共有持分買取業者と発生するトラブル4選!9つの対策についても解説

共有持分買取業者とよく発生するトラブル4選!9つの対策についても解説

「共有持分を売却したいけど、買取業者に依頼しても大丈夫だろうか?」「買取業者はトラブルになりやすいと聞いたけど、本当?」

共有持分の売却を考える人の中には、このような疑問を持つ人もいるかもしれません。共有持分買取業者は、共有持分のみの買取を専門に扱う業者です。

そのため、通常の不動産仲介業者では応じてくれることの少ない共有物件をスピーディに売却できるだけでなく、第三者に知られずに売却できたり仲介手数料がかからなかったりといったメリットがあります。

その一方で、悪質な買取業者に依頼すると思わぬトラブルに発展する可能性があります。

  • 共有名義に加わった買取業者から他の共有者へ強引な営業が起こる場合がある
  • 買取業者からの共有物分割請求が起こる場合がある
  • 買取業者の査定が厳しくなる場合がある

トラブルにならないためにも、宅地建物取引業の免許を持っているか、移転登記と売却代金の受け渡しを同時に行えるか、代金を現金で受け渡し可能かなどを確認するのが重要です。

また、口コミから評判を調べたり、複数の業者から査定を取って比較するといった対策も買取業者選びに有効です。

共有持分については、買取業者とのトラブル以外にも不動産の利用や処分に関する共有者の合意が取れなかったり、共有物分割請求訴訟を起こされる可能性があったりと一般的に起こりやすいトラブルがいくつかあります。

それらのトラブルを回避するためには、不動産の共有状態を解消するのが一番です。

本記事では悪質な共有持分買取業者に買取を依頼した際に起こりがちなトラブルや、トラブルにならないための買取業者の選び方を解説します。また、共有状態にしないための方法や解消方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

共有持分とは複数人で不動産を共有する場合の割合のこと

共有持分とは、1つの不動産を複数人で共有して所有する場合の個人の所有権割合のことです。1つの不動産を複数人で所有するケースには、「夫婦が共同名義で不動産を購入した」「遺産相続で1つの不動産を複数の相続人で相続した」「2世帯住宅を親と共同で出資して購入した」などがあります。共有持分はあくまで所有権の割合であり、物理的に物件の面積などが分けられるわけではありません。

不動産を複数人で共有しているため、当然ながら所有者1人の意思だけで不動産全体を売却するのは不可能です。ただし、自分の共有持分のみであれば、自由に売却できます。不動産全体を売却したい場合と自分の共有持分のみを売却したい場合、両方のケースを詳しく解説します。

共有名義の不動産全体を単独で売却することはできない

不動産を共同で所有している場合、所有者それぞれに所有権が発生しているため単独の意思だけでは全体を売却できません。不動産全体を売却するのは法律上「共有物の変更行為」にあたるので、共有者全員の合意が必要です。合意を得られないからといって、単独で勝手に売却するのは違法行為になります。共有者間で大きなトラブルにも発展するため、協議の上で全員の合意を得るのが重要です。

自分の共有持分のみであれば自由に売却できる

自分の共有持分は、自分ひとりに所有権があるので自由に売却できます。自分の共有持分の売却は法律上でも認められている行為ですが、他の所有者に断りなく売却した場合はトラブルになる可能性が高いです。共有者からすれば、売却されたことで他人との共有状態になるかもしれずあまり気持ちのいいものではありません。実際には共有持分を第三者が購入したとしても、その不動産に住んだり賃貸物件として第三者へ貸し出したりといった行為ができないケースがほとんどです。

また、自分の共有持分のみを売却する場合は、相場よりも低い価格になりがちです。共有持分を売却する先は主に「他の共有者」か「共有持分買取業者」となります。他の共有者に売却する場合は当事者間で交渉をして条件を決めていきますが、共有持分買取業者の場合は買取後の経費や利益の低さを見込んで低い価格を提示されることが多いと考えておきましょう。詳しくは後述の「悪質な共有持分買取業者によるトラブル4選」で解説します。

共有持分買取業者は共有持分のみの買取を専門に行う業者である

共有持分買取業者とは、どのような特徴を持つ業者なのでしょうか。通常は共有持分のみを買い取っても、他の共有者がいるため不動産を自由に活用できません。他の共有者とのトラブルが生じる可能性もあるため、共有持分は買い手がつきにくい商品と言えます。そのため一般的な不動産仲介業者では、共有持分の買取には応じてもらえない可能性が高いでしょう。なんとか買い取ってくれそうな不動産仲介業者を探すには、ある程度の時間が必要です。

一方共有持分買取業者は、共有持分のみの買取を行う専門の業者です。共有持分の買取や売却のノウハウを持っているため、共有持分を買い取ってくれるだけでなくスピーディに取引ができます。また、共有持分買取業者は買主が共有持分買取業者ですが、不動産仲介業者を介した取引では買主は別の第三者になります。不動産仲介業者に売却を依頼した場合、買い手を探すのに時間がかかる可能性も考慮しなくてはいけないため、共有持分買取業者に売却する方がスピーディに取引が成立するとも言えるでしょう。

ただし、共有持分買取業者との取引はメリットばかりではありません。具体的な内容は後述しますが、トラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。

共有持分買取業者を利用する3つのメリット

まずは、共有持分買取業者を利用するメリットを解説します。主なメリットは以下の3つです。

  • スピーディに売却できる
  • 第三者に知られずに売却できる
  • 仲介手数料がかからずに売却できる

それぞれを詳しく見ていきましょう。

スピーディに売却できる

共有持分は共有する不動産の所有権の割合ですが、完全な所有権とは異なりできることが制限されています。不動産を自由に利用したり処分したりすることが困難なため、不動産仲介業者に依頼しても中々買い手がつかないことも珍しくありません。共有持分を早く現金化したい場合、不動産仲介業者に依頼するのは得策とは言えないでしょう。

しかし、共有持分買取業者なら査定額の折り合いが付けばすぐに売却可能です。買取業者との直接取り引きとなるため、手続きもスムーズに進みます。共有持分の売却を急いでいる人は、共有持分買取業者を利用するのがおすすめです。

第三者に知られずに売却できる

共有持分買取業者を利用すると、第三者に売却しようとしていることを知られずに済みます。たとえば、不動産仲介業者に売却を利用すると業者は買い手を探すために、売却情報を広告へ掲載します。すると近隣の人だけでなく、他の共有者にも持分を売却しようとしていることが知られる可能性があります。

しかし、共有持分買取業者との取引には第三者が介入しません。買取業者が直接買い取るので、広告掲載などで周囲に知られる心配は不要です。誰にも知られずに持分を売却したい場合は、共有持分買取業者を利用した方が良いでしょう。

仲介手数料がかからずに売却できる

不動産仲介業者に依頼すると、売却の際に仲介手数料がかかります。一方で、共有持分買取業者に依頼した場合は売り手と買い手との直接取り引きになるため、仲介手数料は不要です。

仲介手数料は宅地建物取引業法によって、上限が定められています。

売買額 手数料の上限
~200万円 売買額(税抜)✕5%
201万円~400万円 売買額(税抜)✕4%+2万円
401万円以上 売買額(税抜)✕3%+6万円

例えば、共有持分の売却価格が2,000万円の場合、最大で「2,000万円✕3%+6万円=66万円(消費税別)」の仲介手数料が必要です。大きな金額になることもある仲介手数料の支払いがないのは、大きなメリットと言えるでしょう。

悪質な共有持分買取業者によるトラブル4選

共有持分買取業者を利用するのはメリットもありますが、デメリットもあります。特に悪徳な業者を選んでしまうと、以下のようなトラブルに発展することがあるため注意が必要です。

  • 共有名義に加わった買取業者から強引な営業が起こる場合がある
  • 買取業者からの共有物分割請求が起こる場合がある
  • 買取業者からの営業がしつこくなる場合がある
  • 買取業者の査定が厳しくなる場合がある

なぜこのようなトラブルが発生するのかを詳しく解説します。

共有名義に加わった買取業者から他の共有者へ強引な営業が起こる場合がある

共有持分を買い取った業者は、ほとんどの場合購入した不動産を再活用し利益をあげるのが目的です。しかし、共有物件は他の共有者にも所有権があるため、扱いにくいものです。そのため、他の共有者へ持分の買い取りを持ちかける可能性があります。共有名義に加わった業者がきちんとした業者なら問題ありませんが、悪質な買取業者の場合は強引に交渉してくる可能性もあるでしょう。他の共有者が売却を考えていない場合は迷惑になることもあるので、事前に説明しておくのが肝心です。

買取業者からの共有物分割請求が起こる場合がある

買取業者から「共有物分割請求」を申し立てられる可能性もあります。共有物分割請求とは、他の共有者に対して共有物を分割して所有するよう請求することです。例えば、物件全体を売却して代金を持分割合に応じて分割したり、共有者の内1人が物件を買い取り、他の共有者には持分相当の価格を賠償するなどの方法があります。

所有者間の協議で話がまとまれば良いですが、合意に至らない場合は共有物分割請求訴訟に発展するかもしれません。こうなると分割方法は裁判所の決定に委ねられることになり、最終的に物件が競売にかけられる場合があります。
参照:民法第二百五十六条 共有物の分割請求 | e-gov法令検索

買取業者からの営業がしつこくなる場合がある

共有持分の買い取りについて買取業者へ問い合わせをした後、業者からの営業がしつこくなる場合があります。問い合わせをした時点で、買取業者は共有持分の売却に興味があると判断します。そのため、ぜひ買い取らせて欲しいとアプローチをかけてくる可能性があるでしょう。

上記で紹介した2つのケースより悪質ではありませんが、断っても何度も電話をかけてくるなど迷惑行為につながることがあるので注意が必要です。

買取業者の査定が厳しくなる場合がある

共有持分買取業者に依頼すると、一般的には物件の相場価格よりも安くなるケースがほとんどです。業者が買い取った後に物件を再活用して利益を出すには、他の共有者から持分を買い取って物件を単独所有したり、共有物分割請求で共有関係を解消する必要があります。他の共有者との交渉期間中、物件を維持するための経費がかかる上に見込み利益が少ないとなれば、買取価格が安くなる可能性は高いでしょう。

共有物件は購入する側にもリスクがあるため、立地によっては査定が厳しくなったり買取自体を断られる可能性もあります。

共有持分でトラブルにならないための買取業者の選び方9つのポイント

共有持分を売却する際に、トラブルを回避するには買取業者の選び方が重要です。

  • 宅地建物取引業の免許を持っている業者であるか確認する
  • 売却代金を現金で受け渡し可能であるか確認する
  • 移転登記と売却代金の受け渡しを同時におこなうか確認する
  • 買取業者の口コミや評判を確認する
  • 買取実績が十分にある業者を選ぶ
  • 弁護士と提携している業者を選ぶ
  • 複数業者から査定を取って比較する
  • 担当者が誠実かつ丁寧である
  • 相続物件についても知識が豊富である

上記9つの選び方について詳しく解説します。

宅地建物取引業の免許を持っている業者であるか確認する

宅地や建物の売買を行う業者には、宅地建物取引業の免許が必要です。しかし、悪質な業者はそもそも免許を持っていない違法な業者の場合があります。そのため、共有持分を売却する場合は宅地建物取引業の免許を持っている業者かどうかを確認しましょう。宅地建物取引業の免許を持っている業者なら、共有持分をだまし取られるなどトラブルに対するリスクを減らせます。

ただし、免許を持っているからといって100%信頼できる業者とは限りません。正規の不動産業者でも、「囲い込み」と呼ばれる手法で共有持分をキープしようとする業者もあります。

囲い込みとは、「買い取りができる」と言うもののいつまでも具体的な話を進めず、有効な使い道が決まるまで物件をキープする行為のことです。こうなると売却に時間がかかるだけでなく、「中々売れないので値段を下げましょう」などと値下げの交渉を持ちかけられる可能性があるため注意が必要です。

本来不動産買取業者は不動産の転売先や使い道を確保してから買い取りを進めるのが一般的で、囲い込みは違法行為です。しかし中には囲い込みを行う悪質な業者も存在するため、宅地建物取引業の免許の有無だけでなく他の方法も併せて確認しましょう。

売却代金を現金で受け渡し可能であるか確認する

売却代金を現金で受け渡しできるかどうかも、買取業者を選ぶ上で重要なチェックポイントです。悪徳業者の場合、現金でなく小切手で払うと申し出る可能性があります。その際に換金できない小切手を渡されて、騙される恐れがあるため注意が必要です。

小切手が本物だとしても、振り出す預金を残高不足にしておくなど「不渡り」の手口でお金が受け取れないことがあります。共有持分を売却する際は、現金以外の取引は断るのが賢明です。

移転登記と売却代金の受け渡しを同時におこなうか確認する

移転登記を売却代金の受け渡しよりも前にする業者にも注意が必要です。移転登記を行った後に代金を払うとして、実際には払わずに物件だけを騙し取るのは悪徳業者に多い手口です。そのため、必ず移転登記と売却代金の支払いが同時に行えるか確認しましょう。

中には、取引の途中で「やはり移転登記をと代金の受け渡しは同時に行えない」などスケジュール変更を申し出てくる場合もあるかもしれません。その場合は「他の業者へ依頼する」など、強めに反対しても大丈夫です。ただし、悪徳業者はあの手この手で騙し取ろうとしてくる可能性もあります。確実に被害を防ぐには、弁護士や司法書士の立会の元で移転登記を行うと良いでしょう。

買取業者の口コミや評判を確認する

買取業者を探す際はインターネットを活用する人が多いと思いますが、業者のホームページだけでなく第三者視点の評価もチェックしましょう。インターネットで「〇〇(買取業者名) 評判」などと調べれば、口コミや評判が確認できます。悪質な業者に捕まらないために、「買取価格は適正か」「強引な営業はないか」「売却者や他の共有者とトラブルになったことがないか」などをあらかじめ確認しておくと安心です。

買取実績が十分にある業者を選ぶ

共有持分の買取に自信があったり、顧客からの信頼を得ていると自負している業者は、ホームページに買取実績を掲載していることが多いです。買取実績が十分にある業者なら共有持分の取り扱いに慣れているため、安心して売却を任せられる可能性が高いでしょう。一方で、ホームページがない業者や買取実績を公開していない業者は、共有持分の扱いが不得意だと予想できます。そのため、他の共有者とのトラブルに発展しやすいなど、不安な面が多いと考えられます。

また、きちんとした業者の場合はホームページに「個人情報保護方針」や「プライバシーポリシー」が明記されています。こちらも忘れずチェックしましょう。

弁護士と提携している業者を選ぶ

共有持分の売買は、他の共有者とのトラブルなど法的トラブルが絡むことが多いです。トラブルのせいで売却が進められないといったケースも発生するため、スムーズに売却したいなら弁護士と提携している業者がおすすめです。また、弁護士と提携している業者なら、すでにトラブルになっている共有不動産の買取も積極的に行ってくれるでしょう。

弁護士と提携していれば、他の共有者との交渉も弁護士を通してスムーズに行えます。交渉に余計なコストを掛けずに済むため、結果的に高く売却できる場合もあります。

複数業者から査定を取って比較する

なるべく高く共有持分を売りたいなら、複数の業者から査定を取りましょう。共有持分の売却価格は、そもそも相場よりも安くなりがちです。そのため複数の業者から査定を取って比較することが大切です。

ただし、高く買ってくれるからといって全面的に信用するのは危険です。必ず、他の確認方法も併せてチェックしましょう。

担当者が誠実かつ丁寧である

ほとんどの人が共有持分の売却は初めての経験だと思います。わからないことばかりの中、少しでも良い条件で売却したいなら誠実で丁寧な対応の担当者がいる業者を選びましょう。質問をした際に、面倒がらずすぐに答えが返ってくる担当者だと安心です。ただし、レスポンスが早くてもいい加減なことを言う担当者には注意が必要です。もし質問の答えがわからなくても、きちんと調べて正確に答えてくれる業者なら信頼できるでしょう。

他にも売り主にとってのデメリットや、査定額について耳の痛い内容もしっかりと教えてくれるかどうかも重要です。その上で、売り主の希望に沿った提案をしてくれる誠実な担当者を選びましょう。

相続物件についても知識が豊富である

共有持分は、夫婦や家族で共同で出資した場合だけでなく相続でも発生します。共有持分の中でも相続に伴うものは、相続人同士のトラブルや税金対策など特に運用が難しいケースが多いです。そのため相続物件について知識が豊富な買取業者なら、共有持分の取り扱いも安心して任せられる可能性が高いでしょう。

さらに税理士と提携していれば、相続税や売却の際にかかる税金への対策もできる場合があり、さらに大きなメリットとなります。

共有持分に関する一般的なトラブル4選

共有持分についてのトラブルは、買取業者との間にだけ発生するというわけではありません。共有者間でもトラブルに発展することもあり、注意が必要です。共有持分を巡って起こりやすいトラブルは以下の4つです。

  • 不動産の利用や処分に共有者間の合意が取れない
  • 共有物分割請求訴訟を起こされる場合がある
  • 共有権利者のひとりが勝手に不動産を売りに出してしまう
  • 相続により共有者が増えるリスクがある

それぞれどのような問題があるのか、詳しく見ていきましょう。

不動産の利用や処分に共有者間の合意が取れない

共有物件は、共有者がそれぞれの持分について所有権を持っています。そのため、自分の一存で物件を自由に利用したり処分することはできません。共有持分を所有する人ができることには、内容によって制限が設けられていてその程度によって同意の要不要が定められています。

 

行為の種類 必要な要件 具体例
変更行為 共有者全員の合意が必要 物件全体の売却
建物の取り壊し
管理行為 共有持分の過半数の合意が必要
(共有者の過半数ではなく持分割合で決する)
賃貸借契約の締結や解除
増改築など不動産の価値や用途を変更するようなリフォーム
保存行為 合意がなくても単独で行為可能 維持を目的とした補修などのリフォームやメンテナンス
所有権を持たない人物に対しての明渡し請求

共有物件に居住したかったり、賃貸に出したいと思っても共有者の合意が得られなければ不可能です。また、共有者間で物件の使用目的が食い違ったり、維持費を誰が負担するのか、どのようにメンテンナンスしていくのかなどさまざまな面でトラブルになることがあります。

共有物分割請求訴訟を起こされる場合がある

共有物分割請求訴訟は、共有状態の解消を求めるための訴訟です。第2章では買取業者から起こされる可能性があると説明しましたが、共有者から申し立てられる場合もあります。共有者の1人が所有してから売却したり、賃貸に出したり、単独で居住したいと思った時に、他の共有者からの合意が得られなければ訴訟になるケースが考えられるでしょう。訴訟になった場合、物件の処理方法は最終的に裁判所の判断に委ねられます。場合によっては競売にかけられるなど、共有者全員が物件を手放すことになるかもしれません。

共有権利者のひとりが勝手に不動産を売りに出してしまう

本来、共有状態にある不動産をひとりの共有者が勝手に売り出すことはできません。共有名義不動産を売却するには共有者全員の同意が必要であり、売却時に行う所有権移転登記には共有者全員の印鑑と印鑑登録証明書が必要です。そのためもし合意なしに売却されていれば、有印私文書偽造の罪に問える可能性が高くなります。ただし、訴訟を起こすには時間とお金、労力も必要です。

また、共有者が勝手に自分の単独所有として不動産を売却していたにもかかわらず、裁判で売主と買主の売買契約は有効との判決が出たケースもあります。この場合は、売主は他の共有者の持分を取得し、買主に引き渡さなくてはならないとの結論に至りました。勝手に売却された挙げ句自分の持分を明け渡さなければならないケースもあるなど、円満に解決するのは難しい問題です。

相続により共有者が増えるリスクがある

共有持分の相続を繰り返すと、共有者が増える場合があります。相続によって共有者が増えると、たとえば遠縁の親戚が共有者に加わるなど連絡先がわからなかったり、単純に人数が増えすぎて把握が難しくなったりと複雑になってしまいます。

売却やリフォームのための話し合いをしたくても、連絡先がわからなければ話のつけようがありません。結果的に不動産をどうにもできなくなることもあるでしょう。共有者が増えすぎるとトラブルに発展する可能性も高くなるので、増えるようなら早目に共有状態を解消しておくのが望ましいです。

共有持分のトラブルを防ぐための4つの対策

共有持分には、さまざまなトラブルが想定されます。それらのトラブルを防ぐには、以下の4つの対策を行いましょう。

  • 遺産相続で不動産を共有名義にしない
  • 相続財産である不動産を売却する
  • 共有持分の放棄を行う
  • 同等の価値のある不動産と交換する

それぞれの対策について、どのようにすれば良いのかを説明します。

遺産相続で不動産を共有名義にしない

そもそも、不動産を共有名義にしなければトラブルは起こりません。不動産を共有状態にせず、遺産相続の際に分割してしまえば共有者同士の対立を防げるでしょう。分割方法は「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3種類があります。

分割方法 内容 注意点
現物分割 不動産を物理的に分割し、それぞれを各相続人が相続する 接道面積や日当たりなどで価格差が出るので考慮する必要がある
建物が建っている場合は境界線を作るのが難しい
代償分割 ひとりが相続する代わりに、他の相続人へその対価を支払う 相続する人の金額の負担が大きい
換価分割 不動産を売却し、売却金を相続人で分割する 相続人全員が売却に合意する必要がある

相続トラブルを防ぐためには、遺言書でどのように分割するのかを明記しておくのが有効です。また、協議で分割方法が決定した場合、代償分割や換価分割による金銭のやり取りが贈与税の対象とみなされる場合があるます。贈与税の対象でないことを証明するために、遺産分割協議書に「遺産分割による不動産取得の対価」である旨を記載しておきましょう。

相続財産である不動産を売却する

共有状態を解消するには、不動産を売却するのもひとつの方法です。不動産の価値を損ねずに現金化したいなら、共有持分だけでなく物件全体の売却を考えましょう。ただし、物件全体を売却するには共有者全員の合意が必要です。共有者を説得するには、共有しているために起こり得るトラブルや、売却のメリットを説明しましょう。自分で説得するのが難しい場合は、弁護士などに代行してもらうのも可能です。

相続した家に住み続けたければ「リースバック」を検討しよう

相続する物件が長年住んでいた家の場合、売却すれば住み慣れた場所を離れることになります。共有状態は解消したいが、一方でそのまま住み続けることを望む場合は「リースバック」という方法があります。リースバックとは、第三者に所有権を売却するのと同時に貸借契約を結ぶことです。所有権は失いますが貸借人として物件に住み続けられるため、高齢者など家を残すよりも現金を置いておきたい人などに人気です。

ただし、リースバックでは物件全体の所有権を売却しないといけません。そのため、共有者全員の合意は必要です。

共有持分の放棄を行う

通常、単独所有している不動産の所有権は放棄できませんが、共有持分なら放棄可能です。持分を放棄する際は、放棄の意思を他の共有者に伝えたうえで持分放棄の登記を行います。持分を放棄すれば共有状態から抜け出せるため、管理や維持費の支払いから解放されます。共有者間の交渉が困難だったり、売却が難しい場合などに有効な方法と言えるでしょう。

ちなみに、放棄した持分は持分割合に沿って他の共有者へ帰属します。割合を無視して特定の人物に持分を与えることはできません。

同等の価値のある不動産と交換する

「土地建物の交換をしたときの特例」により、土地や建物を同じ種類の不動産と交換した際は譲渡がなかったとみなされて税金がかかりません。この特例を利用すれば、税金を払わずに土地を単独所有できる場合があります。

たとえば、2,000万円の不動産をAとBで1/2ずつ共有していて、Aが別に1,000万円の不動産を所有しているとします。この場合、Aの持つ1,000万円の不動産とBの持つ共有持分を交換すれば、それぞれの不動産をAとBが単独所有できるのです。

ただし、交換する不動産はいずれも土地と土地、建物と建物のように同じ種類であること、交換する不動産の価値に20%以上の差がないことが条件です。また、交換で取得した不動産の使用用途が、交換前と同じでないといけない点にも注意しましょう。
参照:No.3502 土地建物の交換をしたときの特例 | 国税庁

まとめ

共有持分を専門に扱う共有持分買取業者は、持分の売却を早く進めたい人にとって最適な売却先です。しかし、選び方を間違うと悪質な業者に引っかかる恐れがあるため、信頼できる業者かどうかを見極めて選びましょう。そもそも、共有名義の不動産は共有者間でもトラブルが起きやすいものです。トラブルにならないためにも相続時に共有名義にしない、不動産そのものを売却するなどの対策を行いましょう。

こんな記事も読まれています