共有持分が競売にかけられたらどうなる?リスクや対処法を解説

共有者の誰かが借金や住宅ローンの返済を滞納すると、その人が所有する共有持分だけが競売にかけられることがあります。
他の共有者の持分だけが競売の対象となる場合、自分の共有持分まで直ちに失うわけではなく、不動産全体がそのまま競売で売却されるわけでもありません。競売の対象になる共有持分は原則として債務者となった共有者のもののみだからです。
ただし、競売で第三者が持分を落札すると、その第三者が債務者に代わる新しい共有者となり、以後は面識のない相手と不動産を共有することになります。この際には、共有名義不動産の実務においてもよく挙げられる、以下のトラブルに見舞われるリスクがあるため、「自分の持分には関係がない」と放置するのは危険です。
- 共有名義不動産の売却やリフォームなど、管理・変更の行為に関する意見が対立する
- 共有持分の売買交渉を強引に持ちかけられる
- 自分が住んでいる場合は家賃相当額を請求されることがある
- 新しい共有者による敷地の利用を一律に拒めない場合がある
- 共有物分割請求を提起される可能性がある
共有持分を専門とする買取業者である弊社には、上記のようなトラブルが起きてしまった方からの相談が多数寄せられます。このようなトラブルを避けるためにも、他の共有者の持分が競売にかけられた場合に備えて対策を講じておくことが大切です。
- 債権者に交渉して競売を取り下げてもらう
- 不動産全体の任意売却に切り替える
- 競売で他の共有者の持分を落札する
- 競売で持分を取得した新しい共有者と売買交渉を行う
- 自分の共有持分を専門の買取会社に売却する
当記事では、共有持分が競売の対象になった場合の扱い、第三者が新しい共有者になるリスク、競売前後に検討できる対処法などを解説します。
共有持分が競売の対象でも自己持分まで差し押さえになるわけではない

他の共有者の共有持分が借金などを理由に競売の対象になったとしても、原則として自己持分は差し押さえになりません。
本人の債務が原因の場合、差し押さえ対象になるのは「債務者本人の財産」です。そして共有名義不動産における共有持分は、以下の法律に基づき共有者ごとの個別の財産として扱われます。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
e-Gov法令検索 民法第206条
2 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行については、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分は、不動産とみなす。
e-Gov法令検索 民事執行法第43条第2項
つまり、同じ不動産を共有しているからといって、他の共有者の債務を理由に別の共有者の持分を差し押さえる行為はできません。
ただし共有名義不動産全体を差し押さえられた場合や、共有名義不動産にまつわる税金・保険料の滞納が原因の場合は、自己持分も競売の対象になる可能性があります。
自己破産して財産を現金化する場合も、破産者以外の共有者の共有持分は、原則として競売による処分の対象外です。
自分の共有持分も一緒に差し押さえになるケース
以下のケースに該当する場合、他の共有者の共有持分と一緒に自分の共有持分も差し押さえられて競売にかけられる可能性があります。
| 自分の共有持分も一緒に差し押さえになる可能性があるケース | 概要 |
|---|---|
| 住宅ローンを滞納した | 住宅ローンなどについて自分も連帯債務者や連帯保証人になっている場合、債権者から返済を求められ、自己持分が強制競売の対象になる可能性がある |
| 自分の共有持分を他の共有者の借金の担保にしている | 他の共有者の住宅ローンやその他の借金の担保として、自分の共有持分に抵当権を設定している場合にその抵当権を行使される |
| 共有名義不動産の固定資産税などを滞納している(公売手続き) | 共有名義不動産全体に課せられている固定資産税や都市計画税を滞納した場合、地方税法第10条の2の連帯納付義務に基づき、債務者以外が持つ共有持分が差し押さえられる可能性がある |
共有持分が競売にかけられた場合のリスク
他の共有者の持分が競売にかけられても、自分の持分まで失うわけではありません。ただし、第三者が新しい共有者になることで、不動産の利用・管理・処分に影響が生じる可能性があります。
なぜなら、競売を経て共有持分が買受人(競売において不動産を競り落とした人)へ移転すると、見知らぬ第三者との共有状態になるためです。
競売手続きを経て見知らぬ第三者と共有状態になった場合、以下のトラブルに見舞われるリスクが発生します。
- 共有名義不動産の売却やリフォームなど、管理・変更の行為に関する意見が対立する
- 共有持分の売買交渉を強引に持ちかけられる
- 自分が住んでいる場合は家賃相当額を請求されることがある
- 新しい共有者による敷地の利用を一律に拒めない場合がある
- 共有物分割請求を提起される可能性がある
実務上、競売で共有持分を購入する第三者は不動産投資家や共有持分専門の買取業者です。
一般の人は共有持分を購入したところで恩恵が少ない一方、投資家や事業者は購入した共有持分の転売・活用で利益を得ることを目的に買取しています。
共有名義不動産の売却やリフォームなど、管理・変更の行為に関する意見が対立する

競売を経て不動産を第三者と共有することになると、不動産の利用や売却、改修などをめぐって意見が対立する可能性があります。共有名義不動産に一定の行為を行うには、行為の種類に応じて、「持分価格の過半数の同意」または「共有者全員の同意」が必要になるためです。
| 他の共有者の同意が必要な行為 | 具体例 |
|---|---|
| 管理行為・軽微な変更 | ・共有名義不動産の使用方法のルール設定、変更など ・形状または効用の著しい変更を伴わない改修 ・賃貸借契約の解除 ・民法第252条第4項が定める期間を超えない賃貸借等の設定 |
| 変更行為・処分行為 | ・共有名義不動産全体の売却 ・新築 ・取り壊し ・立て替え ・建物の形状や用途を大きく変える増改築やリフォーム ・共有名義不動産全体への抵当権設定 ・長期賃貸借契約の締結 ・土地の分筆 |
例えば、競売前の共有者間では「老朽化した建物を大規模に改修して引き続き使用する」という方針で一致していても、競売によって加わった新しい共有者が「維持管理費や収益性を考えると、改修ではなく建て替えた方がよい」と反対した場合、建物の形状や効用を著しく変える大規模改修は実施できません。
一方、建て替えにも共有者全員の同意が必要になるため、新しい共有者も単独で工事を進めることはできません。その結果、どちらの方針も実行できない状態になる可能性があります。
また、新しい共有者と連絡がつかない場合や、不動産の利用・処分に関する協議へ応じてもらえない場合も、最終的な意思決定ができず膠着状態が続くリスクが考えられます。
共有持分に関する相談をこれまで1万件以上お受けしてきた弊社の経験上、このような「他の共有者と不動産の方針で意見が対立している」というトラブルは、共有名義不動産においてよくある事例です。
親族同士であっても意見の対立や摩擦が起こることを考えると、面識のない第三者と不動産の利用・管理方針を一致させるのは、さらに難しくなる可能性があります。
共有持分の売買について強引な交渉を受ける可能性がある

競売で共有持分を取得した新しい共有者から、不動産全体の売却や共有持分の売買について、次のような交渉を持ちかけられる場合があります。
- 共有名義不動産全体の売却について同意を求めてくる
- 新しい共有者が「あなたの持分を買い取りたい」「自分の持分をあなたに売りたい」と打診してくる
ていねいに交渉してくる相手ならまだしも、「応じなければ共有物分割請求を起こす」などと法的措置を強調して契約を迫られたり、早朝・深夜の連絡や頻繁な訪問を繰り返されたりすると、精神的な負担が大きくなる可能性があります。
新しい共有者が共有物分割請求といった法的措置を検討し伝える行為自体は、直ちに違法または不当になるわけではありません。
ただし、相手が宅地建物取引業者の場合、断った後も勧誘を続ける行為や迷惑な時間帯に電話・訪問を行うなどの態様は、宅地建物取引業法上問題になる可能性があります。また、暴力や脅迫まがいの行為を匂わせる交渉や、行き過ぎた騒音といった嫌がらせが続く場合は、直ちに警察へ通報してください。
自分が住んでいる場合は家賃相当額を請求される可能性がある

競売後も自分や家族が共有名義不動産の全部を使用している場合は、別段の合意がない限り、新しい共有者から家賃相当額に当たる「使用対価」を請求される可能性があります。
賃貸借契約が締結されていなくても、自己の持分を超えて共有物を使用する共有者には、民法に基づく使用対価の支払義務が生じるためです。
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
e-Gov法令検索 民法第249条第2項
例えば、自分や家族が使用する不動産全体の賃料相当額が月10万円で、新しい共有者の持分が1/2であれば、月5万円が使用対価の1つの目安です。ただし、実際に使用対価の請求が認められるかどうかは、共有者間の合意や状況などを総合的に判断して決まります。
以下では、一般的に「共有者の使用対価の請求が認められやすいケース・認められにくいケース」をまとめました。
| 認められやすいケース | 認められにくいケース |
|---|---|
| ・元々の居住者やその家族が不動産全体を使用している ・従前の共有者間に「無償で住める」「使用対価を取らない」といった合意が存在しない ・居住者側が不動産全体を占有・使用し、新しい共有者が共有物を使用・収益できない状態にある |
・従前の共有者間に無償使用を認める合意があり、その合意の効力が新しい共有者にも及ぶと判断される ・新しい共有者が一定期間の無償使用を認めており、その合意期間中の使用対価を請求している ・請求額が適正な賃料相当額や持分割合を上回っており、超過部分について合理的な根拠がない場合 |
実際の使用対価は、適正な賃料相当額、持分割合、使用している範囲、請求期間、物件の状態などを踏まえて判断されます。
新しい共有者による敷地の利用を一律に拒めない場合がある

民法第249条第1項に基づき、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用ができると定められています。そのため、競売で共有持分を取得した人が見知らぬ人だからといって、共有名義不動産の敷地の利用を拒めるとは限りません。
ただし、不動産競売物件情報サイトBITにも記載がある通り、共有持分を取得しただけで、新しい共有者が居住中の建物や敷地へ自由に立ち入れるわけではありません。
実際に誰が・どこを・どのように使うかは、これまでの使い方や共有者同士の約束、それぞれの持分割合をもとに話し合って決めるのが実務上一般的です。
精神的な苦痛を回避する意味でも、「どうしても立ち入られたくない」「お互いの平穏を守りたい」といった場合は、以下の対応を検討してみましょう。
- 立ち入り可能日・時間・目的などの立ち入りルールを共有者同士で協議して定め、合意書などで残しておく
- 持分価格の過半数を確保できる場合は、管理行為として合理的な使用・管理ルールを決定する
- 「施錠された居住部分へ無断で立ち入る」「家具や設備を勝手に動かしたり処分したりする」といった行為がある場合は、日時、写真、映像、連絡内容などの証拠を残して弁護士へ相談する
居住中の建物内へ無断で立ち入るなど、居住者の生活の平穏を害する行為まで当然に認められるわけではないと把握しておいてください。
共有物分割請求を提起される可能性がある

不動産会社などが共有持分を購入し、既存の共有者との話合いがまとまらない場合には、共有状態の解消を求める「共有物分割請求(民法第256条)」を行うことが実務上少なくありません。
購入した側としては共有持分を収益化するために、共有物分割請求を通じて「すべての持分を買い取れないか」「全体売却の同意を得られないか」を検討するからです。
共有者には、原則としていつでも共有物の分割を請求する権利があります。さらに、共有者間で分割協議がまとまらない場合や、協議自体ができない場合は、裁判所へ分割を請求する「共有物分割請求訴訟(民法第258条)」を起こすことも可能です。
共有物分割請求訴訟にまで進んでしまうと、提起された側としても時間と費用がかかるうえに、裁判対応で疲弊してしまうリスクが想定されます。
また、裁判所は不動産の利用状況や持分割合、各共有者の希望、代償金の支払能力などを踏まえて分割方法を判断するため、ただ「住み続けたい」「売却したくない」という希望だけで共有状態の解消を阻止できません。
実務では「まずは交渉して、まとまらなければ訴訟」という流れになるため、共有物分割請求が行われたら無視や不誠実な対応をせず、しっかり話し合って今後の方針を見極めていくのがよいでしょう。
共有物分割請求についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
共有持分が競売にかけられた場合の対処方法
他の共有者の持分が競売にかけられたまま対応せずにいると、第三者が落札し、見知らぬ個人や不動産会社が新しい共有者になるリスクがあります。
見知らぬ第三者との共有状態を避けたい場合は、競売開始決定を知った段階で、競売の対象となっている持分、債権者、債務額、入札期間、開札期日などを確認し、早めに対応方針を決めることが重要です。
主な対処方法は、以下の5つです。
| 対処方法 | この方法が向いている人 |
|---|---|
| 債権者に交渉して競売を取り下げてもらう | ・今後も不動産を所有・使用したい人 ・開札前など、競売手続きが比較的早い段階にある人 ・債務者である共有者から協力を得られる人 |
| 不動産全体の任意売却に切り替える | ・不動産を残すことよりも競売の回避を優先したい人 ・共有者全員が不動産全体の売却に同意している人 ・競売よりも有利な条件で売却し、債務をできるだけ減らしたい人 |
| 競売で他の共有者の持分を落札する | ・今後も不動産を所有・使用し続けたい人 ・そもそも第三者が新しい共有者になることを避けたい人 ・保証金や落札代金を準備できる人 |
| 競売で持分を取得した新しい共有者と売買交渉を行う | ・競売後も不動産を所有・使用し続けたい人 ・自分の持分を売却して共有関係から離れたい人 ・持分の買取資金を用意できる人 |
| 自分の共有持分を専門の買取会社に売却する | ・不動産を残す必要がない人 ・新しい共有者との交渉や訴訟を避けたい人 ・売却価格よりも共有関係から早く離れることを優先したい人 |
まだ競売手続きが始まっていない場合は、競売手続きの取り下げや任意売却ができないかどうかを、債権者と話し合うのがよいでしょう。競売が始まる前のほうが債権者と交渉しやすく、柔軟な対応が期待できます。
競売がすでに始まっている場合は、自分が買い取れないかを検討します。この段階で買い取れるのであれば、第三者が新しい共有者になることを防ぎ、その後の売買交渉や権利調整の手間を避けられます。
落札後、共有持分の新しい所有者が決まっている場合は、新しい共有者と持分について話し合うことになります。
自分の共有持分を売却する場合は、他の共有者の状況や競売手続きの進捗などに左右されず、ある程度自分のタイミングで始められます。
債権者に交渉して競売を取り下げてもらう
他の共有者の債務が原因で競売が申し立てられた場合、まずは債務を負う共有者と協力し、申立債権者に競売の取下げを交渉できないかを検討しましょう。
競売開始決定後であっても、申立債権者が取下書を執行裁判所へ提出すれば、競売申立てを取り下げられる場合があります。
強制競売を取り下げるには、原則として最高価買受申出人または買受人と、次順位買受申出人の同意が必要です。そのため、入札や開札が行われる前の早い段階で交渉を始める必要があります。
ただし、債権者が無条件で競売申立ての取下げに応じるわけではありません。債権者へ提示する条件として、以下のものが提案できないかを確認してみてください。
- 債務を完済または一部弁済する
- 債権者が納得できる返済計画と、収入・支出、資産状況、返済原資など計画の実現可能性を示す資料を提出する
- 競売よりも高値で売却できる方法と根拠を提示する
他の共有者の債務を支払って競売を取り下げてもらう場合、先に借金だけを支払うと、持分の移転に応じてもらえないといったトラブルが起こるおそれもあります。実際の手続きは、弁護士や司法書士へ相談しながら進める方が安全です。
不動産全体の任意売却に切り替える
「共有者全員が不動産を手放してもよい」「不動産の所有にこだわらない」といったケースであれば、競売を避けて不動産全体の任意売却に切り替えられないかを検討します。
任意売却のメリットは、競売より高値で売れる可能性がある点です。また、競売と比べて引渡時期を調整しやすく、退去後の住まいや生活再建の準備を進めやすい点も特徴です。
ただし、任意売却を進める際には以下の点に注意しておきましょう。
- 売却価格や売却代金の配分、抵当権・差し押さえの解除条件、売却後に残る債務の返済方法などについて、債権者の承諾を得る必要がある
- 売却代金が住宅ローン残高を下回れば全体売却後も住宅ローン残債は残り、引き続き返済を続ける必要がある
- 専門性が高い売却方法であるため、任意売却の実績のない不動産会社に依頼すると失敗するリスクがある
不動産を残すことよりも、競売や共有関係をめぐるトラブルを避けて、できるだけ有利な条件で売却することを優先したい場合に検討するとよいでしょう。
競売で他の共有者の持分を落札する
競売前の返済や任意売却交渉がまとまらない場合は、自分で競売へ入札し、他の共有者の持分を取得する方法があります。
競売事件の債務者本人と異なり、競売の対象となっていない共有者であれば、原則として個人でも入札に参加できます。
ただし、競売には他の個人や不動産会社も参加できるため、必ず落札できるわけではありません。気持ちが先走って相場よりも高額で入札すると、自分の資金状況が悪化するおそれもあります。
不動産全体の査定価格や持分割合を確認し、あらかじめ入札上限額を決めておくことが大切です。
競売で持分を取得した新しい共有者と売買交渉を行う
第三者が競売手続を経て共有持分を取得した場合は、その新しい共有者との間で持分の売買を話し合う方法があります。
例えば、今後も自分が不動産を使いたい場合は、買受人から持分を買い取ることを検討します。逆に不動産を手放してもよい場合は、自己持分を買受人へ売却したり、共有者全員で話し合って不動産全体を売却したりすることも選択肢です。
売買価格は、不動産全体の査定価格、持分割合、落札価格、占有状況などを総合的に確認して妥当性を判断しましょう。相手から提示された価格を言われるがままに受け入れてしまうと、相場よりも高値で買わされたり安価で買取されたりといったトラブルが想定されます。
新しい共有者から持分の売買について相談を受けた際には、複数の不動産会社から査定を取るなどして早めに対応方針を決めることが重要です。
自分の共有持分を専門の買取会社に売却する
「共有名義関係のトラブルに巻き込まれたくない」「知らない人との共有状態は避けたい」という場合は、自分の共有持分のみを専門の買取業者に買い取ってもらう方法があります。
自分の共有持分だけを売却する場合は、原則として他の共有者の同意は不要です。買取業者との間で価格や条件に合意できれば、自分の判断で売却手続きを進められます。
本来、共有持分単体は一般の個人からの需要が著しく低いため、一般の市場での売却は非常に困難です。一方、共有持分を専門に取り扱う買取業者は、共有者間の権利関係や物件の利用状況を調査した上で、一般市場では売却しにくい共有持分も買取対象としています。
自分の共有持分を売却できれば、競売を経て共有者となった人との共有状態から抜け出せます。共有者同士の意見対立、強引な売買交渉、共有物分割請求訴訟などに共有者として関与し続ける必要がなくなり、共有関係に起因する将来のトラブルから離れやすくなります。
また、買取業者は自ら買主となるため、一般市場で買主を探す必要がありません。必要書類や権利関係の確認がスムーズに進み、提示された査定価格や契約条件に納得できれば、仲介より早く現金化できる可能性があります。
ただし、他の共有者へ売却する場合より価格が低くなる傾向があることや、共有持分を専門に取り扱う買取業者が限られる点には注意が必要です。
共有持分の売却については、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
共有持分が競売になるときの流れ
共有持分が競売にかけられる場合、一般的には以下の流れで進みます。
- 債権者が地方裁判所へ競売を申し立てる
- 裁判所が競売開始決定を出して共有持分を差し押さえる
- 執行官による現況調査と不動産鑑定士による不動産評価が行われる
- 売却情報が公告されて期間入札が行われる
- 裁判所が売却許可決定を出し買受人が代金を納付して所有権を取得する
- 売却代金が債権者へ配当される
1. 債権者が地方裁判所へ競売を申し立てる
債権者は、競売対象となる共有名義不動産の所在地を管轄する地方裁判所へ競売を申し立てます。持分だけを対象とする場合は、申立書などに競売対象となる持分割合が記載されます。
2. 裁判所が競売開始決定を出して共有持分を差し押さえる
裁判所が申立てを適法と判断すると、競売開始決定を出し、債務者が所有する共有持分を差し押さえます。その後、法務局で「差押登記」が行われ、競売開始決定の内容が債務者へ通知されます。
競売開始決定正本が届いた時点では、すでに競売手続が開始されているので注意しましょう。任意売却や債権者への弁済による取下げを検討する場合は、開札までの時間が限られるため、債務者である共有者や専門家へ早めに相談することが大切です。
3. 執行官による現況調査と不動産鑑定士による不動産評価が行われる
競売開始決定が出された後は、執行裁判所から命令を受けた執行官が現地を訪れ、不動産の形状や状態、利用状況、占有者、占有権原などを調査します。並行して、裁判所から選任された評価人(原則として不動産鑑定士)が不動産の価値を評価します。
調査・評価の基本的な流れは、通常の不動産競売と同様です。ただし、共有持分の競売では、持分割合や他の共有者の占有状況、持分だけでは不動産全体を自由に利用・処分しにくいことなども確認されます。
現況調査と評価が終わると、執行官が現況調査報告書を、評価人が評価書を作成します。その後裁判所は、評価書を現況調査報告書や登記情報などと照合・審査し、売却基準価額を決定します。
執行官が作成する「現況調査報告書」、評価人が作成する「評価書」、裁判所書記官が作成する「物件明細書」は、裁判所が入札希望者向けに作成する三点セットと呼ばれる重要書類です。
4. 売却情報が公告されて期間入札が行われる
売却準備が整うと、入札期間、開札期日、売却基準価額などが公告され、三点セットも公開されます。不動産競売は、指定された期間内に入札書を提出する「期間入札」で行われるのが一般的です。
入札期間が終了すると、あらかじめ定められた開札期日に執行官が入札書を開封します。そして有効な入札のうち、もっとも高い金額を提示した人が最高価買受申出人となります。
ただし、この時点で買受人は共有持分の所有権を取得していません。
競売開始決定後や入札期間の開始後でも、申立債権者が取下書を提出すれば競売を取り下げられる場合があります。最高価買受申出人が決定した後は、最高価買受申出人などの同意が必要になるのが原則です。
競売を回避したい場合は、開札前のできるだけ早い段階で債権者との交渉を進めましょう。
自分で他の共有者の持分を入札する場合
入札に参加する場合は、裁判所が公開する現況調査報告書・評価書・物件明細書の三点セットをまず確認しましょう。
入札時には、公告に記載された「買受申出保証額(入札時に裁判所に納付する保証金)」を提供し、買受可能価額以上の金額で入札します。買受申出保証額は通常、売却基準価額の20%程度ですが、事件によって異なるため公告内容の確認が必要です。
開札でもっとも高い金額を提示して、売却許可決定が確定後、期限までに代金を納付すると共有持分の所有権を取得できます。
5. 裁判所が売却許可決定を出し買受人が代金を納付して所有権を取得する
裁判所は売却決定期日に、最高価買受申出人へ共有持分を売却してよいかを判断します。入札手続きや買受資格などに問題がなければ、売却許可決定が出されます。
法律上の不許可事由がある場合は、最高額を提示していても売却が認められません。決定が確定すると、代金の納付期限が指定されます。
その後、買受人が期限までに代金を納付すると、競売対象となった共有持分の所有権を取得します。その後、裁判所から法務局へ所有権移転登記が嘱託され、買受人が新しい共有者となります。
6. 売却代金が債権者へ配当される
買受人が納付した代金から競売手続の費用が差し引かれ、残額が抵当権者や差押債権者などへ、法律上の優先順位に従って配当されます。
もし配当後に余剰金があれば、競売された持分の元所有者へ交付されます。
なお、売却代金だけでは債務を完済できない場合、原則として配当後も返済を続けなければなりません。
よくある質問
自分の共有持分が競売にかけられそうな場合はどうすればよいでしょうか?
督促状や一括返済の請求を放置せず、まず債権者へ連絡して、滞納分の支払いや返済計画の見直しを相談しましょう。
返済が難しい場合は、競売を申し立てられる前に共有持分の任意売却も検討します。裁判所から競売開始決定正本が届いた場合は、すでに手続きが始まっているため、早急に弁護士や任意売却に詳しい不動産会社へ相談することが大切です。
競売における共有持分の落札価格の目安はどのくらいですか?
共有持分の落札価格に、一律の相場はありません。目安を考える際は、まず「不動産全体の市場価格×持分割合」で理論上の持分価格を算出し、そこから共有持分の利用・処分のしにくさや競売特有の制約を考慮します。
例えば3,000万円の不動産の1/2について、共有持分20%・競売30%の減額を仮定すると約840万円です。当然ながら減額率は物件ごとに異なり、実際の価格は入札結果で決まります。
まとめ
他の共有者の持分が借金などを理由に競売へかけられても、原則として自分の持分まで差し押さえられるわけではありません。
ただし、競売を経て第三者が持分を取得すると、見知らぬ相手と不動産を共有することとなり、不動産の利用・管理・売却をめぐる意見対立や使用対価の請求、共有物分割請求などへ発展する可能性があります。
競売自体を避けたい場合は、債務者である共有者と協力し、債権者への弁済や返済計画の提示、不動産全体の任意売却などを検討します。競売の取下げが難しいときは、自ら入札して持分を取得する方法も選択肢です。
すでに第三者が取得した後であれば、相手の持分を買い取る、自分の持分を売却する、不動産全体を売却するといった解決方法を話し合うことになります。
競売手続きが進むほど、債権者との交渉や任意売却といった別の方法で対応することが難しくなります。他の共有者の持分が差押えの対象になるおそれがある場合は、事前に債務者である共有者と協議し、どのように対応していくべきか方針を共有しておきましょう。

