共有者が固定資産税を滞納するとどうなる?対処法もあわせて解説

共有者が固定資産税を滞納するとどうなる?対処法もあわせて解説

共有不動産の固定資産税は、一体誰が払うべきものなのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。固定資産税は、共有者全員で負担して支払わないといけません。実際には代表者1人が全員分を取りまとめて支払い、後から他の共有者が代表者へ持分に応じた金額を払うのが一般的です。地方税法では「連帯納付の義務」が定められているため、共有者が固定資産税を滞納すると他の共有者が代わりに支払わないといけません。

代表者以外の共有者が滞納した場合、一旦代表者が肩代わりをして納付した後、滞納者へ請求が可能です。相手が行方不明などで連絡が取れない場合は、弁護士への相談も検討しましょう。一方、代表者が固定資産税を滞納した場合は税務署からペナルティが課せられます。期限を過ぎた日数分の延滞税が付加され、税務署から督促状の送付や催告が行われます。それでも納付しない場合は、財産の差し押さえが実行される可能性があるため注意しましょう。

また、共有不動産の固定資産税にはさまざまなトラブルが起こる可能性があります。この記事では、共有者が自己破産した場合や共有持分を放棄した場合など、想定されるトラブルとその対処法も解説するのでぜひ参考にしてください。

目次

共有名義不動産の固定資産税は誰が払うのか?

不動産を所有している人は年1回、国へ固定資産税を払う義務があります。では、共有不動産の場合その固定資産税は誰が払うべきなのでしょうか。

基本的に、固定資産税は「共有者全員」が負担するものです。ただし各々がバラバラに払うことはできず、支払いは「代表者」がまとめて行います。固定資産税の請求が来た際に慌てないよう、ポイントを把握しておきましょう。

共有者全員で負担する

共有名義の不動産を所有する共有者には、地方税法第10条の2第1項によって「連帯納税義務」があると定められています。共有者全員が、それぞれ分担して固定資産税を払わないといけません。また、民法第二百五十三条に記されている通り、共有者が持つ持分割合に応じて負担する納税額が定められます。

共有者が負うのは、「連帯して納付する義務」です。そのため共有者の内誰か1人が固定資産税を滞納すれば、他の共有者が代わりに負担しないといけないので注意しましょう。

参考1:地方税法第十条の2第1項「連帯納税義務」|e-Gov法令検索
参考2:民法第二百五十三条「共有物に対する負担」|e-Gov法令検索

支払いは代表者が行う

不動産を共有した時点で自治体から固定資産税の代表者を連絡する旨の通知が届くので、共有者で話し合い「代表者指定届」を提出し代表者を自治体へ知らせましょう。すると、毎年代表者の元へ納税通知書が送られるようになります。共有不動産の固定資産税は共有者が各自で支払うことはできないため、代表者がまとめて支払います。この時、それぞれの持分に応じた負担額を先に徴収するのも可能ですが、代表者が一旦全額立て替える場合はその後共有者に対して持分割合に応じた負担額を請求します。

ちなみに「代表者指定届」を提出しない場合は、自治体が代表者を指定し納付書を送付することになります。また、代表者の変更は「代表者変更届」を提出すれば可能です。

共有者が代表者に対して固定資産税を滞納するとどうなる?

では、もし共有者が代表者に負担額を支払わない場合はどうすればいいのでしょうか。代表者が取るべき行動は、2つあります。

  • 代表者がひとまず立て替えて支払う
  • 負担分を支払わない共有者に対して求償する

共有者が負担分を払わなくても、固定資産税は納めなければいけません。一旦立て替えた後に、負担分を払わない共有者に請求しましょう。

代表者が立て替えて支払うことになる

共有不動産を所有する共有者全員には、「連帯納税義務」があります。これは、全員に納税する義務があるのと同時に、誰かが払わない場合には他の人が負担する必要があるということです。固定資産税は代表者がまとめて支払うため、負担額を支払わない人がいたとしても代表者はその分を一旦立て替えなければいけません。

負担分を支払わない共有者に請求する

他の共有者の負担分を立て替えた代表者には、共有持分に応じた負担額を支払うよう請求する権利(求償権)があります。連絡先がわかる場合は、負担分を支払うよう相手に請求しましょう。しかし、相手が支払いに応じなかったり、行方不明になっていたりとスムーズに支払われないケースもあります。その場合は、弁護士を通して請求することも検討すると良いでしょう。

ただし、共有者1人あたりの固定資産税負担額はそう多くない場合がほとんどなため、弁護士費用がかかることを考えると費用倒れの可能性があります。費用を節約するためには、数年分の請求をまとめて行うのも選択肢の1つとして考えましょう。その際は、債権の消滅時効が適用されないように注意が必要です。民法166条1項によると、債権の消滅時効は以下のどちらかの期間が過ぎた時点と定められています。

  • 権利を行使することができると知った時から5年間行使しないとき
  • 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

たとえば、固定資産税を払わない共有者に求償権を行使する場合、代表者が立て替えて納税した時点から5年が経過すると請求する権利が失われます。なお、2020年3月31日以前に納税した固定資産税の場合は、旧民法の規定が適用されるため消滅時効は10年となります。

代表者が固定資産税を滞納したらどうなる?

共有者が負担分を払わないケース以外にも、代表者が固定資産税を払わない場合もあります。代表者が固定資産税を滞納した場合はどうなるのでしょうか。具体的には下記の3つの措置が取られる可能性があります。

  • 延滞税を支払わなければならない
  • 督促状が送られる・納付の催告が行われる
  • 財産を差し押さえられる

固定資産税を滞納すると、さまざまなペナルティが課せられることになります。税の計算方法や、督促状及び差し押さえの要件について解説します。

延滞税を支払わなければならない

固定資産税の支払いには、期日が設けられています。一括払い、分割払いいずれのケースにも期日があるため納付書を確認しましょう。納付期日を過ぎても納税しない場合には、経過日数に合わせた「延滞税」が付与されていきます。延滞税の税率は経過日数によって異なりますが、期限の翌日から2カ月を過ぎると税率が大きくなります。期日が過ぎていることに気づいたら、なるべく早く納付しましょう。具体的な税率は以下の通りです。

延滞日数 延滞税の割合
納期限から2カ月以内 年「7.3%」、もしくは「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い方
納期限から2カ月経過後 年「14.6%」、もしくは「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方

計算方法は「本来納付するべき金額×延滞税の割合×滞納日数÷365」です。固定資産税額によっては大きな金額になるため、注意が必要です。

督促状が送られる・納付の催告が行われる

地方税法によると、納期限までに固定資産税が納付されない場合は期限後20日以内に督促状が発行されると定められています。

(市町村民税に関わる督促)
納税者又は特別徴収義務者が納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない。
(引用元:e-Gov法令検索「地方税法 第329条1項」)

督促状が届いた時点ですでに納期限が過ぎているため、届いたらすぐに支払いを済ませましょう。もし督促状が届いても払わない場合、税務署から納付の催告が行われます。電話や郵便などで何度かに渡って行われますが、督促や催告が実行された場合はすでに強制執行間近の段階に来ていると考えられます。そのままでは財産が差し押さえられる可能性があるため、早急な対応が必要です。

財産を差し押さえられる

前述の通り、督促や催告を無視し続けると強制執行(=差し押さえ)が実行されます。税務署は督促状を送付してから10日間が経過した段階でまだ未納な場合、滞納処分として財産の差し押さえが可能になるのです。差し押さえは預貯金や給与、車などの他、共有不動産自体が対象になることもあります。

また、「共有名義不動産の固定資産税は誰が払うのか?」で説明した通り共有者全員に連帯納付義務があるため、代表者だけでなく他の共有者の財産まで差し押さえられる可能性があります。代表者が滞納したことで他の共有者の財産が差し押さえられると、大きなトラブルに繋がる恐れがあるため注意しましょう。

共有不動産の固定資産税に関する他のトラブルと対処法

共有不動産は複数の人間が所有権を持つため、固定資産税について滞納以外にもさまざまなトラブルが起こり得ます。具体的には、以下のようなトラブルが考えられるでしょう。

  • 共有者が持分を売却した
  • 共有者が自己破産した
  • 共有者が共有持分を放棄した
  • 代表者が固定資産税を横領した
  • 共有者が死亡した
  • 共有者が音信不通になった
  • 共有者が認知症になり負担分を支払えない
  • 固定資産税の肩代わりが「みなし贈与」と判断された
  • 納税資金が不足した

それぞれのケースで有効な対処法は異なります。いざトラブルが起こった際に慌てず対応できるよう、対処法を確認しておきましょう。

共有者が持分を売却した|対処法:新たな共有者と固定資産税の支払い方法を話し合う

共有不動産全体を勝手に売却することはできませんが、自分の持分のみなら売却可能です。そのため、共有者の誰かが自身の持分を第三者に売却する可能性も考えられます。この場合は持分を購入した第三者が新たな共有者となるため、対象人物と固定資産税の支払い方法について話し合う必要があります。

共有持分の購入者は専門の買取業者であることがほとんどです。そのため、購入した業者と話し合うことになるでしょう。もし固定資産税の負担について相手が了承しない場合は、前述した通り弁護士を通しての請求を考えなければなりません。そのため、新たな共有者が分かり次第、速やかに連絡を取って話し合いましょう。

共有者が自己破産した|対処法:新たな共有者と固定資産税の支払い方法を話し合う

共有者が自己破産した場合も、新たな人物が共有者になる可能性が高くなります。自己破産とは、借金返済の見込みがないことを裁判所に認めてもらい、一定の条件の元で返済義務を免除してもらう制度です。自己破産をすると、まずは持っている財産を換金して返済の一部に充てなければなりません。そのため、自己破産をした共有者の共有持分は競売にかけられます。

競売で持分を落札した人が新たな共有者に加わるため、その人と固定資産税の支払い方法を話し合う必要があります。

共有者が共有持分を放棄した|対処法:税負担が増えるのを受け入れる

共有者が持分を放棄すると、その共有者が持っていた持分は他の共有者に分配されます。たとえば3人で1/3ずつ共有していた場合、1人が持分放棄を行うと残った2人が1/2ずつ負担することになります。共有持分割合が増えれば固定資産税の負担割合も増えますが、持分放棄は民法によって認められているため回避できず負担の増加を受け入れるしかありません。

ちなみに、持分を放棄するには「持分移転登記」が必要です。持分移転登記には共有者全員が参加する必要があるため、知らない内に持分が増えていたといったことは基本的にありません。また、固定資産税は1月1日時点で持分を保有している共有者に納税義務が課せられます。そのため、タイミングによっては持分を放棄する共有者に固定資産税を請求できる可能性はあります。

代表者が固定資産税を横領した|対処法:早めに固定資産税を支払う

代表者が共有者から徴収した固定資産税を横領し、生活費や遊興費に充てて使い込んでしまった場合でも固定資産税は払わなければなりません。すでに代表者へ自身の負担分を預けているのにまた追加で払うのは納得のいかないことですが、払わずにいると最悪不動産を差し押さえられる可能性があります。代表者が固定資産税を横領して払わないとなれば、早めに他の共有者と協力し納税を済ませましょう。

横領した代表者に対しては、後で「不当利益返還請求訴訟」を申し立てられます。不当利益返還請求とは、相手が不当に得た利益を返還するよう請求することです。このケースでは、他の共有者から徴収した固定資産税負担額を、不当に自身の利益にしているとみなされます。ただし、不当利益返還請求訴訟を申し立てるには相手が不当に利益を得た証拠や、悪意の証明が必要です。自身の手に負えない場合は弁護士へ依頼すると良いでしょう。

共有者が死亡した|対処法:新たな共有者と固定資産税の支払い方法を話し合う

共有者の1人が死亡した場合、死亡した人の財産は法定相続人に引き継がれます。財産には共有持分も含まれるため、死亡した共有者の配偶者や子供などの親族が新たな共有者になります。共有者には連帯納付義務があるので相続で共有者となった人物にも固定資産税を払う義務がありますが、固定資産税について理解しないまま相続している場合もあるでしょう。

新たに共有者に加わった人がいる場合は、固定資産税の納付についてきちんと説明し、支払いについて同意してもらう必要があります。そのため、早めにコミュニケーションを取り話し合いを進めましょう。

共有者が音信不通になった|対処法:不在者財産管理人を選任する/死亡扱いにする

共有者が音信不通になり固定資産税が支払われない場合の対処法は、2種類あります。

  1. 不在者財産管理人を選出する
  2. 死亡扱いにする

不在者財産管理人とは、行方不明者(不在者)の財産を管理する人で家庭裁判所から選任されます。一般的には弁護士や司法書士など、不在者と利害関係にない人物が選ばれます。1の方法では、不在者財産管理人を選任してもらい、管理人に対して固定資産税の支払いを請求します。

2の方法は、音信不通となった人物を死亡扱いにし、その相続人から固定資産税を徴収します。ただし、音信不通者に相続人がいない場合は、他の共有者に持分が分配され固定資産税の負担が増す可能性があります。

いずれの方法も、「音信不通」であることの証明や申し立ての手続きは簡単ではありません。また、音信不通者に支払い能力がない場合や相続人がいない場合は、自身の負担が増える可能性もあるため共有状態の解消を検討するのも1つの方法です。共有状態は持分の放棄や売却で解消できますが、売却する場合一般的な不動産会社では共有持分の買取は行っていないことがほとんどです。その場合は、共有持分の買取を専門に扱う業者へ依頼しましょう。

共有者が認知症になり負担分を支払えない|対処法:成年後見人を選任する

共有者が認知症になった場合は、共有者の財産を守るために成年後見人を選任する必要があります。成年後見人は認知症などで判断能力を失った人の代わりに不動産や預貯金などの財産を管理する権限を持つため、固定資産税に支払いについても後見人が代わりに行います。

成年後見人の選任方法は、認知症の進行度合いによって異なります。まだ判断力がある内なら、「任意後見制度」で本人が成年後見人を指定できます。一方、判断力が失われている状態の場合は、「法定後見制度」によって家庭裁判所が選任します。任意後見制度の場合は親族を指定できますが、法定後見制度では弁護士など親族以外から選ばれるのが一般的です。

固定資産税の肩代わりが「みなし贈与」と判断された|対処法:利子をつけて賃借にする

たとえば親子で不動産を共有していて、親が子供の固定資産税負担額を一緒に払っているケースなどがあるかもしれません。この場合、固定資産税の肩代わりが「みなし贈与」とされ、子供に贈与税が課せられる可能性があります。みなし贈与と判断されないためには、肩代わりした金額に利子をつけて「貸借」にしましょう。利子は1%でも問題ありません。

他にも贈与税の非課税枠を利用し、肩代わりを含む贈与金額を年間110万円までに抑えるのも1つの方法です。

納税資金が不足した|対処法:役所に相談する

固定資産税を支払う資金が無かったり不足している場合は、速やかに自治体へ相談しましょう。固定資産税は原則的に年4回の分納が認められていますが、相談すれば年12回の分納手続きが認められる可能性があります。分納の他にも、理由によっては徴収猶予が受けられたり税額を減免してもらったり、財産の差し押さえが猶予される「換価の猶予」が認められる場合もあります。

いずれの場合も、支払いができないと分かった時点でなるべく早く相談するのが大切です。できれば滞納する前に役所へ相談しましょう。

まとめ

共有不動産の固定資産税を滞納すると、共有者全員に迷惑がかかるだけでなく場合によっては財産が差し押さえられる可能性もあります。また、複数人に所有権がある共有不動産では、共有者の1人が自己破産したり、認知症になったりとさまざまなトラブルが起こり得ます。トラブルへの対処法を知らないと、固定資産税を滞納するリスクが高まるため注意が必要です。資金不足でどうしても固定資産税が払えないとわかったら、なるべく早く役所へ相談するのも大切です。役所へ相談すれば、分納や徴収猶予を認めてもらえるかもしれません。

共有不動産の固定資産税にまつわるトラブルを回避するには、共有状態を解消するのも1つの方法です。共有状態の解消方法の1つとして、持分の売却を検討するなら専門の買取業者への依頼がおすすめです。

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