共有名義不動産の相続で名義変更する方法!相続登記の手順・必要書類・費用など徹底解説

共有名義の不動産では、共有者のうち誰かが亡くなると、その人が所有していた共有持分について相続が発生します。この点は、単独名義の不動産と同様であり、共有名義だからといって特別な扱いになるわけではありません。

「共有者の1人が亡くなった場合、その持分は自動的に残りの共有者へ移るのではないか」と考えるかもしれませんが、そのようなことはありません。被相続人(亡くなった人)が持っていた共有持分は、他の共有者に自動的に移るのではなく、法定相続人または遺産分割協議で定められた相続人が承継することになります。

そのため、共有名義不動産の相続がある場合、被相続人から相続人へ名義変更をするための「相続登記」を行わなければなりません。

そして、相続登記は2024年4月1日から法律で義務化されています。

不動産を相続または遺贈によって取得したことを知った日から3年以内、または遺産分割協議が成立した日から3年以内が、相続登記の原則的な期限とされています。この期限内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料の対象となります。

共有名義不動産について相続登記を行うまでには、実務上次のような流れを踏む必要があります。

  1. 相続関係を調査する(戸籍の収集・相続人の確定)
  2. 遺言書の有無を確認する
  3. 遺産分割協議で亡くなった共有名義人の共有持分の承継方法を決める
  4. 法務局で相続登記の申請手続きを行う

この一連の手続きは、順番を誤ると名義変更の手続きのやり直しが生じやすい点にも注意が必要です。たとえば、遺言書が後から見つかった場合や、親族が把握していなかった相続人が判明した場合には、進めていた相続手続きを最初からやり直すことになるケースもあります。

実務の現場では、こうした初動の確認不足が原因で、名義変更が長期間進まず、その間に共有者が増えたり、関係者との連絡が取れなくなったりする事例も少なくありません。そのため、相続登記は一部の手続きを省略せず、順を追って慎重に進めることが重要です。

当記事では、こうした実務上の背景を踏まえたうえで、共有名義不動産を相続した際に必要となる名義変更(相続登記)の手順や必要書類、費用について分かりやすく解説します。あわせて、共有名義のまま相続することで生じやすいリスクや、実際の相談事例を踏まえた注意点、共有トラブルを避けるための考え方についても詳しく紹介していきます。

目次

共有名義不動産の相続による名義変更は義務化されている

不動産を相続した場合には、名義人を相続人へ変更する「相続登記」を行う必要があります。この相続登記は、単独名義の不動産だけでなく、共有名義不動産の共有持分を相続した場合も同様です。

実務の現場では、相続登記が済んでいない共有名義不動産について、士業と連携しながら対応を検討するような相談を受けることも多くあります。こうした相談の多くは、「共有だから急いで名義変更しなくても問題ないと思っていた」「売却や整理を考える段階で、まとめて手続きをすれば足りると考えていた」という認識から、相続登記を後回しにしてしまったことが原因である印象があります。

しかし、こうした対応が続いた結果、「誰がどの持分を相続しているのか分からない」「一部の相続人が未登記のまま亡くなり、さらに相続が発生している」といった状態になり、権利関係の整理そのものが困難になる不動産が少なくありません。

こうした「相続登記が行われないまま放置された不動産」が全国的に増えたことを背景に、2024年4月1日から、不動産を相続した際の名義変更手続きである相続登記は法律で義務化されたのです。

相続によって不動産を取得した場合は、「被相続人が亡くなったことを知り、かつ自分が相続人であると知った日」から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。また、遺産分割協議によって特定の相続人が不動産や共有持分を取得した場合には、「遺産分割で自分がその不動産を取得したと知った日」から3年以内が申請期限となります。

期限内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料の対象になります。

さらに、この相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に発生していた相続にも適用されます。そのため、すでに相続した共有名義不動産についても、2027年3月31日までに名義変更を済ませる必要があります。

共有名義不動産は、相続をきっかけに共有者が増え、時間の経過とともに権利関係が複雑化しやすいという特徴があります。名義変更を後回しにした結果、売却・活用・分割といった判断が一切進められなくなってから相談に来られるケースも、実務上は決して珍しくありません。

そのため、共有名義不動産を相続する場合、名義変更の手続きは後回しにせず、できるだけ早期に手続きを完了させることがその後の対応を円滑に進めるうえで重要になります。

共有名義不動産の相続で名義変更が必要なケース

共有名義にかかわらず、不動産を相続した場合は相続登記による名義変更は原則として必要になります。これは、相続登記が義務化された現在、共有名義不動産を相続した場合は避けて通れない前提条件です。

もっとも、実務の現場で多くの相談を受ける中で感じるのは、「名義変更は必要だと分かっているが、いつまでに・どの段階でやるべきか分からない」という悩みを抱えている方が非常に多いという点です。

とくに共有名義不動産の場合、「まだ共有者同士で話し合いが続いている」「今すぐ売却する予定はない」といった理由から、名義変更を後回しにしてしまうケースが少なくありません。

しかし、こうした判断が続いた結果、さらに共有者が増えてしまったり、関係者の一部と連絡が取れなくなったりして、名義変更そのものが難しくなってから相談に至るという事例も、実務上は多く見られます。

そのため、法律上はすべての相続で名義変更が必要であることを前提としつつも、実務的には特に早めに名義変更を完了させておいたほうがよいケースも存在します。

あくまで弊社の実務経験をもとにしたものですが、共有名義不動産の相続があった場合に特に早めに名義変更を完了させた方が良い具体例をまとめました。

  • 共有持分の相続によって新たに共有者が増えた場合
  • 遺産分割協議で、共有持分を相続する人が決まった場合
  • 将来的に不動産全体または共有持分のみの売却を検討している場合
  • 共有者の一部と連絡が取れない・意思確認が難しい場合

ここからは、共有名義不動産の相続において、名義変更を後回しにすると問題が生じやすい代表的なケースを解説していきます。

共有持分の相続によって新たに共有者が増えた場合

共有名義不動産では、相続が発生するたびに共有者が増えていくケースも多々あります。たとえば、兄弟で共有していた不動産について、共有者の1人が亡くなり、その持分を配偶者や子どもが相続した結果、共有者の数が一気に増えるといった状況です。

このような場合、相続登記を行わずに放置してしまうと、「誰がどの持分を相続しているのか分からない」「次の相続が発生し、さらに権利関係が複雑になる」といった問題が生じやすくなります。

実際に、共有持分の相続によって共有者が増えた後、名義変更が行われないまま時間が経過し、不動産の扱いに困ってから買取相談に至るケースも少なくありません。

実際に、兄弟で共有していた不動産について、共有者の1人が亡くなり、その持分を複数人が相続したものの名義変更を行わないまま次の相続が発生し、誰の同意を取ればよいのか分からなくなってしまったという相談が寄せられることもあります。

そのため、新たに共有者が増えた場合には、できるだけ早期に相続登記を行っておくことが、後のトラブルを防ぐうえで重要になります。

遺産分割協議で共有持分を相続する人が決まった場合

遺産分割協議によって、誰がどの共有持分を相続するのかが決まった場合でも、その内容を登記に反映しなければ、共有名義不動産の名義変更は完了したことにはなりません。

実務の現場では、「遺産分割協議書は作成したが、登記までは手を付けていなかった」「協議がまとまったことで安心し、名義変更を後回しにしてしまった」というケースが多く見られます。

実際に、遺産分割協議は成立しているものの相続登記を行っていなかった共有名義不動産について、売却や整理が進められずに買取相談に至るケースも少なくありません。「名義が被相続人のままであることが分かり、売却手続きが止まってしまった」という方からの相談も、弊社にはよく寄せられます。

遺産分割協議が成立した時点は、相続関係や合意内容が明確な状態であるため、共有名義不動産の名義変更を進めるうえでスムーズなタイミングでもあります。この段階で相続登記まで完了させておくことが、その後の売却や整理を円滑に進めるための重要なポイントになります。

将来的に不動産全体または共有持分のみの売却を検討している場合

将来的に不動産全体または共有持分のみの売却を検討している場合には、名義変更を後回しにすることによる影響が特に大きくなります。

相続登記が未了の状態では、不動産全体の売却・共有持分のみの売却は進められません。

実際の買取相談では、売却を検討し始めてから初めて相続登記が未了であることに気付き、想定以上に手続きが長引いてしまったというケースも多く見られます。弊社にも「名義が被相続人のままでも、共有名義不動産を売却できないか」という買取相談が寄せられることがあります。

売却や買取を具体的に検討し始めてから名義変更を行うのではなく、将来の選択肢を確保するための準備として、早めに相続登記を済ませておくことが実務上は重要になります。

共有者の一部と連絡が取れない・意思確認が難しい場合

共有名義不動産では、共有者の一部と連絡が取れなくなったり、意思確認が難しい状況に陥ったりするケースも少なくありません。

このような状態で相続登記が未了のまま放置されていると、誰が法的にどの持分を有しているのかを確定するところから対応を始めなければならず、手続きが一層複雑化します。

実務上は、共有者の一部と連絡が取れない状態で名義変更が行われておらず、どう進めればよいか分からないという段階で買取相談に至るケースも見られます。相続登記がされないまま共有者の1人が音信不通となり、売却を検討していたものの、誰が法的な権利者なのかを確定できず、対応が止まってしまったという相談も実際にあります。

このような事態に陥る前に、少なくとも名義関係だけは整理しておくことが、その後の対応を進めやすくすることにもつながります。

共有名義不動産の相続で名義変更をする手順

共有名義不動産を相続した場合の名義変更は、一定の手順に沿って進めれば、制度上は自分で行うことも可能です。「何から手を付ければいいか分からない」という状態でも、相続手続き全体の流れを把握できれば、対応の見通しは立てやすくなります。

とはいえ、実務の現場で多くの相談を受ける中で感じるのは、名義変更の途中で手続きが止まってしまうケースが非常に多いという点です。

たとえば、「戸籍や必要書類が想定以上に多く、途中で集めきれなくなる」「共有者同士の認識が揃わず、遺産分割協議が進まない」「登記申請は行ったものの、内容に不備があり差し戻されてしまう」といった理由から、名義変更が完了しないまま時間だけが経過してしまうことも少なくありません。

特に共有名義不動産の場合は、相続人の数や共有者との関係性によって手続きの難易度が大きく変わるため、単独名義の相続と同じ感覚で進めてしまうと、思わぬところで行き詰まることがあります。

そのため、共有名義不動産の相続による名義変更を進める際には、どの段階でつまずきやすいのか、どこから専門家の関与を検討すべきかをあらかじめ把握しておくことが重要です。

ここからは、共有名義不動産の相続による名義変更について、実務上の流れに沿って具体的な手順を整理しつつ、ミスが起こりやすいポイントや注意点もあわせて解説します。

  1. 相続関係を調査する(戸籍の収集・相続人の確定)
  2. 遺言書の有無を確認する
  3. 遺産分割協議で亡くなった共有名義人の共有持分の承継方法を決める
  4. 法務局で相続登記の申請手続きを行う

1. 相続関係を調査する(戸籍の収集・相続人の確定)

共有名義不動産の相続で名義変更を行う際、最初に行うべきなのが、相続関係の確定です。具体的には、被相続人が誰で、法的に誰が相続人になるのかを、戸籍によって明らかにします。

相続登記では、原則として被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍を取得し、その内容をもとに相続人を確定させる必要があります。この段階で相続人が1人でも漏れていると、その後の遺産分割協議や登記手続きが進められません。

法定相続人は、亡くなった人との関係によって次のように決まります。

故人との続柄と相続の優先順位

配偶者=常に相続人
第1位:子ども(子どもがいない場合は孫/子・孫がいない場合はひ孫)
第2位:父母(父母がいない場合は祖父母)
第3位:兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥・姪)

たとえば、夫婦と子ども2人の家庭で夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子ども2人です。

実務上起こりやすいのは、「配偶者と子どもだけだと思っていたが、前婚の子がいた」「認識していなかった兄弟姉妹が相続人になることが分かった」といったケースです。相続人が想定と異なっていたことで、話し合いを一からやり直すことになり、手続きが長期化することも少なくありません。

また、共有名義不動産の場合は、すでに共有者となっている人の相続関係もあわせて確認する必要があります。名義変更がされないまま次の相続が発生していると、「誰の相続を前提に手続きを進めているのか分からない」という状態に陥りやすく、実務上はここで立ち止まってしまうケースも多く見られます。

実際の相談でも、「相続関係の整理が不十分なまま遺産分割や売却の話を進めようとして、戸籍の取り直しや相続人調査からやり直すことになった」という例は珍しくありません。

そのため、共有名義不動産の相続で名義変更を進める際には、最初の段階で時間をかけてでも相続関係を正確に確定させておくことが、結果的に手続きをスムーズに進める近道になります。

2. 遺言書の有無を確認する

相続関係を確定したら、次に必ず確認すべきなのが遺言書の有無です。

遺言書に「共有持分を誰に引き継ぐか」が記されている場合は、その内容に従って遺産分割を行う必要があります。

遺言書がないと思い込んで遺産分割協議を進め、後から遺言書が見つかった場合、協議をやり直すことになってしまいます。そのため、最初に遺言書の有無をしっかり確認することが大切です。

遺言書が保管されている可能性がある主な場所は次のとおりです。

  • 自宅(机の引き出しやタンス、金庫、仏壇の奥など)
  • 法務局(自筆証書遺言保管制度を利用している場合)
  • 公証役場(公正証書遺言を作成している場合)
  • 銀行の貸金庫
  • 信託銀行
  • 弁護士・行政書士などの事務所

なお、自宅で遺言書を見つけた場合は、その場で開封してはいけません。公正さを保つため、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります。

3. 遺産分割協議で亡くなった共有名義人の共有持分の承継方法を決める

遺言書がない場合は、相続人同士で財産をどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議」を行います。協議の対象は、共有名義不動産の共有持分に加え、預貯金や有価証券、車などのほかの財産も含まれます。

なお、相続ではプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があるため、すべての財産状況を把握したうえで協議を進めることが大切です。

亡くなった共有名義人の共有持分の継承方法には、主に次の2種類があります。

  • 法定相続分による分割:民法で定められた割合で、財産を分ける方法
  • 遺産分割協議による分割:相続人が話し合って、自由に割合で財産を分ける方法

法定相続分による分割

法定相続分による分割とは、民法で定められた相続割合(法定相続分)に従って、遺産分割することです。法定相続分は、相続人の構成によって以下のように変動します。

相続人の構成 法定相続分
配偶者・子ども 配偶者:1/2
子ども:1/2
⇒子どもが2人なら、1人あたり1/4ずつ
配偶者・両親 配偶者:2/3
両親:1/3
⇒父母のどちらも健在なら、1人あたり1/6ずつ
配偶者・兄弟姉妹 配偶者:3/4
両親:1/4
⇒兄弟姉妹2人なら、1人あたり1/8ずつ

たとえば、夫婦と子ども2人の家庭で夫が亡くなった場合、法定相続分は妻が1/2、子ども2人がそれぞれ1/4ずつです。

夫婦で1/2ずつ共有していた不動産がある場合、夫の共有持分1/2が相続対象となり、法定相続分で分けると次のようになります。

■相続分の計算
妻:1/2(夫の共有持分) × 1/2(法定相続分) = 1/4(相続分)
子どもA:1/2(夫の共有持分) × 1/4(法定相続分) = 1/8(相続分)
子どもB:1/2(夫の共有持分) × 1/4(法定相続分) = 1/8(相続分)

■最終的な共有持分の割合
妻:3/4
⇒1/2(相続前からの持分) + 1/4(相続分)
子どもA:1/8
子どもB:1/8

遺産分割協議による分割

遺産分割協議による分割は、相続人同士で話し合い、自由な割合で財産を分ける方法です。特定の相続人に財産を集中させたい場合や、不動産・車など分けにくい財産がある場合に利用されます。

つまり、法定相続分とは異なる割合で相続するケースが該当します。

例として、以下のような家族構成・相続財産のケースを挙げます。

■家族構成
夫(被相続人)、妻、子ども2人
■相続財産
・夫婦の共有名義不動産の共有持分(評価額3,000万円)
・預貯金1,000万円

相続財産の合計は4,000万円で、妻と子ども2人が相続人です。法定相続分は、妻が1/2、子どもがそれぞれ1/4ですが、話し合いで次のように決めることもできます。

・妻が夫の共有持分をすべて相続する
・子ども2人が預貯金を相続する

この場合、妻が3/4、子ども2人がそれぞれ1/8を相続する形となり、法定相続分とは異なる分け方になります。しかし、相続人全員が合意していれば、法定相続分以外の割合で相続しても問題ありません。

なお、遺産分割協議がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」として文書にまとめておくことが重要です。

相続人全員が署名・押印した協議書を残しておくことで、後になって「言った・言わない」のトラブルになるのを防げます。相続登記の際にも提出を求められる書類のため、必ず作成しましょう。

4. 法務局で相続登記の申請手続きを行う

相続人が確定し、共有持分を誰が引き継ぐか決まったら、共有名義不動産の相続登記を行います。相続登記は、不動産がある場所を管轄する法務局で手続きを行います。

申請方法は次の3つがあります。

いずれの方法でも申請は可能ですが、共有名義不動産の場合は、申請書の記載内容や添付書類にわずかな不備があるだけで、補正や差し戻しが生じやすい点に注意が必要です。

実務上で起こりやすいものとしては、「共有持分の割合の記載誤り」「相続人の氏名・住所の表記ゆれ」「登記原因日付(被相続人の死亡日など)の記載ミス」といったケースです。この場合、申請後に法務局から補正を求められ、想定以上に手続きが長引いてしまうことがあります。

申請書や添付書類に問題がなければ、通常は1週間から10日程度で審査が完了します。登記が完了すると、「登記識別情報通知」が交付されます。

この登記識別情報通知は、不動産を売却する際や、金融機関から融資を受けて不動産を担保に入れる際などに必要となる非常に重要な書類です。後から再発行することはできないため、紛失しないよう確実に保管してください。

なお、相続登記に必要な書類は「共有名義不動産の相続で名義変更する際に必要な書類一覧」、必要な費用や税金は「共有名義不動産の相続から名義変更までに必要な費用・税金」で詳しく解説します。

共有名義不動産の相続で名義変更する際に必要な書類一覧

共有名義不動産の名義変更(相続登記)を行う際には、以下のような書類が必要です。

書類 必要なケース 入手方法・費用
登記申請書 必ず必要 相続人本人が作成(司法書士に依頼可)
1通あたり450円程度
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本 必ず必要 各本籍地の市区町村役場(広域交付制度の利用が可能)
1通あたり300円前後
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 必ず必要 亡くなった方の住所地または本籍地の市区町村役場(広域交付制度の利用不可)
1通あたり300円前後
相続登記する相続人の住民票 必ず必要 名義人となる相続人の住所地の市区町村役場(コンビニ交付可)
1通あたり300円~400円程度
不動産の固定資産評価証明書 必ず必要 不動産所在地の市区町村役場
1通あたり300円~400円程度
相続人全員の現在の戸籍謄本 ・法定相続分による相続登記
・遺産分割協議による相続登記
各相続人の本籍地の市区町村役場(広域交付制度の利用が可能)
1通あたり450円前後
遺産分割協議書 ・遺産分割協議による相続登記 相続人で作成(司法書士に依頼可)
自作であれば無料、司法書士に依頼する場合は、3~5万円程度
相続人全員の印鑑証明書 ・遺産分割協議による相続登記 各相続人の住所地の市区町村役場(コンビニ交付可)
1通あたり300円前後
相続登記する相続人の戸籍謄本 ・遺言による相続登記 各相続人の本籍地の市区町村役場(広域交付制度の利用が可能)
1通あたり450円前後
遺言書 ・遺言による相続登記 被相続人が作成

書類が不足していたり内容に誤りがあると、法務局から差し戻しとなり、手続きが遅れてしまうことがあります。 取得する戸籍が多い場合や、書類の読み解きに不安がある場合は、相続に詳しい司法書士に依頼することを検討すると安心です。

必ず必要な基本書類

共有名義不動産の相続登記では、相続方法に関わらず、次の書類が必ず必要になります。

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続登記する相続人の住民票
  • 不動産の固定資産評価証明書

登記申請書

登記申請書
e-Gov法令検索 法務局|不動産登記の申請書様式について

相続登記を法務局へ申請する際に提出する書類です。相続内容、不動産の情報、相続人の情報などを記載して提出します。

登記申請書は、法務局の窓口や、法務局のホームページで申請書と記載例をダウンロードすることが可能です。

申請書は相続人本人が作成しますが、司法書士に依頼することも可能です。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までのすべての戸籍を指し、改製原戸籍や除籍謄本が含まれる場合もあります。

被相続人の家族関係(結婚・離婚・子どもの有無など) を確認し、相続人を確定させるために必要な重要書類です。

戸籍謄本は、各本籍地の市区町村役場で取得できます。広域交付制度を活用すれば、一部の古い戸籍などを除き、全国どこでも取得可能です。

費用は、1通あたり450円程度です。ただし、本籍地が移動している場合は複数取得が必要となるため、その分、費用がかかります。

被相続人の住民票の除票または戸籍の附票

「住民票の除票」は住民票から除かれた履歴、「戸籍の附票」は住所の履歴情報を示す書類です。

被相続人(亡くなった人)の住所と、不動産の所在地の結びつきを確認するため、相続登記ではどちらかの提出が必要になります。

「住民票の除票」は被相続人の最終住所地、「戸籍の附票」は本籍地の市区町村役場で取得可能できます。費用は、1通あたり300円前後です。なお、「戸籍の附票」は広域交付制度の対象外です。

相続登記する相続人の住民票

共有持分の新たな名義人となる人の現住所を証明するための書類です。法務局が登記簿の住所を正確に記載するために必要となります。

住民票は、相続人本人の住所地の市区町村役場で取得可能です。マイナンバーカードがあればコンビニ交付も利用できます。費用は、1通あたり300円前後です。

不動産の固定資産評価証明書

市区町村が算定した不動産の「評価額」が記載された証明書です。相続登記の登録免許税を計算するために提出します。

不動産が所在する市区町村役場で取得でき、費用は1通あたり300円~400円程度です。

法定相続分による相続登記に必要な書類

民法で定められた相続割合(法定相続分)で相続登記を進める場合は、基本書類に加えて「相続人全員の現在の戸籍謄本」が必要です。

各相続人が現在どの戸籍に属しているかを示す書類で、法務局が相続人本人の情報(氏名・続柄・本籍など)を正確に確認するために用いられます。

法定相続分で相続登記を行う場合は、相続人全員の身元を確実に証明する必要があるため、この書類の提出が必須となります。

戸籍謄本は、各相続人の本籍地の市区町村役場で取得できます。広域交付制度を利用すれば、全国どこの市区町村でも取得可能です。費用は、1通あたり450円前後です。

遺産分割協議による相続登記に必要な書類

相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で相続する割合を決める場合は、基本書類のほか、次の書類が必要になります。

  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

相続人全員の現在の戸籍謄本

各相続人が、現在どの戸籍に属しているかを示す書類です。遺産分割協議で合意した内容をもとに相続登記を行うため、法務局が「相続人全員の身元が正しく確認できるか」を判断するために必要です。誰が協議に参加すべき相続人なのかを証明する役割もあります。

戸籍謄本は、各相続人の本籍地の市区町村役場で取得できます。広域交付制度を利用すれば、全国どこの市区町村でも取得可能です。費用は、1通あたり450円前後です。

遺産分割協議書

相続人全員で話し合って決めた財産の分け方をまとめた書類です。共有名義不動産の共有持分を「誰が」「どの割合で」相続するかを明確に記載します。

法務局が、遺産分割の内容を確認するために必要な書類です。相続人全員が署名・押印して作成します。自作したものでも構いませんが、内容に不安がある場合は司法書士に作成を依頼することも可能です。

司法書士に依頼する場合は、3~5万円程度の費用が発生します。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押した「実印」が本物であることを証明する書類です。協議書が正式な合意であることを示すために必要になります。

印鑑証明書は、各相続人の住所地の市区町村役場で取得可能です。マイナンバーカードを持っていれば、コンビニ交付もできます。費用は1通あたり300円前後です。

遺言による相続登記

遺言書の内容にもとづいて名義変更を行う場合は、基本書類に加えて次の書類が必要です。

  • 相続登記する相続人の戸籍謄本
  • 遺言書

相続登記する相続人の戸籍謄本

遺言によって不動産を相続する人(受遺者)が、本人であることを証明するための戸籍謄本です。法務局が「遺言に指定された人物が本当に本人か」を確認するために必要となります。

相続登記を行う相続人(受遺者)の本籍地の市区町村役場で取得できます。広域交付制度を利用すれば、全国どこの市区町村でも取得可能です。費用は1通あたり450円前後です。

遺言書

被相続人(亡くなった人)が生前に作成した、財産の承継方法を示す書類です。「誰に」「どの財産を相続させるか」が記載されており、遺言書の内容に従って不動産の名義を変更します。

遺言書は、遺産分割協議を行わずに相続手続きを進められる根拠資料となるため、相続登記でも必ず法務局に提出します。

共有名義不動産の相続から名義変更までに必要な費用・税金

共有名義不動産の相続から名義変更までの手続きには、以下のような費用や税金が発生する可能性があります。

費用・税金 発生するケース 概要 金額の目安
相続税 相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合 相続財産に対して課税される国税 財産額に応じて、税率10〜55%
基礎控除額「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)」の範囲内であれば課税されない
登録免許税 相続登記を行う場合 法務局で名義変更する際の税金 固定資産税評価額 × 0.4%
司法書士への報酬 登記手続きの代行を依頼する場合 書類作成・登記申請の代行費用 約5万〜15万円前後
必要書類の取得費用 戸籍・住民票・評価証明書などを取得する場合 相続登記に必要な書類の発行手数料 約5,000〜1万円程度
不動産取得税 法定相続人以外への遺贈(特定遺贈)で不動産を取得した場合 遺贈を受けた場合の地方税 固定資産税評価額 × 4%(軽減で3%の可能性あり)

相続税

相続税とは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続するときに課税される税金です。共有持分だけでなく、預貯金、有価証券、車、貴金属など、すべての財産を合算して課税額を判断します。

なお、相続税には基礎控除額「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)」が設けられており、この範囲内であれば相続税はかかりません。

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合は、4,800万円が基礎控除額となるため、財産の総額が4,800万円以下であれば相続税はゼロです。

基礎控除額を超える場合は、以下の国税庁の税率で課税されます。

金額 税率 控除金額
1,000万円以下 10%
1,000万円超3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超1億円以下 30% 700万円
1億円超2億円以下 40% 1,700万円
2億円超3億円以下 45% 2,700万円
3億円超6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参照:国税庁|相続税の税率

登録免許税

法務局で登記を行う際に必ず必要となる税金で、相続登記の際にも発生します。相続登記の登録免許税の費用は、以下の計算式で算出します。

固定資産税評価額 × 0.4%

仮に、評価額1,000万円の共有持分の相続登記を行うのであれば、4万円の登録免許税が発生します。登録免許税は、収入印紙を購入して登記申請書に貼り付ける形で納税します。

司法書士への報酬

相続登記の手続きを司法書士に依頼する場合に必要な費用です。一般的な相場は、約5万〜15万円程度です。

相続人の人数が多い、戸籍が多い、遺産分割協議が複雑などの場合は費用が高くなる傾向にあります。司法書士事務所ごとに料金体系が異なるため、依頼前に見積書をもらうと安心です。

登記に必要な書類の取得費用

「共有名義不動産の相続で名義変更する際に必要な書類一覧」で説明した戸籍謄本や住民票などの取得費用です。

書類1通あたり300~450円程度で、合計約5,000円〜1万円程度で納まるケースがほとんどです。相続人が多かったり、取得すべき戸籍が多かったりする場合は、費用が高くなる傾向にあります。

不動産取得税

不動産取得税は、相続ではなく「特定遺贈」扱いとなる場合に課税される税金です。具体的には、亡くなった方の遺言によって、法定相続人以外の人(例:兄弟、甥・姪、友人、内縁の妻など)が不動産や共有持分を取得した場合に発生します。

一方、遺言書に「配偶者や子どもなどの法定相続人に相続させる」と記載がある場合は、通常の相続と同じ扱いとなり、不動産取得税は課税されません。

不動産取得税の計算式は次のとおりです。

固定資産税評価額×4%(本則)=不動産取得税

仮に、固定資産税評価額が1,000万円の共有持分を遺贈によって取得した場合は、「1,000万円 × 4% = 40万円」の不動産取得税がかかります。

なお、本則では税率4%ですが、住宅用不動産の場合は各都道府県の軽減措置により、税率3%が適用されるケースもあります。軽減の適用条件(居住要件や床面積など)は自治体ごとに異なるため、事前に確認しておくと安心です。

不動産を共有名義のままで相続することのリスクを実際の相談事例をもとに紹介

相続前から共有名義だった不動産でも、相続が発生すると権利関係が大きく変わる場合もあります。これまでは身内同士で柔軟に話し合えていたとしても、相続後に見知らぬ親族が共有者になる、共有者の人数が増えるなど、これまで起きなかったトラブルが突然発生することも珍しくありません。

ここでは、弊社に寄せられた実際の相談事例をもとに、相続後も共有名義のままにしておくことで発生しやすいリスクを紹介します。

  • 相続によって見知らぬ人と共有することになる
  • 新しい共有者から同意が得られずに共有名義不動産が売却できない
  • 新しい共有者が固定資産税などの維持管理費を負担してくれない
  • 新しい共有者から賃料を請求される
  • 次に相続があった場合はさらに権利関係が複雑になる

共有状態のまま放置してしまうと、将来のトラブルリスクが高まり、手続きも複雑化してしまいます。状況によっては、早めに共有名義を解消しておくことが重要です。

相続によって見知らぬ人と共有することになる

相続前は話しやすい身内との共有名義であっても、相続が発生すると状況が変わることもあります。見知らぬ親族や疎遠だった家族が新しい共有者になることで、これまで問題なく暮らしていた家でも、急に不安やトラブルが発生するケースが少なくありません。

面識のない親族と突然共有名義になってしまった事例です。


父と叔母がそれぞれ1/2ずつ共有していた不動産を、父の死後、子どもである相談者様が相続しました。その後、叔母も亡くなり、叔母が所有していた共有持分は叔母の夫に相続されることになりました。


その結果、相談者様は、これまで一切面識のなかった叔母の夫と不動産を共有する状態になりました。叔母の夫は不動産の活用に関心がなく、維持管理や固定資産税の負担についても消極的で、実質的には相談者様だけが管理や費用を負担し続ける状況が続いていました。


将来の扱いについて話し合おうとしても連絡が取りづらく、「このまま共有状態が続いたらどうなるのか」「自分だけが負担を背負い続けることになるのではないか」といった不安やストレスを強く感じるようになりました。


こうした状況から、面識のない相手と共有名義になってしまった不動産を今後どう整理すべきか分からず、解決策を求めて当社へご相談をいただいた事例です。

相続によって見知らぬ人が新たな共有者になると、「管理や税金負担に協力してもらえない」「売却の同意が得られない」などの問題が生じるリスクがあります。

相続後に慌てないためにも、早い段階で単独名義に整理したり、売却したりといった方法で、共有状態を解消しておくことをおすすめします。

新しい共有者から同意が得られずに共有名義不動産が売却できない

共有名義不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できません。相続前は話し合いができていたとしても、相続後に共有者が増えたり、新しい共有者が全く別の考えを持っていたりすると、売りたくても売れない状況に陥るリスクがあります。

兄弟で共有名義だった家が、相続後に売却できなくなった事例です。


兄弟それぞれが1/2ずつ共有していた一戸建てで、これまで管理は兄が中心となって行っていました。兄はその家に居住していましたが、高齢になったことをきっかけにマンションへ引っ越す予定となり、弟である相談者様とも「近いうちに家を売却しよう」という話がまとまっていました。


しかし、引っ越しを目前に控えたタイミングで兄が急逝。兄の共有持分は、兄の妻と子どもが相続することになりました。相談者様は、相続手続きが落ち着いた段階で売却の話を進めるつもりでいましたが、兄の妻と子どもは「思い出の詰まった家なので売りたくない」として、売却に強く反対する姿勢を示しました。


その結果、相談者様は不動産を売却したくても同意を得られず、共有状態のまま固定資産税や将来の管理負担への不安を抱えることに。


「兄弟で合意していた売却が、相続をきっかけに進まなくなった」「この先も共有名義のまま関係者と折り合いをつけ続けなければならないのか分からない」と悩み、相続後に売却できなくなった共有名義不動産の整理方法について、当社へご相談をいただいた事例です。

共有名義不動産の売却は、1人でも反対する共有者がいる場合は実現できません。実務でも、相続によって新たな共有者が現れることで、まとまりかけていた売却話が頓挫するケースは珍しくありません。

「売りたくても売れない」事態を避けるためにも、単独名義に整理したり、共有状態を早めに解消しておいたりすることが重要です。共有者全員の合意が難しい場合は、持分のみを売却するという選択肢もあります。

新しい共有者が固定資産税などの維持管理費を負担してくれない

共有名義不動産では、本来、固定資産税や修繕費などの維持管理費を共有者全員で負担する必要があります。しかし、相続後に共有者が変わると、突然負担を拒否されてしまうことも珍しくありません。

固定資産税の負担を、新たな共有者に拒否されてしまった事例です。


兄妹がそれぞれ1/2ずつ所有していた実家について、双方とも「将来的には売却する」という方針で合意しており、固定資産税や維持管理費もこれまで折半で支払っていました。


しかし、兄が急逝したことで状況が一変します。兄が所有していた共有持分は、兄の妻と子どもが相続することになりました。その後、兄の妻から「自分たちは住んでいない家なのだから、費用を負担する理由がない」として、固定資産税の支払いを拒否されるようになったのです。


相談者様が話し合いを試みても次第に連絡が取れなくなり、売却を進めたくても同意が得られない状態に。結果として、相談者様だけが固定資産税や維持管理に対する不安を抱え続け、共有状態を解消できない期間が長く続いていました。


「相続によって共有者が変わった途端、費用負担を拒否されてしまった」「固定資産税を払い続けるしかないのか、それとも別の整理方法があるのか分からない」


こうした悩みから、新たな共有者との費用負担トラブルを抱えた共有名義不動産をどう整理すべきかについて、当社へご相談をいただいた事例です。

相続によって共有者が変わると、これまで問題なく続けられていた固定資産税や維持管理費の負担が突然滞るケースは珍しくありません。

売却の意向がある場合は、共有者に早めに伝え、話し合いができるうちに手続きを進めることが重要です。状況がこじれると、売却も管理も進まず、あなた一人が負担し続けることになりかねません。

新しい共有者から賃料を請求される

相続によって共有者が変わると、これまで住み続けていた家に対して、新しい共有者から賃料を請求されることがあります。相続前は身内同士で暗黙の了解が成立していたとしても、相続後は共有者の考え方が変わり、これまでの関係性が通用しないことがあります。

新しい共有者から賃料を請求されてしまった事例です。


実家を兄弟で1/2ずつ共有名義で相続し、弟である相談者様は親と同居していた経緯から、そのまま実家に住み続けていました。固定資産税の支払いをはじめ、庭の手入れや修繕などの管理はすべて相談者様が負担しており、兄もその状況を理解したうえで、兄弟間では「賃料を請求することはない」という認識が共有されていました。


しかし、兄の死後、兄の共有持分を相続した義姉が新たな共有者となったことで状況が一変します。義姉は「共有者である以上、使用しているのであれば賃料を支払うべきだ」と主張し、突然、毎月の賃料を請求するようになりました。


相談者様としては、これまで長年にわたって管理や費用を一手に負担してきたことや、兄との間で形成されていた合意を踏まえると納得できず、話し合いを試みるものの意見は平行線のまま。



「相続で共有者が変わった途端、これまでの取り決めが通用しなくなった」「賃料を支払う義務が本当にあるのか分からない」といった不安を抱え、共有関係をこのまま続けることに強い悩みを感じるようになりました。


こうした状況から、相続によって新たな共有者が加わり、賃料請求を受けるようになった共有名義不動産を今後どのように整理すべきか分からず、当社へご相談をいただいた事例です。

共有名義不動産に住み続ける場合は、共有のままにせず、早めに持分を買い取って単独名義にするか、売却してトラブルを防ぐことが重要です。

次に相続があった場合はさらに権利関係が複雑になる

共有名義不動産は、相続が発生するたびに共有者が増え、権利関係がどんどん細分化していくという大きなリスクがあります。すると、誰がどれだけの持分を持っているのか把握しづらくなり、管理・売却の話し合いも進まない状態に陥ることが多く、放置すればするほど手続きは複雑化します。

相続のたびに共有者が増え、権利関係が複雑化してしまった事例です。


長男・次男・三男の三兄弟が、実家をそれぞれ1/3ずつ共有名義で所有していました。相談者様は次男で、兄弟間では「いずれは売却するが、しばらくは様子を見よう」という認識でまとまっていました。


ところが長男が急逝し、長男の持分1/3は長男の子ども2名が相続することに。共有者は次男・三男・甥姪の合計4名となり、今後さらに相続が重なれば、持分がより細分化していく可能性が高い状況となりました。


相談者様は、これ以上共有関係が複雑になる前に売却したいと考え、早期の売却を提案しました。しかし、共有者それぞれの立場や考え方が異なり、「誰がどれだけの権利を持っているのか」「売却代金をどのように分けるのか」といった点で意見がまとまらず、話し合いは長期間にわたって停滞していました。


「このまま相続が繰り返されると、共有者がさらに増えて手が付けられなくなるのではないか」「今のうちに整理したいが、どこから手を付ければいいのか分からない」



こうした将来への不安から、相続のたびに共有者が増え、権利関係が複雑化してしまった不動産をどのように整理すべきかについて、当社へご相談をいただいた事例です。

共有名義不動産は、相続が発生するたびに共有者が増え、「話し合いがまとまらない」「連絡が取れない共有者が出る」「管理費の負担割合でもめる」といった問題を招きやすくなります。

細分化した持分がさらに次の世代へ引き継がれる前に、早めに共有状態を解消しておくことが、トラブルの回避策です。

共有名義不動産の相続時に共有トラブルを避けるための対策

共有名義不動産のまま放置すると、共有者が亡くなり、相続が発生した際に新たな共有者とトラブルになるリスクがあります。そのため、相続時に共有名義を避けたり、できるだけ早く共有状態を解消したりすることが望ましいです。

具体的には、以下のような対策が挙げられます。

方法 概要 選択できるタイミング
共有名義不動産を現物分割で分配する 不動産を1人が相続し、他の相続人には現金・預貯金など他の遺産を分配して釣り合いを取る方法。共有名義を避けられる。 相続時(遺産分割協議)
共有名義不動産を売却して売却代金を分配する 不動産を売却し、売却代金を相続人で分ける方法。現金化することで、共有名義にせずに済む。 相続時(遺産分割協議)
共有名義不動産を相続人1人の単独名義に変更する 不動産を1人が相続し、他の相続人へ資産価値に応じた「代償金」を支払う方法。共有を避けつつ不動産を残せる。 相続時(遺産分割協議)
相続後に共有持分だけを専門業者に売却する 自分の共有持分だけを買取業者へ売却する方法。他の共有者との話し合いがまとまらない場合に、向いている。 相続後
他の共有者に共有持分を売却する 自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう方法。共有者に買い取りの意思や資金がある場合に向いている。 相続後

共有名義不動産を現物分割で分配する

現物分割とは、不動産を相続人のうち1人が単独で相続し、他の相続人には現金や預貯金、車などの別の財産を分けることで「全体の公平性を保つ」分割方法です。

不動産を複数人で共有する必要がなくなるため、相続後の共有トラブルを避けられます。

たとえば、相続人が兄弟2人で、相続財産が「評価額2,000万円の不動産」「現金1,000万円」「有価証券1,000万円」だったとします。この場合、兄が不動産、弟が現金と有価証券を相続すれば、財産の質を変えて公平に分けられます。

「相続財産のバランスが比較的整っている場合」「不動産を残したい人がいる場合」に向いている方法です。

一方で、「不動産以外の財産が少ない」「誰も不動産を相続したくない」といったケースでは実施が難しく、ほかの分割方法を検討する必要があります。

共有名義不動産を売却して売却代金を分配する

不動産そのものを売却して、現金で分ける方法もあります。「換価分割」と呼ばれる相続方法で、不動産だけでなく車などの資産にも適用できます。

共有名義を避けられるのはもちろん、現金にするため、相続の公平性を保ちやすいのがメリットです。

たとえば、相続人が兄弟2人で、相続財産が「評価額2,000万円の不動産」「評価額300万円の車」「現金700万円」だったとします。この場合、不動産と車を売却すれば、相続財産は現金3,000万円となり、兄弟で1,500万円ずつに分けられます。

「不動産を残したい人がいない場合」「現金化して公平に財産を分けたい場合」に向いている方法です。

ただし、立地条件の悪い土地や、老朽化している建物などの場合は、仲介では買主が見つからず、売却が長期化するケースもあります。実務では、やむなく共有名義のまま放置されてしまうこともあります。

共有名義不動産を相続人1人の単独名義に変更する

相続人の1人が不動産を相続し、その代わりに他の相続人に不動産の資産価値に応じた「代償金」を支払う方法です。代償分割と呼ばれる相続方法で、共有名義を避けつつ、不動産を残せるのがメリットです。

たとえば、相続人が兄弟2人で、相続財産が「評価額2,000万円の不動産」「現金1,000万円」だったとします。この場合、相続財産の合計額は3,000万円で、法定相続分で分けるなら1,500万円ずつ分け合うのが目安となります。

兄が不動産(2,000 万円)、弟が現金(1,000 万円)を受け取ると、弟は 500 万円分損をすることになります。そこで、兄が弟へ500 万円を代償金として支払えば、双方の受け取る価値が均衡し、代償分割が成立します。

この方法は「不動産を残したい場合」「代償金を支払う資金がある場合」に向いています。

一方で、「不動産を相続したい人がいない場合」「相続財産のほとんどが不動産で、代償金の負担が大きくなりすぎる場合」には実現が難しくなります。

相続後に共有持分だけを専門業者に売却する

すでに共有名義になっている不動産でも、自分の共有持分だけを売却することで、共有トラブルから抜け出すことができます。共有持分の売却に関しては、他の共有者の同意がなくても売却可能です。

とはいえ、仲介で共有持分の買主が見つかるケースはほぼないため、買取業者に売却するのが現実的な選択肢です。

買取業者であれば、売主と業者の二者間で売却が成立するため、短期間で売却が完了します。「手間をかけずに売却したい場合」「費用よりも現金化のスピードを優先したい場合」に向いている方法です。

一方で、共有持分の売却価格は「不動産全体の価格 × 持分割合 × 1/3~1/2」が目安となり、単独不動産の売却より価格が低くなる傾向があります。そのため、少しでも高く売りたい場合は、まず他の共有者に買い取ってもらえないか交渉すると良いでしょう。

他の共有者に共有持分を売却する

他の共有者に共有持分を売却する方法もあります。共有者同士の売買であれば、売却価格は一般的に「不動産全体の価格 × 持分割合」が基準となり、買取業者へ売却するより高く売却できる可能性があります。

この方法は「少しでも高く売却したい場合」「他の共有者に、共有持分を買い取る意思・資金がある場合」に向いている方法です。

一方で、共有者との関係が悪い場合や、そもそも買い取りの意思がない場合には成立しません。また、市場価格とかけ離れた金額で売却すると、差額部分が贈与とみなされて贈与税が発生するリスクがあります。

そのため、共有者への売却を進める際は、事前に不動産会社に査定を依頼し、適正な価格を把握したうえで進めることが重要です。必要であれば、専門家を交えて交渉をサポートしてもらうと安心です。

まとめ

共有名義不動産を相続する場合は、不動産の名義を被相続人から相続人へと変更する「相続登記」を必ず行う必要があります。

相続登記を進めるには、遺言書の有無の確認や相続人の確定、遺産分割協議などの手続きを正しい順に進めることが重要です。手順を飛ばしてしまうと、書類の不備や相続人間の意見不一致により、手続きがやり直しになることもあります。

また、共有名義のまま相続すると、相続のたびに新しい共有者が増え、「売却に同意してもらえない」「固定資産税や維持費を負担してもらえない」「居住者が賃料を請求される」などのトラブルが起こるリスクがあります。

こうしたトラブルを避けるためには、現物分割や換価分割、代償分割などの相続方法で共有名義を避けることをおすすめします。どうしても共有名義になってしまう場合は、共有持分のみを売却する方法も検討してみてください。

よくある質問

共有名義不動産にメリットはある?

共有名義には、いくつかメリットとされる点もあります。たとえば、自宅を売却する際に利用できる「居住用財産の3,000万円特別控除」は共有者ごとに適用されるため、共有者が1人なら3,000万円、2人なら6,000万円、3人なら9,000万円と控除額が増え、譲渡所得税を大きく減らせる可能性があります。

また、法定相続分どおりに共有名義にしておけば、「公平に分けた」という形を取りやすい面もあります。

ただし、これらのメリットはいずれも限定的で、共有名義は将来的なトラブルの原因になりやすいため、慎重に検討する必要があります。

相続登記をしないとどうなる?

相続登記を放置すると、時間が経つほど問題が大きくなり、次のようなリスクが発生します。

リスク内容 説明
不動産の売却や活用ができなくなる 名義が故人のままだと、売却・賃貸・担保設定などができず、資産として利用できない。
相続人が増えて権利関係が複雑化する 放置している間に別の相続が起こると共有者がどんどん増えるため、全員の同意が必要になり手続きがほぼ不可能に。
「所有者不明土地」化するおそれがある 連絡の取れない相続人が増えると、管理も売却もできず、塩漬けの不動産になる。将来の解決が非常に困難。
10万円以下の過料に科されるリスクがある 2024年4月以降、相続を知った日から3年以内の相続登記が義務化。放置すると10万円以下の過料の対象になる。

共有者間で共有持分を売買すると、贈与税がかかる?

市場相場よりも低い価額で買い取った場合、贈与税が課せられる可能性があります。

この場合、みなし贈与と見なされるケースがあるためです。

みなし贈与とは、贈与者と受贈者の間で贈与の合意がなかったとしても、実質的に贈与と同等の経済的利益があった場合に、贈与とみなすことをいいます。

相場より低い価格に明確な基準はありませんが、一般的には不動産の市場価値の評価額がおおまかな基準となります。

なお、みなし贈与と見なされた場合は、贈与税の申告や納付が必要になります。申告を怠ってしまうと、最大年率14.6%の延滞税や15%から40%の加算税の支払いが求められます。

みなし贈与にあたるかは、過去の判例などから税務署が個別で判断するので、税務署に相談しましょう。

共有者が死亡したら、共有持分は他の共有者に移る?

共有状態にある不動産の共有者が死亡しても、その持分が他の共有者に自動的に移ることはありません。

共有者が亡くなったら、相続人へと相続されるためです。

親子の共有不動産がある状況で親が亡くなった場合、子ども(共有者)は共有持分を相続できます。

ただし、遺言書がある場合は、その内容に沿って共有持分が相続されるほか、遺言書がなくても、自分以外にも兄弟や配偶者がいる場合は、相続人同士の協議によって持分の相続について決めなければなりません。

つまり、死亡した共有者の持分(相続持分)は、共有者である相続人がすべて相続できるとは限らないということです。

もし、共有者である子どもに共有持分を相続させたい場合は、あらかじめ遺言書を作成し、死亡した際の持分が共有者である子どもに相続されるように指定しておかなければなりません。

共有者である相続人が相続できるように準備しておけば、実際に相続が発生して不動産の共有状態が複雑になったり、トラブルが発生したりするのを防止できるでしょう。

共有者である親が認知症になったらどうなる?

親子の共有状態の不動産がある場合は、認知症の発症に備えておく必要があります。

親が認知症を発症した場合、判断能力が低下するため、不動産の名義変更が難しくなる恐れがあります。

親が認知症になってから名義変更をスムーズに進めたい場合は、成年後見制度の利用を検討した方がいいでしょう。この制度を利用することで、判断能力が低下した人の代理業務が可能になるため、共有不動産の名義変更をスムーズに進められます。

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