共有持分を処分する6つの方法!手間なく処分する方法を解説

共有持分を処分する6つの方法!変更・管理・保存についても解説

複数人で不動産を共有している場合、共有持分の所有者一人の意思で不動産を活用することが難しいため、不動産を処分したいと考える方は少なくありません。

共有持分を処分する方法は主に以下のようなものがあります。

  • 他の共有者の同意を得て不動産全体を売却する
  • 自己持分を他の共有者に売却する
  • 自己持分を贈与する
  • 【土地の場合】分筆して単独名義にして売却する
  • 自己持分を放棄する
  • 自己持分を第三者に売却する

不動産全体の売却は民法における「処分行為」にあたるため、他の共有者全員の同意が必要です。一方、自分の共有持分であれば、他の共有者の同意は必要なく売却することが可能です。特に、自己持分を第三者に売却するのであれば、他の共有者の同意を得る必要がなく、連絡を取る必要もなく共有持分を処分できるためおすすめです。

ただし共有持分は一般市場での売却が難しいため、共有持分専門の買取業者に売却することが現実的な選択肢となります。

クランピーリアルエステートでは、弁護士と連携した不動産会社が最短12時間以内で買取金額を査定します。共有持分の処分にお悩みの方は気軽にお問い合わせください。

この記事では、共有持分を処分したいと考えている人について、共有持分の処分の方法と共有関係を解消する方法について解説します。

共有不動産全体の処分には共有者全員の同意が必要

不動産全体の売却については、民法第251条1項に定める「変更行為」にあたるため、他の共有者全員の同意を得ないと売却することはできません。

不動産全体について、すべての共有者が使用・収益する権利を持っているため、処分するためには他の共有者の同意を必要としているわけです。

一方、共有者それぞれの所有権割合を「共有持分」といいます。

共有持分は、それぞれの共有者に割り当てられた固有の権利であることから、他の共有者の承諾なしに処分することが可能です。

例えば夫婦2人の収入で購入し、それぞれが共有持分を持つマイホームについて、離婚するとなった場合に、自分の持分だけを売却することもできます。

また、3人の兄弟姉妹で相続した土地・建物について、自分の共有持分のみであれば自由に売却できます。

なお、共有不動産に対する行為には、「変更行為」のほか「管理行為」「保存行為」があり、それぞれについて他の共有者の同意の必要性が異なります。

行為 具体例 必要となる同意
変更行為 不動産の売却・登記申請・不動産の改築 共有者全員の同意が必要
管理行為 一定期間を超えない賃貸借契約・軽微なリフォーム 共有者の過半数の同意が必要
保存行為 不動産の修繕・無権利者に対する明け渡し請求 単独で可(共有者の同意不要)

手間なく共有持分を処分するなら買取業者への売却するのがおすすめ

共有持分は、第三者に対しても自由に売却できますが、手間なく共有持分を処分するのであれば買取業者への売却がおすすめです。

不動産の売却方法には、一般の不動産市場を通じて売却する方法(仲介)と買取業者へ売却する方法があります。買取の場合、仲介のように時間をかけて購入者を探す必要はありません。

この点、共有持分のみの売却の場合、通常、不動産市場で買主を見つけて売却することは難しくなります。

なぜなら、共有持分のみを購入しても自由に不動産を利用したり、処分することができないため、一般の購入者では不動産を所有する価値がなく買い手が見つかりにくいためです。

これは個人投資家であっても同様で、共有持分の売却は難しいでしょう。

一方で、共有持分の利用・処分に精通する専門の買取業者であれば、買い取ってもらえる可能性があります。

また、一般の不動産売買と異なり、買取の場合、金額や契約条件で合意できれば、手間をかけずに早く現金化できます。

ただし、不動産全体を売却する場合と比べて、持分だけを売却する場合は、買取価格が低くなる傾向がある点には注意が必要です。

その他共有持分を処分する方法

ここでは、買取業者以外に共有持分を処分する5つの方法について解説します。

  • 他共有者の同意を得て不動産全体を売却する
  • 共有持分を他の共有者に売却する
  • 共有持分を贈与する
  • 【土地の場合】分筆して単独名義にして売却する
  • 共有持分を放棄する

他の共有者の同意を得て不動産全体を売却する

1つめは。他の共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する方法です。

この方法の最大のメリットは、共有持分だけを売却するより高い売却収入が見込める点です。

共有持分だけであれば一般市場での売却は難しく、買い手は限られますが、不動産全体を売却できれば、広く買主を集めることができるため、市場価格と同様の売却収入が期待できます。

ただし、共有者全員の同意が必要であるため、1人でも反対した場合は売却できません。

共有持分を他の共有者に売却する

2つめは、自分の共有持分を他の共有者に売却する方法です。

不動産の共有持分は、一般の第三者に買い取ってもらうことは難しいですが、共有不動産の利害関係人である他の共有者であれば買い取ってもらえる可能性は高くなります。

なぜなら、共有持分を買い取ることで、他の共有者にとってもメリットがあるためです。

例えば、夫婦2人でそれぞれ持分1/2ずつを共有する不動産について、夫が共有持分を妻に売却すれば、妻は不動産の完全な所有権を取得することができます。

妻にとって、不動産の価値が上がるだけでなく、不動産を自由に賃貸したり、売却したり、利用・処分することができるメリットがあります。

また、長男と長女、次男の3人がそれぞれ持分1/3ずつを共有する不動産について、例えば、次男が自分の共有持分を長男に売却した場合、長男の共有持分は不動産全体の2/3です。

長男は過半数を占める共有持分を有することになるため、管理行為にあたる建物の修繕や短期の賃貸借契約などを自らの意思だけでできるようになります。

このように、第三者への売却は難しくても、共有不動産に利害関係のある他の共有者であれば、共有持分を買い取ってもらえる可能性が高くなるということです。

ただし、そもそも共有者同士の関係性がなく売却を相談することが難しい、あるいは、他の共有者に共有持分を買い取る資力がない、売買金額で合意できないは難しいでしょう。

また、兄弟や親しい親族間の売買であれば、安く買いたたかれる可能性もある点には注意が必要です。

共有持分を贈与する

3つめは、共有持分を共有者や共有者以外の第三者に贈与する方法です。

贈与は、自分の財産を無償で相手に与える意思表示をし、相手が承諾することで成立する契約です(民法第549条)。

そのため、贈与が成立するためには受ける側(受贈者)の承諾が必要です。

贈与契約が成立すれば、共有持分については他の共有者の同意は必要なく自由に行えます。贈与する相手も制限はなく、共有者でも共有者以外の第三者でも構いません。

ただし、贈与を受けた人には、贈与税や固定資産税などの負担が発生する可能性があります。

なお、贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた合計額に対して課税されます(暦年課税)。不動産の場合、贈与税の対象となる評価額は、土地については路線価、建物については固定資産税評価額が基準となり、それに税率を乗じて贈与税を算出します。

ただし、贈与税には、他の贈与分も含めて110万円の基礎控除額があるため、共有持分の評価額が110万円以下の場合、贈与税はかかりません。

無償で不動産を譲渡するといっても、贈与を受ける相手方には、贈与税や固定資産税などの負担について説明しておく必要があるでしょう。

【土地の場合】分筆して単独名義にして売却する

4つめは、共有不動産が土地の場合、分筆してから売却する方法です。

分筆とは、登記簿上1つの土地を複数の土地に分けて登記することです。共有持分の割合に応じて土地を分割し、分筆後の土地を単独名義にできます。

分筆後に単独名義となった土地は、共有ではないため自由に売却することができるうえ、購入する側も完全な所有権を取得できるため、買い手が見つかりやすいといえるでしょう。

マンションや一戸建ての建物は物理的に分割することはできませんが、土地の場合、分割が可能なため活用できる方法です。

ただし、土地を分筆するには過半数の同意が必要となります。

また、持分通りに土地を分筆することが難しい、もしくは分筆しないほうがよいケースも少なくありません。

例えば、分筆すると土地面積は小さくなりますが、それによって土地の価値が大きく下がる場合があります。

また、分筆すると道路との道路との接道義務を満たせない土地が生じる場合などは、土地の価値が大きく下がります。

建築基準法43条では、建築基準法上で定義される「道路」(原則として幅員4m以上)に2m以上接道していなければならず、接道義務を満たさない土地には建物を建てることができません。

そのため、土地の利用価値も資産価値も大きく下がることになります。

また、土地を分筆できる場合でも、境界確定のための調査や測量、隣地所有者との交渉などを土地家屋調査士に依頼する費用や分筆登記にかかる費用を考えておかなければなりません。

共有持分を放棄する

5つめの方法は、共有持分を放棄する方法です。

共有財産の放棄について、民法255条に次のように規定されています。

民法第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

つまり、放棄した共有持分は、他の共有者の持分となります。

共有持分の放棄は、自分の意思のみで行うことができ、贈与の場合のように、受け取る側の同意は必要ありません。

ただし、共有持分の放棄には注意しなければならない点もあります。

1つは、すでに他の共有者が持分を手放しており、自分が不動産の単独所有者となっている場合には放棄できません。

民法では、不動産の共有持分についての放棄を規定しているものの、単独所有となった不動産の放棄は認められません。そのため、それぞれの共有者が放棄したいと考えている場合、早い者勝ちになります。

また、共有持分の放棄には、放棄した人から他の共有者への所有権移転登記をしなければなりません。共有持分の放棄は、他の共有者への放棄の意思表示と登記申請手続きによって成立するためです。

この点、放棄の意思表示には他の共有者の同意は必要ありませんが、登記手続きには、他の共有者の本人確認書類などが必要となるため、協力してもらえない場合は手続きが難航する可能性があります。

どうしても他の共有者の協力を得ることが難しい場合、共有持分を放棄した人が登記申請をする権利があることを裁判所に申し立てる「登記引取請求訴訟」を利用することで、単独での登記申請が可能です。

なお、共有持分を放棄する場合、持分のうちの一部だけを放棄することはできず、共有持分の全部を放棄しなければなりません。

最後に、共有持分を他の共有者へ「売却」「贈与」「放棄」したときの違いについて表にまとめました。

売却 贈与 放棄
他の共有者の同意 不要 必要※当事者間の合意が必要 不要※但し、登記申請に協力が必要
売却収入 あり なし(無償) なし
税金の負担 売主に譲渡所得税が生じる可能性 受贈者に贈与税が生じる可能性 なし

共有物分割請求で共有状態の解消も検討する

共有持分の売却が難しい場合、共有物分割請求で共有状態を解消することを検討してもよいでしょう。

民法256条においても、それぞれの共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる権利を認めています。

共有者の1人が共有物の分割を請求した場合、他の共有者は共有関係の解消に向けて協議する義務があります。

協議の結果合意が得られない、あるいは協議に応じてもらえない場合には、「共有物分割請求訴訟」を起こし、裁判手続きによって進めることが可能です。

また、共有不動産を分割するといっても、物理的に分割できるケースは少なく、分割方法を検討することが必要です。

共有物を分割する方法には、主に次の3つがあり、下表はそれぞれのメリット・デメリットをまとめたものです。

現物分割 代償分割 換価分割
分割方法 土地を分筆して、持分割合に応じてそれぞれの土地を単独所有とする方法 共有者の1人が不動産全部の所有権を取得し、代わりに他の共有者の持分に応じた金銭(代償金)を支払う方法 不動産を売却して、共有持分の割合に応じて売却収入を分割する方法
メリット 共有者全員に不動産が残る ・不動産を残したい場合に売却せずに済む・不動産に住んでいる人の住環境を維持できる ・現金で公平に分割できる・不動産の資産価値を下げずに売却できる
デメリット ・土地を分筆できない場合がある・持分割合に応じて均等に分けることが難しい・不動産の資産価値が下がる可能性がある ・不動産を取得する人に代償金を支払う資力が必要になる・代償金の金額でもめる可能性がある 不動産を失うことになる

また、共有物分割請求の手続きは、次のように進めます。

  1. 共有物の分割請求を他の共有者へ通知
  2. 他の共有者と分割協議を行う
  3. 共有物分割調停を行う
  4. 共有物分割請求訴訟を提起する

他の共有者に共有物を分割したい旨を伝え、共有者間で話し合いをします。当事者だけでは話し合いがまとまらない場合、裁判所に調停を申し立てることができます。

調停では、第三者となる調停委員が間に入って協議することができるため、当事者間同士が感情的になったり、関係性がよくない場合でも協議を進めやすくなります。

裁判上の訴えを起こす前に、必ずしも調停が必要なわけではありませんが、費用も時間もかかる訴訟を避けたい場合などには有効な方法です。

ただし、調停での話し合いでも合意に至ることができない場合、不動産もしくは他の共有者の住所地を管轄する裁判所に、共有物分割請求訴訟を起こします。

裁判では、協議や調停と異なり、原告(裁判を訴えた者)と被告(他の共有者)がそれぞれ証拠を提出し、お互いの主張をします。

双方の証拠や主張が出そろったと判断されれば、裁判官による判決が下されます。裁判手続きは、早くても数カ月、長ければ数年かかる場合があることも踏まえておきましょう。

なお、訴訟手続きを弁護士へ依頼した場合、代理人として、弁護士が証拠の提出や法的な主張をするため、基本的に裁判所への出廷は必要ありません。

まとめ

共有持分を処分したい場合、「自分の共有持分のみを処分する方法」と「共有関係を解消する方法」に分けられます。

共有持分を売却するには、買取業者を含めた第三者に売却するか、他の共有者に売却する方法があります。

共有持分を購入する一般の買主を探すことは難しいため、買取業者あるいは他の共有者へ売却することが現実的な選択肢となります。

買取業者へ売却する場合は、他の共有者とトラブルとならないように共有持分の買取に精通した信頼できる買取業者に依頼することが大切です。

また、他の共有者へ売却する場合、他の共有者に買い取るための資力が必要です。
そのため、共有持分を手放すことが主な目的であれば、売却収入を得ることはできませんが他の共有者への贈与あるいは共有持分を放棄することも1つの方法です。

また、共有持分だけの売却は、買い手が見つかりにくく、資産価値も下がりやすいため、他の共有者の同意を得て不動産を売却する、もしくは、共有物分割請求をすることが考えられます。

その場合、他の共有者との交渉や調停、裁判手続きへの移行の可能性なども踏まえ、弁護士など専門家へ相談することもおすすめです。

共有持分の処分についてよくある質問

共有持分の処分についてよくある質問を紹介します。

  • 他の共有者に無断で自分の共有持分を売却しても良いですか?
  • 抵当権のついた共有持分の処分は可能ですか?

他の共有者に無断で自分の共有持分を売却しても良いですか?

他の共有者に無断で自分の共有持分を売却することは可能です。

ただし、他の共有者とのトラブルを防ぐ意味では、事前に売却する意向を伝えておくほうがよいでしょう。

共有物を第三者買取業者に売却した場合、他の共有者はまったく知らない他人と共有関係となります。

その結果、共有者同士のトラブルへと発展する可能性も否定できません。

また、事前に共有持分の売却の意思を伝えていれば、場合によっては、他の共有者からの買取りの提案や不動産全体で売却を進める提案を受けられる可能性もあります。

そのため、自分の共有持分だけの売却は自由にできるとはいえ、事前に他の共有者へ伝えて相談しておくほうがよいといえます。

また、買取業者に売却する場合も、他の共有者とトラブルとなることがないよう、共有持分の取扱い実績が豊富で信頼できる買取業者を選ぶことが重要です。

抵当権のついた共有持分の処分は可能ですか?

抵当権のついた共有持分でも処分することは可能です。

抵当権とは、住宅ローンなど不動産を購入する際に、万一、債務者が返済できなくなった場合に、金融機関が貸付けたお金を回収するために不動産を差し押さえ、換金できる権利です。

抵当権付きの共有持分を売却する場合、購入者は抵当権の付いた持分を取得することになるため、買主は見つかりにくいでしょう。

例えば、夫婦2人の名義で住宅ローンを組み、それぞれ1/2ずつの持分となっている場合、それぞれの持分について抵当権が設定されます。

その後、離婚などに伴い妻が自分の共有持分を第三者に譲渡するとなった場合、購入者は抵当権付きの共有持分を取得することになります。

つまり、購入者は、万一夫が住宅ローン返済を滞納した場合、取得した共有持分を金融機関から差し押さえられるリスクを負うことになるわけです。

このようなリスクをもつ共有持分を取得しようと考える買主は少なく、売却は難しいといえるでしょう。

こんな記事も読まれています