共有持分のリスクとは?共有状態のデメリットとトラブルを避ける方法を解説
共有持分は、他の共有者との人間関係や利害関係でトラブルになりやすい、いわば所有しているだけで多くのリスクを抱えることになる不動産です。共有持分を所有するリスクの代表例としては以下のようなものがあります。
共有持分を所有するリスク | 具体例 |
---|---|
共有者同士で意見が対立する | 不動産の使用方法、管理方針、売却時期などの意見が一致せず、対立する |
訴訟に発展する | 権利関係や共有状態の解消などを巡って訴訟に発展する |
権利や利益の分配で揉める | 誰がどう不動産を使用するかや、収益の分配をどうするかなどで問題が生じる |
税金や維持費を巡るトラブル | 固定資産税や修繕費などを払わない共有者がいると、その分自身の負担が増える可能性がある |
相場より安く買い取られる | 共有持分のみでは活用しづらいため、売却価格が【不動産の価格×持分割合】よりも安くなる |
相続が絡み売却が困難になる | 相続により共有持分の権利が細分化されると売却が難しくなる。連絡が取れず同意も得られなければ手続きが進まない |
手続きが煩雑化する | 共有者が多いほど手続きが煩雑化する。管理方針や売却を巡り同意を得ることも困難になる |
夫婦間や親族間のトラブル | 離婚や相続の際、共有持分の権利や売却などを巡って問題が起こりやすい |
トラブルを回避するための最善策は、売却などで共有関係を解消することです。とはいえ共有持分は、活用しづらく制約も多いことから売却が難しく、不動産全体を売却するにも共有者全員の同意が必要など、一筋縄ではいかないのが現実です。
共有持分の売却は、一般的な不動産ではなく専門の買取業者に依頼しましょう。専門の買取業者なら、トラブルを抱えた共有持分でも高額かつスピーディーに買い取ってくれます。自分の持分を売却する分には他の共有者の同意も必要ありません。
本記事では、共有持分を所有するリスクと起こりうるトラブルおよび、対処方法を丁寧に説明します。安心して相談できる専門の買取業者を選ぶポイントもまとめているので、早めの対処とトラブル回避に役立ててください。
共有持分のリスクとは?
「共有持分」とは、1つの不動産を複数人で所有する「共有不動産」における各々の所有割合のことです。共有持分を所有しているだけで、以下のようなリスクが生じます。
- 不動産全体を売りたいときに他の共有者と揉める
- 不動産を活用・改良したいときに他の共有者と揉める
- 相続などで権利関係が複雑になる
- 突然見知らぬ人と共有関係になる
- 共有物分割請求訴訟を起こされる
- 税金や維持管理費の負担で揉める
- 共有持分だけでは売れず抱え続けなければならない
共有者同士の関係が良好な場合でも、利害関係でトラブルに発展することがあります。具体的なリスクについて民法の規定も交えながら説明するので、共有持分を相続予定の方、共同で不動産を購入予定の方も自身に当てはめてイメージしてみてください。
不動産全体を売りたいときに他の共有者と揉める
自分の持分を含む共有不動産を丸ごと売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも反対する人がいると全員の同意が得られないため、意見がまとまらず揉めるリスクがあります。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元: 民法第二百五十一条|e-Gov法令検索
民法における「変更」とは、以下のような行為を指します。
- 他の共有者の持分を含む不動産の売却および、質権の設定
- 田畑の宅地化といった用途変更や、建物の大規模修繕
- 土地の分筆・合筆、建物の増改築、不動産を長期賃貸借にする など
反対者が多いほど不動産全体の売却はハードルが高くなります。自分の持分だけなら自由に売却することもできますが、共有持分は資産価値が低く売却しづらいのが現実です。とはいえ同意が得られないからと妥協して所有し続ければ、固定資産税や維持管理費だけがかかり続けるうえ、後述する別のトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
不動産を活用・改良したいときに他の共有者と揉める
共有不動産の形状や効用を著しく変更しない範囲で活用・改良することを「管理行為」といいます。共有者が多いほど異なる考え方や価値観が集まるため、たとえ軽微な活用・改良でも同意が得られず揉めるリスクが高くなります。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
引用元: 民法第二百五十一条|e-Gov法令検索
民法における「管理行為」とは、以下のような行為を指します。
- 共有不動産の管理者を選任・解任する
- 共有不動産の使用方法を決定・変更する
- 共有不動産に軽微な(形状や効用の著しい変更を伴わない)変更を加える
- 共有不動産に短期賃貸借契約を設定(締結)する
- 短期賃貸借契約における賃料を減額する など
なお「過半数」は「半数よりも多く」なければなりません。
たとえば1つの不動産を2人で2分の1ずつ分け合っている場合、過半数は【2分の1.1以上】なので2人とも同意する必要があります。管理方針を巡る意見の対立が長期化した場合などは、訴訟に発展する可能性もあるでしょう。
相続などで権利関係が複雑になる
共有不動産は、所有期間が長くなるほど権利関係が複雑化するおそれがあります。共有者の誰かが死亡したり生前贈与したりする可能性が高くなるためです。子や孫、さらに複数人に相続・贈与した場合などは、売却や管理行為の同意を得ようにも連絡が取れずあらゆる手続きが煩雑化するリスクが高まります。
だからといって放置してしまうと、問題を抱えたままの不動産に対し税金などの維持管理費を払い続けることになるだけでなく、さらなる相続が発生して問題が深刻化するおそれもあります。
突然見知らぬ人と共有関係になる
自分の持分は他の共有者の同意を得ずに売却できます。自分が売却する際はメリットですが、他の共有者が知らぬ間に持分を売却し、ある日突然赤の他人と共有関係になることもあり得ます。このとき想定されるリスクとして以下のようなことが挙げられます。
- 購入者(新たな共有者)が、敷地内に無断で入ってくる(追い出せない)
- 購入者が、強引かつ不当に安い金額で売却するように迫ってくる
- 購入者が、強引かつ不当に高い金額で買い取るように迫ってくる
- 購入者が、脅迫のような形で「変更」「管理行為」への同意を求めてくる
- 購入者が、法に触れないギリギリの手段で強引に立ち退かせようとしてくる
- あなたが共有状態にある物件に住んでいる場合、購入者が賃料の支払いを要求してくる など
購入者が悪質だった場合はトラブルのリスクが高くなります。また他の共有者の持分が競売にかけられた場合も同様に、第三者との共有状態となります。このケースで想定されるリスクと対処方法は以下の記事に詳しくまとめています。
共有物分割請求訴訟を起こされる
不動産の共有状態を解消するために起こすのが「共有物分割請求訴訟」です。訴訟を起こされた場合は拒否できず、判決によっては持分を手放さざるを得なくなるリスクがあります。そもそも訴訟となれば、弁護士に相談したり口頭弁論のため裁判所に出廷したりなどで、時間や費用もかかってしまいます。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
引用元: 民法第二百五十六条|e-Gov法令検索
訴訟を起こされる(共有状態の解消を求められる)のはどのようなケースなのか、一例を挙げてみます。
- あなたは共有状態にある物件(マンション等)に住んでいる
- 他の共有者が自分の持分を売りに出した
- 購入した第三者が、あなたに賃料の支払いを求めてきた
- 話し合ったが折り合いがつかず、余計にこじれてしまった
- 第三者が共有物分割請求訴訟を起こした
- 判決により、あなたは対価を得る代わりに持分を第三者に譲り渡すこととなった
本来は当事者間の話し合いで解決すべきですが、それぞれの思惑もあるためまとまらないことがあります。話し合いがこじれた場合、共有物分割請求訴訟を起こして裁判所に判断を委ねるというわけです。仮に和解が成立した場合も遺恨は残るため、その後の共有関係に亀裂が入るでしょう。
税金や維持管理費の負担で揉める
共有持分を所有していると、固定資産税や都市計画税、維持管理費などの支払いを巡り金銭トラブルに発展するリスクがあります。共有不動産の税金は地方税法で「連帯納税」が義務付けられており、持分割合に関わらず共有者全員が全額納税義務を負います。
(連帯納税義務)
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
引用元: 地方税法第十条の二|e-Gov法令検索
納付書は共有者の「代表者」宛てに届くため、代表者が全額納付したのち他の共有者から回収する流れが一般的となっています。当事者意識が低い共有者がいると全く支払わないこともあり、その場合は連帯納税の義務に則り他の共有者が負担しなければなりません。
立て替え分を未納の共有者に請求したり、それでも拒否するときは裁判所に訴えたりすることも可能です。しかし時間・労力・弁護士費用がかかるうえ、共有者同士の関係も悪化するおそれがあるなどデメリットのほうが大きいのが現実です。
また納税義務は共有者全員にありますが、均等に負担する義務はありません。したがって事前に負担割合を決めておくことが重要である反面、その負担割合で揉めるリスクがあることも知っておきましょう。なお管理費については、民法で「持分割合に応じて負担する」と規定されています。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元: 民法第二百五十三条|e-Gov法令検索
管理の費用とは、維持および改良などにかかる費用、マンションの管理費などが該当します。共有者の中に1人でも支払わない人がいると、他の共有者が立て替えることになります。未払いの共有者に請求したり裁判を起こしたりすることはできますが、上述の通り労力やコストがかかるうえ、共有者同士の関係が悪化するリスクもあります。
共有持分だけでは売れず抱え続けなければならない
共有持分だけでは売却が難しいため、処分できず抱え続けなければならない(税金や維持管理費もかかり続ける)リスクがあります。売れない理由として、共有持分は不動産の一部の所有権を持つに過ぎず、利活用の自由度が低いうえ他の共有者との関係構築も面倒など、買い手にとって魅力がないことが挙げられます。
また、仮にマンションの一室を2人で2分の1ずつ所有している場合、共有持分の売却価格は一室全体の売却価格の2分の1未満になるのが一般的です。一室を半分だけ所有しても使い勝手が悪く制約も多いなど、買い手にとってデメリットが多いためです。
「急にお金が必要になったので、共有持分だけでも早く売却したい」という場合でも、共有持分は資産価値が低く売却が難しいことを覚えておきましょう。
共有持分のリスクは「共有状態の解消」で回避する
共有持分のさまざまなリスクを回避するには、共有状態を解消するしかありません。共有状態は以下いずれかの方法で解消できます。
- 共有者全員同意の上で不動産全体を売却し売却金を分配する【換価分割】
- 他の共有者から持分を買い取り自分の単独所有にする【代償分割】
- 土地の場合は分筆して分割する【現物分割】
- 他の共有者に自分の持分を売却する
- 専門の買取業者に自分の持分を売却する
- 共有物分割請求訴訟を起こす
- 自分の持分を放棄する
近い将来、相続で共有持分の所有者となる方や共同不動産を購入する方も、トラブル回避につながる知識なのでぜひ役立ててください。それぞれポイントを絞ってわかりやすく説明します。
共有者全員同意の上で不動産全体を売却し売却金を分配する【換価分割】
- 他の共有者と話し合いができる関係性である
- 不動産全体を売却しても共有者の誰にも支障がない
- 他の共有者も共有状態を解消したいと考えている
などという場合は、共有者全員の同意を得て不動産全体を売却し、持分割合に応じて売却で得た代金を分配する「換価分割」を提案するとよいでしょう。共有者の同意を証明するための同意書を作成し、不動産業者に仲介を依頼するのが一般的な流れです。
共有持分のみでは資産価値が乏しく売却価格も相場未満ですが、不動産全体を売却できれば相場並みの価格で売却できる可能性があります。手元に多くの資金が残り不動産も手放せるため、以後トラブルの心配がなくなります。
ただし、1人でも反対する共有者がいると話がまとまりません。その場合は後述する別の方法を検討しましょう。また売却で得た代金が代表者の口座に入金される場合、分配されないといったトラブルを避けるためにも、連絡は密に取れる状態にしておくことが大切です。
他の共有者から持分を買い取り自分の単独所有にする【代償分割】
- 他の共有者と話し合いができる関係性である
- 不動産は手放さずに共有状態を解消したい
- 他の共有者が不動産を手放すことに納得している
などという場合は、他の共有者の持分を買い取って自分の単独所有にする「代償分割」を提案してみましょう。単独所有になれば、管理が楽になるうえ不動産の使用方法や売却も自分で判断できるため、上述してきた共有持分のリスクはすべて排除できます。ただし代償分割を提案するにあたって、以下の注意点を押さえておきましょう。
- あなたに十分な買取資金があること
- 買い取りを申し出る正当な理由があること
- 相場と同等など適正な評価をつけること
- 支払い・名義変更などは速やかに行うこと
- 誠実に対応する(詐欺など疑いの目を向けられないようにする)こと
買い取りを申し出る場合は誠実に対応することが大切です。財産を巡るトラブルは深刻化することがあるため、買い取る理由もきちんと伝えて、できる限り平和的な解決を目指しましょう。
無事に代償分割が成立したら、不動産の名義を「共有名義」から「単独名義」に変更して初めてあなたの単独所有となります。名義変更にかかる費用や流れ、注意点などを以下の記事にまとめているので、代償分割を検討する方はあわせて読んでおいてください。
土地の場合は分筆する【現物分割】
- 共有している不動産が土地である
- 他の共有者と話し合いができる関係性である
- 誰も土地を手放すことなく共有状態だけを解消したい
などという場合は分筆を提案しましょう。分筆とは「一筆(ひとつの土地)」として登記簿に登録されている土地を分割して登記し直すことです。それぞれ単独で所有者を登記できるため、誰も土地を手放すことなく共有状態を解消できます。
ただし分筆することで、ある共有者の土地だけが不整形になる、ある共有者の土地だけが道路に面しておらず極端に使い勝手が悪くなるなどのリスクも想定されるため、共有者全員が納得した上で行うことが大切です。また大前提として、隣地との境界線が確定していることが条件となり、分筆した土地が最低敷地面積を下回らないことも重要です。
家を建てる際に最低限必要とされている敷地面積のこと。市町村の地区計画区域などによって定められており、全国一律で何平米と決まっているわけではありません。分筆した土地が最低敷地面積を下回っていた場合、家を建てられないなど活用しづらいことから、売却も難しいというデメリットがあります。
分筆すると最低敷地面積を下回ってしまうという場合は、別の方法を提案したほうがよいでしょう。
他の共有者に自分の持分を売却する
- 他の共有者と話し合いができる関係性である
- 共有関係を解消できれば不動産を手放してもよい
- 現金が必要
などという場合は、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらえないか提案してみましょう。
共有持分の売却は難しいと前述しましたが、それはあくまで第三者(個人)に売却する場合です。たとえばあなたの土地を他の共有者(=Aさん)が買い取ることでAさんが持分割合の過半数を取得できれば、不動産の使用方法の決定・変更などの管理行為を自由にできるようになります。Aさんのメリットを引き合いに出して買い取りを提案すれば、話がまとまる可能性も高くなるでしょう。
また売却価格でトラブルにならないためにも、事前に「不動産鑑定」を受けることをおすすめします。不動産鑑定とは、不動産鑑定士という有資格者が基準に沿ってその不動産の適正な評価額を決定する行為で、「不動産査定」とは異なります。不動産査定は不動産業者(有資格・無資格問わず)が独自基準で評価するため、不動産鑑定に比べて公的性の点で劣ります。
あなたと他の共有者との間で金額に折り合いがつけばどちらでも問題ありませんが、可能であれば公的性の観点からも不動産鑑定をおすすめします。
専門の買取業者に自分の持分を売却する
- とにかく速やかに共有状態を解消したい
- できるだけお金を手元に残したい(適正価格で売却したい)
- 他の共有者と関わることなく(こっそり)手放したい
- 他の共有者とのトラブルを抱えた状態だが持分を手放したい
- 他の共有者と連絡が取れず買い取りや売却の提案もできない
などという場合は専門の買取業者に売却する方法をおすすめします。ここでのポイントは「専門」の業者かどうかです。賃貸や売買の仲介が中心の不動産業者は共有持分が専門外であることが多く、断られたり、仮に買い取りが可能でも安い金額を提示されたりするおそれがあります。手続きに不慣れで時間がかれば、その間に他の共有者にバレてしまうリスクもあるでしょう。
適正価格で売却するため、また速やかに共有状態を解消するためにも、買取実績が豊富で弁護士や司法書士と連携がスムーズな専門業者を選びましょう。以下の記事で、共有持分を売却する業者の選び方や売却までの流れを詳しくまとめているので参考にしてください。
共有物分割請求訴訟を起こす
- 他の共有者が協議に応じてくれない
- 話し合いはできるものの折り合いがつかない(こじれてしまった)
などという場合は、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を申し出る方法があります。裁判所は、共有不動産の分割方法として以下3パターンいずれかの判決を出します。
現物分割 | 共有不動産そのものを分割すること。土地の場合は分筆できるが、建物の場合は物理的・現実的に分割が困難なことも多い(マンションの一室など) |
---|---|
代償分割 | 共有者のうちの1人が他の共有者全員の持分を取得する代わりに、その対価を他の共有者に支払う。取得する共有者に十分な資金があることが前提となる |
換価分割 | 共有不動産を競売にかけ、売却代金を共有者全員で分ける方法。現物分割できない(価値が著しく損なわれる)といったケースで出されることが多い |
共有物分割請求訴訟の流れは以下の通りです(当事者間の協議でまとまらなかった場合)。
- 共有者に「共有物分割請求訴訟」を起こすことを伝える
- 弁護士に経緯を相談し「共有物分割請求訴訟」の申し立てを依頼する
- 呼出状が送付されたら期日に出廷し、裁判を受ける
- 判決が出たら速やかに従う(判決を待たずに和解も可)
共有物分割請求訴訟を起こされると、他の共有者は拒否できず判決にも従わなければならないため法的に共有状態を解消できます。裁判所からの呼出状が届いたときにトラブルになることがないよう、他の共有者には事前に伝達しておくことをおすすめします。
また以下の記事では、共有物分割請求訴訟に係る費用や、より詳細な手順をわかりやすくまとめています。共有物分割請求訴訟のメリットやリスクも理解した上で、弁護士に相談するかどうか判断しましょう。
自分の持分を放棄する
- 他の共有者と連絡が取れる/話ができる関係性である
- 不動産を手放したい、現金は残らなくても構わない
- 他の共有者が損害を被らない形で共有状態を解消したい
などという場合は自分の持分を放棄する(所有権を他の共有者に移転する)方法があります。一部のみの放棄はできないため持分を全て手放すことになりますが、他の共有者の同意は不要です。ただし、放棄した持分を他の共有者の名義で登記し直す際には「協力」が必要になるため、事前に伝えておいたほうがスムーズでしょう。
名義変更に応じてもらえないなどで進展しないときは、他の共有者に自分が放棄した持分の受け取りを求める「登記引取請求訴訟」を起こす手もあります。しかし民事裁判の審理期間(判決が下るまでの期間)は約9カ月という調査結果(※)もあるなど、時間や労力がかかることは覚悟したほうがよいでしょう。
とにかく一刻も早く共有状態を解消したい方は、専門の買取業者に売却するのが最もスムーズです。
※参照:裁判所|第2 審理期間 p.75
共有持分のトラブルに発展するリスクが高いケースと対処方法
以下のケースに当てはまる共有持分の所有者は、共有不動産を巡ってトラブルに発展するリスクが高いとされています。
- 共有者同士で離婚する
- 他の共有者と連絡を取りにくい
- 他の共有者が認知症になる
- 他の共有者が行方不明になっている
- 収益物件の経営で揉める
それぞれ対処方法とあわせて説明します。すでに当てはまっている方はもちろん、将来的に該当しそうな方も以下を参考にトラブルに備えましょう。
共有者同士で離婚する
不動産を共有する夫婦が離婚する場合、共有不動産の財産分与でトラブルに発展するおそれがあります。財産分与は夫婦として築いてきた財産を公平に配分する手続きであり、共有不動産の持分割合は加味されない(仮に持分割合が1:9だったとしても半分ずつ分け合うことになる)というのが理由です。
▼対処方法
- 財産分与の規定に従い、持分割合に関わらず不動産を折半する
- 折半できない不動産は一方が代償金を支払って買い取り、単独名義とする
- 不動産全体を売却し、代金を折半する(または持分割合に応じて分配する)
離婚協議がこじれてから共有不動産の扱いについて話をすると、解決できる問題も解決できなくなるおそれがあります。離婚協議が始まったらできる限り早い段階で(お互いが冷静なうちに)話し合いを進めていくことが大切です。
なお不動産の名義が共有状態の場合は、よほど特別な事情がない限り離婚時に解消することをおすすめします。共有名義のままにすると以下のようなリスクが生じるためです。
- 離婚をしても、不動産を所有し続ける限り関わり続けることになる
- 税金や維持管理費の支払いで揉めるおそれがある
- 売却・相続・使用方法などで新たなトラブルを招くおそれがある など
共有名義のままだと離婚後も関係を持たなければならず、固定資産税などの税金や維持管理費の支払いを巡るトラブルなども考えられます。一方が死亡した場合に相続が発生したり、不動産全体を売却したいと思ってもスムーズに話がまとまらなかったりなど、新たなトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
また共有名義で住宅ローンを組んでいる場合、離婚をしても当然ですが返済は続きます。一方の支払いが滞るともう一方に負担がかかるなど、こちらもトラブルの元になります。共有名義の住宅ローンについて、離婚時の対処方法や注意点をまとめた以下の記事もぜひ参考にしてください。
他の共有者と連絡を取りにくい
連絡を取りにくい共有者がいると、共有不動産を巡る金銭トラブルなどのリスクが高くなります。共有相手は家族や近親者が一般的ですが「関係が希薄で所在や連絡先も不明」「所在はわかるが犬猿の仲」「過去に不義理をした(された)」「親の不動産を共有名義で相続していたことを知らない疎遠の兄弟がいる」など、さまざまな事情で連絡が取りにくくなることがあります。
たとえばあなたが代表で固定資産税を支払っている場合、他の共有者と連絡が取りにくいと請求もしづらく、不動産全体を売却しようにも同意が得られなければ話が進みません。このように連絡が取りにくい共有者がいると税金や維持管理費の支払い、管理行為や売却などすべての場面でトラブルが起こるリスクがあります。
▼対処方法
- 自分の持分だけを専門の買取業者に売却する
- 共有物分割請求訴訟を起こす(所在がわかる場合) など
自分の持分なら他の共有者の同意がなくても売却できます。個人相手ではなかなか売れないため、速やかにトラブルを回避するなら専門の買取業者に相談しましょう。
また所在や連絡先はわかるものの連絡しづらいという場合は、共有物分割請求訴訟を起こす方法もあります。ただし裁判で他の共有者と顔を合わせる可能性や、突然訴訟を起こしたことでさらに関係が悪化するおそれもあるため、専門の買取業者に売却するのが最もスムーズで負担も少なく済みます。
他の共有者が認知症になる
他の共有者が認知症を発症した場合、不動産の売却や管理などでトラブルが起こります。認知症になると判断力が低下することから法律行為が制限され、特に意思能力の欠如が認められると当該共有者は法律行為ができなくなる(無効とされる)ためです。
たとえば不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、認知症の共有者が同意しても無効となるうえ、法律行為ができないことから共有関係も解消できないなど非常に厄介な状態に陥ります。
▼対処方法
- 自分の持分のみを専門の買取業者に売却する
- 成年後見人を立てて法律行為の代行を依頼する
共有関係を解消したい、不動産は残らなくてもよいというのであれば、自分の持分だけを専門の買取業者に売却すれば解決します。しかし、共有者全員または過半数の同意が必要なケースではそうもいかないため、成年後見人を立てて法律行為を代行してもらう必要があります。
成年後見人は、認知症や障害などにより判断能力が著しく低下した人を支援・保護するための制度です。申し立て等の流れについては裁判所のホームページをご覧ください。
他の共有者が行方不明になっている
共有者の中に行方不明(音信不通・所在不明)の人がいた場合、共有者全員または過半数の同意が必要な不動産の処分・管理で大きな障害となるリスクがあります。子や孫に相続した、第三者に売却したなど、相続や売却が絡んで面識のない人と共有関係になった場合は特に注意が必要です。
従来のように裁判所に申し立てて不在者財産管理人を選任してもらう方法がありますが、時間がかかるうえに管理人(原則弁護士)への報酬も必要など費用対効果は高くありません。そんな中、2023年に民法が以下のように改正されました。
(共有物の管理者)
第二百五十二条の二 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
引用元: 民法第二百五十二条の二|e-Gov法令検索
ポイントは「当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる」の部分で、具体的に以下のようなことが可能となります。
▼対処方法
- 裁判所に「所在等不明共有者の持分取得制度」の利用を申し立てる
- 裁判所に「所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度」の利用を申し立てる
各制度の概要と、それによりどういったことができるのかを以下にまとめています。
所在等不明共有者の持分取得制度 | 裁判所の判断で、行方不明者の持分を他の(連絡・協議が可能な)共有者に取得させることができる制度。裁判で決定した行方不明者の持分の価格を供託金として支払う必要があるが、不動産全体の売却や用途の変更などが可能になった |
---|---|
所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度 | 裁判所の判断で、行方不明者以外の共有者全員が「第三者に対して、自分たちの持分を全て譲渡すること」を条件に、行方不明者の持分を譲渡する権限を与えることができる制度。結果として不動産全体を譲渡することになるが、トラブルからは開放される |
行方不明とはいえ勝手に売却したり名義変更したりできないため、裁判所に申し立てる手間や費用はかかります。しかし、不在者財産管理人を選任してもらうしか方法がなかった従来と比べると柔軟な対応が可能になったといえます。
個人で申し立てることも不可能ではありませんが、行方不明であることを証明する書類など準備の段階から負担が大きいためおすすめしません。また弁護士に依頼する方法もありますが、最終的な着地点は「不動産の売却や譲渡」などであるため、最初から士業(弁護士や司法書士)とのネットワークを持つ専門の買取業者に相談することをおすすめします。
収益物件の経営で揉める
共有不動産が収益物件(駐車場やマンション、テナントビルなど)だった場合、管理方法や収益の分配を巡って以下のようなトラブルになるリスクがあります。
- 管理者(共有者の代表者)が収益を独り占めしている
- 他の共有者が税金や維持管理費をきちんと支払ってくれない
- 家賃を受け取らず、共有者が自分の身内をマンションに住まわせている(損失が発生)
- 地価の上昇にともない賃料を上げたいが、他の共有者が協議を拒否する
- 他の共有者が死亡し相続人となった親族が、執拗にあなたの持分の買い取りを迫ってくる など
ビジネスモデルにもよりますが、収益をきちんと分配してくれないなど、主に金銭トラブルのリスクが高くなります。
▼対処方法
- 当事者間で話し合い解決を目指す(相手に不当利益がある場合は返還を求める)
- こじれたときは裁判所に「不当利得返還請求」「不法行為にもとづく損害賠償請求」を提起する
- 自分の持分を専門の買取業者に買い取ってもらう
- 自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう
裁判所への提起は精神的な負担が大きく、また今後も共有し続ける場合は関係性の悪化も懸念されます。粘り強く交渉を続ければ相手が動いてくれる可能性もありますが、やはり心身への負担は大きなものです。
不動産を手放すことにはなりますが、専門の買取業者に売却すればトラブルから開放され手元には現金が残ります。一刻も早くスッキリしてリスタートするためには売却をおすすめします。なお以下の記事では、共有不動産の収益を他の共有者が独り占めしている場合の対処方法をまとめています。訴訟の流れもわかりやすくまとめているので参考にしてください。
共有持分の売却は専門の買取業者に依頼するとリスクを減らせる
共有持分は資産価値が低く使用に際して制限が多いうえ、第三者と共有関係になることなどからも売却が難しい不動産です。そのため自分の持分だけを売却するなら、個人や一般的な不動産業者ではなく専門の買取業者に依頼しましょう。
なぜ「専門」の買取業者に売却すべきなのか
一般消費者(個人)は使い勝手の悪い共有持分を敬遠する傾向にあり、賃貸・売買などがメインの不動産業者は適正価格がわからず安く買い叩かれる・そもそも断られるといった懸念があります。売却できずに抱え続ければ、税金や維持管理費がかかり続けるうえに多くのリスクに縛られたままとなり、妥協して安く売却すれば損をするなどメリットがありません。
こうした問題を解消するには、共有持分などの訳あり物件を専門に扱う買取業者に依頼するのが最善策です。共有持分や共有不動産で起こるさまざまなトラブルへの対処方法や訳あり物件の相場も熟知しているため、自分の持分のみを早く・適正価格で売却できるというのが理由です。
ただし業者選びを誤ると安く買い叩かれたり、他の共有者とトラブルになったりすることもあるため、以下を参考に信頼・安心できる業者を選ぶことが重要です。
信頼できる買取業者の特徴
共有持分などの訳あり物件を専門的に取り扱っている | 共有持分は複雑な権利関係やトラブルを抱えた状態で取り引きされることが多い。専門的に扱っている業者は経験値が高く、さまざまな事情があっても適切に対応してくれる |
---|---|
共有不動産があるエリアで取引実績がある | 共有持分の査定額は立地や形状などが大きく関係する。エリアを熟知している買取業者であれば相場を把握しているので、安く買い叩かれる心配がない |
柔軟さや臨機応変さがある・話を親身に話を聞いてくれる | 「今すぐ売却したい」「共有者同士で揉めている」など売り手の複雑な事情にも丁寧に対応してくれる買取業者は、最後まで責任を持って対応してくれる |
査定額の根拠をきちんと説明してくれる | なぜその査定額なのか、立地・面積・形状などさまざまな観点から丁寧に説明してくれる買取業者は信頼性が高い(安く買い叩かれる心配がない) |
士業(弁護士や司法書士)とスムーズに連携してくれる | 士業と連携していれば各種手続きがスムーズに進むだけでなく、他社で断られるような複雑な事情を抱えた共有持分でも応じてくれる可能性が高い |
売買契約を締結してから気づいたのでは遅いため、問い合わせ前の段階から買取業者のホームページを確認し、信頼できるかどうか見極めていくことが大切です。特に共有持分は、権利が複雑化したり共有者同士でトラブルを抱えたりしたまま取り引きされることも多いことから、対応に慣れている専門の買取業者を選びましょう。
まとめ
共有持分はリスクが多い不動産です。他の共有者との人間関係や利害関係が絡み、問題が複雑化することも珍しくありません。トラブルに巻き込まれたときは共有関係を解消するのがベストですが、他の共有者と連絡が取れない、話がまとまらない、自分の持分だけだと売れないなどハードルが高いのも現実です。
弊社・株式会社クランピーリアルエステートは共有持分の豊富な買取実績を強みとしており、全国の弁護士・司法書士と独自のネットワークでスムーズな連携が可能です。「相続が絡んで権利関係が複雑化した」「他の共有者とトラブルになっている」「他社で断られた」など問題を抱えた共有持分をお持ちの方はぜひお気軽に、以下の窓口から無料相談・無料査定をご依頼ください。全国対応のためエリアは問いません。