離婚時に共有名義の住宅ローンはどうする?4つ対処法と放置するリスク

離婚時に共有名義の住宅ローンはどうする?4つ対処法と放置するリスク

離婚時に共有名義の住宅ローンが残っている場合、次のように悩んでいる人もいるでしょう。

「共有不動産の住宅ローンが残っているけれども、離婚時にはどう対処すればよい?」
「共有名義の不動産をそのままにしておくと、どんなリスクがあるの?」

離婚時に共有名義を解消しておくと、さまざまなリスクを回避できます。共有名義を解消せずそのままにしておいた場合、自分だけでは物件を自由に活用できなかったり、不動産が放置されたりする可能性があります。元配偶者がローンの返済を滞ると、負債を背負わなければならなくなったり、契約違反でローンの一括返済を求められたりするリスクもあるでしょう。

なお共有名義の住宅ローンが残っている場合の対処法には、売却、どちらかが住み続ける、第三者に持分を売却するなどがあります。

売却する場合は、アンダーローンかオーバーローンかによって対応が変わってきます。

ローンの状況 対処法 注意点
アンダーローン(ローン残債が不動産価格より低い状態)の場合 売却代金で住宅ローンを完済し、残った現金と共有財産を分配する 不動産全体を売却するために必要な契約や決済手続きは離婚相手と共同で行う必要がある
オーバーローン(ローン残債が不動産価格より高い状態)の場合 オーバーローンで手元資金や親からの援助でのローン完済が難しい場合「任意売却」を検討する ・抵当権がある金融機関の許可が必要
・税金を滞納し、役所に差し押さえられている物件は任意売却できない
・任意売却したい不動産が共有名義の場合、ほかの共有者や連帯保証人の同意が必要

夫婦のどちらか一方が住み続ける場合は、共有名義を放置せず、住み続ける人の単独名義にしておきましょう

また自分の共有持分のみの売却は、離婚相手が不動産の売却に同意せず、かつ住宅ローンが残っていない場合に有効です。しかし、一般的な売却相場より安くなってしまったり、財産分与時にトラブルになったりするリスクがあります。

無断で売却すると相手に不信感を持たれる可能性があるので、事前に伝えておく必要があるでしょう。

共有持分はクランピーリアルエステートに売却するのがおすすめです。クランピーリアルエステートは、共有名義不動産の共有持分の専門買取業者です。全国の弁護士や税理士とも提携しているため、不動産における法律・税金の問題も解決できます。

本記事では、離婚時に共有名義の住宅ローンが残っている場合の対処法や、不動産を共有名義のままにしておくリスクを解説します。離婚時、共有不動産の名義変更をする際にかかる税金についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

離婚時に共有名義の住宅ローンが残っている場合の4つ対処法

離婚時に共有名義の住宅ローンが残っている場合の対処法は、以下の4つです。

  • アンダーローンの場合は売却して利益を分割する
  • オーバーローンで売却したい場合は方法が限られる
  • 売却せずにどちらかが住み続ける
  • 自分の共有持分のみを売却する

それぞれ解説します。

アンダーローンの場合は売却して利益を分割する

ローン残債が不動産価格より低い状態を「アンダーローン」といいます。アンダーローンの場合、売却代金で住宅ローンを完済し、残った現金と共有財産を分けるだけで財産分与が簡単にできます

たとえば、住宅の査定価格が3,000万円、ローン残高が2,000万円だったとしましょう。

住宅を売る場合、売却代金から残ローンを支払うと、1,000万円残ります(実際は仲介手数料などが引かれるため、それより手取り額が低くなります)。そのため夫婦が1人500万円ずつ現金を受け取る方法で財産分与が可能です。

不動産全体を売却し現金で財産分与すると、共有名義を避けられます。また、売却代金を住宅ローンの返済に充当できます。

ただし、不動産全体を売却するために必要な契約や決済手続きは離婚相手と共同で行わなければなりません。元の配偶者と顔を合わせたくない場合は、不動産業者の担当者や司法書士に相談し、別日に手続きできるよう設定してもらいましょう

オーバーローンで売却したい場合は方法が限られる

ローン残債が不動産価格より高い状態を「オーバーローン」と呼びます。オーバーローンは、不動産を売却しても売却代金で住宅ローンを完済できない状態です。

オーバーローンの場合、夫婦が合意しても不動産を自由に売却できません。なぜなら、ローンを完済せずに抵当権を外すことは金融機関が認めないからです。

オーバーローンで手元資金や親からの援助でのローン完済が難しい場合「任意売却」を検討しましょう。任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった場合に、金融機関に相談して不動産を売却し、その売却代金で残ローンを返済する方法です。任意売却であれば、返済できない住宅ローンがある状態で抵当権を解除してもらえるため、ローン残債があっても売却できます。

ただし任意売却は、抵当権がある金融機関の許可がなければできません。残債と市場価格の開きが大きい場合、金融機関から任意売却への同意が得られないこともあります。税金を滞納し、役所に差し押さえられている物件も任意売却はできないため、滞納している税金を全額納付する必要があります。また任意売却したい不動産が共有名義の場合、ほかの共有者や連帯保証人の同意を得なければなりません。

なお任意売却をしても残ってしまったローンは、住宅ローン名義人が返済していきます。万が一、住宅ローンを滞納した場合、信用情報機関の個人信用情報に遅延情報として登録される可能性があるため注意が必要です。登録された内容によっては、金融機関からの借入やクレジットカードなどの審査が一定期間通らなくなったり、融資やカード発行が受けられなくなったりする場合もあります。

後々の生活にも影響を与えるリスクがあるため、滞納はしないように気をつけましょう。

売却せずにどちらかが住み続ける場合

離婚後も夫婦のどちらかが物件に住み続ける場合、共有名義を放置せず、住み続ける人の単独名義にしておきましょう。離婚後に不動産を共有名義のまま放置しておくと、将来の売却・活用時の問題や、住宅ローンの契約違反となるなどのリスクがあるからです。

ただし、共有名義は夫婦2人の収入を合算して借入審査が通っています。そのため、最初にローン契約したときよりも大幅に収入が上がり、1人でも返済できると金融機関が認めなければ単独名義に変更できない可能性もあるでしょう。

ここからはタイプ別に分けて解説していきます。

  • 住宅ローンを一括返済する
  • 引き続きそれぞれが払い続ける
  • 住宅ローンを借り換える
  • 債務引受で第三者に名義変更する

住宅ローンを一括返済する

1つ目は住宅ローンを一括返済する方法です。

住宅ローンが残りわずかな場合は、貯金を切り崩したり車などを売却したりして、お金を工面しローンを完済する方法があります。また、住宅ローンを繰上げ返済してローン残高が軽減されれば、収入によっては単独名義に変更できる場合もあるでしょう。

もしどちらか一方が立て替えた場合は、相手が支払わなくなる恐れもあるため、離婚協議書に具体的な金額を記載し公正証書にしておく必要があります。

一括返済には手数料がかかることも念頭に入れておきましょう

引き続きそれぞれが払い続ける

2つ目は、引き続きそれぞれが払い続ける方法です。

離婚後もどちらかが住み続け、住宅ローンを2人で払い続ける方法において、特別な手続きは不要です。
ただし住宅ローンの共有名義は、双方が連帯保証人になっているケースがあります。離婚した後の相手の返済状況はわからないため、相手が支払いを滞納し続けていた場合は、もう一方に一括返済を求められる可能性もあるでしょう。

また相手と連絡を取り続けなければならなかったり、固定資産税の支払いなどで金銭面でのトラブルが起こったりする場合もあります。持分を勝手に売却されて買取業者などから売却するよう求められたり、万が一相手が他界してしまった場合は、相続の際にトラブルになったりする場合もあるでしょう。

このように、不動産の共有名義はリスクが多いため、あまりおすすめしません。住んでいない側が住宅ローンを支払い続ける保証はないため、よく話し合って選択する必要があります。

住宅ローンを借り換える

3つ目は、住宅ローンを借り換える方法です。

物件に残る夫が妻の債務を引き受けようとしても、金融機関の合意を得られない場合があります。その場合、住み続ける人がほかの金融機関から新たに借り入れて住宅ローンを完済する「借り換え」を行う方法もあります。

具体例をみてみましょう。

【借り換えによる財産分与の例】

・夫婦の共有財産は市場価格4,000万円の不動産、住宅ローン残債が3,000万円、預貯金2,000万円

・夫が物件に残ると仮定

こちらの例の場合、住宅ローンの残債3,000万円を借り換えて3,100万円(融資手数料を100万円と仮定して計算)とし、不動産と残債を夫が引き受けます。すると夫の取得分は900万円となります(4,000万円-3,100万円=900万円)さらに900万円とは別に、預貯金を「1/2ルール」に従って分配すると、夫の取得分は1,000万円で、合計1,900万円(900万円+1,000万円)です。

しかしこの場合、妻の取得分は預貯金の半金1,000万円しかありません。そこで妻に、夫が取得する預貯金1,000万円のうち450万円を引き渡します。これにより妻の取得分は1,450万円(1,000万円+450万円)となります。一方、夫の取得分も900万円と預貯金の残金550万円で合計1,450万円となり、1/2ずつの財産分与が可能です。

なお借り換えには新規借入時と同様に融資審査があり、住み続ける人の収入状況や信用力が必要です。収入や返済能力によってはローンを組むのが困難な場合もあるため、離婚時に金融機関へ相談しておきましょう。

債務引受で第三者に名義変更する

4つ目は、債務引受で第三者に名義変更する方法です。

債務引受とは、住宅ローンの返済義務を第三者が債務者(借りた本人)の代わりに引き受けることです。

不動産が夫名義であれば、夫がそのまま住み続けて住宅ローンを支払っていけばよいでしょう。ただし妻が連帯保証人や連帯債務者であった場合、夫が支払うと合意しても金融機関への責任は免れません

保証人から外れるには、新たな保証人の要求や保証協会の利用、一部のまとまった入金が必要になる場合が多いでしょう。たとえば、共有名義の住宅ローンで妻が連帯債務から除外されたい場合、夫の親族などで連帯債務者になってくれる人を立てれば名義変更が可能です。

自分の共有持分のみを売却する

離婚相手と関わりたくない、または連絡が取れない場合、自分の共有持分を第三者に売却して共有状態から抜け出す方法があります。共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有している場合に、各々がその不動産に対して持っている権利の割合です。

共有持分は自分の所有物であり、ほかの共有者の合意なしに自由に売却可能です(民法206条)しかし住宅ローンの残債がある場合や、共有持分が仮差押されている場合は、自分の共有持分であっても売却できません

よって第三者への持分売却は、離婚相手が不動産の売却に同意せず、かつ住宅ローンが残っていない場合に有効な手段といえます。

共有持分の買取はデメリットが多いため、一般的な不動産会社は買い取ってくれませんが、共有持分買取業者なら買い取ってくれる可能性があります

買取業者に買い取ってもらう主なメリットは、次のとおりです。

  • 配偶者と顔を合わさずに売却できる
  • 短期間で売却でき、すぐに現金化できる
  • 裁判や登記の手間がない

住宅ローンが残っていても残債がわずかであれば買取可能な場合もあるため、相談してみるのもよいでしょう。ただし買取で不動産を売る際は、一般的な売却相場より安くなってしまう場合が多いです。

離婚の財産分与の際にトラブルが起こるケースもあります。

たとえば、市場価格5,000万円、夫の持分90%、妻10%の不動産があり、夫が自分の持分を売却したとしましょう。その場合、夫は4,500万円で共有部分を売却したとみなされます。残された不動産の価値は500万円ですが、離婚時の財産分与は1/2ずつが原則のため、夫は妻の持分にかかわらず、2,000万円支払う必要があるのです。

また自分の共有部分を相手に無断で売却してしまうと不信感をもたれる恐れがあります。離婚に向けて順調に話し合いが進められていたとしても、話がこじれるリスクがあるため、持分売却を検討している場合は事前に伝えておきましょう。

当サイトを運営するクランピーリアルエステートは、共有名義不動産買取の専門業者です。離婚等の財産分与で取得した共有持分や、共有者と連絡がつかず処分できない共有物件など、売却が難しい共有持分の高額買取が可能です。弁護士とも提携しているため、共有者間でトラブルを抱えている場合でも、安心して利用できるでしょう。

離婚時に不動産を共有名義のままにしておく8つのリスク

離婚時に不動産を共有名義のままにしておくリスクは、以下の8つです。

  • 自分で物件を自由に活用できない
  • ローンの返済が滞ると負債を背負う可能性がある
  • 持分を第三者に勝手に売却される可能性がある
  • 金融機関に報告しないと契約違反になる
  • 不動産が放置される可能性がある
  • 不動産の維持費がかかる
  • 離婚してもお互いの関係が切れない
  • 共有者が増えて管理が難しくなる可能性がある

それぞれ解説します。

自分で物件を自由に活用できない

1つ目のリスクは、自分で物件を自由に活用できない点です。

共有不動産は、共有者1人で行える行為から、共有者全員の同意が必要な行為まで、可能な範囲が決まっています

共有物全体に対して行える行為と範囲は、次のとおりです。

行為 内容 具体例 行為の範囲
変更行為(軽微な変更) 形状(外観、構造等)や効用(機能や用途など)の著しい変更を伴わない行為 ・建物の外壁・屋上防水などの修繕
・砂利道のアスファルト舗装
各共有者の持分価格に従い、過半数で決定
変更行為(軽微な変更以外) 共有物の管理の範囲を超えてその性質を変える行為 ・共有建物の増改築
・共有建物を取り壊す
・共有不動産全体を第三者に売却する
・共有不増産全体に担保権(抵当権等)を設定する
共有者全員の同意が必要
管理行為 共有物の性質を変えない範囲内で、その利用や改良を目的とする行為 ・共有不動産の賃貸
・共有建物の改装
・共有宅地の整地
各共有者の持分価格に従い、過半数で決定
保存行為 共有物の現状を維持するための行為 ・不法占拠者への明け渡し請求
・不動産の修理や修繕
・法定相続登記
・無権利者名義の抹消登記請求
・地役権設定登記請求
各共有者が単独でできる

共有名義の不動産は売却、貸出、リフォームの際にほかの共有者の同意が必要です(民法251条)共有者の一人が勝手に共有不動産を使用することは、ほかの共有者に迷惑や不公平を生じさせるため禁止されているからです。

離婚後も共有名義のまま放置しておくと、不動産を売却、活用したいときに元配偶者の合意を得なければなりません。しかし元配偶者との話し合いが難しかったり、連絡が取れなかったりする場合もあり、売却やリフォーム工事ができない恐れがあるでしょう。元配偶者との意見の相違があると、不動産の売却や活用ができず、固定資産税だけがかかる負動産になる可能性もあります。

なお2023年4月の民法改正により、砂利道のアスファルト舗装や建物の外壁・屋上防水修繕などの軽微な変更は、共有者全員ではなく持分価格の過半数で決定できるようになりました。

共有者の所在が不明な場合でも、裁判所が許可すれば所有者全員の同意がなくても共有物の変更が可能です。

ローンの返済が滞ると負債を背負う可能性がある

2つ目のリスクは、ローンの返済が滞ると負債を背負う可能性がある点です。

ペアローンの場合、お互いが連帯保証人になっています。そのため一方の支払いが滞ると、もう一方に一括返済を求められるリスクがあります。元配偶者がローン返済を滞った場合、不動産が差し押さえられ、競売にかけられる可能性があるのです。

その結果、妻と子どもが家に住み続けられなくなってしまうので、離婚後に共有名義を放棄するのは危険な行為といえます。

共有名義を解消し、一方に名義を移転すればリスク回避できるため、離婚時にはどちらか一方の単独名義にするようにしましょう。

持分を第三者に勝手に売却される可能性がある

3つ目のリスクは、持分を第三者に勝手に売却される可能性がある点です。

不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要ですが、持分だけであれば共有者の判断で売却が可能です。

共有名義不動産の持分を第三者が所有すれば、赤の他人と不動産を共有することになります。共有者が持分を第三者に売却してしまった場合、自分の持分を売却するよう交渉されたり、共有物分割請求訴訟を申し立てられたりする可能性があります。

共有物分割請求訴訟とは、共有となっている不動産の共有状態を解消するための請求です。

共有物分割請求訴訟では裁判所が中立な立場で判決を下すため、判決によっては、強制的に不動産を手放さなければならないケースもあるでしょう。

なお共有物分割請求訴訟を起こされなくても、共有不動産に住み続ける際は、賃料を請求される場合があります。

また共有持分の購入者は敷地を自由に出入りできるため、まったく知らない第三者でも、共有名義人である以上は敷地への出入りを拒否できません。購入者が悪質な不動産ブローカーだった場合、不動産を勝手に使用したり無断で侵入してきたりと、トラブルに発展する可能性もあるでしょう。

金融機関に報告しないと契約違反になる

4つ目のリスクは、金融機関に報告しないと契約違反になる点です。

共有名義の場合、ペアローンや連帯債務を組んでいることが多いです。

  • ペアローン:夫婦それぞれがローンを契約し、お互いに連帯保証人となる契約
  • 連帯債務:夫または妻のどちらか一方が主債務者になり、他方が連帯債務者として1つの物件上に、1つの債務(1つの抵当権)を負う契約

ペアローンや連帯債務の住宅ローン残債務がある状態で、夫婦の一方が金融機関に黙って物件から出ていくと、ローン契約違反の恐れがあります。なぜなら、ペアローンや連帯債務は、2人ともがその家に居住していることが条件のためです。

契約違反が金融機関に発覚すると、残債の一括返済を求められる可能性が高いです。金融機関は不正融資防止のために住宅使用調査を行う場合があります。契約違反が発覚するのもこのタイミングです。

調査封筒が抜き打ちで送付され、住民票を同封して返送するよう求められるのです。返送自体は任意ですが、連絡もせずに返送しないと、金融機関から疑われて本格的な調査が入る可能性があります。

そのような事態になってから慌てないように、離婚時には住宅ローンを借り入れている金融機関に相談しておきましょう。

なお金融機関の承諾を得ないまま、どちらか一方の単独名義に変更してしまう行為も契約違反となり住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。金融機関から住宅ローンの一括返済を請求された場合でも、親族から援助やローンの借り換えなどで相手名義のローンが完済できるのであれば、名義変更は可能です。また連帯債務や連帯保証人になっている場合は、別の誰かを保証人として立てるか物的担保を入れて外してもらう方法があります。

上記の方法が難しい場合は、金融機関に相談するとよいでしょう。

不動産が放置される可能性がある

5つ目のリスクは、不動産が放置される可能性がある点です。

共有不動産を活用するには、双方の合意が必要です。売却したり賃貸に出したりしたいと考えても、相手が反対すれば実現できません。離婚後も元夫婦が協力関係を築きながら物件を活用するのは困難です。

結果として不動産が放置され「もったいない状態」になる可能性もあるでしょう。

不動産の維持費がかかる

6つ目のリスクは、不動産の維持費がかかる点です。

不動産は、所有しているだけで毎年固定資産税がかかります。共有しているあいだは維持費用も分担するのが原則のため、自宅を利用していないのに、共有持分に応じて固定資産税の負担を求められる場合もあるでしょう。

なお不動産は、築年数が経つたびに多額な維持費がかかります。不動産業者に管理を任せると、管理費も発生します。いずれ売却や賃貸に出そうと考えていても、それまでの期間は家のメンテナンスが必要です。

相手が支払いに応じてくれなかったり、連絡が取れなくなったりした場合、固定資産税や修繕費を1人で負担しなければなりません

維持費削減のためにも、離婚時に共有名義は解消しておきましょう。

離婚してもお互いの関係が切れない

7つ目のリスクは、離婚してもお互いの関係が切れない点です。

離婚後も共有物件を持つと、元夫婦間の関係が続きます。共有名義の場合、不動産を売却・活用したり維持したりするにも相手との話し合いや協力が必要です。共有者の同意がないと、長期の賃貸借や抵当権設定、売却などの重要な行為はできません

居住しているどちらか一方が家をリフォームしようと思っても、リフォームの規模によっては制限がかかる場合もあります。

離婚後、何かあるたびに相手に連絡し協議するのはストレスとなります。後々の精神的負担を考慮すると、共有関係は離婚時に解消しておくべきでしょう。

共有者が増えて管理が難しくなる可能性がある

8つ目のリスクは、共有者が増えて管理が難しくなる可能性がある点です。

共有者の死亡によって持分が相続の対象になると、共有者が増え続け管理関係が複雑になる恐れがあります

たとえば共有名義不動産を持つ夫婦AとBが離婚し、Bが再婚後、子どもC・Dをもうけたとしましょう。離婚後も共有関係を解消せずにいた場合、Bが他界すると、Bの再婚後の子どもC・DがBの共有持分を相続します。Aは面識もないC・Dと不動産を共有しなければならなくなってしまうのです。

その後も相続のたびに名義人が増え、権利関係が非常に複雑になっていきます。

共有名義不動産の活用や処分には、共有者の同意が必要です。売却や賃貸を希望しても、共有者の同意が得られないと有効活用できない恐れがあります。離婚して連絡がとれず、建て替えやリフォーム、売却できない事態にもなりかねません。

共有者が増えて管理が複雑になるのを避けるためにも、共有名義状態はできるだけ解消しておきましょう。

離婚時に共有不動産の名義変更をする際にかかる税金

離婚時に共有不動産の名義変更をする際にかかる税金は、以下のとおりです。

名義変更の際に課税される税金 概要 計算方法
譲渡所得税 不動産の譲渡益に対して課税される税金 ・短期譲渡所得(所有期間5年以下):譲渡所得×39.63%
・長期譲渡所得(所有期間5年超):譲渡所得×20.315%
登録免許税 不動産の登記にかかる税金 不動産評価額 × 0.2%

それぞれ解説します。

利益が出た場合にかかる「譲渡所得税」

財産分与時に不動産価格から購入時の価格を差し引いたときにプラスになると、譲渡所得が発生します。譲渡所得税は、譲渡所得に対して課税される税金です。

譲渡所得は、次の式で計算します。

譲渡所得=譲渡評価額 -(取得費+譲渡費用)

取得費や譲渡費用の概要は、以下のとおりです。

  • 取得費:譲渡・売却する財産を取得した際にかかった購入代金や購入手数料などの費用
  • 譲渡費用:譲渡・売却するために直接支出した費用

譲渡所得税は、譲渡所得がなければ課税対象外です。たとえば、5年前に夫婦共有で購入した5,000万円の住宅を財産分与で妻名義に変更する場合、名義変更時の価格が4,000万円であれば譲渡所得税は課税されません

譲渡所得税は「所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3つを合算したものです。財産の所有期間の長さにより以下の2つに分けられ、税率が異なります。

譲渡所得の種類 所有期間 税率
短期譲渡所得 所有期間が5年以下 39.63%
長期譲渡所得 所有期間が5年超 20.315%

譲渡所得税の具体的な計算例をあげてみましょう。

【例】

・結婚期間中に購入した共有名義の土地を財産分与で妻名義に変更する場合

・購入時価格:4,500万円
・財産分与で名義変更したときの時価:5,200万円
・譲渡時にかかった費用:200万円
・不動産の所有期間:8年

譲渡所得=5,200万円-(4,500万円+200万円)=500万円

500万円の譲渡所得があるため、譲渡所得税が課税されます。所有期間が5年を超えるため長期譲渡所得となり、次のように計算します。

500万円×20.315%=101万5,750円

なお引き続き自分で住む場合、譲渡所得額が3,000万円分まで税金が控除されます

登記の名義変更の際に必ず課税される「登録免許税」

登記の名義変更をする際は、登録免許税が必ず課税されます

登録免許税とは、登記名義を変更する際に課税される税金です。

登録免許税は、以下の式で計算します。

登録免許税=不動産評価額×2%

たとえば夫が妻に対して、不動産評価額3,500万円の住宅を財産分与のために名義変更した場合、登録免許税は、3,500万円×2%=70万円となります。

なお不動産評価額は、毎年4~5月頃に送付される「固定資産額評価通知書」に記載されています

また登録免許税は、不動産を分与する側とされる側が共同で納付するよう登録免許税法3条で定められていますが、不動産を取得した側が負担するのが一般的です。ただし離婚協議書などで分与する側が登記費用を負担すると定めておけば、相手に登録免許税を全額負担させることも可能です。

まとめ

共有不動産は自由に物件を活用できなかったり、共有者が増えて管理が難しくなったりと多大なリスクがあります。そのため離婚時には、不動産の共有名義は解消しておきましょう

住宅ローンが残っている場合でも、共有名義不動産の共有名義は借り換えや売却などで解消できます。また夫婦の一方が住み続ける場合は、単独名義に変更したり他者を連帯債務者に立てたりすれば、名義変更が可能です。

ローンの借り換えや連帯債務者を立てるのが難しい場合は、共有名義の解消が難しいケースもあるため、事前に金融機関に相談しておくとよいでしょう。

なお金融機関の承諾を得ないまま、どちらか一方の単独名義に変更してしまうと契約違反になり、住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。離婚すると話し合いができなかったり連絡が取れなかったりするケースも多いため、共同名義は離婚時に解決しておくようにしましょう。

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