所在を証明するため 市区町村役所

なお、遺産分割協議書に押印するための実印が必要です。

また、相続人は以下の書類の提出も必要です。

書類 提出理由 入手場所(注意事項)
被相続人の住民票除票 登記不動産が被相続人のものであると証明するため 各市区町村役所
(※戸籍の附票でも代用可能、住所が登記と不一致の場合は登記済み権利証、不在籍不在住証明書、相続人全員の上申書、不動産権利書の原本が必要)
固定資産評価証明書 不動産の資産評価額の署名、登録免許税算出の根拠のため 拡縮町村役所
(※固定資産評価証明書は最新年のものが必要)
遺産分割協議書 不動産を相続する相続人を確定するため ・司法書士が作成
・自分でも作成可能
(※遺産分割証明書、相続人全員の実印押印が必要)
登記原因証明情報 被相続人の存在を証明する 各市区町村役所
(※被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など、遺産分割協議書や遺言書でも可能)
相続関係説明書 被相続人と相続人の関係を証明するため ・司法書士が作成
・自分でも作成可能
遺言書もしくは検認調書 被相続人の意向を証明するため 検認調書は家庭裁判所が遺言書から作成
(※遺言書や検認調書がある場合のみ必要)

不動産の名義変更にかかる税金と費用

不動産の名義変更を行う場合、税金や費用などの出費が必要です。

出費が必要な税金は以下のとおりです。

  • 登録免許税
  • 贈与税
  • 譲渡所得税

また、所有権移転登記を司法書士に委託する場合は、司法書士費用も必要になります。

それぞれ詳しく解説します。

所有権が移転する際に国に納める「登録免許税」

登録免許税とは、不動産の所有権登記手続きの際に国に納める税金のことです。

税額は、土地や建物の評価額(固定資産性評価額)に税率をかけて算出します。評価額や所有権移転の理由によって税率が異なるが異なります。

具体的な税率は以下のとおりです。

所有権移転の理由 税率(土地) 税率(建物)
売買 2% 2%
贈与 2% 2%
相続 0.4% 0.4%
競売 2% 2%

※売買の場合、土地の税率は令和8年3月31日までは1.5%、建物の税率は令和6年3月31日まで0.3%に軽減

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地の登録免許税は、売買なら30万円(令和8年3月31日まで)、贈与や競売なら40万円、相続ならば8万円となります。

生存中の個人から財産をもらったときにかかる「贈与税」

不動産の名義変更では、贈与税が発生します。

贈与税とは、個人から贈与によって財産を取得した場合にかかる税金のことです。

贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税の2つがあり、一般的には暦年課税が適用されますが、一定の要件を満たした場合には相続時精算課税を選択可能です。

それぞれの計算方法について詳しく解説します。

暦年課税の計算方法

暦年課税とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除(110万円)を引いた残額に対して贈与税が課せられる仕組みのことをいいます。

暦年課税の計算方法は以下のとおりです。

贈与税=(贈与財産の合計額-110万円)×一定の税率(10%~55%)

なお、暦年課税は特例贈与と一般贈与に分類され、それぞれ贈与税の税率が異なるほか、一般贈与の方が、税率が高くなります。

特例贈与とは、父母や祖父母といった直系尊属から、18歳以上の子どもや孫などの直系尊属に対して行われる贈与のことです。一般贈与とは、特例贈与以外の贈与を指します。

以下は特例贈与における贈与税の早見表です。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

次に、一般贈与における雑徭税の早見表は以下のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円以下
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

相続時精算課税制度の計算方法

相続時精算課税制度とは、年間110万円までなら贈与税がかからない基礎控除と、累計2,500万円まで贈与税がかからない特別控除という2つの控除が適用される贈与税の課税制度です。

この制度では、基礎控除額の110万円を除いた贈与の合計金額が2,500万円を超えた場合、一律20%の贈与税が課せられます。

具体的な計算方法は以下のとおりです。

(1年間の贈与合計額-年間110万円)-2,500万円×20%

相続時精算課税制度は、贈与が発生した年の1月1日において、60歳以上の父母や祖父母などの直系尊属から、同じ年の1月1日において10歳以上の子どもや孫に対して贈与が行われる場合に選択できます。

なお、贈与者や受贈者で相談して、この制度を一度選択すると、暦年課税制度に戻ることはできません。

不動産を売却して利益が出た場合にかかる「譲渡所得税」

不動産を売却して発生した利益が出た場合、利益に対して所得税と住民税が発生しますが、これらをまとめて譲渡所得税といいます。

譲渡所得税が課税されるのは、不動産の売却金額が購入金額よりも高い場合(=利益が発生した場合)となります。

また、譲渡所得税は譲渡所得に対して課税されます。譲渡所得金額の計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

この場合の収入金額は、不動産の売却で手にした金額を指します。また、特別控除額とは、不動産の種類や譲渡理由によって異なります。なお、相続した不動産を売却する場合の特別控除額は3,000万円となります。

また、譲渡所得税は譲渡所得に税率をかけて算出しますが、税率は不動産の所有期間によって異なります。具体的な期間と税率は以下のとおりです。

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不動産の所有期間 税率
短期譲渡所得
(譲渡年の1月1日時点で5年以下)
39.63%(所属税30.63%、住民税9%)
長期譲渡所得
(譲渡年の1月1日時点で5年超)
20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

ちなみに、相続不動産の所有期間は、一般的に被相続人が不動産を取得した日から計算します。

司法書士に手続きを依頼する場合の費用

不動産の登記手続きを司法書士に代行してもらった場合、司法書士に対して報酬を支払う必要があります。

所有権移転登記の手続き代行を依頼する場合、不動産1件につき数万円から5万円程度の費用が発生します。

相続登記の手続きを代行してもらう場合は、6万円から10万円程度の費用が必要です。なお、相続人が多い場合は、その分手間がかかりやすいため、報酬額は高くなるのが一般的です。

その他の実費

司法書士に手続きを依頼する場合、実費が請求されるケースがほとんどです。

実費とは、文字通り実際にかかる費用のことで、手数料や利益を含まない正味の費用を指します。

登記手続きの代行を依頼する場合に発生する実費には、以下のようなものがあります。

  • 所有権移転登記の手続きに必要な書類に貼る収入印紙代
  • 必要書類の取得費用
  • 書類を取り寄せる際の切手代などの郵送料
  • 法務局に出向いたときの交通費

実費として請求される金額は、1万円から2万円程度が相場です。

親子で不動産を譲渡・相続する場合の4つの注意点

相続や贈与、譲渡など、親子間で不動産をやりとりする場合、いくつかの注意点があります。具体的には以下の4点に注意しましょう。

  • 相場よりも安く買い取ると「みなし贈与税」がかかる場合がある
  • 共有者が死亡すると持分は他共有者に転移しない
  • 親の認知症に備える
  • 共有不動産を所有するリスクを理解する

それぞれ詳しく解説します。

相場よりも安く買い取ると「みなし贈与税」がかかる場合がある

親子間で不動産を市場相場よりも低い価額で買い取った場合、贈与税が課せられる可能性があります。

この場合、みなし贈与と見なされるケースがあるためです。

みなし贈与とは、贈与者と受贈者の間で贈与の合意がなかったとしても、実質的に贈与と同等の経済的利益があった場合に、贈与とみなすことをいいます。

相場より低い価格に明確な基準はありませんが、一般的には不動産の市場価値の評価額がおおまかな基準となります。

なお、みなし贈与と見なされた場合は、贈与税の申告や納付が必要になります。申告を怠ってしまうと、最大年率14.6%の延滞税や15%から40%の加算税の支払いが求められます。

みなし贈与にあたるかは、過去の判例などから税務署が個別で判断するので、税務署に相談しましょう。

共有者が死亡すると持分は他共有者に転移しない

共有状態にある不動産の共有者が死亡しても、その持分が他の共有者に転移することはありません。

共有者が亡くなったら、相続人へと相続されるためです。

親子の共有不動産がある状況で親が亡くなった場合、子ども(共有者)は共有持分を相続できます。

ただし、遺言書がある場合は、その内容に沿って共有持分が相続されるほか、遺言氏がなくても、自分以外にも兄弟や配偶者がいる場合は、相続人同士の協議によって持分の相続について決めなければなりません。

つまり、死亡した共有者の持分(相続持分)は、共有者である相続人がすべて相続できるとは限らないということです。

もし、共有者である子どもに共有持分を相続させたい場合は、あらかじめ遺言書を作成し、死亡した際の持分が共有者である子どもに相続されるように指定しておかなければなりません。

共有者である相続人が相続できるように準備しておけば、実際に相続が発生して不動産の共有状態が複雑になったり、トラブルが発生したりするのを防止できるでしょう。

親の認知症に備える

親子の共有状態の不動産がある場合は、認知症の発症に備えておく必要があります。

認知症とは、脳の病気や障害などによって、記憶や判断力などの認知機能が低下したり、日常生活や社会生活に支障が出たりする状態を指します。

親が認知症を発症した場合、判断能力が低下するため、不動産の名義変更が難しくなる恐れがあります。

親が認知症になってから名義変更をスムーズに進めたい場合は、成年後見制度の利用を検討した方がいいでしょう。

成年後見制度とは、意思能力が低い状態が継続している人をサポートすることで、本人を法律的に補助・支援できる制度です。

この制度を利用することで、判断能力が低下した人の代理業務が可能になるため、共有不動産の名義変更をスムーズに進められます。

なお、成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

  • 法定後見制度:認知症などで判断能力が低下した後に後見人を決めて代理業務を行える制度
  • 任意後見制度:認知症などで判断能力が停会する前に後見人を決めて代行業務をあらかじめ決めておく制度

また、法定後見制度には、認知症の症状の軽い順に「補助」「保佐」「後見」の3つがあり、それぞれに与えられる権限が異なります。

  • 補助:補助人に一部の同意権と取消権が与えられる
  • 保佐:保佐人に特定の事項以外の同意権と取消権が与えられる
  • 後見:後見人に代理権と取消権が与えられる

共有不動産を所有するリスクを理解する

不動産の共有では、どんなリスクがあるのか理解することが大切です。

具体的には、以下のようなリスクが伴います。

  • 不動産の活用を巡ってトラブルになる可能性がある
  • 維持管理費を払う必要がある
  • 相続するごとに共有者が増えて管理が煩雑になる

それぞれ詳しく解説します。

不動産の活用を巡ってトラブルになる可能性がある

不動産の共有によって、不動産の活用方法を巡ったトラブルになる恐れがあります。

共有状態にある不動産を売却したり、賃貸したり、リフォームしたりする場合、他の共有者の同意が必要になるためです。

他の共有者の同意が得られない場合は、不動産の売却やリフォームなどはできず、自分が求めるように不動産を活用することができません。

このように、共有状態の不動産は活用を巡ってトラブルになりやすいといえます。

維持管理費を払う必要がある

不動産にかかる維持管理費を支払い続ける必要があるのも、不動産共有のリスクです。

不動産には固定資産税や維持・管理するための費用が発生しますが、共有者が自分の持分に応じて負担しなければなりません。

なかには、維持管理費を支払わなかったり、費用負担に関する話し合いに応じなかったりするケースもあり、共有者間でのトラブルに発展する恐れもあります。

なお、共有者が固定資産税を滞納したケースについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

相続するごとに共有者が増えて管理が煩雑になる

不動産の共有者が亡くなって相続が発生するたびに、共有者が増加する恐れがあります。

共有者の誰かが亡くなったら、その持分は共有者の相続人によって相続されます。

相続人が1人の場合は、共有者が変わるだけで済みますが、相続人が複数名存在する場合、その分共有者が増加します。

共有者が増えるほど、意思統一を図るのは難しくなり、共有不動産の管理や活用は複雑で難しくなるでしょう。相続が繰り返された場合、他の共有者の顔も名前も知らない状況に陥るかもしれません。

また、このようなケースは、自分が死亡した場合にも影響を及ぼします。不動産を共有名義のまま放置して自分が亡くなった場合、自分の子どもや孫が共有持分を相続する可能性があるためです。

トラブルの発生を防ぐためにも、不動産の共有状態はできるだけ早く解消するべきといえます。

まとめ

親子で共有状態にある不動産のうち、親の共有持分を購入した場合や、親から生前贈与を受けた場合、親が亡くなり共有持分の相続が発生した場合では、名義変更が必要です。

名義変更には申請書類の作成が必要になるほか、添付書類の準備も煩雑になるため、司法書士に依頼して申請を代行してもらうのが一般的です。

また、不動産の名義変更には、登録免許税や贈与税、譲渡所得税などの税金のほか、司法書士に支払う報酬や実費が発生します。

共有名義不動産の名義変更の手続きは簡単ではありませんが、共有状態を継続することのリスクが大きいため、できるだけ早く共有状態を解消することが大切です。

解消できない場合は、自分の持分のみを売却する方法もあるので検討してみてください。

共有持分の買取に関してはこちら

なお、共有名義不動産の売却について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

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