共有持分の移転登記費用はいくら?内訳・計算方法とケース別シミュレーション

共有持分の移転登記費用はいくら必要?費用の内訳や計算方法など解説!

共有持分の移転登記にかかる費用は、固定資産税評価額や移転する持分割合、売買・贈与・相続などの登記原因によって異なります。主な費用は、登録免許税、司法書士報酬、必要書類の取得費用で、売買や贈与では不動産取得税や印紙税が加わる場合もあります。

主な費用の目安と、共有持分を売買した場合の費用例は以下のとおりです。

区分 主な費用・税金
持分移転時にかかる主な費用・税金 登録免許税:原則「固定資産税評価額 × 持分割合 × 0.4〜2%」で計算
司法書士報酬:1件3〜6万円程度が目安
必要書類の取得費用:1,000〜5,000円程度が目安
不動産取得税(売買・贈与などの場合):原則「固定資産税評価額 × 持分割合 × 3〜4%」で計算
印紙税:売買は200円〜48万円、贈与は原則200円
売買した場合の費用例 【固定資産税評価額3,000万円の宅地について1/2の持分を売買した場合】
登録免許税:22万5,000円
司法書士報酬:5万円
必要書類の取得費用:3,000円
不動産取得税:11万2,500円
印紙税:2通で2万円
合計:41万500円
【登記費用は買主負担で合意した場合】
売主:1万1,500円
買主:39万9,000円
※不動産取得税は、2027年3月31日までの宅地等に対する特例を適用し、固定資産税評価額の1/2を課税標準として計算

ただし、実際の費用は固定資産税評価額や持分割合だけでなく、登記原因や司法書士への依頼内容、利用できる軽減措置などによって変わります。たとえば、相続では登録免許税が原則0.4%となり、不動産取得税は原則としてかかりません。

また、登記費用とは別に、共有持分を売却して利益が出た場合は譲渡所得税、個人から無償で譲り受けた場合は贈与税、共有持分を含む相続財産が基礎控除額を超える場合は相続税がかかる可能性があります。

そのため、共有持分を移転する際は、まず自分のケースでどの費用・税金が発生するのかを整理したうえで、総額を確認することが大切です。

本記事では、共有持分の移転登記にかかる費用・税金に加え、売買・贈与・相続・財産分与のケース別費用シミュレーション、登記をしないリスク、費用を抑える方法、自分で登記する場合の流れまで解説します。

共有持分の移転登記費用と税金

共有持分を売買・相続・贈与・財産分与などによって移転した場合は、持分の所有者が変わったことを登記簿に反映するための登記手続きを行います。

共有持分の移転登記にかかる費用は、固定資産税評価額や持分割合、登記原因によって異なります。売買・相続・贈与・財産分与それぞれの費用例は、「共有持分移転登記にかかる費用をケース別にシミュレーション」で確認してください。
共有持分の移転にかかる主な費用・税金は、以下のとおりです。

項目 概要・費用目安 かかるケース
登録免許税 「固定資産税評価額 × 移転する持分割合 × 税率」で計算
相続:0.4%
売買・贈与・財産分与:原則2%
土地の売買:1.5%(2029年3月31日まで)
共有持分の移転登記を行う場合
司法書士への報酬 1件3〜6万円程度が目安
依頼内容や登記の数などによって異なる
登記手続きを司法書士へ依頼する場合
必要書類の取得費用 1,000〜5,000円程度が目安 登記に必要な書類を取得する場合
不動産取得税 「固定資産税評価額 × 取得する持分割合 × 税率」で計算
土地・住宅用家屋:3%
非住宅用家屋:4%
宅地等は2027年3月31日まで「固定資産税評価額 × 1/2」を課税標準として計算
売買・贈与などで共有持分を取得した場合
相続では原則としてかからず、財産分与でも課税される場合がある
印紙税 不動産売買契約書は契約金額に応じて変動200円〜48万円
2027年3月31日まで軽減措置あり
共有持分の売買などで、印紙税の対象となる契約書を紙で作成する場合

なお、共有持分を移転した原因や状況によっては、上記の費用・税金とは別に、相続税・贈与税・譲渡所得税などが発生する場合があります。

たとえば、共有持分を相続した場合は相続税、贈与によって取得した場合は贈与税、売却して利益が出た場合は譲渡所得に対する所得税・住民税・復興特別所得税がかかる可能性があります。
共有持分を取得・売却・相続した際にかかる税金の種類については、次の記事でも詳しく解説しています。

登録免許税|固定資産税評価額 × 持分割合 × 原則0.4~2%

登録免許税とは、不動産の登記手続きを行う際に課される税金です。共有持分を移転する場合は、固定資産税評価額に移転する持分割合と税率を掛けて計算します。
共有持分の移転登記にかかる主な登録免許税率は、以下のとおりです。

登記原因 税率 軽減・特例
売買 原則2% 土地の売買は1.5%(2029年3月31日まで)
一定の要件を満たす住宅用家屋の売買は0.3%(2027年3月31日まで)
相続・相続人への遺贈 0.4% 課税標準となる土地の価額が100万円以下の場合などは免税(2027年3月31日まで)
贈与・相続人以外への遺贈 原則2% 原則として軽減なし
財産分与 原則2% 原則として軽減なし

参考:国税庁「登録免許税の税額表」

ポイント

【持分移転に伴って別の登記が必要な場合は登録免許税が追加でかかる】

共有持分を移転する際、登記簿上の住所・氏名が現在と異なる場合や、相続登記が済んでいない場合、抵当権の設定・抹消が必要な場合などは、持分の移転登記とは別の登記手続きが必要です。
その場合は、持分移転登記の登録免許税とは別に、住所・氏名変更登記は不動産1個につき1,000円、相続登記は原則0.4%、抵当権抹消登記は不動産1個につき1,000円、抵当権設定登記は原則0.4%の登録免許税がかかります。

抵当権の設定・抹消登記については、次の記事でも詳しく解説しています。

登録免許税の計算方法

共有持分の移転にかかる登録免許税は、原則として、次の計算式で求めます。

固定資産税評価額 × 持分割合 × 税率

たとえば、固定資産税評価額2,400万円の土地と1,500万円の建物について、それぞれ3分の1の共有持分を売買するケースで計算してみましょう。

土地:2,400万円 × 1/3 × 1.5% = 12万円
建物:1,500万円 × 1/3 × 2% = 10万円
合計:22万円

※土地は2029年3月31日までの軽減税率1.5%で計算

この場合、土地と建物の共有持分を移転する際の登録免許税は、合計22万円です。

なお、一定の要件を満たす住宅用家屋では、建物の登録免許税に0.3%の軽減税率が適用されます。同じ条件で軽減税率が適用される場合、登録免許税は合計13万5,000円となり、軽減税率が適用されない場合と比べて8万5,000円安くなります。

参考:国税庁「登録免許税の税額表」

ポイント

【固定資産税評価額に違和感がある場合は自治体へ確認する】

登録免許税は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格をもとに計算します。そのため、固定資産評価証明書などで評価額を事前に確認しておきましょう。
近年は、自治体による固定資産税の評価や課税処理の誤りが公表された事例もあります。たとえば2026年には、マンション敷地の共有持分の移転処理を誤り、本来より多くの固定資産税が新所有者へ課税されていた事例が公表されています。
参考:行橋市「マンション敷地の固定資産税の課税誤りについて」

司法書士への報酬|3〜6万円程度が目安

共有持分の移転登記は自分でも申請できますが、必要書類の確認や登記申請書の作成には専門知識が必要です。手続きに不安がある場合は、司法書士への依頼を検討するとよいでしょう。

司法書士の報酬には一律の基準がなく、各司法書士が自由に設定しています。日本司法書士会連合会の報酬アンケートでは、固定資産税評価額の合計が1,000万円の土地1筆・建物1棟を売買し、登記原因証明情報の作成と所有権移転登記の申請を依頼した場合、地域別の平均報酬は約3万3,000〜5万5,000円でした。

そのため、共有持分の移転登記のみを依頼する比較的シンプルなケースでは、司法書士報酬は3〜6万円程度が一つの目安です。
一方、不動産や当事者の数が多い場合や、住所・氏名変更登記、相続登記、抵当権の抹消・設定などの追加手続きが必要な場合は、報酬が高くなる傾向があります。また、必要書類の取得や売買代金決済への立会いなどもあわせて依頼すると、追加の報酬や実費が発生することがあります。

依頼範囲や料金体系は司法書士事務所によって異なるため、費用を比較したい場合は複数の事務所から見積もりを取り、報酬だけでなく追加費用や対応範囲も確認するとよいでしょう。

必要書類の取得費用|1,000〜5,000円程度

共有持分の移転登記では、登記原因や当事者の状況に応じて、住民票や印鑑登録証明書、戸籍謄本などの書類が必要になります。
必要書類の取得費用は、一般的なケースで1,000〜5,000円程度が目安です。ただし、必要な書類の種類や通数、自治体、取得方法によって金額は異なります。

とくに相続による持分移転では、被相続人や相続人の戸籍を複数取得することがあり、書類取得費が目安を上回る場合もあります。

不動産取得税|固定資産税評価額 × 持分割合 × 3〜4%

不動産取得税とは、売買や贈与などによって土地や建物を取得した場合に課される税金です。共有持分を取得する場合は、固定資産税評価額をもとに、取得する持分割合と税率を掛けて計算します。

相続による取得は非課税です。一方、財産分与による取得は、夫婦財産の清算として行う場合など、内容によって不動産取得税の取扱いが異なります。課税の有無がわからない場合は、不動産所在地を管轄する都道府県税事務所へ確認するとよいでしょう。
2027年3月31日までの不動産取得税の税率は、以下のとおりです。

不動産の種類 税率
土地 3%
家屋(住宅) 3%
家屋(非住宅) 4%

参考:東京都主税局「不動産取得税」
なお、2027年3月31日までに宅地等を取得した場合は、固定資産税評価額の1/2を課税標準として計算します。
また、一定の要件を満たす住宅や住宅用土地では、家屋の固定資産税評価額から一定額を控除したり、土地の税額を減額したりできる場合があります。適用要件や必要な手続きは、不動産所在地を管轄する都道府県税事務所で確認しましょう。

不動産取得税の計算方法

共有持分を取得する場合の不動産取得税は、基本的に次の計算式で求めます。

固定資産税評価額 × 持分割合 × 税率

たとえば、固定資産税評価額3,000万円の宅地について、2分の1の共有持分を売買によって取得するケースを見てみましょう。宅地等の特例が適用される場合は、以下のとおりです。

3,000万円 × 1/2(宅地等の特例)× 1/2(持分割合)× 3% = 11万2,500円

この場合の不動産取得税は11万2,500円です。

一方、同じ固定資産税評価額3,000万円、持分割合2分の1でも、非住宅用家屋の場合は次のようになります。

3,000万円 × 1/2(持分割合)× 4% = 60万円

この場合の不動産取得税は60万円です。非住宅用家屋は税率が4%で、宅地等に適用される課税標準を1/2とする特例もないため、この例では同じ固定資産税評価額・持分割合の宅地より税額が高くなります。

贈与・売買契約の印紙税|売買は200円〜48万円、贈与は原則200円

共有持分を贈与・売買する際に紙の契約書を作成した場合は、印紙税がかかります。
共有持分を無償で贈与する場合、贈与契約書にかかる印紙税は原則200円です。贈与する土地や建物の固定資産税評価額などを契約書に記載していても、その評価額は印紙税の「記載金額」には含まれません。

一方、不動産売買契約書は、契約書に記載された契約金額によって次のように印紙税額が異なります。

契約書に記載された契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円
1億円超5億円以下 6万円
5億円超10億円以下 16万円
10億円超50億円以下 32万円
50億円超 48万円

※契約金額が10万円を超える不動産譲渡契約書については、2027年3月31日までの軽減後の印紙税額を記載しています。
参考:国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
なお、電子契約で契約書を作成し、紙の課税文書を作成しない場合は、印紙税はかかりません。

贈与契約書の作成や流れについては、次の記事で詳しく解説しています。

ケース別|共有持分の移転登記費用シミュレーション

共有持分の移転登記にかかる費用は、売買・贈与・相続・財産分与など、持分を移転した原因によって異なります。とくに登録免許税の税率や、不動産取得税・印紙税が発生するかどうかが変わるため、同じ固定資産税評価額や持分割合でも総額に差が出ます。

ここでは、以下の4つのケースについて、共有持分の移転登記にかかる主な費用をシミュレーションします。

  • 共有持分を売買した場合
  • 共有持分を贈与された場合
  • 共有持分を相続した場合
  • 共有持分を財産分与で取得した場合

※以下のシミュレーションは一定の条件を設定した一例です。実際の費用は、固定資産税評価額や持分割合、司法書士報酬、必要書類、適用される軽減措置などによって異なります。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

最終的な費用負担まで把握しておく

共有持分を移転する際は、個々の費用だけでなく、最終的にどの程度の負担になるのかまでシミュレーションしておくことが大切です。
買取実務でも、登記費用や税金、追加手続きにかかる費用を差し引いた結果、「思っていたより手取り額が少なかった」という声を聞くことがあります。売却価格だけを見て、手取り額をイメージしてしまっているケースもあるためです。
事前に自分のケースで発生する費用を洗い出しておけば、必要な資金や売却後の手取り額も把握しやすくなります。

共有持分を売買した場合

共有持分は、他の共有者に売却するほか、共有持分専門の買取業者など第三者へ売却することもできます。いずれの場合も、売買によって持分の所有者が変わるため、持分の移転登記が必要です。

ここでは、他の共有者が所有する共有持分を買い取ったケースでシミュレーションします。

土地の固定資産税評価額:3,000万円
売却する持分割合:1/2
売買価格:1,500万円

司法書士へ持分の移転登記を依頼し、売買契約書は売主・買主がそれぞれ1通ずつ紙で作成する。

今回のシミュレーションでかかる主な費用と負担者は、以下のとおりです。

費用・税金 金額 負担者
登録免許税 22万5,000円
「3,000万円 × 1/2(持分割合)× 1.5%」で計算
買主
司法書士報酬 5万円 買主
必要書類の取得費用 3,000円 売主・買主で折半(各1,500円)
不動産取得税 11万2,500円
「3,000万円 × 1/2(宅地等の特例)× 1/2(持分割合)× 3%」で計算
買主
印紙税 1通につき1万円 売主・買主がそれぞれ1万円

上記の条件では、買主が負担する費用・税金は、登録免許税22万5,000円、司法書士報酬5万円、不動産取得税11万2,500円、印紙税1万円、必要書類の取得費用1,500円を合わせて39万9,000円です。
一方、売主は印紙税1万円と必要書類の取得費用1,500円を合わせて、1万1,500円を負担します。
ただし、登録免許税や司法書士報酬をどちらが負担するかは、売主・買主の合意によって決めることができます。
実務上、他の共有者との間で持分を売買する場合には、当事者間の話し合いでこれらの費用を折半するケースもみられます。今回のケースで登録免許税と司法書士報酬を折半した場合、買主の負担額は26万1,500円、売主の負担額は14万9,000円です。

ポイント

【売却益が出た場合は譲渡所得税がかかることもある】

共有持分を売却して利益が出た場合は、売主に譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかる可能性があります。
譲渡所得税は、「売却価格 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除」で算出した課税譲渡所得金額に、所有期間に応じた税率を乗じて計算します。税率は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下であれば39.63%です。
たとえば、売却した年の1月1日時点で5年を超えて所有していた共有持分を売却し、50万円の課税譲渡所得が出た場合は、「50万円 × 20.315%=10万1,575円」の譲渡所得税がかかります。

共有持分を贈与された場合

共有持分は、他の共有者や親族などから無償で贈与を受けることもできます。贈与によって持分の所有者が変わるため、持分の移転登記が必要です。

ここでは、他の共有者から土地の共有持分を無償で贈与されたケースでシミュレーションします。

土地の固定資産税評価額:3,000万円
贈与される持分割合:1/2

司法書士へ持分の移転登記を依頼し、贈与契約書は贈与者・受贈者がそれぞれ1通ずつ紙で作成する。

今回のシミュレーションでかかる主な費用と負担者は、以下のとおりです。

費用・税金 金額 負担者
登録免許税 30万円
「3,000万円 × 1/2(持分割合)× 2%」で計算
受贈者
司法書士報酬 5万円 受贈者
必要書類の取得費用 3,000円 贈与者・受贈者で折半(各1,500円)
不動産取得税 11万2,500円
「3,000万円 × 1/2(宅地等の特例)× 1/2(持分割合)× 3%」で計算
受贈者
印紙税 1通につき200円 贈与者・受贈者がそれぞれ200円

上記の条件では、受贈者が負担する費用・税金は、登録免許税30万円、司法書士報酬5万円、不動産取得税11万2,500円、印紙税200円、必要書類の取得費用1,500円を合わせて46万4,200円です。
一方、贈与者は印紙税200円と必要書類の取得費用1,500円を合わせて、1,700円を負担します。

ポイント

【年間110万円を超える贈与には原則として贈与税がかかる】

共有持分を無償で取得した場合は、持分移転にかかる費用とは別に、受贈者に贈与税がかかる可能性があります。暦年課税では、年間の贈与額から基礎控除110万円を差し引き、残った金額に10〜55%の税率を適用して計算します。
土地は、原則として路線価方式または倍率方式による相続税評価額をもとに評価します。たとえば、土地全体の相続税評価額が1,000万円で、その1/2の持分を贈与された場合、持分の評価額は500万円です。
その年にほかの贈与を受けておらず、一般税率が適用される場合は、「500万円-110万円=390万円」が基礎控除後の課税価格となり、贈与税は「390万円 × 20%-25万円=53万円」です。
参考:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」

贈与税の計算方法やシミュレーションについては、次の記事を参考にしてみてください。

共有持分を相続した場合

共有不動産の共有者が亡くなった場合、その人が所有していた共有持分は相続財産となります。遺言書によって取得者が指定されている場合や、遺産分割協議によって特定の相続人が持分を取得した場合などは、取得した相続人が相続登記を行います。

ここでは、他の相続人との遺産分割協議により、被相続人が所有していた共有持分を1人の相続人が取得したケースでシミュレーションします。

土地の固定資産税評価額:3,000万円
被相続人が所有していた持分割合:1/2

遺産分割協議によって1人の相続人が被相続人の持分すべてを取得し、司法書士へ相続登記を依頼する。

今回のシミュレーションでかかる主な費用と負担者は、以下のとおりです。

費用・税金 金額 負担者
登録免許税 6万円
「3,000万円 × 1/2(持分割合)× 0.4%」で計算
持分を相続した人
司法書士報酬 5万円 持分を相続した人
必要書類の取得費用 5,000円 持分を相続した人
不動産取得税 0円 相続による取得は非課税
印紙税 0円 今回のシミュレーションでは不要

上記の条件では、共有持分を相続した人が負担する相続登記の費用は、登録免許税6万円、司法書士報酬5万円、必要書類の取得費用5,000円を合わせて11万5,000円です。
相続による取得では不動産取得税がかからず、今回のように遺産分割協議によって持分を取得する場合は、売買契約書のような印紙税も発生しません。そのため、同じ固定資産税評価額・持分割合であれば、売買によって取得するケースより持分移転に伴う費用を抑えやすくなります。

なお、相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍などを取得する必要があるケースもあり、相続関係が複雑な場合は必要書類の取得費用や司法書士報酬が今回のシミュレーションより高くなることがあります。

ポイント

【相続財産の総額によっては相続税がかかる】

共有持分を相続した場合は、相続登記の費用とは別に相続税がかかる可能性があります。
相続税は、相続した共有持分だけでなく、預貯金や有価証券、ほかの不動産などを含めた相続財産全体をもとに計算します。相続財産の正味の遺産額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出する基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告・納税が必要です。
相続税の税率は、法定相続分に応ずる取得金額に応じて10〜55%です。取得金額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税となっています。
参考:国税庁「相続税の税率」

譲渡所得税や贈与税、相続税の計算方法、相続登記については、次の記事で詳しく解説しています。

共有持分を財産分与で取得した場合

離婚時の財産分与では、夫婦で共有している不動産について、一方が他方の共有持分を取得して単独名義にすることがあります。この場合も、財産分与を原因とする持分の移転登記が必要です。

ここでは、婚姻中に夫婦で取得した共有不動産について、離婚時の財産分与によって元配偶者の共有持分を取得したケースでシミュレーションします。

土地の固定資産税評価額:3,000万円
財産分与で取得する持分割合:1/2

婚姻中に取得した共有不動産を夫婦財産の清算目的で財産分与し、司法書士へ持分の移転登記を依頼する。財産分与協議書は双方がそれぞれ1通ずつ紙で作成する。

今回のシミュレーションでかかる主な費用と負担者は、以下のとおりです。

費用・税金 金額 負担者
登録免許税 30万円
「3,000万円 × 1/2(持分割合)× 2%」で計算
持分を取得した人
司法書士報酬 5万円 持分を取得した人
必要書類の取得費用 3,000円 双方で折半(各1,500円)
不動産取得税 0円 今回のシミュレーションでは課税なし
印紙税 1通につき200円 双方がそれぞれ200円

上記の条件では、共有持分を取得した人が負担する費用・税金は、登録免許税30万円、司法書士報酬5万円、印紙税200円、必要書類の取得費用1,500円を合わせて35万1,700円です。
一方、持分を財産分与した人は、印紙税200円と必要書類の取得費用1,500円を合わせて1,700円を負担します。
なお、財産分与による不動産取得税の取扱いは、財産分与の目的や不動産の取得経緯などによって異なります。今回のケースで不動産取得税の課税対象となる場合は、持分を取得した人に11万2,500円が追加でかかり、負担額は合計46万4,200円となります。課税の有無は、不動産所在地を管轄する都道府県税事務所へ確認しましょう。
なお、財産分与で共有持分を渡した側は、税務上「その持分を時価で譲渡した」とみなされます。そのため、取得したときより持分の価値が上がっている場合などは、譲渡所得税がかかる可能性があります。

離婚時に共有名義不動産を財産分与する方法や税金、共有名義を解消する際の注意点のほか、譲渡所得税の計算方法については、次の記事でも詳しく解説しています。

共有持分の移転登記をしないことによるリスク

実務では、共有持分の移転登記に費用がかかるからといって、登記をせずに放置するケースもみられます。しかし、未登記のままにしておくとさまざまなリスクがあるため、おすすめできません。

たとえば、兄が弟の共有持分を買い取ったにもかかわらず移転登記をしなければ、登記簿上の名義は弟のままです。この場合、兄は取得した共有持分について第三者に対抗できません。そのため、売却や融資などを行う際にも、先に登記名義を整理する必要が生じ、手続きをすぐに進められない可能性があります。

また、相続で共有持分を取得した場合、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。

相続登記をしないまま次の相続が発生すると、相続人が増えて権利関係が複雑になるおそれがあります。その結果、後から登記する際の書類収集や確認に手間がかかり、費用も増えることがあります。

さらに、登記名義と実際の所有者が異なれば、固定資産税の納税や共有者間での費用負担の確認・精算が複雑になる可能性もあります。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

未登記だと売却に時間や費用がかかる

買取の現場でも、売却を進める段階で「相続登記が済んでいない」「登記簿の名義が前の所有者のまま」とわかるケースは珍しくありません。
その場合は、現在の権利関係を確認し、必要な登記を済ませてから売買を進める必要があります。相続登記や住所・氏名変更登記などが追加で必要になれば、登録免許税や必要書類の取得費用、司法書士報酬などが別途かかることもあります。
売却時の手続きや費用を増やさないためにも、所有者が変わった段階で必要な登記を済ませておくことが大切です。


共有持分を所有し続けるリスクや、共有者間で起こりやすい固定資産税の負担トラブルについては、次の記事でも詳しく解説しています。

共有持分の移転登記費用を抑える方法

共有持分の移転登記は、費用がかかるからといって放置せず、必要なタイミングで行うことが重要です。費用負担が気になる場合は、次のような方法を検討しましょう。

  • 手続きがシンプルなら自分で登記する
  • 必要書類を自分で取得して司法書士への依頼費用を抑える
  • 登録免許税や不動産取得税の軽減措置を確認する
  • 親族間で持分を移す場合は贈与・相続を含めた税負担を比較する

ただし、費用を抑えることを優先して必要な手続きを省いたり、実際の権利移転と異なる登記原因を選んだりすることはできません。登記内容や税制上の要件を確認したうえで、自分のケースに適した方法を検討しましょう。

手続きがシンプルなら自分で登記する

共有持分の移転登記は、司法書士へ依頼せず自分で申請することもできます。自分で手続きを行えば、司法書士報酬としてかかる3〜6万円程度を抑えられる可能性があります。
とくに、売買や贈与などで当事者が少なく、移転登記の対象が土地1筆のみなど対象不動産が少ない場合や、住所・氏名変更登記、抵当権抹消登記などの追加手続きがない場合は、比較的自分で申請しやすいケースといえます。

費用を抑えたい場合は、まず自分のケースで追加の登記や複雑な権利関係がないかを確認したうえで、自分で申請できるか判断するとよいでしょう。自分で登記する場合の手順は、「共有持分の移転登記を自分で行うときの流れ」で詳しく解説します。

必要書類を自分で取得して司法書士への依頼費用を抑える

登記申請そのものを司法書士へ依頼する場合でも、住民票や印鑑登録証明書、固定資産評価証明書などの必要書類を自分で取得すれば、司法書士に依頼する取得代行費用を抑えられます。
住民票や印鑑登録証明書などは1通数百円程度で取得でき、自治体によってはコンビニ交付にも対応しています。たとえば、司法書士へ必要書類の取得を依頼すると5,000円の代行報酬がかかる場合、自分で取得すれば5,000円分の依頼費用を抑えられます。

なお、取得代行費用は1通あたり1,000〜2,000円程度で設定している場合や、複数の書類をまとめて一式料金としている場合など、司法書士事務所によって異なります。依頼前に、書類取得を自分で行った場合にどの程度費用を抑えられるか確認しておくとよいでしょう。

とくに相続では、被相続人や相続人の戸籍など複数の書類が必要になることがあり、自分で取得することで節約できる金額が大きくなる場合があります。一方で、必要な戸籍の範囲を判断したり、複数の自治体から取り寄せたりする手間もかかるため、費用と手間を比較して自分で取得する範囲を決めるとよいでしょう。

登録免許税や不動産取得税の軽減措置を確認する

登録免許税や不動産取得税には、一定の要件を満たす場合に利用できる軽減措置があります。対象になるかを事前に確認しておくことで、本来利用できる軽減措置を見落とさず、税負担を抑えられます。
たとえば、固定資産税評価額1,500万円の住宅用家屋を売買によって取得する場合、登録免許税を本則2%で計算すると30万円です。一方、一定の要件を満たして0.3%の軽減税率が適用されれば4万5,000円となり、25万5,000円負担を抑えられます。
住宅用家屋の軽減税率を受けるには、登記申請時に住宅用家屋証明書などの添付が必要です。利用できる軽減措置を見落とさないよう、適用要件や必要書類を事前に確認しておきましょう。

不動産取得税も、住宅や住宅用土地では大きく負担が軽減される場合があります。たとえば、愛知県が公表している「住宅の税額計算例」では、評価額1,300万円の住宅が軽減要件を満たす場合、1,200万円の控除が適用され、「(1,300万円-1,200万円)×3%=3万円」となります。軽減がなければ39万円となるため、この例では36万円の差があります。

軽減措置を受けるには、申請書や必要書類の提出が必要になる場合があります。適用要件や申請方法は自治体によって異なるため、不動産所在地を管轄する都道府県税事務所へ事前に確認しておきましょう。

親族間で持分を移す場合は贈与・相続を含めた税負担を比較する

親子など親族間で共有持分を移す場合は、生前贈与で移すか、将来相続で取得するかによって、かかる費用や税金の総額が変わることがあります。そのため、どちらの方法が負担を抑えやすいか事前に比較しておきましょう。

たとえば、固定資産税評価額3,000万円の宅地について1/2の持分を移す場合、贈与では登録免許税が30万円、不動産取得税が11万2,500円となり、合計41万2,500円です。

さらに、生前贈与では贈与税がかかる可能性があります。土地全体の相続税評価額も3,000万円と仮定し、18歳以上の子が父母から1/2の共有持分(相続税評価額1,500万円)を暦年課税で贈与され、その年にほかの贈与を受けていない場合、贈与税は366万円です。

一方、相続では登録免許税が6万円で、不動産取得税はかかりません。登録免許税と不動産取得税だけでも相続のほうが35万2,500円負担を抑えられ、上記の贈与税まで含めると、相続税を考慮しない単純比較では401万2,500円の差になります。
ただし、相続で取得すれば必ず税負担を抑えられるとは限りません。相続税は、共有持分だけでなく、預貯金やほかの不動産などを含めた相続財産全体をもとに計算され、共有持分を含めた遺産総額が基礎控除額を超えると相続税が発生する場合があるためです。
親族間で共有持分を生前贈与するか、将来の相続で承継するかを検討できる場合は、登録免許税や不動産取得税だけでなく、贈与税・相続税まで含めた総額を試算したうえで判断しましょう。税額は財産の内容や家族構成などによって大きく変わるため、判断に迷う場合は税理士へ相談することをおすすめします。

共有持分の移転登記を自分で行うときの流れ

共有持分の移転登記は、司法書士へ依頼せず自分で行うこともできます。自分で申請すれば司法書士報酬はかかりません。

共有持分移転登記を自身で行う場合は、主に以下の流れで進めます。

手順 内容
1. 必要書類をそろえる 売買・相続・贈与・財産分与などの登記原因に応じて、登記原因証明情報や住民票、印鑑証明書、固定資産評価証明書などを準備します。
2. 登記申請書を作成する 登記の目的や原因、権利者・義務者、移転する持分、課税価格、登録免許税などを記載します。
3. 法務局へ申請する 必要書類と登記申請書を、不動産所在地を管轄する法務局へ提出します。窓口のほか、郵送やオンラインで申請する方法もあります。
4. 登記完了後の書類を受け取る 審査が完了したら、登記完了証などを受け取ります。新たに登記名義人となった人には、原則として登記識別情報が通知されます。

とくに注意したいのが、登記原因によって必要書類や登記申請書の記載内容が異なる点です。たとえば、売買や贈与では持分を取得する人と手放す人が共同で申請するのが原則ですが、相続では相続人から申請できます。

登記申請書の様式や記載例は、法務局の「不動産登記の申請書様式について」でも確認できます。

ポイント

【司法書士へ依頼したほうがよいケース】

共有者や相続人が多い場合、複数の土地・建物の持分をまとめて移転する場合、相続登記や住所・氏名変更登記などの追加手続きを伴う場合は、必要書類や確認事項が増えて手続きが複雑になりやすくなります。
このようなケースでは、自分で進めるよりも司法書士へ依頼したほうが、書類不備や手続きのやり直しを防ぎやすく、スムーズに登記を進めやすくなります。また、仕事などで手続きに時間をかけにくい場合は、手続きが比較的シンプルでも、最初から司法書士へ依頼するのも選択肢です。

共有持分移転登記の詳しい流れや必要書類、申請方法、売買・相続・贈与・財産分与など登記原因ごとの申請書の書き方については、次の記事で詳しく解説しています。

まとめ

共有持分の移転では、登録免許税や司法書士報酬などの登記に直接かかる費用だけでなく、登記原因によっては不動産取得税や印紙税、譲渡所得税・贈与税・相続税なども考慮する必要があります。そのため、目先の登記費用だけで判断せず、持分を移転する方法に応じた費用・税金の総額を確認しておくことが大切です。

費用負担が気になる場合でも、移転登記をせずに放置するのではなく、利用できる軽減措置を確認したり、手続きがシンプルであれば自分で申請したりするなど、費用を抑える方法を検討しましょう。

必要な登記や税金は、不動産の状況や売買・贈与・相続などの移転原因によって異なります。自分で判断するのが難しい場合は、登記については司法書士、税金については税理士などの専門家へ相談し、必要な手続きを進めましょう。

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